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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  H04W
審判 一部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  H04W
管理番号 1299196
審判番号 無効2013-800127  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-07-22 
確定日 2015-03-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第4021622号発明「ディジタル有効データの伝送方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は請求人の負担とする。 
理由
第1.手続の経緯

1.本件特許第4021622号(以下「本件特許」という)は、平成11年7月23日(優先権主張外国庁受理1998年7月24日、ドイツ)に国際出願され、平成19年10月5日に本件特許の設定登録がなされた。

2.請求人は、平成25年7月22日の審判請求書において、本件特許に係る明細書の特許請求の範囲の請求項の請求項1、2、3、4、7、8、9、10、13、14及び15に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めた。

3.被請求人は、平成25年11月11日付けで答弁書を提出すると共に訂正請求書(1)を提出した。

4.請求人は、平成26年1月6日付けで、弁駁書(1)を提出した。

5.合議体は平成26年3月17日付けで審理事項を通知し、請求人及び被請求人は平成26年4月30日付けで口頭審理陳述要領書をそれぞれ提出した。

6.平成26年5月14日に口頭審理を行い、請求人は平成26年5月21日付けで上申書を提出し、被請求人は平成26年6月4日付けで上申書を提出した。

7.合議体は平成26年8月5日に審決の予告を行った。

8.被請求人は、平成26年11月6日付けで訂正請求書(2)を提出した。

9.請求人は、平成26年12月26日付けで、弁駁書(2)を提出した。


第2.訂正の可否に対する判断

[訂正の結論]

訂正を認めない。

[理由]

1.本件訂正の内容

平成26年11月6日付けで訂正請求書(2)が提出されたので、平成25年11月11日付けの訂正請求書(1)は、特許法第134条の2第6項の規定により、取り下げられたものとみなす。

平成26年11月6日付け訂正請求書(2)の内容は、願書に添付された明細書を、訂正請求書(2)に添付した訂正明細書のとおり一群の請求項ごとに訂正しようとするもの(以下「本件訂正請求」という。)であり、請求項1?6からなる一群の請求項、及び、請求項7?15からなる一群の請求項に係る発明について、

特許請求の範囲の請求項1の末尾に
「することを特徴とする、第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法。」とあるのを「する方法であって、前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式が、前記中間局から前記第2の移動局へのディジタルデータの送信のための前記チャネル符号化の符号化形式とは別個に選択されることを特徴とする第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法」に訂正(以下「本件訂正1」という。)するものであり、

特許請求の範囲の請求項7に
「第1の通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化し、次に第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化し、」とあるのを、「第1の通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化し(ただし、VSELPによる符号化及びPSI-CELPによる符号化を除く。)、次に第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化し、」に訂正(以下「本件訂正2」という)するものである。

2.本件訂正請求に対する被請求人の主張の概要

本件訂正1は、訂正前の請求項1における「第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法」において、「前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式が、前記中間局から前記第2の移動局へのディジタルデータの送信のための前記チャネル符号化の符号化形式とは別個に選択される」ことに限定するものであり、本件訂正1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。

本件訂正2は、訂正前の請求項7における「第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法」において、「第1の通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化し、次に第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化」する工程について、VSELPによる符号化及びPSI-CELPによる符号化を除くことに限定するものであり、本件訂正2は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。

3.本件訂正請求に対する請求人の主張の概要

本件訂正1は、第1の移動局は、GSM又は第1の通信規格に従い情報源符号化することが記載されているのみであり、着側である第2の通信ネットワークでのチャネル符号化形式に基づき、それとは「別個」となる様に、第1通信ネットワークでの情報源符号化形式を「選択」することを示す記載は無いから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものではなく、本件訂正1は、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項に違反するものとなり、認められない。

本件訂正2は、明細書に一切開示されていないVSELP及びPSI-CELPを除こうとするものであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものではなく、本件訂正2は、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項に違反するものとなり、認められない。

4.当審の本件訂正請求に対する判断

本件訂正1について

願書に添付された明細書及び図面には、第1段階でのディジタルデータの符号化形式を「選択」することを示す記載は無い。
また、本件訂正1が自明の技術的事項であるということもできない。
よって、本件訂正1は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項に規定する要件に適合しないので、本件訂正1を認めることはできない。

本件訂正2について

願書に添付された明細書及び図面には、「VSELP及びPSI-CELP」に関する記載は無い。
また、本件訂正2が自明の技術的事項であるということもできない。
よって、本件訂正2は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項に規定する要件に適合しないので、本件訂正2を認めることはできない。

以上のとおりであるから、平成26年11月6日付けの訂正を認めない。


第3.本件特許発明に対する判断

1.本件特許発明の内容

上記のとおり、平成26年11月6日付けの訂正は認められないから、本件特許第4021622号の請求項1、2、3、4、7、8、9、10、13、14及び15に係る特許発明については、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1、2、3、4、7、8、9、10、13、14及び15に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法において、
第1の通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化し、次に第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化し、
前記の第1段階および第2段階で符号化されたディジタルデータを前記第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して中間局へ伝送し、
該中間局により、前記第2段階で符号化されたディジタルデータチャネルを復号し、
第2の通信ネットワーク内での伝送のため、前記中間局により前記ディジタルデータをチャネル符号化し、前記第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して、チャネル符号化された前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局へ前記中間局からシグナリングデータを伝送し、該シグナリングデータは、前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2の移動局により、前記中間局において符号化されたディジタルデータチャネルをチャネル復号し、
前記第2の移動局により復号されたディジタルデータチャネルを、該第2の移動局が受信した前記シグナリングデータに依存して、該第2の移動局により情報源復号することを特徴とする、
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法。
【請求項2】
前記の第1段階および第2段階において符号化されたディジタルデータを前記中間局へ伝送する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記中間局において、復号されたディジタルデータチャネルに対し前記シグナリングデータを付加して、前記第2の通信ネットワークにおける伝送のためにビット流を生成し、
前記ビット流におけるディジタルデータとシグナリングデータを、前記中間局によりチャネル符号化し、
前記ビット流におけるディジタルデータおよびシグナリングデータを、前記第2の通信ネットワークにおける伝送チャネルを介して前記第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局により、前記ビット流におけるディジタルデータおよびシグナリングデータをチャネル復号し、
該第2の移動局により第2段階でチャネル復号されたディジタルデータを、該第2の移動局が復号したシグナリングデータに依存して、該第2の移動局により情報源復号する、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
第1の通信ネットワークにおけるディジタルデータを第1の移動無線規格に従い伝送し、該ディジタルデータをそれぞれ第1段階および第2段階で情報源符号化およびチャネル符号化し、
第2の通信ネットワークにおけるディジタルデータをチャネル符号化し、第2の移動無線規格に従いシグナリングデータといっしょに伝送し、該シグナリングデータは、前記第1の移動無線規格による前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2段階で符号化され前記第2の移動局により復号されたディジタルデータを、前記シグナリングデータの評価に応じて前記第1の移動無線規格に従い復号する、請求項1記載の方法。」

「【請求項7】
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法において、
第1の通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化し、次に第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化し、
前記の第1段階および第2段階で符号化されたディジタルデータを前記第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して中間局へ伝送し、
該中間局により、前記第2段階で符号化されたディジタルデータチャネルを復号し、
第2の通信ネットワーク内での伝送のため、前記中間局により前記ディジタルデータをチャネル符号化し、次に前記第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して、チャネル符号化された前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局へ前記中間局からシグナリングデータを伝送し、該シグナリングデータは、前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2の移動局により、前記中間局において符号化されたディジタルデータチャネルをチャネル復号し、
前記第1段階で符号化されたディジタルデータを、該第2の移動局が受信した前記シグナリングデータに依存して、該第2の移動局により復号することを特徴とする、
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法。
【請求項8】
前記の第1段階および第2段階において符号化されたディジタルデータを前記中間局(15)へ伝送する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
第2段階でチャネル符号化され前記中間局において復号されたディジタルデータに対し前記シグナリングデータを付加して、前記第2の通信ネットワークにおける伝送のためにビット流を生成し、
前記ビット流におけるディジタルデータとシグナリングデータを、前記中間局により符号化し、
前記ビット流におけるディジタルデータおよびシグナリングデータを、前記第2の通信ネットワークにおける伝送チャネルを介して前記第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局により、前記ビット流における第2段階で符号化されたディジタルデータおよびシグナリングデータを復号し、
第1段階で符号化され前記第2の移動局により第2段階でチャネル復号されたディジタルデータを、該第2の移動局が復号したシグナリングデータに依存して、該第2の移動局により復号する、
請求項7記載の方法。
【請求項10】
第1の通信ネットワークにおけるディジタルデータを第1の移動無線規格に従い伝送し、該ディジタルデータを第1段階および第2段階で情報源符号化およびチャネル符号化し、
第2の通信ネットワークにおいて符号化されたディジタルデータをチャネル符号化し第2の移動無線規格に従いシグナリングデータといっしょに伝送し、該シグナリングデータは、前記第1の移動無線規格による前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2段階でチャネル符号化され前記第2の移動局によりチャネル復号されたディジタルデータを、前記シグナリングデータの評価に応じて前記第1の移動無線規格に従い該第2の移動局により復号する、請求項7記載の方法。」

「【請求項13】
前記シグナリングデータを1回または複数回、別個のコントロールチャネルを介して中間局から第2の移動局へ伝送する、請求項1または7記載の方法。
【請求項14】
前記第1段階におけるディジタルデータ符号化形式に関する情報を含む前記シグナリングデータとともに、前記第1の移動局の呼出番号を伝送する、請求項1、3、7または9記載の方法。
【請求項15】
前記ディジタルデータとしてビデオデータ、オーディオデータ、テキストデータ、音声データのうち少なくとも1つのデータを伝送する、請求項1または7記載の方法。」

2.請求人の主張の概要

請求人は、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証(後記「(3)証拠方法」参照)を提出し、次の事項をもとに無効理由1及び2を主張している。

甲第1号証には、移動機1Aから移動機1Bに音声を符号化したディジタルデータを伝送する方法において、移動機1Aから基地局2Aへの伝送のため、移動機1Aが第1段階で音声符号化し、第2段階で音声符号化されたディジタルデータの畳み込み符号化を行って無線チャネル信号を生成することと、移動機1Aが、この無線チャネル信号を基地局2Aに無線チャネルを介して伝送することと、基地局2Aは、受信した無線チャネル信号を畳み込み復号してマルチレート信号に変換することと、このマルチレート信号は、交換局3をスルーで通過して基地局2Bにそのまま伝送されることと、基地局2Bから移動機1Bへの伝送のため、基地局2Bが、基地局2Aから受信するマルチレート信号を畳み込み符号化して無線チャネル信号に変換し、この無線チャネル信号を、無線チャネルを介して移動機1Bに送信することと、移動機1Bは、基地局2Bから受信する無線チャネル信号に対して畳み込み復号を行うことと、移動機1Bは、畳み込み復号後のディジタルデータの音声復号を行うことが記載されている。(審判請求書32頁)

甲第2号証には、フルレートとハーフレート音声CODECを備える携帯電話に対して、基地局から符号化方式を通知し、移動端末において符号化方式の検出を行い、フルレートとハーフレートの切り替えを行うことが記載されている。(審判請求書32-33頁)
基地局から携帯端末への符号化方式の通知は、制御のための信号であり、符号化形式に関するシグナリングデータに対応する。(審判請求書39-40頁)

