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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1299719
審判番号 不服2014-1635  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-29 
確定日 2015-04-15 
事件の表示 特願2011-511516「内燃エンジンからの排気ガスの後処理のための濾材」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月10日国際公開、WO2009/148236、平成23年 7月28日国内公表、特表2011-522156〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2009年5月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年6月2日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成22年11月25日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、同日に同法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲及び要約書の翻訳文が提出され、平成24年12月27日付けで拒絶理由が通知され、平成25年4月4日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月30日付けで拒絶査定がされ、平成26年1月29日に拒絶査定に対する審判請求がされると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。

2 本件補正について
(1)本件補正の内容
平成26年1月29日付けの手続補正書による手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成25年4月4日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の以下のアに示す請求項1ないし10を、イに示す請求項1ないし8に補正するものである。

ア 本件補正前の請求項1ないし10
「【請求項1】
内燃エンジンからの排気ガスの後処理のための多層濾材において、開口細孔材料と、1つの側でシールされている入口チャンネルと、正反対の側でシールされている出口チャンネルとで形成されてなり、それによって後処理されるべき排気ガスが前記入口チャンネルに流入し、開口細孔金属材料で形成された分離壁を通って隣接して配置された前記出口チャンネルに流入し、前記多層濾材から前記出口チャンネルを通って流出するように形成されてなる多層濾材であって、
前記入口および出口チャンネル(2、3)の内部の自由断面が、前記入口および出口チャンネル(2、3)へのまたはからの流入および流出の方向に変化し、前記入口および出口チャンネル(2、3)を相互に分離する前記分離壁(4)の壁の厚みが、排気ガスが流れて通る領域において一定に維持されてなり、
前記多層濾材が、相互に一体的に連結され、かつ排気筒を形成する板状濾材から形成されてなり、前記入口および出口チャンネル(2、3)ならびに分離壁(4)が、前記板状濾材の中に構成された開口の手段によって構成されてなる、多層濾材。
【請求項2】
前記入口および出口チャンネル(2、3)の自由断面が、円形、正方形、長方形、または多角形の幾何学的形状または円形の環の部分の形に構成されてなることを特徴とする、請求項1に記載の多層濾材。
【請求項3】
前記入口および出口チャンネル(2、3)が、切頂円錐またはピラミッドの形状に構成されてなることを特徴とする、請求項1または2に記載の多層濾材。
【請求項4】
前記板状濾材が、相互に焼結されてなることを特徴とする、請求項1?3のいずれか一項に記載の多層濾材。
【請求項5】
ガス気密板状濾材が、両末端側に配置され、そこで入口チャンネル(2)用の濾材開口が、1つの末端側上に構成されてなり、出口チャンネル(3)用の開口が、他の末端側上に構成されてなることを特徴とする、請求項1?4のいずれか一項に記載の多層濾材。
【請求項6】
前記分離壁(4)の表面が、触媒的に有効なコーティングおよび/または触媒的に有効な材料を備えてなることを特徴とする、請求項1?5のいずれか一項に記載の多層濾材。
【請求項7】
相互に連結された2つの領域(A、B)を有する多層濾材(1)が形成され、前記領域が、入口チャンネル(2)、中間チャンネル(5)、および出口チャンネル(3)が存在する一連の配置を形成し、入口チャンネル(2)を通って入る排気ガスが、分離壁(4)を通って中間チャンネル(5)に流入し、更なる分離壁(4)を通って出口チャンネル(3)に流入することを特徴とする、請求項1?6のいずれか一項に記載の多層濾材。
【請求項8】
排気ガスが流れて通る領域の分離壁(4)が、一定の空隙率、細孔径、および密度を有することを特徴とする、請求項1?7のいずれか一項に記載の多層濾材。
【請求項9】
排気ガスが流れて通る多層濾材(1)の領域が、ガス気密ハウジングによって囲まれ、より少ない空隙率がその外側領域に存在するかまたは細孔がこの領域で閉じていることを特徴とする、請求項1?8のいずれか一項に記載の多層濾材。
【請求項10】
前記多層濾材(1)が、開口細孔金属材料で形成されてなることを特徴とする、請求項1?9のいずれか一項に記載の多層濾材。」

イ 本件補正後の請求項1ないし8
「【請求項1】
内燃エンジンからの排気ガスの後処理のための多層濾材において、開口細孔材料と、1つの側でシールされている入口チャンネルと、正反対の側でシールされている出口チャンネルとで形成されてなり、それによって後処理されるべき排気ガスが前記入口チャンネルに流入し、開口細孔金属材料で形成された分離壁を通って隣接して配置された前記出口チャンネルに流入し、前記多層濾材から前記出口チャンネルを通って流出するように形成されてなる多層濾材であって、
相互に連結された2つの領域(A、B)を有する多層濾材(1)が形成され、前記領域が、入口チャンネル(2)、中間チャンネル(5)、および出口チャンネル(3)が存在する一連の配置を形成し、入口チャンネル(2)を通って入る排気ガスが、分離壁(4)を通って中間チャンネル(5)に流入し、更なる分離壁(4)を通って出口チャンネル(3)に流入し、
前記入口および出口チャンネル(2、3)の内部の自由断面が、前記入口および出口チャンネル(2、3)へのまたはからの流入および流出の方向に変化し、前記入口および出口チャンネル(2、3)を相互に分離する前記分離壁(4)の壁の厚みが、排気ガスが流れて通る領域において一定に維持されてなり、
前記多層濾材が、相互に一体的に連結され、かつ排気筒を形成する板状濾材から形成されてなり、前記入口および出口チャンネル(2、3)ならびに分離壁(4)が、前記板状濾材の中に構成された開口の手段によって構成されてなる、多層濾材。
【請求項2】
前記入口および出口チャンネル(2、3)の自由断面が、円形、正方形、長方形、または多角形の幾何学的形状または円形の環の部分の形に構成されてなることを特徴とする、請求項1に記載の多層濾材。
【請求項3】
前記入口および出口チャンネル(2、3)が、切頂円錐またはピラミッドの形状に構成されてなることを特徴とする、請求項1または2に記載の多層濾材。
【請求項4】
前記板状濾材が、相互に焼結されてなることを特徴とする、請求項1?3のいずれか一項に記載の多層濾材。
【請求項5】
ガス気密板状濾材が、両末端側に配置され、そこで入口チャンネル(2)用の濾材開口が、1つの末端側上に構成されてなり、出口チャンネル(3)用の開口が、他の末端側上に構成されてなることを特徴とする、請求項1?4のいずれか一項に記載の多層濾材。
【請求項6】
前記分離壁(4)の表面が、触媒的に有効なコーティングおよび/または触媒的に有効な材料を備えてなることを特徴とする、請求項1?5のいずれか一項に記載の多層濾材。
【請求項7】
排気ガスが流れて通る領域の分離壁(4)が、一定の空隙率、細孔径、および密度を有することを特徴とする、請求項1?6のいずれか一項に記載の多層濾材。
【請求項8】
前記多層濾材(1)が、開口細孔金属材料で形成されてなることを特徴とする、請求項1?7のいずれか一項に記載の多層濾材。」
なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。

