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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65G
管理番号 1298958
審判番号 不服2013-15265  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-07 
確定日 2015-03-17 
事件の表示 特願2008-558777「吸水性ポリマー粒子を空気により搬送する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月20日国際公開、WO2007/104673、平成21年 8月20日国内公表、特表2009-529478〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2007年3月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年3月14日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成20年9月16日に特許法第184条の5第1項に規定する書面が提出され、同年11月17日に同法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲及び要約書の翻訳文が提出され、平成24年5月28日付けで拒絶理由が通知され、同年9月4日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年3月11日付けで拒絶査定がされ、同年8月7日に拒絶査定に対する審判請求がされ、その後、当審において平成26年4月16日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年8月18日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし10に係る発明は、平成26年8月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲及び平成24年9月4日に提出された手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
吸水性ポリマー粒子を空気により搬送する方法において、搬送の際の気体初期速度が、2?5m/sであり、かつ搬送物負荷が、10?50kg/kgであり、その際、搬送物負荷が、搬送物の質量流量と気体の質量流量とからの商であり、搬送用導管の内径が、3?30cmであることを特徴とする、吸水性ポリマー粒子を空気により搬送する方法。」

第3 引用文献の記載、引用文献の記載事項及び引用発明
1 引用文献の記載
当審拒絶理由で引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭63-71021号公報(以下、「引用文献」という。)には、「粒体の低速輸送方法」に関して、図面とともに概ね次の記載(以下、順に、「記載1a」ないし「記載1d」という。)がある。

1a 「(1) 加圧された輸送気流により輸送管内を通して粒体を輸送する粒体の輸送方法であって、輸送圧力損失を5mbar/m以上に保って0.2?15m/sの気流速度で粒体を輸送することを特徴とする粒体の低速輸送方法。」(第1ページ左下欄第5ないし9行)

1b 「この発明において、粒体とは、粒径0.1mm以上のものを指す。好ましい粒体は、粒径0.1?10mmであって、粒径が揃っているものである。
この発明において、輸送管内の、輸送圧力損失および気流速度がそれぞれ上記の範囲に限定されるのは、つぎの理由による。輸送圧力損失が、上記範囲の下限を下回ると、輸送管が閉塞してしまい、輸送できなくなる。気流速度が、上記範囲の下限を下回ると、輸送能力が極端に小さくなって流れが止まるおそれがあり、上限を上回ると、被輸送物の速度が大きくなって摩耗が起きたり破砕したりする。」(第2ページ右上欄第6ないし17行)

1c 「第1図は、この発明にかかる粒体の低速輸送方法を実施するための装置の1例をあらわす。
図にみるように、ブロータンク(圧力容器)1は、投入弁2と排気弁3を備えているとともに、レベル計4,5を備えている。この発明にかかる輸送方法では、ブロータンクを用いるようにすると、輸送圧力損失および気流速度を上記の範囲に調節しやすいので好ましい。前記ブロータンク1には、粒体を投入するようになっている。この投入は、投入弁2と排気弁3を開いた状態で行う。ブロータンク1内に粒体を投入すると、レベル計4で粒体が一定量になったことを検知し、投入弁2と排気弁3を閉じるようになっている。ブロータンク1の外部には、コンプレッサー6を設置している。このコンプレッサー6とブロータンク1間は給気弁7を介して接続している。ブロータンク1とその外部の分離捕集器8間は、輸送管9で接続している。輸送管9上には、ブロー弁10を設ける場合もあるが、設けないこともある。このブロー弁10の前または後に給気弁7からの分岐路を接続している。
前記ブロータンク1内に一定量の粒体を導入すると、投入弁2および排気弁3を閉じた後、給気弁7を開いてコンプレッサー6から圧縮空気を供給するようになっている。この圧縮空気を前記分岐路にも供給すると、粒体が圧縮空気を伴って輸送管9内に流入する。輸送管9内に粒体が行き渡ると、ブロータンク1内圧が安定する。その後、粒体を上記の気流速度で輸送管9内を通して輸送する。
ブロータンク1内の粒体が空になる直前をレベル計5で検知し、すぐに給気弁7を閉じることにより、ブロータンク1内への給気を停止し、かつ、ブロータンク1内および輸送管9内に蓄圧されている空気を排気弁3を開けることにより系外に排出することにより、ブロータンク1からの粒体の送り出しを止めるようにするのが好ましい。これは、ブロータンク1内の粒体がなくなってしまうと、ブロータンク1内に蓄圧された空気が一気に輸送管9内へ流れ込み、輸送管9内の気流速度が急激に高まるので、輸送管9内に残留している粒体が高速で吹き飛ばないようにするためである。輸送は、輸送管9内に粒体が残された状態で停止される。再度投入弁2を介してブロータンク1内に粒体を投入し、前記一連の操作を繰り返すことにより連続して粒体を輸送することができるようになっている。」(第2ページ右上欄末行ないし第3ページ左上欄第6行)

