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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24F
管理番号 1299280
審判番号 不服2013-10570  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-05 
確定日 2015-04-01 
事件の表示 特願2007-312728「空気調和機システムおよびそのプログラム更新方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月21日出願公開、特開2008-190853〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年12月3日(パリ条約による優先権主張 2007年2月2日(KR)大韓民国)の出願であって、平成25年1月31日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月5日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において平成26年5月21日付けで拒絶理由が通知され、同年8月27日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 当審で通知した拒絶理由の概要
当審において平成26年5月21日付けで通知した拒絶理由は、少なくとも特許法第36条第6項第2号及び第29条第2項を根拠とするものであり、その概要は、以下のとおりである。

(特許法第36条第6項第2号)
請求項1及び請求項6に「外部ホスト装置から更新プログラムを受信するための通信時間を割り当て、前記割り当てられた通信時間に前記外部ホスト装置が前記保存部にアクセスするための権限を付与」との記載があるが、通信時間を割り当てることや、アクセスするための権限を付与することの具体的な処理内容が、発明の詳細な説明の記載を参酌しても不明である。
「通信時間を割り当て」とは、時間を限って通信を許容することを意味するのか、時間を限らなくとも、更新プログラムを受信していれば、通信時間を割り当てたことになるのかが不明である。
また、「外部ホスト装置が前記保存部にアクセスするための権限を付与し」は、文言上は、外部ホスト装置が保存部に対してデータを読み書きすることを許可するとの意味に解し得るが、請求項1において、保存部の制御プログラムの更新は「制御部」が実行するのであって、外部ホスト装置が実行するわけではないから、結局のところ、外部ホスト装置は保存部に対して何の処理も実行しておらず、上記権限を付与することの技術的意義は不明である。

(特許法第29条第2項)
本願の請求項1ないし9に係る発明は、下記の刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開平9-79654号公報
引用文献2.特開平10-63497号公報
引用文献3.特開平7-219974号公報
引用文献4.特開平8-76947号公報
引用文献5.特開2002-304321号公報
引用文献6.特開2002-22248号公報
引用文献7.特開2001-256057号公報
引用文献8.特開2004-38717号公報
引用文献9.特開平11-101634号公報
引用文献10.特開2003-322381号公報

第3 判断
1.特許法第36条第6項第2号について
(1)平成26年8月27日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
空気調和機システムにおいて、
室外機と、
前記室外機に連結される少なくとも一つの室内機と、
前記室外機および前記室内機のうちの少なくともいずれか一つを制御するための制御プログラムが蓄えられるROMおよび受信した更新用プログラムが蓄えられるRAMを備える保存部と、
外部ホスト装置との通信を遂行する通信部と、
前記制御プログラムの動作中に前記外部ホスト装置から前記制御プログラムの更新に関する要請がある場合、前記更新に必要な更新用プログラムを前記通信部を介して受信して前記制御プログラムの更新を遂行する制御部とを含み、
前記制御部は、前記更新に関する要請がある場合、前記外部ホスト装置から更新用プログラムを受信するための通信時間を割り当て、前記割り当てられた通信時間に前記外部ホスト装置が前記保存部にアクセスするための権限を付与し、権限を付与された前記外部ホスト装置により、前記通信部を介して前記更新のための更新用プログラムが送信されて前記RAMに蓄えられ、
前記制御部は、蓄えられた前記更新用プログラムを実行することにより、前記ROMに蓄えられた制御プログラムを削除し、権限を付与された前記外部ホスト装置により、更新された制御プログラムが送信されて前記ROMに蓄えられることを特徴とする空気調和機システム。」

(2)上記記載において「前記制御部は・・・外部ホスト装置から更新用プログラムを受信するための通信時間を割り当て、前記割り当てられた通信時間に前記外部ホスト装置が前記保存部にアクセスするための権限を付与し」と、制御部が実行する処理が記載されている。
しかし、当該処理の具体的な内容について、請求項1の記載全体として整合するように理解できず、「制御部」がどのような処理を実行するのかが明確でないから、請求項1に係る発明は明確でない。
以下、詳述する。

(3)上記「前記制御部は・・・前記外部ホスト装置が前記保存部にアクセスするための権限を付与し」は、文言どおりに解釈すれば、外部ホスト装置が保存部に対して読み込みないし書き込みすることを制御部が許可するとの意味である。

