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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1299725
審判番号 不服2014-2592  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-10 
確定日 2015-04-15 
事件の表示 特願2011-516237「ビデオストリームの配信に使用する間隔ベースの広告挿入」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月30日国際公開、WO2009/157903、平成23年 9月29日国内公表、特表2011-526123〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
1 手続の経緯
本件出願は、2008年(平成20年)6月26日(外国庁受理、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年11月7日付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対し、平成25年5月13日付けで手続補正がなされたが、平成25年10月1日付け(発送日同年10月8日)で拒絶査定がなされた。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成26年2月10日付けで請求された拒絶査定不服審判であり、平成26年2月10日付けで手続補正(明細書、特許請求の範囲又は図面について請求と同時にする補正)がなされた。

2 本願発明
平成26年2月10日付け手続補正のうち特許請求の範囲請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第5項第3号の誤記の訂正を目的とするものであり、また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年5月13日付け手続補正及び平成26年2月10日付け手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであり、次のとおりのものと認められる。

(A)メッセージを表示する方法であって、
(B)再生装置が第1のモードにあるかどうかを判定するステップであって、この第1のモードの間に時間間隔が増分され、前記再生装置がトリック再生機能に関連する第2のモードにあるときに、前記時間間隔は増分されない、ステップと、
(C)前記時間間隔に関連する時間値が、しきい値と等しいおよび前記しきい値を超えるの少なくとも1つであるときに、複数のメッセージ挿入ポイントからマルチメディアストリームのメッセージ挿入ポイントを特定するステップと、
(D)前記時間値の間隔が、しきい値と等しいおよび前記しきい値を超える、の少なくとも1つであるときに、後続する次のメッセージ挿入ポイントでのみ、マルチメディアストリームに第1のメッセージを挿入するステップと、
(E)を含む、前記方法。

((A)?(E)は、当審で付与した。以下各構成要件を「構成要件A」等という。)

第2 刊行物の記載事項
原査定における拒絶の理由に引用された国際公開第2008/001287号(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。(訳は、刊行物1の公表特許公報である特表2009-543407号公報による。)

(ア)「The present invention relates to a method and apparatus for broadcasting a television program, in particular to a method and apparatus for inserting advertisements in a broadcast television program.」(1頁5?7行)
[訳:本発明は、テレビジョン番組を放送する方法及び装置に関し、より詳細には放送テレビジョン番組に広告を挿入する方法及び装置に関する。]

(イ)「With the development of the information processing technology and the content distribution technology, Internet Protocol Television (IPTV) technology has been further developed. IPTV means to provide digital television services in unicast or multicast mode over an IP protocol based network.」(1頁16?19行)
[訳:情報処理技術及びコンテンツ分配技術の発展に伴い、インターネット・プロトコル・テレビジョン(IPTV)技術が更に開発された。IPTVは、デジタル・テレビジョン・サービスをユニキャスト又はマルチキャスト・モードでIPプロトコルに基づくネットワークを介して提供する。]

(ウ)「Fig. 1 is the schematic flow chart of a method for inserting an advertisement segment into a television program of an IPTV channel according to an embodiment of the invention. The television program is being viewed by a user.」(4頁16?18行)
[訳:図1は、本発明の実施例による、IPTVチャンネルのテレビジョン番組に広告部分を挿入する方法のフローチャートを図示する。テレビジョン番組はユーザーにより視聴されている。]

