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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B66C
管理番号 1298912
審判番号 不服2014-11344  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-16 
確定日 2015-03-19 
事件の表示 特願2009-105748「方向表示装置、移動体操作システムおよび移動体の操作方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年11月11日出願公開、特開2010-254417〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成21年4月23日の出願であって、平成25年7月10日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成25年9月10日に意見書が提出されるとともに、同日に明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたが、平成26年3月11日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成26年6月16日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


2.本願発明
本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年9月10日に提出された手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに願書に最初に添付された図面の記載によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「移動体の移動方向を操作指示するための指示手段を含む操作手段により、指示された前記移動体の水平面内における2次元の移動方向を矢印で表示し、前記移動体の移動を操作する操作者および前記移動体の移動許容範囲にいる者が下方から目視可能な場所であって、前記移動体の上方に設けられた方向表示装置。」


3.引用刊行物
(1)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願前に頒布された刊行物である実公昭46-26735号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a)「本考案はホイスト、起重機等の方向確認制御装置に関するもので、電源に接続された2段開閉器の第1接点並に方向確認装置との直列回路及び該直列回路に並列に接続され、該開閉器の第2接点とマグネツトコイルからなる直列回路とにより構成された捲上確認制御回路と、該捲上確認制御回路と同一回路構成を有し前記電源に接続された捲下確認制御回路、左移動確認制御回路及び右移動確認制御回路とよりなるものである。
以下本考案の一実施例の構成を図面について説明すれば、第1図の符号1,2は夫々電源に接続された母線である。該母線1,2間には捲上確認制御回路3、捲下確認制御回路4、左移動確認制御回路5及び右移動確認制御回路6が並列に接続されている。
而して該捲上確認制御回路3は母線1,2間に捲上開閉器7の第1接点7_(1)及び捲上表示灯8が直列に接続されており、さらに母線1,2間には捲上開閉器7の第2接点7_(2)及び捲上マグネツトコイル9が直列に接続されている。以下同様にして、前記捲下確認制御回路4、左移動確認制御回路5及び右移動確認制御回路6が構成されている而してこれらの各回路に於ける開閉器7,10,11,12はいずれも2段開閉方式であり、最初に軽く押圧すると第1接点7_(1),10_(1),11_(1),12_(1)が夫々閉成し、この状態に於てさらに押圧すると第2接点7_(2),10_(2),11_(2),12_(2)も夫々閉成される機構のものである。また各マグネツトコイル9,13,14,15は図示しない接点を有しており、いづれも電動機に接続された正逆の回路切換回路を制御するようになつている。
而して上記各確認制御回路3,4,5,6の各表示灯8,16,17,18は第2図に示す如く、ホイスト或は起重機19等の判別し易い場所に表示板20に取付けられ、捲上表示灯8は該表示板20の中央上側に、捲下表示灯16は捲上表示灯8の下側に夫々取付けられている。さらに捲上並に捲下表示灯8,16の左右両側に夫々左表示灯17及び右表示灯18が設けられており、各表示灯8,16,17,18の点灯箇所によりホイスト、起重機19等の移動方向が判然となるよすになつている。さらに捲上開閉器7、捲下開閉器10、左移動開閉器11及び右移動開閉器12は起重機19等の操縦位置の近辺にスイツチボツクス21に設けられている。
次に本考案の作用を説明する。例えば起重機19を捲上げる場合、捲上開閉器7を軽く押圧して第1接点71を閉成し、捲上表示灯8を点灯させる。次いで該開閉器7を強く押圧することにより第2接点7_(2)が閉成して捲上表示灯8は点灯したまま捲上マグネツトコイル9が附勢され、従つて起重機19が捲上げられる。
以下同様にして任意の開閉器10,11,12のいずれかを押圧すれば、所定の表示灯が点灯しながら起重機19或はホイストを捲上げ、捲上げ並に左右方向に移動することができる。
なお、上記実施例では、方向確認装置として表示灯を使用した場合を例示したが、該表示灯の代わりにブザー或はチヤイム等の警報装置を使用することができ、例えば左移動の場合はブザー、右移動の場合はチヤイム等の如くにしてもよい。
以上のように本考案によれば、電源に接続された母線間に捲上、捲下及び左右移動の各確認制御回路を並列に接続し、これらの各回路の2段式開閉器を押圧することにより、ホイスト或は起重機等の移動方向を表示又は警報等によつて確認しながら起重機等を操縦することができる。従つて操縦者の誤操縦並に作業者の誤確認を未然に防止することができ、事故の発生を防ぐことができ安全に操業できるものである。」(1ページ1欄14行ないし2ページ3欄5行)

