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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1299701
審判番号 不服2013-19266  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-03 
確定日 2015-04-15 
事件の表示 特願2011- 30186「無線メッシュネットワーク中で経路に基づくトラフィックストリームアドミッション制御を実施する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 5月26日出願公開、特開2011-103698〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成18年3月9日(優先権主張 2005年(平成17年)3月11日 米国、2006年(平成18年)3月8日 米国)を国際出願日とする国際出願である特願2008-500947号の一部を平成23年2月15日に特願2011-30186号として新たな特許出願としたものであって、平成24年2月23日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年6月28日に手続補正がなされ、同年10月17日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに対して平成25年3月22日に手続補正がなされ、同年5月28日付けで、前記平成25年3月22日付けの手続補正が却下されるとともに、拒絶査定がされた。
これに対し、平成25年10月3日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成25年10月3日付けの手続補正についての補正却下の決定

[結論]
平成25年10月3日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正内容
平成25年10月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成24年6月28日付け提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1:
「 【請求項1】
無線通信の方法において、
第1の無線送受信ユニット(WTRU)が、第2のWTRUから要求を受信するステップと、
前記第1のWTRUが、前記第2のWTRUから前記要求を受け入れることが、動作パラメータに閾値を越えさせることになるかどうかを決定するステップと、
前記第1のWTRUが、前記要求を受け入れることが、動作パラメータに前記閾値を越えさせることになると決定する条件で、前記第1のWTRUが、前記要求が拒絶されることを示している応答を前記第2のWTRUへ送信するステップと、
前記第1のWTRUが、前記要求を受け入れることが、動作パラメータに前記閾値を越えさせることにならないと決定する条件で、前記第1のWTRUが、前記要求が受け入れられることを示している応答を前記第2のWTRUへ送信するステップと
を備えることを特徴とする方法。」
を、
「 【請求項1】
無線通信の方法において、
第1の無線送受信ユニット(WTRU)が、第2のWTRUから要求を受信するステップと、
前記第1のWTRUが、前記第2のWTRUから前記要求を受け入れることが、動作パラメータに閾値を越えさせることになるかどうかを決定するステップと、
前記第1のWTRUが、前記要求を受け入れることが、前記動作パラメータに前記閾値を越えさせることになると決定する条件で、前記第1のWTRUが、前記要求が受け入れられないことを示している応答であって、前記動作パラメータに前記閾値を越えさせることなしに、前記第1のWTRUによって受け入れられることができる提案を含んでいる応答を前記第2のWTRUへ送信するステップと、
前記第1のWTRUが、前記要求を受け入れることが、前記動作パラメータに前記閾値を越えさせることにならないと決定する条件で、前記第1のWTRUが、前記要求が受け入れられることを示している応答を前記第2のWTRUへ送信するステップと
を備えることを特徴とする方法。」
と補正することを含むものである(下線は当審で付加したものであり、補正箇所を示す。)。

すなわち、本件補正は、請求項1において、
a.「動作パラメータに前記閾値を越えさせることになると決定する条件で」の「動作パラメータ」を「前記動作パラメータ」と補正し、
b.「前記要求が拒絶されることを示している応答」を「前記要求が受け入れられないことを示している応答であって、前記動作パラメータに前記閾値を越えさせることなしに、前記第1のWTRUによって受け入れられることができる提案を含んでいる応答」と補正し、
c.「動作パラメータに前記閾値を越えさせることにならないと決定する条件で」の「動作パラメータ」を「前記動作パラメータ」と補正するものである。

2.補正の目的
上記補正事項a.及びc.は、誤記の訂正を目的とするものに該当する。

上記補正事項b.は、「要求が拒絶されることを示している応答」を、実質的に同じ意味である「要求が受け入れられないことを示している応答」に言い換えるとともに、当該応答が、「動作パラメータに閾値を越えさせることなしに、第1のWTRUによって受け入れられることができる提案」を含むものであるという限定を付すものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「特許法」という。)第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.引用例及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2003/094404号(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、当審訳は、対応する公表特許公報の特表2005-524336号公報を参考にした。(下線は当審で付加したものである。)

