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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1299252
審判番号 不服2014-7280  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-18 
確定日 2015-04-02 
事件の表示 特願2009- 89300「発光ダイオード、発光ダイオードランプ及び照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月21日出願公開、特開2010-239098〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2009年(平成21年)4月1日(国内優先権主張 2009年(平成21年)3月10日)を出願日とする出願であって、平成24年11月27日付けの拒絶理由の通知に対し、平成25年1月31日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年9月10日付けの拒絶理由の通知に対し、同年11月14日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成26年1月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月18日付けで審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成26年4月18日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年4月18日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、
「pn接合型の発光部と、前記発光部に積層された歪調整層とを少なくとも含む化合物半導体層を備え、
前記発光部は、組成式Ga_(X)In_(1-X)P(0.37≦X≦0.46)からなり、厚さが8?30nmの範囲である歪発光層と、バリア層との積層構造を有し、歪発光層とバリア層は交互に積層されており、
前記歪発光層は、8?40層含まれており、
バリア層の組成式が(Al_(x)Ga_(1-x))_(Y)In_(1-Y)P(0.3≦X≦0.7、0.48≦Y≦0.52)であり、
前記歪調整層は、厚さが3?15μmの範囲であって、発光波長に対して透明であると共に前記歪発光層及び前記バリア層の格子定数よりも小さい格子定数を有するとともに、 前記発光部の発光スペクトルのピーク発光波長が、655?675nmの範囲であることを特徴とする発光ダイオード。」
から、
「pn接合型の発光部と、前記発光部に積層された歪調整層とを少なくとも含む化合物半導体層を備え、
前記発光部は、組成式Ga_(X)In_(1-X)P(0.37≦X≦0.46)からなり、厚さが8?30nmの範囲である歪発光層と、バリア層との積層構造を有し、歪発光層とバリア層は交互に積層されており、
前記歪発光層は、8?40層含まれており、
バリア層の組成式が(Al_(X)Ga_(1-X))_(Y)In_(1-Y)P(0.3≦X≦0.7、0.48≦Y≦0.52)であり、
前記歪調整層は、組成式が(Al_(X)Ga_(1-X))_(Y)In_(1-Y)P(0≦X≦1、0.6≦Y≦1)であり、厚さが3?15μmの範囲であって、発光波長に対して透明であると共に前記歪発光層及び前記バリア層の格子定数よりも小さい格子定数を有するとともに、
前記歪発光層がプラス歪を有し、前記歪調整層がマイナス歪を有し、
前記発光部の発光スペクトルのピーク発光波長が、655?675nmの範囲であることを特徴とする発光ダイオード。」
へと補正された(下線部は補正箇所であり、当審が引いた。)。

(2)上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「歪調整層」及び「歪発光層」について、「歪調整層」の組成式を限定するとともに、「歪発光層」及び「歪調整層」の歪の符号を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 補正の適否
そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用例の記載事項
ア 引用例1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2007-173551号公報(以下「引用例1」という。)には、図とともに次の記載がある(下線は当審で引いた。以下同じ。)。
a 「【特許請求の範囲】」、
「組成式(Al_(X)Ga_(1-X))_(Y)In_(1-Y)P(0≦X≦1,0<Y≦1)から成る発光層を含む発光部を有し、該発光部を含む化合物半導体層を透明基板と接合された発光ダイオードにおいて、発光ダイオードの主たる光取り出し面に第1の電極と、第1の電極と極性の異なる第2の電極とを有し、第2の電極は第1の電極と対向する側に露出させた化合物半導体層上に形成され、透明基板の側面は、発光層に近い側では発光層の発光面に対して略垂直である第1の側面と、発光層に遠い側では発光面に対して傾斜している第2の側面を有することを特徴とする発光ダイオード。」(請求項1)、
「透明基板が、n型のGaP単結晶であることを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。」(請求項2)、
「発光部が、GaP層を含み、第2の電極が、該GaP層上に形成されていることを特徴とする請求項1?9の何れか1項に記載の発光ダイオード。」(請求項10)
b 「【技術分野】」、
「本発明は、燐化アルミニウム・ガリウム・インジウム(組成式(Al_(X)Ga_(1-X))_(Y)In_(1-Y)P;0≦X≦1,0<Y≦1)から成る発光層を含む半導体層を透明基板に接合させた発光ダイオードおよびその製造方法に関する。」(段落【0001】)
c 「【発明を実施するための最良の形態】」、
「本発明に係る発光部は、(Al_(X)Ga_(1-X))_(Y)In_(1-Y)P(0≦X≦1,0<Y≦1)から成る発光層を含む化合物半導体積層構造体である。発光層はn形またはp形の何れの伝導形の(Al_(X)Ga_(1-X))_(Y)In_(1-Y)P(0≦X≦1,0<Y≦1)からも構成できる。発光層は、単一(single)量子井戸(英略称:SQW)または多重(multi)量子井戸(英略称:MQW)の何れの構造であっても良いが、単色性に優れる発光を得るためにはMQW構造とするのが好適である。量子井戸(英略称:QW)構造をなす障壁(barrier)層及び井戸(well)層を構成する(Al_(X)Ga_(1-X))_(Y)In_(1-Y)P(0≦X≦1,0<Y≦1)の組成は、所望の発光波長を帰結する量子準位が井戸層内に形成される様に決定する。」(段落【0011】)、
「発光部は、上記の発光層と、放射再結合をもたらすキャリア(担体;carrier)及び発光を発光層に「閉じ込める」ために、発光層の両側に対峙して配置したクラッド(clad)層を含む、所謂、ダブルヘテロ(英略称:DH)構造とするのが高強度の発光を得る上で最も好ましい。・・・」(段落【0012】)、