(4)上記(3)の解釈を前提とし、請求項1の「権限を付与された前記外部ホスト装置により、前記通信部を介して前記更新のための更新用プログラムが送信されて前記RAMに蓄えられ」、「権限を付与された前記外部ホスト装置により、更新された制御プログラムが送信されて前記ROMに蓄えられる」との記載に着目すれば、権限を付与された外部ホスト装置、すなわち、保存部に対する書き込みを許可された外部ホスト装置が、更新用プログラムを保存部のRAMに書き込み、また、更新された制御プログラムを保存部のROMに書き込むものと解される。
換言すれば、更新用プログラム及び更新された制御プログラムを保存部(ROM及びRAM)に書き込む主体は「外部ホスト装置」であると解される。
しかし、そうであるとすれば、外部ホスト装置は、「更新用プログラムを受信するための通信時間」に保存部への書き込みが許可されるにも関わらず、上記「通信時間」外にも保存部に対する書き込みを行うこととなるため、矛盾が生じる。すなわち、「蓄えられた前記更新用プログラムを実行することにより・・・権限を付与された前記外部ホスト装置により、更新された制御プログラムが送信されて前記ROMに蓄えられる」との記載において、更新用プログラムを実行する以上、当然、更新用プログラムの受信は完了しているから、上記「通信時間」外に、外部ホスト装置は保存部(ROM)に対して更新された制御プログラムの書き込みを行うこととなる。
よって、上記(3)の解釈は妥当でない。

(5)一方、請求項1には、「前記更新に必要な更新用プログラムを前記通信部を介して受信して前記制御プログラムの更新を遂行する制御部」という、制御プログラムの更新を遂行する主体が「制御部」である旨の記載が認められる。
また、請求項1の「前記制御部は ・・・ 権限を付与された前記外部ホスト装置により、前記通信部を介して前記更新のための更新用プログラムが送信されて前記RAMに蓄えられ」との記載、及び、「前記制御部は、蓄えられた前記更新用プログラムを実行することにより、前記ROMに蓄えられた制御プログラムを削除し、権限を付与された前記外部ホスト装置により、更新された制御プログラムが送信されて前記ROMに蓄えられる」との記載は、いずれも、主語が「制御部」であるから、外部ホスト装置より送信される更新用プログラム及び更新された制御プログラムを保存部(ROM及びRAM)に書き込む主体が「制御部」であるとの趣旨に解される。
そして、保存部に対して書き込みする主体が「制御部」であるならば、外部ホスト装置が保存部に対して読み込みないし書き込みすることを制御部が許可する必要はなく、当該許可をすることに技術的な意義はない。
よって、上記(3)の解釈は、技術的意義のないものに解釈することとなるから、この点からも妥当な解釈とはいえない。

(6)そして、「前記制御部は・・・前記外部ホスト装置が前記保存部にアクセスするための権限を付与し」について、上記(3)の解釈とは異なる解釈が発明の詳細な説明に記載されているわけでもなく、請求項1の記載全体として整合するような合理的な解釈を想定できない。
よって、「制御部」がどのような処理を実行するのかが明確でないから、請求項1に係る発明は明確でない。
よって、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2.特許法第29条第2項について
(1)請求項1に係る発明
上記1.のとおり、請求項1に係る発明は明確でないので、発明の詳細な説明の記載を参照する。
まず、更新用プログラム及び更新された制御プログラムを保存部に書き込む主体が「外部ホスト装置」と「制御部」のいずれであると解すべきかを検討すると、更新用プログラム及び更新された制御プログラムを保存部に書き込む処理に関し、以下の記載がある。(下線は当審による。)
「【0020】
図3a乃至図3cに示されているように、本発明による保存部40は、制御プログラムが使用するRAM領域と、制御プログラムが蓄えられるROM領域とを含む。
制御部60は、図3aに示されているように、通信部50を介して外部ホスト装置200から制御プログラムを更新するための更新用プログラムを受信し、受信された更新用プログラムをRAM領域に蓄えて更新用プログラムを実行する。
【0021】
その次に、制御部60は、図3bに示されているように、受信された更新用プログラムによって保存部40のROM領域に蓄えられている制御プログラムを削除する。そして、制御部60は、保存部40に蓄えられていた制御プログラムが削除されると、図3cに示されているように通信部50を介して外部ホスト装置200から更新された制御プログラムを受信して保存部40のROM領域に蓄える。」
上記記載によれば、更新用プログラム及び更新された制御プログラムを保存部に書き込む主体が「制御部60」であることが明らかである。
他方、更新用プログラム及び更新された制御プログラムを保存部に書き込む主体が「外部ホスト装置」であることを示す記載はない。
よって、発明の詳細な説明を参酌すれば、更新用プログラム及び更新された制御プログラムを保存部に書き込む主体は「制御部」であると解すべきである。
なお、このように解すると、「外部ホスト装置」は、保存部に対して何ら読み込みないし書き込みをしないこととなるが、「前記制御部は・・・前記外部ホスト装置が前記保存部にアクセスするための権限を付与し」については、発明の詳細な説明に解釈が示されていないのであるから、前記1.(3)に示したように文言どおり解釈するほかない。
以上をふまえ、請求項1に係る発明について、更新用プログラム及び更新された制御プログラムを保存部に書き込む主体が「制御部」であると解釈し、「前記制御部は・・・前記外部ホスト装置が前記保存部にアクセスするための権限を付与し」は、技術的意義がないものの、文言どおり、外部ホスト装置が保存部に対して読み込みないし書き込みすることを制御部が許可するとの意味に解釈する。以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。

