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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1299377
審判番号 不服2013-21208  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-31 
確定日 2015-03-31 
事件の表示 特願2009- 70904「シングルポインティングデバイスによるマルチポイントジェスチャのシミュレーション」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 9月10日出願公開、特開2009-205685〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年2月26日(パリ条約による優先権主張2008年2月26日、米国)を出願日とする出願であって、平成23年8月25日付けで拒絶理由通知がなされ、平成24年2月29日付けで手続補正がなされ、平成24年7月23日付けで拒絶理由通知がなされ、平成25年6月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年10月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成25年10月31日付けの手続補正についての補正却下の決定
〔結論〕
平成25年10月31日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕
1.補正内容
平成25年10月31日付けの手続補正(以下、「本件補正」と呼ぶ。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1を、補正後の請求項1に変更する補正事項を含むものである。
そして、補正前の請求項1及び補正後の請求項1の各記載は、それぞれ、以下のとおりである。
なお、<補正後の請求項1>における下線は補正箇所を表している。
<補正前の請求項1>
「 【請求項1】
マルチポイントセンサパネル上のマルチポイント入力をシミュレートするためのシステムであって、
前記マルチポイントセンサパネルの表現を表示するためのディスプレイと、
シングルポインティングユーザ入力デバイスと、
前記シングルポインティングユーザ入力デバイスから入力を受け取り、所定の変換ルールに従って該入力をマルチポイントソフトウェアによる使用のためのシミュレートされたマルチポイント入力に変換するように構成されたデバイスシミュレータと、
を備えることを特徴とするシステム。 」
<補正後の請求項1>
「 【請求項1】
マルチポイントセンサパネル上のマルチポイント入力をシミュレートするためのシステムであって、
前記マルチポイントセンサパネルの表現を表示するためのディスプレイと、
シングルポインティングユーザ入力デバイスと、
前記シングルポインティングユーザ入力デバイスから入力を受け取り、所定の変換ルールに従って該入力をマルチポイントソフトウェアによる使用のためのシミュレートされたマルチポイント入力に変換するように構成されたデバイスシミュレータと、
を備え、
前記デバイスシミュレータは、1以上のマルチポイント入力を生成することを特徴とするシステム。 」

2.本件補正に対する判断
本件補正の内の上記補正事項は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」と呼ぶ。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下検討する。

2-1.本願補正発明
本願補正発明は、上記「1.」の<補正後の請求項1>の欄に転記したとおりのものである。

2-2.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、特開平5-342045号公報(以下、「引用例1」と呼ぶ。)には、次の記載がある。
「 【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】
【0001】この発明は、例えば、「ハンディターミナル」と呼ばれる携帯可能なコンピュータ用のアプリケーションプログラム開発に用いて好適なエミュレータに関する。
・・・(中略)・・・
【0010】
【発明が解決しようとする課題】さて、上述したプログラム開発手順においては、ハンディターミナル1上でバグが露見する度毎に、当該バグに対応するソースプログラム部分を修正し、これを再度実行ファイル化してハンディターミナル1にダウンロードしなければならない。このため、実機デバッグDG1には多大な工数が費やされ、結果的に開発コスト上昇を招致するという弊害がある。