「本願発明では、発光層を含む半導体層に、透明基板(透明な支持体層)を接合させる。透明な支持体層は、発光部を機械的に支持するのに充分な強度を有し、且つ、発光部から出射される発光を透過できる禁止帯幅が広く、光学的に透明な材料から構成する。例えば、燐化ガリウム(GaP)、砒化アルミニウム・ガリウム(AlGaAs)、窒化ガリウム(GaN)等のIII-V族化合物半導体結晶体、硫化亜鉛(ZnS)やセレン化亜鉛(ZnSe)等のII-VI族化合物半導体結晶体、或いは六方晶或いは立方晶の炭化珪素(SiC)等のIV族半導体結晶体などから構成できる。
透明な支持体層は、発光部を機械的に充分な強度で支持できる様に凡そ、50μm以上の厚みであるのが望ましい。また、接合後に透明な支持体層への機械的な加工を施し易くするため、約300μmの厚さを超えないものとするのが望ましい。(Al_(X)Ga_(1-X))_(Y)In_(1-Y)P(0≦X≦1,0<Y≦1)から成る発光層を備えた化合物半導体LEDにあって、透明な支持体層を、厚さを約50μm以上で約300μm以下とするn型GaP単結晶体から構成するのが最適である。」(段落【0013】)、
「例えば、燐化ガリウム(GaP)からなる透明な支持体層を発光部の最表層に接合させて設ける場合、その発光部の最表層を、発光部を構成するその他のIII-V族化合物半導体層とは格子定数を異にするIII-V族化合物半導体材料から構成すると、透明な支持体層を接合させるのに際して発光部へ印加される応力を緩和する作用を発揮できる。これにより、接合時における発光層の損傷を防止でき、例えば、所望の波長の光を出射できる化合物半導体LEDを安定して提供するのに貢献できる。発光部の最表層の層厚は、透明な支持体層の接合時に、発光部へ印加される応力を充分に緩和するために0.5μm以上とするのが好適である。一方で、その最表層の層厚を極端に厚くすると、他の発光部構成層とは格子定数を相違する関係から、最表層を設ける段階で発光層に応力が印加されてしまう。これを避けるために最表層の層厚は20μm以下とするのが好適である。」(段落【0014】)、
「特に、(Al_(X)Ga_(1-X))_(Y)In_(1-Y)P(0≦X≦1,0<Y≦1)から成る発光層から出射される発光を外部へ透過させるのに好都合な透明な支持体層として、燐化ガリウム(GaP)を選択した場合、発光部の最表層をガリウム(Ga)と燐(P)とを構成元素として含み、且つ、GaをPより多く含む半導体材料から構成すると強固な接合を形成することができる。特に、最表層を非化学量論的な組成のGa_(X)P_(1-X)(0.5<X<0.7)から構成するのが好適である。」(段落【0015】)、
「接合させようとする透明な支持体層の表面、及び発光部の最表層の表面は、単結晶からなる表面であり、且つ、それらの面方位は同一とするのが好ましい。例えば、表面は、双方共に(100)面、または、(111)面とするのが望ましい。表面を(100)面、または、(111)面とする発光部の最表層を得るのには、発光部の最表層を基板上に形成するのに際し、表面を(100)面、または、(111)面とする基板を用いれば事足りる。例えば、表面を(100)面とする砒化ガリウム(GaAs)単結晶を基板として用いれば、表面を(100)面とする発光部の最表層を形成できる。」(段落【0016】)、
「発光部は、砒化ガリウム(GaAs)や、燐化インジウム(InP)、燐化ガリウム(GaP)などのIII-V族化合物半導体単結晶基板や、シリコン(Si)基板などの表面上に形成できる。発光部は、上記したように、放射再結合を担うキャリア(担体)と発光を閉じ込められるダブルヘテロ(英略称:DH)構造とするのが好適である。また、発光層は単色性に優れる発光を得るため、単一(single)量子井戸構造(英略称:SQW)や多重(multi)量子井戸(英略称:MQW)構造とするのが好適である。発光部の構成層の形成手段としては、有機金属化学的気相成長(英略称:MOCVD)手段、分子線エピタキシャル(英略称:MBE)手段や液相エピタキシャル(英略称:LPE)手段を例示できる。」(段落【0017】)、
「透明な支持体層或いはそれを接合させる発光部の最表層の表面が、2乗平均平方根(英略称:rms)値にして0.3nm以下と平滑である場合、特に強度な接合が果たせる。・・・」(段落【0019】)、
「透明な支持体層または発光部の最表層は、圧力にして1×10^(-2)パスカル(圧力単位:Pa)以下、望ましくは、1×10^(-3)Pa以下の真空中で接合させる。特に、上記の如く、研磨された平滑な表面を相互に接合させることとすると強固な接合を形成できる。双方を接合させるのに際し、50エレクトロンボルト(単位:eV)以上のエネルギーを有する原子のビーム(beam)またはイオンビームを接合させようとする表面の各々に照射し、接合させる表面を活性化させるのが肝要である。活性化とは、接合させる表面に存在する酸化膜、炭素等を含む不純物層や汚染層などが除去された清浄な状態の表面を創出することを云う。この照射を、透明な支持体層または発光部の構成層の何れかの表面に行えば、双方を強固に確実に接合させられる。また、双方の表面に行うと、より強固な強度で双方を結合させることができる。」(段落【0020】)、
「強固な接合をもたらすに有効となる照射種としては、水素(元素記号:H)原子、水素分子(分子式:H_(2))、または水素イオン(プロトン;H^(+))ビームを例示できる。また、接合させようとする表面領域に存在する元素を含むビームを照射すると、強度的に優れる接合を形成できる。例えば、透明な支持体層として亜鉛(元素記号:Zn)が添加された燐化ガリウム(GaP)を用いるのに際し、ガリウム(Ga)、燐(P)、または亜鉛(Zn)を含む原子やイオンビームを接合させる表面に照射すると、強固な接合を形成できる。しかし、透明な支持体層や発光層の最表層の表面の電気抵抗が高いと、イオンを主体的に含むビームを表面に照射した場合、表面が帯電する場合がある。この表面の帯電に因る電気的な反発が起こると強固な接合を形成できないため、イオンビームの照射による表面の活性化は導電性に優れる表面の活性化のために利用するのが好ましい。」(段落【0021】)、
「また、透明な支持体層または発光部の構成層の表面領域において、それらの組成等に顕著な変化を及ぼさないヘリウム(元素記号:He)、ネオン(元素記号:Ne)、アルゴン(元素記号:Ar)、及びクリプトン(元素記号:Kr)等の不活性ガスのビームを用いると表面の活性化を安定して果たせる。中でも、アルゴン(Ar)原子(一原子分子)ビームを用いると、表面を短時間に簡便に活性化でき利便でする。ヘリウム(He)は、アルゴン(Ar)よりも原子量が小さく、このため、Heビームでは接合させようとする表面の活性化に時間が浪費される欠点がある。一方、アルゴンよりは原子量が大きいクリプトン(Kr)のビームを用いると、表面に衝撃損傷を与えかねず不都合である。」(段落【0022】)、
「透明な支持体層と発光部の最表層との表面を対向させて重ね合わせて接合させるのに際し、接合面の全般に機械的圧力が及ぶ様にすると、双方を強固に接合させるのに好都合となる。具体的には、接合面に対して垂直方向に(鉛直に)、5グラム(g)・cm^(-2)以上で100g・cm^(-2)以下の範囲の圧力を加える。この手法によれば、透明な支持体層または発光部の最表層、或いはその双方が例えば、反っていても、その反りを解消して、均一な強度で接合させるのに効果を上げられる。」(段落【0023】)、