(2)本件補正の目的について
本件補正は、本件補正前の請求項1を引用する請求項7を本件補正後の請求項1とし、本件補正後の請求項2ないし6を引用する請求項7に係る発明を本件補正後の請求項2ないし6とし、本件補正前の請求項7を引用する請求項8を本件補正後の請求項7とし、本件補正前の請求項7及び8を引用する請求項10を本件補正後の請求項8とするとともに、本件補正前の請求項1ないし6及び9を削除したものであるから、特許法第17条の2第5項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものと認められる。

3 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る発明は、平成26年1月29日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲、平成25年4月4日に提出された手続補正書により補正された図面、及び、平成22年11月25日に提出された明細書の翻訳文の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
内燃エンジンからの排気ガスの後処理のための多層濾材において、開口細孔材料と、1つの側でシールされている入口チャンネルと、正反対の側でシールされている出口チャンネルとで形成されてなり、それによって後処理されるべき排気ガスが前記入口チャンネルに流入し、開口細孔金属材料で形成された分離壁を通って隣接して配置された前記出口チャンネルに流入し、前記多層濾材から前記出口チャンネルを通って流出するように形成されてなる多層濾材であって、
相互に連結された2つの領域(A、B)を有する多層濾材(1)が形成され、前記領域が、入口チャンネル(2)、中間チャンネル(5)、および出口チャンネル(3)が存在する一連の配置を形成し、入口チャンネル(2)を通って入る排気ガスが、分離壁(4)を通って中間チャンネル(5)に流入し、更なる分離壁(4)を通って出口チャンネル(3)に流入し、
前記入口および出口チャンネル(2、3)の内部の自由断面が、前記入口および出口チャンネル(2、3)へのまたはからの流入および流出の方向に変化し、前記入口および出口チャンネル(2、3)を相互に分離する前記分離壁(4)の壁の厚みが、排気ガスが流れて通る領域において一定に維持されてなり、
前記多層濾材が、相互に一体的に連結され、かつ排気筒を形成する板状濾材から形成されてなり、前記入口および出口チャンネル(2、3)ならびに分離壁(4)が、前記板状濾材の中に構成された開口の手段によって構成されてなる、多層濾材。」

4 引用文献
4-1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2007-253144号公報(以下、「引用文献1」という。)には、例えば、以下の記載がある。(なお、下線は、理解の一助のために、当審で付したものである。)

ア 「【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中のパティキュレート等を捕集、除去するハニカム構造体及び排ガス浄化装置に関する。」(段落【0001】)

イ 「【0020】
上記ハニカム構造体の具体的な形態は、大きく下記の3つの形態に分けることができる。
即ち、1つ目は、セルが重なり合うように、上記長手方向に複数の積層部材が積層された形態(以下、このような形態のハニカム構造体を積層型ハニカム構造体ともいう)であり、2つ目は、複数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された多孔質セラミック部材からなるものであって、複数の多孔質セラミック部材がシール材層(接着材層)を介して複数個結束されて構成された形態(以下、このような形態のハニカム構造体を集合型ハニカム構造体ともいう)であり、3つ目は、複数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された多孔質セラミック部材からなるものであって、全体が一体として形成された多孔質セラミック部材から構成された形態(以下、このような形態のハニカム構造体を一体型ハニカム構造体ともいう)である。
本明細書において、単に「ハニカム構造体」と記載されている場合、当該ハニカム構造体は上記3形態のうちのいずれのハニカム構造体であってもよい。
【0021】
また、本発明のハニカム構造体の見掛け密度とは、上記ハニカム構造体が積層型ハニカム構造体である場合には、積層部材を積層した状態の見掛け密度をいい、集合型ハニカム構造体の場合には、ハニカム構造体を構成する多孔質セラミック部材のみの見掛け密度(シール材層の見掛け密度は考慮しない)をいい、一体型ハニカム構造体の場合は、全体が一体として焼結形成された多孔質セラミック部材の見掛け密度をいう。
【0022】
本発明のハニカム構造体は、複数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されている。
上記ハニカム構造体の形状は、後に図示する形状は円柱状であるが、円柱状に限定されるわけではなく、例えば、楕円柱状や角柱状等であってもよく、その他の任意形状であってもよい。
特に、エンジン直下にハニカム構造体が配置される場合には、スペースが非常に限られ、フィルタの形状も、複雑な形状にする必要が生じることがあるからである。
なお、複雑な形状のハニカム構造体を製造する場合には、上記積層型ハニカム構造体であることが望ましい。所望の構造、形状に加工するのに適しているからである。
【0023】
また、上記積層型ハニカム構造体において、隣接するセル間の距離(セル壁の厚さ)は、0.2mm以上であることが望ましい。0.2mm未満では、強度が低下することがあるからである。
なお、本明細書において、セル壁は、隣接するセルを隔てるセル壁及び外周部分の両方を意味するものとする。
【0024】
また、上記隣接するセル間の距離(セル壁の厚さ)の望ましい上限は、5.0mmである。
セル壁の厚さが5.0mmを超えると、開口率及び/又は濾過面積が小さくなりすぎ、圧力損失が上昇することがある。また、アッシュが抜けにくくなる。また、パティキュレートを深層濾過する範囲をスス捕集に対する壁の有効領域とすると有効領域の占める比率が低下することとなる。」(段落【0020】ないし【0024】)

