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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1299249
審判番号 不服2014-2978  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-17 
確定日 2015-04-02 
事件の表示 特願2009- 28552「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月26日出願公開、特開2010-183960〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年2月10日の出願であって、平成25年3月25日付けで拒絶の理由が通知され、平成25年5月28日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成25年11月26日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成26年2月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲に係る手続補正がなされたものである。

第2 平成26年2月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年2月17日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
磁性体で製造された遊技球を、障害物が設けられた遊技盤面に沿って自重落下させ、前記障害物に混じって設置された入賞口に入賞することで、賞球を得る遊技実行制御手段を備えた遊技機であって、
前記遊技盤に取り付けられ、前記遊技盤面に対向して配置されて当該遊技盤を保護するために設けられた透明板を介して発せられる磁気を検出する磁気センサと、
前記遊技盤の適宜位置、かつ前記磁気センサの磁気検出範囲に設けられ、当該磁気センサが直接検出できない領域の磁気を、指向性を持ってピンポイントで間接的に磁気センサへ伝搬する磁性体と、
を有する遊技機。」
から、
「【請求項1】
磁性体で製造された遊技球を、障害物が設けられた遊技盤面に沿って自重落下させ、前記障害物に混じって設置された入賞口に入賞することで、賞球を得る遊技実行制御手段を備えた遊技機であって、
前記遊技盤に取り付けられ、前記遊技盤面に対向して配置されて当該遊技盤を保護するために設けられた透明板を介して発せられる磁気を検出対象として検出すると共に、遊技盤に適用される磁力を使った部品から発する磁気を直接検出しない感度に制限された磁気センサと、
前記感度の制限により直接検出できない領域である前記遊技盤にある検出対象の磁気を、前記部品から発する磁気を直接検出せずに、指向性を持ってピンポイントで間接的に磁気センサへ伝搬する磁性体と、
を有する遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。)。