甲第3号証には、発呼側の移動局から着呼側の移動局へ網を介して音声を符号化したディジタルデータを伝送する方法において、発呼側の移動局から網へ伝送のため、発呼側の移動局は、第1段階でVSELP又はPSI-CELPで音声を符号化し、次いで、第2段階で音声符号化されたディジタルデータを畳み込み符号化、つまり伝送路符号化することと、発呼側の移動局は、第1段階および第2段階で符号化されたディジタルデータを、発呼側の移動局と網との間の情報チャネルを介して網に伝送することと、網は、網から着呼側の移動局への伝送のため、網と着呼側の情報チャネルを介して、畳み込み符号化されたディジタルデータを着呼側の移動局に伝送することと、網は、着呼側の移動局に、着呼側の移動局に伝送するディジタルデータの音声符号化形式に関する情報を含むシグナリングデータを伝送することと、着呼側の移動局は、網からの符号化されたディジタルデータの畳み込み復号を行うことと、着呼側の移動局は、チャネル復号したディジタルデータの音声復号を行うことが記載されている。(審判請求書34-35頁)

甲第4号証には、移動機間における通信においては網内で音声符号の変換を行わないコーデック・スルー通信を行うこととその利点が記載され、さらに、移動機からの信号を無線基地局で誤り訂正復号して、誤り訂正のための冗長ビットを基地局で取り除くことで、基地局と音声処理装置の間の多重度を増加できることが記載されている。(審判請求書35-36頁)

甲第5号証には、画像の圧縮符号化として、JPEG、MPEG1、MPEG2といった標準方式が存在すること、音声の圧縮符号化としてG.728、LD-CELP等が存在することが記載されている。(審判請求書36頁)

甲第6号証には、テキスト符号化形式として、基本ASCII符号や、DBCS、UNICODEや、ASCIIの種々の国語バリエーションが存在することが記載されている。(審判請求書36頁)

甲第7号証には、発信無線状態報告メッセージには移動局種別フィールドが含まれており、移動局種別フィールドは発信側の移動局がフルレートのみに対応しているのか、フルレートとハーフレートの両方に対応しているのかを網に通知するためのフィールドであることが記載されている。(弁駁書(1)17頁)

甲第8号証には、PDCのハーフレート方式は1995年10月に商用サービスとして開始されていることが記載されている。(弁駁書(1)3頁)

甲第9号証には、本件特許発明の「中間局」に関し、「1つまたは複数の任意の固定ネットワークならびに必要に応じてそれ相応の中間局を介し」の具体的な構成は、中間局を複数の装置で構成し、各装置間を固定ネットワークで接続する構成も含まれ、その際の条件は、第1の移動局に最も近い装置が受信機能を有し、受信機能を有する装置より音声信号の方向において下流側の装置が送信機能を有すること、受信機能と送信機能の間において、音声信号の方向に沿って、チャネル複合機能とチャネル符号化機能を交互に同じ数だけ設けることと、いずれかの装置にシグナリング機能を設けること、であることが記載されている。(請求人の口頭審理陳述要領書5-10頁)

(1)無効理由1

本件特許の請求項1、2、3、4、7、8、9、10、13、14及び15に係る発明は、甲第1号証から甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第123条第1項第2号に該当するから無効とすべきである。

請求項1に記載された発明と甲第1号証の相違点は、請求項1に記載された発明では、中間局から第2の移動局に第1の移動局での第1段階におけるシグナルデータの符号化形式に関する情報を含むシグナリングデータを送信し、第2の移動局は、中間局から受信するシグナリングデータに依存して、情報源復号を行うが、甲第1号証においては、符号化形式に関する情報を含むシグナリングに関する記載が無い点。(審判請求書39頁)

甲第4号証には、HR方式の移動機間においてもVSELP(フルレート)によるCEDECスルー通信を採用したことが記載されているように、HR方式の移動機はフルレート方式にも対応しているため、移動機がVSELPかPSI-CELP(ハーフレート)のどちらを使用すれば良いかを網側から指定しなければならないことを規定しており、甲第3号証には、移動機が使用すべき音声符号化形式に関する情報が網側から移動機に通知されていたことが記載されているように、ハーフレート方式とフルレート方式とを混在して利用する環境は整っていたのが優先日当時の通信技術である。
なお、甲第8号証には、PDCのハーフレート方式が優先日前の1995年10月に商用サービスとして開始されていたことが記載されている。(弁駁書(1)2-3頁)

甲第2号証及び甲第3号証によれば、本件特許の優先日前にデジタル方式の携帯電話においてハーフレートとフルレートを使うことは知られており、甲第1号証に記載の構成を複数の符号化形式が混在するのに対応させるため、甲第1号証に記載の構成に甲第2号証又は甲第3号証に記載の技術を適用して、符号化形式を中間局が第2の移動局にシグナリングデータで通知し、第2の移動局においてシグナリングデータで通知した符号化形式に依存して情報源復号させる構成とすることは当業者には容易に想到し得ることであり、コーデック・スルーの利点を享受するために、中間局は第1の移動局での符号化方式を第2の移動局に通知し、中間局では、第1の移動局が行った情報源符号化によるデータを、そのまま第2の移動局に伝送する構成とすることも、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、請求項1に記載された発明は、甲第1号証から甲第3号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書39-40頁)

ここで、甲第3号証として提出しなかった頁である甲第7号証に、発信側の移動局がフルレートのみに対応しているかフルレートとハーフレートの両方に対応しているのかを示す移動局種別フィールドが発信無線状態報告メッセージに含まれていること、着信無線状態報告メッセージにも移動局種別フィールドが含まれており着信側の移動局もフルレートのみに対応しているかフルレートとハーフレートの両方に対応しているのかを網に通知することが記載されているから、甲第3号証においては、網は発信側及び着信側の移動局のそれぞれから、フルレートに対応しているのかハーフレートとフルレートの両方に対応しているのかの通知を受け取り、発信側及び着信側の移動局それぞれにハーフレートを使用するのかフルレートを使用するのかを通知しており、着信側の符号化形式を発信側の符号化形式に調整させることは可能である。(弁駁書(1)16-18頁)

請求項2、3、4に記載された発明も、甲第1号証から甲第3号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書41-44頁)

請求項7に記載された発明と甲第1号証の相違点も、請求項1に記載された発明と甲第1号証の相違点と同じであるから、同様の理由により、請求項7に記載された発明は、甲第1号証から甲第3号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書46頁)

請求項8、9、10、13、14に記載された発明も、甲第1号証から甲第3号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書46-48頁)

請求項15に記載された発明も、ビデオデータ、テキストデータ、オーディオといった情報源に対しても種々の符号化方式が記載されていることが甲第5号証、甲第6号証に記載されているように周知であるから、甲第1号証から甲第3号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書48頁)

(2)無効理由2

本件特許の請求項1、2、3、4、7、8、9、10、13、14及び15に係る発明は、甲第3号証、甲第1号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第123条第1項第2号に該当するから無効とすべきである。

請求項1に記載された発明と甲第3号証の相違点は、3つ存在する。
相違点1は、請求項1に記載された発明では、第1の移動局における第1段階で符号化されたディジタルデータがそのまま第2の移動局に送信されるが、甲第3号証には第1段階で符号化されたディジタルデータがそのまま第2の移動局に送信されるか否かについての記載はない点。
相違点2は、請求項1に記載された発明では、中間局は第1の移動局における第1段階でのディジタルデータの符号化形式を含むシグナリングデータを第2の移動局に送信しているが、甲第3号証においては、中間局が第2の移動局に送信するシグナリングデータは、中間局が第2の移動局に送信するディジタルデータの符号化形式を示す物であるが、これが第1の移動局における第1段階での符号化形式と同じであるか否かについての記載がない点。
相違点3は、請求項1に記載された発明では、第2段階でのチャネル符号は、中間局において復号され再度チャネル符号化が行われるが、甲第3号証においては第2段階でのチャネル符号が中間局において一旦復号されるのかそのまま第2の移動局に伝送されるかについての記載が無い点。(審判請求書51-52頁)

相違点1と相違点2について、第1の移動局と第2の移動局で通信する場合、中間局における音声データの伝送としては中間局において音声の符号化形式の変換を行う方式と、中間局においては音声の符号化形式の変換を行わずそのまま第2の移動局に伝送するコーデック・スルー方式の2通りが知られており、甲第1号証や甲第4号証にはコーデック・スルー方式が周知技術であることが示されている。
相違点3について、コーデック・スルー方式において伝送すべき音声データのチャネル符号を中間局において一旦復号しその後再度チャネル符号化して着呼側の移動局に伝送することも甲第1号証や甲第4号証に記載されるように周知技術であるから、甲第3号証に記載された発明において甲第1号証及び甲第4号証に記載されている周知技術を適用し、第1の移動局における第2段階でのチャネル符号を中間局において一旦復号しその後再度チャネル符号化して第2の移動局に伝送する構成とすることは当業者には容易に想到し得ることである。
したがって、請求項1に記載された発明は、甲第3号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたもの、或いは、甲第1号証、甲第3号証及び甲第4号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書52-53頁)

請求項2、3、4に記載された発明も、甲第3号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたもの、或いは、甲第1号証、甲第3号証及び甲第4号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書53-56頁)

請求項7に記載された発明と甲第3号証の相違点も、請求項1に記載された発明と甲第3号証の相違点と同じであるから、同様の理由により、請求項7に記載された発明は、甲第3号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたもの、或いは、甲第1号証、甲第3号証及び甲第4号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書57頁)

請求項8、9、10、13、14に記載された発明も、甲第3号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたもの、或いは、甲第1号証、甲第3号証及び甲第4号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書57-59頁)

請求項15に記載された発明も、ビデオデータ、テキストデータ、オーディオといった情報源に対しても種々の符号化方式が記載されていることが甲第5号証、甲第6号証に記載されているように周知であるから、甲第3号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたもの、或いは、甲第1号証、甲第3号証及び甲第4号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書59-60頁)

(3)証拠方法

甲第1号証 特開平8-331644号公報
甲第2号証 特開平8-166800号公報
甲第3号証 デジタル方式自動車電話システム 標準規格 RCT STD-27C 3、5-6、34-35、45、48、260、271-273、276、317-318、321-322、589、621、631、636、643、752、762、764頁
甲第4号証 NTT DoCoMoテクニカルジャーナル Vol.3 No.3 6-21頁
甲第5号証 特開平8-18622号公報
甲第6号証 特開平7-203177号公報
甲第7号証 デジタル方式自動車電話システム 標準規格 RCT STD-27C 192-195、207、219-220頁
甲第8号証 NTT DoCoMoテクニカルジャーナル Vol.4 No.4 6-8頁
甲第9号証 東京地方裁判所 平成21年(ワ)第17937号 特許権侵害差止等請求事件の訴状

3.被請求人の主張の概要

無効理由1について
甲第1号証に記載された発明において、発側の移動機の「ディジタルデータの符号化形式」を中間局に伝える必要も無く、中間局が発側の移動機の「ディジタルデータの符号化形式」を着側の移動機に伝える必要もない。(答弁書4頁)
甲第2号証、甲第3号証が開示する中間局から移動局に通知される情報は、中間局がサポートする音声符号化形式だけであり、発信側の携帯端末に関する第1段階の符号化形式ではない。(答弁書4、16頁)
したがって、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明を組み合わせたところで、本件発明の構成は得られない。(答弁書4頁)

無効理由2について
甲第3号証に係る標準規格は発信移動局と網との間の通信、網と着信移動局との間の通信を規定するものであり、「伝達能力」は網が提供する伝達機能の要求であって、発信移動局の符号化形式に関する情報を網を介して着信移動局に伝達するという発想は無い。甲第3号証に記載された発明には、発側移動局の符号化形式に関する情報を網を介して着信移動局に伝達するという発想は無い。(答弁書6頁)
甲第1号証に記載された発明、甲第4号証に記載された発明についても、同様に発信移動局の符号化形式に関する情報を、網を介して着信移動局に伝達するという発想はないから、甲第3号証に記載された発明に甲第1号証に記載された発明、甲第4号証に記載された発明を組合せても本願発明の構成は得られない。(答弁書6頁)

