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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1299246
審判番号 不服2014-1697  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-30 
確定日 2015-04-02 
事件の表示 特願2008-194311号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成22年2月12日出願公開、特開2010-29408号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成20年7月29日の出願であって、平成25年1月17日付けで拒絶の理由が通知され、同年2月25日に意見書及び手続補正書が提出されところ、同年11月15日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年11月19日)、それに対し、平成26年1月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲に係る手続補正がなされたものである。

第2 平成26年1月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年1月30日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、平成25年2月25日に提出された手続補正書における
「表示を含む装飾が施された外装部を備えた遊技機であって、
前記外装部は、
遊技者側の前面に配置され透光性材料からなる第1透明板と、
前記第1透明板の背面側に設けられ、入射する光の一部を反射し又は透過するハーフミラー部と、
前記ハーフミラー部の背面側に設けられ透光性材料からなる第2透明板と、
前記第2透明板の背面側に設けられ入射する光を反射するミラー部と、
前記ミラー部の前面に視覚情報として形成された表示パターンと、
前記ミラー部の背面側に設けられ前方に光を照射する光源と、
前記ミラー部に設けられ前記光源が照射した光を前記第2透明板に導く導光手段と、
を有し、
前記ハーフミラー部は、前記第1透明板の背面に印刷によって形成され、
前記ミラー部は、前記第2透明板の背面に印刷によって形成され、
前記第1透明板及び前記第2透明板は、接着固定により積層されていることを特徴とする遊技機。」
から、審判請求時に提出された手続補正書における
「表示を含む装飾が施された外装部を備えた遊技機であって、
前記外装部は、
遊技者側の前面に配置され透光性材料からなる第1透明板と、
前記第1透明板の背面側に設けられ、入射する光の一部を反射し又は透過するハーフミラー部と、
前記ハーフミラー部の背面側に設けられ透光性材料からなる第2透明板と、
前記第2透明板の背面側に設けられ入射する光を反射するミラー部と、
前記ミラー部の前面に視覚情報として形成された表示パターンと、
前記ミラー部の背面側に設けられ前方に光を照射する光源と、
前記ミラー部に設けられ前記光源が照射した光を前記第2透明板に導く導光手段と、
を有し、
前記ハーフミラー部は、前記第1透明板の背面に印刷によって形成され、
前記ミラー部は、前記第2透明板の背面に前記表示パターンの形成領域を除いて印刷によって形成され、
前記第1透明板及び前記第2透明板は、接着固定により積層され、
前記表示パターンは、前記導光手段として前記光源の光を前記第2透明板に導くことを特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。)。

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項であるミラー部に関して、「前記第2透明板の背面に印刷によって形成され」とあったものを「前記第2透明板の背面に前記表示パターンの形成領域を除いて印刷によって形成され」と限定するとともに、「前記表示パターンは、前記導光手段として前記光源の光を前記第2透明板に導くこと」を限定することを含むものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 独立特許要件について
(1)刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-180914号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は審決にて付した。以下同じ。)。

(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 透明板に所定の表示がなされた外装部を有する遊技機において、
前記外装部は、規則的な模様が描かれた2枚の前記透明板が重ねられて構成されていることを特徴とする遊技機。」

(1b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、透明板に所定の表示がなされた外装部を有する遊技機に関するものである。」

(1c)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来のスロットマシンにおいては、外装部の表示は、パネルに図柄や文字等を描くだけの平面的な表現しか出来なかった。このため従来のスロットマシンの外装は、視覚的刺激に乏しいものであった。また、外装部の表示を立体的に表現するため、パネルの表面を立体形状に加工することが考えられるが、パネルの表面が汚れたり、傷つく虞があり、実現は難しかった。」