(2)引用文献
ア.当審の拒絶の理由に引用された特開平9-79654号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(「・・・」は記載の省略を意味し、下線は当審による。以下同じ。)

「【請求項1】複数台の室内機、圧縮機を備えた室外機より構成されるマルチエアコンシステムにおいて、
ローカルエリアネットワーク(LAN)と、
前記LANに接続された前記複数台の室内機と、
前記LANに接続された前記室外機とを備え、前記室内機の各々へ分配する冷媒流量の制御と前記圧縮機の容量を制御する集中制御装置とを備えたことを特徴としたLAN接続空気調和機システム。」

「【0024】さらに、マルチエアコンシステムの構成機器に必要な制御プログラムをLAN及び伝送手段を介してローダから記憶装置へローディングするので、各構成機器に必要な制御プログラムを仕様の変更などに応じて変更することが容易となる。」

「【0050】さらに、他の実施例を図3及び図4、そして図6ないし図12を参照して説明する。◆図3は、マルチエアコンシステムの構成機器の一つである室内機3Aの構成を示すブロック図である。図4は、同様に室外機4Aの構成を示すブロック図である。・・・
【0051】空気調和機システムのLANへの構成機器の接続は、既に述べた図1、あるいは図2の構成と同様である。・・・
【0052】室内機3Aには、室内機の基本的な部分で比較的に高速を要する、図示はしていないが例えば、室内温度の検出、ファンモータの駆動などを主に行う制御部3-3と、記憶装置3-2と、LAN1を介して他の構成機器と通信を行う伝送手段3-1を備えている。・・・
【0053】室外機4Aも同様に比較的に高速あるいは常時監視を要する、図示はしていないが例えば、吐出及び吸入圧力の検出、圧縮機の駆動などを主に行う制御部4-3と、記憶装置4-2と、LAN1を介して他の構成機器と通信を行う伝送手段4-1を備えている。
【0054】他の室内機、室外機も同様の構成であり、集中制御装置5も同様に記憶装置、伝送手段を有し、さらに制御プログラムをLAN5上に送信するローダを備えている。」(審決注:「LAN5」は「LAN1」の誤記と認める。)

「【0056】送信されるメッセージフォーマットは図8に示すようにヘッダ部を有しており、ヘッダ部の情報を指定する事により室内機、室外機毎の制御プログラムをLAN1上に送信でき、製造番号を指定すれば特定の室内機、室外機だけの制御プログラムを送信する事もできる。◆それぞれの室内機3A、3B、室外機AなどはLAN1上のメッセージを伝送手段3-1、4-1を介して受信し、制御部3-3、4-3で自己向けのメッセージを判別して自己向けのメッセージのみを記憶装置、4-2に読み込む。
【0057】その一例を示すと集中制御装置5あるいはそのローダは室内制御プログラムが搭載された図9のメッセージを送信する。室内機3A、3Bは図9のメッセージを伝送手段3-1を介して受信し、制御部3-3でヘッダ部の識別番号=1を認識し、自己向けのメッセージと判別する。そして、室内制御プログラムを記憶装置3-2にローディングする。
【0058】一方室外機4Aは同様に、図9のメッセージを伝送手段4-1を介して受信し、制御部4-3でヘッダ部の識別コード=1を認識し、自己向けのメッセージではないと判別し、このメッセージを捨てる。
【0059】以上のように、室内制御プログラムは室内機3A、3Bなどに同時にローディングできることとなる。」(審決注:【0056】の「記憶装置、4-2」は「記憶装置3-2、4-2」の誤記と認める。)

「【0064】以上のように各構成機器に必要な制御プログラムをシステム仕様の変更に応じて変更することが簡単に、確実に行える。」

以上の記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「複数台の室内機、圧縮機を備えた室外機より構成されるマルチエアコンシステムにおいて、
室内機(3A)には、室内機の基本的な部分で比較的に高速を要する、例えば、室内温度の検出、ファンモータの駆動などを主に行う制御部(3-3)と、記憶装置(3-2)と、LAN(1)を介して他の構成機器と通信を行う伝送手段(3-1)を備え、
室外機(4A)も同様に比較的に高速あるいは常時監視を要する、例えば、吐出及び吸入圧力の検出、圧縮機の駆動などを主に行う制御部(4-3)と、記憶装置(4-2)と、LAN(1)を介して他の構成機器と通信を行う伝送手段(4-1)を備え、
集中制御装置(5)も同様に記憶装置、伝送手段を有し、さらに制御プログラムをLAN(1)上に送信するローダを備え、
前記集中制御装置(5)またはローダは、前記制御プログラムが搭載されたメッセージをLAN(1)上に送信し、前記室内機(3A、3B)、室外機(4A)はLAN(1)上のメッセージを伝送手段(3-1、4-1)を介して受信し、制御部(3-3、4-3)で自己向けのメッセージを判別して自己向けのメッセージのみを記憶装置(3-2、4-2)に読み込むことにより、マルチエアコンシステムの構成機器に必要な制御プログラムをシステム仕様の変更に応じて変更する空気調和機システム。」

