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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E06B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E06B
管理番号 1299164
審判番号 不服2014-1794  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-31 
確定日 2015-03-26 
事件の表示 特願2010- 57328号「網戸取付け用面ファスナー」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月29日出願公開、特開2011-190604号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成22年3月15日の出願であって、平成25年5月13日付け拒絶理由通知に対して、平成25年7月2日受付けの手続補正がなされ、さらに平成25年8月27日付け拒絶理由通知(最後)に対して、平成25年10月17日受付けの手続補正がなさたが、平成25年10月31日付けで平成25年10月17日受付けの手続補正が却下され、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成26年1月31日に拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。


第2.平成26年1月31日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成26年1月31日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正事項
平成26年1月31日の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1の補正を含むものであり、請求項1について、
補正前の
「機能性物体の裏面に取り付けられた面ファスナー(a)と、網戸の網面を挟んで存在するもう一方の面ファスナー(b)を係合させることにより該機能性物体を網面に取り付けるのに用いられる面ファスナーであって、該面ファスナー(a)と(b)のいずれか一方が、地経糸、フック用モノフィラメントおよび地緯糸から形成される織物の表面に該モノフィラメントからなるフック状係合素子が形成されており、フック状係合素子の素子密度8?24個/cm^(2)のフック面ファスナーであり、他方がマルチフィラメントからなるループ状係合素子を有する面ファスナーであることを特徴とする網戸取付け用面ファスナー。」
から、
補正後の
「機能性物体の裏面に取り付けた面ファスナー(a)と、網戸の網面を挟んで存在するもう一方の面ファスナー(b)を係合させることにより該機能性物体を網面に取り付けるのに用いられる面ファスナーであって、該面ファスナー(a)と(b)のいずれか一方が、地経糸、フック用モノフィラメントおよび地緯糸から形成される織物の表面に該モノフィラメントからなるフック状係合素子が形成されており、フック状係合素子の素子密度12?20個/cm^(2)のフック面ファスナーであり、他方がマルチフィラメントからなるループ状係合素子を有する面ファスナーであることを特徴とする網戸取り付け用面ファスナー。」
へ補正された。(下線部は、補正箇所である。)

2.補正の目的及び新規事項の追加の有無
請求項1に係る上記補正のうち、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「フック状係合素子の素子密度」について、「8?24個/cm^(2)」を「12?20個/cm^(2)」とする補正事項は、上記「素子密度」の範囲をさらに限定するものであって、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、上記補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、上記補正事項は新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開昭55-122987号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。

(a)「2 特許請求の範囲
面状フアスナを介在させて物品を網に付着させる方法に於いて、面状フアスナは多数の鉤を備えた織布と多数のループを備えた織布とから成り、鉤は網目より充分細く、網の厚みより充分長いものであり、且つ一方の織布は物品に取りつけ、両織布を網を挟んで係合させることを特徴とする網に物品を取付ける方法」

(b)「本発明はこの様な点に鑑みてなされたものであつて、あらかじめ網とは別体に形成した模様片等を網に取付けることによつて、網を装飾し、採光量等の調節を図るもので、特にこれを着脱自在にすることによつてその効果を著しく多様化するものである。
ここで面状フアスナについて説明すると、このものは例えば特公昭35-522号に示される様なものであつて、二枚の織布から成つており、一方の織布の表面には多数の鉤を備え、他方の織布には多数のループを備えて、この両者を押し合わせることによつて鉤とループとを係合させ、これによつて両者を接着するのである。」(第2頁左上欄第1?13行目)

(c)「図中、符号1は網戸に使用する網であつて、太さ0.1ミリメートル程度のモノフイラメントを用い、網目を2ミリメートル程度にしたものである。
符号2及び3は、一組の面状フアスナを構成する織布であつて織布2には多数の鉤4を備え、織布3には多数のループ5を備えるものであり、この種の面状フアスナと変るところはない。
ここに於いて鉤4は網目を貫通する充分な程度に小さく、しかもこれを網の一方の面から貫通させたとき、その大部分が他方の面に突出して、鉤としての効果を失なわない程度に充分に長い(例えば2ミリメートル程度)とする。」(第2頁右上欄第12行目?左下欄第4行目)

(d)「この織布2若しくは3を網1に付着しようとする物6にあらかじめ取付けておく。そして、これに取付けた織布を網に押しつけ、上記した様に網に固定するのである。」(第2頁左下欄第9?12行目)

(e)図には、物6の裏面に、多数のループ5を備えた織布3が取り付けられていることが開示されている。

したがって、上記記載事項を総合すれば、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「網を装飾し、採光量の調節を図るための物の裏面に取り付けた、多数の鉤4を備えた織布2と、多数のループ5を備えた織布3とを、網戸に使用する網を挟んで係合させる面フアスナ。」

(2)対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「網を装飾し、採光量の調節を図るための物」は、本件補正発明の「機能性物体」に相当し、以下同様にして、
「織布2」、「織布3」は、「織物」に、
「鉤4」は、「フック状係合素子」に、
「ループ5」は、「ループ状係合素子」に、
「面フアスナ」は、「網戸取り付け用面ファスナー」に、
「多数の鉤4を備えた織布2」は、「面ファスナー(a)」に、
「網戸に使用する網」は、「網戸の網面」に、
「多数のループ5を備えた織布3」は、「網戸の網面を挟んで存在するもう一方の面ファスナー(b)」に、
相当する。

