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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1299098
審判番号 不服2014-808  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-17 
確定日 2015-04-14 
事件の表示 特願2012-516465「アップリンク同期を実装する方法およびデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月29日国際公開、WO2010/148532、平成24年12月 6日国内公表、特表2012-531128、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2009年(平成21年)6月22日を国際出願日とする出願であって、平成25年2月20日付けで拒絶理由が通知され、同年6月14日付け手続補正がなされ、同年10月3日付けで拒絶査定され、これに対し、平成26年1月17日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。
そして、平成26年12月18日付けで、当審により拒絶理由が通知され、それに対して、平成27年3月11日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされたものである。



第2.本願発明
本願の請求項1?12に係る発明は、平成27年3月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである(なお、下線は請求人が付与した。)。

「【請求項1】
アップリンク同期を確立するように非サービング基地局と協調したサービング基地局によって実行される方法であって、
専用物理ランダム・アクセス・チャネル(PRACH)伝送を実施するようにユーザ機器(UE)に命令するステップと、
前記サービング基地局が導出した第1のタイミング情報と、複数の非サービング基地局から受信した第2のタイミング情報とに従ってタイミング・アドバンス(TA)を計算するステップであって、前記タイミング・アドバンス(TA)は、関係する基地局にアップリンク伝送が到達するタイミングが前記関係する基地局の巡回プレフィックス(CP)によってカバーされることを保証するように計算されるステップと、
前記タイミング・アドバンスを前記UEに送信し、前記タイミング・アドバンスに従って前記関係する基地局と前記UEが前記アップリンク同期を確立することを可能にするステップとを含み、
前記第1のタイミング情報および前記第2のタイミング情報が、前記UEによって実施される前記専用PRACH伝送の伝播遅延に関連付けられ、
前記複数の非サービング基地局が、前記アップリンク同期を確立するための前記タイミング・アドバンスを生成することを不可能にする非サービング基地局を含む場合には、その非サービング基地局によって提供される前記第2のタイミング情報が除外され、
前記タイミング・アドバンスが、前記第1のタイミング情報と、除外後に前記複数の非サービング基地局内に残される残りの非サービング基地局によって提供される前記第2のタイミング情報とに従って再計算される
方法。」



第3.原査定の理由について
1.原査定の理由
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
請求項:1?14
引用文献:1、2
備考:
・請求項1、2、6、8、10及び12?14について
引用文献1には、Inter-eNBs におけるULCoMPの遅延制御において、ランダムアクセス応答を用いて算出した各基地局の遅延情報に基づいてTAを調整し、アップリンク同期を可能とすることが記載(2 Approaches in [2], 3 Proposed Idea, Table I 参照)されている。
そして、引用文献1のULCoMPの遅延制御から、本願請求項1、2、6、8、10及び12?14に係る発明は当業者が容易に想到し得ることである。

・請求項3、4、7及び11について
遅延情報を測定する際に、未使用のランダムアクセスコードを用いることは当業者が適宜為し得ることである。
また、非サービング基地局において、測定UEを判別するために、ランダムアクセスコードの一致に基づいて判断することは常套手段である。
そして、引用文献1のULCoMPの遅延制御から、本願請求項3、4、7及び11に係る発明は当業者が容易に想到し得ることである。

・請求項5及び9について
引用文献2には、TAの調整において receiving time window を超えるセルについてはサービングすべきでないということが示唆(4.2 Uplink signal detection performance of the signals outside receiving time window, "Therefore, a cell should not serve the UE whose arriving time instance is outside the receiving time window of that cell")されている。
そして、当該示唆に基づいて、引用文献1のULCoMPの遅延制御において、適切なTAを生成できないセルについてはサービングさせない(除外する)ようにすることは当業者が容易に想到し得ることである。

引 用 文 献 等 一 覧
1.ITRI, CHTTL,Timing-advance issue in uplink CoMP,3GPP TSG RAN WG1 Meeting #57 R1-091718,2009年 5月 8日
2.Huawei, RITT, Texas Instruments, CMCC,Discussion on Timing Advance issue in CoMP & Text Proposal,3GPP TSG RAN WG1 meeting #55bis R1-090518,2009年 1月16日


2.原査定の理由の判断
2-1.引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された「ITRI, CHTTL, ”Timing-advance issue in uplink CoMP”, 3GPP TSG RAN WG1 Meeting#57 R1-091718, 2009年5月8日」(以下、「引用文献1」という)には、図面とともに、次の事項が記載されている(なお、下線は当審が付与した。)。