1d 「このように、粒体を低速気流により輸送するので、粒体の破砕とか粉化などが防止される。しかも、輸送管9の損傷も同時に防止される。粒体自体が保護されながら輸送されるので、粒体の品質の劣化が防止されることになる。
たとえば、プラスチックペレットを従来法のように高速で輸送すると、ペレットが輸送管内壁と高速で衝突することにより、ペレット表面が溶けてエンゼルへアーなどの屑が発生し、この屑が混入することにより、ペレットの品質劣化を起こしていた。それらの屑を除去するため、分級器が必要であった。これに対し、この発明にかかる方法のようにペレットを低速で輸送すると、前記のような品質劣化に伴う分級器の設置も不要になる。さらに、粒体が高付加樹脂材料である場合においては、ペレット表面の傷つきによる品質劣化が問題となっているが、この発明にかかる方法では、この問題についても解消できる。
また、粒体が低速で輸送されるので、輸送管9の損傷が防止されて、輸送管9をあえて耐摩耗性に優れる材料とする必要もない。これにより、輸送管9として、通常の安価なパイプを用いることができて経済的である。しかも、輸送管9の損傷粉(たとえば、鉄粉)などが粒体中に混入したりするおそれがないので、粒体の品質の向上も図れる。
さらに、輸送管内における混合比を10?200程度に保ちながら粒体を輸送する場合には、輸送のための空気量が少なくて済む。これにより、動力費も少なくなって経済的になる。しかも、輸送のための空気量が少ないと、粒体を捕集するための分離捕集器の容量も小さくて済み、経済的になる。」(第3ページ右上欄第1行ないし左下欄第13行)

2 引用文献の記載事項
記載1aないし1d及び図面の記載から、引用文献には、次の事項が記載されていると認める(以下、順に「記載事項2a」ないし「記載事項2d」という。)。

2a 記載1a、記載1cの「前記ブロータンク1内に一定量の粒体を導入すると、投入弁2および排気弁3を閉じた後、給気弁7を開いてコンプレッサー6から圧縮空気を供給するようになっている。この圧縮空気を前記分岐路にも供給すると、粒体が圧縮空気を伴って輸送管9内に流入する。輸送管9内に粒体が行き渡ると、ブロータンク1内圧が安定する。その後、粒体を上記の気流速度で輸送管9内を通して輸送する。」(第2ページ右下欄第1ないし9行)、記載1dの「粒体が高付加樹脂材料である場合においては、ベレット表面の傷つきによる品質劣化が問題となっているが、この発明にかかる方法では、この問題についても解消できる。」(第3ページ右上欄第15ないし18行)及び図面によると、引用文献には、高付加樹脂材料である粒体を空気により輸送する方法が記載されている。

2b 記載事項2a、記載1a及び図面によると、引用文献には、輸送の際の気流速度が、0.2?15m/sであることが記載されている。

2c 記載事項2a及び2b、記載1bの「気流速度が、上記範囲の下限を下回ると、輸送能力が極端に小さくなって流れが止まるおそれがあり、上限を上回ると、被輸送物の速度が大きくなって摩耗が起きたり破砕したりする。」(第2ページ右上欄第13ないし17行)、記載1cの「その後、粒体を上記の気流速度で輸送管9内を通して輸送する。」(第2ページ右下欄第7ないし9行)並びに図面によると、引用文献には、輸送の際の気流速度が初期速度であることが記載されている。

