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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1299305
審判番号 不服2014-12026  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-24 
確定日 2015-04-03 
事件の表示 特願2013-518604「配線基板および多数個取り配線基板」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月 4日国際公開、WO2013/099854〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年12月25日(優先権主張、2011年12月27日)を国際出願日とする出願であって、平成25年8月26日付けの拒絶理由通知に対して、同年10月22日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年3月17日付け(発送日:同年3月25日)で拒絶査定がされ、これに対して、平成26年6月24日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。

第2 平成26年6月24日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成26年6月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
平成26年6月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。) は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「【請求項1】
板状のセラミックからなり、表面および裏面を有し、該表面と該裏面との間の高さが0.8mm以下である基板本体と、
上記基板本体の表面に開口するキャビティと、
上記キャビティの側面と基板本体の側面との間の厚みが0.3mm以下となる側壁と、を備えた配線基板であって、
上記基板本体の表面に形成され且つ上記キャビティの開口部を囲むように形成された平面視が枠形状の導体層と、
上記導体層に隣接し且つ上記基板本体の表面の外周側に沿って位置する平面視が枠形状のセラミック面と、
上記キャビティの側面における該キャビティの底面と上記表面との間に沿って上記基板本体内に形成され、上記キャビティの側面に一部が露出し、一端側で上記導体層と接続するビア導体とを、有する、
ことを特徴とする配線基板。」を、

本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「【請求項1】
板状のセラミックからなり、表面および裏面を有し、該表面と該裏面との間の高さが0.8mm以下である基板本体と、
上記基板本体の表面に開口するキャビティと、
上記キャビティの側面と基板本体の側面との間の厚みが0.3mm以下となる側壁と、を備えた配線基板であって、
上記基板本体の表面に形成され且つ上記キャビティの開口部を囲むように形成され、表面には、枠形状の金具が接合されるか、あるいは、金属製の蓋が接合される、平面視が枠形状の導体層と、
上記導体層に隣接し且つ上記基板本体の表面の外周側に沿って位置する平面視が枠形状のセラミック面と、
上記キャビティの側面における該キャビティの底面と上記表面との間に沿って上記基板本体内に形成され、上記キャビティの側面に一部が露出し、一端側で上記導体層と接続するビア導体とを、有する、
ことを特徴とする配線基板。」
と補正することを含むものである。
なお、下線は補正箇所であり、請求人が付したとおりである。

本件補正は、発明を特定するために必要な事項である「導体層」の表面について「表面には、枠形状の金具が接合されるか、あるいは、金属製の蓋が接合される」に限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-68414号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面(特に【図1】、【図2】、【図4】、【図9】、【図10】参照)と共に次の事項が記載されている。
以下、下線は当審で付与したものである。


「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子部品封止用のリードレスパッケージに関し、詳しくは水晶振動子、SAWフィルタ、トランジスタ、IC等の電子部品を封止するセラミック積層タイプのリードレスパッケージ(配線基板)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】図11は、この種のリードレスパッケージ(以下、単にパッケージともいう)1の一例を示すものである。このものは、パッケージ本体2の上面中央にキャビティ3を備えており、その表面4の外周縁より若干内側であってその外周縁に沿って所定の幅で形成されたロー付け用金属層5にNi鍍金などをかけた上に、銀(Ag)ロー9で封止用リング(以下、単にリングともいう)31をロー付けしてなるものである。封止用リング31はコバールや42アロイなどからなり、キャビティ3に電子部品を搭載した後、図示しないリッドを被せて封止するように構成されている。そして、側面11には平面視半円弧状又は角形状の適数のキャスタレーション(凹部)12を備えており、本例では、平面視長辺をなす側面11のキャスタレーション12に、配線層をなす金属層(以下側面金属層ともいう)13を設けている(図12、13参照)。」