b)「実用新案登録請求の範囲
電源に接続された2段開閉器の第1接点並に方向確認装置との直列回路及び該直列回路に並列に接続され該開閉器の第2接点とマグネツトコイルからなる直列回路とにより構成された捲上確認制御回路と、該捲上確認制御回路と同一回路構成を有し前記電源に接続された捲下確認制御回路、左移動確認制御回路及び右移動確認制御回路とよりなる起重機等の方向確認制御装置。」(実用新案登録請求の範囲)

(2)引用刊行物の記載事項及び図面の記載から分かること
a)上記(1)a)及びb)並びに第1及び2図の記載によれば、起重機等の方向確認制御装置における開閉器7,10,11,12の押圧により、起重機19等を捲上げ、捲下げ並びに左右方向に移動させるところ、第2図に示された起重機19等に含まれる荷を吊るフックを上下左右の方向に移動させるものといえるから、引用刊行物には、荷を吊るフックの移動方向を指示するための開閉器7,10,11,12を含むスイッチボックス21に設けられた起重機等の方向確認制御装置が開示されていることが分かる。

b)上記(1)a)(特に、1ページ2欄6ないし19行)並びに第1及び2図の記載によれば、表示板20は、起重機等の方向確認制御装置システムにより、指示された荷を吊るフックの上下左右の移動方向を捲上表示灯8、捲下表示灯16、左表示灯17及び右表示灯18で表示することが分かる。

c)上記(1)a)(特に、1ページ2欄36行ないし2ページ3欄5行)及び第2図の記載によれば、表示板20は、荷を吊るフックの移動を操縦する操縦者および作業者が下方から目視可能な場所であって、前記荷を吊るフックの上方に設けられていることが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)を総合して、本願発明の表現に倣って整理すると、引用刊行物には、次の事項からなる発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「荷を吊るフックの移動方向を指示するための開閉器7,10,11,12を含むスイッチボックス21に設けられたホイスト、起重機等の方向確認制御装置により、指示された前記荷を吊るフックの上下左右の移動方向を捲上表示灯8、捲下表示灯16、左表示灯17及び右表示灯18で表示し、前記荷を吊るフックの移動を操縦する操縦者および作業者が下方から目視可能な場所であって、前記荷を吊るフックの上方に設けられた表示板20。」


4.対比
本願発明(以下、「前者」ともいう。)と引用発明(以下、「後者」ともいう。)を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者における「指示」は前者における「操作指示」に相当し、以下同様に、「開閉器7,10,11,12」は「指示手段」に、「スイッチボックス21に設けられたホイスト、起重機等の方向確認制御装置」は「操作手段」に、「操縦」は「操作」に、「操縦者」は「操作者」に、「表示板20」は「方向表示装置」に、それぞれ相当する。

・本件出願の明細書の段落【0018】における「ここで、「移動体」とは、移動体操作システムにより基準位置から二次元又は三次元方向へ相対的に移動させられる物品をいう。二次元又は三次元方向へ相対的に移動(自走)が可能な装置の場合は、その装置自体が「移動体」に該当し、二次元又は三次元方向へ相対的に移動が可能な構成部材を備える装置の場合は、その構成部材が「移動体」に該当する。「移動体」の具体例は、移動体操作システムにより二次元又は三次元方向へ相対的に移動させることが可能なあらゆる物品、たとえば、クレーン装置におけるフック、搬送用ロボットにおける物品を把持又は搭載する搬送アーム又はその把持部、搭載部等の荷台相当部分、高所作業車におけるバケット(デッキ)、ヘリコプターにおけるヘリコプター本体である。」という記載によれば、前者の「移動体」には、起重機等における荷を吊るフックが含まれる。
そうすると、後者における「荷を吊るフック」は前者における「移動体」に相当する。

