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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1299724 |
審判番号 | 不服2014-2551 |
総通号数 | 186 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-02-10 |
確定日 | 2015-04-15 |
事件の表示 | 特願2012-519738「輝度と彩度値のサブサンプリングを伴う画像データ圧縮」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月13日国際公開、WO2011/006005、平成24年12月20日国内公表、特表2012-533226〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 経緯 1.手続 本願は、2010年(平成22年)7月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2009年7月9日、米国、2009年12月2日、米国)を国際出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。 手続補正 :平成24年 2月24日 拒絶理由通知 :平成25年 6月 3日(起案日) 手続補正 :平成25年 9月 6日 拒絶査定 :平成25年 9月30日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成26年 2月10日 手続補正 :平成26年 2月10日 前置審査報告 :平成26年 5月16日 2.査定 原審での査定の理由は、概略、以下のとおりである。 本願の各請求項に係る発明(平成25年9月6日付け手続補正書による)は、下記刊行物に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 記 刊行物1:特開2006-33750号公報 刊行物2:特開2002-199393号公報 刊行物3:特開2000-152226号公報 刊行物4:特開2007-251860号公報 刊行物5:特開平10-98731号公報 第2 補正却下の決定 平成26年2月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について次のとおり決定する。 《結論》 平成26年2月10日付けの手続補正を却下する。 《理由》 1.本件補正の内容 平成26年2月10日付けの手続補正(以下「本件補正」という)は、本件補正前、平成25年9月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲についてする補正であり、補正前の請求項1の記載を補正後の請求項1とし、補正前の請求項5を削除する補正を含むものである。 (補正前請求項1) 【請求項1】 画像データにおける彩度値をサブサンプリングし、それによりサブサンプリングされた彩度値を得ることと、 前記サブサンプリングされた彩度値を圧縮し、それによりサブサンプリングされ圧縮された彩度値を得ることと、 前記画像データにおける輝度値をサブサンプリングし、それによりサブサンプリングされた輝度値を得ることと、 前記輝度サブサンプリング作業の一部として破棄された輝度値のためエッジ情報を決定することであって、ここで個々の破棄された輝度値のためのエッジ情報は前記破棄された輝度値を再構成するために使用する補間法の方向を指し示す、前記エッジ情報を決定することと、 圧縮された画像イメージを形成するために、前記圧縮され、サブサンプリングされた彩度値、サブサンプリングされた輝度値、および廃棄された輝度値のための前記エッジ情報を結合することと を含む、前記画像データを圧縮するための方法。 (補正前請求項5) 【請求項5】 破棄された輝度値のため前記エッジ情報を決定することは、 垂直平均を決定することと、 水平平均を決定することと、 前記垂直平均と前記水平平均のどちらが前記破棄された輝度値に近いか決定することとを含む、請求項1の方法。 (補正後の請求項1) 【請求項1】 画像データにおける彩度値をサブサンプリングし、それによりサブサンプリングされた彩度値を得ることと、 前記サブサンプリングされた彩度値を圧縮し、それによりサブサンプリングされ圧縮された彩度値を得ることと、 前記画像データにおける輝度値をサブサンプリングし、それによりサブサンプリングされた輝度値を得ることと、 前記輝度サブサンプリング作業の一部として破棄された個々の輝度値のためエッジ情報を決定することであって、ここで個々の破棄された輝度値のための前記エッジ情報を決定することは、 垂直方向に破棄される輝度値に隣接する輝度値の垂直平均を決定することと、 水平方向に破棄される輝度値に隣接する輝度値の水平平均を決定することと、 前記垂直平均と前記水平平均のどちらが前記廃棄された輝度値の値に近いかに依存する前記エッジ情報を選択することと、を備え、 圧縮された画像イメージを形成するために、前記圧縮され、サブサンプリングされた彩度値、サブサンプリングされた輝度値、および廃棄された輝度値のための前記エッジ情報を結合することと を含む、前記画像データを圧縮するための方法。 