(エ)「An Internet protocol digital television broadcaster or an Internet protocol digital television operator carries out a predefined advertisement policy for each IPTV channel. The advertisement policy of an IPTV channel may comprise: providing the user with an advertisement segment based on the length of time during which the user has viewed the television program; providing the user with the advertisement segment based on the program location of the television program viewed by the user; providing the user with the advertisement segment based on the type of the television program the user is viewing. Each IPTV channel may perform the same advertisement policy as other IPTV channels, or a different one from the others. The advertisement policy of an IPTV channel may preferably comprise sending to the user the user's favorite advertisements in accordance with the user's preference as much as possible.」(4頁19?29行)
[訳:インターネット・プロトコル・デジタル・テレビジョン放送局又はインターネット・プロトコル・デジタル・テレビジョン業者は、所定の広告ポリシーをIPTVチャンネル毎に実行する。IPTVチャンネルの広告ポリシーは、ユーザーがテレビジョン番組を視聴していた時間長に基づきユーザーに広告部分を提供する段階、ユーザーにより視聴されたテレビジョン番組の番組位置に基づきユーザーに広告部分を提供する段階、及びユーザーが視聴しているテレビジョン番組の種類に基づきユーザーに広告部分を提供する段階、を有してよい。各IPTVチャンネルは、他のIPTVチャンネルと同一の広告ポリシー、又は他と異なる広告ポリシーを実行してよい。IPTVチャンネルの広告ポリシーは、望ましくは、ユーザーの好みに従い可能な限りユーザーの好みに合った広告をユーザーへ送信する段階、を有する。]

(オ)「The length of time during which a user has viewed the television program may be toward an IPTV channel, a television program, or a plurality of IPTV channels.」(4頁30?31行)
[訳:ユーザーがテレビジョン番組を視聴している時間長は、IPTVチャンネル、テレビジョン番組、又は複数のIPTVチャンネルに関してよい。]

(カ)「Furthermore, the plurality of IPTV channels can perform a common advertisement policy. For example, CCTV-1, CCTV-2, CCTV-3, CCTV-4, CCTV-5 and CCTV-6 perform the following advertisement policy: providing an advertisement segment of three minutes to a user when the viewer has viewed the television programs of the above six IPTV channels over 30 minutes. Another example, providing an advertisement segment of two minutes to a user when the viewer has viewed news programs of these four channels, i.e. CCTV-1, CCTV-2, CCTV-3 and CCTV-4, , over 30 minutes.」(4頁32行?5頁5行)
[訳:更に、複数のIPTVチャンネルは、共通の広告ポリシーを実行してよい。例えば、CCTV-1、CCTV-2、CCTV-3、CCTV-4、CCTV-5、及びCCTV-6は、次の広告ポリシーを実行する。つまり、視聴者が上述の6個のIPTVチャンネルのテレビジョン番組を30分に亘り視聴していた場合に、3分間の広告部分をユーザーに提供する段階、である。別の例では、視聴者が上述の4個のIPTVチャンネル、つまりCCTV-1、CCTV-2、CCTV-3、CCTV-4のニュース番組を30分に亘り視聴していた場合に、2分間の広告部分をユーザーに提供する。]

(キ)「Firstly, a request from a user is received, the request asks for viewing a television program of an IPTV channel (step S110). Upon this request, the television program is delivered to the user in a IPTV propagation mode.」(5頁14?16行)
[訳:最初に、ユーザーから、IPTVチャンネルのテレビジョン番組を視聴することを求める要求が受信される(段階S110)。当該要求を受けると、テレビジョン番組はIPTV伝搬モードでユーザーへ分配される。]

(ク)「Secondly, the viewing behavior of the user toward the television program is monitored according to the advertisement policy of the IPTV channel (step S120).
The advertisement policy of the IPTV channel may be providing the user with an advertisement segment of three minutes if the user has viewed the television programs of the IPTV channel over 30 minutes. According to the advertisement policy, the accumulative time of the user viewing the television programs of the IPTV channel is recorded.」(5頁31行?6頁5行)
[訳:次に、テレビジョン番組を視聴するユーザーの動作は、IPTVチャンネルの広告ポリシーにより監視される(段階S120)。
IPTVチャンネルの広告ポリシーは、ユーザーがIPTVチャンネルのテレビジョン番組を30分間に亘り視聴していた場合に、ユーザーに3分間の広告部分を提供する段階であってよい。広告ポリシーによると、ユーザーがIPTVチャンネルのテレビジョン番組を視聴している累積時間が記録される。]