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「磁気センサ」に関して、「磁気を検出対象として検出すると共に、遊技盤に適用される磁力を使った部品から発する磁気を直接検出しない感度に制限された」点、及び「磁性体」に関して、「前記感度の制限により直接検出できない領域である前記遊技盤にある検出対象の磁気を、前記部品から発する磁気を直接検出せずに」磁気センサに伝搬する点を限定したものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 独立特許要件について
(1)刊行物1に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開平5-212152号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(1-a)「【0002】
【従来の技術】図11に示すように、パチンコ遊戯機では、遊戯者200が磁石150をパチンコ台100の表面ガラス板102の前面で動かして、パチンコ球110をクギ104間の通過路から入賞穴105に誘導する不正行為が行われることがある。これに対処するため、一般的に、磁石150の磁気を検出するための磁気検出器120がパチンコ台100の台板101の裏側に取付けられ、この磁気検出器120によって、表面ガラス板102の前面に存在する磁石150の検出を行っている。
【0003】磁気検出器120は、図12に示すように、ケース121とカバー122で構成される筐体の内部に、磁気センサ124を実装したプリント回路基板123が取付けられたものである。基板123にはケーブル125が接続され、磁気センサ124の検出出力が検出器外部に取り出される。なお、磁気検出器120は、ケース121に穿設した取付穴126にネジ等を通して台板101に固定される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、パチンコ台100の厚みは非常に厚く、検出器120を取付ける台板101の裏側からパチンコ球110の通過路までの距離は、70?100mmである。これに対し、パチンコ球110の通過路から内ガラス103及び表面ガラス板102を介して磁石150までの距離は、10?20mmと非常に短い。このため、磁気検出器120で検出されない程度の磁力を持ち、その磁力でパチンコ球110を十分吸い付けることができる弱い磁力の磁石を用いれば、パチンコ球110を吸い付けて入賞穴105まで導くことは可能であり、不正行為は意外と容易に働くことができる。
【0005】一般に磁石の特性として知られているように、磁石から離れた任意点における磁界の強さは磁石からの距離の2乗に反比例するため、距離が少しでも長くなると任意点における磁力が大幅に弱くなる。このことを踏まえた上で、従来の磁気検出器120の磁気検出原理を図13に示す。この図から分かるように、磁石150のN極から出た磁力線のほんの一部だけが磁気センサ124を通過し、再び空気中に出てS極に戻る。このため、従来の磁気検出器では、極僅かの磁気しか検出することができず、非常に強力な磁石を用いた場合や、磁石と検出器との距離が短い場合に限って検出可能である。
【0006】又、従来の検出器では、単にスイッチングタイプのホールICのみを用い、その出力でリレー等を動作させたり、アナログ出力タイプのホールICや磁気抵抗素子等と電気回路による増幅器とを組合せて出力を増幅し、増幅した出力でリレー等を動作させたりして、警報を発するように構成されている。このため、一定レベル以上の非常に強力な磁石しか検出できないという問題や、磁気入力が少ないのに増幅率だけを増幅器で無理に上げて、結果的に検出信号とノイズとの比(S/N比)が小さくなり、誤動作が起き易くなるという問題がある。
【0007】更に、パチンコ台は比較的広いスペースに多数の入賞穴を有するため、上記特性故に、即ちこれ以上高感度にすることができないため、1台のパチンコ台に多数の磁気検出器を設置しなければ、不正行為の摘発率を上げることができないという欠点もある。従って、本発明の目的は、弱い磁力の磁石でも広範囲にわたって検出することができ、しかも電気回路の増幅率を上げずにS/N比を大きくして、安定性・確実性・信頼性の良い磁気検出を行える磁気検出器を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明のパチンコ台用磁気検出器は、磁気センサと、この磁気センサの前方側又は後方側、或いは両側に設けられた磁性体とを備えることを特徴とする。本発明の磁気検出器では、磁性体によって磁石の磁力線、つまり磁束が磁気センサに集中するように構成してあるため、磁気検出感度が向上すると共に磁気検出領域が広くなり、従来は検出不可能であったような弱い磁石でも広範囲に検出することができる。これに加えて、多数の磁力線が磁気センサを通過するため、自ずとS/N比が高くなり、磁気検出の安定性・確実性・信頼性が増す。」

(1-b)「【0015】かかる構成の磁気検出器1は、ケース2の取付穴6にネジ等を通して図11に示したようなパチンコ台100の台板101の裏側に固定される。次に、固定状態での検出器1の磁気検出原理について図7を参照して述べる。磁石Mがパチンコ台の表面ガラス板の前に近づくと、磁石MのN極より出た磁力線は磁気誘導により磁性体11、12を磁化するため、磁性体11の磁石M側にS極、磁気センサ10側にN極が発生し、磁性体12のセンサ10側にS極、反対側にN極が現出し、磁石Mからの磁力線は図示のようになる。
【0016】磁力線自身は常に縮まろうとする性質を持つため、多くの磁力線は吸引力を保ちながら磁石MのN極、磁性体11、磁気センサ10、磁性体12、空中、磁石MのS極、の順に達する。従って、磁性体11、12で磁力線をセンサ10に誘導することになり、磁気センサ10には多数の磁力線が集中するため、磁気検出の感度が高くなり、たとえ検出器と磁石Mとの距離が長くても正確に検出することができるだけでなく、広範囲に存在する弱い磁石の磁気も容易に検出することができる。
【0017】別実施例を図3に示す。この磁気検出器1’は、磁性体の形状が異なる他は、基本的には先の図1に示す検出器1と同様であり、同じ構成要素には同一符号を付してある。即ち、ケース2とカバー3で形成された筐体内には、磁気センサ10と、センサ10の前方側に設けた前方磁性体21と、センサ10の後方側に設けた後方磁性体22と、センサ10を実装したプリント回路基板15とが配設されている。この実施例では、磁性体21は、円板状の部分21aと、この円板状部分21aの中心に垂直に連結された丸棒状の部分21bとで構成され、磁性体22は先述の実施例と同様に単なる丸棒状である。また同様に、丸棒状部分21bは、円板状部分21aとケース2の内壁との間に介設した環状のバネ材4によって磁気センサ10に当接され、磁性体22は、ケース3の円筒状凸部3aに挿入されると共に、凸部3a内に入れたバネ材5によってセンサ10に圧接される。
【0018】上記磁気検出器1’の磁気検出原理を図8に示す。前記検出原理により、磁石MのN極から出た磁力線は磁石Mと平行に位置する磁性体21の円板状部分21aのa点に集中し、a点にS極が生ずる。すると、磁性体21の丸棒状部分21bのb点に大半のN極が発生し、円板状部分21aのc点には僅かなN極が発生する。更に、丸棒状部分21bのb点のN極は、磁気センサ10を介して磁性体22のセンサ10側をS極に、反対側をN極に磁気誘導により磁化し、前記と全く同様に磁気センサ10に磁力線が集中する。このため、磁性体21の丸棒状部分21bと磁性体22の長さにも依るが、磁石Mとセンサ10の軸ずれにもかかわらず、磁性体21の円板状部分21aの長さ(直径)に比例した面に在る磁石の磁気を検出することができる。」

