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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E01D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E01D |
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管理番号 | 1299163 |
審判番号 | 不服2014-1516 |
総通号数 | 185 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-01-28 |
確定日 | 2015-03-26 |
事件の表示 | 特願2009-260098号「合成床版及びそれを用いた橋梁」拒絶査定不服審判事件〔平成23年6月2日出願公開、特開2011-106117号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成21年11月13日の出願であって、平成25年3月21日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年5月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年1月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。 第2 平成26年1月28日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成26年1月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を補正することを含むものであり、請求項1の記載は、次のように補正された。 補正前(平成25年5月27日付け手続補正書): 「梁上に設置された複数のリブを有する床鋼板と、 前記床鋼板の上面に塗布される付着材と、 前記付着材を介して前記床鋼板上に充填され打設されるコンクリートと を備え、 前記複数のリブは、板リブであり、 前記付着材は、炭素繊維を含有した無機系塗料でセメント系のコンパウンドを混合した付着材であり、厚さが10μm?1000μmに形成されており、前記床鋼板と前記コンクリートとの付着力を高めるために用いる ことを特徴とする合成床版。」 補正後(平成26年1月28日付け手続補正書): 「梁上に設置された複数のリブを有する床鋼板と、 前記床鋼板の上面に塗布される付着材と、 予め前記付着材が塗布された前記床鋼板上に充填され打設されるコンクリートと を備え、 前記複数のリブは、張り出し部の無い板リブであり、 前記付着材は、炭素繊維を含有した無機系塗料でセメント系のコンパウンドを混合した付着材であり、厚さが10μm?1000μmに形成されており、前記床鋼板と前記コンクリートとの付着力を高めるために用いる ことを特徴とする合成床版。」(下線は補正箇所を示すものである。) 2 補正の目的及び新規事項の追加の有無 本件補正により、請求項1についての補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記付着材を介して前記床鋼板上に充填され打設されるコンクリート」の構成を「予め前記付着材が塗布された前記床鋼板上に充填され打設されるコンクリート」に限定するとともに、「板リブ」の構成を「張り出し部の無い板リブ」に限定するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。 3 独立特許要件 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)引用例について 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物は、次のとおりである。 特開2007-138555号公報(以下、「引用例1」という。) 登録実用新案第3139375号公報(以下、「引用例2」という。) 特開2006-125174号公報(以下、「引用例3」という。) 特開2002-221292号公報(以下、「引用例4」という。) ア 引用例1 (ア)引用例1に記載の事項 引用例1には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。)。 a 特許請求の範囲 「【請求項1】 底鋼板と底鋼板の上面側に打設されたコンクリート層とを備えた高架道路用合成床版において、 前記底鋼板の上面側に並設された複数のCT型鋼であって、そのウェブ部の下端部が底鋼板に夫々溶接され且つ全体がコンクリート層に埋設された複数のCT型鋼を備え、 前記CT型鋼のフランジ部にジベル部材としての機能を持たせる複数の貫通孔が形成されたことを特徴とする高架道路用合成床版。 【請求項2】 前記底鋼板の上面に塗布されて底鋼板とコンクリート層との密着性を高めると共に底鋼板の防錆のために形成されたゴムラテックス入りモルタル層を備えたことを特徴とする請求項1に記載の高架道路用合成床版。 