(ア)「1 Introduction
Coordinated multi-point (CoMP) transmission/reception [1] has been considered as an important tool in LTE-Advanced system to improve the throughput of cell-edge UEs. In this contribution, we mainly focus on inter-eNBs scenario and not preclude the scenario of intra-eNBs coordination. As shown in Figure 1, a cell-edge UE transmits uplink signals to different cell-sites in active CoMP set. In comparison to the uplink signal arriving at serving cell (i.e., cell-2 in Figure 1), the signals arriving at other cell-sites could be much early or late especially for heterogeneous cells, where the serving cell is the only cell that transmits timing-advance (TA) commands to the UE. In such a case, as mentioned in [2], poor detection performance could happen in different cell-sites, and thus limits CoMP benefits. To avoid or mitigate this effect, [2] proposes to jointly use extended cyclic-prefix (ECP) and new TA adjustment scheme based on the minimum transmission time delay in active CoMP set. 」
(当審訳:
1 序論
協調マルチポイント(CoMP)送信/受信[1]は、セル端のUEのスループットを向上させるために、LTE-Advancedシステムにおける重要なツールと考えられてきた。この寄稿では、我々は主にeNB間のシナリオに焦点を当て、eNB内の調整のシナリオを排除する。図1に示すように、セル端のUEは、アクティブなCoMPセット内の異なるセルサイトにアップリンク信号を送信する。特にセルの不均質のため、サービングセル(すなわち、図1のセル2)に到達する上り信号と比較して、他のセルサイトに到達する信号は、はるかに速くなったり遅くなったりする。ここで、サービングセルはUEへタイミングアドバンス(TA)コマンドを伝送する唯一のセルである。このような場合には、[2]で言及したように、貧弱な検出性能が異なるセルサイトで発生し、CoMPの利点を制限する。この影響を回避または軽減するために、[2]は、拡張されたサイクリックプリフィックス(ECP)と、アクティブなCoMPセットに最少伝送時間遅延に基づいた新たなTA調整スキームとを用いることを提案する。)

(イ)「2 Approaches in [2]
The main idea of approaches in [2] is estimating the minimum delay spread in each active CoMP cell-site, and sharing this information with serving cell via backhauling such that serving cell can adjust UE's TA by downlink signalling. Figure 2 shows the concept. With the TA adjustment, uplink signals to different cell-sites would be covered by the CP window, where the CP is selected as ECP in [2]. 」
(当審訳:
2 [2]のアプローチ
[2]のアプローチの主なアイデアは、アクティブなCoMPセルサイトの各々で最少遅延伝搬を推定し、ダウンリンク情報によるUEのTAを調節することができるこの情報をバックホールを介してサービングセルで共有する。図2はその概念を示す。TA調整にともなって、異なるセルサイトへのアップリンク信号はCPウィンドウによってカバーされる。ここで、そのCPは[2]でECPとして選択される。 )

(ウ)「3 Propossed Idea
As mentioned above, one important motivation of the proposed idea is that sharing delay information via backhauling (X2 interface) could be very time-consuming. To estimate the overall latency for an uplink CoMP UE from unsynchronization to transmission of data, we use the analysis result [3] to show Table I, where y could be more than 20 ms and the overall latency may exceed 40 ms. 」
(当審訳:
3 提案されたアイデア
上述したように、提案されたアイデアの一つの重要な動機は、バックホール(X2インタフェース)を介して、遅延情報を共有することは非常に時間がかかるかもしれないということである。非同期からデータの送信までのアップリンクのCoMPのUEの全体的な待ち時間を推定するため、表Iに示された分析結果[3]を用いる。ここで、yは20ms以上とすることができ、全体的な待ち時間が40msを超える可能性ある。)

(エ)表Iは、非同期UEのアクティブ遷移するためのアップリンク開始休眠を示しており、RACHスケジューリング期間のための平均遅延(RACHサイクル=10ms)が5msであることが記載されている。

このため、上記摘示事項(ア)?(エ)から、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

「 セル端のUEは、アクティブなCoMPセット内の異なるセルサイトにアップリンク信号を送信した場合、サービングセルに到達する上り信号と比較して、他のセルサイトに到達する信号は、はるかに速くなったり遅くなったりするため、
アクティブなCoMPセルサイトの各々で最少遅延伝搬を推定し、ダウンリンク情報によるUEのTAを調節することができるこの情報をバックホールを介してサービングセルで共有することで、
TA調整にともなって、異なるセルサイトへのアップリンク信号はCPウィンドウによってカバーされるようにする
方法。」

2-2.引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された「Huawai, RITTI, Texas Instrument, CMCC, ”Discussion on Timing Advance issue in CoMP & Text Proposal”, 3GPP TSG RAN WG1 Meeting#55bis R1-090518, 2009年1月16日」(以下、「引用文献2」という)には、図面とともに、次の事項が記載されている(なお、下線は当審が付与した。)。