ウ 「【0033】
次に、上記積層型ハニカム構造体について、図面を参照しながら説明する。
図1(a)は、積層型ハニカム構造体の一例を模式的に示した斜視図であり、(b)は、そのA-A線断面図である。
【0034】
積層型ハニカム構造体10は、いずれか一端が目封じされた多数のセル11が壁部(セル壁)13を隔てて長手方向に並設された円柱形状のものである。
即ち、図1(b)に示したように、セル11は、排ガスの入口側又は出口側に相当する端部のいずれかが目封じされ、一のセル11に流入した排ガスは、必ずセル11を隔てるセル壁13を通過した後、他のセル11から流出し、セル壁13がフィルタとして機能するようになっている。
【0035】
そして、積層型ハニカム構造体10は、厚さが0.1?20mm程度の積層部材10a及び端部用積層部材10bを積層して形成した積層体であり、長手方向にセル11が重なり合うように、積層部材10aが積層されている。
ここで、セルが重なり合うように積層部材が積層されているとは、隣り合う積層部材に形成されたセル同士が連通するように積層されていることをいう。
また、上記積層体の両端には、端部用積層部材10bとして、セルが市松模様に形成された板状体が積層されている。
【0036】
また、上記積層型ハニカム構造体には、酸化物触媒が担持されているが、ここで、酸化物触媒は、全ての積層部材に担持されていてもよいし、一部の積層部材にのみ担持されていてもよい。
また、上記積層型ハニカム構造体における見掛け密度は、望ましい下限が0.05g/cm^(3)であり、望ましい上限が0.5g/cm^(3)である。
0.05g/cm^(3)未満では、強度が不充分で破壊されることがある。
また、0.5g/cm^(3)以下では、ハニカム構造体が、より触媒活性温度になりやすく、連続的にパティキュレートを燃焼させるのにより適している。
【0037】
各積層部材同士は、無機の接着材等により接着されていてもよいし、単に物理的に積層されているのみであってもよいが、単に物理的に積層されているのみであることが望ましい。単に物理的に積層されているのみであると、接着材等からなる接合部により排ガスの流れが阻害されて圧力損失が高くなってしまうことがないからである。なお、各積層部材同士が単に物理的に積層されているのみである場合、積層体とするには、後述する金属ケーシング内で積層し、圧力を加える。
【0038】
積層型ハニカム構造体では、長手方向に積層部材が積層されてなる構造を有するので、再生処理等の際にフィルタ全体に大きな温度差が生じても、それぞれの積層部材に生じる温度差は小さく、それによる熱応力も小さいため、損傷が非常に発生しにくい。このため、積層型ハニカム構造体は、セル壁で深層濾過させることを目的として高気孔率にしやすい。また、積層型ハニカム構造体は、上述したように、パティキュレートの深層濾過を容易に達成することができるため、セル壁内部に担持された触媒とパティキュレートが接触し易くなり、よりパティキュレートが燃焼しやすくなる。
また、特にフィルタを複雑な形状とした場合には、フィルタは熱応力に対して非常に弱くなるが、積層型ハニカム構造体は、複雑な形状とした場合であっても、損傷が非常に発生しにくい。
【0039】
積層型ハニカム構造体を構成する積層部材は、それぞれ主に無機繊維からなる積層部材(以下、無機繊維積層部材ともいう)か、又は、主に金属からなる積層部材(以下、金属積層部材ともいう)であることが望ましい。耐熱性に優れるとともに、高気孔率とした場合のハニカム構造体としての強度に優れるからである。
そして、各積層部材を積層する際には、無機繊維積層部材のみを積層してもよいし、金属積層部材のみを積層してもよい。
さらに、無機繊維積層部材と金属積層部材とを組み合わせて積層してもよい。両者を組み合わせて積層する場合、その積層順序は特に限定されない。
【0040】
上記金属積層部材の材料としては特に限定されず、例えば、クロム系ステンレス、クロムニッケル系ステンレス等が挙げられる。
また、上記金属積層部材は、上述したような金属からなる金属繊維が3次元に入り組んで構成された構造体、上述したような金属からなり、造孔材によって貫通気孔が形成された構造体、上述したような金属からなる金属粉末を気孔が残るように焼結させた構造体等であることが望ましい。」(段落【0033】ないし【0040】)

エ 「【0045】
また、積層された無機繊維積層部材や金属積層部材の両端には、さらに、セルが市松模様に形成された端部用積層部材が積層されていることが望ましい。
上記端部用積層部材を積層することにより、端部のセルを封止材で封止することを行わなくても、セルのいずれか一方の端部は、封止されることとなる。
【0046】
上記端部用積層部材は、上記無機繊維積層部材や金属積層部材と同様の材質からなり、セルが市松模様に形成されたものであってもよいし、セルが市松模様に形成された緻密質の板状体であってもよい。
なお、本明細書において、緻密質とは、積層部材よりも気孔率が小さいものをいい、その具体的な材料としては、例えば、金属やセラミック等が挙げられる。
上記緻密質の板状体を用いた場合には、上記端部用積層部材を薄くすることができる。
また、上記端部用積層部材としては、緻密質の金属からなるものが望ましい。
更に、積層体の両端に積層される端部用積層部材としては、上述の材質からなるもののうち、1種類のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0047】
上記積層部材と上記端部用積層部材との組み合わせとしては、(1)上記積層部材として無機繊維積層部材を用い、上記端部用積層部材として、セルが市松模様に形成された無機繊維積層部材、金属積層部材又は緻密質の板状体を用いる組み合わせ、(2)上記積層部材として金属積層部材を用い、上記端部用積層部材として、セルが市松模様に形成された無機繊維積層部材、金属積層部材又は緻密質の板状体を用いる組み合わせが挙げられる。
また、上記積層部材として金属積層部材を用いた場合には、上記端部用積層部材として、セルが市松模様に形成された金属積層部材又は緻密質の板状体を用いることが望ましい。
また、上記端部用積層部材として、緻密質の板状体を用いた場合には、板状体を薄くしても、封止部からススが漏れることを防止することができる。
【0048】
また、上記積層部材として、金属積層部材のみを用いた場合や、積層された無機繊維積層部材や金属積層部材の両端に、さらにセルが市松模様に形成された金属積層部材や緻密質の金属からなる板状体を積層した場合には、長時間使用しても風食されにくい。
また、金属ケーシングとの熱膨張差に起因して、高温時(使用時)に金属ケーシングとの隙間及び各積層部材間の隙間が生じることを防止することができ、その結果、排ガス中のパティキュレートが漏れ出して、パティキュレートの捕集効率が低下してしまうことを防止することができると考えられる。」(段落【0045】ないし【0048】)