【請求項3】 前記複数のCT型鋼は、床版の支持間隔方向と直角方向に所定間隔おきに配設されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の高架道路用合成床版。 【請求項4】 前記複数のCT型鋼の表面にゴムラテックス入りモルタル層が形成されたことを特徴とする請求項2に記載の高架道路用合成床版。」 b 技術分野 「【0001】 本発明は、底鋼板と底鋼板の上面側に打設されたコンクリート層とを備えた高架道路用合成床版に関するものである。」 c 発明が解決しようとする課題 「【0006】 ジベル部材がトラス弦材とトラス斜材からなる合成床版では、このジベル部材自体が複雑な構造になる。つまり、合成床版の製造を含む高架道路の建設の合理化と省力化を図るのに限界が生じる。 【0007】 従来の合成床版では、経年劣化等によりコンクリート層がひび割れした場合、そこから侵入した雨水等が底鋼板に達し、底鋼板とコンクリート層との間に滞水して底鋼板が錆びて劣化する可能性があるため、また、ジベル部材についても同様であるので、耐久性が低くなる恐れがある。そこで、底鋼板、ジベル部材に既存の防錆剤を塗布することが考えられるが、この場合でもコンクリート層への万が一のひび割れによる雨水の侵入は防止できない。防錆剤による防錆効果にも限界がある。 【0008】 また、ジベル部材がCT型鋼からなる合成床版では、簡単な構造で合成床版の曲げ剛性を高めることができるので有利であるが、底鋼板に複数のCT型鋼を溶接した後にコンクリート層を打設する際、施行方法に十分配慮しないと、CT型鋼のフランジ部の下面側に空気が残留する可能性があり、そうなると、底鋼板とコンクリート層とを確実に一体化できず、耐久性が低下するという恐れがある。 【0009】 本発明の目的は、簡単な構造で曲げ剛性を確実に高めることができ、しかも、底鋼板とコンクリート層との密着性(高架道路用合成床版の一体性)を高めると共に底鋼板の防錆を行い、一体性と耐久性を格段に向上させた高架道路用合成床版を提供し、この合成床版の製造を含めた高架道路の建設の一層の合理化と省力化を図ることである。」 d 課題を解決するための手段 「【0010】 ・・・・尚、CT型鋼とは、I型鋼やH型鋼のウェブ部の途中部を切断して構成された断面T字状の型鋼である。」 e 発明の効果 「【0014】 請求項1の高架道路用合成床版によれば、底鋼板の上面側に複数のCT型鋼を並設して、それらCT型鋼のウェブ部の下端部を底鋼板に夫々溶接したので、こうした簡単な構造で高架道路用合成床版の曲げ剛性を確実に高めることができ、しかも、CT型鋼のフランジ部に複数の貫通孔を形成したので、コンクリート層を密実に施行できるようになり、これにより、コンクリート層と底鋼板の一層のジベル効果を期待できると共に、底鋼板に複数のCT型鋼を溶接した後にコンクリート層を打設する際、CT型鋼のフランジ部の下面側の空気を複数の貫通孔から逃してボイドが発生するのを防止し、コンクリート層を密実に施行できるため、底鋼板とコンクリート層とを確実に一体化でき、高架道路用合成床版の一体性と耐久性を確実に向上させることができ、この高架道路用合成床版の製造を含めた高架道路の建設の一層の合理化と省力化を図ることが可能になる。 【0015】 請求項2の高架道路用合成床版によれば、底鋼板の上面に塗布されて底鋼板とコンクリート層との密着性を高めると共に底鋼板の防錆のために形成されたゴムラテックス入りモルタル層を備えたので、このゴムラテックス入りモルタル層により、底鋼板とコンクリート層との密着性を高める(つまり、底鋼板とコンクリート層とをより一層確実に一体化する)と共に底鋼板の防錆を行うことができ、依って、高架道路用合成床版の一体性と耐久性を格段に向上させることができる。 ・・・・ 【0017】 請求項4の高架道路用合成床版によれば、複数のCT型鋼の表面にゴムラテックス入りモルタル層を形成したので、高架道路用合成床版を製造する段階で、ゴムラテックス入りモルタル層を底鋼板に塗布形成するのと同時に、CT型鋼の表面にゴムラテックス入りモルタル層を塗布して簡単に形成でき、このゴムラテックス入りモルタル層により、CT型鋼とコンクリート層との密着性を高めてCT型鋼の防錆を確実に行うことができ、高架道路用合成床版の一体性と耐久性を一層高めることができる。」 f 実施例 「【0019】 図1に示すように、高架道路1は高速道路や橋梁道路であり、その道路床版2の少なくとも一部が、複数の高架道路用合成床版10を床版の支持間隔方向と直角方向(道路の長さ方向)に並べて構成され、その道路床版2が橋脚(図示略)等に支承された1対の主桁3に支持されている。例えば、主桁3は断面I型に構成され、1対の主桁3は、道路の幅方向に約6mの間隔を空けて、道路の長さ方向に平行に連続的に延びるように配設されている。 【0020】 各合成床版10について説明する。 【0021】 図2?図6に示すように、高架道路用合成床版10は、底鋼板11、複数(例えば、5本)のCT型鋼12、ゴムラテックス入りモルタル層13、コンクリート層14を備えている。例えば、高架道路用合成床版10は、厚さが約25cm、長さ(床版の支持間隔方向と直角方向の寸法)が約3m、幅(床版の支持間隔方向の寸法)が約11m、に形成されている。 ・・・・ 【0024】 ゴムラテックス入りモルタル層13は、底鋼板11の上面に塗布されて、底鋼板11とコンクリート層14との密着性を高めると共に底鋼板11の防錆のために形成されている。例えば、ゴムラテックスは、スチレンブタジエンゴムを主剤とするもので、水で希釈できて取扱いが容易なものであり、その一般的性状は、外観(乳白色)、全固形分(45.0±1,0%)、pH(9±1)、粘度(200mPa・以下(20℃))、見かけ比重(1.00±0.05)、機械的安定性(優秀)、セメント安定性(優秀)、である。 【0025】 例えば、モルタルは、重量比でセメント1に対して砂1?3を配合して適量の水を加えたものであり、このモルタルに重量比でゴムラテックス0.2?0.3を混和して、ゴムラテックス入りモルタルが構成され、このゴムラテックス入りモルタルが、複数のCT型鋼12が溶接された底鋼板11の上面に、専用の吹付装置により吹付けられ積層硬化されて、層厚が約3?20mmのゴムラテックス入りモルタル層13が形成されている。 ・・・・ 【0027】 次に、高架道路用合成床版10の製造を含めた高架道路1の建設の工程の一例について説明する。先ず、工場において、底鋼板11と複数のCT型鋼12とを準備し、底鋼板11の上面側に複数のCT型鋼12を並設して、それらCT型鋼12のウェブ部12aの下端部を底鋼板11に夫々溶接し、次に、底鋼板11の上面にゴムラテックス入りモルタル層13を塗布形成する。 【0028】 この底鋼板11と複数のCT型鋼12とゴムラテックス入りモルタル層13からなる半製造物を製造した後、この半製造物をトラック等で高架道路建設現場に搬送する。この半製造物の製造と搬送については、高架道路用合成床版10の必要数分を適宜順序で行う。高架道路建設現場では、既に1対の主桁3が橋脚に設置されたものとし、これら主桁3上の所定位置に半製造物を配設して、その半製造物の底鋼板11を1対のハンチ部11aを介して1対の主桁3に連結して支持させる。 【0029】 こうして、所定数(例えば、橋脚間に設置される高架道路用合成床版10の相当数)の半製造物を設置し、それらの隣接する底鋼板11同士を連結した後、底鋼板11の上面側に複数の鉄筋を配置し組み付けると共に、コンクリート層14を形成する領域の外周部に帯板状の型枠部材(図示略)を配置して底鋼板11に連結して、この底鋼板11と型枠部材によって型枠を作り、その型枠内にコンクリートを流し込み、硬化させてコンクリート層14を形成する。その他、コンクリート層14の上面側にアスファルトを敷き、中央分離帯、側壁、種々の補強体等々を構築して、高架道路1を建設していく。 ・・・・ 【0034】 次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。 1]図7、図8に示すように、更に、複数のCT型鋼12の表面にゴムラテックス入りモルタル層15を形成してもよい。ここで、ゴムラテックス入りモルタル層15については、CT型鋼12の表面全体に形成してもよいし、CT型鋼12の表面の一部(例えば、ウェブ部12aの側面、フランジ部12bの上面等)に形成してもよい。尚、CT型鋼12のフランジ部12bに貫通孔12cを形成する場合には、その貫通孔12cを塞がないようにゴムラテックス入りモルタル層15を形成する。 【0035】 この場合、高架道路用合成床版10を製造する段階で、ゴムラテックス入りモルタル層13を底鋼板11に塗布形成するのと同時に、CT型鋼12の表面にゴムラテックス入りモルタル層15を塗布して簡単に形成でき、このゴムラテックス入りモルタル層15により、CT型鋼12とコンクリート層14との密着性を高めて、CT型鋼12の防錆を確実に行うことができ、高架道路用合成床版10の一体性と耐久性を一層高めることが可能になる。 2]高架道路1のサイズ、形状を含む設計に応じて、底鋼板11、CT型鋼12、ゴムラテックス入りモルタル層13、コンクリート層14のサイズ、形状、数、配置等については適宜変更してもよい。また、ゴムラテックス入りモルタル層13,15における、ゴムラテックス及びモルタルの成分や配合比についても適宜変更可能である。 3]その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前記開示事項以外の種々の変更を付加して実施可能である。」 (イ)引用例1に記載された発明の認定 上記(ア)で摘記したように、段落【0028】には、「この底鋼板11と複数のCT型鋼12とゴムラテックス入りモルタル層13からなる半製造物を製造した後、この半製造物をトラック等で高架道路建設現場に搬送する。・・・・高架道路建設現場では、既に1対の主桁3が橋脚に設置されたものとし、これら主桁3上の所定位置に半製造物を配設して、その半製造物の底鋼板11を1対のハンチ部11aを介して1対の主桁3に連結して支持させる。」と、また、段落【0029】には、「こうして、所定数(例えば、橋脚間に設置される高架道路用合成床版10の相当数)の半製造物を設置し、」と記載されているから、引用例1に記載の底鋼板11は、CT型鋼12を有しており、主桁3上に設置されているといえる。 