「【0017】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態例を図1?5を参照しながら詳細に説明する。図1は、本例のセラミック製のリードレスパッケージ1の斜視図であり、このものはその本体(基板)2が、平面視、略長方形で、上面中央にキャビティ3を備えるように形成されている。そして、その表面(上面)4の外周縁より内側であって外周縁に沿って所定の幅W1で形成されたロー付け用金属層5の上に矩形枠状の封止用リング31が銀ロー9を介してロー付けされている。なお、ロー付け用金属層5の幅W1は同リング31の外側にてロー付けにおけるフィレットが形よく形成されるように同リング31の幅より広くされ、外縁が同リング31の外縁より外側に位置するようにされている。また本体2の側面11にはその厚さ方向に平面視半円弧状とされたキャスタレーション12や図示はしないが角形状とされたキャスタレーションに金属層(側面金属層)13が形成されている(図2参照)。ただし本例では、平面視、長辺に形成されたキャスタレーション12にのみ金属層13が形成され、この金属層13は裏面15の外周縁の適所に形成された金属層16に連なっている(図3参照)。
【0018】なお、ロー付け用金属層5と側面金属層13とは接続用金属層17を介して接続されて電気的導通が確保されているが、この接続用金属層(ロー付け用金属層5と側面金属層13との間)17を被覆して横断するようにアルミナ層(ロー不濡れ材層ともいう)18が形成されている。本例のパッケージ1は、封止用リング31を含む金属層の表面に仕上鍍金として、図示はしないがNi(ニッケル)鍍金及びAu(金)鍍金がかけられている。ただし、ロー付け用金属層5にはリング31のロー付け前にNi鍍金(図示せず)がかけられている。なお、本例における本体2は、アルミナセラミックの三層構造からなり、全厚み1mm程度で、平面視7×5mm程度のものである。そしてリング31は、矩形枠状を成し線材部の横断面が□0.3mm程度のものである。
【0019】さて次にこのようなセラミック積層タイプのリードレスパッケージ1の製法を詳述する。例えばアルミナ90%に焼結助材を10%加えた組成粉末を、樹脂、可塑剤、有機溶剤と共に分散混合して、泥漿とし、これをドクターブレード法にて多数個取り用の各グリーンシート(大判)に形成する。そして、そのグリーンシート(大判)に各層の設計に応じてキャビティ及びキャスタレーション用のスルーホール(例えば直径0.4mm)などを穿孔する。
【0020】次のそのシート面にタングステン、モリブデン粉末を主成分とする金属(導体)ペーストをスクリーン印刷法にて各金属層(配線層)のパターンに印刷し、さらにスルーホール内に真空引きして印刷する。このとき、図4、5に示したように、パッケージの表面を成すグリーンシート21の表面のうち、ロー付け用金属層5のための金属ペースト5aの印刷面(印刷パターン)は、従来と同様に隣接するパッケージ単位1a相互間で境界線kを挟んで微小な間隙(例えば0.2mm)Hを設けておく。図中の1点鎖線kはパッケージ単位1aを区画する境界(線)を示す。
【0021】また、図4?6に示したように、表面を成すグリーンシート21については、ロー付け用金属層5と側面金属層13との電気的導通がとれるように、隣接するパッケージ単位1aの両ロー付け用金属層(ペースト5a)相互間であってキャスタレーション用のホール12aを挟むようにして接続用金属層17のための金属ペースト層17aも同時に印刷し、ホール12a内面の金属ペースト層13aと連なるようになっている。このとき、要すれば、図4,5に示したように、接続用金属層のための金属ペースト層17aは印刷時のずれ等を考慮し、従来と同様にスルーホール12aの直径より大きく幅W2で印刷し、同ホール12aの外側の境界線kを跨ぐ(横断する)ように印刷する。
【0022】次に図7に示したように、パッケージ1の表面をなすグリーンシート21における各パッケージ単位1aの接続用金属層17のための金属ペースト層17aの上であって、ロー付け用金属層5のための金属ペースト層5aと側面金属層13のための金属ペースト層13aとの間を被覆、横断するようにロー不濡れ材ペースト18aを所定の厚さ印刷(塗布)する。ただし、本例ではグリーンシート21と同素材からなるアルミナペーストを印刷し、その幅W3は、接続用金属層17のための金属ペースト層17aの幅W2より大きくした。
【0023】そして、このように形成された各グリーンシートを積層、熱圧着して多数個取り用の未焼成セラミック大基板を作る。次に、図8に示したように、各グリーンシート21?23を積層して形成された未焼成セラミック大基板25において、隣接する各パッケージ単位1a相互間の境界線k、或いは図示はしないがパッケージ単位と外周寄りの捨て代(大基板の周縁部分)との間の境界線に沿って分割できるよう、縦横に所定の深さの分割溝26を刃を押し付けて入れる。この分割溝26は、片面でもよいが本例では切断を容易とするため両面に入れた。
【0024】この分割溝26入れ後、未焼成セラミック大基板25を温度約1500℃、還元雰囲気中にて所定時間焼成する。すると、金属層5、13、16、17、ロー不濡れ材層18が同時焼成された焼成済セラミック大基板となる。その後、封止用リング31のロー付けのため、電解鍍金又は無電解鍍金法により、ロー付け用金属層5を含め表裏両面の金属層16、17、やキャスタレーション用のホール12の金属層13などにNi鍍金をかける。この際、ロー不濡れ材層18はアルミナセラミックであるから鍍金はかからない。
【0025】次に、このような焼成済セラミック大基板27のうち、図9,10に示したように、Ni鍍金(図示せず)のかけられたロー付け用金属層5の上(Ni鍍金面)に、封止用リング31を銀ロー(プリフォーム)9を介してセット(配置)する。そして、その銀ロー9が十分溶融する温度(例えば850℃)にてそのローをリフローし、冷却する。こうすることで封止用リング31はロー付け用金属層5のNi鍍金面にロー付けされる。このとき溶融温度は高めであるからロー9は十分溶解し、その接合面に濡れ広がる。したがってロー溜まりやボイドの発生もなく、しかも接合面の縁には形のよいフィレットが形成され、同リング31は高い封止性及び接合強度で接合される。
【0026】そして、このロー付けにおいては溶融と同時にローが濡れ広がるものの、隣接するパッケージ単位1a相互間の境界kでは金属層5が幅H分ないため、つまりセラミックが分割溝26を挟んで微小幅Hで露出しているから、従来と同様にそこへは濡れ広がらない(図10参照)。一方、キャスタレーション用のホール12aに向かって濡れ広がるローはロー不濡れ材層18の濡れ広がり防止のダム作用により、その濡れ広がりを止められる。このため、同ホール12a内のNi鍍金面にローが付着することが防止されるし、同ホール12a近傍の境界線kにも濡れ広がらない。したがって、溶融ローが分割溝26を越えてブリッジを形成することもない。」