(ケ)「While recording the accumulative time of the user viewing the television programs of the IPTV channel, if the user performs operations like channel switch, fast forward, fast backward, pause, or stop viewing the television program, the recording is paused and the current accumulative time of the user viewing the television programs of the IPTV channel is stored temporarily. The temporarily stored accumulative time can be cleared to zero after a certain period of time, such as one day.」(6頁6?11行)
[訳:ユーザーがIPTVチャンネルのテレビジョン番組を視聴していた累積時間を記録すると同時に、ユーザーが視聴しているテレビジョン番組のチャンネル切り替え、早送り、巻き戻し、一時停止、又は停止のような操作を実行した場合に、記録は一時停止され、ユーザーがIPTVチャンネルのテレビジョン番組を視聴していた現在の累積時間が一時的に格納される。一時的に格納された累積時間は、1日のような特定の時間期間の後にゼロにクリアされてよい。]

(コ)「When the user continues to normally view the television program (e.g., pause is cancelled or the IPTV channel is switched back), the last accumulative time of the user viewing the television programs of the IPTV channel is read and the recording of the accumulative time of the user viewing the television programs of the IPTV channel is resumed. The television program being normally viewed continuously may be same as or different from the television program normally viewed last time.」(6頁12?17行)
[訳:ユーザーがテレビジョン番組を普通に視聴し続ける(例えば、一時停止が解除されるか、IPTVチャンネルの切り替えが戻される)場合、ユーザーがIPTVチャンネルのテレビジョン番組を視聴していた最後の累積時間が読み出され、ユーザーがIPTVチャンネルのテレビジョン番組を視聴していた累積時間の記録が再開される。普通に連続的に視聴されたテレビジョン番組は、最後に普通に視聴されたテレビジョン番組と同一であっても異なってもよい。]

(サ)「Thirdly, whether the viewing behavior matches the advertisement policy is determined (step S130). 」(6頁18?19行)
[訳:次に、視聴動作が広告ポリシーに一致するか否かが決定される(段階S130)。]

(シ)「The monitored viewing behavior of the user on the IPTV channel is compared with the predefined advertisement policy of the IPTV channel, whether to insert the advertisement segment is determined based on the advertisement policy.」(6頁20?22行)
[訳:監視されたIPTVチャンネルのユーザーの視聴動作は、IPTVチャンネルの所定の広告ポリシーと比較され、広告部分を挿入するか否かが広告ポリシーに基づき決定される。]

(ス)「If the user has viewed the television programs of the IPTV channel he/she selected over 30 minutes, the viewing behavior matches the viewing behavior of a user viewing the television program defined in the advertisement policy.」(6頁23?25行)
[訳:ユーザーが30分間に亘り選択したIPTVチャンネルのテレビジョン番組を視聴していた場合、視聴動作は、広告ポリシーで定められたテレビジョン番組を視聴しているユーザーの視聴動作と一致する。]

(セ)「Fourthly, if the decision result is true, the advertisement segment is inserted into the television program (step S140).」(6頁26?27行)
[訳:次に、決定結果が正しい場合、広告部分がテレビジョン番組に挿入される(段階S140)。]

(ソ)「If the advertisement segment needs to be inserted in accordance with the advertisement policy, the advertisement segment is inserted into the television program. The location information of the program into which the advertisement needs to be inserted is read, the program location is the location of the television program when the user has viewed the television programs of the IPTV channel over 30 minutes. According to the advertisement policy, an advertisement segment of three minutes is acquired and inserted into the television program at the location where the advertisement segment needs to be inserted.」(6頁28行?7頁2行)
[訳:広告部分が広告ポリシーに従い挿入される必要がある場合、広告部分はテレビジョン番組に挿入される。広告が挿入される必要のある番組の位置情報が読み出される。番組位置は、ユーザーが30分間に亘りIPTVチャンネルのテレビジョン番組を視聴した場合のテレビジョン番組ジョンの位置である。広告ポリシーに従い、3分間の広告部分が取得され、広告部分が挿入される必要のある位置でテレビジョン番組に挿入される。]