2d 記載事項2aないし2c、記載1dの「さらに、輸送管内における混合比を10?200程度に保ちながら粒体を輸送する場合には、輸送のための空気量が少なくて済む。」及び図面によると、引用文献には、混合比が、10?200程度であることが記載されている。

3 引用発明
記載1aないし1d、記載事項2aないし2d及び図面の記載を整理すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「高付加樹脂材料である粒体を空気により輸送する方法において、輸送の際の気流初期速度が、0.2?15m/sであり、かつ混合比が、10?200程度である、高付加樹脂材料である粒体を空気により輸送する方法。」

第4 対比
本願発明と引用発明を対比する。

「吸水性ポリマー」は高付加樹脂材料であり、「粒子」は「粒体」であるから、引用発明における「高付加樹脂材料である粒体」は、本願発明における「吸水性ポリマー粒子」と、「高付加樹脂材料である粒体」という限りにおいて一致する。
また、引用発明における「輸送」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「搬送」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。

「高付加樹脂材料である粒体を空気により搬送する方法。」

そして、以下の点で相違する。
1 相違点1
「高付加樹脂材料である粒体」に関して、本願発明においては、「吸水性ポリマー粒子」であるのに対し、引用発明においては、「高付加樹脂材料である粒体」である点(以下、「相違点1」という。)。

2 相違点2
本願発明においては、「搬送の際の気体初期速度が、2?5m/sであり」であるのに対し、引用発明においては、「輸送の際の気流初期速度が、0.2?15m/sであり」である点(以下、「相違点2」という。)。

3 相違点3
本願発明においては、「搬送物負荷が、10?50kg/kgであり、その際、搬送物負荷が、搬送物の質量流量と気体の質量流量とからの商であり」であるのに対し、引用発明においては、「混合比が、10?200程度である」点(以下、「相違点3」という。)。

4 相違点4
本願発明においては、「搬送用導管の内径が、3?30cmである」のに対し、引用発明においては、そのようなものか不明な点(以下、「相違点4」という。)。

第5 相違点1ないし4に対する判断
そこで、相違点1ないし4について、以下に検討する。

1 相違点1について
吸水性ポリマー粒子を空気により搬送することは、周知(必要であれば、下記1-1を参照。以下、「周知技術1」という。)である。
そして、「吸水性ポリマー粒子」は「高付加樹脂材料である粒体」の概念に含まれることは明らかである。
したがって、引用発明において、周知技術1を適用し、「高付加樹脂材料である粒体」を「吸水性ポリマー粒子」として、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
なお、請求人は、平成26年8月18日に提出された意見書において、「しかし、引用文献2に記載の方法により搬送される「粒体」は、そもそも、好ましくは粒径0.1?10mmを有する、たとえばプラスチックペレットのような、吸水性ポリマーに比較して硬質の材料であることが記載されています。
このことは、引用文献2における課題が、粒体のとの摩擦による輸送管の損傷を防止することであることからもご理解いただけるものと思量いたします。」と主張するが、記載1dの「このように、粒体を低速気流により輸送するので、粒体の破砕とか粉化などが防止される。しかも、輸送管9の損傷も同時に防止される。粒体自体が保護されながら輸送されるので、粒体の品質の劣化が防止されることになる。」(第3ページ右上欄第1ないし5行)からわかるように、「引用文献2」(当審注:審決における「引用文献」のことである。)における課題は、一義的には、粒体の破砕とか粉化などの防止や粒体の品質の劣化の防止であって、輸送管の損傷の防止は、二義的な課題である。よって、引用文献2に記載された粒体は、粒体の破砕や粉化が生じやすい粒体を排除するものではなく、吸水性ポリマーに比較して硬質の材料に限定されるものではないので、請求人の上記主張は採用できない。

1-1 特開2004-345804号公報の記載
上記文献は、平成20年11月17日に提出された翻訳文中で提示された文献であり、当審拒絶理由で提示した文献でもあるが、上記文献には、「吸水性樹脂粉体の輸送方法」に関して、図面とともに概ね次の記載がある(なお、下線は当審で付したものである。)。