イ.当審の拒絶の理由に引用された特開平10-63497号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】 実行中のプログラムを更新するとき、当該プログラムが格納されたメモリ領域とは異なるメモリ領域に更新後の前記プログラムを格納し・・・したことを特徴とするプログラム更新方法。」

「【0037】さらに、上記実施の形態においては、システムプログラムを格納する不揮発性メモリとして、フラッシュメモリを適用した場合について説明したが、これに限らず、例えばEEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)を適用することも可能であり、ソフトウェアでそのメモリ内容を書き換えることの可能な不揮発性メモリであれば、適用することができる。」

ウ.当審の拒絶の理由に引用された特開平7-219974号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明はかかる問題点に鑑みなされたものであり、携帯型電子機器内に納められたプログラムの更新を、その装置内のプログラムが実行中にも何ら支障を来すことなく、通常の操作者でも簡単にそのプログラムの一部或は全部を更新することを可能にする携帯型電子機器を提供しようとするものである。」

エ.当審の拒絶の理由に引用された特開平8-76947号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0077】次に、複写機本体301が更新プログラムを外部管理装置2203から受け取る処理動作について説明する。図22は、複写機本体301が更新プログラムを外部管理装置2203から受け取る処理のフローチャートである。図22にて、複写機本体301は、更新プログラムの受け取りが必要になると、通信コントロール装置2201へ更新プログラム送信要求を送信する(S1)。・・・(S2)において通信コントロール装置2201へ正常にデータが送信されたと判断された場合は(S2でY)、タイムアウト判定用のタイマをスタートして(S3)、通信コントロール装置2201からの通信結果報告を待つ(S4?S5)。・・・
【0078】タイムアウト時間内に送信結果報告を受信した場合は(S4でY,S5でN)、報告内容を判断し(S7)、失敗の場合(S7でN)は操作部2006上にその旨の表示を行い(S6)、成功した場合には(S7でY)、新たにタイムアウト判定用タイマをスタートして(S8)、更新プログラムが送られてくるのを待つ(S9?S10)。この例ではタイムアウト時間を20分間としており(S10)、20分以内に更新プログラムを受信しなかった場合(S10でY)をタイムアウトとして、通信失敗の旨を操作部ユニット2006上に表示してサービスマンに知らせる(S6)。タイムアウト時間内に更新プログラムを受信した場合は(S9でY,S10でN)、受信内容を判断し(S11)、更新プログラムが要求通りのものであることが確認できると(S11でY)、プログラムの更新処理(不揮発RAM2019へのプログラム記憶等)を行い(S12)、更新が成功した旨を操作部ユニット2006上に表示する(S13)。」

「【0085】図27は・・・3404はソータ制御プログラムおよび本ソータを制御するための複写機本体側プログラム(更新プログラム)を格納するためのROM・・・である。」

オ.当審の拒絶の理由に引用された特開2002-304321号公報(以下「引用文献5」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0058】図10は、本発明の第3の実施例による動作シーケンスの説明図である。・・・
【0059】たとえば、端末装置2が、毎日3分間(180秒間)だけ通信を許容できる場合、端末装置2は、内蔵タイマを用いてサーバ装置1への発呼開始からの経過時間が測定できるので、この経過時間を3分間(180秒間)という値から減算することにより、残りの通信許容時間をサーバ装置1へ通知することができる。
【0060】サーバ装置1は、通知された通信許容時間から、処理に要するロスタイムを減算して、「ダウンロード可能な時間」を算出し、現在のビットレートと「ダウンロード可能な時間」とを乗じてダウンロードできるコンテンツの最大容量サイズ、すなわち、ダウンロード可能なコンテンツの容量を計算する。・・・
【0063】もし、ダウンロードの途中で、たとえば、通信に支障が生じた場合、或いは、端末装置2のメモリ5の容量不足により、所定の時間内に予定されていた全てのデータがダウンロードできなかった場合、端末装置2は、内蔵タイマからの指示によって通信を切断するよう構成してもよい。この場合、端末装置2では、所定時間内にダウンロードできたコンテンツのみが有効なデータとして扱われる。」

