• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01G
管理番号 1299370
審判番号 不服2013-3852  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-28 
確定日 2015-03-30 
事件の表示 特願2006-550782「植物栽培装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月 6日国際公開、WO2006/070783〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年12月27日(優先権主張 平成16年12月27日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成24年11月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成25年2月28日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同時に手続補正がなされたものであって、その後当審において、平成26年8月25日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成26年10月27日に手続補正書並びに意見書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成26年10月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりのものと認める。
「植物を栽培可能な栽培容器と、前記植物の栽培用液体を貯留可能なタンクとを連通する連通路に、前記タンク内の貯留液体を前記栽培容器に供給可能なポンプを設けてある植物栽培装置であって、
前記栽培容器を前記タンクの上方に支持可能な筒状の支持部を前記タンクに設け、
前記栽培容器が前記支持部の上端に支持されており、
前記連通路を前記筒状の支持部の内部に挿通してあり、
前記連通路は、前記支持部の内部において、前記栽培容器の下部に設けられた閉鎖空間に連通接続されており、
前記タンク内の前記貯留液体が前記ポンプによって前記連通路を介して前記閉鎖空間に供給され、
前記ポンプを前記タンクと一体に設けてあり、
前記閉鎖空間に供給した栽培用液体のうちの余剰液体を、前記連通路の内部を通して、前記閉鎖空間から前記タンクに還流可能に設けてある植物栽培装置。」

2.引用例
当審拒絶理由で引用された、本願出願前に頒布された刊行物である登録実用新案第3051768号公報(以下「引用例」という。)には、以下の記載がある。
(1)「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】土台(1)の内部に水槽タンク(4)を入れ上に支柱(3)を取付けて受皿(7)を左右に取付け作物(A)を植えた鉢(8)に水槽タンクの中の養液水(B)をポンプ(5)が作動してホース管(6)にノズル(9)を差してノズルより作物(A)の鉢(8)に自動供給して栽培する事を特徴とする草花観葉植物の自動潅水装置付スタンド花台」

(2)「【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
室内用草花観葉植物の自動潅水装置付スタンド花台
【0002】
【従来の技術】
従来は室内で草花観葉植物を栽培する場合作物の鉢を外部に出して水を供給するので大変です
【0003】
【考案の解決しようとする課題】
室内の高い場所に置いた作物の鉢でも自動で養液水を供給できて排水も出来る又移動も手軽に出来る栽培装置
【0004】
【課題を解決するための手段】
室内で鑑賞が出来移動も手軽に出来る方法又自動で給水出来る方法
【0005】
【作用】
室内で草花観葉植物の自動潅水出来る花台
室内の玄関応接間などに置いて毎日が心をやすらぐ事が出来る
【0006】
【実施例】
室内で草花観葉植物の栽培を養液水を自動供給出来るので便利です
又花台の角度が自在に動くので鑑賞にもよい
【0007】
【考案の効果】
一般家庭又会社の事務所花屋さんの店舗に置いて好評です」

(3)【図2】を参照すると、支柱(3)の中間部及び上端付近に鉢受皿(7)が設けられ、支柱(3)の内部にホース管(6)が設けられ、水槽タンク(4)内にポンプ(5)が設けられていることが見てとれる。
また【図3】を参照すると、ノズル(9)の先端は鉢(8)上方まで延びており、鉢(8)は受皿(7)に載置され、受皿(7)の支柱側下端には、支柱内部の排水ホース(10)に連通する孔が設けられ、排水ホース(10)の先端は支柱(3)の内部に開放されていることが見てとれる。
さらに【図1】,【図2】及び【図3】からみて、支柱(3)は、断面が四角形の筒状であることが見てとれる。

(4)上記(1)ないし(3)からみて、引用例には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「土台(1)の内部に水槽タンク(4)を入れ上に支柱(3)を取付けて受皿(7)を左右に取付け、作物(A)を植えた鉢(8)に水槽タンクの中の養液水(B)をポンプ(5)が作動してホース管(6)にノズル(9)を差してノズルより作物(A)の鉢(8)に自動供給して栽培する草花観葉植物の自動潅水装置付スタンド花台であって、
支柱(3)は断面四角形の筒状であって、支柱(3)の中間部及び上端付近に受皿(7)が設けられ、支柱(3)の内部にホース管(6)が設けられ、水槽タンク(4)内にポンプ(5)が設けられ、
ノズル(9)の先端は鉢(8)上方まで延びており、鉢(8)は受皿(7)に載置され、受皿(7)の支柱側下端には、支柱内部の排水ホース(10)に連通する孔が設けられ、排水ホース(10)の先端は支柱(3)の内部に開放されているものであって、
室内の高い場所に置いた作物の鉢でも自動で養液水を供給できて排水も出来る又移動も手軽に出来る、草花観葉植物の自動潅水装置付スタンド花台。」