(a)16頁20行?17頁21行
「 Another embodiment of the present invention provides traffic admission control for multihop routes in the mobile ad hoc network 22 while maintaining the quality of service needed, and will be described with reference to FIGs. 8-11. Such an admission control method will adaptively allow a node to keep some resources for its own traffic, while sharing fairly in the forwarding of other's traffic. Again, the ad-hoc network is made up of a plurality of wireless mobile nodes 30 and a plurality of wireless communication links 32 connecting the plurality of nodes together.
The method for controlling traffic admission in the mobile ad hoc network 22 begins (block 200) and includes a source node transmitting quality-of-service (QoS) route requests RREQQ to discover traffic routing based upon a QoS parameter (block 202). At block 208, each node 30 in the network 22 calculates a node QoS tag value to make traffic admission control decisions. The node QoS tag value is a function of at least one node specific QoS metric. The QoS parameter may be based upon, for example, bandwidth, error rate, end-to-end delay, end-to-end delay variation, hop count, expected path durability, and/or priority, while the node specific QoS metric may include one or more of available power, available bandwidth by the node, recent error rate, recent delay, available bandwidth by other nodes within a range, and node queue size, for example. The QoS tag value may be a weighted sum of each term, or a vector with each term as an element.
Each node 30 determines admission based upon the calculated QoS tag value and the QoS parameter of QoS route requests RREQQ, and may reply to the source node, regarding whether traffic will be admitted in response to the QoS route requests (block 214). Furthermore, each node 30 may calculate route and connectivity information associated with the node (block 210), and transmit the route and connectivity information and the QoS tag value to other nodes for traffic route selection (block 212).」
(当審訳: 本発明のその他の実施例は、移動体アドホック・ネットワーク22において、必要なサービス品質を維持しつつ、複数ホップのルートに対するトラヒック許可制御を提供する。このことが図8-11を参照して説明される。そのような許可制御方法により、ノードがそれ自体のトラヒック用のある程度のリソースを保持する一方で、他のトラヒックを転送する場合に適正に共有することが適応的に可能になる。この場合も同様に、アドホック・ネットワークは、複数の無線移動体ノード30と、複数のノードを相互に接続する複数の無線通信リンク32とで構成される。
移動体アドホック・ネットワーク22でトラヒック許可を制御する方法はブロック200で開始し、QoSパラメータに基づいてトラヒックのルーティングを発見するために、ソースノードがサービス品質(QoS)ルート要求RREQQを送信することを有する(ブロック202)。ブロック208において、ネットワーク22の各ノード30は、トラヒック許可制御の決定を行うためのノードのQoSタグ値を計算する。ノードのQoSタグ値は、少なくとも1つのノード特有のQoS測定量の関数である。QoSパラメータは、例えば、帯域、誤り率、エンドツーエンドの遅延、エンドツーエンドの遅延の変化、ホップ数、期待パス耐久性、及び/又は優先度に基づいてもよく、ノード特有のQoS測定量は、例えば、利用可能な電力、ノードによる利用可能な帯域、最近の誤り率、最近の遅延、範囲内の他のノードによる利用可能な帯域、及びノードのキューの大きさのうちの1つ以上を有してもよい。QoSタグ値は、各項目の加重和又は各項目を要素として備えたベクトルでもよい。
各ノード30は、計算されたQoSタグ値とQoSルート要求RREQQのQoSパラメータに基づいて許可を決定し、QoSルート要求に応じてトラヒックが許可されるか否かに関してソースノードに応答してもよい(ブロック214)。更に、各ノード30は、ノードに関連するルート及び接続性の情報を計算し(ブロック210)、トラヒックのルート選択のためにルート及び接続性の情報とQoSタグ値を他のノードに送信してもよい(ブロック212)。)
(公表特許公報の段落【0040】?【0042】を参考。)

