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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1299374
審判番号 不服2013-10706  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-07 
確定日 2015-03-30 
事件の表示 特願2008-547775「クエン酸亜鉛剤及び/又はトコフェロール剤を含んでなる、改善された口腔用組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月 5日国際公開、WO2007/076444、平成21年 6月 4日国内公表、特表2009-521507〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は2006年12月21日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2005年12月21日 (US)米国)を国際出願日とする特許出願であって、本願の請求項1?22に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?22に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1及び9に係る発明(以下、「本願発明1」及び「本願発明9」という。)は以下のとおりである。

「 【請求項1】
クエン酸亜鉛剤;
クエン酸カリウム剤;
無水マレイン酸及びポリビニルメチルエーテルの共重合体;及び
ポリリン酸
を含んでなる、抗歯垢及び脱感作(desensitizing)性の口腔用組成物であって、
クエン酸亜鉛剤のクエン酸カリウム剤に対する比が1:1?1:5である、上記口腔用組成物。」

「 【請求項9】
クエン酸亜鉛剤;及び
クエン酸カリウム剤である、カリウム塩;
を含む口腔用組成物であって、
クエン酸亜鉛剤のクエン酸カリウム剤に対する比が1:1?1:5であり、
当該口腔組成物を口腔表面と接触させることを介する、歯の過敏性を有する口腔表面の治療に使用するための、
前記口腔用組成物。」

2.引用例の記載事項・引用発明
これに対し、原査定の拒絶の理由(平成24年9月12日付け拒絶理由通知)で引用された本願の優先日前に日本国内で頒布された刊行物である、
刊行物1:特開平5-97668号公報
刊行物2:特開昭63-233909号公報
には、以下の事項が記載されている。

刊行物1:
1A)「【請求項1】歯槽骨の吸収及び歯周靭帯の消失を予防または阻止するための医薬の製造への亜鉛イオン含有化合物の使用。
【請求項2】歯周炎を予防または軽減するための医薬の製造への亜鉛イオン含有化合物の使用。
【請求項3】亜鉛イオン含有化合物がクエン酸亜鉛である請求項1または2に記載の使用。
・・・
【請求項5】医薬が経口投与に適したものである請求項1から4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】医薬が練り歯磨きまたはうがい薬の形状である請求項5に記載の使用。」(請求項1?6)

1B)「【0002】歯周炎は歯肉及び顎に歯を固定する支持結合組織及び歯槽骨に影響する特定疾患を表す一般的な用語である。歯周炎により、結合組織が失われ、歯周ポケットが形成され、歯槽骨が消失し、歯がぐらぐらになり、最終的には歯を失うこともある。」(段落0002)

1C)「【0008】亜鉛イオン含有化合物はよく知られている抗菌剤であり、歯垢の成長を減らすまたは阻止するための経口用組成物に使用されている。これら化合物を、歯槽骨吸収または歯周炎の予防または阻止のために使用することは、本発明者の知る限り、従来技術で示唆されていない。
【0009】多くの亜鉛イオン含有化合物は抗菌活性も有しているため、これら化合物は例えば骨吸収及びプロスタグランジン形成を阻止することにより宿主の応答系を調整するだけでなく、微生物の攻撃を減らし、それによって歯周炎を予防し減少させる非常に望ましい複合二重効果を有している。」(段落0008?0009)

1D)「【0013】亜鉛化合物は、約0.05%?約10%を供給するために十分な量で、本発明組成物中に存在する。
【0014】やや可溶性の亜鉛化合物、例えばクエン酸亜鉛または酸化亜鉛は、約0.05%?約10%、好ましくは約0.2%?約1.5%の亜鉛イオンに相当する割合の範囲で存在しうるが、可溶性亜鉛化合物、例えば塩化亜鉛は通常より少ない割合、例えば約0.05%?約4.0%、好ましくは約0.1%?約1.0%の亜鉛イオンに相当する量で存在しうる。
【0015】本発明の亜鉛イオン含有化合物を含む医薬(組成物)は、歯周炎の軽減または予防のための医薬の投与に適した任意の形状で製造することができる。」(段落0013?0015)