【0011】そこで、こうした弊害を解決するには、上述したコーディング、コンパイル、リンクおよびデバッグからなる一連の作業を全て開発マシン上で行い、かつ、デバッグ作業時には、特に、開発マシン上でハンディターミナル1の動作状態を全て把握できる形態になることが要求される。これを換言すれば、開発マシン上でアプリケーションプログラムを実行し、ハンディターミナル1の動作をエミュレートできれば、上述した欠点が解消され、効率良いプログラム開発が可能になる訳である。
【0012】ところが、ハンディターミナル1と開発マシンとは、殆どの場合、ハードウェア環境が全く異なるため、ハンディターミナル1用に作成されたアプリケーションプログラムを開発マシン上で動作させることができない。特に、ハンディターミナル1においては、前述したように、タッチパネルを操作することで各種入力操作がなされるように構成されている。したがって、開発マシンとなるパーソナルコンピュータにおいて、タッチパネル入力を実現するためには、該コンピュータのディスプレイに専用のタッチパネルを新たに設けることが必要になる。
【0013】しかしながら、新たに専用のタッチパネルを購入するというのも極めて不経済である。また、通常のディスプレイにタッチパネルを装着すると、画面とタッチパネル面との間に隙間ができ、これにより視差が生じる。すなわち、画面に表示された領域と、これに対応するタチパネルのキー領域とがずれて見えてしまい、入力操作がし難くなる。加えて、パーソナルコンピュータ用のタッチパネルでは、実際のハンディターミナル1のように、細かいキー領域に分割することも期待できない。
【0014】結局、現状においては、開発マシンにタッチパネルを設けることなく、ハンディターミナル1のタッチパネル入力やその他の動作をエミュレートし、極めて効率良いプログラム開発環境を実現することが急務とされている。この発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、ハンディターミナル1のタッチパネル入力を開発マシン上で模倣できるエミュレータを提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】この発明は、互いにハードウェア構成が異なるコンピュータの内、いずれか一方のコンピュータ用に作成したプログラムを、他方のコンピュータ上で動作可能にするエミュレータにおいて、前記プログラムがコールする複数のルーチンから形成されるライブラリであって、前記プログラムと同一の引数で定義された各関数ルーチンが、それぞれ前記他方のコンピュータ側のハードウェア構成に対応した各機能を模倣する模倣手段を具備し、前記模倣手段は、前記プログラムで規定された前記一方のコンピュータ側の入力形態を、前記他方のコンピュータ側が備える入力手段を用いて模倣することを特徴としている。
【0016】
【作用】この発明によれば、模倣手段は、一方のコンピュータ用に作成したプログラムにおいて規定された入力形態を、他方のコンピュータが備える入力手段を用いて模倣する。この結果、互いにハードウェア構成が異なるコンピュータ間において、一方のコンピュータ用に作成されたプログラムを他方のコンピュータ上で動作可能とし、一方のコンピュータ側でなされるタッチパネル入力操作を、他方のコンピュータのマウス入力で模倣する。
【0017】
【実施例】以下、図面を参照してこの発明の実施例について説明する。図1はこの発明の一実施例を適用したプログラム開発手順の概要を示す図である。この図において、図9に示す各部と共通する部分には、同一の符号を付し、その説明を省略する。図1に示す手順が図9に示した従来例と異なる点は、ターミナル専用関数ライブラリTL(図9参照)を後述するエミュレータEMに置き換え、これにより、開発マシン(パーソナルコンピュータ)上でハンディターミナル1用に作成されたアプリケーションプログラムのデバッグDG2を行うようにした点にある。すなわち、この実施例が意図するところは、エミュレータEMを用いたことにより、従来必要とされていた実行ファイルEfのダウンロードDLと、これに応じてなされるハンディターミナル1上の実機デバッグDG1とを省略し、かつ、開発マシン上でハンディターミナル1のタッチパネル入力操作を模倣するようにした点にある。
【0018】次に、図1のプログラム開発手順を実現するエミュレータEMの機能概要について説明する。まず、エミュレータEMは、ハンディターミナル1のハードウェア環境で動作するよう定義された各種関数を、開発マシン(例えば、パーソナルコンピュータ)のハードウェア環境で動作するように定義し直したプログラム群から構成されている。
【0019】エミュレータEMの機能は、図2に示すように、ターミナル専用関数ライブラリTL(図9参照)と同一である。つまり、このエミュレータEMでは、ターミナル専用関数ライブラリTLと同様の引数で各関数の外部仕様を規定し、かつ、各関数内部は、開発マシン(パーソナルコンピュータ)上でハンディターミナル1の動作をエミュレートするよう定義し直している。
・・・中略・・・