オ 「【0049】
また、上記積層型ハニカム構造体では、セルの寸法が異なる積層部材を作製し、これらを積層していけば、セルの内表面に凹凸が形成され、濾過面積が大きくなり、パティキュレートを捕集した際の圧力損失をさらに低くすることが可能となると考えられる。また、凹凸により排ガスの流れを乱流にすることができるため、フィルタ内の温度差を小さくし、熱応力による損傷を効果的に防止することができると考えられる。
上記セルの平面視形状については特に四角形に限定されず、例えば、三角形、六角形、八角形、十二角形、円形、楕円形等の任意の形状であってよい。」(段落【0049】)

カ 「【0051】
次に、積層型ハニカム構造体の製造方法について、図2を参照しながら説明する。
(1)金属積層部材の製造方法
まず、厚さが0.1?20mm程度の主に金属からなる多孔質金属板をレーザー加工又は打ち抜き加工することで、ほぼ全面にセルを互いにほぼ等間隔で形成し、図2(a)に示すようなセルが高密度で形成された積層部材10aを製造する。
また、積層型ハニカム構造体の端面近傍に位置し、セルの封止部を構成する積層部材を製造する場合には、レーザー加工の際に、セルを市松模様に形成し、セルが低密度で形成された積層部材(端部用積層部材)10bを製造する。
そして、このセルが低密度で形成された積層部材を1枚?数枚端部に用いれば、端部の所定のセルを塞ぐという工程を行うことなく、フィルタとして機能する積層型ハニカム構造体を得ることができる。
【0052】
次に、金属積層部材に酸化物触媒を担持させる。
酸化物触媒を担持する方法としては、例えば、CZ(nCeO_(2)・mZrO_(2))10g、エタノール1l(リットル)、クエン酸5g及びpH調整剤を適量含む溶液に、金属積層部材を5分間程度浸漬し、その後、500℃程度で焼成処理を施す方法等が挙げられる。
なお、この場合、上記した浸漬、焼成工程を繰り返すことにより、担持させる触媒量を調整することができる。
なお、上記触媒は、一部の金属積層部材にのみ担持させても良いし、全ての金属積層部材に担持させても良い。」(段落【0051】及び【0052】)

キ 「【0056】
(3)積層部材の積層工程
図2(b)に示すように、片側に抑え用の金具を有する円筒状の金属ケーシング23を用い、まず、金属ケーシング23内に、(1)?(3)のようにして製造した端部用積層部材10bを1枚?数枚積層した後、内部用の積層部材10aを所定枚数積層する。そして、最後に、端部用積層部材10bを1枚?数枚積層し、さらにプレスを行い、その後、もう片方にも、抑え用の金具を設置、固定することにより、ハニカム構造体を製造することができる。もちろん、この工程では、セルが重なり合うように、各積層部材を積層する。
また、端部用積層部材として、金属製の緻密体の板状体を用いた場合には、これを溶接することで押え用金具とすることもできる。
また、無機繊維積層部材からなる積層型ハニカム構造体を用いる場合には、プレス時に積層部材が薄くなることに伴って、その気孔率が減少することとなるため、この減少分を考慮して積層部材を製造しておく必要がある。」(段落【0056】)

(2)引用文献1の記載から分かること
上記(1)アないしキ及び図面の記載から、以下の事項が分かる。

サ 上記(1)アないしキ及び図面の記載から、引用文献1には、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中のパティキュレート等を捕集、除去する積層型ハニカム構造体が記載されていることが分かる。

シ 上記(1)イないしキ及び図面の記載から、引用文献1に記載された積層型ハニカム構造体は、例えば多孔質金属板にセルを形成した積層部材10aを積層し、プレスすることにより製造されることが分かる。

ス 上記(1)オ及び図面の記載から、引用文献1に記載された積層型ハニカム構造体において、セルの寸法が異なる積層部材を作製し、これらを積層してもよく、この場合にはセルの内壁面に凹凸が形成される(すなわち、セル11の内部の表面が排ガスの流れの方向に変化する)ことが分かる。

セ 上記(1)カの「セルをほぼ等間隔で形成し」(段落【0051】)という記載及び図面の記載から、セルの間隔、すなわちセル壁の厚さは、ほぼ一定であることが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)並びに図面を参酌すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「内燃機関からの排ガスの後処理のための積層型ハニカム構造体において、多孔質金属板と、1つの側で封止されている入口側のセル11と、正反対の側で封止されている出口側のセル11とで形成されてなり、それによって後処理されるべき排ガスが前記入口側のセル11に流入し、多孔質金属板で形成されたセル壁13を通って隣接して配置された前記出口側のセル11に流入し、前記積層型ハニカム構造体から前記出口側のセル11を通って流出するように形成されてなる積層型ハニカム構造体であって、
前記入口側及び出口側のセル11の内部の表面が、前記入口側及び出口側のセル11へのまたはからの流入および流出の方向に変化し、前記入口側及び出口側のセル11を相互に分離する前記セル壁13の壁の厚みが、排ガスが流れて通る領域においてほぼ一定に維持されてなり、
前記積層型ハニカム構造体が、相互に一体的に連結され、かつ排気筒を形成する多孔質金属板から形成されてなり、前記入口側及び出口側のセル11ならびにセル壁13が、前記多孔質金属板の中に構成されたセル11の手段によって構成されてなる、積層型ハニカム構造体。」

4-2 引用文献2
(1)引用文献2の記載
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である実願昭59-21704号(実開昭60-134809号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、例えば、以下の記載がある。(なお、下線は、理解の一助のために、当審で付したものである。)

ア 「2.実用新案登録請求の範囲
通気性を有した隔壁を機関から排出される排気の流通方向と平行に配設して多数のセルを形成してなる内燃機関の排気微粒子捕集用トラツプにおいて、排気が少なくとも2回以上前記隔壁を通過するように前記セル内に目封じを施したことを特徴とする内燃機関の排気微粒子捕集用トラツプ。」(明細書第1ページ第4ないし10行)