「透明な支持体層と発光部とは、上記の望ましい真空度の真空中において、支持体層または発光部の最表層、或いは、それらの双方の接合させる表面の温度を、100℃以下、望ましくは50℃以下、更に、望ましくは室温として接合させる。約500℃を超える高温環境下で接合させると、発光部に備えられている(Al_(X)Ga_(1-X))_(Y)In_(1-Y)P(0≦X≦1,0<Y≦1)から成る発光層が熱的に変性して、このため、所望の波長の発光を出射する化合物半導体LEDを安定して得るのに不都合となる。」(段落【0024】)、
「本発明では、発光部の最表層に支持体層を接合させ、発光部を機械的に支持できる状態とした後、その発光部を形成するために利用した基板を除去し、発光の外部への取り出し効率を向上させ、従って、高輝度の化合物半導体LEDを構成できる。・・・」(段落【0025】)、
「本発明では、発光部がGaP層を含む構成とし、第2の電極を、GaP層上に形成するのが好ましい。このような構成とすることにより、作動電圧を下げる効果が得られる。第2の電極をGaP層上に形成することにより、良好なオーミックコンタクトが得られ、作動電圧を下げることができる。・・・」(段落【0030】)
d 「【実施例】」、
「本実施例では、本発明に係わる発光ダイオードを作製した例を具体的に説明する。
図1および図2は、本実施例で作製した半導体発光ダイオードを示した図で、図1はその平面図、図2は図1のI-I線に沿った断面図である。図3は、半導体発光ダイオードに用いられる半導体エピタキシャルウェーハの層構造の断面図である。
本実施例で作製した半導体発光ダイオード10は、AlGaInP発光部を有する赤色発光ダイオード(LED)である。
本実施例1では、GaAs基板上に設けたエピタキシャル積層構造体(エピウェーハ)とGaP基板とを接合させて発光ダイオードを作製する場合を例にして、本発明を具体的に説明する。」(段落【0033】)、
「LED10は、Siをドープしたn型の(100)面から15°傾けた面を有するGaAs単結晶からなる半導体基板11上に順次、積層した半導体層13を備えたエピタキシャルウェーハを使用して作製した。積層した半導体層とは、Siをドープしたn型のGaAsからなる緩衝層130、Siをドープしたn型の(Al_(0.5)Ga_(0.5))_(0.5)In_(0.5)Pからなるコンタクト層131、Siをドープしたn型の(Al_(0.7)Ga_(0.3))_(0.5)In_(0.5)Pからなる下部クラッド層132、アンドープの(Al_(0.2)Ga_(0.8))_(0.5)In_(0.5)P/Al_(0.7)Ga_(0.3))_(0.5)In_(0.5)Pの20対からなる発光層133、およびMgをドープしたp型の(Al_(0.7)Ga_(0.3))_(0.5)In_(0.5)Pからなる上部クラッド層および薄膜(Al_(0.5)Ga_(0.5))_(0.5)In_(0.5)Pからなる中間層134、Mgドープしたp型GaP層135である。」(段落【0034】)、
「・・・発光層133は、アンドープの0.8μmとした。・・・GaP層135のキャリア濃度は約3×10^(18)cm^(-3)とし、層厚は9μmとした。
p型GaP層135は、表面から約1μmの深さに至る領域を研磨し、鏡面加工した。鏡面加工に依り、p型GaP層135の表面の粗さを0.18nmとした。 一方、上記のp型GaP層135の鏡面研磨した表面に貼付するn型GaP基板14を用意した。この貼付用GaP基板14には、キャリア濃度が約2×10^(17)cm^(-3)となる様にSiおよびTeを添加した、面方位を(111)とする単結晶を用いた。貼付用GaP基板14の直径は50ミリメートル(mm)で、厚さは250μmであった。このGaP基板14の表面は、p型GaP層135に接合させる以前に鏡面に研磨し、平方平均平方根値(rms)にして0.12nmに仕上げておいた。」(段落【0036】)、
「一般の半導体材料貼付装置に、上記のGaP基板14及びエピタキシャルウェーハを搬入し、3×10^(-5)Paまで装置内を真空に排気した。その後、炭素等の汚染を回避するために炭素(カーボン)材料からなる部材を排除した装置内に載置したGaP基板14の温度を真空中で約800℃の温度に加熱しつつ、800eVのエネルギーに加速されたArイオンを、GaP基板14の表面に照射した。これより、GaP基板14の表面に、非化学量論的な組成からなる接合層141を形成した。接合層141を形成した後、上記のArイオンの照射を停止し、GaP基板14の温度を室温迄、降下させた。」(段落【0037】)
「次に、表面領域に非化学量論的な組成からなる接合層141を有するGaP基板14、及びGaP層135の双方の表面に、電子を衝突させて中性(ニュートラル)化した中性のArビームを3分間に亘り照射した。然る後、真空に維持した貼付装置内で、双方135,14の表面を重ね合わせ、各々の表面での圧力が20g/cm^(2)となる様に荷重を掛け、双方を室温で接合した(図4参照)。接合したウェーハを貼付装置の真空チャンバーから取り出し、接合界面を分析した。その結果接合部には、非化学量論的な組成を有するGa_(0.6)P_(0.4)からなる接合層141が存在していた。接合層141の厚さは約3nmで、接合層141の酸素原子の濃度は、一般的なSIMS分析法に依れば7×10^(18)cm^(-3)であり、炭素の原子濃度は、9×10^(18)cm^(-3)であった。」(段落【0038】)、
「次に、接合したウェーハから、GaAs基板11およびGaAs緩衝層130をアンモニア系エッチャントにより選択的に除去した。
コンタクト層131の表面に第1のオーミック電極15として、AuGe、Ni合金を厚さが0.5μm、Ptを0.2μm、Auを1μmとなるように真空蒸着法によりn形オーミック電極を形成した。一般的なフォトリソグラフィー手段を利用してパターニングを施し、電極15を形成した。
次に、p電極を形成する領域のエピ層131?134を選択的に除去し、GaP層135を露出させた。GaP層の表面にAuBeを0.2μm、Auを1μmとなるように真空蒸着法でp形オーミック電極16を形成した。
450℃で10分間熱処理を行い、合金化し低抵抗のp型およびn型オーミック電極を形成した(図1参照)。」(段落【0039】)、
「マウント用基板45の表面に設けられたn電極端子43とp電極端子44とを介してn型及びp型オーミック電極15,16間に電流を流したところ、主波長を620nmとする赤色光が出射された。順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(Vf)は、GaP層135及びGaP基板14との接合界面での抵抗の低さ、及び各オーミック電極15、16の良好なオーミック特性を反映し、約1.95ボルト(V)となった。また、順方向電流を20mAとした際の発光強度は、発光効率の高い発光部の構成及びチップへの裁断時に発生する破砕層を除去するなど外部への取り出し効率も向上させている事を反映して600mcdの高輝度となった。」(段落【0043】)
e 「【産業上の利用可能性】」、
「本発明の発光ダイオードは赤色、橙色、黄色或いは黄緑色等まで発光可能であり、しかも高輝度であるので各種の表示ランプとして利用できる。」(段落【0047】)
f 「【符号の説明】」、
「・・・16 第2の電極(p型オーミック)・・・・」(段落【0049】)
g 引用例1の発光部の最表層について検討する。