【0026】こうしてパーソナルコンピュータ上でハンディターミナル1の初期状態がエミュレートされると、例えば、図4に示すように、ハンディターミナル1の表示画面TDに対応した画面がパーソナルコンピュータのディスプレイDSPに表示される。ここで、同図(ロ)は、実際のハンディターミナル1に電源が投入された時に表示される表示画面の一例を示す図である。一方、同図(イ)は、パーソナルコンピュータに表示されるエミュレート画面の一例である。同図(イ)に示すように、ディスプレイDSPには、表示エリアE1,E2,E3が表示され、この内、表示エリアE1にはハンディターミナル1の表示画面TDと同一の内容が表示される。表示エリアE1では、後述するマウス入力処理に基づき、タッチパネル入力操作がエミュレートされる。また、表示エリアE2には、該エリアE1に対応したタッチパネル状態が表示され、さらに、表示エリアE3にはハンディターミナル1の動作状態が表示される。
【0027】次いで、このような初期設定がなされると、パーソナルコンピュータの処理はステップS2に進む。ステップS2では、与えられたイベントに応じてアプリケーションプログラムが各関数を実行する。このステップS2においては、後述するように、ハンディターミナル1のタッチパネル入力をマウス入力で置き換えるキー入力制御機能f3が動作しており、これによりマウスカーソルを移動させるマウス入力処理が行われる。
・・・中略・・・
【0029】マウス入力処理動作
次に、図5?図7を参照し、上記ステップS2でなされるマウス入力処理について説明する。まず、上述したステップS2において、キー入力制御機能f3が実行されると、図5に示すマウス入力ルーチンが起動する。これにより、パーソナルコンピュータの処理がステップSa1に進む。ステップSa1では、マウス入力、すなわち、マウスがクリックされたか否かを判断する。ここで、マウス入力が無い場合には、判断結果が「NO」となり、このルーチンを完了する。一方、マウス入力がなされた場合には、判断結果が「YES」となり、次のステップSa2に処理が進む。ステップSa2では、クリックされたマウス座標が「X0<MX<X0+X」、かつ、「Y0<MY<Y0+Y」であるか否かを判断する。
【0030】ここで、図7を参照し、上記マウス座標の定義について説明する。このマウス座標は、パーソナルコンピュータのディスプレイDSPの表示ドットで定義されるものであって、該ディスプレイDSPの上部左端を座標原点(0,0)、上述した表示エリアE1の上部左端をエリア座標(X0,Y0)としている。表示エリアE1は、原点(X0,Y0)からX方向(水平方向)へXドット分、該原点(X0,Y0)からY方向(垂直方向)へYドット分で構成された表示領域となる。このような表示領域において、X方向はM分割され、Y方向はN分割されている。これらM,Nは、キー分割数に対応し、これら分割領域は、実際の「タッチパネル」に合せたキー領域として種々定義されるようになっている。なお、(MX,MY)は、マウス入力がなされたクリック座標を表わしている。
【0031】したがって、上記ステップSa2では、クリック座標(MX,MY)が表示エリアE1の内部にあるか否かを判断するものである。ここで、該エリアE1の外部でマウス入力された時、つまり、タッチパネルのキー領域以外がクリックされた時には、ここでの判断結果が「NO」となり、このルーチンを終了する。これに対し、該エリアE1内でクリックされ、タッチパネルのキー領域に相当する位置が操作された場合には、判断結果が「YES」となり、次のステップSa3に進む。ステップSa3では、クリック座標(MX,MY)がタッチパネルのどのキー領域に対応するのかを算出する。すなわち、ステップSa3に記載の式に従って、キーテーブルの読み出しアドレスTを算出する。
【0032】キーテーブルとは、実際のタッチキー分割領域と、表示エリアE1上のマウス入力領域との対応関係を表わしたテーブルである。このキーテーブルは、予めパーソナルコンピュータの内部メモリにキーテーブルファイルとして登録される。例えば、図6に示す表示例の場合、表示エリアE1には、ハンディターミナル1のタッチキー分割領域に対応させたマウス入力領域R1?R7のキーデータがキーテーブルに登録される。いま、仮に、図7に示すように、マウス入力領域R4にマウスカーソルMCが置かれ、この位置でクリックされると、該領域R4に対応させたキーデータを読み出すためのアドレスTが算出される。
【0033】次いで、ステップSa4では、この算出されたアドレスのキーデータ[T]が「0」であるか否かを判断する。ここで、該キーデータ[T]が「0」である場合には、キーテーブルにデータが設定されていない(キー入力無視)として判断結果が「NO」となり、このルーチンを終了する。一方、「0」でない場合には、キーテーブルにデータが設定されているので、判断結果が「YES」となり、次のステップSa5に進む。ステップSa5では、アドレスTに従って、上述したキーテーブルからキーコードデータを読み出し、これをキーバッファにセットしてこのルーチンを終了する。この結果、パーソナルコンピュータは、キーバッファにセットされたキーデータに応じた処理を実行する。