4.当審の判断

(1)無効理由1について

ア.本件特許発明1について

(ア)本件特許発明1

本件特許発明1は、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法において、
第1の通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化し、次に第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化し、
前記の第1段階および第2段階で符号化されたディジタルデータを前記第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して中間局へ伝送し、
該中間局により、前記第2段階で符号化されたディジタルデータチャネルを復号し、
第2の通信ネットワーク内での伝送のため、前記中間局により前記ディジタルデータをチャネル符号化し、前記第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して、チャネル符号化された前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局へ前記中間局からシグナリングデータを伝送し、該シグナリングデータは、前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2の移動局により、前記中間局において符号化されたディジタルデータチャネルをチャネル復号し、
前記第2の移動局により復号されたディジタルデータチャネルを、該第2の移動局が受信した前記シグナリングデータに依存して、該第2の移動局により情報源復号することを特徴とする、
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法。」

(イ)甲第1号証

甲第1号証には、次の記載(下線は当審が付与)がある。

(あ)「【0003】このようなPDCシステムにおいて、移動機1は送信機10に対して音声符号化部(復号化部)11とCRC演算部(チェック部)12と畳み込み符号化部(復号化部)13とスロットインタリーブ部(デインタリーブ部)14とが順に接続されており、この構成は図5に詳しく示されている。
【0004】すなわち、送信機10からの送信信号は音声符号化部11で符号化され、この内の音声処理に重要なクラス1の75ビット中の聴覚的に最も重要な44ビットをCRC演算部12に送ってCRC(Cyclic Redundancy Check) 演算を行い、これを7ビットの形で音声符号化部からのクラス1の75ビットとともに畳み込み符号化部13に与える。
【0005】畳み込み符号化部13では5つのテールビットを加えて7+75+5=87ビット入力とし、これをレート1/2畳み込み符号で得られる174ビットに9ビットの穴あけをすることによりレート9/17畳み込み符号を実現し、174-9=165ビットの畳み込み符号化されたクラス1のビットに変換してスロットインタリーブ部14に送る。
【0006】このスロットインタリーブ部14では音声符号化部11からの音声処理における重要度が比較的低いクラス2の59ビットを合わせて入力し、これらの入力ビットにより224ビットの3チャネル分多重化されたV.SELP符号の無線チャネル信号が出力されるようになる。
【0007】なお、この図5の構成は音声処理装置31においても同様のコーデックとなっている。」

(い)「【0014】
【発明が解決しようとする課題】上記の図6に示したマルチレート伝送を導入した従来の移動通信システムにおいては、移動機1をデジタル移動網5を介してデジタル移動機と接続する場合、図7に示すように、移動機1Aと基地局2Aと交換局3の音声処理装置31とで発呼側のシステムを構成し、移動機1Bと基地局2Bと交換局3の音声処理装置33とで着呼側のシステムを構成する。
【0015】そして、発呼側の基地局2Aにおいてスロットデインタリーブ部21でスロットデインタリーブを行い、畳み込み復号化部22で畳み込み復号化を行い、発呼側の音声処理装置31において畳み込み符号化部313で畳み込み符号化を行い、スロットインタリーブ部314でスロットインタリーブを行って224ビット/20msの無線チャネル信号に変換する。
【0016】この無線チャネル信号を交換機32を介して着呼側の音声処理装置33に送り、ここでスロットデインタリーブ部314でスロットデインタリーブを行い、畳み込み復号化部313で畳み込み復号化を行って141ビット/20msのマルチレート信号に変換してから着呼側の基地局2Bに送出する。
【0017】そして、この着呼側の基地局2Bにおいて畳み込み符号化部22で畳み込み符号化を行い、スロットインタリーブ部21でスロットインタリーブを行い、無線チャネル信号(224ビット/20ms)に変換して移動機1Bへ送出している。」

上記によれば、甲第1号証には次の発明(以下「引用発明1」という)が記載されているといえる。

「移動通信システムにおけるマルチレートデータ伝送時において、移動機1をデジタル移動網5を介してデジタル移動機と接続する場合、
移動機1Aと基地局2Aと交換局3の音声処理装置31とで発呼側のシステムを構成し、移動機1Bと基地局2Bと交換局3の音声処理装置33とで着呼側のシステムを構成し、
移動機1は、送信機10に対して音声符号化部(復号化部)11とCRC演算部(チェック部)12と畳み込み符号化部(復号化部)13とスロットインタリーブ部(デインタリーブ部)14とが順に接続されており、
送信機10からの送信信号は音声符号化部11で符号化され、この内の音声処理に重要なクラス1の75ビット中の聴覚的に最も重要な44ビットをCRC演算部12に送ってCRC(Cyclic Redundancy Check) 演算を行い、これを7ビットの形で音声符号化部からのクラス1の75ビットとともに畳み込み符号化部13に与え、
畳み込み符号化部13では5つのテールビットを加えて7+75+5=87ビット入力とし、これをレート1/2畳み込み符号で得られる174ビットに9ビットの穴あけをすることによりレート9/17畳み込み符号を実現し、174-9=165ビットの畳み込み符号化されたクラス1のビットに変換してスロットインタリーブ部14に送り、
スロットインタリーブ部14では音声符号化部11からの音声処理における重要度が比較的低いクラス2の59ビットを合わせて入力し、これらの入力ビットにより224ビットの3チャネル分多重化されたV.SELP符号の無線チャネル信号が出力され、
発呼側の基地局2Aにおいてスロットデインタリーブ部21でスロットデインタリーブを行い、畳み込み復号化部22で畳み込み復号化を行い、発呼側の音声処理装置31において畳み込み符号化部313で畳み込み符号化を行い、スロットインタリーブ部314でスロットインタリーブを行って224ビット/20msの無線チャネル信号に変換し、
無線チャネル信号を交換機32を介して着呼側の音声処理装置33に送り、ここでスロットデインタリーブ部314でスロットデインタリーブを行い、畳み込み復号化部313で畳み込み復号化を行って141ビット/20msのマルチレート信号に変換してから着呼側の基地局2Bに送出し、
着呼側の基地局2Bにおいて畳み込み符号化部22で畳み込み符号化を行い、スロットインタリーブ部21でスロットインタリーブを行い、無線チャネル信号に変換して移動機1Bへ送出する
方法」

(ウ)比較

本件特許発明1と引用発明1を比較する。

引用発明1の「送信機10からの送信信号」は「音声符号化部」に入力されるデータである。
一方、本件特許発明1の「ディジタルデータ」は「この場合、第1の移動局1は、第1段階の符号化のために情報源符号化器として構成された符号化器25を有しており、これは第1の移動無線規格この実施例ではGSM規格に従って構成されている。」(本件明細書【0009】参照)及び「情報源符号化器25にはディジタル有効データが供給され、そのようなデータはビデオデータ、オーディオデータ、テキストデータ、音声データおよび/またはその他の任意のデータとすることができる。以下では、第1の移動局1と第2の移動局5との間の有効データの伝送について、音声データの伝送に基づき説明する。この場合、情報源符号化器は第1の移動無線規格による音声符号化器として構成されており、この実施例ではGSM規格による音声符号化器として構成されている。」(本件明細書【0012】参照)と記載されるように、音声符号化器として構成されている符号化器に入力される信号である。
よって、引用発明1の「送信機10からの送信信号」は本件特許発明1の「ディジタルデータ」に相当する。

引用発明1の「移動機1A」「移動機1B」は、それぞれ本件特許発明1の「第1の移動局」「第2の移動局」に相当し、
引用発明1の「移動機1Aと基地局2Aと交換局3の音声処理装置31とで」構成される「発呼側のシステム」は、本件特許発明1の「第1の通信ネットワーク」に相当し、
引用発明1の「移動機1Bと基地局2Bと交換局3の音声処理装置33とで」構成される「着呼側のシステム」は、本件特許発明1の「第2の通信ネットワーク」に相当し、
引用発明1における「スロットインタリーブ部14」から出力される「無線チャネル信号」は「無線チャネル」上で送信され、該「無線チャネル」は移動機1Aと基地局2Aとの間の「無線チャネル」に相当するから、引用発明1における「スロットインタリーブ部14から出力される無線チャネル信号」が送信される「無線チャネル」は、本件特許発明1の「第1の通信ネットワークの伝送チャネル」に相当し、
引用発明1における「基地局2B」から送出する「無線チャネル信号」は「無線チャネル」上で送信され、該「無線チャネル」は基地局2Bと移動機1Bとの間の「無線チャネル」に相当するから、引用発明1における「基地局2Bから送出する無線チャネル信号」が送信される「無線チャネル」は、本件特許発明1の「第2の通信ネットワークの伝送チャネル」に相当する。

引用発明1の「基地局2A」「交換局3」「基地局2B」は、「移動機1A」と「移動機1B」の間にある局であるから、「中間局」といえる。

引用発明1の「音声符号化部11で符号化」され、さらに「音声符号化部11で符号化され」たビットに対して「CRC演算を行」う処理が、本件特許発明1の「第1段階でディジタルデータを符号化」に相当し、
引用発明1の「畳み込み符号化部13」で9/17畳み込み符号化を行い「スロットインタリーブ部14」により「3チャネル分多重化されたV.SELP符号」を出力する処理が、本件特許発明1の「第2段階でディジタルデータをチャネル符号化」に相当する。
そうすると、引用発明1は、基地局2Aにおいて「スロットデインタリーブ部21でスロットデインタリーブを行い、畳み込み復号化部22で畳み込み復号化を行」うから、中間局で「第2段階で符号化されたディジタルデータチャネルを復号化」しているといえる。
また、引用発明1は、基地局2Bにおいて「畳み込み符号化部22で畳み込み符号化を行い、スロットインタリーブ部21でスロットインタリーブを行」うから、中間局で「ディジタルデータをチャネル符号化」しているといえる。

引用発明1では移動機1Bでどのような処理をしているか明記されていないが、受信機では送信機と逆の処理が行われることが技術常識であること、図7に、移動機1B内の構成として、基地局2B側から順に「スロット(デ)インタリーブ部14」「畳み込み符号化/復号化部13」「CRC演算/チェック部12」「音声符号化/復号化部11」が接続されていることを考慮すれば、移動機1Bでは、スロットデインタリーブ部14によりスロットデインタリーブを行い、畳み込み復号化部13で畳み込み復号化を行い、CECチェック部12でCRCチェックを行い、音声復号化部11で音声復号化を行うことにより、送信機10が送信した情報源の復号を行っていることは明らかである。
そして、「スロットデインタリーブ」と「畳み込み復号化」は、「畳み込み符号化」と「スロットインタリーブ」、つまり「第2段階でディジタルデータをチャネル符号化」に対応する処理であるから「チャネル復号」であり、「CRCチェック」と「音声復号化」は、「音声符号化で符号化」と「CRC演算」、つまり「第1段階でディジタルデータを符号化」に対応する処理であるから、復号されたディジタルデータチャネル「情報源復号」であるといえる。
したがって、引用発明1は、第2の移動局により「中間局において符号化されたディジタルデータチャネルを復号」して、該復号されたディジタルデータチャネルを「情報源復号」しているといえる。

よって、引用発明1と本件特許発明1は

「第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法において、
第1の通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化し、次に第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化し、
前記の第1段階および第2段階で符号化されたディジタルデータを前記第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して中間局へ伝送し、
該中間局により、前記第2段階で符号化されたディジタルデータチャネルを復号し、
第2の通信ネットワーク内での伝送のため、前記中間局により前記ディジタルデータをチャネル符号化し、前記第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して、チャネル符号化された前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送し、
前記第2の移動局により、前記中間局において符号化されたディジタルデータチャネルをチャネル復号し、
前記第2の移動局により復号されたディジタルデータチャネルを、該第2の移動局により情報源復号することを特徴とする、
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法。」

で一致し、

本件特許発明1は、「該第2の移動局へ前記中間局からシグナリングデータを伝送し、該シグナリングデータは、前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含」み、第2の移動局が復号されたディジタルデータチャネルを「該第2の移動局が受信した前記シグナリングデータに依存して、」情報源復号しているが、引用発明1には、中間局から第2の移動局へ「第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含」むシグナリングデータを伝送する記載が無く、第2の移動局で該シグナリングデータに依存して情報源復号を行っている記載も無い点。