1E)「【0016】医薬はさらに通常の成分、例えば澱分・・・を含んでいてもよい。歯磨き剤に処方するときには、このような処方は通常の歯磨き剤用成分を全て含んでいてもよい。従って、歯磨きは通常5-60重量%の粒状研磨剤、例えばシリカ・・・トリメタ燐酸塩、不溶性ヘキサメタ燐酸塩等を含んでよい。
【0017】さらに、歯磨き剤にはグリセロール・・・等の湿潤剤を含んでいてもよい。
【0018】表面活性剤、例えば陰イオン、非イオン、両性及び双イオン合成洗剤も含んでいてもよい。・・・
【0019】結合剤及び濃厚剤、例えば・・・ポリビニルメチルエーテルと無水マレイン酸のコポリマーも含んでいてもよい。香料、例えばペパーミント及びスペアミント油、並びに保存料、不透明化剤、着色料、pH調整剤、甘味料等も含んでいてもよい。
【0020】歯垢防止剤、例えばクロルヘキシジン・・・等も含むことができる。抗虫歯薬、例えばフッ化ナトリウム・・・も含みうる。ビタミン、例えばビタミンC、植物抽出物、カリウム塩、例えばクエン酸カリウム及び硝酸カリウムも含んでいてもよい。
【0021】抗菌剤、例えば四級アンモニウム化合物・・・も含みうる。
【0022】他の抗歯垢剤には、酵素、例えばデキストラナーゼ・・・を含む。歯垢生成細菌に対する治療薬・・・も使用できる。」(段落0016?0022)

刊行物2:
2A)「(1)カリウムイオンの水溶性源と2,4,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテルと慣用の歯みがき成分とを含む疼痛敏感な歯を除痛するための歯みがき組成物。
(2)カリウムイオンの源が硝酸カリウム、クエン酸カリウム、塩化カリウム及び重炭酸カリウムからなる群から選択されたカリウム塩である請求項1記載の歯みがき組成物。
・・・
(4)カリウムイオン源がクエン酸カリウムである請求項1又は2記載の歯みがき組成物。
(5)カリウムイオン源が歯みがきの約0.7?3重量%の量のカリウムを与える請求項1?4のいずれかに記載の歯みがき組成物。・・・」(特許請求の範囲)

2B)「歯垢は口腔疾患の主な原因である。プラーク酸は歯のエナメル質を侵し、虫歯を生じさせる。歯垢より生じた毒素のために歯肉が炎症を起し(歯肉炎)、時には歯肉の退縮や歯の喪失(歯周炎)が生ずる。歯から歯肉が退縮(recession)すると、根の象牙質が露出され、歯が触覚及び/又は熱的刺激に対して敏感となる。」(1頁右下欄11?17行)

2C)「カリウムイオンの好ましい源であるカリウム塩は硝酸カリウム、クエン酸カリウム、塩化カリウム及び重炭酸カリウムである。US-A-3,863,006には、歯の除痛剤(desensitising agent)として硝酸カリウムの使用が記載されている。欧州特許出願No.0,095,871には、疼痛敏感な歯に関連した疼痛を軽減するためにクエン酸カリウムが有効である旨が記載されている。塩化カリウム及び重炭酸カリウムの使用も国際特許出願WO 85/04098に記載されている。カリウムイオンを生ずる他の水溶性カリウム塩と同様に、これらのカリウム塩は露出した歯の象牙質に直接作用を及ぼす。」(2頁左上欄11行?右上欄5行)

刊行物1には、医薬がクエン酸亜鉛を含むこと、医薬が練り歯磨きの形状であることが記載されているから(摘示1A、1D)、刊行物1には、

「クエン酸亜鉛を含有する練り歯磨き」

の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認める。

3.本願発明9との対比・判断
刊行物1発明のクエン酸亜鉛は、本願発明9の「クエン酸亜鉛剤」に相当する。また、練り歯磨きは口腔用組成物であるから、刊行物1発明の「練り歯磨き」は、本願発明9の「口腔用組成物」に相当する。そうしてみると、本願発明9と刊行物1発明とは、

「クエン酸亜鉛剤を含む口腔用組成物」

である点で一致し、

<相違点1>
本願発明9がさらに、「クエン酸カリウム剤である、カリウム塩」を含むとしているに対し、刊行物1発明ではかかる特定がない点、

<相違点2>
本願発明9が、「クエン酸亜鉛剤のクエン酸カリウム剤に対する比が1:1?1:5」であるとしているのに対し、刊行物1発明ではかかる特定がない点、

<相違点3>
本願発明9が、口腔用組成物が「当該口腔組成物を口腔表面と接触させることを介する、歯の過敏性を有する口腔表面の治療に使用するための」ものであるとしているのに対し、刊行物1発明ではかかる特定がない点、
において相違する。