【0034】図6に示す一例では、ハンディターミナル1のタッチキー分割領域に対応させたマウス入力領域R1?R7が表示エリアE1に設けられており、これら領域R1?R7にマウスカーソルMCを指示してクリックすることで、実際のタッチパネル入力をエミュレートしている。すなわち、マウス入力領域R1?R4のいずれかをクリックすることで処理選択がなされ、マウス入力領域R5?R7では画面選択と終了指示とが行われる。
【0035】なお、表示エリアE2には、上記マウス入力領域に対応するタッチキー分割状態が表示されている。この場合、タッチパネルを「3行12列」に分割しており、この内、タッチキー分割領域KR1?KR4をマウス入力領域R1?R4に対応させ、タッチキー分割領域KR5?KR7をマウス入力領域R5?R7に対応させている。そして、各タッチキー分割領域KR1?KR7には、各々割り当てられたキーコードが16進数で表示される。すなわち、タッチキー分割領域KR1?KR4に「41」?「44」が、タッチキー分割領域KR5?KR7に「61」?「63」が表示される。
【0036】このように、パーソナルコンピュータ上において、キー入力制御機能f3が実行されると、表示エリアE1にはハンディターミナル1のタッチキー分割領域に対応させたマウス入力領域が設定され、このマウス入力領域をクリックすることで、タッチパネル入力操作がエミュレートされる。なお、表示エリアE2には、マウス入力領域に対応させたタッチキー分割状態が表示されると共に、各タッチキー領域に割り当てられたキーコードデータが表示される。この結果、従来、直接的に動作状態を検証できなかったタッチパネル分割状態が一目瞭然になる。しかも、この場合、パーソナルコンピュータ用のタッチパネルを設けることなく、実際のタッチパネル入力をマウス入力操作でエミュレートするから、視差も無い極めて操作性の良い入力作業が実現される訳である。」
ここで、上記記載事項を引用例1の関連図面と技術常識に照らせば、以下のことがいえる。
ア.引用例1の段落【0016】、【0017】等の記載から明らかなように、引用例1でいう「開発マシン」は、「ハンディターミナル1のタッチパネル入力操作」をマウス入力で模倣することができるものであり、「タッチパネル入力操作をマウス入力で模倣するためのコンピュータ」ともいい得るものである。
イ.引用例1の段落【0026】及び図4等の記載から明らかなように、上記「開発マシン」は、ハンディターミナル1の表示画面TDに対応した画面が表示されるディスプレイDSPを有しており、該ディスプレイDSPは、「タッチパネルの表現を表示するためのディスプレイDSP」ともいい得るものである。
ウ.引用例1の段落【0015】、【0016】、【0029】?【0036】及び図5?7の記載等から明らかなように、上記「開発マシン」は、「マウス」と、「マウスによるクリック座標を受け取り、該クリック座標を図5のSa3に記載の式に従って、タッチパネルのキー領域を表すアドレスTに変換するように構成された模倣手段」といい得る手段を有している。
また、そこでいう「変換」は、結果として上記アドレスTを「生成」するものであるから、上記「模倣手段」は、「1以上のタッチパネルのキー領域を表すアドレスTを生成」するものともいえる。

以上を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1記載発明」と呼ぶ。)が記載されているといえる。
「 タッチパネル入力操作をマウス入力で模倣するためのコンピュータであって、
タッチパネルの表現を表示するためのディスプレイDSPと、
マウスと、
マウスによるクリック座標を受け取り、該クリック座標を所定の式に従ってタッチパネルのキー領域を表すアドレスTに変換するように構成された模倣手段と、
を備え、
前記模倣手段は、1以上のタッチパネルのキー領域を表すアドレスTを生成する、コンピュータ。」
(2)原査定の拒絶の理由に引用された、国際公開第2006/020305号
(以下、「引用例2」と呼ぶ。)には、次の記載がある。
「The computer system 50 also includes an input device 70 that is operatively coupled to the processor 56. The input device 70 is configured to transfer data from the outside world into the computer system 50. The input device 70 may for example be used to perform tracking and to make selections with respect to the GUI 69 on the display 68. The input device 70 may also be used to issue commands in the computer system 50. The input device 70 may include a touch sensing device configured to receive