上記記載事項から次の事項が認定できる。
ウ 上記イの段落【0018】の「本体2は、アルミナセラミックの三層構造からなり、全厚み1mm程度で、平面視7×5mm程度のものである」から、「本体2」は、板状である。そして、当該「本体2」が表面および裏面を有することは自明である。なお、「本体2」は、「本体(基板)2」と同義である。

エ 【図1】等の図示から、上記キャビティ3の側面と本体(基板)2の側面との間の厚みが某かである側壁は明らかに看てとれる。また、上記アの段落【0001】の「リードレスパッケージ(配線基板)」から、本体(基板)2が配線基板であることは自明である。

オ 上記イの段落【0018】の「ロー付け用金属層5と側面金属層13とは接続用金属層17を介して接続されて電気的導通が確保されている」及び【図1】等の図示から、「ロー付け用金属層5」は、本体(基板)2の表面に形成され且つキャビティ3の開口部を囲むように形成された平面視が枠形状の導体層である。

カ 上記アの段落【0001】の「本発明は、電子部品封止用のリードレスパッケージに関し」、上記アの段落【0002】の「封止用リング31はコバールや42アロイなどからなり」、上記イの段落【0017】の「ロー付け用金属層5の上に矩形枠状の封止用リング31が銀ロー9を介してロー付けされている」及び【図1】等の図示から、ロー付け用金属層5の表面には枠形状の封止用リング31が接合されていると、また、上記「封止用リング31」が金属製である。

キ 上記イの段落【0024】の「ロー不濡れ材層18はアルミナセラミックである」、同じく段落【0018】の「本体2は、アルミナセラミックの三層構造からなり」及び【図1】等の図示から、「パッケージの表面4」において「ロー付け用金属層5」の外縁は、平面視が枠形状のセラミック面である。