(1d)「【0013】
【発明の実施の形態】次に、本発明による遊技機をスロットマシンに適用した一実施形態について説明する。
【0014】図1は本実施形態によるスロットマシン1の外観を示す正面図である。
【0015】スロットマシン1の前面には、リール2が観察される表示窓3や遊技状態を報知する各種表示ランプ4等が設けられた回胴部パネル5が設けられている。この回胴部パネル5の下方には、リール2の回転を停止させるためのストップボタン6が設けられており、その下方には、腰部パネル7が設けられている。この腰部パネル7は、スロットマシン1の外装部を構成しており、キャラクタ図柄や、文字、模様などの所定の表示がなされている。
【0016】図2は腰部パネル7の構成を示す分解側面図である。また、図3(a)は腰部パネル7の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【0017】腰部パネル7は、図2に示すように、観察者の目Eに対して後方に位置する後部パネル7aの前に前部パネル7bが重ねられて構成されている。各パネル7a,7bは、アクリル樹脂によって長方形に形成された透明で平らなアクリル板からなる。後部パネル7aの裏面中央には、図3(a)に示すように、斜線で示されるアルファベット文字「A」からなる通常印刷部x1が表示されている。この通常印刷部x1は、図2に示すように、後部パネル7aの裏面に貼られたPET(ポリエチレン)シート8の表面に、インキがべた塗りされる通常の印刷によってカラー印刷されている。通常印刷部x1の周囲のPETシート8の表面にはドット印刷部y1が形成されている。ドット印刷部y1は、規則的に配置された複数の点状にインキが載るドット印刷によって構成されている。このドット印刷により、ドット印刷部y1には、インキの複数の点9が規則的に配置されたマトリクス模様が作り出されている。後部パネル7aの裏面は、これら通常印刷部x1とその周囲のドット印刷部y1との上に白押さえ印刷10が施されている。また、後部パネル7aの表面には透明薄膜からなる保護シート11が貼られている。
【0018】一方、前部パネル7bの裏面中央には、図3(a)に示すように、文字「A」の形状をした無印刷部x2が透明に形成されている。その周りの前部パネル7bの裏面には、インキの複数の点9からなる上述したドット印刷が直接施されてドット印刷部y2が形成されている。また、前部パネル7bの表面にも透明薄膜からなる保護シート11が貼られている。」

上記1a?1dの記載、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
「透明板に所定の表示がなされた外装部を有する遊技機において、
外装部は、観察者の目Eに対して後方に位置する、透明で平らなアクリル板からなる後部パネル7aの前に透明で平らなアクリル板からなる前部パネル7bが重ねられて構成されている遊技機。」

(2)刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-202824号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】透明層と、前記透明層の前面側に配置された第1の蒸着部と、前記透明層の背面側に配置され第2の蒸着部とを有し、前記透明層及び前記第1及び前記第2の蒸着層(「第2の蒸着部」の誤記と認める。)が積層された積層構造を備える表示部を有し、前記第1及び前記第2の蒸着部の少なくとも一方には所定のパターンが形成されたパターン層が形成され、さらに、前記表示部に光を照射する照明具を有し、前記第1の蒸着部側から前記所定のパターンをディスプレイするようにしたことを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項2】前記第1の蒸着部は所定の厚さを有する第1の蒸着層を備え、前記第2の蒸着部は前記所定の厚さよりも厚い第2の蒸着層を備えており、前記第1の蒸着部はハーフミラー部として用いられるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
・・・
【請求項10】前記第1の蒸着部の外面には透明な保護層が形成されていることを特徴とする請求項1?7に記載されたディスプレイ装置。」

(2b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学的効果を利用したディスプレイ装置に関する。
・・・
【0003】このようなディスプレイ装置は、例えば、商業用サイン、屋内照明サイン、及び一般ディスプレイ等として、実用的用途にも装飾的用途にも広く利用されている。」