で相違する。

(エ)相違点の判断

甲第2号証には、次の記載(下線は当審が付与)がある。

(あ)「【0009】特に、日本国内におけるディジタル方法の自動車電話システムでは、「ディジタル方法自動車電話システム標準規格RCR-STD 27C(RCR規格と称する)」において記載されているように、フルレート音声符号・復号器(CODEC)としてVSELP符号化方法が標準規格化され、また、ハーフレート音声符号・復号器としてPSI-CELP符号化方法が標準規格化されている。
【0010】これらフルレート、ハーフレート規格のうち、処理の一部については、処理機能が明確に規定されているが、その実現方法についてはある程度の自由度があり、同等性能が得られるという条件で製造者に一任されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】前述したように、VSELP符号化方法とPSI-CELP符号化方法とが標準規格化されているので、今後、これらの符号化方法はネットワーク上に混在することが予想される。このため、どちらの符号化方法において符号化されていても復号化できるように対応することが望まれる。
【0012】また、フルレート音声符号・復号器(CODEC)とハーフレート音声符号・復号器(CODEC)とは別々に規定されているため、両者を共用化することについては考慮されていない。
【0013】本発明の目的は、複数種の符号化方法が混在するネットワークにおいて、各々の符号化方法に対応した復号が行なえるような音声符号器および/または音声復号器を提供することを目的とする。」

(い)「【0033】図1において、通信装置としては、例えば、無線で通信を行なう携帯電話や有線で接続される電話端末、また、無線で通信を行なう基地局や交換機多重化装置などがあり、このような通信装置に、フルレート/ハーフレート音声CODEC27を備えることができる。」

(う)「【0035】図2において、携帯端末A30にフルレート/ハーフレート音声CODEC27を備え、基地局A31には、フルレートCODEC33を備える。この場合、図4に示すように、携帯端末A30は、基地局A31に対して呼設定要求(ステップ40)を行ない、基地局A31は呼設定指示(ステップ41)をすると共に、基地局A31が備える符号化方式がフルレートCODECである旨を通知する。例えば、呼設定メッセージに予め定めたフルレートCODECの識別情報を付加するようにしてもよい。携帯端末A30では、符号化方式の通知を受けるとフルレート/ハーフレート音声CODEC27において、フルレートCODECを選択する(ステップ42)。また、選択後、符号化方式の選択がなされたことを基地局A31に通知するようにしてもよい(ステップ43)。その後、携帯端末A30は、通信相手先と通信を開始することができる(ステップ44)。
【0036】このように、呼設定時に符号化方式の通知を検出することにより、フルレートとハーフレートとの切り替えを行なうことができる。また、携帯端末A30では、呼設定要求時に、基地局の符号化方式を尋ねるようなメッセージを付加するようにしてもよい。また、図3に示すような構成においても、同様に、基地局B35から符号化方式を通知し、携帯端末B36において符号化方式の検出を行ない、フルレートとハーフレートとの切り替えを行なうことができる。さらに、基地局ごともしくは携帯端末ごとの符号化方式をそれぞれの通信装置においてあらかじめ記憶しておくようにしてもよい。この場合、基地局もしくは携帯端末の識別情報に対応させて符号化方式を記憶しておき、通信時に、通信先の識別情報から符号化方式を判断することができる。」

したがって、甲第2号証には次の事項が記載されているといえる。

「日本国内におけるディジタル方法の自動車電話システムでは、フルレート音声符号・復号器(CODEC)としてVSELP符号化方法が標準規格化され、また、ハーフレート音声符号・復号器としてPSI-CELP符号化方法が標準規格化されているので、どちらの符号化方法において符号化されていても復号化できるように対応することが望まれ、通信装置に、フルレート/ハーフレート音声CODEC27を備えることができ、
携帯端末A30は、基地局A31に対して呼設定要求を行ない、基地局A31は呼設定指示をすると共に、基地局A31が備える符号化方式がフルレートCODECである旨を通知し、携帯端末A30では、符号化方式の通知を受けるとフルレート/ハーフレート音声CODEC27において、フルレートCODECを選択し、選択後、符号化方式の選択がなされたことを基地局A31に通知するようにしてもよく、その後、携帯端末A30は、通信相手先と通信を開始することで呼設定時の符号化方式の通知を検出することができ、
また、基地局B35から符号化方式を通知し、携帯端末B36において符号化方式の検出を行ない、フルレートとハーフレートとの切り替えを行なうことができる。」

結局、甲第2号証には、「基地局が備える符号化方式」を通知して携帯端末で符号化方式を選択することが記載されているだけであって、「前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式」すなわち「第1の移動局」により符号化された「第1段階でのディジタルデータの符号化形式」に関する情報を含む「シグナリングデータ」が中間局から移動局へ伝送されること、該シグナリングデータにより情報源復号化が行われることも記載されていない。

また、甲第3号証には、次の記載(下線は当審が付与)がある。

(あ)「4.3.7.2.1.10 呼設定〔SETUP〕
本メッセージは、発信ユーザから網へ、もしくは網から着信ユーザに呼設定を開始するために転送される。(表4.3.7.2-11)」(260頁)

とあり、「表4.3.7.2-11 呼設定メッセージの内容」として、
情報要素の「伝達能力」について、参照が「4.3.7.3.5.3」、方向が「両方向」、種別が「M(注1)」、情報長が「V」と「5-8」であることが記載され、注1として、「複数の伝達能力を有する移動機に関しては、本情報要素は繰り返される。複数の伝達能力情報要素は優先度の高いものから並べられる。」と記載されている。

(い)「4.3.7.3.5.3 伝達能力[Bearer capability]
伝達能力は、網が提供する伝達機能の要求を表示するのに用いられる。図4.3.7.3-7及び表4.3.7.3-8に示すとおりとする。」(271頁)

とあり、「図4.3.7.3-7 伝達能力情報要素」として、
オクテット5の5?1ビットで「ユーザ情報レイヤ1プロトコル」を送信すること、(271頁)
「表4.3.7.3-8 伝達能力情報要素」として、
(10) ユーザ情報レイヤ1プロトコル(オクテット5)として、ビット54321がそれぞれ「01010」はVSELP音声であること、「01011」はPSI-CELP音声であることが記載されている。

したがって、甲第3号証には次の事項が記載されているといえる。

「発信ユーザから網へ、もしくは網から着信ユーザに呼設定を開始するために転送される呼設定メッセージには伝達能力が含まれ、伝達能力は、複数の伝達能力を有する移動機に対しては優先度の高いものから並べられて繰り返され、伝達能力は、網が提供する伝達機能の要求を表示するのに用いられ、オクテット5にはVSELP音声であるかPSI-CELP音声であるかを示すユーザ情報レイヤ1プロトコルが含まれている。」

結局、甲第3号証には、伝達能力はVSELP音声であるかPSI-CELP音声であるかを識別可能なユーザ情報レイヤ1プロトコルが含まれているものの、「網が提供する」伝達機能の要求を表示するのに用いられるのであって、「前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式」すなわち「第1の移動局」により符号化された「第1段階でのディジタルデータの符号化形式」に関する情報を含む「シグナリングデータ」が中間局から移動局へ伝送されること、該シグナリングデータにより情報源復号化が行われることも記載されていない。

甲第7号証には、次の記載(下線は当審が付与)がある。

(あ)「4.3.5.2.1 発信無線状態報告[originating Condition Report]
本メッセージはユーザの発信時に無線状態の情報(自ゾーン受信レベル、周辺ゾーン受信レベル等)を網に通知するために送出される。(表4.3.5.2-2)」(192頁)

とあり、「表4.3.5.2-2 発信無線状態報告メッセージ内容」として、
情報要素の「移動局種別」について、参照が「4.3.5.3.3.3」、方向が「上り」、種別が「M」、情報長が「3」であることが記載されている。(192頁)

(い)「4.3.5.2.2 ページング[Paging]
本メッセージはユーザに対して着信呼出しを行うために網からユーザに送出される。(表4.3.5.2-3)」(193頁)

(う)「4.3.5.2.3 着信無線状態報告[Terminating Condition Report]
本メッセージはユーザに対する4.3.5.2.2ページングの応答としてユーザから無線状態の情報(自ゾーン受信レベル、周辺ゾーン受信レベル等)と共に網に送出される。(表4.3.5.2-4)」(193頁)

とあり、「表4.3.5.2-4着信無線状態報告メッセージ内容」として、
情報要素の「移動局種別」について、参照が「4.3.5.3.3.3」、方向が「上り」、種別が「M」、情報長が「3」であることが記載されている。(194頁)

(え)「4.3.5.3.3.3 移動局種別[Mobile Station Type]
移動局種別は、移動局の種別を識別するために用いられる情報要素で図4.3.5.3.3-2に示すとおりとする。本情報要素は、3オクテットである。」(207頁)

とあり、「図4.3.5.3.3-2移動局種別情報要素」として、
オクテット1のビット3-1が無線区間伝送レートであることが記載され、無線区間伝送レート(オクテット1)のビット321が「001」は無線区間伝送レートがフルレートであること、「011」はフルレート+ハーフレートであることが記載されている。(207頁)

したがって、甲第7号証には次の事項が記載されているといえる。

「ユーザの発信時に無線状態の情報を網に通知するために送出される発信無線状態報告と、ユーザに対して着信呼出しを行うために網からユーザに送出されるページングの応答としてユーザから無線状態の情報と共に網に送出される着信無線状態報告には、無線区間伝送レートがフルレートであるかフルレート+ハーフレートであるかを示す「無線区間伝送レート」が含まれている。」

結局、甲第7号証には、発信側と着信側の端末が無線区間伝送レートがフルレートであるかフルレート+ハーフレートであるかを示す「無線区間伝送レート」を送信することは記載されているものの、「基地局」から「前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式」すなわち「第1の移動局」により符号化された「第1段階でのディジタルデータの符号化形式」に関する情報を含む「シグナリングデータ」が中間局から移動局へ伝送されること、該シグナリングデータにより情報源復号化が行われることも記載されていない。

上記のように、甲第3号証として提出しなかった頁である甲第7号証を参照しても、甲第2号証にも甲第3号証にも、「中間局」から第2の移動局に伝送する「前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含むシグナリングデータ」に関する記載は無く、該シグナリングデータにより情報源復号化が行われることも記載されていないから、本件特許発明1は、甲第1号証乃至甲第3号証により容易に発明をすることができたということはできない。

請求人は、平成26年5月21日付けの上申書で基地局は通信先の一例であって、甲第2号証の【0033】によれば送信側の通信装置が携帯電話である場合も含まれる旨主張している。しかし、甲第2号証には、送信側と着信側が共に携帯電話である例は記載されていない。
また、仮に、送信側と受信側が共に携帯電話である場合に適用するとしても、符号化形式の通知は送信側の携帯電話から受信側の携帯電話に通知するから、送信側と受信側の携帯電話の間に「中間局」は存在しない。また、端末間での通信は「シグナリングデータ」では無い。したがって、第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含む「シグナリングデータ」が「中間局」から移動局へ伝送され、該シグナリングデータにより情報源復号化が行われることは当業者といえども想到し得ない。

請求人は、平成26年12月26日付けの弁駁書(2)で、RCR-STD27Cではレートを指定する以外に移動機が使用すべき音声符号化方式を指定するシグナリングは一切記載されていないから、チャネル情報フィールドはレートを指定しつつ、音声符号化方式を指定するために使用されていたことは明らかである旨主張している。しかし、請求人も主張するように、ハーフレートとPSI-CELPとが一対一で対応し、フルレートとVSELPとが一対一で対応していることは技術常識であるから、端末にレートを指定するだけで、端末がレートに対応する符号化方式を採用することが可能であって、音声符号化方式を指定する必要は無いから、音声符号化方式を指定するフィールドが無くても問題が無い。
一方、本件特許は、音声符号化方式を指定することにより、一対一対応している音声符号化(UMTS規格による情報源符号化)方式とは異なる音声符号化(GSM規格による情報源符号化)方式を端末で採用可能とした発明であるから、「音声符号化方式」を指定することは必要不可欠であり、レートを指定するのみで音声符号化方式を指定することが記載されていないRCR-STD27Cにより本件特許は想到し得ない。