(オ)「2Uplink time delay analysis in CoMP joint reception mode
In the common communication systems, all UEs would adjust their uplink transmission time instance so that their signals arrive at the network at approximately the same time instance (synchronization requirement). In LTE R8, a timing advance (TA) command is sent to each UE by eNB to compensate for the individual propagation delay between the UE and the network to ensure the above synchronization requirement. Moreover, in order to properly receive the uplink signals, the UEs' signals are expected to arrive at the receiver at around the OFDM CP starting point so that multi-path delay would be absorbed by CP. The UEs whose signal arrive earlier than the CP starting point or later than the CP have poor detection performance and need to adjust the uplink transmission time instance via TA. In this paper, the CP range is called the cell receiving time window. It is known that eNB would maintain the uplink timing control for each UE by sending TA command on a per-need basis. 」
(当審訳:
2 CoMP協調受信モードにおけるアップリンク時間遅延分析
一般的な通信システムでは、全てのUEがアップリンク伝送時間値を調整する(同期要求)。その結果、それらの信号はネットワークにほぼ同時間値に到着する。LTE R8では、上記同期要求を確保する、UEとネットワークとの間の個々の伝搬遅延を補うために、タイミングアドバンス(TA)コマンドがeNBによって各UEへ送信される。また、アップリンク信号を適切に受信するために、UEの信号はOFDM CPの開始点付近で受信機に到着することが期待される。その結果、マルチパス遅延はCPによって吸収される。その信号がCPの開始点より速く又はCPより遅く到着したUEは乏しい受信性能を有し、TAを介してアップリンク伝送時間値を調整することが必要である。本論文では、CPレンジをセル受信時間ウィンドウと呼ぶ。eNBは、基地局ごとの必要に応じて、TAコマンドを送信することにより、各UEのためにアップリンクタイミング制御を維持することが知られている。)

(カ)「2.1 CoMP joint reception mode
In CoMP joint reception mode, a UE would be jointly served by multiple cells, which compose the serving cell set for the UE. The eNB will choose and maintain the serving cell set for the UE based on the channel condition, e.g. RSRP and/or path loss, from this UE to candidate cells. The cell with best channel condition in the serving cell set is recommended to be the anchor cell [4], from which the UE detects the system information and its dedicated control signalling of multi-cell coordination information. Moreover, A UE will synchronize to one cell within the serving cell set, which is called TA cell. It is noted that the anchor cell isn't bound to be the TA cell. 」
(当審訳:
2.1 CoMP協調受信モード
CoMP協調受信モードでは、UEは、UEにとってサービングセルのセットを構成する複数のセルによって協調してサービスされる。eNBは、このUEから候補セルまでのチャネルの状態、例えば、RSRP及び/又はパス損失に基づいて、UEにとってのサービングセルのセットを選択・維持する。サービングセルで最もよいチャネル状態のセルはアンカーセル[4]となることが推奨され、そのアンカーセルからUEはシステム情報とマルチセル整合情報の専用制御信号を受信する。また、UEは、TAセルと呼ばれる、サービスセル内の1つのセルに同期する。アンカーセルはTAセルであることに拘束されないことに留意されたい。)

(キ)「2.2 TA issue for CoMP joint reception mode
It has been pointed out that the signal propagation delays from UE to different cells are typically different [1][2], thus the UE's signal may arrive at some of its non-TA cells at the time instance outside the receiving time window, e.g.: (t denotes UE's signal arriving time instance and denotes CP duration)
・ UE2 is synchronized to cell2, thus UE2's uplink signals will arrive at cell2 within the receiving time window, i.e. ;
・ UE1 is synchronized to cell1 and is far away from cell2, thus UE1's uplink signals may arrive at cell2 later than the receiving time window, i.e. ;
・ UE3 is synchronized to cell3 and is nearer to cell2, thus UE3's uplink signals may arrive at the cell2 earlier than the receiving time window, i.e. .
Therefore in CoMP joint reception mode, UEs' signals to non-TA cells in the serving cell set may arrive at the instance outside the receiving time window of that cell, and may result in poor detection performance. 」
(当審訳:
2.2 CoMP協調受信モードのためのTA問題
UEから異なるセルへの信号伝搬遅延が一般的に異なることは指摘されている[1][2]。このように、UEの信号はその非TAセルの幾つかに受信タ時間ウィンドウの範囲外の時間値で到着する。例えば、(tはUEの信号到着時間値を示し、TCPはCP持続時間をしめす)
・ UE2はセル2に同期する。したがって、UE2のアップリンク信号はセル2に受信時間ウィンドウ内、すなわち、0≦t<TCP、に到着する。
・ UE1はセル1に同期し、セル2から遠く離れている。したがって、UE1のアップリンク信号はセル2に受信時間ウィンドウより遅く、すなわち、t>Tcpに到着する。
・ UE3はセル3に同期し、セル2のより近い。したがって、UE3のアップリンク信号はセル2に受信時間ウィンドウより速く、すなわち、t<0に到着する。
したがって、CoMP協調受信モードでは、サービングセルのセットの内の非TAセルへのUEの信号はセルの受信時間ウィンドウの範囲外の値で到着するかもしれない。そして、結果として乏しい受信性能となるかもしれない。)