段落【0015】(上記c)は、【発明を実施するための最良の形態】における記載であって、(Al_(X)Ga_(1-X))_(Y)In_(1-Y)P(0≦X≦1,0<Y≦1)から成る発光層から出射される発光を外部へ透過させるのに好都合な透明な支持体層として、GaPを選択した場合、発光部の最表層をGaとPとを構成元素として含み、且つ、GaをPより多く含む半導体材料から構成すると強固な接合を形成することができ、最表層を非化学量論的な組成のGa_(X)P_(1-X)(0.5<X<0.7)から構成するのが好適であるとされている。
他方で、引用例1からは、以下の点が指摘できる。
(a)【実施例】では、発光部の最表層に相当する層はGaP層135であると認められる(上記dの段落【0034】・【0036】?【0038】)。
(b)発光部が含み、第2の電極が形成されるGaP層(上記cの段落【0030】)は、実施例ではGaP層135に相当すると認められる(上記dの段落【0039】・【0049】)。
(c)GaPからなる透明な支持体層を発光部の最表層に接合させて設ける場合、その発光部の最表層を、発光部を構成するその他のIII-V族化合物半導体層とは格子定数を異にするIII-V族化合物半導体材料から構成すると、透明な支持体層を接合させるのに際して発光部へ印加される応力を緩和する作用を発揮できるとされている(上記cの段落【0014】)。
そして、当業者であれば、この作用が、上記(a)のように、発光部の最表層に相当する層がGaP層であっても奏することが把握できると認められる。
(d)発光部の最表層を非化学量論的な組成のGa_(X)P_(1-X)(0.5<X<0.7)から構成することは好適とされているにとどまる(上記cの段落【0015】)。
以上によれば、当業者は、発光部の最表層がGaP層であっても、「燐化ガリウム(GaP)からなる透明な支持体層を発光部の最表層に接合させて設ける場合、その発光部の最表層を、発光部を構成するその他のIII-V族化合物半導体層とは格子定数を異にするIII-V族化合物半導体材料から構成すると、透明な支持体層を接合させるのに際して発光部へ印加される応力を緩和する作用を発揮できる。これにより、接合時における発光層の損傷を防止でき、例えば、所望の波長の光を出射できる化合物半導体LEDを安定して提供するのに貢献できる。発光部の最表層の層厚は、透明な支持体層の接合時に、発光部へ印加される応力を充分に緩和するために0.5μm以上とするのが好適である。一方で、その最表層の層厚を極端に厚くすると、他の発光部構成層とは格子定数を相違する関係から、最表層を設ける段階で発光層に応力が印加されてしまう。これを避けるために最表層の層厚は20μm以下とするのが好適である。」(上記cの段落【0014】)との記載事項を満足することを把握できると認められる。
(イ)上記(ア)の各記載によれば、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「組成式(Al_(X)Ga_(1-X))_(Y)In_(1-Y)P(0≦X≦1,0<Y≦1)から成る発光層を含む発光部を有し、該発光部を含む化合物半導体層を透明基板と接合された発光ダイオードにおいて、発光ダイオードの主たる光取り出し面に第1の電極と、第1の電極と極性の異なる第2の電極とを有し、第2の電極は第1の電極と対向する側に露出させた化合物半導体層上に形成され、透明基板の側面は、発光層に近い側では発光層の発光面に対して略垂直である第1の側面と、発光層に遠い側では発光面に対して傾斜している第2の側面を有する発光ダイオードであって、
発光層は、多重量子井戸構造とされ、障壁層及び井戸層を構成する(Al_(X)Ga_(1-X))_(Y)In_(1-Y)P(0≦X≦1,0<Y≦1)の組成は、所望の発光波長を帰結する量子準位が井戸層内に形成される様に決定され、
発光部は、発光層と、放射再結合をもたらすキャリア及び発光を発光層に閉じ込めるために、発光層の両側に対峙して配置したp型およびn型の各クラッド層を含む、所謂、ダブルヘテロ構造とされ、
透明基板が、n型のGaP単結晶であり、
発光部は、砒化ガリウム(GaAs)などのIII-V族化合物半導体単結晶基板上に形成され、
発光部の最表層は、GaP層であり、
燐化ガリウム(GaP)からなる透明基板を発光部の最表層に接合させて設ける場合、その発光部の最表層を、発光部を構成するその他のIII-V族化合物半導体層とは格子定数を異にするIII-V族化合物半導体材料から構成して、透明な支持体層を接合させるのに際して発光部へ印加される応力を緩和する作用を発揮できるようにし、
発光部の最表層の層厚は、透明な支持体層の接合時に、発光部へ印加される応力を充分に緩和するために0.5μm以上とされるとともに、その最表層の層厚を極端に厚くすると、他の発光部構成層とは格子定数を相違する関係から、最表層を設ける段階で発光層に応力が印加されてしまうことを避けるために最表層の層厚は20μm以下とされ、
発光部の最表層に前記透明基板を接合させ、発光部を機械的に支持できる状態とした後、その発光部を形成するために利用した砒化ガリウム(GaAs)などのIII-V族化合物半導体単結晶基板を除去し、発光の外部への取り出し効率を向上させ、従って、高輝度の化合物半導体LEDを構成でき、
赤色を発光可能である
発光ダイオード。」

イ 引用例2
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、T.M.Ritter, et al., Energy Level Alignments in Strained-Layer GaInP/AlGaInP Laser Diodes: Model Solid Theory Analysis of Pressure-Photoluminescence Experiments, physica status solidi(b), Vol.211, No 2, pp.869-883(1999年発行、以下「引用例2」という。)には、図とともに次の記載がある。
「Ga_(0.4)In_(0.6)P/(Al_(0.6)Ga_(0.4))_(0.5)In_(0.5)P QW structures are relatively high-band-gap III-V quaternary systems commonly used in 600nm band laser diodes and LEDs [13]. The two samples measured in the current work were fabricated for commercial application using OMVPE, and a schematic diagram of their multilayered structure is show in Fig.2. Both samples were grown on Si-doped GaAs substrates tilted 10°from the (001)plane in order to insure that the active Ga_(0.4)In_(0.6)P region is in the zincblende phase and does not exhibit CuPt-type ordering [14]. The active well widths are 125 and 30Å, both compressively strained by 0.8% at 10^(5) Pa and room temperature to match the GaAs substrate. This results in PL emissions at 675 and 633nm, respectively.」(873頁の「3. Experimental」欄の1?9行)