input from a user's touch and to send this information to the processor 56. By way of example, the touch-sensing device may correspond to a touchpad or a touch screen. In many cases, the touch-sensing device recognizes touches, as well as the position and magnitude of touches on a touch sensitive surface. The touch sensing means reports the touches to the processor 56 and the processor 56 interprets the touches in accordance with its programming. For example, the processor 56 may initiate a task in accordance with a particular touch. A dedicated processor can be used to process touches locally and reduce demand for the main processor of the computer system. The touch sensing device may be based on sensing technologies including but not limited to capacitive sensing, resistive sensing, surface acoustic wave sensing, pressure sensing, optical sensing, and/or the like. Furthermore, the touch sensing means may be based on single point sensing or multipoint sensing. Single point sensing is capable of only distinguishing a single touch, while multipoint sensing is capable of distinguishing multiple touches that occur at the same time.
The input device 70 may be a touch screen that is positioned over or in front of the display 68. The touch screen 70 may be integrated with the display device 68 or it may be a separate component. The touch screen 70 has several advantages over other input technologies such as touchpads, mice, etc. For one, the touch screen 70 is positioned in front of the display 68 and therefore the user can manipulate the GUI 69 directly. For example, the user can simply place their finger over an object to be controlled. In touch pads, there is no one-to-one relationship such as this. With touchpads, the touchpad is placed away from the display typically in a different plane. For example, the display is typically located in a vertical plane and the touchpad is typically located in a horizontal plane. This makes its use less intuitive, and therefore more difficult when compared to touch screens. In addition to being a touch screen, the input device 70 can be a multipoint input device. Multipoint input devices have advantages over conventional singlepoint devices