• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16L
管理番号 1299057
審判番号 不服2013-20374  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-21 
確定日 2015-03-23 
事件の表示 特願2010-183689「配管用フロアバンド」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月16日出願公開、特開2010-281455〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成13年2月20日に出願した特願2001-43678号の一部を平成22年8月19日に新たな出願としたものであって、平成25年7月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成25年10月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に、特許請求の範囲及び明細書を補正する手続補正書が提出された。その後、平成26年7月31日付けで当審において拒絶理由が通知され、同年9月30日に意見書及び手続補正書(同年10月29日付け手続補正により補正された)が提出されたものである。
そして、本願の請求項1及び2に係る発明は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、平成26年9月30日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
床面等の固定面から一定の高さに立ち上げた状態で複数本の配管を並設状態で支持する配管用フロアバンドにおいて、
3本以上のボルトを立設状態で並設固定してあり、前記固定面に取り付けられる1つの基板と、隣り合った全てのボルト間で配管を抱持する半割環状バンド部と、前記3本以上のボルトを各々挿通するボルト孔が形成されている取付部とを有する上・下一対の連接ブリッジ体と、
該上・下一対の連接ブリッジ体の前記取付部の各々を前記3本以上のボルトに前記基板から一定の高さに固定するため該取付部の上・下に位置する2つ1組のナットと、
を有し、
前記上・下一対の連接ブリッジ体が、上・下別体の帯状体に間隔を空けて半割環状バンド部が複数個並設されるように曲折され、且つ左・右端縁と半割環状バンド部の間に前記ボルトに対する前記取付部を有する帯状上連接ブリッジ体と帯状下連接ブリッジ体とから構成されており、且つ前記帯状上連設ブリッジ体の取付部の各ボルト孔の内の左・右端縁に位置するいずれか一つが、ボルト孔のままであると共に、
この端縁ボルト孔を除く他の2以上の全てのボルト孔が、配管軸と略平行方向に開放部を有する切込溝であり、
前記帯状上連接ブリッジ体の各半割環状バンド部が、前記切込溝ではないボルト孔を支点として枢支回動することによって、配管の抱持状態を開放可能な構成であることを特徴とする配管用フロアバンド。」

2.刊行物記載の発明または事項
(1)刊行物1
当審の拒絶理由で引用した、本願の出願前に国内で頒布された刊行物である特開平10-47542号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パイプを一定の高さに固定する配管用フロアバンドに関する。」(段落【0001】)
(イ)
「【0018】図1において、1は2本のボルト11・12を立設状態で備えた基板である。13・13は床面等の固定面に取りつける際に、釘やねじ等の固定具を挿通するための固定用孔である。
【0019】前記基板のボルト11・12には、ナット4・5がそれぞれ螺合されており、該ナット4・5上には、パイプを下から抱持支持するバンド部31と該バンド部31の両端にボルト孔34・35が形成されている取付部32・33とを有する下ブリッジ3が取り付けられている。該下ブリッジ3の上には、パイプを上から抱持するバンド部21と該バンド部21の両端にボルト孔24・25(25は切込溝である)が形成されている取付部22・23とを有する上ブリッジ2が取りつけられており、ナット6・7が前記ボルト11・12にそれぞれ螺合されている。」(段落【0018】、【0019】)
(ウ)
「【0021】上記した構成によって、上ブリッジ2の一方の取付部23のボルト孔が配管軸と略平行方向に開放部を有する切込溝25であるため、ナット7をボルト12に螺合したままの状態でも上ブリッジ2の取付部23はボルト12に挿通されていないので、バンド部21及びバンド部31の間の抱持位置へパイプを案内することができ、パイプを抱持位置へ案内した後、切込溝25にボルト12を挿通させてナット7及びその他のナット4・5・6を締め付けることによりパイプを抱持支持した状態で固定することができる。従って、作業時に特に紛失し易い部品であるナット7を外すことなくボルト12に螺合させたままで作業ができる。」(段落【0021】)