・後者における「指示された前記荷を吊るフックの上下左右の移動方向を捲上表示灯8、捲下表示灯16、左表示灯17及び右表示灯18で表示し」は、前者における「指示された前記移動体の水平面内における2次元の移動方向を矢印で表示し」に、「指示された前記移動体の所定の移動方向を表示し」という限りにおいて相当する。

・後者における「前記荷を吊るフックの移動を操縦する操縦者および作業者が下方から目視可能な場所であって、前記荷を吊るフックの上方に設けられた」は、前者における「前記移動体の移動を操作する操作者および前記移動体の移動許容範囲にいる者が下方から目視可能な場所であって、前記移動体の上方に設けられた」に、「前記移動体の移動を操作する操作者および前記移動体の付近にいる者が下方から目視可能な場所であって、前記移動体の上方に設けられた」という限りにおいて相当する。

したがって、両者は、
「移動体の移動方向を操作指示するための指示手段を含む操作手段により、指示された前記移動体の所定の移動方向を表示し、前記移動体の移動を操作する操作者および前記移動体の付近にいる者が下方から目視可能な場所であって、前記移動体の上方に設けられた方向表示装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
指示された移動体の所定の移動方向を表示することに関し、本願発明においては、「指示された前記移動体の水平面内における2次元の移動方向を矢印で表示」するものであるのに対して、引用発明においては、「指示された前記荷を吊るフックの上下左右の移動方向を捲上表示灯8、捲下表示灯16、左表示灯17及び右表示灯18で表示」するものである点(以下、「相違点1」という。)。

[相違点2]
移動体の付近にいる者に関し、本願発明においては、「移動体の移動許容範囲にいる者」であるのに対して、引用発明においては、「作業者」であり、移動体の移動許容範囲にいる者であるか否かは不明である点(以下、「相違点2」という。)。

5.判断
上記相違点について検討する。
[相違点1及び2について]
電動ホイストやクレーン等の荷を吊り上げて運搬する機械において、荷を吊るフック等の吊上げ具(移動体)の移動方向を矢印で表示することは、本件出願前に周知の技術(以下、「周知技術」という。必要であれば、特開昭49-83146号公報(特に、1ページ左下欄13行ないし2ページ左上欄14行及び第1図ないし第4図)及び実願昭59-11517号(実開昭60-124179号)のマイクロフィルム(特に、明細書5ページ4行ないし7ページ2行及び図面)を参照。)である。
また、引用発明は、ホイスト、起重機等の荷を吊り上げて運搬する機械に関するものであるところ、荷を吊り上げて運搬する機械において、荷を吊るフック等の吊上げ具(移動体)を水平面内における2次元の移動方向に移動可能にすることは、例えば、天井走行式クレーン等に見られるように本件出願前に慣用の技術(以下、「慣用技術」という。必要であれば、特開昭49-83146号公報(特に、1ページ左下欄13行ないし同ページ右下欄12行及び第1ないし4図)を参照。)である。
そうすると、引用発明において、慣用技術に基づき、荷を吊るフック(移動体)を水平面内における2次元の移動方向に移動可能とし、それに伴い、ホイスト、起重機等の方向確認制御装置により、指示された荷を吊るフック(移動体)の水平面内における2次元の移動方向を表示するとともに、周知技術に基づき、当該移動方向の表示を矢印として、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ところで、引用発明における作業者は、当然に荷を吊るフック(移動体)の移動許容範囲にいる者であるから、引用発明において、荷を吊るフック(移動体)を水平面内における2次元の移動方向に移動可能にすることに伴い、必然的に作業者は荷を吊るフック(移動体)の移動許容範囲にいる者となる。
よって、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることも、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明、周知技術及び慣用技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
したがって、本願発明は、引用発明、周知技術及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-13 
結審通知日 2015-01-20 
審決日 2015-02-02 
出願番号 特願2009-105748(P2009-105748)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B66C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 勝見  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 金澤 俊郎
槙原 進
発明の名称 方向表示装置、移動体操作システムおよび移動体の操作方法  
代理人 名古屋国際特許業務法人  
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