in that they can distinguish more than one object (finger). Singlepoint devices are simply incapable of distinguishing multiple objects. By way of example, a multipoint touch screen, which can be used herein, is shown and described in greater detail in copending and commonly assigned U.S. Patent Application No.: 10/840,862, which is hereby incorporated herein by reference.」 (第9頁第20行?第10頁第24行)
(引用例2に対応する日本出願の内容を表していると認められる特表2008-508601号公報による訳)
「 また、コンピュータ・システム50は、プロセッサ56に結合された入力デバイス70も含む。入力デバイス70は、外部世界からコンピュータ・システム50にデータを転送するように構成される。入力デバイス70は、例えば、ディスプレイ68上のGUI69に関連してトラッキングを実行し、選択を行うのに使用される。また、入力デバイス70は、コンピュータ・システム50においてコマンドを発行するのに使用されることも可能である。入力デバイス70は、ユーザのタッチからの入力を受け取り、その情報をプロセッサ56に送るように構成されたタッチ・センシティブ・デバイスを含む。例として、タッチ・センシティブ・デバイスは、タッチ・パッドまたはタッチ・スクリーンに対応する。多くのケースで、タッチ・センシティブ・デバイスは、タッチを認識するとともに、タッチ・センシティブ面上のタッチの位置と大きさも認識する。タッチ感知手段は、タッチをプロセッサ56に報告し、プロセッサ56は、そのタッチをプロセッサ56のプログラミングに従って解釈する。例えば、プロセッサ56は、特定のタッチに従ってタスクを開始することができる。タッチをローカルで処理し、コンピュータ・システムのメイン・プロセッサに対する要求を減らすのに専用プロセッサを使用してもよい。タッチ・センシティブ・デバイスは、静電容量感知、抵抗感知、表面弾性波感知、圧力感知、光学感知、および/または類似の技術を含むが、以上には限定されない感知技術に基づくことが可能である。さらに、タッチ感知手段は、単一ポイント感知またはマルチポイント感知に基づくことが可能である。単一ポイント感知は、単一のタッチを識別することだけができるのに対して、マルチポイント感知は、同時に生じた複数のタッチを識別することができる。
入力デバイス70は、ディスプレイ68の上または前に配置されたタッチ・スクリーンであることが可能である。タッチ・スクリーン70は、ディスプレイ・デバイス68に組み込まれても、別個のコンポーネントであってもよい。タッチ・スクリーン70は、タッチ・パッド、マウス、その他などの他の入力技術に優る、いくつかの利点を有する。1つには、タッチ・スクリーン70は、ディスプレイ68の前に配置され、したがって、ユーザは、GUI69を直接に操作することができる。例えば、ユーザは、制御されるべきオブジェクトの上に、ユーザの指を単に置くだけである。タッチ・パッドにおいて、このような1対1の関係は全く存在しない。タッチ・パッドでは、タッチ・パッドは、ディスプレイから離れて、通常、異なる平面に配置される。例えば、ディスプレイは、通常、垂直面に配置され、タッチ・パッドは、通常、水平面に配置される。これにより、タッチ・パッドの使用は、それほど直観的でなくなり、したがって、タッチ・スクリーンと比べると、より困難になる。タッチ・スクリーンであることに加え、入力デバイス70は、マルチポイント入力デバイスであることが可能である。マルチポイント入力デバイスは、複数のオブジェクト(指)を識別することができるという点で、従来の単一ポイント・デバイスに優る利点を有する。単一ポイント・デバイスは、複数のオブジェクトを識別することが全くできない。例として、本明細書で使用されることが可能なマルチポイント・タッチ・スクリーンは、参照により本明細書に組み込まれている、同時係属の、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第10/840,862号においてより詳細に示され、説明されている。」

2-3.対比
本願補正発明と引用例1記載発明とを対比すると、両者の間には次の対応関係があるといえる。
(1)引用例1記載発明の「タッチパネル」は「センサパネル」の一種であり、引用例1記載発明における「タッチパネル入力操作をマウス入力で模倣すること」は、「センサパネル上の入力をシミュレートすること」ともいうことができる。また、引用例1記載発明の「コンピュータ」は、「システム」の一種ということができる。
したがって、引用例1記載発明と本願補正発明とは、「センサパネル上の入力をシミュレートするためのシステム」である点で共通する。