カ.当審の拒絶の理由に引用された特開2002-22248号公報(以下「引用文献6」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0018】この請求項5に記載の発明によれば、更新プログラムを(空調機に接続された)コンピュータに実行させることで、空調機の制御プログラムを改訂情報に基づいて更新する。」

「【0063】サーバ装置400は、ステップS103において作成した新たな制御プログラム(最適化された制御プログラム)を、情報処理装置300へと送信する(ステップS104)。このとき、サーバ装置400からは更新プログラムも併せて送信する。
【0064】サーバ装置400から送信されてきた制御プログラム等を受信した情報処理装置300は、空調機110の制御プログラムを更新する(ステップS105)。この更新処理は、サーバ装置400から送られてきた更新プログラムを、使用者からの指示にしたがって(あるいは、自動的に)制御回路316が実行することでおこなわれる。具体的には以下の通りである。
【0065】すなわち、制御回路316は、書き換え指示を通信回路313によって空調機110へ送信する。この指示を受けた空調機110の制御回路125は、フラッシュメモリ126の内容を書き換えるべく、書き換えモードへと移行する。空調機110が書き換えモードへ移行した後、制御回路316が、新たな制御プログラムを空調機110へと送信する。すると、制御回路125は、フラッシュメモリ126に格納されている既存の制御プログラムを、この新たな制御プログラムに書き換える。なお、この書き換えモードでは、制御回路125はROM127に格納されているプログラムに基づいて動作している。」

キ.当審の拒絶の理由に引用された特開2001-256057号公報(以下「引用文献7」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【請求項1】 記憶手段に記憶した制御プログラムを実行することによりサービス提供を行うサービス装置において、前記制御プログラムをアップデートするための方法であって、
・・・
検出したアップデートプログラムを実行することにより、前記アップデート用データから抽出した制御プログラムを前記記憶手段に書き込むアップデート実行手段と、
を設け、
・・・アップデートを行うアップデート方法。」

「【0003】ところが近年、フラッシュメモリなどの書換可能なROMが普及しており、サービス装置においても、制御プログラムを書換可能なROMに内蔵することが多くなっている。」

「【0039】この判別の結果(S212)、記憶装置24に自装置に適合するアップデートプログラム152があることが分かれば、アップデートプログラム切換実行機能110が、プログラム実行の流れをその検出したアップデートプログラム152に切り換える(S214)。すなわち、切換実行機能110は、検出した自装置用のアップデートプログラム152をRAM16にコピーし、実行中のダウンロード用プログラムのプログラムカウンタを、RAM16にコピーしたアップデートプログラムのアドレスに変更することにより、RAM16上のアップデートプログラムに制御を移す。・・・そして、このRAM16上のアップデートプログラムの実行を開始する(S216)。以降はこのプログラムに従ってフラッシュメモリ12上の制御プログラムの書換が行われる。」

ク.当審の拒絶の理由に引用された特開2004-38717号公報(以下「引用文献8」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
制御装置のプログラムを書き換え更新するプログラム制御方法において、制御装置に更新用プログラムデータと更新プログラムデータを制御装置のプログラムとして書き換える更新用プログラムを制御装置に送信することにより自動的に制御装置のプログラムを更新することを特徴とするプログラム制御方法。」

「【0006】
・・・プログラムデータが正しいものである場合には、プログラムデータに含まれている更新用プログラムを起動する。この更新用プログラムの起動により、制御装置のプログラム書き換え更新処理が自動的に行われる。」

ケ.当審の拒絶の理由に引用された特開平11-101634号公報(以下「引用文献9」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0017】次に、フラッシュROM16Cに格納された制御プログラムを更新する手順を説明する。・・・
【0018】・・・PCカード29が装填されたら、操作スイッチ30の内の更新スイッチを押して、PCカード29に書き込まれた更新用プログラムを起動する(ステップ220)。更新用プログラムが起動されたら、CPU16Aは更新用プログラムに基づいてフラッシュROM16Cに記録された旧制御プログラムを消去する(ステップ230)。
【0019】旧制御プログラムを消去したら、CPU16Aは更新用プログラムに基づいて、PCカード29に書き込まれた新制御プログラムを読み取りフラッシュROM16Cに書き込む(ステップ240)。これで制御プログラムの更新が終了する。」