イ 「<実施例>
以下に第4図?第6図に示す実施例を説明する。
第4図は第1の実施例を示しており,機関の排気通路の途中に介装されたトラツプ11は通気性を有したセラミツク材からなる多孔質の隔壁12を排気流通方向と平行に格子状に配設して形成されている。そして,この隔壁12により,トラツプ11の両端に目封じ13を施した両端閉止セル14と,両端が開放され排気流通方向の中間位置もしくは排気下流側寄りに目封じ13を施した両端開放セル15とが交互に隣接して多数形成されている。また,隔壁12は,従来のものに比べて平均細孔径を大きくしてある。」(明細書第3ページ第16行ないし第4ページ第8行)

ウ 「次に作用を説明すると,機関から排出された微粒子を含む排気は両端開放セル15内に流入した後,隔壁12を通じて隣接する両端閉止セル14内に流出し,さらに,再度隔壁12を通じて隣接する両端開放セル15内に流出し,トラツプ11の下流側に排出され,微粒子は排気が隔壁12を通過する際に捕集される。捕集された微粒子は従来と同様にバーナやヒータ等により加熱された高温排気により定期的に焼却されるか,或るいは隔壁12に触媒を含浸させておいて,この触媒を機関排温を利用して活性化することにより焼却している。」(明細書第4ページ第9ないし20行)

エ 「以上により排気は隔壁12を2回通過することになるが,隔壁12の平均細孔径を大きくしてあるので隔壁12への微粒子の堆積量が増えてきても排気の圧力損失を低く抑えることができ,機関最高出力の低下及び最大トルクの低下及び燃費の悪化を抑制することができる。また,捕集効率を向上させることもできる。」(明細書第5ページ第1ないし7行)

オ 「次に,第5図に示す第2の実施例の説明を行なう。
トラツプ21には,排気の入口側から出口側に向かってトラツプ21全長の略1/3の位置と出口側開口端とに目封じ13を施した入口側開放セル22と,排気の入口側開口端と入口側から出口側に向かってトラツプ21全長の略2/3の位置とに目封じ13を施した出口側開放セル23と,が交互に隣接して多数形成されている。
また,隔壁24については第1の実施例のものに比べて平均細孔径を大きくしてある。
従つて口側開放セル22に流入した排気が出口側開放セル23から流出するまでに隔壁24を3回通過することになり,圧力損失を低く抑えたまま捕集効率を第1の実施例よりも高めることができる。」(明細書第5ページ第8行ないし第6ページ第3行)

カ 「第6図は第3の実施例を示しており,トラツプ31には,両端と中央部に目封じ13を施した両端閉止セル32と,排気の入口側から出口側に向かつてトラツプ31全長の略1/4の位置と略3/4の位置とに目封じ13を施した両端開放セル33と,が交互に隣接して多数形成されている。
隔壁34については第2の実施例のものに比べて平均細孔径を大きくしてある。
この場合には,両端開放セル33の入口側開口端から流入した排気が同じく両端開放セル33の出口側開口端から流出するまでに隔壁34を4回通過し,圧力損失を低く抑えたまま捕集効率を第2の実施例よりもさらに高めるようにしたものである。
尚,目封じは排気が少なくとも2回以上隔壁を通過するよりにセル内に施せば良い。」(明細書第6ページ第4ないし19行)

キ 「<考案の効果>
以上説明したように本考案によれば,排気が少なくとも2回以上隔壁を通過するようにセル内に目封じを施したので,隔壁への微粒子の堆積量が増えてきても排気の圧力損失を低く抑えることができ,機関最高出力の低下及び最大トルクの低下及び燃費の悪化を抑制することができ,また,捕集効率を向上させることができるという効果も得られる。」(明細書第6ページ第20行ないし第7ページ第8行)

(2)引用文献2の記載から分かること
上記(1)アないしキ及び図面の記載から、以下の事項が分かる。

サ 上記(1)アないしキ及び図面の記載から、引用文献2には、排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝触媒を担持させた高温集塵フィルター等に使用できるセラミック構造体が記載されていることが分かる。

シ 上記(1)アないしキ及び図3ないし6の記載から、引用文献2に記載されたセラミック構造体は、両端封止セル14,22,32を備えるものであることが分かる。

ス 上記(1)イないしエ及び図面の記載から、引用文献2に記載されたセラミック構造体(例えば、第4図に記載されたもの)において、入口側開放セルを通って入る排気が、隔壁を通って両端封止セルに流入し、更なる隔壁を通って出口側開放セルに流入することが分かる。

セ 上記(1)イないしエ及び図面の記載から、引用文献2に記載されたセラミック構造体(例えば、第4図に記載されたもの)は、目封じ13を挟んで、入口側開放セルの領域と、出口側開放セルの領域とから構成されているとみることができる。

(3)引用文献2記載の技術
上記(1)、(2)及び図面の記載から、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されているといえる。

「排気の後処理のための排気微粒捕集用トラップにおいて、
相互に連結された入口側開放セル及び出口側開放セルを有する排気微粒捕集用トラップが形成され、前記入口側開放セル及び出口側開放セルが、入口側開放セル、両端封止セルおよび出口側開放セルが存在する一連の配置を形成し、入口側開放セルを通って入る排気が、隔壁を通って両端封止セルに流入し、更なる隔壁を通って出口側開放セルに流入する構造を有する技術。」

4-3 引用文献3
(1)引用文献3の記載
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2005-125551号公報(以下、「引用文献3」という。)には、例えば、以下の記載がある。(なお、下線は、理解の一助のために、当審で付したものである。)

ア 「【要約】
【課題】低コストで製造可能な複数の細孔が形成され、細孔内を流れる流体を効率的に細孔壁に接触させるセラミック構造体を提供する。
【解決手段】セラミック構造体1は、孔3に開口端1aと閉塞端1bとが設けられており、開口端1aから閉塞端1bへと向かって延び、互いに所定角度θをもって傾斜する一方の隔壁部1cおよび他方の隔壁部1dを備えている。一対の隔壁部1cと1dとが交差することによって閉塞端1bを形成している。」(【要約】欄)

イ 「【0001】
本発明は、セラミック構造体およびその製造方法に係るものである。」(段落【0001】)

ウ 「【0003】
また、排ガス中の固形分を除去するためのフィルターとして、セラミックハニカムフィルターが用いられている。セラミックハニカム構造体は押出し成形法によって成形される。」(段落【0003】)