このため、上記摘示事項(オ)?(キ)から、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

「 CoMP協調受信モードでは、UEは、UEにとってサービングセルのセットを構成する複数のセルによって協調してサービスされ、
マルチパス遅延をCPによって吸収することで、アップリンク信号を適切に受信するために、その信号がCPの開始点より速く又はCPより遅く到着したUEは、TAを介してアップリンク伝送時間値を調整することが必要であるため、タイミングアドバンス(TA)コマンドがeNBによって各UEへ送信される
方法。」

2-3.対比
本願発明と引用発明1とを比較すると、以下の事項がいえる。

引用発明1は、「TA調整にともなって、異なるセルサイトへのアップリンク信号はCPウィンドウによってカバーされるようにする」ものであるから、「タイミング・アドバンス(TA)は、関係する基地局にアップリンク伝送が到達するタイミングが前記関係する基地局の巡回プレフィックス(CP)によってカバーされることを保証するように計算される」ものであるといいえるとともに、このように計算するステップを含んでいるといいえる。
してみると、引用発明1は、本願発明と同様に、「タイミング・アドバンス(TA)は、関係する基地局にアップリンク伝送が到達するタイミングが前記関係する基地局の巡回プレフィックス(CP)によってカバーされることを保証するように計算されるステップ」を含んでいるといえる。

引用発明1は、「ダウンリンク情報によるUEのTAを調節することができるこの情報をバックホールを介してサービングセルで共有する」ものであるとともに「TA調整にともなって、異なるセルサイトへのアップリンク信号はCPウィンドウによってカバーされるようにする」ものである。
してみると、引用発明1は、本願発明と同様に、「前記タイミング・アドバンスに従って前記関係する基地局と前記UEが前記アップリンク同期を確立することを可能にするステップ」を含んでいるといえる。

してみると、本願発明と引用発明1とは、以下の点で、一致する。

(一致点)
タイミング・アドバンス(TA)は、関係する基地局にアップリンク伝送が到達するタイミングが前記関係する基地局の巡回プレフィックス(CP)によってカバーされることを保証するように計算されるステップと、
前記タイミング・アドバンスに従って前記関係する基地局と前記UEが前記アップリンク同期を確立することを可能にするステップとを含む
方法。

(相違点1)
本願発明は、「アップリンク同期を確立するように非サービング基地局と協調したサービング基地局によって実行される方法」であるのに対して、引用発明1では、該方法ではない点。

(相違点2)
本願発明は、「専用物理ランダム・アクセス・チャネル(PRACH)伝送を実施するようにユーザ機器(UE)に命令するステップ」を含んでいるのに対して、引用発明1は、該ステップを含んでいない点。

(相違点3)
本願発明は、前記サービング基地局が導出した第1のタイミング情報と、複数の非サービング基地局から受信した第2のタイミング情報とに従ってタイミング・アドバンス(TA)を計算するステップ」を含んでいるのに対して、引用発明1は、該ステップを含んでいない点。

(相違点4)
本願発明は、「前記タイミング・アドバンスを前記UEに送信し」ているのに対して、引用発明1は、該事項について記載されていない点。

(相違点5)
本願発明は、「前記第1のタイミング情報および前記第2のタイミング情報が、前記UEによって実施される前記専用PRACH伝送の伝播遅延に関連付けられ」ているのに対して、引用発明は該事項について記載されていない点。

(相違点6)
本願発明は、「前記複数の非サービング基地局が、前記アップリンク同期を確立するための前記タイミング・アドバンスを生成することを不可能にする非サービング基地局を含む場合には、その非サービング基地局によって提供される前記第2のタイミング情報が除外され、前記タイミング・アドバンスが、前記第1のタイミング情報と、除外後に前記複数の非サービング基地局内に残される残りの非サービング基地局によって提供される前記第2のタイミング情報とに従って再計算される」のに対して、引用発明は該事項について記載されていない点。
方法。

2-4.当審の判断
上記相違点について検討する。

引用発明2は、上記「2-2.引用文献2」に記載したように、
「 CoMP協調受信モードでは、UEは、UEにとってサービングセルのセットを構成する複数のセルによって協調してサービスされ、
マルチパス遅延をCPによって吸収することで、アップリンク信号を適切に受信するために、その信号がCPの開始点より速く又はCPより遅く到着したUEは、TAを介してアップリンク伝送時間値を調整することが必要であるため、タイミングアドバンス(TA)コマンドがeNBによって各UEへ送信される
方法。」
であって、上記相違点1?6に示した本願発明の発明特定事項のいずれにも該当するものではない。
そして、上記相違点1?6に示した本願発明の発明特定事項は当業者にとって周知・慣用な事項であるとも認めらない。

