• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08G
管理番号 1299736
審判番号 不服2014-8938  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-14 
確定日 2015-04-16 
事件の表示 特願2009-196292「車載装置及び車両監視システム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月10日出願公開,特開2011- 48608〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は,平成21年 8月27日の特許出願であって,平成25年12月12日付けで拒絶理由が通知され(発送日:同月17日),平成26年1月21日付けで意見書が提出されたが,同年 3月17日付けで拒絶査定(発送日:同月25日)がなされ,この査定を不服として,同年 5月14日に本件審判が請求されたところである。
この出願の請求項1ないし2に係る発明は,出願当初の特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。
「【請求項1】
1又は複数の車両の位置を監視する監視センタを備えた車両監視システムで用いられ,前記監視センタと通信網を介して接続される車載装置において,
前記車両が走行する道路の道路種別として一般道路と前記一般道路より制限速度の高い高速道路とを少なくとも含む複数の道路種別のうち,前記車両が現在走行している道路の前記道路種別を判定する道路種別判定手段と,
前記道路種別判定手段によって前記道路種別が前記一般道路と判定されたとき,前記一般道路に対応して予め設定された一般道路走行時送信距離間隔を走行する毎に,前記車両の位置に応じた位置情報を前記通信網を介して前記監視センタに送信する一般道路走行時送信手段と,
前記道路種別判定手段によって前記道路種別が前記高速道路と判定されたとき,前記高速道路に対応して予め設定された,前記一般道路走行時送信距離間隔より長い高速道路走行時送信距離間隔を走行する毎に,前記位置情報を前記通信網を介して前記監視センタに送信する高速道路走行時送信手段と,を有している
ことを特徴とする車載装置。」

2.刊行物とその記載事項
(1)原査定における拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-117488号公報(以下,「刊行物1」という。)には,「移動体用通信装置」に関し,図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】 予め定めた運行経路を走行する移動体の位置を検出する位置検出手段と,
前記移動体の走行距離を検出する走行距離検出手段と,
前記走行距離検出手段で検出した走行距離が前回送信した移動体の位置から予め定めた基準距離を越えたか否かを判断する判断手段と,
前記判断手段の結果に基づいて,前記位置検出手段で検出した移動体の位置を,基地局へ向けて送信する送信手段と,
を備えた移動体用通信装置。
【請求項2】 前記移動体の移動速度を検出する速度検出手段と,前記速度検出手段の検出結果に基づいて前記基準距離を変更する速度用変更手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の移動体用通信装置。」

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,移動体用通信装置にかかり,特に,走行経路を走行する移動体の走行に関する情報を提供するための移動体用通信装置に関する。」

ウ.「【0004】これを解消するため,バス等の移動体の現在位置情報を一定時間間隔で送信することが可能なバスデータ送信方法が提案されている(特開平8-235497号公報参照)。この技術では,バスの位置を把握しながら一定時間を経過すると,そのままバスの位置を基地局側に送信している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,移動体の走行は乗客の昇降状況や交通状況(例えば渋滞)等によって変化するので,移動体の走行距離が僅かであるにも拘わらず,多くのデータ送信が実施され,結果的にほぼ重複したデータが送信される場合がある。これによって,通信コスト上昇を招いてしまっていた。
【0006】本発明は,上記事実を考慮して,移動体の走行を含めた運行に関して必要な情報のみを簡単な構成により提供することができる移動体用通信装置を得ることが目的である。」

エ.「【0010】前記移動体用通信装置は,前記移動体の移動速度を検出する速度検出手段と,前記速度検出手段の検出結果に基づいて前記基準距離を変更する速度用変更手段とをさらに備えることができる。
【0011】移動体は,その走行に,高速道路等の有料道路や,徐行が規定される走行路を走行する場合がある。このような場合,一定の基準距離を定めていたのでは,通信回数にばらつきが生じてしまう。そこで,移動体の移動速度に応じて基準距離を変更すれば,走行中の移動体はほぼ一定間隔でその位置を送信することができる。例えば,移動体の速度が速くなるに従って距離が長くなるように設定したり,遅くなるに従って距離が短くなるように設定したりすることができる。」

オ.「【0015】
【発明の実施の形態】以下,図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。本実施の形態はバスロケーション案内システムに本発明を適用したものである。本バスロケーション案内システムは,路線バス自身で連続的に自車位置を検出し,路線バスの位置をセンタ側で把握するものである。
【0016】〔第1実施の形態〕図1には,本実施の形態のバスロケーション案内システム10の概念構成を示した。本実施の形態のバスロケーション案内システム10では,車載機30を搭載した路線バス12が,予め定めた運行経路14に従って走行する。運行経路14上には,乗客を昇降するための複数(ここでは,4箇所)の停留所BS1,BS2,BS3,BS4が定められている。
【0017】路線バス12は,路線バス用通信装置40及びGPS41に接続された車載機30を搭載している(詳細は後述)。路線バス用通信装置40は,路線バス外と情報を通信するためのものである。GPS41は,GPS用衛星20A,20B,20Cからの信号を受信して自己の位置を検出するためのものである。路線バス12に搭載された車載機30は,GPS用衛星20A,20B,20CからのGPS信号により自己の位置(現在位置)を特定し,通信により路線バス外へ送信する。
【0018】本実施の形態のバスロケーション案内システム10には,運行経路を走行する路線バス12の運行を管理するための運行管理センタ19が設置されている。この運行管理センタ19は,路線バスから送られる情報を受信し,路線バスの現在位置を常時把握すると共に常時モニタするためのものである。すなわち,運行管理センタ19は,路線バス12に搭載された車載機30との間で情報授受を可能とする。なお,運行管理センタ19において,誤差を有するGPS信号を補正するためにGPS用衛星20A,20B,20Cからの信号を受信する構成とすることもできる。」