2.本件補正の適合性 (2-1)補正の範囲 上記補正事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。 (2-2)補正の目的 上記補正事項は、補正前の請求項1を引用する請求項5で、エッジ情報を決定することについて、 「前記エッジ情報を決定することは、 垂直平均を決定することと、 水平平均を決定することと、 前記垂直平均と前記水平平均のどちらが前記破棄された輝度値に近いか決定すること」の構成を特定していたのに対し、補正後の請求項1では、 「垂直平均を決定すること」、「水平平均を決定すること」について、「垂直方向に破棄される輝度値に隣接する輝度値の垂直平均を決定すること」、「水平方向に破棄される輝度値に隣接する輝度値の水平平均を決定すること」の構成を付加して限定するものであるといえる。 したがって、補正前の請求項1の記載を補正後の請求項1とし、補正前の請求項5を削除する補正は、補正前の請求項1を引用する請求項5に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、かつ、補正の前後において発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定された、特許請求の範囲の減縮に該当する補正事項を含んでいると認められる。 (2-3)独立特許要件 そこで、以下、上記補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後発明」という)が独立特許要件を満たすか否かについて検討する。 (A)補正後発明 本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後発明」という。)は、上記第2 1.の「(補正後の請求項1)」に記載したとおりである。 (B)引用刊行物の記載 (1)刊行物1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2006-33750号公報(以下、刊行物1という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 【0001】 本発明は、静止画像及び動画像の圧縮符号化を行う画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラムに関する。 【0034】 図1は、本発明の実施例1に係る画像処理装置の構成を示す図である。符号1は静止画・動画ともに撮像可能な撮像圧縮ブロックを構成するカメラ装置、2はデータ記録用のストレージ部、3は画像伸長・表示ブロックを構成するディスプレイ装置である。 図2は、本発明の実施例1の画像処理装置における撮像圧縮ブロックの構成を示すブロック図である。撮像圧縮ブロックは、撮像から圧縮データを出力するまでのブロックを示したものである。 【0035】 本実施例では、撮像圧縮ブロックは、CCDなどの撮像素子を備えた撮像部11と、撮像部11から入力される、複数のラインからなる入力画像フレームを構成する画素を、相異なる複数の間引きパターンで間引く画素数削減部12と、前記間引きパターン毎に、間引かれた画素でサブフレームを生成するサブフレーム生成部13と、前記サブフレーム生成部3で生成したサブフレームを記憶するメモリ14と、前記サブフレーム毎に圧縮を実行する画像圧縮部15と、前記画像圧縮部15で圧縮されたデータを、所定のフォーマットに変換して出力する圧縮データ出力部16と備えている。 【0036】 撮像部11としては、例えば、光電変換素子の各画素それぞれにカラーフィルタを貼り付け、カラー画像信号を得る単板式のカメラ装置を用いる。前記カラーフィルタとしては、例えば、R(赤),G(緑),B(青)をモザイク状に配列したカラーフィルタ、例えばベイヤー配列のものが用いられる。 【0037】 図3は、撮像圧縮ブロックにおける、画像データの入力から圧縮までのフローチャートである。 先ず、撮像部11によって取り込まれた画像は、デジタル信号に変換され、RGBベイヤー形式の画像データが画素数削減部2に出力される(ステップS1)。 【0038】 画素数削減部12は、画像データに対し、市松模様状に画素を間引くことにより、画素数削減を行い、所定の画像形式変換によりYUV420のカラーデータ形式として出力する(ステップS2)。 【0039】 なお、本実施例では、画素数削減は、画素を間引くことによって行っているが、市松模様状に画素数を削減できるのであれば、別の方法を採用しても良い。