イ.本件特許発明2について

本件特許発明2は、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載された次のとおりのものである。

「前記の第1段階および第2段階において符号化されたディジタルデータを前記中間局へ伝送する、請求項1記載の方法。」

本件特許発明2は、本件特許発明1において、さらに「前記の第1段階および第2段階において符号化されたディジタルデータを前記中間局へ伝送する」ことを含む方法であるから、上記ア.(ウ)に記載した相違点を含む。したがって、上記ア.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明2は、甲第1号証乃至甲第3号証により容易に発明をすることができたということはできない。

ウ.本件特許発明3について

本件特許発明3は、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項3に記載された次のとおりのものである。

「前記中間局において、復号されたディジタルデータチャネルに対し前記シグナリングデータを付加して、前記第2の通信ネットワークにおける伝送のためにビット流を生成し、
前記ビット流におけるディジタルデータとシグナリングデータを、前記中間局によりチャネル符号化し、
前記ビット流におけるディジタルデータおよびシグナリングデータを、前記第2の通信ネットワークにおける伝送チャネルを介して前記第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局により、前記ビット流におけるディジタルデータおよびシグナリングデータをチャネル復号し、
該第2の移動局により第2段階でチャネル復号されたディジタルデータを、該第2の移動局が復号したシグナリングデータに依存して、該第2の移動局により情報源復号する、
請求項1記載の方法。」

本件特許発明3は、本件特許発明1において、さらに「前記中間局において、復号されたディジタルデータチャネルに対し前記シグナリングデータを付加して、前記第2の通信ネットワークにおける伝送のためにビット流を生成し、
前記ビット流におけるディジタルデータとシグナリングデータを、前記中間局によりチャネル符号化し、
前記ビット流におけるディジタルデータおよびシグナリングデータを、前記第2の通信ネットワークにおける伝送チャネルを介して前記第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局により、前記ビット流におけるディジタルデータおよびシグナリングデータをチャネル復号し、
該第2の移動局により第2段階でチャネル復号されたディジタルデータを、該第2の移動局が復号したシグナリングデータに依存して、該第2の移動局により情報源復号する」ことを含む方法であるから、上記ア.(ウ)に記載した相違点を含む。したがって、上記ア.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明3は、甲第1号証乃至甲第3号証により容易に発明をすることができたということはできない。

エ.本件特許発明4について

本件特許発明4は、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項4に記載された次のとおりのものである。

「第1の通信ネットワークにおけるディジタルデータを第1の移動無線規格に従い伝送し、該ディジタルデータをそれぞれ第1段階および第2段階で情報源符号化およびチャネル符号化し、
第2の通信ネットワークにおけるディジタルデータをチャネル符号化し、第2の移動無線規格に従いシグナリングデータといっしょに伝送し、該シグナリングデータは、前記第1の移動無線規格による前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2段階で符号化され前記第2の移動局により復号されたディジタルデータを、前記シグナリングデータの評価に応じて前記第1の移動無線規格に従い復号する、請求項1記載の方法。」

本件特許発明4は、本件特許発明1において、さらに「第1の通信ネットワークにおけるディジタルデータを第1の移動無線規格に従い伝送し、該ディジタルデータをそれぞれ第1段階および第2段階で情報源符号化およびチャネル符号化し、
第2の通信ネットワークにおけるディジタルデータをチャネル符号化し、第2の移動無線規格に従いシグナリングデータといっしょに伝送し、該シグナリングデータは、前記第1の移動無線規格による前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2段階で符号化され前記第2の移動局により復号されたディジタルデータを、前記シグナリングデータの評価に応じて前記第1の移動無線規格に従い復号する」ことを含む方法であるから、上記ア.(ウ)に記載した相違点を含む。したがって、上記ア.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明4は、甲第1号証乃至甲第3号証により容易に発明をすることができたということはできない。

オ.本件特許発明7について

(ア)本件特許発明7

本件特許発明7は、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項7に記載された次のとおりのものである。

「第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法において、
第1の通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化し、次に第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化し、
前記の第1段階および第2段階で符号化されたディジタルデータを前記第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して中間局へ伝送し、
該中間局により、前記第2段階で符号化されたディジタルデータチャネルを復号し、
第2の通信ネットワーク内での伝送のため、前記中間局により前記ディジタルデータをチャネル符号化し、次に前記第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して、チャネル符号化された前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局へ前記中間局からシグナリングデータを伝送し、該シグナリングデータは、前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2の移動局により、前記中間局において符号化されたディジタルデータチャネルをチャネル復号し、
前記第1段階で符号化されたディジタルデータを、該第2の移動局が受信した前記シグナリングデータに依存して、該第2の移動局により復号することを特徴とする、
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法。」

(イ)甲第1号証

上記ア.(イ)に記載したとおりである。

(ウ)比較

引用発明1と本件特許発明7は

「第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法において、
第1の通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化し、次に第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化し、
前記の第1段階および第2段階で符号化されたディジタルデータを前記第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して中間局へ伝送し、
該中間局により、前記第2段階で符号化されたディジタルデータチャネルを復号し、
第2の通信ネットワーク内での伝送のため、前記中間局により前記ディジタルデータをチャネル符号化し、次に前記第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して、チャネル符号化された前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送し、
前記第2の移動局により、前記中間局において符号化されたディジタルデータチャネルをチャネル復号し、
第1段階で符号化されたディジタルデータを、該第2の移動局により復号することを特徴とする、
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法。」

で一致し、

本件特許発明7は、「該第2の移動局へ前記中間局からシグナリングデータを伝送し、該シグナリングデータは、前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含」み、第1の移動局で符号化されたディジタルデータを「該第2の移動局が受信した前記シグナリングデータに依存して、」復号しているが、引用発明1には、中間局から第2の移動局へ「第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含」むシグナリングデータを伝送する記載が無く、第2の移動局で該シグナリングデータに依存して復号を行っている記載も無い点。

で相違する。

(エ)相違点の判断

甲第2号証及び甲第3号証に記載された内容は、上記ア.(エ)に記載したとおりである。

結局、甲第3号証には、伝達能力はVSELP音声であるかPSI-CELP音声であるかを識別可能なユーザ情報レイヤ1プロトコルが含まれているものの、「網が提供する」伝達機能の要求を表示するのに用いられるのであって、「前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式」すなわち「第1の移動局」により符号化された「第1段階でのディジタルデータの符号化形式」に関する情報を含む「シグナリングデータ」が中間局から移動局へ伝送されること、該シグナリングデータにより情報源復号化が行われることも記載されていない。

上記のように、甲第2号証にも甲第3号証にも、中間局から第2の移動局に伝送する「前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含」む「シグナリングデータ」に関する記載は無く、該シグナリングデータにより復号化が行われることも記載されていないから、本件特許発明7は、甲第1号証乃至甲第3号証により容易に発明をすることができたということはできない。

カ.本件特許発明8について

本件特許発明8は、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項8に記載された次のとおりのものである。

「前記の第1段階および第2段階において符号化されたディジタルデータを前記中間局(15)へ伝送する、請求項7記載の方法。」

本件特許発明8は、本件特許発明7において、さらに「前記の第1段階および第2段階において符号化されたディジタルデータを前記中間局へ伝送する」ことを含む方法であるから、上記オ.(ウ)に記載した相違点を含む。したがって、上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明8は、甲第1号証乃至甲第3号証により容易に発明をすることができたということはできない。

キ.本件特許発明9について

本件特許発明9は、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項9に記載された次のとおりのものである。

「第2段階でチャネル符号化され前記中間局において復号されたディジタルデータに対し前記シグナリングデータを付加して、前記第2の通信ネットワークにおける伝送のためにビット流を生成し、
前記ビット流におけるディジタルデータとシグナリングデータを、前記中間局により符号化し、
前記ビット流におけるディジタルデータおよびシグナリングデータを、前記第2の通信ネットワークにおける伝送チャネルを介して前記第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局により、前記ビット流における第2段階で符号化されたディジタルデータおよびシグナリングデータを復号し、
第1段階で符号化され前記第2の移動局により第2段階でチャネル復号されたディジタルデータを、該第2の移動局が復号したシグナリングデータに依存して、該第2の移動局により復号する、
請求項7記載の方法。」

本件特許発明9は、本件特許発明7において、さらに「第2段階でチャネル符号化され前記中間局において復号されたディジタルデータに対し前記シグナリングデータを付加して、前記第2の通信ネットワークにおける伝送のためにビット流を生成し、
前記ビット流におけるディジタルデータとシグナリングデータを、前記中間局により符号化し、
前記ビット流におけるディジタルデータおよびシグナリングデータを、前記第2の通信ネットワークにおける伝送チャネルを介して前記第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局により、前記ビット流における第2段階で符号化されたディジタルデータおよびシグナリングデータを復号し、
第1段階で符号化され前記第2の移動局により第2段階でチャネル復号されたディジタルデータを、該第2の移動局が復号したシグナリングデータに依存して、該第2の移動局により復号する」ことを含む方法であるから、上記オ.(ウ)に記載した相違点を含む。したがって、上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明9は、甲第1号証乃至甲第3号証により容易に発明をすることができたということはできない。

ク.本件特許発明10について

本件特許発明10は、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項10に記載された次のとおりのものである。

「第1の通信ネットワークにおけるディジタルデータを第1の移動無線規格に従い伝送し、該ディジタルデータを第1段階および第2段階で情報源符号化およびチャネル符号化し、
第2の通信ネットワークにおいて符号化されたディジタルデータをチャネル符号化し第2の移動無線規格に従いシグナリングデータといっしょに伝送し、該シグナリングデータは、前記第1の移動無線規格による前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2段階でチャネル符号化され前記第2の移動局によりチャネル復号されたディジタルデータを、前記シグナリングデータの評価に応じて前記第1の移動無線規格に従い該第2の移動局により復号する、請求項7記載の方法。」

本件特許発明10は、本件特許発明7において、さらに「第1の通信ネットワークにおけるディジタルデータを第1の移動無線規格に従い伝送し、該ディジタルデータを第1段階および第2段階で情報源符号化およびチャネル符号化し、
第2の通信ネットワークにおいて符号化されたディジタルデータをチャネル符号化し第2の移動無線規格に従いシグナリングデータといっしょに伝送し、該シグナリングデータは、前記第1の移動無線規格による前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2段階でチャネル符号化され前記第2の移動局によりチャネル復号されたディジタルデータを、前記シグナリングデータの評価に応じて前記第1の移動無線規格に従い該第2の移動局により復号する」ことを含む方法であるから、上記オ.(ウ)に記載した相違点を含む。したがって、上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明10は、甲第1号証乃至甲第3号証により容易に発明をすることができたということはできない。

ケ.本件特許発明13について

本件特許発明13は、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項13に記載された次のとおりのものである。

「前記シグナリングデータを1回または複数回、別個のコントロールチャネルを介して中間局から第2の移動局へ伝送する、請求項1または7記載の方法。」

本件特許発明13は、本件特許発明1または本件特許発明7において、さらに「前記シグナリングデータを1回または複数回、別個のコントロールチャネルを介して中間局から第2の移動局へ伝送する」ことを含む方法であるから、上記ア.(ウ)に記載した相違点、または、上記オ.(ウ)に記載した相違点を含む。したがって、上記ア.(エ)または上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明13は、甲第1号証乃至甲第3号証により容易に発明をすることができたということはできない。

コ.本件特許発明14について

本件特許発明14は、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項14に記載された次のとおりのものである。