このため、引用発明1において上記相違点に示した本願発明の特定特定事項を適用することが当業者にとって容易になし得たものであるとはいえない。

2-5.まとめ
したがって、相違点1?6について当業者が容易になし得たものであるとはいえないため、本願発明は引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
また、請求項5、8、11に係る発明は、本願発明と同様な発明特定事項を有し、請求項2?4、6、7、9、10、12は実質的に本願発明をさらに限定したものに相当するので、本願発明と同様に、当業者が引用発明1及び2に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。



第4.当審拒絶理由について
1.当審の拒絶理由の概要
平成26年12月18日付けで、当審より通知された拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の理由は、この出願の請求項1?14に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された「Texas Instruments, ”Enabling Coordinated Multi-Point Reception”, 3GPP TSG RAN WG1 #55 R1-084448, 2008年11月10日」(以下、「引用文献3」という。)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。


2.引用文献
当審で通知した拒絶の理由で引用された引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている(なお、下線は当審が付与した。)。

(ア)「1.Introduction
A number of advanced features [3] are being considered to enhance the cell throughput and/or the cell - edge throughput of the E-UTRA, during the LTE - A study stage. This document presents some issues with coordinated multi - point reception, and how they can be overcame. Also, initial study of throughput enhancements through Macro-diversity (via cooperating receiver units) is shown. With coordinated multi - point reception (macro - diversity), received signals from multiple cooperating units are combined and processed at a single location (which may be different for different UEs). In different instances, cooperating units can be separate e-NodeBs, remote - radio units (RRUs), Relays etc. Main issue is that: coordinated multi - point reception requires coordinated multi - point synchronisation. 」
(当審訳:
1.序論
LTE-Aの研究段階の間、向上した特徴[3]はE-UTRANのセルのスループット、及び/又は、セルエッジのスループットの向上するために考慮されている。この文書は多地点協調受信が有する課題とそれをどのように克服するかを紹介する。また、マクロ-ダイバーシティ(協働する受信ユニットを介して)によるスループットの向上の当初の研究が紹介される。多地点協調受信(マクロ-ダイバーシティ)にともない、複数の協働ユニットから受信する信号は、(異なるUEに対して異なる)1つの地点で結合または処理される。別の事例では、協働ユニットはe-NodeB、遠隔無線ユニット(RRUs)、中継機、その他である。主な課題は、多地点協調受信が協調する多地点の同期を要求されることである。 )

(イ)「2.Enabling Coordinated Multi - Point Reception
2.1. Synchronisation Issues
A problem which occurs in coordinated multi - point reception is that signal propagation delays, from the UE to different cooperating units, are typically different. This is shown in Figure 1.
As common in any communication system, a proper receiver operation is conditioned on appropriate timing synchronisation with the transmitter. In order to enable coordinated multi - point reception, the UE should be simultaneously synchronised to both cooperating unit receivers. In certain cases, this would be practically impossible to achieve; for example, whenever |τ1-τ2| exceeds cyclic prefix duration. However, in most other cases, it is possible to achieve simultaneous synchronisation to different cooperating units.
As in any other OFDM - based system, the receiver timing can be regarded as a reference point for synchronisation. All UEs talking to the receiver should adjust their transmission timing so that their signals arrive approximately simultaneously (within CP tolerance) to the receiver. In Rel. 8, a timing advance (TA) commands are sent to the UE to compensate for the propagation delay in the channel, where the propagation delay is commonly understood to be the first arriving path. For example, in case of Figure 1, a TA command: advancement by τ1, could be transmitted to the UE, so that the CP removal absorbs all the trailing paths from the UE to the cooperating unit 1. In certain implementations of Rel. 10; however, the UE is expected to be heard by cooperating receivers at two different cooperating units, with different propagation delays, as shown in Figure 1. Consequently, TA commands ought to depend on propagation delays to all, or most of the, cooperating units. Subsequent section addresses several possibilities for achieving this.