・「【0020】
次に、本発明の輸送方法について、図1を参照しながら説明する。図1は、高濃度空気輸送装置の一実施形態の概略図である。輸送される吸水性樹脂粉体は、ホッパー102に貯蔵される。ホッパー102から輸送される吸水性樹脂粉体(以下、「吸水性樹脂粉体」を単に「粉体」とも記載する)が、リフトタンク103を通じて、輸送管104に供給される。ホッパー102から輸送管104への粉体の供給および、輸送管104内部での粉体の輸送には、コンプレッサー106によって作製される圧縮空気が用いられうる。圧縮空気による高濃度空気輸送によって、粉体はホッパー108に輸送される。輸送管には、二次空気を噴出させるための、エアノズルが設けられる。二次空気は、コンプレッサーによって圧縮されており、二次空気供給管110を通じて、輸送管中に適宜設けられたエアノズルに供給される。エアノズルに供給された二次空気は、輸送管内部に噴出される。
【0021】
高濃度空気輸送は、低濃度高速輸送に比べて、所要動力が小さい。輸送管中を輸送される粉体の濃度が高くなると、粉体の集団が管断面の全体をプラグ状に塞ぐ。このとき、ほとんどの粒子は輸送管の壁面と衝突しないため、管の磨耗や粉体の破砕が抑制される。このように、粉体は、プラグ状に輸送管を塞ぎながら輸送される。理想化されたプラグ輸送は、粉体の集団と空気とが整然と分離されて、粉体が輸送される。ただし、粉体と空気とが整然と分離されることは稀である。実際系においては、管底側に粉体の静止堆積層が形成され、その上をプラグが波動的な運動を示しながら移動する。または、粉体の堆積層が成長して丘状の塊からプラグとなり、ある程度進んだのち、プラグが崩壊する。この挙動を繰り返して、粉体が輸送される。
【0022】
本願においては、このような粉体の高濃度空気輸送を実現する装置を、高濃度空気輸送装置と呼ぶ。言い換えれば、高濃度空気輸送装置においては、プラグを形成しながら粉体が輸送管内を移動する。本発明の輸送方法に用いられる高濃度空気輸送装置の構成は特に限定されないが、少なくとも、粉体が移動する輸送管、輸送管に二次空気を供給するための二次空気供給管を有する。つまり、本発明の高濃度空気輸送装置は、吸水性樹脂粉体を貯蔵する貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクから供給された前記吸水性樹脂粉体が圧送される輸送管と、前記輸送管に連結されてなる、前記輸送管を圧送されている前記吸水性樹脂粉体に二次空気を供給するための二次空気供給管とからなる。好ましくは、高濃度空気供給装置は、前記輸送管に一次空気を供給するコンプレッサーを有する。また、好ましくは、高濃度空気供給装置は、前記二次空気供給管に二次空気を供給するコンプレッサーを有する。一のコンプレッサーが、一次空気および二次空気を供給してもよい。貯蔵タンクの底部には、ガスシール可能なバルブが設けられていることが好ましい。高濃度空気輸送装置は、特許文献1、特許文献2、非特許文献1などの公知技術を参照して設計されうる。」(段落【0020】ないし【0022】)

・「【0072】
<実施例1>
低速プラグ式高濃度空気輸送装置(デンカエンジニアリング株式会社製「スラストフロー」)を用いて、合成例Aで得た表面架橋吸水性樹脂Aの粉体を約1時間空気輸送した。実施例1で用いた高濃度空気輸送装置の概略を、図1に示す。実施例1で用いた高濃度空気輸送装置は、輸送管に供給される吸水性樹脂の粉体が貯蔵されているホッパー外壁および輸送管外壁に沿って配置された銅パイプを有しており、銅パイプ内にスチームを通過させることによって、ホッパーおよび輸送管が加熱および保温される。即ち、実施例1で用いた高濃度空気輸送装置はスチームトレースされている。空気輸送装置による水平輸送距離は50mであり、垂直輸送距離は10mであった。また、輸送管は、4ヶ所90°でベンドしていた。
【0073】
吸水性樹脂の輸送量は、1.6ton/hrであり、線速は7?10m/sであった。ホッパー外壁および輸送管外壁温度は、約70℃に保持した。輸送装置入口における吸水性樹脂の温度は56?54℃であり、輸送装置出口における吸水性樹脂の温度は53?51℃であった。空気輸送前後の表面架橋吸水性樹脂Aの物性を、表1に示す。」(段落【0072】及び【0073】)