(b)18頁11行?19行
「 Replying to QoS route requests (block 214) may comprise indicating what traffic routing the node can support based upon the node QoS tag value, when the node cannot support the QoS parameter of the route request. For example, if node 4 cannot commit to the request, it may issue a reply that describes the most that it can support. Accordingly, the source can decide whether the level is good enough or whether to scale back the request and issue a relaxed QoS request RREQQ.」
(当審訳: QoSルート要求に応答すること(ブロック214)は、ノードがルート要求のQoSパラメータに対応できない時に、ノードのQoSタグ値に基づいてどのくらいのトラヒックのルーティングにノードが対応可能であるかを示すことを有してもよい。例えば、ノード4は要求を確約することができない場合、対応可能な最善のものを記載した応答を発出してもよい。従って、ソースは、レベルが十分であるか否か、又は要求を小さくするべきか否かを決定し、緩和したQoS要求RREQQを発出することができる。)
(公表特許公報の段落【0045】を参考。)

(c)19頁3行?21行
「 A system aspect of this embodiment of the present invention is directed to the mobile ad hoc network 22 including the plurality of mobile nodes 30, and the plurality of wireless communication links 32 connecting the plurality of mobile nodes together. As described earlier with reference to FIGs. 6 and 7, each mobile node has a router 40 that includes the communications device 42 to wirelessly and unidirectionally or bi-directionally communicate with other via the wireless communication links, and a controller 44 to route communications via the communications device. The controller 44 includes a route discovery unit 50 to transmit quality-of-service (QoS) route requests to other nodes to discover routing to a destination node based upon at least one QoS parameter. Here, a QoS tag calculation unit 60 calculates the node QoS tag value to make traffic admission control decisions. A traffic admission controller 62 determines whether to admit traffic in response to QoS route requests based upon the calculated QoS tag value and the QoS parameter of QoS route requests.」
(当審訳: 本発明のこの実施例のシステム形態は、複数の移動体ノード30と、複数の移動体ノードを相互に接続する複数の無線通信リンク32とを有する移動体アドホック・ネットワーク22を対象とする。図6と7を参照して前述した通り、各移動体ノードは、無線通信リンクを介して相互に無線で一方向又は双方向に通信する通信装置42と、通信装置を介して通信をルーティングするコントローラ44とを有するルータ40を有する。コントローラ44は、サービス品質(QoS)ルート要求を他のノードに送信し、少なくとも1つのQoSパラメータに基づいて宛先ノードへのルーティングを発見するルート発見ユニット50を有する。ここで、QoSタグ計算ユニット60は、ノードのQoSタグ値を計算し、トラヒック許可制御の決定を行う。トラヒック許可コントローラ62は、計算されたQoSタグ値とQoSルート要求のQoSパラメータに基づいて、QoSルート要求に応じてトラヒックを許可するか否かを決定する。)
(公表特許公報の段落【0047】を参考。)

上記摘記事項(a)?(c)を技術常識に照らせば、次のことがいえる。

摘記事項(c)によれば、移動体アドホック・ネットワーク22は、複数の移動体ノード30と、複数の移動体ノードを相互に接続する複数の無線通信リンク32とで構成されるから、摘記事項(a)?(c)に記載された「ソースノード」、「各ノード」、「ノード」は、いずれも「移動体ノード」であることは明らかである。

したがって、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

各移動体ノードは、無線通信リンクを介して相互に無線で双方向に通信する通信装置と、通信装置を介して通信をルーティングするコントローラとを有するルータを有し、
移動体アドホック・ネットワークでトラヒック許可を制御する方法は、
QoSパラメータに基づいてトラヒックのルーティングを発見するために、ソースノードである移動体ノードがサービス品質(QoS)ルート要求を送信し、
各移動体ノードは、トラヒック許可制御の決定を行うための移動体ノードのQoSタグ値を計算し、
各移動体ノードは、計算されたQoSタグ値とQoSルート要求のQoSパラメータに基づいて許可を決定し、QoSルート要求に応じてトラヒックが許可されるか否かに関してソースノードである移動体ノードに応答し、
QoSルート要求に応答することは、移動体ノードがルート要求のQoSパラメータに対応できない時に、移動体ノードのQoSタグ値に基づいてどのくらいのトラヒックのルーティングに移動体ノードが対応可能であるかを示し、
移動体ノードの前記QoSタグ値は、少なくとも1つの移動体ノード特有のQoS測定量の関数であって、移動体ノード特有のQoS測定量は、例えば、利用可能な電力、移動体ノードによる利用可能な帯域、最近の誤り率、最近の遅延、範囲内の他の移動体ノードによる利用可能な帯域、及び移動体ノードのキューの大きさのうちの1つ以上を有し、
前記QoSパラメータは、例えば、帯域、誤り率、エンドツーエンドの遅延、エンドツーエンドの遅延の変化、ホップ数、期待パス耐久性、及び/又は優先度に基づく、
方法。