3.対比
本願発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「養液水(B)」,「水槽タンク(4)」,「ホース管(6)」,「ポンプ(5)」,「作物(A)を植えた鉢(8)」,「支柱(3)」及び「草花観葉植物の自動灌水装置付きスタンド花台」は、それぞれ本願発明の「栽培用液体」,「タンク」,「連通路」,「ポンプ」,「植物を栽培可能な栽培容器」,「筒状の支持部」及び「植物栽培装置」に相当する。
引用発明の「作物(A)を植えた鉢(8)」と「受皿(7)」を合わせたものが、本願発明の「植物を栽培可能な栽培容器」に相当する。
引用発明の養液水(B)は水槽タンク(4)の中にあるので、引用発明の「水槽タンク(4)」は、「植物の栽培用液体を貯留可能なタンク」に相当する。

イ 引用発明は、「水槽タンクの中の養液水(B)をポンプ(5)が作動してホース管(6)にノズル(9)を差してノズルより作物(A)の鉢(8)に自動供給」するので、引用発明の「ホース管(6)」は、本願発明の「植物を栽培可能な栽培容器と、前記植物の栽培用液体を貯留可能なタンクとを連通する連通路」に相当し、引用発明の「ポンプ(5)」は、本願発明の「前記タンク内の貯留溶液を前記栽培容器に供給可能なポンプ」に相当する。

ウ 引用発明の「支柱(3)は断面四角形の筒状」であるので、引用発明の「土台(1)の内部に水槽タンク(4)を入れ上に支柱(3)を取付けて、支柱の中間部及び上端付近に受皿(7)を左右に取付け」ることは、本願発明の「栽培容器をタンクの上方に支持可能な筒状の支持部をタンクに設け」たことに相当し、また引用発明の「支柱(3)の内部にホース管(6)が設けられた」ことは、本願発明の「連通路を筒状の支持部の内部に挿通してあ」ることに相当する。

エ 引用発明の「支柱(3)の中間部及び上端付近に受皿(7)が設けられ」ることと、本願発明の「栽培容器が支持部の上端に支持されて」いることとは、「栽培容器が支持部の上方に支持されて」いることで共通している。
引用発明の「鉢(8)に水槽タンクの中の養液水(B)をポンプ(5)が作動してホース管(6)にノズル(9)を差してノズルより作物(A)の鉢(8)に自動供給」することと、本願発明の「タンク内の貯留液体がポンプによって連通路を介して閉鎖空間に供給され」ることとは、「タンク内の貯留液体がポンプによって連通路を介して栽培容器に供給され」ることで共通している。

オ 引用発明の「水槽タンク(4)内にポンプ(5)が設けられ」ていることは、本願発明の「ポンプをタンクと一体に設けてあ」ることに相当している。
引用発明は、「養液水を供給できて排水も出来る」ものであって、「鉢(8)は受皿(7)に載置され、受皿(7)の支柱側下端には、支柱内部の排水ホース(10)に連通する孔が設けられ、排水ホース(10)の先端は支柱(3)の内部に開放されている」ので、鉢(8)から出た受皿(7)上の養液水は、孔と排水ホース(10)を経て支柱内部に放出されるから、鉢(8)から出て受皿(7)上の養液水は「栽培用液体のうちの余剰液体」と言える。また引用発明は「土台(1)の内部に水槽タンク(4)を入れ上に支柱(3)を取付けて」いるので、支柱(3)内部に放出されて、支柱内部を落下した養液水は、土台(1)の水槽タンク(4)に還流すると言える。
そうすると、引用発明の「土台(1)の内部に水槽タンク(4)を入れ上に支柱(3)を取付けて」、「鉢(8)は受皿(7)に載置され、受皿(7)の支柱側下端には、支柱内部の排水ホース(10)に連通する孔が設けられ、排水ホース(10)の先端は支柱(3)の内部に開放されている」ことと、本願発明の「閉鎖空間に供給した栽培用液体のうち余剰液体を、連通路の内部を通して、閉鎖空間からタンクに還流可能に設けてある」こととは、「栽培容器に供給した栽培用液体のうちの余剰液体を、栽培容器からタンクに還流可能に設けてある」ことで共通している。

カ 上記アないしオからみて、本願発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、相違点1?3で相違している。
(一致点)植物を栽培可能な栽培容器と、前記植物の栽培用液体を貯留可能なタンクとを連通する連通路に、前記タンク内の貯留液体を前記栽培容器に供給可能なポンプを設けてある植物栽培装置であって、
前記栽培容器を前記タンクの上方に支持可能な筒状の支持部を前記タンクに設け、
前記栽培容器が前記支持部の上方に支持されており、
前記連通路を前記筒状の支持部の内部に挿通してあり、
前記タンク内の前記貯留液体が前記ポンプによって前記連通路を介して栽培容器に供給され、
前記ポンプを前記タンクと一体に設けてあり、
前記栽培容器に供給した栽培用液体のうちの余剰液体を、前記栽培容器から前記タンクに還流可能に設けてある植物栽培装置。