(2c)「【0006】本発明の目的は、所定のパターンを立体的に視認することのできるディスプレイ装置を提供することにある。」

(2d)「【0015】
【発明の実施の形態】以下本発明について、図面を参照して説明する。図1は、本発明によるディスプレイ装置10の第1の実施形態の外観図である。
【0016】ディスプレイ装置10は、表示部20及び照明具30を備えており、表示部20は平板状に成形されている。図示のように、ディスプレイ装置10の前面側には表示部20が配置され、ディスプレイ装置10の内部には照明具30が取り付けられている。そして、照明具30によって表示部20にはその背面側から光が照射される。表示部20は、後述するように、エッチングパターン層を含む複数の層から構成されており、照射具30によって光が表示部20に照射されると、エッチング層に形成されたパターン(図1に示す例では「ABCDEFG」の文字)が、奥行き方向に、あたかも複数の同一パターンが存在するかのように多重化して視覚的に認識される。そして、視認される複数のパターンは、前方のものほど明度が高く後方のものほど明度が低くなる。
【0017】図2(a)は、図1に示すディスプレイ装置10のA-A断面を示す断面図である。前述したように、ディスプレイ装置10の前面には平板状の表示部20が設けられている。ディスプレイ装置10の内部はほぼ空洞であり、照明具30が予め定められた位置に設置される。照明具30は、例えば、蛍光灯であり、照明具30は表示部20に全体的にむらなく光を照射できる位置に設置される。照明具30の種類及び形状は任意であり、適宜の光学的効果を付与するフィルタ等を用いることも任意である。すなわち、上記したパターン多重化という本発明の特徴的な光学的効果を得るために必要な強度の光が照射されるならば、任意の照明具を用いることができる。
【0018】図2(b)は、表示部20の層構造の一例を示す部分断面図である。基本的には、透明層21を基板として、透明層21の前面側(視認される側)に第1の蒸着部(ハーフミラー部)23を、そして透明層21の背面側(照射される側)に第2の蒸着部22を設けている。
【0019】透明層21は、好適には透明なプラスチック板から形成され、例えば、アクリル板である。なお、ガラス板でもよい。さらには、水を封入した封入層であってもよく、また、単に、空気層等の空間として透明層21を規定するようにしてもよい。いずれにしても、透明層21には、固体、液体、及び気体を問わず、透明なものであれば使用することができる。
【0020】ハーフミラー部23は、透明プラスチックフィルム等からなる第1のベース層23bと、アルミニウムや金等の金属蒸着によるハーフミラー蒸着層(第1の蒸着層)23aとから形成され、ハーフミラー部23は、背面側から入射する光を部分的に透過させかつ部分的に反射させるハーフミラー効果を具備する。アルミニウム蒸着によれば銀色の背景色が得られ、金蒸着による金色の背景色が得られる。金属の種類を選択することにより背景色を調整できる。
【0021】第2の蒸着部22は、透明プラスチックフィルム等からなる第2のベース層22bと、アルミニウム等の金属蒸着による第2の蒸着層(第2の蒸着層はハーフミラー蒸着層よりもその厚さが厚い。そして、ハーフミラー層23aは光のおおよそ半分を透過するが、第2の蒸着層は光の大部分を反射し、透過する光は僅かである)22aとから形成される。第2の蒸着層22aには、エッチングによって所定のパターンが形成されてエッチングパターン層(金属蒸着が選択的に取り除かれ所定のパターンを有する層)22cとされる。
【0022】表示部20の背面側からの照射光は、第2の蒸着層22aにおいて、エッチングパターン層22cのみを透過して透明層21へ入射する。従って、このエッチングパターン層22cのパターン形状が、ディスプレイ装置10の表示しようとする具体的内容(商業サイン等)を表現することとなる。図3は、エッチングパターンが多重化して視認される本発明の特徴的な光学的効果を模式的に説明した図である。
【0023】エッチングパターン層22cを透過した照射光は、透明層21を通りハーフミラー部23に到達したとき、一部がハーフミラー部23を透過して前面から出て行く。そして一部はハーフミラー部23により反射されて再び透明層21を通り第2の蒸着部22へ到達し、第2の蒸着部22の蒸着層22aにより反射されて再び前方へ進行する。これを繰り返す結果、表示部20の前面を見る観察者は、パターンが奥行き方向に多重化していると視認する。この光学的効果は、真正面からではなく斜め前方から観察したときに得られる。」

(2e)「【0025】さらに、図示はしていないが、ハーフミラー部23の表面に保護層(透明な固体層)を形成するようにしてもよい。ハーフミラー部23の表面に保護層を形成すれば、ハーフミラー部23が保護層によって保護され、ハーフミラー部23が傷つけられることはない。このような保護層は、例えば、ラミネート加工、プラスチック加工、又はガラス加工によってハーフミラー部23の表面に形成される。」

(2f)2aから2eの記載及び【図4】等から、透明な保護層、第1の蒸着部、透明な基板である透明層、第2の蒸着部は相互にくっついて固定されることで積層されていることが見てとれる。

上記2a?2eの記載、上記2fの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物2には、次の技術事項1及び2(以下「刊行物2に記載された技術事項1及び2」という。)が記載されていると認められる。

技術事項1:第1の蒸着部(ハーフミラー部)の外面に形成された透明な保護層と、当該透明な保護層の背面側に配置された第1の蒸着部(ハーフミラー部)と、当該第1の蒸着部(ハーフミラー部)の背面側に配置された透明な基板である透明層と、当該透明層の前面側に配置された光の大部分を反射する第2の蒸着部とを備え、前記透明な保護層、前記第1の蒸着部(ハーフミラー部)、前記透明な基板である透明層、及び、前記第2の蒸着部は、相互にくっついて固定されることで積層構造を有する表示部を構成し、さらに、表示部に光を照射する照明具を有し、第1の蒸着部(ハーフミラー部)側から所定のパターンをディスプレイするようにしたディスプレイ装置において、保護層は、プラスチック加工により形成され、ディスプレイ装置は、装飾的用途にも広く利用されている点。