例えば、撮像部から出力されるRGBベイヤーデータに対して、RGBのGのデータが存在する画素位置のみにおいて、隣接するRとBのデータを使ってベイヤー変換した後、YUV形式に変換して出力することにより、市松模様状に画素数を削減した状態でデータを出力することも可能である。ここで、ベイヤー変換とは、上記のような単板式のカメラ装置において、例えば、R,G,Bからなるカラーフィルタを用いる場合には、光電変換素子に対応した各画素毎にR,G,Bのいずれか一つの色情報のみが得られることになるため、画像信号の他の色情報については補間計算を行い、各画素毎にR,G,Bのデータがそれぞれに得られるようにする手法を言う。例えば、特開平10-178650号公報には、R,G,Bのモザイクフィルタを用いる構成において、5×5画素領域内で、R,G,Bの各画素データ別に平均値を計算して、補間値を求める手法の開示がなされている。 【0040】 サブフレーム生成部13は、先ず、画素数削減部12から入力される市松模様状のYUV画像データを、ライン単位に分割する(ステップS3)。 そして、ステップS4で、分割されたラインが偶数ラインか否かが判定される。分割されたラインが偶数ラインであれば(ステップS4でY)、メモリ14内の第1のサブフレーム領域に(ステップS5)、奇数ラインであれば(ステップS4でN)、メモリ14内の第2のサブフレーム領域(ステップS6)に、夫々振り分けて格納する。 【0041】 以上の振り分けは、ステップS7の終了判定において、画像データ1フレーム分のラインが終了する(ステップS7でY)まで実行され、これにより、第1のサブフレーム、第2のサブフレームが構築される。 【0042】 画像圧縮部15は、サブフレーム生成部13から入力されるサブフレームに対して、第1のフレーム、第2のフレームの順序で画像圧縮を行う(ステップS8)。なお、本実施例1では、圧縮方式はJPEGを想定しているが、MPEGのIピクチャ等、画面内相関による圧縮であれば、他方式でも適用可能である。また、本実施例は、静止画、動画のどちらに対しても適用可能である。 圧縮データ出力部16は、画像圧縮部15で圧縮されたデータを、所定のフォーマットに変換して出力する(ステップS9)。 【0043】 次に、図4を用いて、輝度信号におけるサブフレーム分割方法について説明する。 なお、以下の説明において、各ラインの並びは、最上部のラインから、0,1,2,…と付番し、区別するものとする。例えば、図4では、最上部のラインは0番目とする。 【0044】 まず、図4(a)に示すように、画素を市松模様状に間引く。この時、奇数番目ラインと偶数番目ラインで画素が残っている位置が異なっているが、図4(b)のように偶数番目ラインのみを集めて第1のサブフレームを構成し、図4(c)のように奇数番目ラインのみを集めて第2のサブフレームを構成する。これにより、垂直方法に画素位置の揃った2つの輝度成分サブフレームを生成することができる。 【0045】 なお、本実施例では、市松模様上に画素数を削減し、2つのサブフレームに分割しているが、画素数削減方法として別の間引きパターンを適用し、その間引きパターンの種類数に応じた数のサブフレーム分割を行うことも可能である。例えば、図5(a)のような間引きパターンを使用し、図5(b)、(c)、(d)、(e)のように4つのサブフレームに分割することも可能である。 【0046】 次に、図6を用いて、色差信号におけるサブフレーム分割方法について説明する。 図6は色差成分のサブフレーム生成方法の一例を示している。なお、図6においてはU成分の例を示しているが、V成分についても同様に考えることができる。 【0047】 まず、画素を市松模様状に間引くが、本実施例ではYUV420カラーデータ形式であるため、色差成分は輝度成分の1/4のデータ量があれば良い。 【0048】 そこで図6(a)のように、(4m,4n)と(4m+1,4n+1)の位置の画素を残し、それ以外の画素を間引く。ただし、m,nは0以上の整数とし、(x,y)の標記は、左上の画素を原点として、水平右方向の位置をx、垂直下方向の位置をyとした時の、画素位置を表す座標であるものとする。 【0049】 図6(b)のように4n番目ラインのみを集めて第1のサブフレームを構成し、図6(c)のように4n+1番目ラインのみを集めて第2のサブフレームを構成する。これににより、画素位置の揃った2つの色差成分サブフレームを生成することができる。 【0054】 次に、撮像圧縮ブロックで圧縮された圧縮画像データを伸長して画像を表示する画像伸長・表示ブロックについて説明する。 図8は画像伸長・表示ブロックのブロック構成図を示している。画像伸長・表示ブロックには、図2に示した撮像圧縮ブロックで例えばJPEG圧縮された画像サブフレームのデータが一旦ストレージ部に記憶された後、その記憶されたJPEG圧縮データが入力される。 