(タ)「Such an insertion may generate an integrated stream by inserting the advertisement segment into the television program. The detailed procedure comprises: compression encoding and transcoding the advertisement segment and the television program, and generating an integrated stream.」(7頁3?6行)
[訳:このような挿入は、広告部分をテレビジョン番組に挿入することにより統合されたストリームを生成してよい。詳細な手順は、広告部分とテレビジョン番組を圧縮符号化及びトランスコーディングする段階、及び統合ストリームを生成する段階、を有する。]

(チ)「After transmitting the integrated stream to a user, if the user continues to view the television program of the IPTV channel, after the advertisement of three minutes elapses, the length of time during which the user views the IPTV channel will be cleared to zero, and the accumulative time of the user viewing the television programs of the IPTV channel will be recorded for the next time, when the accumulative time again reaches 30 minutes, an advertisement of three minutes is inserted again according to the advertisement policy predefined by the IPTV channel.
If the server of the IPTV broadcaster detects that the user has a channel switching behavior during the playing time of three minutes advertisement, the transmission of the integrated stream is paused, and will be resumed after the user switches back to the IPTV channel.」(9頁18?28行)
[訳:統合ストリームをユーザーへ送信した後、ユーザーがIPTVチャンネルのテレビジョン番組を視聴し続ける場合、3分間の広告が経過した後、ユーザーがIPTVチャンネルを視聴していた時間長がゼロにクリアされ、ユーザーがIPTVチャンネルのテレビジョン番組を視聴していた累積時間は次回のために記録される。累積時間が再び30分に達すると、IPTVチャンネルにより予め定められた広告ポリシーに従い3分間の広告が再び挿入される。
IPTV放送局のサーバーが、3分間の広告の再生時間中にユーザーがチャンネルを切り替えたことを検出した場合、統合ストリームの送信は一時停止され、ユーザーがIPTVチャンネルへ戻した後に再開する。]

(ツ)「According to the invention, whenever the accumulative time of the user viewing the television programs of the IPTV channel reaches 30 minutes, the advertisement policy predefined by the IPTV channel is performed automatically and an advertisement of three minutes is inserted. Therefore, during the user viewing the network television program, the user will have to view the advertisement segment according to the predefined advertisement policy even though the user performs operations such as channel switching, fast forward, fast backward, or re-log in the IPTV service.」(9頁29行?10頁2行)
[訳:本発明によると、ユーザーがIPTVチャンネルのテレビジョン番組を視聴している累積時間が30分に達すると何時でも、IPTVチャンネルにより予め定められた広告ポリシーが自動的に実行され、3分間の広告が挿入される。従って、ユーザーがネットワーク・テレビジョン番組を視聴している間に、ユーザーがチャンネルの切り替え、早送り、巻き戻し、又はIPTVサーバーへの再ログインのような操作を実行した場合でも、ユーザーは所定の広告ポリシーに従い広告部分を視聴しなければならない。]

(テ)「Once the user uses the IPTV service, the monitoring behavior in step S140 is triggered and will be performed continuously, thus, for various advertisement policies, the monitoring behavior may obtain the user's corresponding behavior for a television program, an IPTV channel, or multiple IPTV channels performing the same advertisement policy.」(10頁3?7行)
[訳:ユーザーがIPTVサービスを使用すると、段階S140で、監視動作が開始され、連続的に実行される。従って、種々の広告ポリシーで、動作の監視により、テレビジョン番組、IPTVチャンネル、又は同一の広告ポリシーを実行する複数のIPTVチャンネルに対するユーザーの対応する動作が得られる。]

(ト)「The inserting in step S 140 can be performed by seamlessly switching between the advertisement segment program stream and the television program stream.」(10頁8?9行)
[訳:段階S140の挿入は、広告部分の番組ストリームとテレビジョン番組ストリームとの間のシームレスな切り替えにより実行されうる。]

