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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A01K
管理番号 1298968
審判番号 無効2013-800067  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-04-19 
確定日 2014-01-14 
事件の表示 上記当事者間の特許第4616162号発明「ペットのトイレ仕付け用サークル」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件の手続の経緯は以下のとおりである。

平成17年12月 9日 本件出願(特願2005-356334)
平成21年 4月 7日 拒絶査定
平成21年 7月13日 審判請求(不服2009-12706)
手続補正
平成22年10月 5日 審決(不服2009-12706:原査定取り消し)
平成22年10月29日 設定登録(特許第4616162号)
平成24年 1月26日 別件無効審判請求(無効2012-800005)
平成24年 4月16日 被請求人より無効2012-800005審判事件答弁書、訂正請求書提出
平成24年 6月11日 別件無効審判請求(無効2012-800097)
平成24年 6月13日 別件無効審判請求(無効2012-800100)
平成24年10月 5日 別件無効2012-800005審決(請求のとおり訂正を認める。審判の請求は、成り立たない。)
平成24年10月 5日 別件無効審判請求(無効2012-800161)
平成24年11月12日 別件H24行ケ10395出訴(無効2012-800005)
平成24年12月26日 被請求人より無効2012-800161審判事件答弁書、訂正請求書提出(平成25年1月22日補正)
平成25年 1月 9日 無効2012-800097、無効2012-800100、無効2012-800161を併合
平成25年 3月 5日 口頭審理の後、無効2012-800097、無効2012-800100、無効2012-800161を分離
平成25年 4月19日 本件無効審判請求(無効2013-800067)
平成25年 5月22日 別件無効2012-800005審決(請求のとおり訂正を認める。審判の請求は、成り立たない。)確定登録
平成25年 5月28日 別件無効2012-800097審決(請求のとおり訂正を認める。審判の請求は、成り立たない。)
別件無効2012-800100審決(請求のとおり訂正を認める。審判の請求は、成り立たない。)
別件無効2012-800161審決(請求のとおり訂正を認める。審判の請求は、成り立たない。)
平成25年 7月16日 被請求人より本件審判事件答弁書
平成25年 8月29日 審理事項通知
平成25年 9月13日 被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成25年 9月17日 請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成25年10月 1日 口頭審理
平成25年10月16日 被請求人より上申書提出


第2 当事者の主張
1.請求人の主張の概要
請求人は、特許第4616162号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、甲第1?63号証を提出して、次の無効理由を主張した。

[無効理由の概要]
(1)第1の無効理由(本件特許発明1:特許法第29条第2項)
本件の請求項1に係る各特許発明は、甲第1号証から甲第3号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(2)第2の無効理由(本件特許発明2:特許法第29条第2項)
本件の請求項2に係る各特許発明は、甲第1号証から甲第3号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