また、面ファスナーの技術分野においては、一般的に織面ファスナーか成形面ファスナーが使用されており、織面ファスナーは通常、地経糸、フック用モノフィラメントおよび地緯糸から形成される織物の表面にモノフィラメントからなるフック状係合素子が形成されており、ループ状係合素子はマルチフィラメントからなるものである。
よって、引用発明1の「多数の鉤4を備えた織布2」は、本件補正発明の「地経糸、フック用モノフィラメントおよび地緯糸から形成される織物の表面に該モノフィラメントからなるフック状係合素子が形成され」た「面ファスナー(a)」に相当し、引用発明1の「多数のループ5を備えた織布3」は、本件補正発明の「マルチフィラメントからなるループ状係合素子を有する面ファスナー」である「面ファスナー(b)」に相当する。

そうすると、両者は、
「機能性物体の裏面に取り付けた面ファスナー(a)と、網戸の網面を挟んで存在するもう一方の面ファスナー(b)を係合させることにより該機能性物体を網面に取り付けるのに用いられる面ファスナーであって、該面ファスナー(a)と(b)のいずれか一方が、地経糸、フック用モノフィラメントおよび地緯糸から形成される織物の表面に該モノフィラメントからなるフック状係合素子が形成されているフック面ファスナーであり、他方がマルチフィラメントからなるループ状係合素子を有する面ファスナーである網戸取り付け用面ファスナー。」
である点で一致しており、次の点で相違する。

(相違点)
本件補正発明において、フック状係合素子の素子密度が12?20個/cm^(2)であるのに対し、引用発明1においては、鉤の密度が明記されていない点。

(3)判断
上記(相違点)について検討する。

(a)織面ファスナーのフック状係合素子を1cm^(2)あたり10?20本程度とすることは、下記に示すように本願出願日前に周知である。(以下「周知技術」という。)
例えば、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開平7-62806号公報には、「ベース面に多数のフック状係合素子を有する面ファスナーとしては、・・・成形面ファスナー、或は・・・合成繊維・再生繊維を主体とした繊維を製編織して得た編織面ファスナーである。
該フック状係合素子はキノコ状・やじり状・傘状・鈎状等の形状でありループ状係合素子と係合しやすい形状であれば良い。
これらフック状係合素子の高さは、通常0.5?6mm、好ましくは1.2?2.5mmが適当である。フック状係合素子を有する面ファスナーの1cm^(2)あたりの係合素子の数は10?50本、好ましくは20?30本であり、ループ状係合素子を有する面ファスナーの1cm^(2)あたりの係合素子の数は500?10000本、好ましくは1500?7000本である。」と記載されている。
特開2001-81716号公報の【0039】の【表1】には、実施例3及び4として、モノフィラメントの密度が19個/cm^(2)のものが記載されている。
実願昭59-200467(実開昭61-113614号)のマイクロフィルムには、「これをループ糸として、地組織は6ナイロン210デニール12フィラメント糸を用いて第9図図示の二重パイル織物を作成した後、・・・サクランボ型膨頭子の数は約90個/in^(2)であった。」と記載されており、90個/in^(2)は約14個/cm^(2)である。

(b)そうすると、引用発明1及び上記周知技術はともに、織面ファスナーに関する技術であるので、引用発明1において、織面ファスナーにおける周知技術を採用することで、鉤の密度を12?20個/cm^(2)として、本件補正発明の相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(c)また、本件補正発明の作用効果は、引用発明1及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別なものではない。

(d)したがって、本件補正発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成26年1月31日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成25年7月2日受付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「機能性物体の裏面に取り付けられた面ファスナー(a)と、網戸の網面を挟んで存在するもう一方の面ファスナー(b)を係合させることにより該機能性物体を網面に取り付けるのに用いられる面ファスナーであって、該面ファスナー(a)と(b)のいずれか一方が、地経糸、フック用モノフィラメントおよび地緯糸から形成される織物の表面に該モノフィラメントからなるフック状係合素子が形成されており、フック状係合素子の素子密度8?24個/cm^(2)のフック面ファスナーであり、他方がマルチフィラメントからなるループ状係合素子を有する面ファスナーであることを特徴とする網戸取付け用面ファスナー。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1の記載事項は、上記第2の3.(1)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2の2.で検討した本件補正発明の「フック状係合素子の素子密度」の限定事項である「12?20個/cm^(2)」との構成を、「8?24個/cm^(2)」としたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含んだものに相当する本件補正発明が、前記第2の3.(3)において判断したとおり、引用発明1及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4. むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-13 
結審通知日 2015-01-20 
審決日 2015-02-06 
出願番号 特願2010-57328(P2010-57328)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E06B)
P 1 8・ 121- Z (E06B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深田 高義  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 門 良成
住田 秀弘
発明の名称 網戸取付け用面ファスナー  

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