(3)対比
引用発明の「マルチエアコンシステム」は、本願発明の「空気調和機システム」に相当する。
引用発明の「複数台の室内機」は、室外機に連結されることは自明であるから、本願発明の「室外機に連結される少なくとも一つの室内機」に相当する。
引用発明において、室内機(3A)が備える制御部(3-3)は、室内機の基本的な部分で比較的に高速を要する、例えば、室内温度の検出、ファンモータの駆動などを主に行い、室外機(4A)が備える制御部(4-3)も同様に比較的に高速あるいは常時監視を要する、例えば、吐出及び吸入圧力の検出、圧縮機の駆動などを主に行うものであって、上記制御部(3-3)及び制御部(4-3)が「制御プログラム」に従って上記制御を行うことは明らかであるから、引用発明の「制御プログラム」は、本願発明の「前記室外機および前記室内機のうちの少なくともいずれか一つを制御するための制御プログラム」に相当する。
そして、引用発明は、制御プログラムをシステム仕様の変更に応じて変更するにあたり、制御プログラムが搭載されたメッセージを「記憶装置(3-2、4-2)」に読み込むから、引用発明の「記憶装置(3-2、4-2)」は、本願発明の「前記室外機および前記室内機のうちの少なくともいずれか一つを制御するための制御プログラムが蓄えられる保存部」に相当する。
引用発明において、「伝送手段(3-1)」及び「伝送手段(4-1)」は、LAN(1)を介して他の構成機器と通信を行うものであること、「集中制御装置(5)またはローダ」が制御プログラムが搭載されたメッセージをLAN(1)上に送信し、該メッセージを「伝送手段(3-1、4-1)」を介して受信すること、に照らせば、引用発明の「集中制御装置(5)またはローダ」は、本願発明の「外部ホスト装置」に相当し、引用発明の「伝送手段(3-1)」及び「伝送手段(4-1)」は、本願発明の「外部ホスト装置との通信を遂行する通信部」に相当する。
引用発明の「前記集中制御装置(5)またはローダは、前記制御プログラムが搭載されたメッセージをLAN(1)上に送信し」は、該メッセージを送信することにより制御プログラムをシステム仕様の変更に応じて変更しようとするものであるから、本願発明の「外部ホスト装置から前記制御プログラムの更新に関する要請がある場合」に相当する。
引用発明は、「LAN(1)上のメッセージ(制御プログラムが搭載されたメッセージ)を伝送手段(3-1、4-1)を介して受信し、制御部(3-3、4-3)で自己向けのメッセージを判別して自己向けのメッセージのみを記憶装置(3-2、4-2)に読み込むことにより、マルチエアコンシステムの構成機器に必要な制御プログラムをシステム仕様の変更に応じて変更する」ものであるから、引用発明の「制御部(3-3、4-3)」は、制御プログラムの更新を遂行するものといえ、本願発明の「前記制御プログラムの更新を遂行する制御部」に相当する。
更に、本願発明の「前記更新に関する要請がある場合」の動作に関し、上記(1)に示した、本願発明の、更新用プログラム及び更新された制御プログラムを保存部に書き込む主体が「制御部」であるとの解釈をふまえると、引用発明の「LAN(1)上のメッセージ(制御プログラムが搭載されたメッセージ)を伝送手段(3-1、4-1)を介して受信し、制御部(3-3、4-3)で自己向けのメッセージを判別して自己向けのメッセージのみを記憶装置(3-2、4-2)に読み込む」と本願発明の「前記制御部は、蓄えられた前記更新用プログラムを実行することにより、前記ROMに蓄えられた制御プログラムを削除し、権限を付与された前記外部ホスト装置により、更新された制御プログラムが送信されて前記ROMに蓄えられる」とは、「前記制御部は、前記更新に関する要請がある場合、前記外部ホスト装置により、更新された制御プログラムが送信されて前記保存部に蓄えられる」との限度で一致する。
よって、本願発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「空気調和機システムにおいて、
室外機と、
前記室外機に連結される少なくとも一つの室内機と、
前記室外機および前記室内機のうちの少なくともいずれか一つを制御するための制御プログラムが蓄えられる保存部と、
外部ホスト装置との通信を遂行する通信部と、
前記外部ホスト装置から前記制御プログラムの更新に関する要請がある場合、前記制御プログラムの更新を遂行する制御部とを含み、
前記制御部は、前記更新に関する要請がある場合、前記外部ホスト装置により、更新された制御プログラムが送信されて前記保存部に蓄えられる空気調和機システム。」

[相違点1]
保存部について、本願発明は、「制御プログラムが蓄えられるROMおよび受信した更新用プログラムが蓄えられるRAMを備える」こと、及び、更新された制御プログラムが「ROM」に蓄えられることが特定されているのに対し、引用発明は、そのような特定がなされていない点。

[相違点2]
外部ホスト装置から制御プログラムの更新に関する要請がある場合について、本願発明は、「制御プログラムの動作中に前記外部ホスト装置から前記制御プログラムの更新に関する要請がある場合」と特定されているのに対し、引用発明は、「前記集中制御装置(5)またはローダは、前記制御プログラムが搭載されたメッセージをLAN(1)上に送信」するタイミングが「制御プログラムの動作中」であると特定されていない点。