[証拠方法]
甲第1号証 杉浦基之監修、「赤ちゃん犬のしつけと育て方」2001年6月22日2刷発行、(株)主婦と生活社、第50頁、第51頁、第68頁、第69頁
甲第2号証 「ペピィ2003年夏号Vol.24」、第52頁
甲第3号証 大友藤夫、小方宗次監修、「犬の医・食・住」2005年11月29日06・07年版発行、株式会社どうぶつ出版、第114頁
甲第4号証 創作工房のウェブページアーカイブ「ペットハウス・ペット家具・グッズの工房「創作工房」フルオーダー製品作ります」と題するページの画面出力物(写し)、http://web..archive.org/web/20050201065153/http://www.sousaku.net/平成25年9月13日出力日
甲第5号証 「ジョーカー大宮店 オーダーサークルお見積会」チラシ(写し)、有限会社創作工房
甲第6号証 「joker_plc」と題するフォルダの画面キャプチャ(写し)
甲第7号証 大友藤夫監修、「愛犬の育て方&しつけ方大百科」平成4年9月1日発行、成美堂出版(株)、表紙、第5、25頁
甲第8号証 編者西東社出版部、「子犬の飼い方・育て方」平成15年7月25日発行、株式会社西東社、表紙、第10、13、51頁
甲第9号証 松村朗編、「大辞林」、三省堂、表紙、第1684、1748頁
甲第10号証 特開2003-23904号公報
甲第11号証 渡辺格編、「イラストでわかる犬のしつけ方」平成8年9月15日初版発行、(株)新星出版社、表紙、第64頁
甲第12号証 磯部芳郎監修、「ワンちゃん大好き!子犬の選び方・飼い方・しつけ方」平成15年5月30日発行、(株)池田書店、表紙、第3、91頁
甲第13号証 中井真澄監修、「いいコに育つ 犬 しつけ&トレーニング」平成16年4月5日発行、(株)西東社、表紙、第16、50、51頁
甲第14号証 加藤元共著・訳、「ほめてしつける犬の飼い方」平成10年9月24日発行、(株)池田書店、表紙、第9、70、71頁
甲第15号証 渡辺格 古銭正彦共著、「あきらめないで!必ず直せる愛犬のトラブル」平成10年9月24日発行、(株)新星出版社、表紙、目次頁、第167、168頁
甲第16号証 「いぬのきもち2004年6月号」平成16年5月10日発行、ベネッセコーポレーション、表紙、目次頁、第86頁
甲第17号証 五十嵐和恵監修、「かわいい子犬のしつけBOOK」○C2004、成美堂出版、表紙、第38、74?78、89、90、93、146頁
甲第18号証 「いぬのきもち 2005年3月号」平成17年2月10日発行、ベネッセコーポレーション、表紙、目次頁、第54?61頁
甲第19号証 「いぬのきもち 2005年4月号」平成17年3月10日発行、ベネッセコーポレーション、表紙、目次頁、第75?77頁
甲第20号証 DOGFAN編集部著、「「オシッコ」と「無駄吠え」のトレーニング」平成17年12月2日発行、(株)誠文堂新光社、表紙、目次頁、第30、31頁
甲第21号証 OKWaveの「トイレのしつけ」と題するページ画面の画面出力物、http ://okwave.jp/print/ qa/q316034.html?order=DESC&by=helpful、平成25年5月1日出力日
甲第22号証 OKWaveの「子犬のトイレのしつけ 甘え声を出す時」と題するページ画面の画面出力物、http ://okwave.jp/print/ qa/ q482701.html?order=DESC&by=helpful、平成25年4月30日出力日
甲第23号証 OKWaveの「犬のうんちのしつけ」と題するページ画面の画面出力物、http ://okwave.jp/ print/q547032.html?order=DESC&by=helpful、平成25年4月30日出力日
甲第24号証 「我が家にワンコがやってきた!:トイレ」と題するページ画面の画面出力物、http ://blog.livedoor.jp/ladymam-homepage/archives/66070330.htm!、平成25年4月30日出力日
甲第25号証 Yahoo知恵袋の「室内犬についての質問です」と題するページ画面の画面出力物、http ://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question detail/q11981866、平成25年5月1日出力日
甲第26号証 OKWaveの「M.ダックスのトイレ」と題するページ画面の画面出力物、http ://OKWave.jp/print/ qa/ q1484195.htiml?order=DESC&by=helpful、平成25年4月30日出力日
甲第27号証 Yahoo知恵袋の「現在愛犬のトイレのしつけの真っ最中です。」と題するページ画面の画面出力物、http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question detail/ q115296426、平成25年5月1日出力日
甲第28号証 教えてgooの「チワワ子犬のトイレやお座りのしつけについて」と題するページ画面の画面出力物、http://OKWave.jp/qa/q1530920.html、平成25年4月30日出力日
甲第29号証 OKWaveの「仔犬がサークルの外でしかウンチをしないのですが」と題するページ画面の画面出力物、http://OKWave.jp./print/qa/q1704221.html?order=DESC&by=helpful、平成25年4月30日出力日
甲第30号証 「愛犬の友 2005年4月号」平成17年4月1日発行、(株)誠文堂新光社、表紙、第59頁
甲第31号証 実用新案出願公告平3-33255号公報
甲第32号証 実用新案登録第3116458号公報
甲第33号証 「愛犬の友 1970年1月号」昭和45年1月1日発行、(株)誠文堂新光社、表紙、頁数不明頁
甲第34号証 「愛犬の友 1980年1月号」昭和55年1月1日発行、(株)誠文堂新光社、表紙、頁数不明頁
甲第35号証 「愛犬の友 1984年4月号」昭和59年4月1日発行、(株)誠文堂新光社、表紙、頁数不明頁
甲第36号証 「愛犬の友 2001年4月号」平成13年4月1日発行、(株)誠文堂新光社、表紙、裏表紙
甲第37号証 「愛犬の友 1985年4月号」昭和60年4月1日発行、(株)誠文堂新光社、表紙、第265、279頁
甲第38号証 「愛犬の友 1986年4月号」昭和61年4月1日発行、(株)誠文堂新光社、表紙、頁数不明頁、第481頁
甲第39号証 「愛犬の友 2005年12月号」平成17年12月1日発行、(株)誠文堂新光社、表紙、第184、388頁
甲第40号証 実用新案登録第3058181号公報
甲第41号証 特開平10-28488号公報
甲第42号証 特開平10-42734号公報
甲第43号証 特開平11-269996号公報
甲第44号証 実用新案登録第3098127号公報
甲第45号証 特開平6-317048号公報
甲第46号証 特開2000-240370号公報
甲第47号証 特開平7-313012号公報
甲第48号証 特開2005-73686号公報
甲第49号証 「GOOD DESIGN 2004 2005 グッドデザインアワード・イヤーブック」平成17年1月21日発行、財団法人日本産業デザイン振興会、表紙、目次頁、第100、293?297頁
甲第50号証 学校法人ヤマザキ学園専修学校 日本動物学院監修「こうすれば室内で犬が飼える」平成9年5月25日発行、(株)双葉社、表紙、目次頁、第46、47頁
甲第51号証 実用新案登録第3001541号公報
甲第52号証 実用新案登録第3091546号公報
甲第53号証 「NEW PRODUCTS プラケージ660・662・663」平成13年7月31日発行、アイリスオーヤマ株式会社
甲第54号証 「NEW PRODUCTS プラケ-ジ810、812、813」平成13年7月31日発行、アイリスオーヤマ株式会社
甲第55号証 「NEW PRODUCTS プラケ-ジ1000」平成13年7月31日発行、アイリスオーヤマ株式会社
甲第56号証 「2003 CATALOG」、アイリスオーヤマ株式会社、表紙、目次頁、第28?31、36?39、79?81頁
甲第57号証 「2004 CATALOG」、アイリスオーヤマ株式会社、表紙、目次頁、第26?29、122、124頁
甲第58号証 「2005 CATALOG」、アイリスオーヤマ株式会社、表紙、目次頁、第21、22、24、25、30?33、132、133、135、136頁
甲第59号証 「プラケージ660 取扱説明書」、アイリスオーヤマ株式会社、表面、裏面
甲第60号証 「プラケージ810 取扱説明書」、アイリスオーヤマ株式会社、頁数不明の2頁
甲第61号証 アイリスオーヤマの「プラケ-ジ1000」と題するページ画面の画面出力物、http://www.irisplaza.co.jp/Index.asp?KB=SHOSAI&SID=P314786&SHOP=2、平成25年8月2日出力日
甲第62号証 Allaboutのウェブページ「ペットと人の快適な住空間づくりペット、動物、犬・猫…PETIO by ヤマヒサ」と題するページ画面の画面出力物、平成25年3月1日出力日
甲第63号証 大友藤夫、小方宗次監修、「犬の医・食・住」2005年11月29日06・07年版発行、株式会社どうぶつ出版、第190、191頁