また、上記(ア)で摘記したように、段落【0027】には、「工場において、底鋼板11と複数のCT型鋼12とを準備し、底鋼板11の上面側に複数のCT型鋼12を並設して、それらCT型鋼12のウェブ部12aの下端部を底鋼板11に夫々溶接し、次に、底鋼板11の上面にゴムラテックス入りモルタル層13を塗布形成する。」と、また、段落【0028】には、「この底鋼板11と複数のCT型鋼12とゴムラテックス入りモルタル層13からなる半製造物を製造した後、この半製造物をトラック等で高架道路建設現場に搬送する。」と記載されているから、引用例1に記載の底鋼板11は、予めゴムラテックス入りモルタル層13が塗布されたものであるといえる。 さらに、上記(ア)で摘記したように、段落【0029】には、「こうして、所定数(例えば、橋脚間に設置される高架道路用合成床版10の相当数)の半製造物を設置し、それらの隣接する底鋼板11同士を連結した後、底鋼板11の上面側に複数の鉄筋を配置し組み付けると共に、コンクリート層14を形成する領域の外周部に帯板状の型枠部材(図示略)を配置して底鋼板11に連結して、この底鋼板11と型枠部材によって型枠を作り、その型枠内にコンクリートを流し込み、硬化させてコンクリート層14を形成する。」と記載されているから、引用例1に記載のコンクリートは、底鋼板11上に充填され打設されるといえる。 以上のことも踏まえると、上記(ア)に記載された事項からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「主桁3上に設置された複数の断面T字状のCT型鋼12を有する底鋼板11と、 前記底鋼板11の上面に塗布されるゴムラテックス入りモルタル層13と、 予め前記ゴムラテックス入りモルタル層13が塗布された前記底鋼板11上に充填され打設されるコンクリート(硬化後はコンクリート層14)と を備え、 前記ゴムラテックス入りモルタル層13は、厚さが3?20mmに形成されており、前記底鋼板11と前記コンクリート(硬化後はコンクリート層14)との密着性(一体性)を高めるために用いている合成床版。」 イ 引用例2 (ア)引用例2に記載の事項 引用例2には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。)。 a 技術分野 「【0001】 本考案は、合成床版の鋼板部材の端部同士を連結する合成床版の継手構造、及び、鋼床版の端部同士を連結する鋼床版の継手構造に関するものである。」 b 実施例1 「【0025】 実施例1は合成床版の継手構造に本考案を採用したものである。尚、図1?図3に示す矢印aの橋軸方向を前後方向とし矢印bの橋軸直交方向を左右方向として説明する。 【0026】 図1?図4に示すように、橋梁(鋼道路橋)等の高架道路において、合成床版1は主桁2等に支持され、その合成床版1は、下鋼板3と、下鋼板3上に形成されたコンクリート版4とを備え、コンクリート版4の上面に防水層5が形成され、防水層5の上面にアスファルト舗装6が形成されている。 【0027】 下鋼板3は多数の鋼板部材10,20(下鋼板パネル10,20)を備え、これら鋼板部材10,20は、工場で製造されて一定数ずつ高架道路の建設現場に搬送され、主桁2上に並設される。鋼板部材10は、左右方向に長い矩形に形成され、その左右長は主桁2間の長さと略同じであり、鋼板部材20は、その前後長が鋼板部材10の前後長と同じになる矩形に形成され、鋼板部材10,20の厚さは9mm程度である。 【0028】 複数の鋼板部材10は前後方向に略隙間なく並設され、夫々の左右両端部が主桁2に連結され、前後方向に隣接する2枚の鋼板部材10の端部同士が継手構造15により連結されている。また、複数の鋼板部材20は、鋼板部材10の左右両側において、前後方向に略隙間なく並設され、夫々の左右方向内端部が主桁2に連結されて、前後方向に隣接する2枚の鋼板部材20の端部同士が継手構造25により連結されている。 【0029】 各鋼板部材10,20の上面には、左右方向に延びる複数の鋼板補強用の横リブ11,21が前後方向に適当間隔おきに配置され、各鋼板部材10,20の上面には、複数の頭付きのスタッドジベル12,22が略一様に配置され、各鋼板部材10,20の前後両端部の上面には、継手構造15,25の複数のスタッドボルト31が左右方向に適当間隔おきに配置され、夫々溶接されている。 【0030】 尚、左右方向に隣接する鋼板部材10,20について、前後方向に同位置の横リブ11,21同士が鋼製連結部材30で連結され、この鋼製連結部材30を鋼板部材10,20の両上面に固定してもよい。また、各鋼板部材10,20に防錆処理として塗装や金属溶射が施され、この塗装や金属溶射は、工場において、鋼板部材10,20への横リブ11,21、スタッドジベル12,22、スタッドボルト31の溶接後に行われる。 【0031】 コンクリート版4は、コンクリート4aと、コンクリート4aの内部に前後左右に配設された複数の鉄筋4bとを有するものであり、このコンクリート版4は、下鋼板3上に複数の鉄筋4bが設置された状態で、コンクリート4aを打設して成形される。」 