「前記第1段階におけるディジタルデータ符号化形式に関する情報を含む前記シグナリングデータとともに、前記第1の移動局の呼出番号を伝送する、請求項1、3、7または9記載の方法。」

本件特許発明14は、本件特許発明1または本件特許発明3または本件特許発明7または本件特許発明9において、さらに「前記第1段階におけるディジタルデータ符号化形式に関する情報を含む前記シグナリングデータとともに、前記第1の移動局の呼出番号を伝送する」ことを含む方法であるから、上記ア.(ウ)に記載した相違点、または、上記オ.(ウ)に記載した相違点を含む。したがって、上記ア.(エ)または上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明14、甲第1号証乃至甲第3号証により容易に発明をすることができたということはできない。

サ.本件特許発明15について

本件特許発明15は、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項15に記載された次のとおりのものである。

「前記ディジタルデータとしてビデオデータ、オーディオデータ、テキストデータ、音声データのうち少なくとも1つのデータを伝送する、請求項1または7記載の方法。」

本件特許発明15は、本件特許発明1または本件特許発明7において、さらに「前記ディジタルデータとしてビデオデータ、オーディオデータ、テキストデータ、音声データのうち少なくとも1つのデータを伝送する」ことを含む方法であるから、上記ア.(ウ)に記載した相違点、または、上記オ.(ウ)に記載した相違点を含む。したがって、上記ア.(エ)または上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明15は、甲第1号証乃至甲第3号証により容易に発明をすることができたということはできない。

シ.小括(無効理由1について)

本件特許の請求項1、2、3、4、7、8、9、10、13、14及び15に係る発明は、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたといえないから、特許法第29条第2項には該当しない。

したがって、無効理由1を理由として、本件特許の請求項1、2、3、4、7、8、9、10、13、14及び15に係る発明を無効とすることはできない。


(2)無効理由2について

ア.本件特許発明1について

(ア)本件特許発明1

上記(1)ア.(ア)に記載したとおりである。

(イ)甲第3号証

甲第3号証には、次の記載(下線は当審が付与)がある。

(あ)「第2章 システムの概要
2.1 システムの構成
デジタル方式自動車電話システムは、陸上移動局及び基地局側設備で構成する。
2.1.1 陸上移動局
陸上移動局は、基地局との間で陸上移動無線通信を行い、加入者の通信端末装置として使用される。
陸上移動局は、空中線、送信装置及び受信装置からなる無線装置、制御装置、音声符号化装置並びに送受話器により構成される。また、必要に応じて陸上移動局に複数端末又はPBX等が接続可能なこととする。
2.1.2 基地局側設備
基地局側設備は、陸上移動局とのあいだで陸上移動無線通信を行う。
基地局側設備は、基地局(空中線、送信装置及び受信装置からなる無線装置)と交換接続及び課金等を行う制御局設備等から構成される。

2.2 インタフェースの定義
デジタル方式自動車電話システムに関するインタフェースの点は4点(Um、R、S、C点)あり、図2.1 に示すとおりである。」(3頁)

の記載があり、その下にUm点が陸上移動局と基地局間のインタフェース点であって、本標準規格によることが記載されている。

(い)「2.3.2 本システムが提供するサービス
2.3.2.1 サービスの特徴付け
デジタル方式自動車電話システムにおけるサービスは、表2.1 に示す各サービス属性の集合からなるものとし、各サービス属性において複数種類存在するサービス項目は選択ができるものとする。」(5頁)

の記載があり、「表2.1 サービス属性」として、サービス属性「情報転送速度」については11.2kb/sと5.6kb/sが存在することが記載されている。

(う)「2.3.2.2 サービス種別
(1)伝達サービス
通信チャネルを介して提供される伝達サービスを表2.2に示す。」(6頁)

の記載があり、「表2.2 伝達サービス」として、項目「11.2kbps音声」の概要が「端末に対して、音声通信に適した伝達機能を提供するもので、VSELP CODEC が挿入される。ビット透過性は保証されない。」の記載があり、項目「5.6kbps音声」の概要が「端末に対して、音声通信に適した伝達機能を提供するもので、PSI-SELP CODECが挿入される。ビット透過性は保証されない。」の記載がある。

(え)「4.1.4 チャネルの構成
4.1.4.1 機能チャネル
無線チャネルにはユーザ情報転送用の情報チャネル(TCH)と制御チャネル(CCH)があり、更に、制御チャネルは図4.1.4.1-1 に示すように分類する。この他に、ハウスキーピングにより構成されるRCHがある。」(34頁)

の記載があり、図4.1.4.1-1 チャネル構成(機能チャネル)として、CCHはCAC(共通アクセスチャネル)であるBCCH(報知チャネル)とCCCH(共通制御チャネル)とUPCH(ユーザパケットチャネル)とUSC(ユーザスペシフィックチャネル)であるACCH(付随制御チャネル)に分類され、CCCH(共通制御チャネル)はPCH(一斉呼出チャネル)とSCCH(個別セル用チャネル)に分類されることが記載されている。

(お)「4.1.4.1.2 共通制御チャネル(CCCH(PCH、SCCH))
ポイント-マルチポイントの双方向チャネルであり、シグナリング情報を転送する。ただし、UPCHとの共用も可能とする。移動局の間欠受信動作を行うため、以下のようにPCHとSCCHの分類を定義する。
(1)一斉呼出チャネル(PCH)
網から移動機に対して、広いエリア(一斉呼出エリア)に同一の情報を一斉に転送する片方向チャネルであり、一斉呼出のために用いる。
(2)個別セル用シグナリングチャネル(SCCH)
網と移動機が情報を転送する双方向チャネルであり、移動局の在圏セルが網側で判っている場合に使用する。異なる周波数資源を用いて、セル毎に独立な情報を転送する。上りチャネルはランダムアクセスとなる。」(35頁)

(か)「4.1.4.1.5 情報チャネル(TCH)
音声・ファクシミリ情報等が転送される。
ポイント-ポイントの双方向チャネルであり、ユーザ情報並びにユーザ情報制御信号を転送する。」(35頁)

(き)「4.1.5 チャネルコーディング」(45頁)

(く)「4.1.5.2 通信チャネル信号
4.1.5.2.1 TCHの信号分解組立
TCHは伝達サービスに対応して、その信号分解組立を行うこと。
4.1.5.2.1.1 音声
音声(11.2/5.6kb/sデジタル信号)の信号分解組立は第5章によること。」(48頁)

(け)「第5章 音声符号化方式
5.1 フルレート音声コーデック
5.1.1 音声符号化
本方式に用いる音声符号化アルゴリズムは、ベクトル和励起線形予測符号化方式(VSELP:Vector-Sum Excited Linear Predictive Coding)である。
VSELPは、コードブックを用いて励起(残差)信号をベクトル量子化する符号励起線形予測符号化方式(CELP:Code Excited Linear Predictive Coding)の改良版であり、予め定義された構造をもつコードブックを使用することにより、コードブックサーチ処理に要求される計算量を大幅に低減可能となることを特徴としている。
VSELPでは、入力音声信号より、短期フィルタ係数α1を求めるために反射係数γ1を計算し、合わせてフレームエネルギーR(0)も求める。次に長期予測ラグL及び符号語Iを求め、続いて長期予測係数β及び利得γを計算する。さらに、これらの求められたパラメータは後述される「伝送路符号化」の肯定に送出される前に、それぞれ必要な加工が加えられる。」(589頁)

(こ)「5.1.2 伝送路符号化
音声符号データに対する伝送路誤り制御には伝送路誤りを低減するための3つの手法を用いる。まず第1に、音声符号化データ列中の誤りに弱いビットを保護するためにレート9/17の畳み込み符号を使用する。2番目に、各々の音声符号化フレームの送信したデータを2タイム・スロットにわたりインタリーブし、レイリー・フェージングの影響を低減する。3番目の手法として、音声符号化器として聴覚上最も重要なビットをCRCを用いて保護する。受信側では誤り訂正が行われた後、これらのCRCビットを用いて最重要ビットが完全に受信されたかどうかをチェックする。」(621頁)

(さ)「5.1.3 伝送路復号化
伝送路復号化は受信機側で行い、送信機側とは逆の手順で進める。データ・ストリームは最初にデインタリーブされ、次に全ての符号化したビットが畳み込み復号化される。CRCを行い、聴覚的に最重要な44ビットにおける誤りを検出する。合わせてバッドフレームマスキング処理を行う。伝送路復号器の出力は音声復号器に入力される1セットのパラメータ符号である。」(631頁)

(し)「5.1.4 音声復号化
音声復号器は伝送路復号器から6700bpsのデータを受け、受信音声信号を生成する。
音声復号器は5.1.1項に示す音声符号器と適合して動作すること。」(636頁)

(す)「5.2 ハーフレート音声コーデック
本方式に用いる音声符号化アルゴリズムは、ピッチ同期雑音励振源-コード励振線形予測符号化(PSI-CELP:Pitch Synchronous Innovation-Code Excited Linear Prediction)である。PSI-CELPは、VSELPと同様に、音声を生成するためのコードブックのパラメータを送ることによって、音声の冗長度を圧縮する方式であるが、さらに、音声の基本周期に同期してコードブックを処理することによって量子化効率を向上させたことを特徴としている。
ハーフレート音声コーデックは、以下の一連のアルゴリズムの組合せとして実現される。そのアルゴリズムの一部は任意であり、本節に例示された以外の方法でも実現できる。本節に任意と記述されたアルゴリズムについて別法が適用された場合は、それが本例示方法に劣らない音声品質を提供するような配慮が求められる。この確認には、別に定める音声コーデック適合試験を用いる。この試験では、符号器単体、復号器単体及び符号復号器総合について、種々の条件における特定が検査される。
5.2.1 音声符号化処理」(643頁)

(せ)「5.2.2 通信路符号化
符号器で符号化されたパラメータは、パッキングのためのコード変換が施される。変換後のパラメータのうち、誤り保護対象となるビットをP[x]、誤り保護対象とならないビットをNP[x]とする。P[x]はCRC符号を付加した後、畳み込み符号で符号化される。さらにNP[x]と結合してビットインタリーブを施した後、フレームインタリーブされる。」(752頁)

(そ)「5.2.3 通信路復号化
受信された系列を逆インタリーブし、誤り訂正復号を行う。その後、復号系列から送信側と同様に9ビットのCRCを計算し、伝送されたCRCと比較する。CRCが一致しない場合はパラメータ置換を行ってから音声復号処理を行う。」(762頁)

(た)「5.2.4 音声復号化処理」(764頁)

(ち)「4.3.8.2 着信
着信の制御シーケンスを図4.3.8.2-1 に示す。」(321頁)

に関し、図4.3.8.2-1 には、網からユーザに呼設定メッセージが送信されることが記載されている。(322頁)

(つ)「4.3.7.2.1.10 呼設定〔SETUP〕
本メッセージは、発信ユーザから網へ、もしくは網から着信ユーザに呼設定を開始するために転送される。(表4.3.7.2-11)」(260頁)

とあり、「表4.3.7.2-11 呼設定メッセージの内容」として、
情報要素の「伝達能力」について、参照が「4.3.7.3.5.3」、方向が「両方向」、種別が「M(注1)」、情報長が「V」と「5-8」であることが記載され、注1として、「複数の伝達能力を有する移動機に関しては、本情報要素は繰り返される。複数の伝達能力情報要素は優先度の高いものから並べられる。」と記載されている。

(て)「4.3.7.3.5.3 伝達能力[Bearer capability]
伝達能力は、網が提供する伝達機能の要求を表示するのに用いられる。図4.3.7.3-7及び表4.3.7.3-8に示すとおりとする。」(271頁)

とあり、「図4.3.7.3-7 伝達能力情報要素」として、
オクテット5の5?1ビットで「ユーザ情報レイヤ1プロトコル」を送信すること、(271頁)
「表4.3.7.3-8 伝達能力情報要素」として、
(10) ユーザ情報レイヤ1プロトコル(オクテット5)として、ビット54321がそれぞれ「01010」はVSELP音声であること、「01011」はPSI-CELP音声であることが記載されている。