2.被請求人の主張の概要
被請求人は、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めた。

[証拠方法]
乙第1号証 「サークル使用状況に関してのWeb調査」、サークルに関する新たな商品を開発する目的で実施したアンケート調査
乙第2号証 「トイレ本体に関するアンケート」、サークルに関する新たな商品を開発する目的で実施したアンケート調査
乙第3号証 「ペティオ トイレスペース付き木製サークル」、アンケート調査から検討・作成された内部資料
乙第4号証 「Wood circle having Toile space & Toilet for dogs」、アンケート調査から検討・作成された内部資料
乙第5号証 無効2012-800005審決書
乙第6号証 「DVD」、本件特許発明1と仕切を着脱するサークルによるトイレの仕付けの容易さの相違について犬を用いて比較したもの
乙第7号証 「DVDこま取り」、上記内容のこま取り
乙第8号証 All Aboutの「ペットと人の快適な住空間づくり」との記事をプリントしたもの
乙第9号証 株式会社富士経済、「2008年 ペット関連市場マーケティング総覧」、表紙、230?235ページ
乙第10号証 「犬用サークル売り上げ数量・金額の推移」
乙第11号証 知財高裁平成24年(行ケ)第10395号審決取消請求事件判決
乙第12号証 特開2003-23904号公報