2.2. Achieving Network Synchronisation: First Option
First option for achieving multi - point synchronisation is based on the concept of serving/primary cooperating unit. For instance, this can be a serving Rel. 10 e-NodeB. The non - serving (second) cooperating unit, which still participates in signal detection for the UE, measures the propagation delay τ2 from the UE to the itself (cooperating unit 2), as shown in Figure 2. Mechanisms for this are already existent in Rel. 8: including RACH, and the use of sounding reference signals (SRS). It is for FFS whether the UE should be asked to transmit Rach or SRS specifically to the second cooperating unit. Inferences f(τ2) on the propagation delay can be transmitted to the primary/serving cooperating unit 1. For example, this could be either quantization of the propagation delay τ2 or alternatively, even a TA suggestion from the stand - point of cooperating unit 2. The primary cooperating unit then processes all the needed information and decides on the TA command which is sent to the UE, as illustrated in Figure 2 below.
Solution described in Figure 2 is perhaps more appropriate for the case where cooperating units are actual Rel 10. e-NodeBs. However, such functionality may also be built into some more advanced implementations of remote radio units. In general, a measurement based on signal time delay, could be defined by the measurement spec. The signal time delay is expected to be UE - specific. This measurement can be communicated either to the network or directly to another cooperating unit.」
(当審訳:
2.多地点協調受信の可能化
2.1.同期化問題
多地点協調受信で生じる問題は、UEからそれぞれの協働ユニットまでの信号伝搬遅延が概して異なることである。これは、図1に示される。
任意の通信システムにおいても共通することとして、適切な受信動作は、送信機と適切にて時間同期された状態に調整される。多地点協調受信を可能とするために、UEは双方の協働ユニット受信機と同時に同期しなければならない。特定のケースでは、これは達成することが実際的には不可能なことがある。例えば、|τ1-τ2|がサイクリックプリフィックス期間を超過するとき。しかしながら、他のほとんどのケースでは、それぞれの協働ユニットと同時に同期することを達成することは可能である。
他の任意のOFDMに基づくシステムにおいても、受信機のタイミングは同期化のために参照ポイントとしてみなされる。受信機と通信するすべてのUEは、それらの信号が受信機におおよそ同時(CP許容誤差以内)に到着するように伝送タイミングを調節すべきである。Rel.8では、タイミングアドバンス(TA)コマンドが、そのチャネルで伝搬遅延を補償するために、そのUEへ送られる。ここで、伝搬遅延は最初に到着する経路となることと一般的に理解されている。例えば、図1のケースでは、TAコマンドτ1による時間進めはUEに伝送される。その結果、CP除去は、UEから協働するユニット1へ後続するパス全てを吸収する。しかしながら、Rel.10の特定の実装では、UEは、図1に示されるように、異なる伝搬遅延を有する、2つの異なる協働ユニットにおいて、協調する受信機により通信があるようにすることを期待される。したがって、TAコマンドは協調するユニットの全て又はほとんどのための伝搬遅延に依存すべきである。あとのセクションでは、これを達成するためのいくつかの可能性を述べる。

2.2.ネットワーク同期化の達成:第1のオプション
多地点の同期化を達成するための第1のオプションは、サービング/プライマリ協働ユニットのコンセプトに基づいている。例えば、これは、Rel.10のサービングe-NodeBである。図2に示されるように、UEのために信号の受信に参加する非サービング(第2)協働ユニットがUEから自身(協働ユニット2)への伝搬遅延τ2を測定する。このための機構は、RACHやサウンディング参照信号(SRS)の使用を含むRel.8で既に存在している。UEが第2協働ユニットへRach又はSRSを伝送するように要求されるべきか否かは今後更に検討を必要とする事項である。伝搬遅延の推定f(τ2)はプライマリ/サービング協働ユニット1へ伝送される。例えば、これは伝搬遅延τ2の量子化、又は、その代わりに、協働ユニット2の見地からのTAの提示であってもよい。下記の図2で説明されたように、プライマリ協働ユニットは、必要とされる情報の全てを処理し、UEへ伝送されるTAコマンドを決定する。
図2に記述された解決策は、大抵、協働ユニットが実際のRel.10のe-NodeBであるケースにより適している。しかしながら、遠隔無線ユニットのいくつかのより高度な実装に組み込まれてもよい。一般に、信号の時間遅延に基づいて測定が、測定仕様によって定義することができる。 信号の時間遅延はUEに特有であることが期待される。この測定は、ネットワークまたは直接別の協働ユニットのいずれかに伝達される。)

(ウ)図2には、協働ユニット1は、協働ユニット2から伝搬遅延の推定f(τ2)を受信し、g(f(τ2),τ1)を計算し、UEへTAコマンドを伝送することが記載されているといえる。

上記摘示事項(イ)において、「UEが第2協働ユニットへRach又はSRSを伝送するように要求されるべきか否かは今後更に検討を必要とする事項である。」と記載されており、引用文献3には、UEが第2協働ユニットへRach又はSRSを伝送するように要求されることが示唆されているといえる。
このため、上記摘示事項(ア)?(ウ)及び図2から、引用文献3には、以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているといえる。