第3 対比
1 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、チャンネル毎にテレビジョン番組を視聴していた累積時間を記録し、累積時間が所定値になると広告部分をテレビジョン番組に挿入することにより統合されたストリームを生成し、ユーザに送信する(上記(ク)?(チ))ことが記載され、累積時間を記録することに関し、テレビジョン番組を視聴していた累積時間を記録するにあたり、ユーザーが視聴しているテレビジョン番組のチャンネル切り替え、早送り、巻き戻し、一時停止、又は停止のような操作を実行した場合に、記録は一時停止され、ユーザーがIPTVチャンネルのテレビジョン番組を視聴していた現在の累積時間が一時的に格納される(上記(ケ))ことが記載されている。
そして、複数のチャンネルにおいてテレビジョン番組を視聴していた累積時間が所定値になると、広告部分を提供すること(上記(カ))が記載されている。
また、刊行物1には、上記摘記事項全体から、「放送テレビジョン番組に広告を挿入する」ことが記載され、テレビジョン番組はユーザにより視聴され(上記(ウ))、広告部分をテレビジョン番組に挿入することにより統合されたストリームを生成し、ユーザに送信する(上記(タ)、(チ))から、刊行物1には、広告を表示する方法が記載されている。

以上より、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

「テレビジョン番組を視聴していた累積時間を記録するにあたり、ユーザーが視聴しているテレビジョン番組の早送り、巻き戻し、一時停止、又は停止のような操作を実行した場合に、記録は一時停止され、ユーザーがテレビジョン番組を視聴していた現在の累積時間が記録され、
累積時間が所定値になると広告部分をテレビジョン番組に挿入することにより統合されたストリームを生成し、ユーザに送信する
広告を表示する方法。」

2 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

(1)構成要件A
本願発明の「メッセージ」は、本願明細書段落【0010】によれば、「静的な広告、アクティブな広告、および/または上記1つまたは複数の組み合わせでもよい」から、広告を含むものである。
刊行物1発明は、「広告を表示する方法」であるから、「メッセージを表示する方法」といえ、本願発明と一致する。

(2)構成要件B
刊行物1発明は、ユーザーがテレビジョン番組を視聴するのであるから、視聴する装置があることは明らかである。そして、刊行物1発明は、「ユーザーが視聴しているテレビジョン番組の早送り、巻き戻し、一時停止、又は停止のような操作」ができるものであり、このような操作ができる視聴する装置は「再生装置」といえる。
そして、刊行物1発明は、「テレビジョン番組を視聴していた累積時間を記録すると同時に、ユーザーが視聴しているテレビジョン番組の早送り、巻き戻し、一時停止、又は停止のような操作を実行した場合に、記録は一時停止され、ユーザーがテレビジョン番組を視聴していた現在の累積時間が記録され」るものであり、テレビジョン番組を視聴しているときは、再生装置がテレビジョン番組を視聴できるモードといえ、このモードは第1のモードともいえ、テレビジョン番組の早送り、巻き戻しの操作は、トリック再生といえ、第1のモードとは異なるモードであるから、第2のモードといえる。刊行物1発明は、第1のモードの間に累積時間が記録され、第2のモードでは、記録が停止される。
また、累積時間は「時間間隔」といえる。
したがって、刊行物1発明は、「再生装置が第1のモードにあるかどうかを判定するステップであって、この第1のモードの間に時間間隔が増分され、前記再生装置がトリック再生機能に関連する第2のモードにあるときに、前記時間間隔は増分されない、ステップ」を含む点で、本願発明と一致する。

(3)構成要件C
刊行物1発明は、「前記時間間隔に関連する時間値が、しきい値と等しいおよび前記しきい値を超えるの少なくとも1つであるときに、複数のメッセージ挿入ポイントからマルチメディアストリームのメッセージ挿入ポイントを特定するステップ」を含んでおらず、本願発明と相違する。

(4)構成要件D
刊行物1発明は、「累積時間が所定値になると広告部分をテレビジョン番組に挿入することにより統合されたストリームを生成し、ユーザに送信する」ものであり、「累積時間が所定値になると」は、「時間間隔に関連する時間値の間隔が、しきい値と等しいおよび前記しきい値を超える、の少なくとも1つであるとき」といえる。上記(1)のとおり、広告はメッセージといえ、第1のメッセージともいえ、「広告部分をテレビジョン番組に挿入することにより統合されたストリームを生成」することは、「マルチメディアストリームに第1のメッセージを挿入する」ことに相当する。
したがって、刊行物1発明は、「時間間隔に関連する時間値の間隔が、しきい値と等しいおよび前記しきい値を超える、の少なくとも1つであるときに、マルチメディアストリームに第1のメッセージを挿入するステップ」を含む点で本願発明と一致する。
しかしながら、本願発明は「後続する次のメッセージ挿入ポイントでのみ、」マルチメディアストリームに第1のメッセージを挿入するのに対し、刊行物1発明はそうではない点で本願発明と相違する。