第3 本件特許発明
本件特許の請求項1?2に係る発明は、それぞれ、無効2012-800005号の訂正請求で訂正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。(A.?F.の文字は当審で付与。)

「【請求項1】
A.複数のパネルが連結されたサークル本体の内部で、収容した犬のトイレの仕付けを行う犬用サークルにおいて、
B.前記サークル本体の内部空間が中仕切体によって仕切られることにより住居スペースとトイレスペースに区画されており、
C.前記中仕切体には、犬が出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに、
D.この仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ、この仕切扉を介して住居スペースとトイレスペースとの間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されていることを特徴とする
E.犬のトイレ仕付け用サークル。
【請求項2】
F.請求項1に記載の犬のトイレ仕付け用サークルにおいて。
前記仕切出入口の開放時および閉鎖時にそれぞれ仕切扉を係止する仕切出入口ロック手段が設けられたことを特徴とする犬のトイレ仕付け用サークル。」(以下、「本件特許発明1」等という。)


第4 無効理由についての判断
1.証拠方法の記載内容
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第1号証?甲第3号証には、次の事項が記載されている。(下線は、当審にて付与。)

(1)甲第1号証(杉浦基之監修、「赤ちゃん犬のしつけと育て方」2001年6月22日2刷発行、(株)主婦と生活社、第50頁、第51頁、第68頁、第69頁)
(1a)「トイレを作りましょう
『トイレ』といっても、トイレをしつけるためにサークルで作るスペースは赤ちゃん犬のお城。眠ったり遊ぶ場所でもあるので、できるだけ居心地よい空間にしてやりましょう。
1 トイレの場所を決める
赤ちゃん犬はトイレを場所でも覚えます。最終的にサークルを外してペットシーツだけにしたときを想定して場所を決め、その後は場所を変えないようにします。
・・・
2 サークルで囲うスペースを決める
サークルで囲う赤ちゃん犬のお城は十分なスぺースが必要です。赤ちゃん犬の大きさにもよりますが、最低半畳くらい。外出するときなどはサークルに赤ちゃん犬を入れておくことになるので、生活できるくらいの空間が必要になります。
サークルが狭いとペットとトイレの区別ができず、オシッコやウンチをベッドの中にしてしまうことがあります。そうすると匂いが残ってどこがトイレがわからなくなってしまい、トイレのしつけがすすみません。」(第50頁)
(1b)「3 トイレとベッドを置いてサークルで囲う
新聞紙を敷き、ペットシーツをサークルの大きさより少し広めに敷き、ベッドになるものを置きます。ベッドは赤ちゃん犬の体の1.5倍前後が適当な大きさ。雑誌や木をベッドの下にあてがって床よりも5cmくらい高くすると、ベッドとトイレがより明確に区別できます。
人間の寝室のように、ベッドとトイレの間を板で仕切って区別するのもよい方法です。この場合、赤ちゃん犬がふたつの部屋を自由に行き来できるスペースを開けておきます。最後に、サークルでベッドとトイレを囲います。
4 オシッコした紙や布の一部をトイレに置く
赤ちゃん犬は『トイレ』を足触りでも確認しています。・・・」(第51頁)
(1c)「トイレの基本を教えましょう
赤ちゃん犬はオシメをつけた人間の赤ちゃんと同じようなものです。はじめはトイレの失敗が多いのは当たり前。それでも、家に着いた日からトイレのトレーニングをはじめましょう。まずは、排泄とオシッコという言葉が結びつくようにすること、また、いつも同じ場所でトイレをすることを覚えさせましょう。
1 こんな時がトイレタイム
寝ていた場合、起きてすぐ。これは、朝に限りません。ご飯を食べたあと。そして、遊んだあと。赤ちゃん犬は、起きている間は、だいたい1時間ごとにトイレに行きます。
2 ソワソワしたらトイレのサイン
クンクン鳴いたり、匂いをかぐようにソワソワウロウロしだしたらトイレのサイン。
遊んでいても、こういうサインがあったらトイレに連れていきます。また、よく観察すると、トイレが近くなった時にする表情があります。それも目安になります。
3 トイレに連れていく
抱き上げてトイレへ連れていきます。
4 終る頃、『オシッコ』と声をかける
終りそうになったら『オシッコ』と声をかけます。ウンチもオシッコも『オシッコ』という同じことばを使い、口調やトーンも統一すると覚えやすくなります。
くりかえしていると、オシッコ=排泄行為という回路ができて、オシッコということばとトイレタイムが結び付きます。このことばを教えることで、外でするトイレのしつけがスムーズになります(→146ページ)。
5 ほめて遊んであげる
ペットシーツの上できちんとトイレできたら、ほめて、それから、遊んでやります。
ほめたり遊んでやることでトイレで排泄する=気持ちよい体験になっていきます。
6 トイレはいつもきれいに
排泄物はコマメに処理します。イヌはきれい好き。そのままにしておくとトイレ
で排泄したがらないようになってトイレトレーニングが進みません。」(第68?69頁)