また、図面から次の事項が看取しうる。
(エ)
【図1】から、上ブリッジ2の切込溝ではないボルト孔24を支点として回動することが看取しうる。

上記記載事項(ウ)及び(エ)の記載から、上ブリッジ2が切込溝でないボルト孔24を支点として回動することで、パイプを抱持した状態または解放した状態としうると認められる。
そうすると、上記の記載事項(ア)?(エ)及び【図1】の開示内容からみて、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明〕
「パイプを一定の高さに固定する配管用フロアバンドであって、
ボルト11、12を立設状態で備えた、床面等の固定面に取りつけられる基板1と、
ボルト11、12には、ナット4、5がそれぞれ螺合されており、該ナット4、5上には、パイプを下から抱持支持するバンド部31と該バンド部31の両端にボルト孔34、35が形成されている取付部32、33とを有する下ブリッジ3が取り付けられ、
該下ブリッジ3の上には、パイプを上から抱持するバンド部21と該バンド部21の両端にボルト孔24、25(25は切込溝である)が形成されている取付部22、23とを有する上ブリッジ2が取りつけられており、
ナット6、7が前記ボルト11、12にそれぞれ螺合され、
上ブリッジ体2が切込溝でないボルト孔24を支点として回動することで、パイプを抱持した状態または解放した状態としうる
配管用フロアバンド。」

(2)刊行物2
当審の拒絶理由で引用した、本願の出願前に国内で頒布された刊行物である実願平4-17718号(実開平5-79163号)のCD-ROM(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(オ)
「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、ホース・ケーブル部品のクランプ装置の改良に関するものである。」(段落【0001】)
(カ)
「【0006】
本考案は上記の問題点に着目し、多数のホース・ケーブル部品を拘束できるクランプ装置の組み付け作業を容易に行えるようにすることを目的とする。」(段落【0006】)
(キ)
「【0011】
図1に示すように、一対のステー1,2の間に波板状のプレート3,4が掛け渡され、各プレート3,4の間に図示しないホース・ケーブル部品が拘束されるようになっている。
【0012】
各プレート3,4は互いに対向する4つの凹部5,6と、それぞれの端部に位置して互いに接合する端部フランジ7,8と、各凹部5,6の間に位置して互いに接合する中間フランジ9,10とを有している。
【0013】
各凹部5,6はその断面が半円弧形に湾曲するように形成され、それぞれの間に図示しないホース・ケーブル部品が挟持される。」(段落【0011】?【0013】)

(3)刊行物3
当審の拒絶理由で引用した、本願の出願前に国内で頒布された刊行物である実願昭58-59573号(実開昭59-164881号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ク)
「本考案はFF温風機の延長給排気管等のように、並設された二本の管体を連結する装置に関するものである。」(明細書2頁1?3行)
(ケ)
「以下その一実施例を第3図?第6図を用いて説明する。図において1および2はその開口端近くに環状凸部3及び4を有する排気管で、これら両排気管1,2は凸部3,4が隣接する如く嵌合し接続してある。5はこの排気管1,2と並行に配した給気管、6および7は上記排気管1,2と給気管5とを連結するための連結金具、・・・である。」(明細書3頁5?13行)