上記各相違点について検討する。
<相違点1>について
刊行物1には、歯磨き剤に処方するときには、通常の歯磨き剤用成分を全て含んでいてもよいこと、含んでいてもよい各種成分が記載され、具体的にクエン酸カリウム等のカリウム塩を含んでいてもよいことも記載されている(摘示1E)。
一方、刊行物2には、疼痛敏感な歯を除痛するための歯みがき組成物におけるカリウムイオン源としてクエン酸カリウムを配合することが記載されている(摘示2A)。また、同刊行物には、各種文献に各種カリウム塩が歯の除痛、疼痛敏感な歯に関連した疼痛軽減に用いられることが記載されている旨が記載されている(摘示2C)ことから、カリウムイオンが疼痛敏感な歯を除痛するのに有効であることは周知であるといえる。
ところで、刊行物1には、歯周炎により歯槽骨が消失し、最終的には歯を失うこともあること(摘示1B)、医薬(練り歯磨き)が、歯槽骨の吸収、歯周靱帯の消失の予防、阻止のためのものであること、歯周炎の予防、軽減のためのものであること(摘示1A)が記載されているところ、刊行物2には、歯垢により生じた毒素のために、時には歯肉の退縮や歯の喪失(歯周炎)が生じること、歯から歯肉が退縮すると根の象牙質が露出され、歯が触覚、熱的刺激に対して敏感になることが記載されている(摘示2B)。したがって、歯周炎の状態では、歯槽骨、歯周靱帯の消失等と共に歯肉の退縮によって歯が敏感になることがあるといえるから、刊行物1発明を歯周炎の予防、軽減に用いる際に、併せて歯が敏感になっている状態を予防、軽減することは当業者が容易に想到し得ることである。
そうしてみると、刊行物1発明の練り歯磨きにおいて、含んでいてもよいとされているクエン酸カリウムについて、刊行物2にクエン酸カリウムを疼痛敏感な歯を除痛する歯みがき組成物に配合することが記載されていること、カリウム塩が疼痛敏感な歯を除痛等することができることが周知であることを考慮して、クエン酸カリウム剤であるカリウム塩として配合することは当業者が容易に行うことである。

<相違点2>について
刊行物1に記載の亜鉛化合物、亜鉛イオンの配合量についての記載(摘示1D、亜鉛イオンとして0.05%?10%)から換算して、刊行物1には、クエン酸亜鉛を約0.15?29%配合することが、刊行物2に記載のカリウムについての配合量についての記載(摘示2A、カリウムイオンとして0.7?3重量%)から換算して、刊行物2には、クエン酸カリウムを約1.8?7.8重量%配合することが示されているといえるが、これらを併せて配合した場合の比は、クエン酸亜鉛:クエン酸カリウム=約16:1?1:52に相当するものであり、相違点2に係る比と重複するものである。また、通常、口腔用組成物における各成分の配合割合はその効果等を考慮して当業者が適宜設定し得る事項である。したがって、相違点2に係る比とすることは当業者が容易に行うことである。
なお、上記比に関する計算は全て重量を基準として行ったが、モルを基準に計算しても配合比は重複する。

<相違点3>について
刊行物1発明は練り歯磨きであるところ、練り歯磨きは口腔表面に接触させるものである。また、「<相違点1>について」で述べたとおり、クエン酸カリウム剤を配合することは当業者が容易に行うことであるところ、クエン酸カリウムを配合することで疼痛敏感な歯を除痛することができるから、歯の過敏性を有する口腔表面の治療をすることができるといえる。したがって、この相違点にかかる事項を採用することは当業者が容易に行うことである。