ク 上記イの段落【0017】の「本体2の側面11にはその厚さ方向に平面視半円弧状とされたキャスタレーション12や図示はしないが角形状とされたキャスタレーションに金属層(側面金属層)13が形成されている」、同じく段落【0018】の「ロー付け用金属層5と側面金属層13とは接続用金属層17を介して接続されて電気的導通が確保されている」及び【図1】等の図示から、本体(基板)2の側面11に沿って、本体(基板)2内に形成され、一端側でロー付け用金属層5と接続するキャスタレーション12に形成された金属層(側面金属層)13が看てとれる。

これら記載事項、図示内容及び上記認定事項を総合して、本願補正発明に則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「 板状のアルミナセラミックからなり、表面および裏面を有し、該表面と該裏面との間の高さが1mm程度である本体(基板)2と、
上記基板本体の表面に開口するキャビティ3と、
上記キャビティ3の側面と本体(基板)2の側面11との間の側壁と、を備えた配線基板であって、
上記本体(基板)2の表面に形成され且つ上記キャビティ3の開口部を囲むように形成され、表面には、枠形状の封止用リング31が接合される、平面視が枠形状のロー付け用金属層5と、
上記ロー付け用金属層5に隣接し且つ上記本体(基板)2の表面の外周側に沿って位置する平面視が枠形状のセラミック面と、
上記本体(基板)2の側面11に沿って、上記本体(基板)2内に形成され、上記本体(基板)2の側面11に露出し、一端側で上記ロー付け用金属層5と接続するキャスタレーション12に形成された金属層(側面金属層)13とを、有する、
配線基板。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された特開2011-165899号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「配線基板の製造方法」に関して、図面(特に【図1】ないし【図4】参照)とともに、次の事項が記載されている。


「【実施例】
【0024】
ここで、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明する。
主にアルミナからなり、平面視が2mm×1.4mmの表・裏面3,4で、且つ同じ寸法のキャビティ9を有する配線基板8を縦9個×横6個で平面方向に沿って配する製品領域6を有し、四辺の耳部5を含めて、平面視の一辺が20mmの正方形で厚みが0.6mmの多数個取りのベース基板(1)を20個製作した。
これらのうち、10個のベース基板1における配線基板8ごとのメタライズ層14上に42アロイからなるロウ層材15付きの同じ金属枠16を載置し、前記一対のローラ電極18を前記図7に示した位置ごとに接触させて通電した。その結果、金属枠16の一方の長辺における中央付近直下のロウ材層15に点状のロウ付け部bpを一箇所のみ設けて仮付け工程が行えた。該仮付け後のベース基板1の平面図を図13に示した。これら10個のベース基板1の組を実施例とした。」

(3)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2009-170499号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面(特に【図4】、【図6】参照)と共に次の事項が記載されている。


「【0009】
また、本発明には、少なくとも1つの前記外側面と前記キャビティの側面との間の幅は、0.4mm以下である、パッケージ(請求項2)も含まれる。
これによれば、小型化の要請に応じて前記パッケージ本体の外側面と前記キャビティの側面との間に位置する側壁の幅が、0.4mm以下の薄肉となっても、一部がキャビティの内側に露出するビア導体を厚み方向に沿って容易に配設することが可能となる。その結果、該ビア導体の上端面に前記凹・凸部分が生じ、且つこれに伴ってワイヤーボンディング用のパッドの表面にも相似形の凹・凸部分が形成されても、これを除いた外側面寄りの該パッドの表面で、キャビティに実装される電子部品に接続されたワイヤーと確実にボンディングすることが可能となる。
尚、前記パッケージ本体の外側面とキャビティの側面との間の幅を、0.4mm以下としたのは、かかる幅が0.4mmを超えると、一部をキャビティの内側に露出させずに、全体を前記幅間(側壁)のセラミック層に埋設し得るためである。かかる幅の下限は、約0.20mm?0.15mmである。」