エ 「【0004】
しかし、押出成形法では、各細孔をハニカム端面で直接封止することはできないので、手作業で端面封止を行う必要がある。このため、封止に手間がかかり、高コストとなる。また、この封止方法では、細孔内を流れる流体を細孔壁に接触させる際の効率を、ある程度以上高くすることが難しい。例えば細孔壁に触媒を担持させた場合には、細孔壁上の触媒と流体との接触効率を向上させることが望まれる。
【0005】
本発明の課題は、複数の孔が形成されたセラミック構造体において、低コストで製造可能であり、細孔内を流れる流体を細孔壁に接触させる際の効率を向上させ得るようなセラミック構造体を提供することである。
【0006】
本発明は、複数の孔が形成されたセラミック構造体であって、孔に開口端と閉塞端とが設けられており、孔の開口端から閉塞端へと向かって延び、互いに所定角度をもって傾斜する一方の隔壁部および他方の隔壁部を備えており、一対の隔壁部が交差することによって閉塞端を形成していることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、孔を形成する少なくとも一対の隔壁部について、一対の隔壁部を所定角度をもって交差させ、これによって、孔の一端を閉鎖させている。このように一対の隔壁部を所定角度をもって交差させることによって孔の閉塞端を形成することは、手作業によって各孔を一つ一つ封止する必要がなく、孔の封止作業を低コストで実施可能である。その上、各隔壁部の内壁面を傾斜させることによって、隔壁部の表面積を増大させ、流体を細孔壁に接触させる際の効率を向上させ得る。
【0008】
また、本発明は、複数の孔が形成されたセラミック構造体を製造する方法であって、互いに略平行に延びる一方の隔壁部および他方の隔壁部を備えており、一対の隔壁部の間に孔が設けられているセラミック基体を準備し、隔壁部に対して略垂直の方向に向かってセラミック基体を加圧することによって、一方の隔壁部と他方の隔壁部とを互いに所定角度をもって傾斜させ、孔の閉塞端を形成することを特徴とする。」(段落【0004】ないし【0008】)

オ 「【0009】
本発明のセラミック構造体の用途は特に限定されないが、以下を例示できる。
(1) 流体に含有される固形分を取り除くためのフィルター。
この場合には、セラミック構造体の一方の側へと流体を流し、隔壁部を通過させ、他方の側から流体を流出させる。固形分は多孔質セラミックスによって除去される。この場合には、各孔から流体を流出させることができるし、あるいは、各孔へと流体を流入させ、反対側から放出させることができる。
(2) 光触媒反応を利用し、排ガス中の有害物質を分解する際、直進性に優れたレーザー光を、孔の開口部より入射させることによって、光軸に対して傾斜した隔壁部内壁面にレーザー光を照射することができる。これによって、光触媒反応が可能な表面積を増大させ、光触媒反応の効率を向上させることができる。
【0010】
更に具体的には、以下の用途を例示できる。
(1)-(a): 液体から固体を分離するフィルター(水中の異物除去など)
(1)-(b): 気体から固体を分離するフィルター(排気ガス中の固体除去など)
(1)-(c): 高温排ガス、焼却炉排ガスの集塵
(1)-(d): 排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝触媒(五酸化バナジウム)を担持させた高温集塵フィルター
(2)-(a): 気体-気体分離(光触媒反応)」(段落【0009】及び【0010】)

カ 「【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明を更に詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るセラミック構造体1を概略的に示す断面図であり、図1(b)は、構造体1を矢印Ib方向から見た正面図であり、図1(c)は、構造体1を矢印Ic方向から見た正面図である。
【0012】
この構造体1は、一対の平板状の隔壁部1cと1dとを備えている。各隔壁部1cと1dとは、互いに所定角度θをもって交差しており、隔壁部1cと1dとの間に閉塞部1bが形成されている。5は交差線である。この結果、隔壁部1cの内壁面4Aと隔壁部1dの内壁面4Bとの間も、角度θをもって傾斜している。1aは構造体1の開口端部である。隔壁部1cと1dとの間には複数の区分隔壁30が設けられており、これによって複数個の孔3が形成されている。孔3の一方には開口2が設けられており、他方は閉塞部1bによって封止されている。
本例の構造体1においては、更に、図1(b)に示すように、各孔3内において、横方向の両方の内壁面31がいずれも傾斜しており、孔3の横幅が、閉塞部1bへと向かって徐々に小さくなっている。これによって、レーザー光を照射可能な表面積を一層増大させることができる。
【0013】
図2(a)は、本発明の他の実施形態に係るセラミック構造体11を概略的に示す断面図であり、図2(b)は、構造体11を矢印1Ib方向から見た正面図である。
構造体11は、図1の構造体1を複数個連結したものであり、これによって例えば3行×3列の孔3を形成したものである。構造体11の各部分は、隔壁部11cと11dとから構成されており、隔壁部11cと11dとは、互いに所定角度θをもって交差しており、隔壁部11cと11dとの間で封鎖部11bが形成されている。11aは構造体11の開口端部である。なお、図2の例においても、孔3の横幅が、閉塞部1bへと向かって徐々に小さくなるようにできる。
【0014】
図3(a)は、本発明の更に他の実施形態に係るセラミック構造体7を概略的に示す断面図であり、図3(b)は、構造体7を矢印IIIb方向から見た正面図であり、図3(c)は、構造体7を矢印IIIc方向から見た正面図である。
本例では、図1の構造体1において、更に、各隔壁部1c、1dの各内壁面4A、4B上に、それぞれ膜8が形成されている。膜8は、各隔壁部の外壁面上に形成することもできる。
本例の構造体7においては、更に、図3(b)に示すように、各孔3内において、横方向の両方の内壁面31がいずれも傾斜しており、孔3の横幅が、閉塞部1bへと向かって徐々に小さくなっている。これによって、レーザー光を照射可能な表面積を一層増大させることができる。
【0015】
本発明の観点からは、隔壁部のなす角度θは、0.5°以上が好ましく、1.0°以上が更に好ましい。また、θが大きくなりすぎると、単位体積当たりの表面積が小さくなり、効率が低下するので、θは120°以下が好ましく、10.0°以下が更に好ましい。」(段落【0011】ないし【0015】)