(当審による訳)
「Ga_(0.4)In_(0.6)P/(Al_(0.6)Ga_(0.4))_(0.5)In_(0.5)PのQW(当審注:量子井戸(引用例2の869頁下から6行参照。))構造は、600nm帯のレーザダイオードやLEDで一般に用いられる、比較的高いバンドギャップのIII-V族4元系である[13]。この作業で測定された2つの試料は、OMVPE(当審注:有機金属気相エピタキシャル法)を使用する商業的な応用のために製造され、それらの多層構造の概略図が図2に示されている。両方の試料は、Ga_(0.4)In_(0.6)P活性領域が閃亜鉛鉱の相にあるとともに、CuPt型配列を示さないことを確保するために、(0001)面から10°チルトされたSiドープGaAs基板上に成長された。活性井戸の幅は125Åと30Åであり、両方ともGaAs基板に整合するために、10^(5)Pa(当審注:概ね大気圧である。)かつ室温において0.8%圧縮的に歪んでいる。これは、それぞれ、675nmと633nmのPL発光を生じる。」
(イ)以上によれば、引用例2には、以下の事項が記載されていると認められる。
「Ga_(0.4)In_(0.6)P/(Al_(0.6)Ga_(0.4))_(0.5)In_(0.5)Pの量子井戸構造が、LEDで一般に用いられること、及び、この量子井戸構造をSiドープGaAs基板上に成長させ、活性井戸の幅が125Åで、GaAs基板に整合するために0.8%圧縮的に歪んだ状態において、675nmのPL発光が生じること。」

ウ 引用例3
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平11-87764号公報(以下「引用例3」という。)には、図とともに次の記載がある。
a 「【発明の属する技術分野】」、
「本発明は、半導体レーザー、半導体発光ダイオード等の半導体発光装置、特に活性層部分に圧縮歪みまたは引っ張り歪みを持つ半導体発光装置とその製造方法に関わる。」(段落【0001】)
b 「【発明が解決しようとする課題】」、
「しかしながら、上述したような、ウエル層に歪みを導入したり、バリア層にこの歪みを補償する構造は、半導体層のエピタキシャル成長に当たって、例えばその構成材料のInに対するGaの組成比を増減することで行うものであるが、実際には、エピタキシャル成長条件の微妙なずれ、すなわち成長温度、キャリア濃度のずれによって、導入する歪み量が大きく変動するものであり、半導体発光装置の特性に大きな影響を与えて安定して均一な特性を有するこの種の半導体発光装置を製造しにくいという問題がある。」(段落【0007】)、
「また、エピタキシャル成長後のこれらのウエル層や、バリア層に導入した歪み量は、その成長層厚が薄いために、評価手段によって定量的に測定することができないものであり、このために、そのまま電極形成等の次のプロセス工程に移行することになる。」(段落【0008】)、
「また、昨今、歪みが完全に結晶内で吸収されて、活性層付近の成長層にしか、その影響が波及しないということについても、反論が生じてきている。」(段落【0009】)、
「本発明においては、複雑な構造を有する歪み量子井戸半導体レーザー等の歪み半導体発光装置において、その積層半導体全体に対する歪みの影響の波及を効果的に抑制することができるようにした半導体発光装置とその製造方法を提供するものである。」(段落【0010】)
c 「【課題を解決するための手段】」、
「本発明による半導体発光装置は、化合物半導体基体上に、少なくともバッファ層と、第1導電型の第1クラッド層と、活性層と、第2導電型の第2クラッド層と、一方の電極がオーミックコンタクトされるキャップ層とを有する積層半導体層が形成され、その活性層に圧縮歪みを有し、バッファ層およびキャップ層の少なくとも一方が、引っ張り歪みを有する構成とする。」(段落【0011】)、
「上述の本発明によれば、それぞれその厚さが比較的厚いバッファ層およびキャップ層の少なくとも一方に、活性層に導入した歪みとは逆、すなわち、活性層に導入する歪みが圧縮歪みである場合は引張り歪みを生じさせるようにし、活性層に導入する歪みが引っ張り歪みである場合には圧縮歪みを生じさせるようにしたことから、必要充分に活性層における歪みを、積層半導体全体として相殺ないしは所要の補償を行って、その歪みを実質ゼロにするとか、あるいはゼロに近い所定量に設定することができる。」(段落【0015】)
d 「【発明の実施の形態】」、
「尚、上述した例では、バッファ層2およびキャップ層7の双方に、それぞれ歪み層21および22を形成した場合であるが、いずれか一方にのみ歪み層を形成することもできる。また、上述した例では、いわゆるDH型半導体レーザー構成とした場合であるが、SCH(Separate Confinement Heterostructure)構造とすることもでき、活性層4においてMQW構造としたが、これに限られるものではなく、また、各種の半導体レーザーあるいは半導体発光ダイオード等の半導体発光装置構造を採ることができる。」(段落【0035】)
e 「【発明の効果】」、
「上述したように、本発明によれば、活性層において圧縮歪みを導入する構造とする場合は、バッファ層および/またはキャップ層に引っ張り歪みを有する第1および第2の歪み層を形成するものであり、活性層において引っ張り歪みを導入する構造とする場合は、バッファ層および/またはキャップ層に圧縮歪みを有する第1および第2の歪み層を形成するものであるので、活性層における歪みを、積層半導体層全体としては、相殺ないしは所要の補償を行って、その歪みをゼロもしくはゼロに近い所要の歪み量に設定することができる。」(段落【0038】)、
「したがって、安定した特性を有する信頼性の高い半導体発光装置を、容易に製造することができる。」(段落【0039】)、
「そして、この歪みを相殺する歪み層21および22は、それぞれ比較的厚く形成されるバッファ層2およびキャップ層7において形成するので、確実に所望の歪み量を設定することができる。」(段落【0040】)
(イ)上記(ア)の各記載によれば、引用例3には、以下の事項が記載されていると認められる。
「活性層部分に圧縮歪みまたは引っ張り歪みを持つ半導体発光ダイオード等の半導体発光装置において、それぞれその厚さが比較的厚いバッファ層およびキャップ層の少なくとも一方に、活性層に導入した歪みとは逆の歪みを生じさせるようにしたことから、必要充分に活性層における歪みを、積層半導体全体として相殺ないしは所要の補償を行って、その歪みを実質ゼロにするとか、あるいはゼロに近い所定量に設定することができ、それによって、安定した特性を有する信頼性の高い半導体発光ダイオード等の半導体発光装置を得ることができること。」

(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明1とを以下に対比する。
(ア)引用発明1の「発光層と、放射再結合をもたらすキャリア及び発光を発光層に閉じ込めるために、発光層の両側に対峙して配置した、p型およびn型の各クラッド層」は、本件補正発明の「発光部」に相当する。
そして、引用発明1では、「p型およびn型の各クラッド層を含む、所謂、ダブルへテロ構造とされ」ているから、発光部が「pn接合型の」ものであることは明らかである。
(イ)引用発明1の「発光層」は、「多重量子井戸構造とされ、障壁層及び井戸層を構成する(Al_(X)Ga_(1-X))_(Y)In_(1-Y)P(0≦X≦1,0<Y≦1)の組成」とされているところ、引用発明1の「障壁層」が本件補正発明の「バリア層」に相当し、引用発明1の「井戸層」と本件補正発明の「歪発光層」とは、放射再結合をする層(以下「放射再結合層」という。)である点で一致する。