【0055】 画像伸長・表示ブロックは、JPEG圧縮された複数のサブフレームデータが入力される圧縮データ入力部21と、JPEG圧縮された複数のサブフレームデータを伸長する画像伸長部22と、伸長された複数のサブフレームデータを合成するサブフレーム合成部23と、前記サブフレーム合成部23で合成したサブフレームを記憶するメモリ24と、合成した前記サブフレームデータにおける間引き画素部分を補間する画素補間部25と、前記画素補間部25で補間されたデータを、表示データに変換してディスプレイ上に表示する画像表示部26とを備えている。 【0056】 図9は伸長・表示のフローチャートを示している。 まず、圧縮データ入力部21から、JPEG圧縮された画像サブフレームのデータが入力され(ステップS11)、画像伸長部22にて、YUV420のカラーデータ形式に伸長 される(ステップS12)。 【0057】 次に、サブフレーム合成部23にて、2つのサブフレームを合成して、市松模様状に画素が欠落した状態の合成フレームを生成し(ステップS13)、画素補間部25にて、画素が欠落した部分の補間を行い(ステップS14)、画像表示部26にて、所定のフォーマットに変換して画像表示を行う(ステップS15)。 【0058】 次に、図10を用いて、サブフレーム合成部23及び画素補間部25での、輝度信号におけるサブフレーム合成及び画素補間について説明する。 図10は輝度成分のサブフレーム合成後の画素補間方法を示している。 【0059】 第1のサブフレームの各ラインを合成フレームの偶数ラインとして、第2のサブフレームの各ラインを合成フレームの奇数ラインとして、合成フレームを構成する。 【0060】 そして、画素間引きによって画素データが欠落した(2m,2n+1)と(2m+1,2n)の部分の画素データについては、下式のように、周囲の4画素を用いて補間する。 【0061】 Y(2m,2n+1)={Y(2m,2n)+Y(2m-1,2n+1)+Y(2m+1,2n+1)+Y (2m,2n+2)}÷4 Y(2m+1,2n)={Y(2m+1,2n-1)+Y(2m,2n)+Y(2m+2,2n)+Y(2m+1,2n+1)}÷4 例えば、間引き画素Y21については、周囲の4画素Y11,Y31,Y20,Y22を用いてそれらの平均値を求めることにより、補間する。 (2)刊行物2の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2002-199393号公報(以下、刊行物2という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、サブサンプリング信号を受け取って、間引き画素を補間するのに適用されるディジタル画像信号処理装置および処理方法に関する。 【0002】 【従来の技術】ディジタル画像信号を記録したり、伝送する際の帯域圧縮あるいは情報量削減のための一つの方法として、画素をサブサンプリングによって間引くことによって、伝送データ量を減少させるものがある。その一例は、MUSE方式における多重サブナイキストサンプリングエンコーディング方式である。このシステムでは、受信側で間引かれ、非伝送の画素を補間する必要がある。 【0003】サブサンプリングの一例としてオフセットサブサンプリングが知られている。図7は、オフセットサブサンプリング回路の一例であって、61で示す入力端子にディジタルビデオ信号が供給され、プリフィルタ62を介してサブサンプリング回路63に供給される。サブサンプリング回路63には、入力端子64から所定の周波数のサンプリングパルスが供給される。 【0004】サブサンプリング回路63でなされる2次元のオフセットサブサンプリングの一例を図8に示す。水平方向(x方向)と垂直方向(y方向)とのサンプリング間隔(Tx,Ty)を原信号における画素間隔(Hx,Hy)の2倍に設定し、1画素おきに間引く(間引き画素を×で示す)とともに、垂直方向に隣合う伝送画素(○で示す)をサンプリング間隔の半分(Tx/2)だけオフセットするものである。このようなオフセットサブサンプリングを行うことによる伝送帯域は、斜め方向の空間周波数に対して水平あるいは垂直方向の空間周波数成分を広帯域化することができる。 【0006】ところで、上述のようなオフセットサブサンプリングは、サンプリングの前のプリフィルタが正しくフィルタリング処理を行っている場合には、非常に有効な方法であるが、例えばハードウエア上の制約によってプリフィルタを充分にかけられない場合や、伝送帯域の広帯域化をはかるためにプリフィルタを充分にかけない場合等では、折返し歪の発生による画質劣化という問題が生じる。 【0007】上述の折返し歪の発生を軽減するために、適応補間方法が提案されている。これは、サブサンプリング時に最適な補間方法の判定を予め行っておき、その判定結果を補助情報として伝送あるいは記録する方法である。例えば、水平方向の1/2平均値補間と垂直方向の1/2平均値補間の何れの方が真値により近いかをサブサンプリング時に検出しておき、1画素当り1ビットの補助情報として伝送し、補間時には、この補助情報に従って補間処理を行うものである。 (C)刊行物1に記載された発明 (1)刊行物1の【0001】の記載によれば、刊行物1に記載された発明は、「静止画像及び動画像の圧縮符号化を行う画像処理方法」すなわち、「画像の圧縮符号化を行う処理方法」に関する発明であるといえる。 (2)刊行物1の【0046】-【0049】の記載によれば、U成分、V成分について、「左上の画素を原点として、水平右方向の位置をx、垂直下方向の位置をyとした時、(4m,4n)と(4m+1,4n+1)の位置の画素を残し、それ以外の画素を間引き、4n番目ラインのみを集めて第1のサブフレームを、4n+1番目ラインのみを集めて第2のサブフレームを構成」しているのであるから、「U成分、V成分について画素を間引き、間引かれたU成分、V成分のサブフレームを得ること」が記載されているといえる。 (3)刊行物1の【0043】、【0044】の記載によれば、「画素を市松模様状に間引き、偶数番目ラインのみを集めて第1のサブフレームを構成し、奇数番目ラインのみを集めて第2のサブフレームを構成することにより、垂直方法に画素位置の揃った2つの輝度成分サブフレームを生成」しているといえるから、刊行物1には、「画素を市松模様状に間引き、2つの輝度成分サブフレームを得ること」が記載されているといえる。 (4)刊行物1の【0042】の記載によれば、「画像圧縮部15は、サブフレーム生成部13から入力されるサブフレームに対して、第1のフレーム、第2のフレームの順序で画像圧縮を行う」のであるから、「サブフレームに対して、画像圧縮を行うこと」が記載されている。 (5)刊行物1の【0042】の記載によれば、「圧縮データ出力部16は、画像圧縮部15で圧縮されたデータを、所定のフォーマットに変換して出力する」のであるから、「圧縮されたデータを、所定のフォーマットに変換して出力すること」が記載されている。 (6)まとめ 以上(1)ないし(5)の記載事項をまとめると、刊行物1には以下の発明(以下、刊行物1発明という。)が開示されているといえる。 U成分、V成分について画素を間引き、間引かれたU成分、V成分のサブフレームを得ること、 画素を市松模様状に間引き、2つの輝度成分サブフレームを得ること、 サブフレームに対して、画像圧縮を行うこと、 圧縮されたデータを、所定のフォーマットに変換して出力すること を含む、画像の圧縮符号化を行う処理方法。 (D)対比 補正後発明と刊行物1発明とを対比する。 (1)刊行物1発明のU成分、V成分が補正後発明の彩度値といえることは明らかであって、間引かれた画素は、画像データであるから、刊行物1発明は、「画像データにおける彩度値をサブサンプリング」しているといえ、また、刊行物1発明では、「サブフレームに対して、画像圧縮を行う」のであるから、彩度値を圧縮しているといえる。 (2)刊行物1発明の「画素を市松模様状に間引」くことは、画像データを間引くことといえるから、刊行物1発明では、画像データの画素を間引いて間引かれた(サブサンプリングされた)輝度成分(輝度値)を得ているといえる。 (3)刊行物1発明では、補正後発明のエッジ情報に関する構成を有していない。 (4)刊行物1発明の圧縮されたデータは、「前記圧縮され、サブサンプリングされた彩度値」および、サブサンプリングされた輝度値を含むことは明らかであって、これらの値を所定のフォーマットに変換して出力しているのであるから、これらの値を結合しているといえる。したがって、刊行物1発明は、「圧縮された画像イメージを形成するために、前記圧縮され、サブサンプリングされた彩度値、サブサンプリングされた輝度値を結合すること」を有している点で、補正後発明と相違がない。 (5)まとめ(一致点・相違点) 以上まとめると、補正後発明と刊行物1発明とは以下の一致点で一致し相違点で相違する。 (一致点) 画像データにおける彩度値をサブサンプリングし、それによりサブサンプリングされた彩度値を得ることと、 前記サブサンプリングされた彩度値を圧縮し、それによりサブサンプリングされ圧縮された彩度値を得ることと、 前記画像データにおける輝度値をサブサンプリングし、それによりサブサンプリングされた輝度値を得ることと、 圧縮された画像イメージを形成するために、前記圧縮され、サブサンプリングされた彩度値、サブサンプリングされた輝度値、を結合することと を含む、前記画像データを圧縮するための方法。 (相違点) 補正後発明では、エッジ情報に関する構成を有しているのに対し、刊行物1発明では、エッジ情報に関する構成を有さず、したがって、 刊行物1発明は、 「前記輝度サブサンプリング作業の一部として破棄された個々の輝度値のためエッジ情報を決定することであって、ここで個々の破棄された輝度値のための前記エッジ情報を決定することは、 垂直方向に破棄される輝度値に隣接する輝度値の垂直平均を決定することと、 水平方向に破棄される輝度値に隣接する輝度値の水平平均を決定することと、 前記垂直平均と前記水平平均のどちらが前記廃棄された輝度値の値に近いかに依存する前記エッジ情報を選択することと、を備え」および、 結合する情報として「廃棄された輝度値のための前記エッジ情報」を有していない点で補正後発明と相違する。 (E)判断 上記相違点に関して、上記刊行物2には、「サブサンプリング信号を受け取って、間引き画素を補間するのに適用されるディジタル画像信号処理装置および処理方法に関する」(【0001】)従来例として、「折返し歪の発生を軽減するために、適応補間方法が提案されている。」(【0007】)との記載がある。 上記適応補間方法は、「水平方向(x方向)と垂直方向(y方向)とのサンプリング間隔(Tx,Ty)を原信号における画素間隔(Hx,Hy)の2倍に設定し、1画素おきに間引く(間引き画素を×で示す)とともに、垂直方向に隣合う伝送画素(○で示す)をサンプリング間隔の半分(Tx/2)だけオフセット」(【0004】)した画像信号を前提に、「サブサンプリング時に最適な補間方法の判定を予め行っておき、その判定結果を補助情報として伝送あるいは記録する方法である。例えば、水平方向の1/2平均値補間と垂直方向の1/2平均値補間の何れの方が真値により近いかをサブサンプリング時に検出しておき、1画素当り1ビットの補助情報として伝送し、補間時には、この補助情報に従って補間処理を行うものである。」から、間引いた画素に関する値について、水平方向及び垂直方向に隣接する画素の値からエッジの方向を検出し、その方向をビット情報として伝送する点で上記相違点に対応する構成であるといえ、刊行物1発明においても、【0054】-【0061】の記載を見れば、画像データを圧縮したのち、上記圧縮データから画像を表示するときには、間引かれた画素値を補間することを前提としており、上記補間に際して、刊行物2に記載された技術思想を適用しようとすることは当業者が容易になしえたことであるといえる。 (F)効果 以上のように、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものと認められ、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記相違点に係る構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。 (G)まとめ(独立特許要件) したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成26年2月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし40に係る発明は、平成25年9月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし40に係る発明のとおりであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2 1.の「(補正前請求項1)」に記載したとおりである。 2.刊行物1(特開2002-185931号公報)の記載 審査官が拒絶の査定で引用した刊行物1には、上記第2 2.(2-3)(B)(1)に示したとおりの事項が記載されている。 3.刊行物1記載の発明 上記刊行物1には、上記第2 2.(2-3)(C)(6)に示した、刊行物1発明が記載されている。 4.対比・判断 本願発明は、前記第2 2.(2-3)(A)で認定した補正後発明から、補正前の請求項5に記載された構成及び、上記第2 2.(2-2)で検討した付加して限定した構成を省いたものである。 そうすると、本願発明を特定する事項をすべて含む補正後発明が、上記第2 2.(2-3)(E)で述べたとおり、刊行物1、刊行物2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1、刊行物2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、残る請求項2ないし40に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-11-13 |
結審通知日 | 2014-11-18 |
審決日 | 2014-12-01 |
出願番号 | 特願2012-519738(P2012-519738) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 坂東 大五郎、上嶋 裕樹 |
特許庁審判長 |
清水 正一 |
特許庁審判官 |
渡邊 聡 水野 恵雄 |
発明の名称 | 輝度と彩度値のサブサンプリングを伴う画像データ圧縮 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 砂川 克 |
代理人 | 河野 直樹 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 井関 守三 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 野河 信久 |
代理人 | 井上 正 |
代理人 | 佐藤 立志 |
代理人 | 堀内 美保子 |
代理人 | 岡田 貴志 |