(1-c)「【0021】更に図6の(a)においては、前方側の磁性体81は、等角度間隔(120°)を置いて放射状に延びる3本の角柱状部分を持つ菱形状部分81aを有する。同図の(b)と(c)では、いずれも前方側の磁性体が面状体である。つまり、(b)に示す磁性体91は、矩形状(正方形)の部分91aを有し、(c)に示すものは、図3に示した磁気検出器1’で用いたものと同じで、磁性体21が円板状部分21aを有する。
【0022】これら各種の磁性体においては、前記した検出感度の原理からも明らかなように検出距離に多少の差は生ずるが、パチンコ台の構造やスペース等を考慮し、任意の形状のものを自由に設定することができる。例えば、パチンコ台の入賞穴が水平方向に在る場合は図5の(b)に示すものを、或いは入賞穴が三方向に在る場合には図6の(a)に示すものを用いるなど、検出方向に応じたものを選定することで、より安定性且つ信頼性良く磁石の磁気を高効率で検出することができる。」

(1-d)「【0026】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のパチンコ台用磁気検出器は、磁気センサの前方側又は後方側、或いは両側に磁性体を設けたため、下記の効果を有する。
(1)磁気検出範囲が広く、しかも高感度であるため、弱い磁石を用いて不正行為を働いても、その磁石の磁気を確実に検出できる。
(2)複数の入賞穴を含む広い領域を1つの磁気検出器で監視することができるだけでなく、高S/N比で且つ安定性・確実性・信頼性の高い磁気検出を行うことができる。」

(1-e)段落【0002】、図11から、パチンコ球を、クギが設けられた台板面に沿って自重落下させ、前記クギに混じって設置された入賞穴に入賞するパチンコ遊戯機であるといえる。

(1-f)段落【0002】から、磁気センサは、台板の裏側に取り付けられ、表面ガラス板の前面に存在する磁石の磁気を検出するものといえる。

(1-g)段落【0008】、【0016】、【0022】から、磁性体は、広範囲にわたる前記台板にある磁石の磁気を、検出方向に応じた形状により磁気センサへ誘導するといえる。

上記の事項を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「刊行物1発明」という。)。
「パチンコ球を、クギが設けられた台板面に沿って自重落下させ、前記クギに混じって設置された入賞穴に入賞するパチンコ遊戯機であって、
前記台板の裏側に取り付けられ、表面ガラス板の前面に存在する磁石の磁気を検出する磁気センサと、
広範囲にわたる前記台板にある磁石の磁気を、検出方向に応じた形状により磁気センサへ誘導する磁性体と、
を有するパチンコ遊戯機。」

(2)対比
本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。

ア 刊行物1発明における「パチンコ球」は、本願補正発明における「磁性体で製造された遊技球」に相当し、以下同様に、「クギ」は「障害物」に、「台板」は「遊技盤」に、「入賞穴」は「入賞口」に、「パチンコ遊戯機」は「遊技機」に、「表面ガラス板」は「透明板」に、それぞれ、相当する。