(1d)記載事項(1b)の「トイレとベッド」は、「人間の寝室のように、ベッドとトイレの間を板で仕切って区別するのもよい方法です」とされており、該よい方法とされたものは記載されているいえる。
したがって、上記記載事項(1a)?(1d)からみて、甲第1号証には以下の発明が記載されている。
「a:ベッドとトイレを置いて囲う赤ちゃん犬のサークルであって、
サークルで作るスペースは、トイレをしつけるために作るスペースであり、
b:ベッドとトイレの間を板で仕切って区別されており、
c:この場合、赤ちゃん犬がふたつの部屋を自由に行き来できるスペースを開けておく、
e:サークル。」(以下、「甲1発明」という。)

なお、上記引用発明1、2は、請求人が審判請求書「7.(4-2-2)(1)-2-1」で、「以下の内容の発明(以下、「引用発明1」という)を認定することができる。」としたものと異なっているが、基本的に引用発明の認定は、甲1号証の用語や表現を用いて行い、下記「2.(1)ア.」の「対比」で、それらと、本件特許発明の用語や表現との相当関係を検討して、請求人の主張に対する実質的検討を行うこととする。
また、請求人の平成25年9月17日付け口頭審理陳述要領書「5-1.審判請求書の補足説明」の「(1)引用発明1の認定の補足(9頁3行(1)-2-1「発明の内容」の補足)」の主張に関しても同様とする。

(2)甲第2号証(「ペピィ2003年夏号Vol.24」、第52頁)
(2a)「うちの子の『ここ』を直したい・・・!
愛犬の“困った行動”に効果的なしつけグッズ
トイレを覚えて!」(52頁上部見出し)
(2b)以下の「トイレのしつけハウス」なるプレートがついた商品1の2カットの写真と、説明図。(52頁上部から中間部)


(a)上カットの写真には、「居住ゾーン」(左下)、「トイレゾーン」(右上)、「あげたままで固定できる仕切り。取り外しもOK」(左上)、「天井が全開するので愛犬の移動も簡単」(左中)、「引き出せるステンレストレー、後始末もラクラク」(右下)なる引き出し説明が付されている。
(b)左側の説明図には、「1 食事や運動のあとが排泄のタイミング。天井を開いてわんちゃんをトイレゾーンに移動させ、仕切りを閉めます。
2 排泄するまでじっくり待ちます。落ち着かせるのがポイント。
3 排泄が終わったらすぐ仕切りを開け、充分にほめます。」との説明が付されている。
(c)下カットの写真には、「初心者のために訓練士が考案。家庭犬訓練土が考案した、トイレのしつけが簡単にできるハウス。居住ゾーンとトイレゾーンを仕切りで分けてあるので清潔。トイレゾーンヘの移動も簡単。 トイレのしつけが終わればクレートトレーニングもでき、ハウスとしてずっと使えます。成犬で5kgくらいまでのわんちゃんに最適」との説明が付されている。
(d)各カットの写真は、商品1の全体を斜視したカットである。
(e)各カットの写真では、商品1に犬が入れられている。
(f)上カットの写真の商品1の四方は、網で囲われていると言えるが、請求人が審判請求書「7.(4-2-2)(2)-1イ」で、主張する「このハウスは、床部材の上に、複数のパネルが連結されたサークル状の壁部材が設けられている。」ことは、甲第2号証全体を見ても、甲第2号証の記載自体から読みとることは出来ない。
(f)上カットの写真の「あげたままで固定できる仕切り。取り外しもOK」なる引き出し説明が付されている部材は、(c)の「仕切り」であるので、請求人が審判請求書「7.(4-2-2)(2)-1」で、主張する様に、「『仕切り』については、『あげたままで固定できる仕切り。取り外しもOK』と記載されている。」とは言えるものの、「具体的には、『仕切り』には上下方向の2箇所にフックが設けられ、フックをハウス天井の奥行き方向に伸びる線材に引っかけることで仕切りを固定できる。そして、下側のフックを前記線材に引っかけることで、居住ゾーンとトイレゾーンとの間に犬が両ゾーンを行き来できる開口部が形成され(写真の状態)、一方、仕切りを床まで下げることで、居住ゾーンとトイレゾーンとの間の開口部が閉鎖されるので、『仕切り』は居住ゾーンとトイレゾーンとの間の開口部を開閉する仕切り扉である。」ことは、甲第2号証全体を見ても、甲第2号証の記載自体から読みとることは出来ない。