<本願発明9の効果について>
本願発明の詳細な説明には、クエン酸亜鉛剤及びカリウム塩を含んでなる口腔用組成物又はその成分について、渋みを抑える、歯垢又は歯石の形成、虫歯、口臭を抑える、歯又は象牙質の過敏性を抑える、抗菌効力に寄与する(【0006】、【0007】、【0022】?【0024】、【0028】?【0029】、【0068】等)等の定性的な記載があるが、本願明細書中には、本願発明9の特定の成分及びその比を採用することで、上記の各作用、効果を奏することを確認できる実験結果等の具体的な記載は何らなされていない。
一方、上記各作用、効果は、上記各成分について刊行物1(抗菌、歯垢)、刊行物2(過敏性)に記載された又は周知の作用、効果であるか、そこから導き出せる(例えば、虫歯は歯垢がその原因のひとつである(摘示2B)。)効果である(例えば、摘示1C、2C、特表2004-517833号公報(平成23年9月29日付け拒絶理由通知書に記載の刊行物3)、段落0003(口臭、渋み)、特開昭63-8324号公報(同刊行物4)、請求項3、1頁右下欄10?14、16?18行(口臭、渋み)、特表平8-505843号公報(同刊行物5)、5頁4行(歯石)、国際公開2005/009454号、4頁5?9行(抗菌)参照。)。
なお、発明の詳細な説明には、クエン酸亜鉛とクエン酸カリウムによりクエン酸アニオン濃度を一定にすることで抗菌効力は同等であり、渋みが抑えられる旨記載されており(段落【0029】)、これはクエン酸カリウムを配合しない場合と比較すると、クエン酸アニオン濃度を一定とするためにクエン酸亜鉛を減量する場合のことを意味すると解されるところ、亜鉛塩が渋みを有することは上述のように周知であり、クエン酸が抗菌作用を有することも周知である(例えば、国際公開2005/009454号、4頁5?9行参照)から、クエン酸による抗菌作用を一定とするために、クエン酸亜鉛を減量した場合(亜鉛による効果が減じることを理解した上で)に亜鉛による渋みが抑制されることは当業者が予測し得る事項である。
そうしてみると、本願発明9が予測し得ない顕著な効果を奏するということはできない。

4.付言
本願発明1についても進歩性を有するものではないと考えられるので、以下に付言する。

刊行物1発明のクエン酸亜鉛は、本願発明1の「クエン酸亜鉛剤」に相当する。また、練り歯磨きは口腔用組成物であるから、刊行物1発明の「練り歯磨き」は、本願発明1の「口腔用組成物」に相当する。そうしてみると、本願発明1と刊行物1発明とは、
「クエン酸亜鉛剤を含む口腔用組成物」
である点で一致し、

<相違点1>
本願発明1がさらに、「クエン酸カリウム剤」を含んでなるとしているに対し、刊行物1発明ではかかる特定がない点、

<相違点2>
本願発明1がさらに、「無水マレイン酸及びポリビニルメチルエーテルの共重合体;及びポリリン酸」を含んでなるとしているのに対し、刊行物1発明ではかかる特定がない点、

<相違点3>
本願発明1が口腔用組成物が「抗歯垢及び脱感作(desensitizing)性」であるとしているの対し、刊行物1発明ではかかる特定がない点、

<相違点4>
本願発明1が、「クエン酸亜鉛剤のクエン酸カリウム剤に対する比が1:1?1:5」であるとしているのに対し、刊行物1発明ではかかる特定がない点、
において相違する。

上記各相違点について検討する。
<相違点1>及び<相違点4>については、上記「3.対比・判断」の「<相違点1>について」及び「<相違点2>について」において検討したのと同様の理由により、当業者が容易に行うことである。

<相違点2>について
上記摘示1Eにあるとおり、刊行物1には、ポリビニルメチルエーテルと無水マレイン酸のコポリマー及びトリメタ燐酸塩、不溶性ヘキサメタ燐酸塩を含んでいてもよい旨が記載されており、これらはそれぞれ、本願発明1の「無水マレイン酸及びポリビニルメチルエーテルの共重合体」及び「ポリリン酸」に相当する。なお、本願発明1の「ポリリン酸」は塩を含むとはされていないが、明細書の段落【0031】、段落【0067】の表1には、塩の形態の化合物が記載されているから、塩の形態を含むと解した。
一方、原査定の拒絶の理由(平成24年9月12日付け拒絶理由通知)に引用された本願の優先日前に日本国内で頒布された刊行物である、

刊行物3:特表2004-517833号公報

には、以下の事項が記載されている。

3A)「【請求項1】
低収斂性を有する安定な亜鉛含有水性口腔用組成物であって、亜鉛塩、陰イオン性ポリカルボキシレートポリマー及びピロリン酸塩からビヒクル中で形成された錯体を含む口腔に許容される前記ビヒクルを含むことによってより少ない収斂性を前記組成物の使用者が経験する、前記組成物。
【請求項2】
前記亜鉛塩はクエン酸亜鉛である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ピロリン酸塩はピロリン酸四ナトリウムまたはピロリン酸四カリウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記陰イオン性ポリカルボキシレートポリマーはビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーである、請求項1に記載の組成物。」(請求項1?4)