4.本願補正発明と引用発明の一致点・相違点
本願補正発明と引用発明を比較すると、次のことがいえる。

引用発明の移動体ノードは、無線で双方向に通信する通信装置を有するものであるから、本願補正発明の「無線送受信ユニット(WTRU)」に相当する。

引用発明の各移動体ノードは、QoSルート要求のQoSパラメータに基づいてトラヒックの許可の決定を行っており、ソースノードである移動体ノードから送信されたQoSルート要求を受信していることは明らかである。
したがって、上記各移動体ノードは、本願補正発明の「第1の無線送受信ユニット(WTRU)」に相当し、上記ソースノードである移動体ノードは、本願補正発明の「第2のWTRU」に相当し、引用発明と本願補正発明とは、「第1の無線送受信ユニット(WTRU)が、第2のWTRUから要求を受信する」という点で一致している。

引用発明の各移動体ノードは、QoSルート要求に応じてトラヒックが許可されるか否かに関してソースノードである移動体ノードに応答しており、トラヒックを許可する場合に、トラヒックが許可されることを示す応答をソースノードである移動体ノードに送信し、トラヒックを許可しない場合に、トラヒックが許可されないことを示す応答をソースノードである移動体ノードに送信していることは明らかである。
そして、QoSルート要求に応じてトラヒックが許可されるとは、当該要求が受け入れられることであり、QoSルート要求に応じてトラヒックが許可されないとは、当該要求が受け入れられないことであるから、引用発明と本願補正発明とは、「第1のWTRUが、前記要求が受け入れられることを示している応答を第2のWTRUへ送信する」という点で一致し、また、「第1のWTRUが、前記要求が受け入れられないことを示している応答を第2のWTRUへ送信する」という点で一致している。

引用発明において、各移動体ノードは、QoSルート要求のQoSパラメータに対応できない場合に、どのくらいのトラヒックのルーティングに該移動体ノードが対応可能であるかを示す応答を送信しており、該移動体ノードが、QoSルート要求のQoSパラメータに対応できない場合、上記QoSルート要求は受け入れられない(トラヒックは許可されない)から、上記応答は、上記QoSルート要求が受け入れられないことを示す応答であることは明らかである。
また、上記「どのくらいのトラヒックのルーティングに該移動体ノードが対応可能であるか」は、「該移動体ノードが対応可能なQoS」であるから、どのくらいのトラヒックのルーティングに移動体ノードが対応可能であるかを示していることは、該移動体ノードが対応可能なQoSを提案しているといえる。
したがって、引用発明と本願補正発明とは、「第1のWTRUが、要求が受け入れられないことを示している応答」が、「前記第1のWTRUによって受け入れられることができる提案を含んでいる」という点で一致している。