(2)上述したように引用例1記載発明の「タッチパネル」は「センサパネル」の一種であるから、引用例1記載発明の「ディスプレイDSP」と本願補正発明の「ディスプレイ」とは「センサパネルの表現を表示するためのディスプレイ」である点で共通する。
(3)引用例1記載発明の「マウス」は、本願補正発明の「シングルポインティングユーザ入力デバイス」に相当し、引用例1記載発明において「マウスによるクリック座標」を受け取ることは、本願補正発明において「シングルポインティングユーザ入力デバイスから入力」を受け取ることに相当する。
(4)引用例1記載発明の「タッチパネルのキー領域を表すアドレスT」は、「センサパネルのソフトウェアによる使用のための入力」の一種ということができ、それは、模倣手段による変換によって模倣されたものとして生成されるものであるから、「シミュレートされた入力」ということができるものでもある。
また、引用例1記載発明の「模倣手段」は、その機能からみて「デバイスシミュレータ」とも呼び得るものである。
さらに、引用例1記載発明の「所定の式」は「所定の変換ルール」を式の形で記述したものといえるから、引用例1記載発明の「変換」が「所定の式」に従うことは、「所定の変換ルール」に従うことにほかならない。
したがって、引用例1記載発明の「模倣手段」と本願補正発明の「シミュレータ」とは、「シングルポインティングデバイスから入力を受け取り、所定の変換ルールに従って該入力をセンサパネルのソフトウェアによる使用のためのシミュレートされた入力に変換するように構成されたシミュレータ」である点で共通する。
(5)上記(4)で検討した内容を踏まえると、引用例1記載発明の模倣手段が、「1以上のタッチパネルのキー領域を表すアドレスT」を生成することは、本願補正発明のデバイスシミュレータが、「1以上のマルチポイント入力」を生成することと、「1以上のシミュレートされた入力」を生成することである点で共通する。

したがって、本願補正発明と引用文献1記載発明の間には次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「 センサパネル上の入力をシミュレートするためのシステムであって、
前記センサパネルの表現を表示するためのディスプレイと、
シングルポインティングユーザ入力デバイスと、
前記シングルポインティングユーザ入力デバイスから入力を受け取り、所定の変換ルールに従って該入力をセンサパネルのソフトウェアによる使用のためのシミュレートされた入力に変換するように構成されたデバイスシミュレータと、
を備え、
前記デバイスシミュレータは、1以上のシミュレートされた入力を生成することを特徴とするシステム。 」
(相違点)
本願補正発明においては、システムによるシミュレートの対象が「マルチポイントセンサパネル上のマルチポイント入力」とされており、それに伴い、ディスプレイに表示される「センサパネルの表現」が「マルチポイントセンサパネルの表現」とされ、変換によって生成される「シミュレートされた入力」が「マルチポイントソフトウェアによる使用のためのシミュレートされたマルチポイント入力」とされているのに対し、引用例1記載発明におては、システムによるシミュレートの対象が「マルチポイントセンサパネル上のマルチポイント入力」とはされておらず、ディスプレイに表示される「センサパネルの表現」は「マルチポイントセンサパネルの表現」とされておらず、変換によって生成される「シミュレートされた入力」も「マルチポイントソフトウェアによる使用のためのシミュレートされたマルチポイント入力」とはされていない点。
2-4.判断
(1)(相違点)について
以下の事情を勘案すると、引用例1記載発明において、上記相違点に係る本願補正発明の構成を採用すること、換言すれば、引用例1記載発明のシステム(コンピュータ)によるシミュレート(模倣)の対象を「マルチポイントセンサパネル上のマルチポイント入力」とし、ディスプレイに表示される「センサパネルの表現」を「マルチポイントセンサパネルの表現」とし、変換によって生成される「シミュレートされた入力」を「マルチポイントソフトウェアによる使用のためのシミュレートされたマルチポイント入力」とすることは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
ア.引用例1の段落【0001】、【0010】の記載と、引用例1記載発明の構成に照らせば、引用例1記載発明が、シングルポイント入力のタッチパネルに限らず、タッチパネルを具備するコンピュータ全般の入力のシミュレートにおいて有用な発明であることは明らかである。
イ.一方、タッチパネルを具備するコンピュータとして、「マルチポイント入力」を識別する「マルチポイントセンサパネル」を具備するものは、引用例2の第9頁第20行?第10頁第24行にも示されるように、「multipoint input device」を具備するコンピュータ・システム50等として本願優先日前に当業者に周知であるし、引用例1記載発明のシステム(コンピュータ)によるシミュレート(模倣)の対象を、そのような周知の「マルチポイントセンサパネルを具備するコンピュータ」の入力とすることができない理由はない。