3B)「口腔の悪臭を有益に低減するために亜鉛塩類を口腔歯科ケア製品中に取り入れることは、従来技術、例えば、米国特許第4,138,477号、同第5,000,944号において周知である。しかしながら、亜鉛塩類の収斂性が、口腔歯科ケア製品中に使用される際の主要な欠点であり、口中に不快な収斂味を生じる。・・・
米国特許第5,000,944号は、亜鉛塩をピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩及びこれらの組合せのようなポリリン酸塩溶液中に溶解させることで亜鉛塩とポリリン酸カリウムまたはポリリン酸ナトリウム塩とを反応させることによって形成される少なくとも約50%の水溶性を有する亜鉛/ポリリン酸塩錯体を必須の薬剤として含み収斂性が実質的に無い亜鉛含有抗歯石口腔用製品を開示している。」(段落0003?0005)

3C)「下文で証明するように、本口腔ケア製品中に亜鉛陰イオン性ポリカルボキシレートポリマーピロリン酸塩錯体が存在することは、実質的に低減された収斂性を有し、消費者が使用する際に改良されたおいしさを有する安定な製品を予想外に提供する。」(段落0008)

3D)「好ましいのは、無水マレイン酸またはマレイン酸と別の重合可能なエチレン性不飽和モノマーとの1:4?4:1コポリマー類であり、好ましくはメチルビニルエーテル/無水マレイン酸で分子量(M.W.)約30,000?約1,800,000、最も好ましくは約30,000?約700,000を有するものである。こうしたコポリマー類の例は、ガントレッツ(Gantrez)、例えば、・・・S-97医薬品等級(M.W.700,000)・・・という商品名でISPコーポレーション(ISPCorporation)から入手可能であり;ここで、好ましいコポリマーはS-97医薬品等級(M.W.700,000)である。」(段落0010)

3E)「

」(段落0023)

3F)「フレーバリストは、本歯磨き剤はわずかな収斂性を有すると評価した。
対照のために、実施例の歯磨き剤を製造して、クエン酸亜鉛を、1重量%のピロリン酸四ナトリウム及び7重量%のトリポリリン酸ナトリウムと一緒に歯磨き剤組成物中に取り入れ、陰イオン性ポリカルボキシレートポリマーであるガントレッツ S-97は歯磨き剤組成物中に含めなかった場合、組成物は低収斂性を有したが、プラスチック管中に室温で貯蔵すると、望ましくない結晶が歯磨き剤中に15日間以内に形成された。」(段落0025)

上記摘示3A?3Fよれば、刊行物3には、クエン酸亜鉛等の亜鉛塩を含有する口腔用組成物においては、不快な収斂味(渋み)が生じるが、これをピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩によって、又は、ピロリン酸塩及びメチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーによって抑制することができることが記載されている。
そうしてみると、ポリビニルメチルエーテルと無水マレイン酸のコポリマー及びポリ燐酸塩であるトリメタ燐酸塩、不溶性ヘキサメタ燐酸塩を含んでいてもよいとされ、亜鉛塩であるクエン酸亜鉛を含有する刊行物1に記載の練り歯磨きにおいて、クエン酸亜鉛による渋みを抑制するために刊行物3に記載のピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、すなわちポリリン酸塩(ポリリン酸)とメチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーを配合することは当業者が容易に行うことである。

<相違点3>について
上記摘示1Cにあるとおり、刊行物1には、亜鉛イオン含有化合物は歯垢の成長を減らす又は阻止することが記載され、摘示2A、2Cにあるとおり、刊行物2には、クエン酸カリウムが疼痛敏感な歯に関連した疼痛を軽減すること、すなわち脱感作することが記載されているから、刊行物1発明において、相違点3に係る事項を採用することは当業者が容易に行うことである。

そして、上記「3 <本願発明9の効果について>」で述べたと同様の理由により、本願発明1が予測し得ない顕著な効果を奏するものということもできない。

したがって、本願発明1は進歩性を有するものではない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明9は刊行物1、2記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の理由を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-06 
結審通知日 2014-11-07 
審決日 2014-11-18 
出願番号 特願2008-547775(P2008-547775)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馳平 裕美  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 冨永 保
小久保 勝伊
発明の名称 クエン酸亜鉛剤及び/又はトコフェロール剤を含んでなる、改善された口腔用組成物  
代理人 小野 新次郎  
代理人 山本 修  
代理人 小林 泰  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 泉谷 玲子  

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