したがって、上記記載事項(2a)?(2b)からみて、甲第2号証には以下の発明が記載されている。
「四方が網で囲われている、犬のトイレのしつけハウスであって、
内部空間が、あげたままで固定できる仕切りで、居住ゾーンとトイレゾーンに区画されており、
天井を開いて、居住ゾーンとトイレゾーンの間の仕切りを上げた状態で、犬をトイレゾーンに移動させた後、仕切りを閉めることができる、
犬のトイレのしつけハウス」(以下、「甲2発明」という。)

(3)甲第3号証(大友藤夫、小方宗次監修、「犬の医・食・住」2005年11月29日06・07年版発行、株式会社どうぶつ出版、第114頁)
(3a)以下の挿絵。(114頁)


2.各無効理由についての判断
(1)第1の無効理由について
ア.対比
本件特許発明1と甲1発明を対比すると、
甲1発明の「サークルで作るスペース」は、本件特許発明1の「サークル本体の内部」に相当し、以下同様に、
「赤ちゃん犬のサークル」は、その「サークルで作るスペース」が「トイレをしつけるために作るスペース」であるので、「収容した犬のトイレの仕付けを行う犬用サークル」に、
「ベッドとトイレの間を板で仕切って区別され」ることは、「中仕切体によって仕切られることにより住居スペースとトイレスペースに区画され」ることに、
「赤ちゃん犬がふたつの部屋を自由に行き来できるスペースを開けておく」ことは、「中仕切体には、犬が出入り可能な仕切出入口が開口される」ことにそれぞれ相当する。

甲1発明の「ベッドとトイレの間を板で仕切って区別されており、
この場合、赤ちゃん犬がふたつの部屋を自由に行き来できるスペースを開けておく」ことと、本件特許発明1の「中仕切体には、犬が出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに、この仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ、この仕切扉を介して住居スペースとトイレスペースとの間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されていること」とは、「中仕切体には、犬が出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに、仕切出入口を介して住居スペースとトイレスペースとの間を犬が行き来できるように構成されていること」で共通する。

そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、
「サークル本体の内部で、収容した犬のトイレの仕付けを行う犬用サークルにおいて、
前記サークル本体の内部空間が中仕切体によって仕切られることにより住居スペースとトイレスペースに区画されており、
前記中仕切体には、犬が出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに、仕切出入口を介して住居スペースとトイレスペースとの間を犬が行き来できるように構成されている犬のトイレ仕付け用サークル。」で一致し、以下の点で相違する。

なお、請求人は、平成25年9月17日付け口頭審理陳述要領書「5-1.(1)」で、「引用発明1の構成c『犬がベッドスペースとトイレスペースとを自由に行き来できるスペース(開口部)が存在する』における開口部については、甲1に形状、構造に関する具体的な記載がない。しかし、犬の飼育装置(サークル)において、ベッドスペースとトイレスペースとの間に開口部を有する仕切りを形成することは、本件特許出願時には周知・慣用技術である(甲3、甲4?甲8)。・・・以上のことから、上記構成cは周知・慣用技術であって、引用発明1には甲3及び甲4?甲8に記載の典型的な開口部が記載されているに等しいといえる。」旨主張しているが、上記一致点に記載した様に、「C.前記中仕切体には、犬が出入り可能な仕切出入口が開口される」点は相違点でないと判断しているので、当該主張で結論が変わるものでは無い。
また、甲第1号証の「ベッドとトイレの間を板で仕切って区別する」、「この場合、赤ちゃん犬がふたつの部屋を自由に行き来できるスペースを開けておきます。」は、上記の如く、一般的な「C.前記中仕切体には、犬が出入り可能な仕切出入口が開口される」に相当する構成といえるものであるが、甲第3号証?甲第8号証各々に記載された、各個別構成が、それぞれ実質的に甲第1号証に記載されているに等しいとまでは、いえない。