「【0018】
以上のようなパッケージ1aによれば、ビア導体v1は、その一部vfがキャビティ6の内側に露出した状態で、前記ワイヤーボンディング用のパッド9と前記電極パッド10との間を導通している。このため、かかるビア導体v1の上端面に前記凹みまたは凸部が形成され、且つ該ビア導体v1と接続される上記パッド9の表面にも凹部hまたは凸部が生じても、かかる凹部hまたは凸部を除く該パッド9における外側面5寄りの平坦な表面に対して、キャビティ6の底面8に実装される電子部品cと接続されたボンディングワイヤーwの一端を、物理的に十分に打ち付け(ボンディング)ることができる。
従って、パッケージ本体2の小型化に応じて、キャビティ6の側面7とパッケージ本体2の外側面5との間が薄肉化されても、実装される電子部品cとワイヤーボンディング用のパッド9とを電気的に確実に接続でき、該パッド9やビア導体v1などを介して、外部との電気的接続を成さしめることも確実に行える。
【0019】
図5は、異なる形態のパッケージ1bを示す斜視図、図6は、かかるパッケージ1bにおいて、その表面3から複数のワイヤーボンディング用のパッド9を除去した状態を示すパッケージ1aの斜視図である。
パッケージ1bは、図5,図6に示すように、前記同様のセラミック層s1,s2からなり、平面視が長方形の表面3、裏面4、および四辺の外側面5を備えたパッケージ本体2と、かかるパッケージ本体2の表面3に開口し、四辺の側面7および底面8を有するキャビティ6と、を含んでいる。パッケージ本体2の外側面5とキャビティ6の側面7との間の幅tは、何れも0.4mm以下である。
外側面5とキャビティ6の側面7とに挟まれたパッケージ本体2の表面3上には、キャビティ6の開口部に沿って、平面視が矩形のワイヤーボンディング用のパッド9が複数形成されている。
【0020】
また、図5,図6に示すように、キャビティ6の底面8には、側面7ごとに沿い且つ上記パッド9ごとのほぼ真下の位置に複数の電極パッド10が形成されている。更に、パッケージ本体2の外側面5とキャビティ6の側面7との間には、上記パッド9,10と上・下端で個別に導通し、且つ長方形を呈する一部hfをキャビティ6の内側に露出させたビア導体v2が、パッケージ本体2の厚み方に沿って複数個形成されている。尚、キャビティ6内に露出するビア導体v2の一部hfの幅は、上記パッド9,10の幅と同様である。
パッケージ本体2の裏面4の周辺には、外部接続用である前記パッド12と同様のパッド(図示せず)が複数個形成され、かかるパッドと前記電極パッド10とは、裏面4および底面8を形成するセラミック層s2を貫通する前記ビア導体v3と同様のビア導体(図示せず)を介して、導通されている。
【0021】
図6に示すように、パッケージ本体2の外側面5とキャビティ6の側面7と挟まれた矩形枠状の表面3には、断面がほぼ半円形のビア導体v2の上端面が露出している。かかるビア導体v2は、ベースとなるほぼ円形の直径dに対し、外側面5とキャビティ6の側面7との間に沿った内外方向の断面の長さが上記直径dの約5割であり、且つ上記円形の断面積の約5割である。
尚、上記直径dは、0.1mm以下であるため、パッケージ本体2の外側面5とキャビティ6の側面7と直交する内外方向に沿ったビア導体v2の断面の長さは、約0.05mm以下である。」

3.対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「本体(基板)2」は、その機能、構造からみて、本願補正発明の「基板本体」に相当する。同様に、「キャビティ3」は「キャビティ」に、「封止用リング31」は「金具」に、「ロー付け用金属層5」は「導体層」に、「キャスタレーション12に形成された金属層(側面金属層)13」は「ビア導体」に、それぞれ、相当する。
そして、引用発明の「表面および裏面を有し、該表面と該裏面との間の高さが1mm程度である本体(基板)2」と本願補正発明の「表面および裏面を有し、該表面と該裏面との間の高さが0.8mm以下である基板本体」は、「表面および裏面を有」する「基板本体」という限りで共通する。
また、引用発明の「上記キャビティ3の側面と本体(基板)2の側面11との間の厚みがある側壁」と本願補正発明の「上記キャビティの側面と基板本体の側面との間の厚みが0.3mm以下となる側壁」は、「上記キャビティの側面と基板本体の側面との間の側壁」という限りで共通する。