[相違点3]
更新に関する要請がある場合の制御部の機能に関し、本願発明は「前記外部ホスト装置から更新用プログラムを受信するための通信時間を割り当て、前記割り当てられた通信時間に前記外部ホスト装置が前記保存部にアクセスするための権限を付与し」との特定がなされているのに対し、引用発明は、そのような特定がなされていない点。

[相違点4]
制御部が制御プログラムの更新する手順について、本願発明は「権限を付与された前記外部ホスト装置により、前記通信部を介して前記更新のための更新用プログラムが送信されて前記RAMに蓄えられ」、「蓄えられた前記更新用プログラムを実行することにより、前記ROMに蓄えられた制御プログラムを削除し」、更新された制御プログラムが「前記ROM」に蓄えられることが特定されているのに対し、引用発明は、そのような特定がなされていない点。

(4)判断
ア.相違点1について
制御プログラムをROMに蓄えることは、例えば、引用文献2(【0037】)、引用文献4(【0085】)、引用文献6(【0065】)、引用文献7(【0003】、【0039】)、引用文献9(【0017】?【0019】)に示すように、また、制御プログラムを更新するための更新用プログラムをRAMに蓄えることは、例えば、引用文献7(【0039】)に示すように、いずれも周知技術である。
そして、後記「エ.相違点4について」に示すとおり、引用発明において、蓄えられた更新用プログラムを実行することにより、制御プログラムを更新することは、当業者が容易に想到し得たところ、その際、更新用プログラムをRAMに蓄え、かつ、制御プログラムをROMに蓄えることは、上記周知技術に基づく設計事項にすぎない。
よって、相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。

イ.相違点2について
本願発明の「制御プログラムの動作中に」は、「制御プログラムの更新に関する要請がある場合」を特定するものであり、当該場合に、「制御プログラムの更新を遂行する」ことが特定されていることを考慮しても、動作中の制御プログラムを更新することを意味するものではない。
このことは、本願発明における制御プログラムの更新手順が、まず、「ROMに蓄えられた制御プログラムを削除し」、次いで、「更新された制御プログラムが送信されて前記ROMに蓄えられる」ものであることや、本願明細書の【0007】、【0019】に、制御プログラムの更新を遂行する場合、制御プログラムの制御対象の動作を中止するのが好ましい旨記載されていることからも明らかである。
また、本願発明は、制御プログラムの動作中以外のタイミングで制御プログラムの更新に関する要請がある場合については、何ら特定していない。
このことをふまえ、以下検討する。
引用発明において、集中制御装置(5)またはローダが、制御プログラムが搭載されたメッセージをLAN(1)上に送信するタイミングについて格別の制約はなく、該メッセージをLAN(1)上に送信すること自体は、制御プログラムの動作中を含め、任意のタイミングでなし得る。
そして、引用発明は、「制御部(3-3、4-3)で自己向けのメッセージを判別して自己向けのメッセージのみを記憶装置(3-2、4-2)に読み込む」ものであるから、制御プログラムの動作中に上記メッセージが送信された場合は、制御部の判断により、制御プログラムの動作を中断し、あるいは、制御プログラムの動作が終了するのを待って、上記メッセージを記憶装置に読み込むことができるので、制御プログラムの動作中に上記メッセージが送信された場合にも、制御プログラムの更新を遂行することに差し支えはない。
よって、引用発明において、「制御プログラムの動作中」にも「前記集中制御装置(5)またはローダは、前記制御プログラムが搭載されたメッセージをLAN(1)上に送信」することとして、相違点2に係る本願発明の構成は、当業者が容易に想到し得たものである。
なお、仮に、本願発明が、動作中の制御プログラムを更新するものであるとしても、当該技術事項は、例えば、引用文献2(【請求項1】)、引用文献3(【0008】)に示すように周知であって、引用発明に該周知技術を適用することも当業者が容易に想到し得たことである。