技術事項2:第2の蒸着部には、パターン層に形成された所定のパターンが設けられ、表示部の背面側からの照射光は、所定のパターンのみを透過して透明層へ入射し、第1の蒸着部側から所定のパターンをディスプレイするようにしたディスプレイ装置。

(2)対比
刊行物1発明と本願補正発明とを対比する。
ア 刊行物1発明における「透明板に所定の表示がなされた外装部を有する遊技機」は、その構成及び機能からみて、本願補正発明における「表示を含む装飾が施された外装部を備えた遊技機」に相当する。

イ 刊行物1発明における「観察者の目Eに対して後方に位置する、透明で平らなアクリル板からなる後部パネル7aの前に透明で平らなアクリル板からなる前部パネル7bが重ねられて構成されている」ことと、本願補正発明における「遊技者側の前面に配置され透光性材料からなる第1透明板と、第1透明板の背面側に設けられ、入射する光の一部を反射し又は透過するハーフミラー部と、ハーフミラー部の背面側に設けられ透光性材料からなる第2透明板と、第2透明板の背面側に設けられ入射する光を反射するミラー部と、ミラー部の前面に視覚情報として形成された表示パターンと、ミラー部の背面側に設けられ前方に光を照射する光源と、ミラー部に設けられ光源が照射した光を第2透明板に導く導光手段と、を有し、ハーフミラー部は、第1透明板の背面に印刷によって形成され、ミラー部は、第2透明板の背面に表示パターンの形成領域を除いて印刷によって形成され、第1透明板及び第2透明板は、接着固定により積層され、表示パターンは、導光手段として光源の光を前記第2透明板に導く」こととを対比する。
両者は、「遊技者側の前面に配置され透光性材料からなる第1透明板と、第1透明板の背面側に設けられ透光性材料からなる第2透明板と、を有し、第1透明板及び第2透明板は積層され」ることで共通する。

ウ 上記ア及びイから、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「表示を含む装飾が施された外装部を備えた遊技機であって、
前記外装部は、遊技者側の前面に配置され透光性材料からなる第1透明板と、前記第1透明板の背面側に設けられ透光性材料からなる第2透明板と、を有し、第1透明板及び第2透明板は積層される遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
第1透明板と第2透明板を積層してなる外装部に関して、
本願補正発明は、遊技者側の前面に配置され透光性材料からなる第1透明板と、第1透明板の背面側に設けられ、入射する光の一部を反射し又は透過するハーフミラー部と、ハーフミラー部の背面側に設けられ透光性材料からなる第2透明板と、第2透明板の背面側に設けられ入射する光を反射するミラー部と、ミラー部の背面側に設けられ前方に光を照射する光源と、を有し、第1透明板及び第2透明板は、接着固定により積層されているのに対して、
刊行物1発明は、遊技者側の前面に配置され透光性材料からなる第1透明板と、前記第1透明板の背面側に設けられ透光性材料からなる第2透明板と、を有し、第1透明板及び第2透明板は積層される構成を有するが、本願補正発明の上記構成を具備しない点。

[相違点2]
本願補正発明は、ミラー部の前面に視覚情報として形成された表示パターンと、ミラー部に設けられ光源が照射した光を第2透明板に導く導光手段と、を有し、表示パターンは、導光手段として光源の光を第2透明板に導くものであるのに対して、刊行物1発明は、そのような構成を有しない点。

[相違点3]
本願補正発明は、ハーフミラー部は、第1透明板の背面に印刷によって形成され、ミラー部は、第2透明板の背面に表示パターンの形成領域を除いて印刷によって形成されているのに対して、刊行物1発明は、そのような構成を有しない点。

(3)当審の判断
ア 上記相違点1について検討する。
刊行物2に記載された技術事項1における「ディスプレイ装置」、「透明な保護層」、「第1の蒸着部(ハーフミラー部)」、「透明層」、「第2の蒸着部」、「照明具」、「積層構造を備える表示部」は、それぞれ、本願補正発明における「外装部」、「第1透明板」、「ハーフミラー部」、「第2透明板」、「ミラー部」、「光源」、「第1透明板及び第2透明板は、接着固定により積層されている」ことに相当する。
したがって、刊行物2に記載された技術事項1は、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項に相当するものである。
そして、刊行物1発明と刊行物2に記載された技術事項1とは、装飾を目的とし、「外装部の表示を立体的に表現する」ことができるようにするという共通の課題を解決するものである。
したがって、刊行物1発明に刊行物2に記載された技術事項1を適用して上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