(相違点1)
栽培容器が支持されている箇所が、本願発明は支持部の上端であるのに対し、引用発明は支持部の上端付近である点。
(相違点2)
本願発明は、栽培容器の下部に閉鎖空間が設けられ、連通路は支持部の内部において当該閉鎖空間に連通接続されて、貯留液体を閉鎖空間に供給しているのに対し、引用発明は、閉鎖空間が設けられておらず、連通路は栽培容器の上方まで配置され、栽培容器の上方に供給している点。
(相違点3)
余剰液体を、本願発明は、連通路の内部を通してタンクに還流可能に設けているのに対し、引用発明は、連通路の内部を通しているかどうか不明な点。

4.判断
上記相違点1?3について検討する。
(1)相違点1
栽培容器を支持部のどこに配置するかは、観賞性等に応じて当業者が適宜選択し得る事項であるので、引用発明の上端付近を、上端に代えることに格別の困難性は無い。

(2)相違点2
栽培容器への給水方法として、上方からの給水方法と下方からの給水方法があることは技術常識であって、どちらの方法を選択するかは、当業者が適宜決定し得る事項である。そして栽培容器の下方から給水を行うにあたり、栽培容器の下部に設けた閉鎖空間に給水のための連通路を連通接続することは、例えば実願昭54-79723号(実開昭55-178356号)のマイクロフィルム,特開昭63-141522号公報,特開平7-115861号公報,特開平11-98929号公報,特開2002-253054号公報に記載されているように、本願出願前に周知の事項であるので、引用発明の栽培容器に上記周知の事項を適用することに格別の困難性はない。その際、引用発明のホース管6は支柱3の内部に設けられているものであるから、当該周知の事項を適用すれば、ホース管6は支柱3の内部において、閉鎖空間に連通接続されることとなることは、必然的に採用されるべき構成である。よって、引用発明に上記周知の事項を適用することにより、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者ならば容易に成し得たことである。

(3)相違点3
給水と排水とを同一の経路で行うことは、例えば特開2002-253054号公報,特開2004-24029号公報に記載されているように、本願出願前に周知の事項であるので、引用発明のホース管(6),ノズル(9),排水ホース(10)を、周知の事項の様な同一の経路に代えて、連通路の内部を通してタンクに還流可能に設けることは、当業者ならば容易に成し得たことである。

請求人は平成26年10月27日付け意見書で、
「しかしながら、これらの相違点に関する[判断(2)のア?ウ]では、これらの相違点のそれぞれについて単独に議論されており、本願発明においてこれらの相違点1?3を併せて適用することの困難さ、及びこれらの組合せによる本願発明の作用効果については考慮されていません。
これらの相違点を組み合せて本願発明に適用することによれば、余剰液体をタンクに還流させるための流路を別途設けることなく、余剰液体をタンク還流させて、植物の根腐れを防止できると共に、余剰液体が栽培容器の下位部に貯留されているため、使い残りの余剰液体が培地により汚染されずに、自重又はポンプによりタンクに戻され、効率よく使用することができます。
また、上述した作用効果は、請求項1に係る発明において、これらの相違点を同時に組み合わせて適用することによりはじめて奏する顕著な効果であり、これらのそれぞれから予測できるものではありません。
本願発明の技術的課題を解決するために、互いに関連性の低い技術的特徴を同時に組み合わせて本願発明を想到することは、提示された刊行物に示唆も教示もなく、当業者であっても決して容易なことではなく、本願の明細書から知り得た知識を前提にした事後的分析であるというほかありません。
従って、本願の請求項1に係る発明は、各引用文献の開示に基づいて容易に想到し得るものではなく、進歩性を具備するものと思料致します。また、請求項1を引用する請求項2、3に係る発明も、同様な理由で進歩性を具備するものと思料致します。」と主張している。
しかしながら、請求人が主張する効果については、引用発明及び各周知の事項が有するであろう個別の作用効果から予測できた範囲のものであって、、引用発明に各周知の事項を適用したことによって初めて生じた、当業者が予測し得なかった格別の相乗効果と認識できるものではない。
そして、引用発明に、上記栽培容器及び栽培養液の供給・排出路としての周知の事項を適用することにも格別の困難性も見いだせない。
したがって、上記請求人の主張を採用することはできない。

5.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願のその他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-18 
結審通知日 2015-01-20 
審決日 2015-02-06 
出願番号 特願2006-550782(P2006-550782)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村田 泰利坂田 誠  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 竹村 真一郎
住田 秀弘
発明の名称 植物栽培装置  
代理人 北村 修一郎  
復代理人 太田 隆司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