そして、引用発明1は、「多重量子井戸構造」に係るものであるから、放射再結合層「と、バリア層との積層構造を有し」、放射再結合層「とバリア層は交互に積層されて」いることが明らかである。
(ウ)引用発明1の「発光部」は、「発光層」、「クラッド層」及び「最表層」を含むものであり、「発光部の最表層を、発光部を構成するその他のIII-V族化合物半導体層とは格子定数を異にするIII-V族化合物半導体材料から構成」しているから、引用発明1の「発光部の最表層」である「GaP層」と本件補正発明の「前記歪発光層及び前記バリア層の格子定数よりも小さい格子定数を有する」「発光部に積層された歪調整層」とは、「発光部に積層された」放射再結合層及びバリア層のいずれとも格子定数が異なる層である点で一致する(以下「放射再結合層及びバリア層のいずれとも格子定数が異なる層」を「格子定数相違層」という。)。
(エ)引用発明1の「化合物半導体層」は本件補正発明の「化合物半導体層」に相当する。
(オ)上記(ア)?(エ)によれば、引用発明1は、「pn接合型の発光部と、前記発光部に積層された」格子定数相違「層とを少なくとも含む化合物半導体層を備え」ていることになる。
(カ)引用発明1の「発光部の最表層」は「GaP層」であるところ、GaPは、本件補正発明の「組成式が(Al_(X)Ga_(1-X))_(Y)In_(1-Y)P(0≦X≦1、0.6≦Y≦1)であ」るとの特定事項を備えている。
そして、引用発明1では、n型のGaP単結晶が「透明」基板であるとされているから、「発光部の最表層」である「GaP層」も、「発光波長に対して透明である」と認められる。
(キ)本件補正発明の「プラス歪」と「マイナス歪」に関し、本件補正後の明細書の段落【0054】には、「・・・図6に示すように、歪調整層8の格子定数は、基準となるGaAs基板の格子定数より小さい側にある。この状態を-(マイナス)歪とする。これに対して、発光層10における歪発光層12の格子定数は、基準となるGaAs基板の格子定数よりも大きい側にある。これを+(プラス)歪とする。・・・」との記載がある。そうすると、「プラス歪」は、基準となるGaAs基板の格子定数よりも大きいことによって生じる歪みを少なくとも含むものと解され、「マイナス歪」は、基準となるGaAs基板の格子定数よりも大きいことによって生じる歪みを少なくとも含むものと解される。
そして、引用発明1は、「発光部は、砒化ガリウム(GaAs)などのIII-V族化合物半導体単結晶基板上に形成され」るものであるから、発光部の最表層のGaP層は「マイナス歪を有し」ていると認められる。

イ 以上によれば、本件補正発明と引用発明1とは、
「pn接合型の発光部と、前記発光部に積層された格子定数相違層とを少なくとも含む化合物半導体層を備え、
前記発光部は、放射再結合層と、バリア層との積層構造を有し、放射再結合層とバリア層は交互に積層されており、
格子定数相違層は、組成式が(Al_(X)Ga_(1-X))_(Y)In_(1-Y)P(0≦X≦1、0.6≦Y≦1)であり、発光波長に対して透明であると共に前記放射再結合層及び前記バリア層のいずれとも格子定数が異なるとともに、
格子定数相違層がマイナス歪を有する
発光ダイオード。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
放射再結合層、バリア層、発光部の発光スペクトルのピーク波長及び格子定数相違層について、本件補正発明では、放射再結合層が、プラス歪を有する歪発光層であって、組成式Ga_(X)In_(1-X)P(0.37≦X≦0.46)からなり、厚さが8?30nmの範囲であって、8?40層含まれており、バリア層の組成式が(Al_(X)Ga_(1-X))_(Y)In_(1-Y)P(0.3≦X≦0.7、0.48≦Y≦0.52)であり、発光部の発光スペクトルのピーク波長が、655?675nmの範囲であり、格子定数相違層が歪調整層であり、厚さが3?15μmの範囲であって、放射再結合層である歪発光層及びバリア層の格子定数よりも小さい格子定数を有するのに対し、引用発明1では、そのような特定がない点。

(4)相違点についての判断
ア 上記[相違点]の検討
引用発明1では、発光層は、多重量子井戸構造とされ、障壁層及び井戸層を構成する(Al_(X)Ga_(1-X))_(Y)In_(1-Y)P(0≦X≦1,0<Y≦1)の組成は、所望の発光波長を帰結する量子準位が井戸層内に形成される様に決定されており、赤色を発光するものである。
しかるところ、引用例2には、Ga_(0.4)In_(0.6)P/(Al_(0.6)Ga_(0.4))_(0.5)In_(0.5)Pの量子井戸構造が、LEDで一般に用いられること、及び、この量子井戸構造をSiドープGaAs基板上に成長させ、活性井戸の幅が125Åで、GaAs基板に整合するために0.8%圧縮的に歪んだ状態において、675nmのPL発光が生じることが記載されている。ここで、上記量子井戸構造では、活性井戸(井戸層、放射再結合層)がGa_(0.4)In_(0.6)Pであって、障壁層が(Al_(0.6)Ga_(0.4))_(0.5)In_(0.5)Pであると認められ、これらの組成は、ともに、引用発明1の組成を満足する。
さらに、LEDの赤色とされる発光波長として、引用例2記載の波長を含む領域のものが求められることは本願の優先日時点で周知であり、例えば、特開平9-37648号公報の段落【0007】・【0008】ではピーク波長が600?700nmとされ、特開平9-252651号公報の段落【0008】では波長領域630nm?680nmとされ、特開平10-4216号公報の段落【0021】では発光波長が600nmから700nmであるとされている。
そうすると、引用発明1の赤色の発光波長として、上記周知技術において求められる発光波長を得るために、引用例2記載の量子井戸構造の井戸層(放射再結合層)の組成及び厚さ並びにバリア層の組成を採用して、上記[相違点]に係る特定事項のうち、「放射再結合層が、」「組成式Ga_(X)In_(1-X)P(0.37≦X≦0.46)からなり、厚さが8?30nmの範囲であって、」「バリア層の組成式が(Al_(X)Ga_(1-X))_(Y)In_(1-Y)P(0.3≦X≦0.7、0.48≦Y≦0.52)であり、」「発光部の発光スペクトルのピーク波長が、655?675nmの範囲であ」るようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。そして、その結果、引用発明1の井戸層(放射再結合層)は、その組成からみて、「歪発光層」となるとともに「プラス歪を有す」ることにもなり、また、引用発明1の格子定数相違層に相当する層はGaP層は、その組成からみて、「歪発光層及びバリア層の格子定数よりも小さい格子定数を有する」ことになり、「歪調整層」になるものと認められる。
そして、引用発明1の井戸層(放射再結合層)の層数については、引用例1の実施例では20対とされている(上記(2)ア(ア)dの段落【0034】)ことからみて、上記[相違点]に係る特定事項のうち、「歪発光層が8?40層含まれて」いるようにすることは、当業者が適宜設計し得た程度のものである。