「 多地点協調受信では、UEからそれぞれの協働ユニットまでの信号伝搬遅延が概して異なる問題があり、多地点協調受信を可能とするために、受信機と通信するすべてのUEは、それらの信号が受信機におおよそ同時(CP許容誤差以内)に到着するように伝送タイミングを調節すべきであることから、
UEは、
第2協働ユニットへRachを伝送するように要求され
プライマリ/サービング協働ユニット1は、
非サービング(第2)協働ユニット2が測定した、UEから自身(協働ユニット2)への伝搬遅延τ2の推定値f(τ2)を受信し、
必要とされる情報の全てを処理し、g(f(τ2),τ1)を計算し、TAコマンドを決定してUEへ伝送する
方法。」


3.対比
本願発明と引用発明3とを比較すると、以下の事項がいえる。

引用発明3は、多地点協調受信を可能とするために、受信機と通信するすべてのUEは、それらの信号が受信機におおよそ同時(CP許容誤差以内)に到着するように伝送タイミングを調節するものであって、プライマリ協働ユニットが、必要とされる情報の全てを処理し、TAコマンドを決定してUEへ伝送する方法である。
ここで、伝送タイミングはUEが伝送するタイミングであると解するのが妥当であることから、「伝送タイミングを調節する」ことは、アップリンク同期を確立するように調整することといい得る。
また、プライマリ/サービング協働ユニット1は、非サービング基地局と協調したサービング基地局といい得る。
してみると、引用発明3は、本願発明と同様に、「アップリンク同期を確立するように非サービング基地局と協調したサービング基地局によって実行される方法」であるといえる。

引用発明3では、プライマリ協働ユニット1は、必要とされる情報の全てを処理し、g(f(τ2),τ1)を計算している。さらに、多地点協調受信を可能とするために、受信機と通信するすべてのUEは、それらの信号が受信機におおよそ同時(CP許容誤差以内)に到着するように伝送タイミングを調節すべきものである。
ここで、τ1がサービング基地局が導出した第1のタイミング情報であり、τ2が非サービング基地局から受信した第2のタイミング情報であるといい得る。
また、信号が受信機におおよそ同時(CP許容誤差以内)に到着するように伝送タイミングを調節されることは、関係する基地局にアップリンク伝送が到達するタイミングが前記関係する基地局の巡回プレフィックス(CP)によってカバーされることを保証することといい得る。
してみると、引用発明3は、本願発明と同様に、「前記サービング基地局が導出した第1のタイミング情報と、複数の非サービング基地局から受信した第2のタイミング情報とに従ってタイミング・アドバンス(TA)を計算するステップであって、前記タイミング・アドバンス(TA)は、関係する基地局にアップリンク伝送が到達するタイミングが前記関係する基地局の巡回プレフィックス(CP)によってカバーされることを保証するように計算されるステップ」を含んでいるといえる。

引用発明3では、受信機と通信するすべてのUEは、それらの信号が受信機におおよそ同時(CP許容誤差以内)に到着するように伝送タイミングを調節すべきであるとともに、プライマリ協働ユニット1は、必要とされる情報の全てを処理し、g(f(τ2),τ1)を計算し、TAコマンドを決定してUEへ伝送するものである。
してみると、引用発明3は、本願発明と同様に、「前記タイミング・アドバンスを前記UEに送信し、前記タイミング・アドバンスに従って前記関係する基地局と前記UEが前記アップリンク同期を確立することを可能にするステップとを含」んでいるといえる。

引用発明3では、UEは第2協働ユニットへRachを伝送するように要求され、プライマリ協働ユニット1は非サービング(第2)協働ユニット2が測定した、UEから自身(協働ユニット2)への伝搬遅延τ2の推定値f(τ2)を受信し、必要とされる情報の全てを処理し、g(f(τ2),τ1)を計算している。
そして、当業者が引用発明3を接すれば、τ1やτ2は、UEが伝送したRachが協働ユニット1や協働ユニット2までの伝搬遅延時間である、すなわち、UEによって実施される前記専用PRACH伝送の伝播遅延に関連付けられているものであると解するものといえる。
また、引用発明3のRachを伝送することは、専用物理ランダム・アクセス・チャネル(PRACH)伝送に対応するといいえる。
してみると、引用発明3は、本願発明と同様に、「前記第1のタイミング情報および前記第2のタイミング情報が、前記UEによって実施される前記専用PRACH伝送の伝播遅延に関連付けられている」といえる。

してみると、本願発明と引用発明3とは、以下の点で、一致する。

(一致点)
アップリンク同期を確立するように非サービング基地局と協調したサービング基地局によって実行される方法であって、
前記サービング基地局が導出した第1のタイミング情報と、非サービング基地局から受信した第2のタイミング情報とに従ってタイミング・アドバンス(TA)を計算するステップであって、前記タイミング・アドバンス(TA)は、関係する基地局にアップリンク伝送が到達するタイミングが前記関係する基地局の巡回プレフィックス(CP)によってカバーされることを保証するように計算されるステップと、
前記タイミング・アドバンスを前記UEに送信し、前記タイミング・アドバンスに従って前記関係する基地局と前記UEが前記アップリンク同期を確立することを可能にするステップとを含み、
前記第1のタイミング情報および前記第2のタイミング情報が、前記UEによって実施される前記専用PRACH伝送の伝播遅延に関連付けられている、
方法。