上記によれば、甲第3号証には次の発明(以下「引用発明2」という)が記載されているといえる。

「デジタル方式自動車電話システムは、陸上移動局及び基地局側設備で構成され、
基地局側設備は、基地局と交換接続及び課金等を行う制御局設備等から構成され、
陸上移動局と基地局間のインタフェース点であるUm点が、本標準規格であり、
サービスは、VSELP CODEC が挿入される11.2kbps音声と、PSI-SELP CODECが挿入される5.6kbps音声があり、
無線チャネルにはユーザ情報転送用の情報チャネル(TCH)と制御チャネル(CCH)があり
制御チャネルは、網と移動機が情報を転送する双方向チャネルである個別セル用シグナリングチャネル(SCCH)を含み、
情報チャネルは、ポイント-ポイントの双方向チャネルであり、ユーザ情報並びにユーザ情報制御信号を転送し、
TCHは伝達サービスに対応して、その信号分解組立を行い、
信号分解組立は、フルレート音声コーデックに対しては、入力音声信号よりパラメータを求めて伝送路符号化の行程に送出される前に必要な加工が加えられる音声符号化、音声符号データに対する伝送路誤り制御を低減するための3つの手法を用いる伝送路符号化、受信機側で行い送信機側とは逆の手順で進める伝送路復号化、伝送路復号器からデータを受け受信音声信号を生成する音声復号化が存在し、
ハーフレート音声コーデックに対しては、音声符号化処理、符号器で符号化されたパラメータは、パッキングのためのコード変換が施される通信路符号化、受信された系列を逆インタリーブし誤り訂正復号を行う通信路復号化、音声復号化処理が存在し、
網から着信ユーザに呼設定を開始するために呼設定メッセージが転送され、
呼設定メッセージには伝達能力が含まれ、伝達能力は、複数の伝達能力を有する移動機に対しては優先度の高いものから並べられて繰り返され、伝達能力は、網が提供する伝達機能の要求を表示するのに用いられ、オクテット5にはVSELP音声であるかPSI-CELP音声であるかを示すユーザ情報レイヤ1プロトコルが含まれている、
方法。」

(ウ)比較

本件特許発明1と引用発明2を比較する。

引用発明2の「着信ユーザ」は、本件特許発明1の「第2の移動局」に相当する。
引用発明2は、陸上移動局と基地局の間のインタフェース点であるUm点の規格に関するものであり、「ユーザ」は「陸上移動局」に存在するから、「ユーザ」にデータを送信する「網」は、「網を構成している基地局」であるといえる。
引用発明2の「音声符号化」「音声符号化処理」は、ともに本件特許発明1の「第1段階でディジタルデータを符号化」に相当し、
引用発明2の「伝送路符号化」「通信路符号化」は、ともに本件特許発明1の「チャネル符号化」に相当し、
引用発明2の「伝送路復号化」「通信路復号化」は、ともに本件特許発明1の「チャネル復号」に相当し
引用発明2の「音声復号化」「音声復号化処理」は、ともに本件特許発明1の「情報源復号」に相当する。

したがって、ユーザ情報転送用の情報チャネルの信号分解組立に際し、フルレート音声コーデックに対しても、ハーフレート音声コーデックに際しても、チャネル復号、情報源復号を行っている。
ここで、自動車電話システムにおける着信側の陸上移動局は、電話音声、すなわち「ユーザ情報」をユーザに提供することが明らかであるから、「着信ユーザ」すなわち「第2の移動局」が「チャネル復号」と「情報源復号」を行っているといえる。

よって、引用発明2と本件特許発明1とは、

「第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法において、
前記第2の移動局により、ディジタルデータチャネルをチャネル復号し、
前記第2の移動局により復号されたディジタルデータチャネルを、該第2の移動局により情報源復号することを特徴とする、
第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法。」

で一致し、

相違点1

本件特許発明1は、第2の移動局へ伝送されるディジタルデータが、「第1の移動局」からのデータであって、第1の移動局で、「第1段階でディジタルデータを符号化し、次に第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化」して、「前記の第1段階および第2段階で符号化されたディジタルデータを前記第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して中間局へ伝送」するのに対し、引用発明2は、発側の端末がどのような端末であって、どのような処理を行っているのか記載されていない点。

相違点2

本件特許発明1は、第1の移動局が「中間局」へ第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して伝送し、中間局により「第2段階で符号化されたディジタルデータチャネルを復号」して、「第2の通信ネットワーク内での伝送のため、前記中間局により前記ディジタルデータをチャネル符号化し、前記第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して、チャネル符号化された前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送」するのに対し、引用発明2は、「網内の基地局」が第2の移動局へ伝送するものの、該基地局が中間局であるかどうか記載されておらず、どのような処理を行っているかも記載されていない点。

相違点3

本件特許発明1は、「該第2の移動局へ前記中間局からシグナリングデータを伝送し、該シグナリングデータは、前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含」み、第2の移動局が復号されたディジタルデータチャネルを「該第2の移動局が受信した前記シグナリングデータに依存して、」情報源復号しているが、引用発明2には、網と移動機が情報を転送する双方向チャネルである個別セル用シグナリングチャネルがあることは記載されているが、「前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含むシグナリングデータ」を伝送する記載が無く、第2の移動局で該シグナリングデータに依存して情報源復号を行っている記載も無い点。

で相違する。

(エ)相違点の判断

相違点1について

引用発明2は、「デジタル方式自動車電話システム」の発明であるから、「第2の移動局」と同様の端末である「第1の移動局」を発側の端末とすることは、格別なこととはいえない。

発側に「第2の移動局」と同様の端末である「第1の移動局」を用いる場合は、「音声符号化処理」と「通信路符号化」を行うから、「第1段階でディジタルデータを符号化し、次に第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化」しているといえる。
さらに、第1の移動局が、「第1の通信ネットワークの伝送チャネル」で「網」に接続されていることは明らかであり、同様に第2の移動局が「第2の通信ネットワークの伝送チャネル」で「網」に接続されていることも明らかである。
そして、「網」には「基地局側設備」すなわち「基地局」や「制御局設備」が存在する。つまりこれらの「基地局」は第1の移動局と第2の移動局の間に存在するから「中間局」であるといえる。

上記のことは、引用発明2において、発側の端末を「第1の移動局」とすることは容易であり、該「第1の移動局」は「第1段階でディジタルデータを符号化し、次に第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化」するとともに、「前記の第1段階および第2段階で符号化されたディジタルデータを前記第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して中間局へ伝送」しているといえることを示している。

相違点2について

甲第1号証の図1及び図7には、移動機1Aに「音声符号化/復号化部11」「CRC演算/チェック部12」「畳み込み符号化/復号化部13」「スロット(デ)インタリーブ部14」を有し、基地局2Aに「スロット(デ)インタリーブ部21」「畳み込み符号化/復号化部22」を有し、交換局3に「CRC演算/チェック部311」「音声符号化/復号化部312」「畳み込み符号化/復号化部313」「スロット(デ)インタリーブ部314」「スロット(デ)インタリーブ部314」「畳み込み符号化/復号化部313」「音声符号化/復号化部312」「CRC演算/チェック部311」を有し、基地局2Bに「畳み込み符号化/復号化部22」「スロット(デ)インタリーブ部21」を有し、移動機1Bに「スロット(デ)インタリーブ部14」「畳み込み符号化/復号化部13」「CRC演算/チェック部12」「音声符号化/復号化部11」を有する構成が記載されている。

さらに、甲第1号証には、次の記載(下線は当審が付与)がある。

「【0014】
【発明が解決しようとする課題】上記の図6に示したマルチレート伝送を導入した従来の移動通信システムにおいては、移動機1をデジタル移動網5を介してデジタル移動機と接続する場合、図7に示すように、移動機1Aと基地局2Aと交換局3の音声処理装置31とで発呼側のシステムを構成し、移動機1Bと基地局2Bと交換局3の音声処理装置33とで着呼側のシステムを構成する。
【0015】そして、発呼側の基地局2Aにおいてスロットデインタリーブ部21でスロットデインタリーブを行い、畳み込み復号化部22で畳み込み復号化を行い、発呼側の音声処理装置31において畳み込み符号化部313で畳み込み符号化を行い、スロットインタリーブ部314でスロットインタリーブを行って224ビット/20msの無線チャネル信号に変換する。
【0016】この無線チャネル信号を交換機32を介して着呼側の音声処理装置33に送り、ここでスロットデインタリーブ部314でスロットデインタリーブを行い、畳み込み復号化部313で畳み込み復号化を行って141ビット/20msのマルチレート信号に変換してから着呼側の基地局2Bに送出する。
【0017】そして、この着呼側の基地局2Bにおいて畳み込み符号化部22で畳み込み符号化を行い、スロットインタリーブ部21でスロットインタリーブを行い、無線チャネル信号(224ビット/20ms)に変換して移動機1Bへ送出している。」

したがって、甲第1号証には次の事項が記載されているといえる。

「移動機1Aと基地局2Aと交換局3の音声処理装置31とで発呼側のシステムを構成し、移動機1Bと基地局2Bと交換局3の音声処理装置33とで着呼側のシステムを構成し、
基地局2Aにおいてスロットデインタリーブを行い、畳み込み復号化を行い、
基地局2Bにおいて畳み込み符号化を行い、スロットインタリーブを行い、移動機1Bへ送出する移動通信システム」

したがって、甲第1号証には、基地局2Aでスロットデインタリーブと畳み込み復号化を行い、基地局2Bで畳み込み符号化とスロットインタリーブを行って移動機1Bへ送出することが記載されているから、引用発明2の基地局においてもスロットデインタリーブと畳み込み復号、すなわち「第2段階で符号化されたディジタルデータチャネルを復号」するとともに、畳み込み符号化とスロットインタリーブ、すなわち「チャネル符号化」を行って着信側の移動機、すなわち「第2の移動機」に伝送することは容易に想到しうることである。

相違点3について

甲第4号証には、次の記載(下線は当審が付与)がある。

(あ)「CODECスルー通信とは,VSELPのような符号化を2回行うことによる通話のひずみや遅延の影響を逃れるため,網側のCODECをスルーにし,移動機間で直接VSELP信号をやりとりするような通信形態をいう。HR方式の移動機間においては,同様の制御方法によりPSI-CELP信号によるCODECスルー通信を行うことが可能である。しかしながら,今回は次の理由からHR方式の移動機においてもFR方式の符号化であるVSELP信号のCODECスルー通信とした。それは,図1のHR方式導入当初においては,もしHR方式のCODECスルー通信とした場合,その片方の移動機がHRのエリアからFRのエリアへ通信中に移動したときは,直ちにFR方式のCODECスルー通信へ切り替える必要があるが,そのとき,両方の移動機で同じタイミングでFRチャネルへ切り替えないと通話が途切れてしまうという減少が生じるためである。HR方式のCODECスルー通信は,そのチャネル切り替え制御の実現と合わせて将来の課題とした。」

(い)「■移動発,移動着(CODECスルー通信)
HR方式移動機発,HR方式移動機着の場合のシーケンスを図5に示す。着信翻訳により通話先がCODECスルー通信が必要なデジタル方式の移動機の場合,FRチャネルを選択し,着側へ通知する。着側でも同様に移動機からHR方式の識別情報が得られるが,発側からFRのCODECスルー通信が通知されているため,FRチャネルを設定し,FR方式のCODECスルー通信を設定する。」

の記載があり、図5には発側MSがMLSにHR移動機識別情報を含む発信要求を行い、MLSで着信翻訳を行い、MLSが着信MSに対して一斉呼出を行い、着側MSでMLSからの一斉呼出に対するHR移動機識別情報を含む一斉呼出応答をMLSに送信し、認証及びチャネル設定を行った後に、MLSが着信MSに呼設定を送信し、着信MSがMLSに呼出を送信し、応答により発信MSと着信MSの間でFRチャネルCODECスルー通信が行われることが記載されている。