2 相違点2について
引用発明における「輸送の際の気流初期速度」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「搬送の際の気体初期速度」に相当する。
そして、引用発明における「0.2?15m/s」は、本願発明における「2?5m/s」を包含するものである。
また、「2?5m/s」の間の値は、通常採り得る値でもある(必要であれば、下記2-1及び2-2を参照。)。
したがって、引用発明において、「搬送の際の気体初期速度」に相当する「輸送の際の気流初期速度」として、「2?5m/s」を選択し、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

2-1 伊藤光弘著,”図解 粉体機器・装置の基礎”,株式会社工業調査会,2005年2月15日,初版の記載
上記文献は、平成24年4月27日提出の刊行物提出書で提示された文献であり、当審拒絶理由で提示した文献でもあるが、上記文献には、概ね次の記載がある。

・第154ページの「表2-19 主な空気輸送装置のフローパターン」の右端の列最上段に「混合比[kg/h/kg/h]」と記載され、プラグフローの行には、風速[m/s]が1?5、混合比[kg/h/kg/h]が30?150と記載されている。

2-2 坂下攝著,”改訂増補 入門 粉体トラブル工学”,株式会社工業調査会,1998年10月1日,初版の記載
上記文献は、平成24年4月27日提出の刊行物提出書で提示された文献であり、当審拒絶理由で提示した文献でもあるが、上記文献には、概ね次の記載がある。

・第171ページの「表4.8 固気混相流のフロー・パターン」の最下段のプラグ・フローの行には、輸送速度[m/sec]が0.1?5と記載されている。

3 相違点3について
「混合比」とは、搬送気体に対する搬送物の比で、単位は、kg/h/kg/h、即ちkg/kgで表されるものであるから(必要であれば、上記2-1を参照。)、引用発明における「混合比」は、本願発明における「搬送物の質量流量と気体の質量流量とからの商」である「搬送物負荷」に相当する。
そうすると、引用発明における「10?200程度」は、「10?200kg/kg程度」のことを意味しているから、本願発明における「10?50kg/kg」を包含するものである。
また、「10?50kg/kg」の間の値は、通常採り得る値でもある(必要であれば、上記2-1を参照。)。
したがって、引用発明において、「搬送物の質量流量と気体の質量流量とからの商」である「搬送物負荷」に相当する「混合比」として、「10?50kg/kg」を選択し、相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

4 相違点4について
粒体を空気により輸送する管として、市販のガス管が最も多く使用され、その径は、おおむね50mmより250mmの範囲(即ち5?25cmの範
囲であり、3?30cmの範囲に包含される。)であることは、周知(必要であれば、下記4-1を参照。以下、「周知技術2」という。)である。
したがって、引用発明において、周知技術2を適用し、「搬送用導管の内径」を「3?30cm」として、相違点4に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

4-1 上滝具貞 西岡富士夫著,”粉粒体の空気輸送”,日刊工業新聞社,昭和36年2月10日,初版の記載
上記文献は、平成24年4月27日提出の刊行物提出書で提示された文献であり、当審拒絶理由で提示した文献でもあるが、上記文献には、表とともに概ね次の記載がある。

・「a.直 管 直管には市販のガス管が最も多く使用されている.その径はおおむね50mmより250mmの範囲でその寸法表は表5・5の通りである.」(第117ページ第14及び15行)

・「表5.5 ガス管の寸法および重量(JIS G 3427)」として、外形10.5mm(近似内径6.5mm)から318.5mm(近似内径304.7mm)のガス管の寸法表が示されている。

5 効果について
そして、本願発明を全体としてみても、本願発明が、引用発明並びに周知技術1及び2からみて、格別顕著な効果を奏するともいえない。

第6 むすび
したがって、本願発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-17 
結審通知日 2014-10-20 
審決日 2014-10-31 
出願番号 特願2008-558777(P2008-558777)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 八板 直人  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 伊藤 元人
藤原 直欣
発明の名称 吸水性ポリマー粒子を空気により搬送する方法  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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