さらに、本願発明と引用発明3とは、以下の点で、相違する。

(相違点1)
本願発明では、サービング基地局が専用物理ランダム・アクセス・チャネル(PRACH)伝送を実施するようにユーザ機器(UE)に命令するのに対して、引用発明3では、いずれのノードが、UEに対して、非サービング基地局へRachを伝送するように要求するのか特定されていない点。

(相違点2)
本願発明では、計算されるタイミング・アドバンス(TA)が従う第2のタイミング情報が、複数の非サービング基地局から受信したものであるに対して、引用発明3では、計算されるタイミング・アドバンス(TA)が従う第2のタイミング情報が、1つの非サービング基地局から受信したものである点。

(相違点3)
本願発明では、前記複数の非サービング基地局が、前記アップリンク同期を確立するための前記タイミング・アドバンスを生成することを不可能にする非サービング基地局を含む場合には、その非サービング基地局によって提供される前記第2のタイミング情報が除外され、前記タイミング・アドバンスが、前記第1のタイミング情報と、除外後に前記複数の非サービング基地局内に残される残りの非サービング基地局によって提供される前記第2のタイミング情報とに従って再計算されるのに対して、引用発明3では、このような事項は特定されていない点。


4.当審の判断
上記相違点1?3について、以下で検討する。

4-1.相違点1について
UEと通信状態にある複数の基地局の内のサービング基地局が、UEの動作に関する命令・制御を行うことは周知な事項である。
そして、引用発明3における、非サービング基地局へRachを伝送するように要求することは、UEの動作に関する命令・制御に他ならない。
このため、引用発明3における、UEに対して非サービング基地局へRachを伝送するように要求されるノードをサービング基地局とすることは、当業者が容易になし得る事項であるいえる。

4-2.相違点2について
多地点協調受信において、受信する協調ユニットを2局とする構成と同様に3局以上とする構成は周知な構成であると共に、協調ユニットを何局とするかは設計事項であり、協調ユニットが3局以上となれば、サービング基地局が1局、非サービング基地局が2局以上、すなわち、複数となることは明らかである。
このため、引用発明3において、計算されるタイミング・アドバンス(TA)が従う第2のタイミング情報を複数の非サービング基地局から受信したものとすることは、当業者が容易になし得る事項であるいえる。

4-3.相違点3について
協調受信の対象となる多地点の協調ユニットの伝送遅延が伝送タイミングの調節可能範囲を超えるようであれば同期できないことや、伝送タイミングが調整不可能な協調ユニットについては協調受信の対象から除外する必要があることが、当業者にとって通常に推考し得る事項であるとしても、引用発明3におけるTAコマンドを決定するためのf(τ2)を受信する非サービング基地局は1局であり、該非サービング基地局を除外した場合には、サービング基地局からの信号を受信するのみとなって多地点協調受信とならないことから、引用発明3は、上記したような、伝送タイミングが調整不可能な協調ユニットについては協調受信の対象から除外することを想定した発明であるといえない。
してみると、引用発明3において、前記複数の非サービング基地局が、前記アップリンク同期を確立するための前記タイミング・アドバンスを生成することを不可能にする非サービング基地局を含む場合には、その非サービング基地局によって提供される前記第2のタイミング情報が除外され、前記タイミング・アドバンスが、前記第1のタイミング情報と、除外後に前記複数の非サービング基地局内に残される残りの非サービング基地局によって提供される前記第2のタイミング情報とに従って再計算される構成とすることは、当業者にとって容易になし得たものであるとはいえない。

4-4.まとめ
したがって、相違点3について当業者が容易になし得たものであるとはいえないため、本願発明は当業者が引用発明3に基づいて容易に発明をすることができたものとすることができない。
また、請求項5、8、11に係る発明は、本願発明と同様な発明特定事項を有し、請求項2?4、6、7、9、10、12は実質的に本願発明をさらに限定したものに相当するので、本願発明と同様に、当業者が引用発明3に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
そうすると、もはや、当審で通知した拒絶理由によって本願発明を拒絶することはできない。



第5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1?12に係る発明は、引用発明1?3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、原査定及び当審が通知した拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2015-04-01 
出願番号 特願2012-516465(P2012-516465)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 古市 徹  
特許庁審判長 加藤 恵一
特許庁審判官 佐藤 聡史
水野 恵雄
発明の名称 アップリンク同期を実装する方法およびデバイス  
代理人 川崎 孝  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  

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