c 図面 図1及び4には、横リブ11,21が張り出し部の無い板状であることが図示されている。 (イ)引用例2に記載された技術事項の認定 上記(ア)に記載された事項及び図示内容からみて、引用例2には、次の技術事項(以下、「引用例2記載の技術事項」という。)が記載されている。 「複数の横リブ11,21を有する下鋼板3と、下鋼板3上に打設されるコンクリート4aとからなる合成床版において、前記複数の横リブは、張り出し部の無い板リブであること。」 ウ 引用例3 (ア)引用例3に記載の事項 引用例3には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。)。 a 技術分野 「【0001】 本発明は,コンクリートの下面に鋼材を配置し合成構造とした梁や床版構造物で,鋼材の上部にコンクリートを打設し一体構造とする構造物に関するものである.この構造物にコンクリート上面からコンクリート中に浸入した水がコンクリート下面に接続する鋼材を腐食させるのを防止することを目的とした技術に関する.」 b 発明が解決しようとする課題 「【0003】 コンクリートと鋼材の合成構造物の梁や床版構造物の鋼材の腐食防止は,鋼材の外面は腐食調査を行い,腐食防止塗装等の防止策を講じることにより行われている.しかし,コンクリートに接する鋼材の内面は腐食調査や腐食防止工を実施することが出来ない欠点を有する. 【0004】 また,コンクリートと鋼材の合成構造物は荷重が作用して変形する時,両者の変形量が異なるので,両者の接続は部分的に剥離する可能性がある.この剥離部分にコンクリートの上面から浸入する雨水等の水が溜まり,鋼材を内面から腐食させる.コンクリート上面には防水工が行われるが,雨水等の侵入を完全に防止することは出来ない.また,コンクリートと鋼材の剥離を防止することも出来ない.本発明が解決しようとする課題は,コンクリート上面からコンクリート中に進入する雨水等の水を鋼材に接触させないことである.請求項1は本課題を解決するものである. 【0005】 コンクリートと鋼材の合成構造物は,上部からの浸入水がコンクリート中に貯留すると,コンクリート強度の劣化を促進させる.これを防止するために現状の対策は,鋼材に排水用の10mm前後の直径を有する孔を設けてコンクリートと鋼材の間に貯留する水を排水するようにしている.この排水用の孔の最良の設置間隔は解明されておらず様々な間隔で設けられているのが現況である.排水用の孔が有効に排水機能を発揮しているのは否かは不明である.請求工2は本課題を解決するものである.」 c 課題を解決するための手段 「【0006】 コンクリートが鋼材と接触するコンクリートの最下面部に,エポキシ樹脂系接着剤で止水層を形成させ,コンクリート上面から浸入する雨水等の水と鋼材を接触させないようにし,鋼材の腐食を防止するものである.特許請求項1はコンクリート最下面に止水層を形成させるものである.」 d 発明の効果 「【0008】 本発明の請求項1は,コンクリート下面の止水層は,コンクリート内の水と鋼材の接触を防ぎ,鋼材の腐食を防止することが可能で,鋼.とコンクリート合成構造物の鋼材内面腐食を防止し,長期的な強度安定性を維持するのに好適である.」 e 発明を実施するための最良の形態 「【00010】 請求項1のコンクリート下部に止水層を形成する方法は,施工現場において,鋼材を設置した後,コンクリートを打設する前に,鋼材表面にエポキシ樹脂系接着剤を厚さ数十ミクロン以上に噴霧塗布し,その上部にコンクリートを打設する.施工の要点は,エポキシ樹脂系接着剤の可使時間内にコンクリートを打設することと,止水層の膜厚の管理を行う必要がある.」 (イ)引用例3に記載された技術事項の認定 上記(ア)に記載された事項からみて、引用例3には、次の技術事項(以下、「引用例3記載の技術事項」という。)が記載されている。 「コンクリートの下面に鋼材を配置した合成構造の梁や床版構造物において、コンクリートを打設する前に、鋼材表面にエポキシ樹脂系接着剤を厚さ数十ミクロン以上に噴射塗布することにより止水層を形成すること。」 エ 引用例4 (ア)引用例4に記載の事項 引用例4には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。)。 a 発明の属する技術分野 「【0001】 本発明は、下水道管,配水管,ヒューム管,杭,電柱等の中空管を補修する方法に関し、特に、老朽化,破損したコンクリート製の下水道管,配水管,ヒューム管,杭,電柱等の中空管を内面から補修し、中空管の強度を新設時と同等の強度に補強することができる中空管の補修方法に関するものである。」 b 発明の実施の形態 「【0018】 図1中、1は、円筒状の中空管、2は、中空管1内に配され、該中空管1の径よりも小さい径で、且つ中空管1と同じ長さの円筒状の中空5の鋼管、3,4は、中空管1と鋼管2との隙間に、充填固化されている無機質主剤コンパウンドエマルジョンである。なお、本実施の形態では、中空管1は円筒状であるが、これに限定されず、矩形状等中空であればどのような形状であっても良い。 【0019】 鋼管2は、図2に示すように、内側に、無機質主剤コンパウンドエマルジョン4が予めコーテイングされている。