キ 「【0016】
好適な実施形態においては、例えば図1?3に示すように、一方の隔壁部と他方の隔壁部との間に、隣接する孔を区分する区分隔壁が延びている。更に好適な実施形態においては、セラミック構造体がいわゆるハニカム構造体である。
【0017】
好適な実施形態においては、セラミック構造体が気密質材料からなる。この場合には、例えば孔に面する内壁面に触媒を担持させることによって、表面積の大きい触媒として利用できる。このような気密質材料は限定されないが、セラミックス、ガラス、金属、セラミックス-金属複合体であってよい。特に好ましくはセラミック焼結体であり、コージェライト、アルミナ、ジルコニアを例示できる。
【0018】
好適な実施形態においては、セラミック構造体が、流体が透過可能な材質からなる。これによって、本発明のセラミック構造体を、流体中の異物を除去するフィルターとして使用できる。このような材質としては、セラミックス、ガラス、金属、セラミックス-金属複合体の各多孔質体が好ましく、特に好ましくはセラミック焼結体であり、コージェライト、アルミナ、ジルコニアを例示できる。」(段落【0016】ないし【0018】)

ク 「【0023】
図5、図6は、この実施形態に係るものである。図5の例においては、構造体17には例えば2列の孔3が形成されている。各孔3は、それぞれ一対の平板状の隔壁部11cと
11dとによって挟まれている。各隔壁部11cと11dとは、互いに所定角度θをもって交差しており、隔壁部11cと11dとの間で閉塞部11bが形成されている。5は交差線である。この結果、隔壁部11cの内壁面4Aと隔壁部11dの内壁面4Bとの間も、角度θをもって傾斜している。11aは構造体17の開口端部である。隔壁部11cと11dとの間には複数の区分隔壁が設けられている。孔3の一方には開口2が設けられており、他方は閉塞部11bによって封止されている。
【0024】
図5の例においては、閉鎖端11bの側から矢印Aのように流体を供給する。この流体は、矢印Aのように隔壁部11c、11dの表面に沿って流れ、隔壁部11c、11dを通過する。この際流体から異物が除去される。異物が除去された後の流体が矢印Bのように孔3の中を流れ、開口2から矢印Bのように排出される。ここで、本実施形態においては、レーザー光を矢印Cのように孔3内に照射し、内壁面4A、4B上の光触媒層8で光触媒反応を生じさせ、流体中の汚染物質を分解する。
【0025】
図6の例においては、流体を、矢印Aのように開口2から孔3内に供給し、流体を隔壁部に透過させ、矢印Bのように排出する。そして、レーザー光の照射側から流体を供給している。」(段落【0023】ないし【0025】)

ケ 「【0039】
図7?図12を参照しつつ説明した方法に従い、図1に示すようなセラミック構造体1を製造した。ただし、原料として、粒子径57.0±3.0ミクロンのアルミナ90重量%と、ガラス成分10重量%との混合物を使用した。この混合物に10?20重量%の水分、および7重量%のメチルセルロース「#4000(信越化学製)」を添加し、ニーダーを用いて、5?10℃で30分混練した。
【0040】
この混練物を、宮崎鉄工株式会社製「PM-30型」(スクリュー径φ30mm)を用いて押出成形し、成形寸法縦35mm×厚さ8mm×横340mm、壁厚み1.0mmの基体を得た。この基体を、図8に示す治具21を用いて加圧成形し、図12に示す成形体1Aを作製した。この成形体1Aを焼成し、図1に示す焼結体1を得た。この端部1a側の高さは mm(審決注;数字が記入されていない。)であり、1b側の高さは7.0mmであり、傾斜角度θは1.8°であった。
【0041】
この基体の各孔中に、酸化チタン光触媒ゾルを平均膜厚0.2μmになるようディップコートし、乾燥後、400℃で5時間、焼成を行ない、光触媒層を製造した。この部材を反応管に入れ、無機接着剤で封口した。光源は、半導体赤色レーザーにSHG素子を組み合わせた波長360nm出力50mWの紫外光レーザーを200個組み合わせ、総出力10Wのシステムを使用した。この反応装置に、処理ガスとしてアセトアルデヒド100ppmを含む空気を流量1Nm^(3)/minで通し、処理特性を計測した。光の照射方向Cに対して、図5に示すようにガスを対向で流した(A、B)。この結果、レーザー光が有効に利用されていることが確認された。」(段落【0039】ないし【0041】)

(2)引用文献3の記載から分かること
上記(1)アないしケ及び図面の記載から、以下の事項が分かる。

サ 上記(1)アないしケ及び図面の記載から、引用文献3には、排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝触媒を担持させた高温集塵フィルター等に使用できるセラミック構造体が記載されていることが分かる。

シ 上記(1)カないしケ及び図1ないし12の記載から、引用文献3に記載されたセラミック構造体は、均一な壁厚みの壁を有し、孔3の横幅が、閉塞部1bへと向かって徐々に小さくなっている形状のものであることが分かる。

ス 上記(1)キの記載から、引用文献3に記載されたセラミック構造体は、金属の多孔質体からなるものであってもよいことが分かる。

(3)引用文献3記載の技術
上記(1)、(2)及び図面の記載から、引用文献3には、次の技術(以下、「引用文献3記載の技術」という。)が記載されているといえる。

「排ガスの後処理のためのセラミック構造体において、
各孔3の内部の自由断面が、各孔3へのまたはからの流入および流出の方向に変化し、各孔3を相互に分離する前記隔壁部11cの壁の厚みが、排ガスが流れて通る領域において一定に維持されてなる、セラミック構造体。」

5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「内燃機関」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明における「内燃エンジン」に相当し、以下同様に、「排ガス」は「排気ガス」に、「積層型ハニカム構造体」は「多層濾材」に、「多孔質金属板」は「開口細孔材料」、「開口細孔金属材料」又は「板状濾材」に、「封止」は「シール」に、「入口側のセル11」は「入口チャンネル」に、「出口側のセル11」は「出口チャンネル」に、「セル壁13」は「分離壁」に、「内部の表面」は「内部の自由断面」に、「セル11」は「開口」に、それぞれ相当する。

したがって両者は、
「内燃エンジンからの排気ガスの後処理のための多層濾材において、開口細孔材料と、1つの側でシールされている入口チャンネルと、正反対の側でシールされている出口チャンネルとで形成されてなり、それによって後処理されるべき排気ガスが前記入口チャンネルに流入し、開口細孔金属材料で形成された分離壁を通って隣接して配置された前記出口チャンネルに流入し、前記多層濾材から前記出口チャンネルを通って流出するように形成されてなる多層濾材であって、
前記入口および出口チャンネルの内部の自由断面が、前記入口および出口チャンネルへのまたはからの流入および流出の方向に変化し、前記入口および出口チャンネルを相互に分離する前記分離壁の壁の厚みが、排気ガスが流れて通る領域において一定に維持されてなり、
前記多層濾材が、相互に一体的に連結され、かつ排気筒を形成する板状濾材から形成されてなり、前記入口および出口チャンネルならびに分離壁が、前記板状濾材の中に構成された開口の手段によって構成されてなる、多層濾材。」
という点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。