ウ.してみれば、引用例1記載発明のシステム(コンピュータ)によるシミュレート(模倣)の対象を、上記周知の「マルチポイントセンサパネルを具備するコンピュータ」の入力とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
エ.そして、引用例1記載発明のシステム(コンピュータ)によるシミュレート(模倣)の対象を、上記周知の「マルチポイントセンサパネル」を具備するコンピュータの入力とする場合に、ディスプレイに表示される「センサパネルの表現」が「マルチポイントセンサパネルの表現」とされ、変換によって生成される「シミュレートされた入力」が「マルチポイントソフトウェアによる使用のためのシミュレートされたマルチポイント入力」とされるべきことは、当然のことである。
オ.以上のことは、引用例1記載発明において、上記相違点に係る本願補正発明の構成を採用することが当業者にとって容易であったことを意味する。

なお、「引用例1記載発明のシステム(コンピュータ)によるシミュレート(模倣)の対象を、周知の『マルチポイントセンサパネルを具備するコンピュータ』の入力とするための具体的手立て(マウス入力をマルチポイント入力に変換するための具体的手立て)が従来は知られていなかったところ、本願補正発明はその具体的手立てを初めて示すものである。」というような事情が認められる場合には、その具体的手立てを示した点に本願補正発明の進歩性を認める余地があるが、以下の点を考慮すると、そのような事情は認めることができない。
(ア)周知のMicrosoft Windows(登録商標) Operating Systemが搭載されたパソコンにおいて、「Ctrlキーを押下しながら複数の箇所をマウスでクリックないしドラッグすることで、マウス操作によって複数箇所の選択を行う」ということがごく普通に行われているという事実に照らせば、マウス入力をマルチポイント入力に変換するための手立て自体は、従来から当業者によく知られていたこと、あるいはそうでないとしても当業者が容易に想到し得たことといえる。
(イ)本願補正発明は、上記手立てに関しては、「シングルポインティングユーザ入力デバイスから入力を受け取り、所定の変換ルールに従って該入力をマルチポイントソフトウェアによる使用のためのシミュレートされたマルチポイント入力に変換する」と規定するのみで、上記具体的手立てを示すものではない。
(2)本願補正発明の効果について
本願補正発明の構成によってもたらされる効果は、引用例1に記載された事項及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲のものであり、本願補正発明の進歩性を肯定する根拠となり得るようなものではない。

(3)まとめ
よって、本願補正発明は、引用例1記載発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、平成24年2月29日付けの手続補正書の請求項1に記載されたとおりのものであり、上記「第2」の「1.」の<補正前の請求項1>の欄に転記したとおりのものである。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、およびその記載事項は、上記「第2」の「2.」の「2-2.」の欄に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から、限定事項の一部を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに特定の限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記「第2」の「2.」の欄に記載したとおり、引用例1記載発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1記載発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-31 
結審通知日 2014-11-04 
審決日 2014-11-18 
出願番号 特願2009-70904(P2009-70904)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 慎一  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 白石 圭吾
千葉 輝久
発明の名称 シングルポインティングデバイスによるマルチポイントジェスチャのシミュレーション  
代理人 越柴 絵里  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 大塚 文昭  
代理人 西島 孝喜  

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