イ 上記相違点2について検討する。
刊行物2に記載された技術事項2は、「所定のパターン」が、照射光を透過する機能を有することを示している。また、刊行物2に記載された技術事項2における「所定のパターン」は、第2の蒸着部の前面に形成された照射光により視覚情報として表示されるパターンであることは、当業者にとって自明である。
してみると、刊行物2に記載された技術事項2は、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項に相当するものである。
したがって、上記アにおいて検討したと同様の理由により、刊行物1発明に刊行物2に記載された技術事項2を適用して上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

ウ 上記相違点3について検討する。
表示や印刷の技術分野において、透明な基材にハーフミラー部又はミラー部を印刷により形成することは本願出願前に周知の技術事項である(例えば、原査定の拒絶の理由において提示した特開2002-123195号公報の【0018】?【0023】には、ディスプレイ装置の透明板4に、表示模様を除いて、反射層6を蒸着あるいはインキにより形成することが記載され、同じく、原査定において提示した特開2005-2168号公報の【0022】には、透明基材にスクリーン印刷などの印刷技術により高度な鏡面性を発現させることが記載され、同じく、原査定において提示した特開2007-155953号公報の【0034】?【0036】には、透明基材にミラーインキを用いて、所定のパターンを形成することでハーフミラー材料を製造すること、同じく、原査定において提示した特開2007-278736号公報(段落【0035】)には、基材211上に、シルクスクリーン印刷や通常の印刷によりハーフミラー層を形成することが記載されている。)。
したがって、上記ア及びイにおいて検討したように、刊行物1発明に刊行物2に記載された技術事項1?2を適用するに際して、「第1の蒸着部(ハーフミラー部)」及び「第2の蒸着部」を印刷により形成することは当業者が適宜なし得たものである。

エ 効果について
本願補正発明により奏される効果は、当業者が、刊行物1発明、刊行物2に記載された技術事項1?2、及び、周知の技術事項から予測し得る範囲内のものであって、格別のものではない。

オ 小括
上記アないしエにおいて検討したように、本願補正発明は、当業者が刊行物1発明、刊行物2に記載された技術事項1?2、及び、周知の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本願補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年2月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「表示を含む装飾が施された外装部を備えた遊技機であって、
前記外装部は、
遊技者側の前面に配置され透光性材料からなる第1透明板と、
前記第1透明板の背面側に設けられ、入射する光の一部を反射し又は透過するハーフミラー部と、
前記ハーフミラー部の背面側に設けられ透光性材料からなる第2透明板と、
前記第2透明板の背面側に設けられ入射する光を反射するミラー部と、
前記ミラー部の前面に視覚情報として形成された表示パターンと、
前記ミラー部の背面側に設けられ前方に光を照射する光源と、
前記ミラー部に設けられ前記光源が照射した光を前記第2透明板に導く導光手段と、
を有し、
前記ハーフミラー部は、前記第1透明板の背面に印刷によって形成され、
前記ミラー部は、前記第2透明板の背面に印刷によって形成され、
前記第1透明板及び前記第2透明板は、接着固定により積層されていることを特徴とする遊技機。」

2 刊行物
刊行物1?2及びその記載事項、刊行物1発明、及び、刊行物2に記載された技術事項1?2は、前記「第2 2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2」において検討した本願補正発明から、ミラー部に関して、「前記第2透明板の背面に前記表示パターンの形成領域を除いて印刷によって形成され」とあったものを「前記第2透明板の背面に印刷によって形成され」とその限定を省き、さらに、「前記表示パターンは、前記導光手段として前記光源の光を前記第2透明板に導くこと」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 2」に記載したとおり、当業者が刊行物1発明、刊行物2に記載された技術事項1?2、及び、周知の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が刊行物1発明、刊行物2に記載された技術事項1?2、及び、周知の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-30 
結審通知日 2015-02-03 
審決日 2015-02-16 
出願番号 特願2008-194311(P2008-194311)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡崎 彦哉  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 泉 卓也
長崎 洋一
発明の名称 遊技機  
代理人 鹿股 俊雄  
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