イ パチンコ遊戯機には、パチンコ球が入賞穴に入賞することで、賞球を得る制御手段を備えていることは、自明な事項であるから、刊行物1発明における「パチンコ球を、クギが設けられた台板面に沿って自重落下させ、前記クギに混じって設置された入賞穴に入賞するパチンコ遊戯機」は、本願補正発明における「磁性体で製造された遊技球を、障害物が設けられた遊技盤面に沿って自重落下させ、前記障害物に混じって設置された入賞口に入賞することで、賞球を得る遊技実行制御手段を備えた遊技機」に相当する。

ウ 刊行物1発明において、「表面ガラス板」は、台板面に対向して配置されて当該台板面を保護するために設けられていることは、自明な事項であるから、刊行物1発明における「台板の裏側に取り付けられ、表面ガラス板の前面に存在する磁石の磁気を検出する磁気センサ」と、本願補正発明における「遊技盤に取り付けられ、前記遊技盤面に対向して配置されて当該遊技盤を保護するために設けられた透明板を介して発せられる磁気を検出対象として検出すると共に、遊技盤に適用される磁力を使った部品から発する磁気を直接検出しない感度に制限された磁気センサ」とは、「遊技盤に取り付けられ、前記遊技盤面に対向して配置されて当該遊技盤を保護するために設けられた透明板を介して発せられる磁気を検出対象として検出する磁気センサ」という点で共通する。

エ 刊行物1発明における「磁性体」は、「検出方向に応じた形状」であるため指向性を有しているといえるから、刊行物1発明の「磁気を、検出方向に応じた形状により磁気センサへ誘導する」構成は、本願補正発明の「磁気を、指向性を持って間接的に磁気センサへ伝搬する」構成に相当する。
よって、刊行物1発明における「広範囲にわたる台板にある磁石の磁気を、検出方向に応じた形状により磁気センサへ誘導する磁性体」と本願補正発明における「感度の制限により直接検出できない領域である遊技盤にある検出対象の磁気を、部品から発する磁気を直接検出せずに、指向性を持ってピンポイントで間接的に磁気センサへ伝搬する磁性体」とは、「遊技盤にある検出対象の磁気を、指向性を持って間接的に磁気センサへ伝搬する磁性体」という点で共通する。

オ したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「磁性体で製造された遊技球を、障害物が設けられた遊技盤面に沿って自重落下させ、前記障害物に混じって設置された入賞口に入賞することで、賞球を得る遊技実行制御手段を備えた遊技機であって、
前記遊技盤に取り付けられ、前記遊技盤面に対向して配置されて当該遊技盤を保護するために設けられた透明板を介して発せられる磁気を検出対象として検出する磁気センサと、
前記遊技盤にある検出対象の磁気を、指向性を持って間接的に磁気センサへ伝搬する磁性体と、
を有する遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
磁気センサに関して、本願補正発明は、「遊技盤に適用される磁力を使った部品から発する磁気を直接検出しない感度に制限され」ているのに対し、刊行物1発明には、そのような特定がない点。