また、引用発明1のGaP層の厚さは、0.5μm以上20μm以下であるとされているところ、引用例1の実施例では9μmとされている(上記(2)ア(ア)dの段落【0036】)ことにも照らすと、上記[相違点]に係る特定事項のうち、歪調整層の「厚さが3?15μmの範囲であ」るようにすることは、当業者が適宜設計し得た程度のものである。

イ 本件補正発明の作用効果について
(ア)「歪調整層」に関する作用効果について
a 本件補正発明では、「歪調整層」に関し、「発光部に積層され」ていること、「厚さが3?15μmの範囲であって、発光波長に対して透明であると共に前記歪発光層及び前記バリア層の格子定数よりも小さい格子定数を有」していること、「マイナス歪」を有していることが特定されているところ、その作用効果について、本件補正後の明細書には以下の記載がある。
「・・・また、本発明の発光ダイオードには、発光部上に歪調整層が設けられている。この歪調整層は、発光波長に対して透明であるため、発光部からの発光を吸収することなく高出力・高効率の発光ダイオードとすることができる。さらに、この歪調整層は、GaAs基板の格子定数よりも小さい格子定数を有しているため、この半導体化合物層の反りの発生を抑制することができる。これにより、歪発光層の歪量のばらつきが低減されるため、単色性に優れた発光ダイオードとすることができる。
したがって、本発明の発光ダイオードによれば、655nm以上の発光波長を有し、単色性に優れると共に、高出力・高効率であって応答速度が速い発光ダイオードを提供することができる。また、本発明の発光ダイオードによれば、従来のAlGaAs系の発光ダイオードと比較して、約4倍以上の発光効率を有する高出力発光ダイオードを提供することができる。」(段落【0019】)、
「歪調整層8は、図4に示すように、発光部7の下方に設けられている。この歪調整層8は、GaAs基板上に化合物半導体層2をエピタキシャル成長させる際に、歪発光層12によって生じた歪を緩和させるために設けられたものである。
また、歪調整層8は、発光部7(発光層10)からの発光波長に対して透明である。
さらに、歪調整層8は、歪発光層12及びバリア層13の格子定数よりも小さい格子定数を有している。更にまた、歪調整層8は、化合物半導体層2の形成(エピタキシャル成長による形成)に用いたGaAs基板の格子定数よりも小さい格子定数を有している。より具体的には、後述する組成から得られる歪調整層8の格子定数をA、バリア層13の格子定数をB、歪発光層12の格子定数をCとした場合に、A<B<Cとなる関係を有している。」(段落【0048】)、
「歪調整層8としては、(Al_(X)Ga_(1-X))_(Y)In_(1-Y)P(0≦X≦1、0.6≦Y≦1)の組成を有する材料を適用することができる。上記Xは、化合物半導体層2の素子構造にもよるが、Al濃度が低い材料が化学的に安定であることから、0.5以下であることが好ましく、0であることがより好ましい。また、上記Yの下限値は、0.6以上であることが好ましい。ここで、発光層10(歪発光層12)の有する歪量が同じ場合を比較すると、上記Yの値が小さいほうが歪調整層8の歪調整効果が小さくなる。このため、歪調整層8の層厚を厚くする必要が生じ、歪調整層8の成膜時の成長時間とコストが上昇してしまうため、上記Yの値は0.6以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。」(段落【0049】)、
「また、歪調整層8としては、発光波長に対して透明であり、Al_(X)Ga_(1-X)As_(1-Y)PY(0≦X≦1、0.6≦Y≦1)の組成を有するIII-V属半導体材料も好適に用いることができる。上記組成を有する歪調整層8では、Yの値によって格子定数が変化する。上記Yの値が大きい方が、格子定数が小さくなる。また、発光波長に対する透明度は、上記X及びYの値の双方に関連する為、透明な材料となるようにX及びYの値を選択すれば良い。」(段落【0050】)、
「さらに、歪調整層8として、GaP、好ましくは、例えばMgドープしたp型のGaPを用いることが好ましい。このGaPは、組成の調整が不要であると共に歪調整効果が大きいため、生産性及び安定性の面からも歪調整層8の材料として最も適している。」(段落【0051】)、
「歪調整層8は、化合物半導体層2をエピタキシャル成長させる際に用いた基板であるGaAs基板の格子定数よりも小さい格子定数を有しているため、歪発光層12が包含する歪量のばらつきを緩和する機能を備えている。このため、歪調整層8を設けることにより、発光波長などの特性の均一化、クラック発生等の結晶欠陥の発生防止の効果がある。ここで、歪調整層8の層厚は、0.5?20μmの範囲であることが好ましく、3?15μmの範囲であることがより好ましい。層厚が0.5μm未満であると、歪発光層12の歪量のばらつきを緩和するのに十分ではなく、層厚が20μmを超えると成長時間が長くなり、製造コストが増加するために好ましくない。」(段落【0052】)、
「このように、歪調整層8の組成を制御することにより、化合物半導体層2の反りを低減することができるため、面内波長分布の小さい発光ダイオード1の作製が可能である。さらに、本実施形態のように、機能性基板3と化合物半導体層2との接合を行なう構造を有する場合にも、化合物半導体層2の反りが大きい場合は割れなどの問題が生じるため、化合物半導体層2の反りを小さくすることが望ましい。」(段落【0053】)、
「次に、歪調整層8が、化合物半導体層2の歪を緩和するメカニズム(歪調整層8と、化合物半導体層2との格子定数の関係)について、図6を参照しながら説明する。
図6に示すように、歪調整層8の格子定数は、基準となるGaAs基板の格子定数より小さい側にある。この状態を-(マイナス)歪とする。これに対して、発光層10における歪発光層12の格子定数は、基準となるGaAs基板の格子定数よりも大きい側にある。これを+(プラス)歪とする。本発明は、歪調整層8に起因する-歪の存在が、長波長化するために歪発光層12に導入が必要な+歪のバラツキを小さくする効果があることを見出した。上述したように、歪発光層12の発光波長は、歪発光層12の層厚、組成及び歪量によって決定される。このように、歪発光層12の発光波長に影響を与える要素が多いため、各要素のばらつきの相乗効果によって波長のバラツキが大きくなりやすい傾向がある。」(段落【0054】)、
「例えば、歪発光層12の層厚は30nm以下の薄膜が望ましいが、薄い膜であるために層厚を均一に制御することは困難である。そして、層厚と導入される歪量とには相関があるため、歪発光層12の層厚がばらつくことによって導入される歪量もばらつき、結果として歪発光層12の発光波長がばらつくこととなる。そこで、化合物半導体層2を形成する際に、+歪を有する歪発光層12を含む発光部7の上方(図4では、発光部7の下方となる)に歪調整層8を設けることにより、この歪調整層8の有する-歪が、歪発光層12の層厚のばらつきによって+側に大きくずれた歪を-側に引き寄せて、歪発光層12の歪量のばらつきを小さくする作用があることを見出した。この歪調整層8の効果は、歪発光層12の歪量のばらつきの原因が歪発光層12の組成のばらつきの場合であっても同様である。」(段落【0055】)、
「ところで、歪調整層8のない従来の発光ダイオードでは、発光波長等の特性のばらつきが大きいため、要求された品質を満足することができなかった。これに対し、本実施形態の発光ダイオード1では、発光部7の下方に歪調整層8を設けた素子構造としている。これにより、長波長化を行うために必要な歪発光層12の歪量が発光層10内において均一化されて、発光波長及び出力の特性のばらつきが小さくなる。また、化合物半導体層2の表面状態も改善される。」(段落【0056】)、