<相違点1>
サークル本体が、本件特許発明1では「複数のパネルが連結された」サークル本体であるのに対して、甲1発明ではその様に特定したものでない点。

<相違点2>
本件特許発明1では、中仕切体には、犬が出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに、「この仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ、この仕切扉」を介して住居スペースとトイレスペースとの間を犬が行き来できるように「或いは行き来が規制されるように」構成されているのに対し、
甲1発明は、「仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ、」「行き来が規制されるように」構成されたものでない点。

イ.相違点についての検討
そこで、上記相違点1?2について検討する。

<相違点1について>
本件特許明細書においても、段落【0002】の「ぺット用サークルは、複数のパネルを連結し、これらのパネルで囲まれた内部にペットを収容するものであって、サークルの内部空間は、仕切られることなく一つ空間として構成されているものが一般である」と記載している様に、サークルを複数のパネルが連結されたものとすることは周知技術であり、引用発明のサークル本体を、該周知技術のものとして、本件特許発明1の相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点2について>
(a)請求人は審判請求書の第13頁第16行?第14頁第15行「7.(4)-2 相違点イについて(引用発明1に引用発明2を適用する動機付け)」において、
「・・引用発明2は、ハウス本体が居住ゾーンとトイレゾーンに区画され、両者の間には、犬が出入り可能な開口部が設けられるとともに、当該開口部を開閉する仕切り扉が設けられ、この仕切り扉を介して居住ゾーンとトイレゾーンとの間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されているものであるところ、「開口部を開閉する仕切り扉」は本件発明1の「仕切扉」に相当するから、引用発明1に引用発明2を適用することにより本件発明1に想到することが可能である。
・・引用発明2の課題は、「犬のトイレしつけ」の困難さを前提として、これを解消するために、居住ゾーンとトイレゾーンとが区画され、犬のトイレしつけが簡単で、しかも犬が清潔で快適に過ごすことができる、犬のトイレのしつけハウスを提供することであるところ、これは、・・引用発明1の課題と共通する。さらに、引用発明2と引用発明1とは、対象が犬のトイレしつけのためのサークル(ハウス)であって、その基本構造も、居住スぺースとトイレスペースとを区画する点において共通するから、引用発明1に引用発明2の「開口部を開閉する仕切り扉」という構成を適用することに動機付けがあることは明らかである。
・・本件発明1の効果も引用発明1及び引用発明2に記載のものから予測できる以上のものではない。」と主張しているので、当該主張について検討する。
(b)まず、甲2発明は、甲第2号証から認定されるものであるところ、甲第2号証全体からは、「ハウス本体が居住ゾーンとトイレゾーンに区画され、両者の間には、犬が出入り可能な開口部が設けられるとともに、当該開口部を開閉する仕切り扉が設けられ、この仕切り扉を介して居住ゾーンとトイレゾーンとの間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されているもの」とまで読みとれるものではなく、前記「1.(2)」に記載した様に、甲第2号証から客観的に認定出来る発明は、前記「1.(2)」の「甲2発明」の「あげたままで固定できる仕切りで、居住ゾーンとトイレゾーンに区画されており、
天井を開いて、居住ゾーンとトイレゾーンの間の仕切りを上げた状態で、犬をトイレゾーンに移動させた後、仕切りを閉めることができる」ものである。
(c)そして、甲1発明は、「ベッドとトイレの間を板で仕切って区別されており、
この場合、赤ちゃん犬がふたつの部屋を自由に行き来できるスペースを開けておく」ものであるので、請求人が主張する様に、甲1発明に甲2発明を適用するしたとしても、そこから想到される構成は、甲1発明の、「赤ちゃん犬がふたつの部屋を自由に行き来できるスペースを開け」た仕切りに替えて、甲2発明の「天井を開いて、居住ゾーンとトイレゾーンの間の仕切りを上げた状態で、犬をトイレゾーンに移動させた後、仕切りを閉めることができる」「あげたままで固定できる仕切り」とした構成であって、本件特許発明1の「C.前記中仕切体には、犬が出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに、
D.この仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ、この仕切扉を介して住居スペースとトイレスペースとの間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されている」構成ではない。
(d)本件特許発明1は、「トイレ仕付け用」サークルであって、上記相違点に係る仕切扉、中仕切体、住居スペース、トイレスペースの構成を備えることにより、仕切扉を開放し犬を住居スペースからトイレスペースに誘導する際、又は開放された開口を通って、犬が自発的に住居スペースからトイレスペースに移動した際、中仕切体の開口部以外はトイレスペースと住居スペースが仕切られているため、犬が元のスペースに戻ることが抑制され、仕切扉を迅速かつ容易に閉鎖できる、トイレ仕付け時の効果を有すると認められる。
(e)そうすると、本件特許発明1は、上記の相違点に係る構成を有し、上記(d)の効果を有するものであるのに対して、甲第1?3号証は(更に甲4?63号証も)、いずれも該効果を奏するために必要な、本件特許発明1の「トイレ仕付け用サークル」本体の「中仕切体には、犬が出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに、この仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ」に相当する構成が記載若しくは示唆されているものではなく、それらから上記(d)の効果を奏する本件特許発明1を容易に想到することはできない。
なお、甲第8号証第51頁には、「広めのサークルを用意してハウスとトイレを入れる。または、ハウスとサークルを連結させる」との記載の横に、ハウスとサークルを連結させた写真が掲載されているものの、当該構成は、ハウスとサークルを連結させたものであって、本件特許発明1の「トイレ仕付け用サークル」本体の「中仕切体には、犬が出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに、この仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ」に相当する構成といえる様なものでは無い。
(f)したがって、本件特許発明1は、その出願前に頒布された刊行物(甲第1号証ないし甲第3号証)に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。