以上の点からみて、本願補正発明と引用発明とは、

[一致点]
「 板状のセラミックからなり、表面および裏面を有する基板本体と、
上記基板本体の表面に開口するキャビティと、
上記キャビティの側面と基板本体の側面との間の側壁と、を備えた配線基板であって、
上記基板本体の表面に形成され且つ上記キャビティの開口部を囲むように形成され、表面には、枠形状の金具が接合される、平面視が枠形状の導体層と、
上記導体層に隣接し且つ上記基板本体の表面の外周側に沿って位置する平面視が枠形状のセラミック面と、
上記本体(基板)2内に形成され、一端側で上記導体層と接続するビア導体とを、有する、
配線基板。」
である点で一致し、

次の点で相違する。
[相違点]
相違点1
板状のセラミックの表面と裏面との間の高さについて、本願補正発明では、「0.8mm以下」であるのに対して、引用発明では、「1mm程度」である点。

相違点2
キャビティの側面と基板本体の側面との間の厚みについて、本願補正発明では、「0.3mm以下」であるのに対して、引用発明では、不明である点。

相違点3
ビア導体が形成される位置とビア導体の形成され方について、本願補正発明では、「キャビティの側面における該キャビティの底面と表面との間に沿って」「キャビティの側面に一部が露出」しているのに対して、引用発明では、「本体(基板)2の側面11に沿って」「本体(基板)2の側面11に露出」されている点。

4.判断
(1)相違点1について
板状のセラミックの表面と裏面との間の高さについて、引用発明も「1mm程度」であって、本願補正発明の「0.8mm以下」と同程度であるところ、引用発明と共通する技術分野に属する刊行物2に記載された上記ケの段落【0024】の「厚みが0.6mm」に照らせば、本願補正発明の厚さにすることが記載されているから、小型化という自明の課題を踏まえ、上記相違点1に係る発明特定事項は、当業者が適宜なし得る設計事項であって、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
キャビティの側面と基板本体の側面との間の厚みについて、引用発明と共通する技術分野に属する刊行物3に記載された上記コの段落【0009】の「小型化の要請に応じて」、「幅は、0.4mm以下」、「幅の下限は、約0.20mm?0.15mm」に照らせば、上記相違点2に係る発明特定事項は、当業者が適宜なし得る設計事項であって、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点3について
ビア導体が形成される位置とビア導体の形成され方について、引用発明と共通する技術分野に属する刊行物3に記載された上記サの段落【0020】の「長方形を呈する一部hfをキャビティ6の内側に露出させたビア導体v2」に照らせば、上記相違点3に係る発明特定事項は、当業者が適宜なし得る設計事項であって、当業者が容易に想到し得たことである。

(4)作用効果について
そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び刊行物2、3に記載された技術事項から当業者が予測し得た程度のものにすぎない。

(5)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び刊行物2、3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成25年10月22日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のもの(以下、「本願発明」という。)である。

「【請求項1】
板状のセラミックからなり、表面および裏面を有し、該表面と該裏面との間の高さが0.8mm以下である基板本体と、
上記基板本体の表面に開口するキャビティと、
上記キャビティの側面と基板本体の側面との間の厚みが0.3mm以下となる側壁と、を備えた配線基板であって、
上記基板本体の表面に形成され且つ上記キャビティの開口部を囲むように形成された平面視が枠形状の導体層と、
上記導体層に隣接し且つ上記基板本体の表面の外周側に沿って位置する平面視が枠形状のセラミック面と、
上記キャビティの側面における該キャビティの底面と上記表面との間に沿って上記基板本体内に形成され、上記キャビティの側面に一部が露出し、一端側で上記導体層と接続するビア導体とを、有する、
ことを特徴とする配線基板。」

2.引用刊行物とその記載事項
刊行物1の記載事項及び引用発明、刊行物2の記載事項及び刊行物3の記載事項は、それぞれ、上記第2の2.(1)、上記第2の2.(2)及び上記第2の2.(3)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、本願補正発明に係る「導体層」の表面について「表面には、枠形状の金具が接合されるか、あるいは、金属製の蓋が接合される」に限定するという発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含む本願補正発明が、上記第2の4.に記載したとおり、引用発明及び刊行物2、3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び刊行物2、3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2、3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-03 
結審通知日 2015-02-04 
審決日 2015-02-18 
出願番号 特願2013-518604(P2013-518604)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 中川 隆司
小柳 健悟
発明の名称 配線基板および多数個取り配線基板  
代理人 青木 昇  

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