したがって、甲第4号証には次の事項が記載されているといえる。

「HR方式の移動機においてもFR方式の符号化であるVSELP信号のCODECスルー通信を行うこととし、HR方式発信端末がFRチャネルを選択してMLSへ通知し、HR方式着側移動機からHR方式の識別情報を得るがFRチャネルを設定してFR方式のCODECスルー通信を設定することにより、符号化を2回行うことによる通話のひずみや遅延の影響を逃れる。」

甲第4号証において、MLSが着信端末に対して送信するメッセージは、一斉呼出及び呼設定であり、「前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含」むシグナリングデータを送信することは記載されていない。
また、甲第1号証にも、基地局2Bが移動機1Bに対して「前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含」むシグナリングデータを送信することは記載されていない。

上記のように、甲第4号証にも甲第1号証にも、中間局から第2の移動局に伝送する「前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含」む「シグナリングデータ」に関する記載は無く、該シグナリングデータにより情報源復号化が行われることも記載されていないから、本件特許発明1は、甲第3号証及び甲第4号証、甲第1号証により容易に発明をすることができたということはできない。

イ.本件特許発明2について

上記(1)イ.に記載したとおりである。

本件特許発明2は、本件特許発明1において、さらに「前記の第1段階および第2段階において符号化されたディジタルデータを前記中間局へ伝送する」ことを含む方法であるから、上記ア.(ウ)で記載した相違点3を含む。したがって、上記ア.(エ)で記載したのと同様の理由により、本件特許発明2は、甲第3号証及び甲第4号証、甲第1号証により容易に発明をすることができたとすることはできない。

ウ.本件特許発明3について

上記(1)ウ.に記載したとおりである。

本件特許発明3は、本件特許発明1において、さらに「前記中間局において、復号されたディジタルデータチャネルに対し前記シグナリングデータを付加して、前記第2の通信ネットワークにおける伝送のためにビット流を生成し、
前記ビット流におけるディジタルデータとシグナリングデータを、前記中間局によりチャネル符号化し、
前記ビット流におけるディジタルデータおよびシグナリングデータを、前記第2の通信ネットワークにおける伝送チャネルを介して前記第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局により、前記ビット流におけるディジタルデータおよびシグナリングデータをチャネル復号し、
該第2の移動局により第2段階でチャネル復号されたディジタルデータを、該第2の移動局が復号したシグナリングデータに依存して、該第2の移動局により情報源復号する」ことを含む方法であるから、上記ア.(ウ)に記載した相違点3を含む。したがって、上記ア.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明3は、甲第3号証及び甲第4号証、甲第1号証により容易に発明をすることができたとすることはできない。

エ.本件特許発明4について

上記(1)エ.に記載したとおりである。

本件特許発明4は、本件特許発明1において、さらに「第1の通信ネットワークにおけるディジタルデータを第1の移動無線規格に従い伝送し、該ディジタルデータをそれぞれ第1段階および第2段階で情報源符号化およびチャネル符号化し、
第2の通信ネットワークにおけるディジタルデータをチャネル符号化し、第2の移動無線規格に従いシグナリングデータといっしょに伝送し、該シグナリングデータは、前記第1の移動無線規格による前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2段階で符号化され前記第2の移動局により復号されたディジタルデータを、前記シグナリングデータの評価に応じて前記第1の移動無線規格に従い復号する」ことを含む方法であるから、上記ア.(ウ)に記載した相違点3を含む。したがって、上記ア.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明4は、甲第3号証及び甲第4号証、甲第1号証により容易に発明をすることができたとすることはできない。

オ.本件特許発明7について

(ア)本件特許発明7

上記(1)オ.に記載したとおりである。

(イ)甲第3号証

上記ア.(イ)に記載したとおりである。

(ウ)比較

引用発明2と本件特許発明7は

「第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法において、
前記第2の移動局により、ディジタルデータチャネルをチャネル復号し、
前記第2の移動局により復号されたディジタルデータチャネルを、該第2の移動局により情報源復号することを特徴とする、
第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法。」

で一致し、

相違点1

本件特許発明7は、第2の移動局へ伝送されるディジタルデータが、「第1の移動局」からのデータであって、第1の移動局で、「第1段階でディジタルデータを符号化し、次に第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化」して、「前記の第1段階および第2段階で符号化されたディジタルデータを前記第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して中間局へ伝送」するのに対し、引用発明2は、発側の端末がどのような端末であって、どのような処理を行っているのか記載されていない点。

相違点2

本件特許発明7は、第1の移動局が「中間局」へ第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して伝送し、中間局により「第2段階で符号化されたディジタルデータチャネルを復号」して、「第2の通信ネットワーク内での伝送のため、前記中間局により前記ディジタルデータをチャネル符号化し、次に前記第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して、チャネル符号化された前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送」するのに対し、引用発明2は、「網内の基地局」が第2の移動局へ伝送するものの、該基地局が中間局であるかどうか記載されておらず、どのような処理を行っているかも記載されていない点。

相違点3

本件特許発明7は、「該第2の移動局へ前記中間局からシグナリングデータを伝送し、該シグナリングデータは、前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含」み、第1の移動局で符号化されたディジタルデータを「該第2の移動局が受信した前記シグナリングデータに依存して、」復号しているが、引用発明2には、網と移動機が情報を転送する双方向チャネルである個別セル用シグナリングチャネルがあることは記載されているが、シグナリングデータを伝送する記載が無く、第2の移動局で該シグナリングデータに依存して情報源復号を行っている記載も無い点。

で相違する。

(エ)相違点の判断

相違点1及び相違点2について

相違点1は上記ア.(ウ)の相違点1と同じであり、相違点2は上記ア.(ウ)の相違点2と同じである。
したがって、相違点1及び相違点2についての判断は、上記ア.(エ)と同じである。

相違点3について

甲第4号証及び甲第1号証に記載された内容は、上記ア.(エ)に記載したとおりである。

結局、甲第4号証にも甲第1号証にも、中間局から第2の移動局に伝送する「前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含」む「シグナリングデータ」に関する記載は無く、該シグナリングデータにより情報源復号化が行われることも記載されていないから、本件特許発明7は、甲第3号証及び甲第4号証、甲第1号証により容易に発明をすることができたということはできない。

カ.本件特許発明8について

上記(1)カ.に記載したとおりである。

本件特許発明8は、本件特許発明7において、さらに「前記の第1段階および第2段階において符号化されたディジタルデータを前記中間局へ伝送する」ことを含む方法であるから、上記オ.(ウ)に記載した相違点3を含む。したがって、上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明8は、甲第3号証及び甲第4号証、甲第1号証により容易に発明をすることができたということはできない。

キ.本件特許発明9について

上記(1)キ.に記載したとおりである。

本件特許発明9は、本件特許発明7において、さらに「第2段階でチャネル符号化され前記中間局において復号されたディジタルデータに対し前記シグナリングデータを付加して、前記第2の通信ネットワークにおける伝送のためにビット流を生成し、
前記ビット流におけるディジタルデータとシグナリングデータを、前記中間局により符号化し、
前記ビット流におけるディジタルデータおよびシグナリングデータを、前記第2の通信ネットワークにおける伝送チャネルを介して前記第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局により、前記ビット流における第2段階で符号化されたディジタルデータおよびシグナリングデータを復号し、
第1段階で符号化され前記第2の移動局により第2段階でチャネル復号されたディジタルデータを、該第2の移動局が復号したシグナリングデータに依存して、該第2の移動局により復号する」ことを含む方法であるから、上記オ.(ウ)に記載した相違点3を含む。したがって、上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明9は、甲第3号証及び甲第4号証、甲第1号証により容易に発明をすることができたということはできない。

ク.本件特許発明10について

上記(1)ク.に記載したとおりである。

本件特許発明10は、本件特許発明7において、さらに「第1の通信ネットワークにおけるディジタルデータを第1の移動無線規格に従い伝送し、該ディジタルデータを第1段階および第2段階で情報源符号化およびチャネル符号化し、
第2の通信ネットワークにおいて符号化されたディジタルデータをチャネル符号化し第2の移動無線規格に従いシグナリングデータといっしょに伝送し、該シグナリングデータは、前記第1の移動無線規格による前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2段階でチャネル符号化され前記第2の移動局によりチャネル復号されたディジタルデータを、前記シグナリングデータの評価に応じて前記第1の移動無線規格に従い該第2の移動局により復号する」ことを含む方法であるから、上記オ.(ウ)に記載した相違点3を含む。したがって、上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明10は、甲第3号証及び甲第4号証、甲第1号証により容易に発明をすることができたということはできない。

ケ.本件特許発明13について

上記(1)ケ.に記載したとおりである。

本件特許発明13は、本件特許発明1または本件特許発明7において、さらに「前記シグナリングデータを1回または複数回、別個のコントロールチャネルを介して中間局から第2の移動局へ伝送する」ことを含む方法であるから、上記ア.(ウ)に記載した相違点3または、上記オ.(ウ)に記載した相違点3を含む。したがって、上記ア.(エ)または上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明13は、甲第3号証及び甲第4号証、甲第1号証により容易に発明をすることができたということはできない。

コ.本件特許発明14について

上記(1)コ.に記載したとおりである。

本件特許発明14は、本件特許発明1または本件特許発明3または本件特許発明7または本件特許発明9において、さらに「前記第1段階におけるディジタルデータ符号化形式に関する情報を含む前記シグナリングデータとともに、前記第1の移動局の呼出番号を伝送する」ことを含む方法であるから、上記ア.(ウ)に記載した相違点3または、上記オ.(ウ)に記載した相違点3を含む。したがって、上記ア.(エ)または上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明14は、甲第3号証及び甲第4号証、甲第1号証により容易に発明をすることができたということはできない。

サ.本件特許発明15について

上記(1)サ.に記載したとおりである。

本件特許発明15は、本件特許発明1または本件特許発明7において、さらに「前記ディジタルデータとしてビデオデータ、オーディオデータ、テキストデータ、音声データのうち少なくとも1つのデータを伝送する」ことを含む方法であるから、上記ア.(ウ)に記載した相違点3または、上記オ.(ウ)に記載した相違点3を含む。したがって、上記ア.(エ)または上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明15は、甲第3号証及び甲第4号証、甲第1号証により容易に発明をすることができたということはできない。

シ.小括(無効理由2について)

本件特許の請求項1、2、3、4、7、8、9、10、13、14及び15に係る発明は、甲第3号証及び甲第4号証、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたといえないから、特許法第29条第2項には該当しない。

したがって、無効理由2を理由として本件特許の請求項1、2、3、4、7、8、9、10、13、14及び15に係る発明を無効とすることはできない。


第4.むすび

以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることはできない。
したがって、本件特許の請求項1、2、3、4、7、8、9、10、13、14及び15に係る発明を、無効理由1、2を理由として特許法第123条第1項第2号に該当するということはできない。
また、その他に無効理由を発見しない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-30 
結審通知日 2015-02-03 
審決日 2015-02-16 
出願番号 特願2000-563094(P2000-563094)
審決分類 P 1 123・ 841- YB (H04W)
P 1 123・ 121- YB (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松野 吉宏  
特許庁審判長 近藤 聡
特許庁審判官 吉田 隆之
水野 恵雄
登録日 2007-10-05 
登録番号 特許第4021622号(P4021622)
発明の名称 ディジタル有効データの伝送方法  
代理人 高柳 司郎  
代理人 黒川 恵  
代理人 岩間 智女  
代理人 坂本 隆志  
代理人 服部 誠  
代理人 片山 英二  
代理人 小林 浩  
代理人 蟹田 昌之  
代理人 大塚 康徳  
代理人 大塚 康弘  
代理人 相田 義明  
代理人 江嶋 清仁  
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