引用発明では、各移動体ノードは、QoSタグ値とQoSルート要求のQoSパラメータに基づいて、トラヒックを許可するかどうかを決定しており、具体的には、QoSタグ値に基づいて移動体ノードが上記QoSパラメータに対応可能かを決定している。
上記QoSタグ値は、移動体ノードによる利用可能な帯域といった移動体ノード特有のQoS測定量の関数であって、移動体ノードの動作に関連したパラメータといえるから、本願補正発明の「動作パラメータ」に相当する。
また、QoSタグ値に基づいて移動体ノードがQoSパラメータに対応可能であると決定することは、上記QoSタグ値が、要求されたQoSパラメータに移動体ノードが対応可能であることを示しているということであり、これは、QoSルート要求を受け入れるために満たすべきQoSタグ値に関する条件ということができる。
一方、本願補正発明では、第1のWTRUは、「第2のWTRUから要求を受け入れることが、動作パラメータに閾値を越えさせることにならない」と決定する条件で、要求が受け入れられることを示している応答を送信しているから、「第2のWTRUから要求を受け入れることが、動作パラメータに閾値を越えさせることにならない」ことは、要求を受け入れるために満たすべき「動作パラメータに関する条件」ということができる。
したがって、引用発明と本願補正発明とは、「第1のWTRUが、動作パラメータに関する条件を満たすかどうかを決定する」という点で一致し、要求が受け入れられないことを示している応答の送信を、「第1のWTRUが、動作パラメータに関する条件を満たさないと決定する条件で」行うという点で一致し、要求が受け入れられることを示している応答の送信を、「第1のWTRUが、動作パラメータに関する条件を満たすと決定する条件で」行うという点で一致し、要求が受け入れられないことを示している応答に含まれる提案は、「動作パラメータに関する条件を満たす」ものであるという点で一致している。

引用発明において、ソースノードである移動体ノードと各移動体ノードは、QoSルート要求及びその応答の送受信を、移動体アドホック・ネットワーク上で無線通信によって行っているから、引用発明のトラフィック許可を制御する方法は、「無線通信の方法」といえる。

よって、本願補正発明と引用発明1の一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「 無線通信の方法において、
第1の無線送受信ユニット(WTRU)が、第2のWTRUから要求を受信するステップと、
前記第1のWTRUが、動作パラメータに関する条件を満たすかどうかを決定するステップと、
前記第1のWTRUが、動作パラメータに関する条件を満たさないと決定する条件で、前記第1のWTRUが、前記要求が受け入れられないことを示している応答であって、動作パラメータに関する条件を満たし、前記第1のWTRUによって受け入れられることができる提案を含んでいる応答を前記第2のWTRUへ送信するステップと、
前記第1のWTRUが、動作パラメータに関する条件を満たすと決定する条件で、前記第1のWTRUが、前記要求が受け入れられることを示している応答を前記第2のWTRUへ送信するステップと
を備えることを特徴とする方法。」である点。

[相違点]
要求を受け入れるために満たすべき「動作パラメータに関する条件」が、本願補正発明は、「第2のWTRUから要求を受け入れることが、動作パラメータに閾値を越えさせることにならない」という条件であるのに対し、引用発明は、QoSタグ値(動作パラメータ)が、QoSパラメータにノードが対応可能であることを示す、ということを開示するに留まる点。

5.相違点についての検討
無線通信分野において、移動体ノードが利用可能な帯域等に制限があることは技術常識であり、引用発明において、移動体ノードが、QoSルート要求(のQoSパラメータ)を受け入れると、上記制限を越えてしまう場合、当該QoSリソース要求を受け入れることができないことは明らかである。
このことは、引用発明において、上記QoSタグ値(動作パラメータ)が、QoSルート要求を受け入れた場合に、所定の制限(閾値)を越えないことを、QoSルート要求を受け入れるための条件とすること、すなわち、上記相違点に係る構成とすることが、当業者が適宜設計し得たことを意味する。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明

平成25年10月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年6月28日付けで提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものである。


第4 当審の判断

1.引用例及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及び引用発明は、前記「第2 平成25年10月3日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.引用例及び引用発明」に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、前記「第2 平成25年10月3日付けの手続補正についての補正却下の決定」で検討した本願補正発明から、付された限定を省いたものである。

そうすると、本願発明を特定する事項をすべてを含み、さらに、他の構成要件を付したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成25年10月3日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「4.本願補正発明と引用発明の一致点・相違点」及び「5.相違点についての検討」に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第5 むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-05 
結審通知日 2014-11-11 
審決日 2014-12-01 
出願番号 特願2011-30186(P2011-30186)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 紀之▲高▼橋 真之  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 寺谷 大亮
吉田 隆之
発明の名称 無線メッシュネットワーク中で経路に基づくトラフィックストリームアドミッション制御を実施する方法および装置  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
復代理人 濱中 淳宏  
復代理人 中西 英一  

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