<相違点>
(1)本願発明においては、「相互に連結された2つの領域を有する多層濾材が形成され、前記領域が、入口チャンネル、中間チャンネル、および出口チャンネルが存在する一連の配置を形成し、入口チャンネルを通って入る排気ガスが、分離壁を通って中間チャンネルに流入し、更なる分離壁を通って出口チャンネルに流入し」という発明特定事項を有するのに対し、引用発明においては、積層型ハニカム構造体が、相互に連結された2つの領域を有するかどうか明らかでなく、また、中間チャンネルを有するかどうか明らかでない点(以下、「相違点1」という。)。

(2)本願発明においては、「入口および出口チャンネルの内部の自由断面が、前記入口および出口チャンネルへのまたはからの流入および流出の方向に変化し、前記入口および出口チャンネルを相互に分離する前記分離壁の壁の厚みが、排気ガスが流れて通る領域において一定に維持されて」なるのに対し、引用発明においては、前記入口側及び出口側のセル11の内部の表面が、前記入口側及び出口側のセル11へのまたはからの流入および流出の方向に変化することが可能であり、また、前記入口側及び出口側のセル11を相互に分離する前記セル壁13の壁の厚みが、排ガスが流れて通る領域においてほぼ一定に維持されている点(以下、「相違点2」という。)。

6 判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
本願発明と引用発明と引用文献2記載の技術とは、共に、内燃エンジンからの排気ガスの後処理のための濾材に関するものであり、排気ガス中に含有される微粒子を確実に除去するという共通の課題を有するものである。
そこで、引用文献2記載の技術を本願発明の用語を用いて表すために、本願発明と引用文献2記載の技術を対比すると、引用文献2記載の技術における「入口側開放セル及び出口側開放セル」は、その技術的意義からみて、本願発明における「2つの領域」及び「領域」に相当し、以下同様に、「入口側開放セル」は「入口チャンネル」に、「出口側開放セル」は「出口チャンネル」に、「排気」は「排気ガス」に、「隔壁」は「分離壁」に、「両端封止セル」は「中間チャンネル」に、それぞれ相当する。
また、引用文献2記載の技術における「排気微粒捕集用トラップ」は、「濾材」という限りにおいて、本願発明における「多層濾材」に相当する。
したがって、引用文献2記載の技術は、本願発明の用語を用いて、
「排気の後処理のための濾材において、
相互に連結された2つの領域を有する濾材が形成され、前記領域が、入口チャンネル、中間チャンネルおよび出口チャンネルが存在する一連の配置を形成し、入口チャンネルを通って入る排気ガスが、分離壁を通って中間チャンネルに流入し、更なる分離壁を通って出口チャンネルに流入する構造を有する技術。」
と言い換えることができる。
また、本願発明と引用文献2記載の技術とは、ともに、内燃エンジンからの排ガスの後処理のための濾材に関する技術であり、入口チャンネル(引用文献2記載の技術における「入口側開放セル」)と出口チャンネル(同じく「出口側開放セル」)との間に中間チャンネル(同じく「両端封止セル」)を設けることによって、分離壁(同じく「隔壁」)を複数回通過させるという課題を解決するものである。
したがって、上記相違点1に係る発明特定事項は、引用発明において、引用文献2記載の技術を適用することにより、当業者が容易に想到できたものである。

(2)相違点2について
前記のように、引用文献1には、入口側及び出口側のセル11の内部の表面が、入口側及び出口側のセル11へのまたはからの流入および流出の方向に変化すること、及び、入口側及び出口側のセル11を相互に分離する前記セル壁13の壁の厚みが、排ガスが流れて通る領域においてほぼ一定であることが記載されているから、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、実質的に、引用文献1に記載されている事項であり、そうでないとしても、引用発明において、「ほぼ一定」を「一定」とする程度のことは、当業者が容易に想到できたことといえる。
また、仮に、引用発明における「変化」が、本願発明における「変化」とは異なるものであるとしても、相違点2に係る本願発明の特定事項は、以下のように、容易に想到することができたものである。
本願発明と引用文献3記載の技術を対比すると、引用文献3記載の技術における「入口側開放セル及び出口側開放セル」は、その技術的意義からみて、本願発明における「2つの領域」及び「領域」に相当し、以下同様に、「入口側開放セル」は「入口チャンネル」に、「出口側開放セル」は「出口チャンネル」に、「排気」は「排気ガス」に、「隔壁」は「分離壁」に、「両端封止セル」は「中間チャンネル」に、それぞれ相当する。
また、引用文献3記載の技術における「セラミック構造体」は、「濾材」という限りにおいて、本願発明における「多層濾材」に相当する。
したがって、引用文献3記載の技術は、本願発明の用語を用いて、
「排気ガスの後処理のための濾材において、
入口および出口チャンネルの内部の自由断面が、前記入口および出口チャンネルへのまたはからの流入および流出の方向に変化し、前記入口および出口チャンネルを相互に分離する分離壁の壁の厚みが、排気ガスが流れて通る領域において一定に維持されてなる、濾材。」
と言い換えることができる。
そして、引用発明と引用文献3記載の技術とは、排気ガスの後処理のための濾材という共通の技術分野に属し、排ガス中の微粒子をセル壁(隔壁)によりいかにして捕集、除去するかということに着目したものである。
そうすると、相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明において、引用文献3記載の技術を適用することにより、当業者が容易に想到できたことである。

(3)効果について
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び引用文献2記載の技術から、又は、引用発明並びに引用文献2記載の技術及び引用文献3記載の技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて、又は、引用発明並びに引用文献2記載の技術及び引用文献3記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-18 
結審通知日 2014-11-21 
審決日 2014-12-03 
出願番号 特願2011-511516(P2011-511516)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 由希子  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 金澤 俊郎
槙原 進
発明の名称 内燃エンジンからの排気ガスの後処理のための濾材  
代理人 中村 行孝  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 横田 修孝  
代理人 小島 一真  
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