(2)第2の無効理由について
(a)請求人は審判請求書の第14頁第16行?第15頁第5行「7.(4-3)本件特許を無効とすべき第2の無効理由(特許法第29条第2項)」において、
「本件の請求項2に係る特許発明(以下、「本件発明2」という)は、以下のとおりである。
『請求項1に記載のペットのトイレ仕付け用サークルにおいて、
前記仕切出入口の開放時および閉鎖時にそれぞれ仕切扉を係止する仕切出入口ロック手段が設けられたことを特徴とするペットのトイレ仕付け用サークル。』
本件発明2の特徴は、前記仕切出入口の開放時および閉鎖時にそれぞれ仕切扉を係止する仕切出入口ロック手段が設けられた点にある。
しかしながら、ペットなどの動物の移動をコントロールするために、仕切扉によって開口部(仕切出入口)を開放あるいは閉鎖するのであるから、当該仕切扉がロックされなければ動物の移動を確実にコントロールすることができず、仕切扉の役目を果たすことができない。
したがって、仕切扉を係止する仕切出入口ロック手段を設けることは仕切扉の目的、機能から至極当然のことであり、この程度のことは技術常識ないし周知技術といえる。
以上のことから、本件発明2は、技術常識ないしは周知技術と第1の無効理由における刊行物、周知技術から当業者が容易に発明することができるものであり、本件特許は特許法第123条の規定により無効である。」と主張しているので、当該主張について検討する。
(b)本件特許発明2は、本件特許発明1にさらに「前記仕切出入口の開放時および閉鎖時にそれぞれ仕切扉を係止する仕切出入口ロック手段が設けられた」との構成を付加したものであり、上記(1)で本件特許発明1が当業者が容易になし得たものであると認められない以上、上記(a)の技術常識、周知技術が存在しても、本件特許発明2が当業者が容易になし得たものであると認められない。


第5 むすび
以上のとおり、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件特許発明1、2を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-15 
結審通知日 2013-11-20 
審決日 2013-12-05 
出願番号 特願2005-356334(P2005-356334)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 昌哉  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 杉浦 淳
高橋 三成
登録日 2010-10-29 
登録番号 特許第4616162号(P4616162)
発明の名称 ペットのトイレ仕付け用サークル  
代理人 宇治 美知子  
代理人 大渕 美千栄  
代理人 布施 行夫  
代理人 上原 健嗣  
代理人 上原 理子  
代理人 池村 正幸  
代理人 ▲高▼橋 淳  
復代理人 池田 恭子  
代理人 倉内 義朗  

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