「また、発光ダイオードランプ41の発光スペクトルは、発光層10の組成が調整されているため、ピーク発光波長が655?675nmの範囲となる。また、歪調整層8によって歪発光層12の発光層10内のばらつきが抑制されているため、発光スペクトルの半値幅が、10?40nmの範囲となる。また、発光波長700nmにおける発光強度が、ピーク発光波長における発光強度の10%未満となる。したがって、発光ダイオード1を用いて作製した発光ダイオードランプ41は、植物育成の光合成の促進に使用する照明として好適に用いることができる。」(段落【0092】)、
「以上説明したように、本実施形態の発光ダイオード1によれば、組成式(Al_(X)Ga_(1-X))_(Y)In_(1-Y)P(0≦X≦0.1、0.37≦Y≦0.46)からなる歪発光層12を有する発光部7を含む化合物半導体層2を備えている。歪発光層12の材質にAlGaInPを採用することにより、発光部7からの発光効率及び応答速度を向上することができる。また、歪発光層12の組成を上記範囲に規定することにより、655nm以上の発光波長を有する発光ダイオード1とすることができる。」(段落【0093】)、
「また、本実施形態の発光ダイオード1には、発光部7上に歪調整層8が設けられている。この歪調整層8は、発光波長に対して透明であるため、発光部7からの発光を吸収することなく高出力・高効率の発光ダイオード1とすることができる。さらに、この歪調整層8は、GaAs基板14の格子定数よりも小さい格子定数を有しているため、この半導体化合物層2の反りの発生を抑制することができる。これにより、歪発光層12の歪量の発光層10内でのばらつきが低減されるため、単色性に優れた発光ダイオード1とすることができる。」(段落【0094】)
b 上記aの各記載を踏まえて、本件補正発明をみると、本件補正発明の「歪調整層」について以下のことが指摘できる。
(a)「厚さが3?15μmの範囲」であることについては、層厚が0.5μm未満であると、歪発光層12の歪量のばらつきを緩和するのに十分ではなく、層厚が20μmを超えると成長時間が長くなり、製造コストが増加するために好ましくないとされている(段落【0052】など)。
(b)「発光波長に対して透明」であることについては、発光部からの発光を吸収することなく高出力・高効率の発光ダイオードとすることができるとされている(段落【0019】など)。
(c)「前記歪発光層及び前記バリア層の格子定数よりも小さい格子定数を有する」ことについては、歪調整層8が、化合物半導体層2をエピタキシャル成長させる際に用いた基板であるGaAs基板の格子定数よりも小さい格子定数を有しているという意味では(段落【0048】)、半導体化合物層の反りの発生を抑制し、歪発光層12が包含する歪量のばらつきを緩和する機能を備えることにより、発光波長などの特性の均一化、クラック発生等の結晶欠陥の発生防止の効果があるとされている(段落【0019】・【0052】など)。
(d)「前記歪発光層がプラス歪を有し、前記歪調整層がマイナス歪を有し」ていることについては、歪調整層8に起因する-歪の存在が、長波長化するために歪発光層12に導入が必要な+歪のバラツキを小さくする効果があるとされている(段落【0054】など)。
c 上記作用効果の顕著性について検討する。
引用発明1の発光部は、砒化ガリウム(GaAs)などのIII-V族化合物半導体単結晶基板上に形成されたものであり、その最表層のGaP層は、発光部を構成するその他のIII-V族化合物半導体層とは格子定数を異にするものとされているから、当業者は、引用発明1のGaP層を格子定数という観点から評価できるものと認められる。そして、歪が生じるかどうかに関し格子定数が依存することは技術常識である。
他方、引用例2には、活性井戸であるGa_(0.4)In_(0.6)Pが、GaAs基板上に成長されたものであり、GaAs基板に整合するために、0.8%圧縮的に歪んでいることが記載されている。
そして、引用例3のとおり、活性層部分に圧縮歪みまたは引っ張り歪みを持つ半導体発光ダイオード等の半導体発光装置において、それぞれその厚さが比較的厚いバッファ層およびキャップ層の少なくとも一方に、活性層に導入した歪みとは逆の歪みを生じさせるようにしたことから、必要充分に活性層における歪みを、積層半導体全体として相殺ないしは所要の補償を行って、その歪みを実質ゼロにするとか、あるいはゼロに近い所定量に設定することができ、それによって、安定した特性を有する信頼性の高い半導体発光ダイオード等の半導体発光装置を得ることができることは知られている。
そうすると、当業者であれば、上記アのとおり、引用発明1に引用例2記載の量子井戸構造の放射再結合層の組成及び厚さ並びにバリア層の組成を採用した場合において、引用例3に照らせば、引用発明1のGaP層が、放射再結合であるGa_(0.4)In_(0.6)Pに対して一定の歪補償作用をもたらすことにより、一定程度安定した特性を有する発光ダイオードを得ることを予想できたものと認められる。
以上の点に加え、引用例1及び引用例2の記載に照らせば、本件補正発明所定の「歪調整層」を設けたことによる作用効果を、格別顕著なものであると認めることはできない。
(イ)その他の作用効果について
引用例1、2に記載された事項及び上記周知技術に照らして格別のものとはいえない。

ウ 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明1、引用例1?3に記載された事項及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成26年4月18日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成25年11月14日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1?3及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「歪調整層」の組成式並びに「歪発光層」及び「歪調整層」の歪の符号に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)・(4)に記載したとおり、引用発明1、引用例1?3に記載された事項及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1、引用例1?3に記載された事項及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-28 
結審通知日 2015-02-03 
審決日 2015-02-16 
出願番号 特願2009-89300(P2009-89300)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 572- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 道祖土 新吾北島 拓馬  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 山村 浩
近藤 幸浩
発明の名称 発光ダイオード、発光ダイオードランプ及び照明装置  
代理人 三國 修  
代理人 志賀 正武  
代理人 荒 則彦  
代理人 鈴木 三義  

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