[相違点2]
磁性体に関して、本願補正発明は、「感度の制限により直接検出できない領域である遊技盤にある検出対象の磁気を、部品から発する磁気を直接検出せずに」、「ピンポイントで」磁気センサへ伝搬するのに対し、刊行物1発明には、広範囲にわたる台板にある磁石の磁気を、磁気センサへ誘導する点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
本願明細書の段落【0052】、【0053】には、磁気センサに関して、「この磁気センサ208では、真正面が最も感度が高く(検出領域が広く)、所定の指向性(拡散度約45°)を持っている。すなわち、前記カバーブラケット202の上端部に設けることで、始動口(A)130及び始動口(B)134を感知エリアに含ませることができ、この始動口(A)130及び始動口(B)134に近づく磁力(磁石206)を感知し、かつ前方斜め下方に位置するアタッカー112に取り付けられたソレノイド(図示省略)の磁力を感知しないようになっている。」と記載されている。
すなわち、本願補正発明における「遊技盤に適用される磁力を使った部品から発する磁気を直接検出しない感度に制限され」ることは、磁気センサの設置場所により感度を制限することを含むものと解される。
刊行物1発明には、磁気センサの感度の制限については明示されていないが、このような磁気センサを用いた遊戯機の不正検出装置において、入賞口の開閉動作を行うソレノイド等による磁力があり、その影響を排除することは、周知の課題である(必要であれば、特開昭63-143089号公報の第1頁右欄第3?15行、特開2004-267421号公報の段落【0006】参照。)。
そして、上記周知の課題を解決するために、刊行物1発明において、磁気センサに関して、このような入賞口の開閉動作を行うソレノイド等による磁力の影響を受けないように設置し、「遊技盤に適用される磁力を使った部品から発する磁気を直接検出しない感度に制限され」るように構成することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
したがって、刊行物1発明において、上記相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が上記周知の課題に基づいて容易になし得たことである。

イ 相違点2について
刊行物1の段落【0008】には、「本発明の磁気検出器では、磁性体によって磁石の磁力線、つまり磁束が磁気センサに集中するように構成してあるため、磁気検出感度が向上すると共に磁気検出領域が広くなり、従来は検出不可能であったような弱い磁石でも広範囲に検出することができる。」と記載されているから、刊行物1発明における「広範囲」とは、「磁気センサで直接検出できない領域」を含むものと解される。
そして、刊行物1発明の磁性体は「検出方向に応じた形状」であり、指向性を有するものであるから、磁性体の形状等を変えることにより、磁気を「ピンポイント」で磁気センサに伝搬するように構成することは、当業者が適宜なし得ることである。
また、上記相違点1における検討を踏まえれば、刊行物1発明において、磁性体に関して、「感度の制限により直接検出できない領域である遊技盤にある検出対象の磁気を、部品から発する磁気を直接検出せずに」、「ピンポイントで」磁気センサへ伝搬するように構成することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
したがって、刊行物1発明において、上記相違点2に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 本願補正発明が奏する効果について
上記相違点1及び相違点2によって本願補正発明が奏する効果は、当業者が刊行物1発明から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

エ まとめ
以上のように、本願補正発明は、当業者が刊行物1発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 補正却下の決定についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成25年5月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、特に、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
磁性体で製造された遊技球を、障害物が設けられた遊技盤面に沿って自重落下させ、前記障害物に混じって設置された入賞口に入賞することで、賞球を得る遊技実行制御手段を備えた遊技機であって、
前記遊技盤に取り付けられ、前記遊技盤面に対向して配置されて当該遊技盤を保護するために設けられた透明板を介して発せられる磁気を検出する磁気センサと、
前記遊技盤の適宜位置、かつ前記磁気センサの磁気検出範囲に設けられ、当該磁気センサが直接検出できない領域の磁気を、指向性を持ってピンポイントで間接的に磁気センサへ伝搬する磁性体と、
を有する遊技機。」

2 刊行物
刊行物1及びその記載事項並びに刊行物1発明は、上記「第2 2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から「磁気センサ」に関して、「磁気を検出対象として検出すると共に、遊技盤に適用される磁力を使った部品から発する磁気を直接検出しない感度に制限された」点、及び「磁性体」に関して、「前記感度の制限により直接検出できない領域である前記遊技盤にある検出対象の磁気を、前記部品から発する磁気を直接検出せずに」磁気センサに伝搬する点を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 2」に記載したとおり、刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が刊行物1発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-29 
結審通知日 2015-02-03 
審決日 2015-02-17 
出願番号 特願2009-28552(P2009-28552)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲吉▼川 康史▲高▼橋 祐介  
特許庁審判長 杉浦 淳
特許庁審判官 平城 俊雅
吉村 尚
発明の名称 遊技機  
代理人 福田 浩志  
代理人 加藤 和詳  
代理人 中島 淳  

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