ウ.相違点3について
相違点3に係る本願発明の構成は、
(i)「(制御部が、)外部ホスト装置から更新用プログラムを受信するための通信時間を割り当て」ること、及び、
(ii)「(制御部が、)前記割り当てられた通信時間に前記外部ホスト装置が前記保存部にアクセスするための権限を付与」すること
を特定するものである。
ここで、「外部ホスト装置から更新用プログラムを受信するための通信時間を割り当て」とは、通常の意味に解すれば、時間を限って外部ホスト装置から更新用プログラムを受信するための通信を許可することの意味に解され、また、上記(1)のとおり、「外部ホスト装置が前記保存部にアクセスするための権限を付与」することは、外部ホスト装置が保存部に対して読み込みないし書き込みすることを許可することの意味に解される。
そうすると、上記相違点3に係る本願発明の構成は、
(i)制御部が、時間を限って外部ホスト装置から更新用プログラムを受信するための通信を許可すること、及び、
(ii)制御部が、上記限られた時間に、外部ホスト装置が保存部に対して読み込みないし書き込みすることを許可すること
を特定するものと解される。
以上をふまえ、まず、(i)について検討すると、制御部が外部装置と通信するに際し、時間を限って通信を許可すること(すなわち、通信時間を割り当てること)は、例えば、引用文献4(【0077】?【0078】)、引用文献5(【0058】?【0063】)に示すように周知技術である。
一方、後記「エ.相違点4について」に示すとおり、外部装置から更新用プログラムを受信することは、当業者が容易に想到し得たところ、外部装置から更新用プログラムを受信するに際し、受信に失敗する可能性があること等が普通に予測されるから、そのような場合に対処すべく、上記周知技術を採用して、受信のための通信時間を限ること(通信時間を割り当てること)は普通のことといえる。
よって、上記(i)の技術事項は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に想到し得たものである。
次に、(ii)について検討すると、上記(1)のとおり、更新用プログラム及び更新された制御プログラムを保存部に書き込む主体が「制御部」であると解釈する以上、外部ホスト装置が保存部に対して読み込みないし書き込みすることを許可しても、実際に、外部ホスト装置が保存部に対して読み込みないし書き込みを実行するわけではないから、上記(ii)の事項に技術的意義は認められない。
そして、制御部が、時間を限って、外部装置にアクセスを許可すること(時間を割り当てること)自体は、一般に周知の事項であるから、上記(ii)の事項は、引用発明に、格別の技術的意義はないものの、任意に上記周知の事項を付加したにすぎないものというべきである。
よって、上記(ii)の特定をすることに、何ら困難性は認められない。
したがって、相違点3に係る本願発明の構成は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。

エ.相違点4について
外部装置から更新用プログラムと新しい制御プログラムを受信し、受信した更新用プログラムを実行することにより、保存部に蓄えられた古い制御プログラムを新しい制御プログラムに書き換えることは、例えば、引用文献6(【0063】?【0066】)、引用文献7(【請求項1】、【0039】、【図6】)、引用文献8(【請求項1】、【0006】)に示すように周知技術である。ここで、受信した更新用プログラムが保存部に蓄えられて実行されることは明らかであり、保存部に蓄えられた古い制御プログラムを新しい制御プログラムに書き換えるということは、具体的には、保存部に蓄えられた古い制御プログラムを削除して、新しい制御プログラムを保存部に蓄えることと同じ意味であるといえる。
なお、古い制御プログラムを削除(消去)して新しい制御プログラムを蓄えることは、引用文献9(【0017】?【0019】)に明記されており、制御プログラムを更新する際の常套手段ともいえる。
そして、引用発明における制御プログラムの更新手順として、上記周知技術を採用することに困難性は認められない。
よって、引用発明において、外部ホスト装置から更新用プログラムを受信して保存部に蓄え、蓄えられた更新用プログラムを実行することにより、制御プログラムを更新すること、具体的には、保存部に蓄えられた古い制御プログラムを削除して、新しい制御プログラムを保存部に蓄えることは、上記周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たことである。
更新用プログラムの保存先をRAMとし、制御プログラムの保存先をROMとすることは、前記「ア.相違点1について」に示したとおり、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、相違点4に係る本願発明の構成は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。

オ.効果について
本願発明の効果について、本願明細書には、「空気調和機システムが動作している途中でも外部のコンピュータから受信された更新プログラムによって制御プログラムの更新を自動的に行うことができる。」、「空気調和機システムに使用者が直接的に接近せず容易に制御プログラムの更新を行うことができる。」と記載されている(【0011】)。
しかし、前者の効果については、本願発明が、当該効果を奏するための構成を備えているとは認められない。また、本願明細書に「前記制御部は、前記制御プログラムの更新を遂行する場合、前記室外機、前記室内機、および前記冷媒調節装置のうちの前記制御プログラムの制御対象の動作を中止するように制御するのが好ましい。」(【0007】)、「制御部60は、更新の要請がある場合、室外機10、室内機20、および冷媒分配装置30の動作を中止するのが好ましい。」(【0019】)とも記載されていることを考慮すれば、本願発明は、空気調和機システムが動作している途中に制御プログラムの更新を自動的に行うことができるとはいえないから、前者の効果は、本願発明の効果であるとは認められない。
また、後者の効果は、引用発明も有する効果にすぎない。
よって、本願発明が、引用発明及び周知技術から予測できない格別顕著な効果を奏するものとは認められない。

(5)小括
上記相違点を総合判断しても、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-30 
結審通知日 2014-11-04 
審決日 2014-11-17 
出願番号 特願2007-312728(P2007-312728)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (F24F)
P 1 8・ 121- WZ (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野田 達志  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 佐々木 正章
紀本 孝
発明の名称 空気調和機システムおよびそのプログラム更新方法  
代理人 実広 信哉  
代理人 渡邊 隆  

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