3.対比、判断
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「パイプ」、「ボルト11、12」、「基板1」、「バンド部21、31」、「ボルト孔24、25、34、35」、「取付部22、23、32、33」、「上ブリッジ2と下ブリッジ3」、「ナット4?7」は、前者の「配管」「ボルト」、「基板」、「半割環状バンド部」、「ボルト孔」、「取付部」、「上・下一対の連接ブリッジ体」、「2つ1組のナット」にそれぞれ相当する。
後者の「パイプを一定の高さに固定する配管用フロアバンド」は、前者の「床面等の固定面から一定の高さに立ち上げた状態で複数本の配管を並設状態で支持する配管用フロアバンド」と、「床面等の固定面から一定の高さに立ち上げた状態で配管を支持する配管用フロアバンド」である限りにおいて一致する。
後者の上ブリッジ2の「ボルト孔24」は、前者の「帯状上連設ブリッジ体の取付部の各ボルト孔の内の左・右端縁に位置するいずれか一つがボルト孔のままである」、「端縁ボルト孔」に相当し、後者の切込溝である「ボルト孔25」と前者の「端縁ボルト孔を除く他の2以上の全てのボルト孔が、配管軸と略平行方向に開放部を有する切込溝であ」ることとは、「端縁ボルト孔を除く他のボルト孔が配管軸と略平行方向に開放部を有する切込溝であ」る限りにおいて一致する。
後者の「上ブリッジ体2が切込溝でないボルト孔24を支点として回動することで、パイプを抱持した状態または解放した状態としうる」ことと、前者の「帯状上連接ブリッジ体の各半割環状バンド部が、切込溝ではないボルト孔を支点として枢支回動することによって、配管の抱持状態を開放可能な構成であること」とは、「帯状上連接ブリッジ体の半割環状バンド部が、切込溝ではないボルト孔を支点として枢支回動することによって、配管の抱持状態を開放可能な構成であること」である限りにおいて一致する。
してみると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
〔一致点〕
「床面等の固定面から一定の高さに立ち上げた状態で配管を支持する配管用フロアバンドにおいて、
ボルトを立設状態で並設固定してあり、前記固定面に取り付けられる1つの基板と、隣り合った全てのボルト間で配管を抱持する半割環状バンド部と、前記ボルトを各々挿通するボルト孔が形成されている取付部とを有する上・下一対の連接ブリッジ体と、
該上・下一対の連接ブリッジ体の前記取付部の各々を前記ボルトに前記基板から一定の高さに固定するため該取付部の上・下に位置する2つ1組のナットと、
を有し、
前記上・下一対の連接ブリッジ体が、上・下別体の帯状体に半割環状バンド部が曲折され、且つ左・右端縁に前記ボルトに対する前記取付部を有する帯状上連接ブリッジ体と帯状下連接ブリッジ体とから構成されており、且つ前記帯状上連設ブリッジ体の取付部の各ボルト孔の内の左・右端縁に位置するいずれか一つが、ボルト孔のままであると共に、
この端縁ボルト孔を除く他のボルト孔が、配管軸と略平行方向に開放部を有する切込溝であり、
前記帯状上連接ブリッジ体の半割環状バンド部が、前記切込溝ではないボルト孔を支点として枢支回動することによって、配管の抱持状態を開放可能な構成であることを特徴とする配管用フロアバンド。」
〔相違点1〕
本願発明は、「複数本の配管を並設状態で支持する」ものであり、上・下一対の連接ブリッジ体が、上・下別体の帯状体に「間隔を空けて半割環状バンド部が複数個並設され」、帯状上連接ブリッジ体の「各」半割環状バンド部が枢止回動することで配管の抱持状態を開放可能であるのに対して、引用発明は、1本のパイプを支持するものであり、上・下ブリッジが1つのバンド部しか有していない点。
〔相違点2〕
本願発明は、「3本以上のボルト」が基板に立設状態で並設固定してあり、上・下一対の連接ブリッジ体には「前記3本以上のボルトを各々挿通するボルト孔が形成されている取付部」が、「半割環状バンド部の間に」設けられ、端縁ボルト孔を除く「他の2以上の全ての」ボルト孔が、配管軸と略平行方向に開放部を有する切込溝であるのに対して、引用発明は、ボルトが2本であり、ボルト孔が形成された取付部は左・右端縁にしか形成されておらず、切込溝であるボルト孔は1つである点。

上記各相違点について以下検討する。
〔相違点1について〕
複数の円弧状の配管抱持部を有した帯状の部材により、複数本の配管を並設状態で支持することは、本願出願前周知の事項であり、例えば刊行物2及び3の各々に記載されている(上記2.(2)の「波板状のプレート3,4」や、同(3)の「連結金具6、7」を参照)。
してみると、引用発明を、複数のパイプを保持するように上・下のブリッジに複数のバンド部を設け、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、上記周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることといえる。
〔相違点2について〕
上述のとおり、引用発明を、複数のパイプを保持するように上・下のブリッジに複数のバンド部を設けることは、当業者が容易に想到し得ることであり、その際、各パイプの重量や、各パイプを支持する高さを維持する必要性等々に応じて、上・下のブリッジのバンド部の間をボルトで支持するようにボルト孔を形成した取付部とすることは、当業者が適宜になし得る設計変更といえる。そして、引用発明は、上ブリッジ体が切込溝でないボルト孔を支点として回動する機能を有しており、この機能を損なわないよう、前記複数のバンド部間のボルト孔を、回動する側の端部のボルト孔25と同様の切欠溝とすることは、前記設計変更に伴い当業者が当然に考慮すべき事項といえる。
してみれば、引用発明を、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、上記周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることといえる。

そして、本願発明の奏する作用及び効果を検討しても、引用発明及び周知の事項から予測できる程度のものであって格別のものとは認められない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-26 
結審通知日 2015-01-13 
審決日 2015-01-26 
出願番号 特願2010-183689(P2010-183689)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊島 ひろみ  
特許庁審判長 大熊 雄治
特許庁審判官 平田 信勝
出口 昌哉
発明の名称 配管用フロアバンド  
代理人 坂口 信昭  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