(5)構成要件E
上記のとおり、刊行物1発明は、ステップを含んでいるから、「を含む方法」といえ、この点で本願発明と一致する。

3 一致点、相違点
以上より、本願発明と引用発明との一致点、相違点は、次のとおりである。

(一致点)
メッセージを表示する方法であって、
再生装置が第1のモードにあるかどうかを判定するステップであって、この第1のモードの間に時間間隔が増分され、前記再生装置がトリック再生機能に関連する第2のモードにあるときに、前記時間間隔は増分されない、ステップと、
時間間隔に関連する時間値の間隔が、しきい値と等しいおよび前記しきい値を超える、の少なくとも1つであるときに、マルチメディアストリームに第1のメッセージを挿入するステップと、
を含む、前記方法。

(相違点1)
本願発明が
「前記時間間隔に関連する時間値が、しきい値と等しいおよび前記しきい値を超えるの少なくとも1つであるときに、複数のメッセージ挿入ポイントからマルチメディアストリームのメッセージ挿入ポイントを特定するステップ」を含み、
刊行物1発明が、上記ステップを含まない点。

(相違点2)
「時間間隔に関連する時間値の間隔が、しきい値と等しいおよび前記しきい値を超える、の少なくとも1つであるときに、マルチメディアストリームに第1のメッセージを挿入するステップ」が、本願発明においては「後続する次のメッセージ挿入ポイントでのみ、」マルチメディアストリームに第1のメッセージを挿入するのに対し、刊行物1発明はそうではない点。

第4 判断
予め設定されたシーンチェンジのような画像の切れ目に、広告を挿入することは周知の技術である(特開2002-158991号公報の段落【0023】、特開2001-257300号公報の段落【0037】、特開平7-203420号公報の段落【0024】等参照。)。
そして、刊行物1発明において、累積時間が所定時間になった場合に直ちに広告になると、番組の画面が突然変わることになり、違和感があることは普通に想定されるから、テレビジョン番組に広告を入れるという刊行物1発明に、上記周知の技術を適用して、刊行物1発明において、予め設定されたシーンチェンジのような画像の切れ目に、広告を挿入するようにすることは当業者が容易に着想することである。
予め設定されたシーンチェンジのような画像の切れ目に、広告を挿入するためには、画像の切れ目を特定しなければならないことは明らかであり、上記周知技術、とりわけ、特開2002-158991号公報の段落【0023】においては、人手により予め複数のシーンチェンジ点を選択しておくことが開示されていることを勘案すると、「複数のメッセージ挿入ポイントからマルチメディアストリームのメッセージ挿入ポイントを特定する」ことは当業者が容易に想到し得ることである。そして、特定されたメッセージ挿入ポイントは「後続する次のメッセージ挿入ポイント」といえる。
したがって、刊行物1発明に周知の技術を適用して、刊行物1発明に、「前記時間間隔に関連する時間値が、しきい値と等しいおよび前記しきい値を超えるの少なくとも1つであるときに、複数のメッセージ挿入ポイントからマルチメディアストリームのメッセージ挿入ポイントを特定するステップ」を含ませ、「後続する次のメッセージ挿入ポイントでのみ、」マルチメディアストリームに第1のメッセージを挿入するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものでもない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-12 
結審通知日 2014-11-18 
審決日 2014-12-01 
出願番号 特願2011-516237(P2011-516237)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白石 圭吾  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 藤井 浩
小池 正彦
発明の名称 ビデオストリームの配信に使用する間隔ベースの広告挿入  
復代理人 田中 久子  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
復代理人 濱中 淳宏  

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