これにより、鋼管2の防錆性が保持される。 ・・・・ 【0024】 無機質主剤コンパウンドエマルジョン3,4としては、炭素繊維を配合した無機質主剤、例えば、マイテイCF(マイテイ化学(株)製)等が好ましく使用できる。マイテイCFは炭素繊維を無機質主剤コンパウンドに配合して、耐久性、耐熱性、耐薬品性を向上させ、且つ高弾性を持たせたものに、高分子エマルジョンを加えて混練したものである。かかる無機質主剤コンパウンドエマルジョン3,4の使用により、防食、防錆性を持たせることが可能となる。具体的には、マイテイCFは、鋼との接着強度を非常に高く保持すると同時に、防水性を高めるため超微粉化したセメントを主体とする無機質材料に、塗膜強度、耐久性、耐薬品性を高めるために炭素繊維を配合したコンパウンドと、接着強度を高めるように調合したアクリル系エマルジョンを混合したものである。このように、アルカリ性に富むエマルジョンで、炭素繊維を含有するセメントモルタルを金属表面に塗布することにより、化学的な接着面を有する被膜を形成し、その強いアルカリ性により残存する赤錆を黒錆に変質させると同時に、その表面に防水性を有する被膜を形成し、施工以降の発錆を効果的に防止するものである。同時に、炭素繊維を含有するセメントモルタルであるため、伸縮によるモルタル面のひび割れ発生を防止するものである。このように、マイテイCFのような無機質主剤コンパウンドエマルジョン3,4を接着剤として使用することにより、防食・防錆寿命が長く、施工価格が低価格で且つ補修が非常に容易となるので、中空管1の補修に特に好適である。 【0025】 マイテイCFは、重防蝕、防錆、接着、防水、止水、補修、補強等の機能を同時に兼ね備えた新しい無機質主剤であって、無機質主剤コンパウンドと水溶性の複合高分子エマルジョンとを混合して使用する材料である。付着性に優れ、鉄やコンクリート等の母材の曲げ、ねじれ、引張に追随し、衝撃に強く、亀裂や剥離を生じにくい。特に鉄に対する付着力は約25.1kgf/cm^(2)と高く、水中に3000時間浸漬した後でも約24.7kgf/cm^(2)と、ほとんど変わらない付着力を有し、水の影響を受けにくい。 【0026】 また、耐熱温度約300℃?-197℃と幅が広く、耐候性にも優れている。また、耐久性約30年の評価を得ており、このときの耐屈曲性試験でも試験前と変わらない柔軟性を保持している。耐候性促進試験でも3000時間後(一般外部15年相当)でも発錆等の異常が見られず耐候性の良さが実証されている。 【0027】 また、マイテイCFは、その主成分のアルカリ性成分を特殊な高分子で包み込み、アルカリ性成分を鉄表面に働きかけさせて、その優れた付着力と相まって長期間にわたり防蝕機能を発揮することができる。また、マイテイCFは鉄表面を黒錆に変えて安定した防錆層を形成する。また、マイテイCFは従来の塗料と同じ点接着に加えて、無機質主剤に含まれている成分の働きでイオン結合をもたらし、点接着とイオン結合の両方の力で付着力の強い塗膜を形成することができ、さらに上塗り塗料を通過してきたわずかの水分を逆に利用してアルカリ成分を塗膜の内側で循環させて耐候性を持続させることができる。」 (イ)引用例4に記載された技術事項の認定 上記(ア)に記載された事項からみて、引用例4には、次の技術事項(以下、「引用例4記載の技術事項」という。)が記載されている。なお、「マイテイCF」及び「マイテイ化学(株)」は、「マイティCF」及び「マイティ化学(株)」の誤記であると認められる。 「マイティCFは、鋼との接着強度を非常に高く保持すると同時に、防水性を高めるため超微粉化したセメントを主体とする無機質材料に、塗膜強度、耐久性、耐薬品性を高めるために炭素繊維を配合したコンパウンドと、接着強度を高めるように調合したアクリル系エマルジョンを混合したものであって、重防蝕、防錆、接着、防水、止水、補修、補強等の機能を同時に兼ね備えるとともに、付着性に優れ、鉄やコンクリート等の母材の曲げ、ねじれ、引張に追随し、衝撃に強く、亀裂や剥離を生じにくいこと。」 (2)対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「主桁3」は、その機能及び構造からみて、本願補正発明の「梁」に相当し、同様に、「断面T字状のCT型鋼12」は「リブ」に、「底鋼板11」は「床鋼板」にそれぞれ相当する。 また、引用発明の「ゴムラテックス入りモルタル層13」は、底鋼板11とコンクリート(硬化後はコンクリート層14)との密着性(一体性)を高めるために用いているから、本願補正発明の「前記床鋼板と前記コンクリートとの付着力を高めるために用いる」「付着材」に相当するといえる。 したがって、両者は 次の点で一致する。 「梁上に設置された複数のリブを有する床鋼板と、 前記床鋼板の上面に塗布される付着材と、 予め前記付着材が塗布された前記床鋼板上に充填され打設されるコンクリートと を備え、 前記付着材は、前記床鋼板と前記コンクリートとの付着力を高めるために用いる合成床版。」 そして、両者は次の相違点1及び2で相違する。 (相違点1) 本願補正発明のリブは、「張り出し部の無い板リブ」であるのに対し、引用発明のリブは、断面T字状である点。 (相違点2) 本願補正発明の付着材は、「炭素繊維を含有した無機系塗料でセメント系のコンパウンドを混合した付着材であり、厚さが10μm?1000μmに形成されて」いるのに対し、引用発明の付着材は、ゴムラテックス入りモルタル層13であり、厚さが3?20mmに形成されている点。 (3)判断 ア 相違点1について 一般的に、共通する技術分野に置換可能な技術手段があるときは、当業者がその転用を容易に着想し得るといえるところ、引用例2には、上記(1)イで説示したように、「複数の横リブ11,21(本願補正発明の「リブ」に相当する。)を有する下鋼板3(同「床鋼板」という。)と、下鋼板3上に打設されるコンクリート4aとからなる合成床版において、前記複数の横リブは、張り出し部の無い板リブであること。」(引用例2記載の技術事項)が記載されているから、引用発明の断面T字状のリブに代えて引用例2に記載の張り出し部の無い板リブを適用して、本願補正発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。 なお、引用発明の断面T字状のリブのフランジは、コンクリート層と底鋼板とを一体化するものであるところ(段落【0014】)、引用発明は、ゴムラテックス入りモルタル層によってもコンクリート層14と底鋼板11との一体性を高めているから、引用発明において、フランジが無い、すなわち張り出し部の無い板リブとすることに、コンクリート層と底鋼板とを一体化するとの観点で阻害要因があるとはいえない。 イ 相違点2について (ア)引用例4について 引用例4には、上記(1)エで説示したように、 「マイティCFは、鋼との接着強度を非常に高く保持すると同時に、防水性を高めるため超微粉化したセメントを主体とする無機質材料に、塗膜強度、耐久性、耐薬品性を高めるために炭素繊維を配合したコンパウンドと、接着強度を高めるように調合したアクリル系エマルジョンを混合したものであって、重防蝕、防錆、接着、防水、止水、補修、補強等の機能を同時に兼ね備えるとともに、付着性に優れ、鉄やコンクリート等の母材の曲げ、ねじれ、引張に追随し、衝撃に強く、亀裂や剥離を生じにくいこと。」(引用例4記載の技術事項) が記載されている。 ところで、本願明細書には、「本実施形態においては、付着材20として、炭素繊維を含有した炭素繊維強化無機系防錆材料(例えば、商品名「マイティCF(登録商標)」:マイティ化学株式会社)等を使用したが、このような付着材20には付着材自体に強い防錆効果がある。」(段落【0032】)と記載されているように、「炭素繊維を含有した無機系塗料でセメント系のコンパウンドを混合した付着材」の具体例として「マイティCF」が記載されている。 そうすると、引用例4に記載の「マイティCF」は、本願補正発明の「炭素繊維を含有した無機系塗料でセメント系のコンパウンドを混合した付着材」に相当するといえる。 また、「マイティCF」は、防錆、接着、防水、止水の機能を兼ね備えるとともに、付着性に優れているといえる。 (イ)容易想到性について 一般的に、材料の最適化、好適化を図ることは、当業者が通常において行う創意工夫であるといえるところ、引用発明のゴムラテックス入りモルタル層(付着材)は、底鋼板とコンクリート層との密着性を高める(つまり、底鋼板とコンクリート層とをより一層確実に一体化する)と共に底鋼板の防錆を行うことができ、依って、高架道路用合成床版の一体性と耐久性を格段に向上させることができるものであり(段落【0015】)、また、引用例4には、上記したように、防錆、接着、防水、止水の機能を兼ね備えるとともに、付着性に優れている「マイティCF」(本願補正発明の「炭素繊維を含有した無機系塗料でセメント系のコンパウンドを混合した付着材」に相当する。)が記載されているから、引用発明のゴムラテックス入りモルタル層(付着材)に代えて引用例4記載の、防錆、接着、防水、止水の機能を兼ね備えるとともに、付着性に優れている「マイティCF」、すなわち「炭素繊維を含有した無機系塗料でセメント系のコンパウンドを混合した付着材」を適用することは、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。 そして、その際に、付着材の厚さをどの程度とするかは、要求さられる機能(性能)やコスト、塗布作業の効率性などを考慮して、当業者が適宜に決定し得る程度の設計的事項といえるものであり、とくに10μm?1000μmも格別なものとはいえない。このことは、引用例3に、「コンクリートの下面に鋼材を配置した合成構造の梁や床版構造物において、コンクリートを打設する前に、鋼材表面にエポキシ樹脂系接着剤を厚さ数十ミクロン以上に噴射塗布することにより止水層を形成すること。」(「エポキシ樹脂系接着剤からなる止水層」が引用発明の「ゴムラテックス入りモルタル層(付着材)」に対応する。また、「ミクロン」は「μm」を意味する。)が記載されていることからも裏付けられる。 なお、本願明細書には、付着材の厚さを10μm?1000μmとすることの具体的な効果や実験結果は示されておらず、そのような厚さの範囲(数値範囲)に臨界的意義があるとはいえない。 (ウ)まとめ よって、引用発明に引用例4記載の技術事項を適用するとともに、適宜設計変更を行って、本願補正発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。 ウ 効果について 本願補正発明の作用効果は、引用発明並びに引用例2及び4記載の技術事項の作用効果からみて格別なものではないといえる。 エ 請求人の主張について 請求人は、引用例4には、無機質主剤コンパウンドエマルジョン3が記載されているが、引用例4の無機質主剤コンパウンドエマルジョン3は、中空管1と鋼管2との隙間に充填されるものであり、本願補正発明の付着材のように、コンクリートを充填させる前の床鋼板上面に予め塗布されるものではない、つまり、引用例4記載の無機質主剤コンパウンドエマルジョン3は、少なくとも使用方法の点において、本願補正発明の付着材とは異なる旨を主張している。 しかしながら、引用例4には、「鋼管2は、図2に示すように、内側に、無機質主剤コンパウンドエマルジョン4が予めコーテイングされている。これにより、鋼管2の防錆性が保持される。」(段落【0019】)と記載されているように、鋼管の内側に無機質主剤コンパウンドエマルジョンを予めコーテイングすることも記載されており、また、無機質主剤コンパウンドエマルジョンの具体例であるマイティCFは、防錆、接着、防水、止水などのために、鋼材に塗布するものであることも明らかであるから(引用例4の段落【0024】,【0025】)、マイティCF(本願補正発明の「炭素繊維を含有した無機系塗料でセメント系のコンパウンドを混合した付着材」に相当する。)を、防錆、接着、防水、止水などのために、コンクリートを充填させる前の床鋼板上面に予め塗布することは、当業者が容易に着想し得ることであり、そのようにすることに、技術的に困難な事情もないといえる。 また、マイティCFは、付着性に優れ、鉄やコンクリート等の母材の曲げ、ねじれ、引張に追随し、衝撃に強く、亀裂や剥離を生じにくいものであるから(引用例4の段落【0025】)、当業者であればその付着性に着目することも容易であるといえる。 そして、本願補正発明の「炭素繊維を含有した無機系塗料でセメント系のコンパウンドを混合した付着材」に相当するマイティCFを、コンクリートを充填させる前の床鋼板上面に予め塗布した際には、本願補正発明と同様に床鋼板とコンクリートとの一体化が強化されるものといえる。 よって、請求人の主張は採用できない。 (4)むすび したがって、本願補正発明は、引用発明並びに引用例2及び4記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、拒絶査定時の平成25年5月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「梁上に設置された複数のリブを有する床鋼板と、 前記床鋼板の上面に塗布される付着材と、 前記付着材を介して前記床鋼板上に充填され打設されるコンクリートと を備え、 前記複数のリブは、板リブであり、 前記付着材は、炭素繊維を含有した無機系塗料でセメント系のコンパウンドを混合した付着材であり、厚さが10μm?1000μmに形成されており、前記床鋼板と前記コンクリートとの付着力を高めるために用いる ことを特徴とする合成床版。」 第4 引用例に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1ないし4の記載事項は、前記第2の3(1)に記載したとおりである。 第5 対比・判断 本願発明は、前記第2の1の本願補正発明から、「前記付着材を介して前記床鋼板上に充填され打設されるコンクリート」に係る構成の限定事項である「予め前記付着材が塗布された」との構成を省き、また、「板リブ」に係る構成の限定事項である「張り出し部の無い」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の3(3)に記載したとおり、引用発明並びに引用例2及び4記載の技術事項に基づいて、 当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由で、引用発明並びに引用例2及び4記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明並びに引用例2及び4記載の技術事項にに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-01-21 |
結審通知日 | 2015-01-27 |
審決日 | 2015-02-09 |
出願番号 | 特願2009-260098(P2009-260098) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E01D)
P 1 8・ 575- Z (E01D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石川 信也 |
特許庁審判長 |
中川 真一 |
特許庁審判官 |
住田 秀弘 小野 忠悦 |
発明の名称 | 合成床版及びそれを用いた橋梁 |
代理人 | 伊丹 勝 |