カ.「【0020】なお,本実施の形態では,1つの運行経路14を走行する路線バス12について説明するが,本発明はこれに限定されるものではなく,複数の運行経路の各々のに1または複数の路線バスが走行している運行を管理する場合にも適用が可能である。」

キ.「【0046】〔第2実施の形態〕本実施の形態は,路線バスの車速に応じて位置データを送信するタイミングを変更する場合に本発明を適用したものである。なお,本実施の形態は,上記実施の形態と略同様の構成のため,同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0047】本実施の形態では,路線バス12に取り付けられた車載機30では,図6に示す処理ルーチンが実行される。図6の処理と図4の処理で異なる点は,図5のステップ100に対して図6のステップ120乃至ステップ128の処理が実行される点である。
【0048】図6に示すように,路線バス12に取り付けられた車載機30では,所定時間(例えば1分)毎に以下の割り込み処理が実行され,ステップ120においてGPS41によりGPS用衛星20A?20CからのGPS信号を受信し,自己の位置すなわち路線バス12の現在位置(例えば緯経度)を算出する。次のステップ122では,路線バス12の走行状態を検出する。本実施の形態では,路線バス12の車速Vを検出する。
【0049】次のステップ124では,V≧V0か否かを判断することによって,路線バス12が一定速度以上で走行しているか否かを判別する。このステップ124は,路線バスが高速走行しているか否かを判断するものである。V0は,予め定めた車速であり,例えば一般道路の法定速度を越えた高速道路の最低速度を定めることができる。
【0050】ステップ124で肯定されると,路線バス12は高速走行中であるため,ステップ126へ進み,基準距離を長く設定する(L0←L1:L0<L1)。一方,ステップ124で否定されると,路線バス12は通常走行中であるため,ステップ128へ進み,基準距離を短く(通常に)設定する(L0←L2:L2<L1)。これら,ステップ126及び128の設定は,高速走行時には通信のタイミングである走行距離を広げて通信頻度を抑制するためである。
【0051】次に,上記と同様に,路線バスの走行距離(L=P-P0)を算出する(ステップ102)。そして,路線バス12が一定距離を走行した後のデータ送信の時期で,L≧L0であるとき(ステップ104で肯定),現在位置データ(位置P)を運行管理センタ19へ向けて送信し(ステップ106),する。次回の判断のために,現在位置を前回の位置として(P0←P)メモリに記憶し(ステップ108),走行距離Lの値をクリア(L=0)する(ステップ110)。
【0052】このように,高速走行中には判断基準となる基準距離を長く変更し,路線バス12からは,長く設定された一定距離(L0)毎に路線バス12の位置データが送信されるので,高速走行によって短時間で走行距離が長い,すなわち路線バス12の位置変化(移動量)が大きい場合であっても,頻繁にデータ送信(通信)が実施されることがない。このため,通信頻度を抑制,また通信コストを抑制することができる。
【0053】上記図6のステップ122の処理は,本発明の速度検出手段で実現される処理に相当し,ステップ124乃至ステップ128の処理の一部は,本発明の速度用変更手段で実現される処理に相当する。」

ク.段落【0046】?【0053】の記載事項および図6の内容から,以下の事項が理解できる。
・路線バス12が一般道路の法定速度を超えた高速道路の最低速度に定めた一定速度以上で走行しているか否かにより,高速走行中か通常走行中かを判別すること。
・通常走行中と判定されたとき,基準距離を通常(L0←L2)に設定して,路線バス12の前回に現在位置を送信した位置からの走行距離を検出して,走行距離が通常の基準距離(L2)を超えたか否かを判断し,走行距離が基準距離を超えたときに,前記路線バス12の現在位置データを運行管理センタ19に向けて送信すること。
・高速走行中と判定されたとき,高速走行に対応して予め設けられた前記通常の基準距離(L2)よりも長く設定された一定距離(L0←L1)毎に前記路線バス12の現在位置データを運行管理センタ19に向けて送信すること。

ケ.そして,段落【0017】等の記載事項により,路線バス12の現在位置データを運行管理センタ19に向けて送信する場合には,路線バス用通信装置40等を介して送信することが理解できる。

コ.これらの事項及び図示内容を,特に請求項2に係る発明と第2実施の形態に着目しつつまとめると,刊行物1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「一又は複数の路線バス12の現在位置を把握する運行管理センタ19を備えたバスロケーション案内システム10で用いられ,前記運行管理センタ19と路線バス用通信装置40,GPS41及びGPS用衛星20A,20B,20Cを介して情報授受を可能とする車載機30において,
前記路線バス12が一般道路の法定速度を超えた高速道路の最低速度に定めた一定速度以上で走行しているか否かにより,高速走行中か通常走行中かを判別する手段と,
通常走行中と判定されたとき,基準距離を通常(L0←L2)に設定して,路線バス12の前回に現在位置を送信した位置からの走行距離を検出して,走行距離が通常の基準距離(L2)を超えたか否かを判断し,走行距離が基準距離を超えたときに,前記路線バス12の現在位置データを路線バス用通信装置40等を介して運行管理センタ19に向けて送信する手段と,
高速走行中と判定されたとき,高速走行に対応して予め設けられた前記通常の基準距離(L2)よりも長く設定された一定距離(L0←L1)毎に前記路線バス12の現在位置データを路線バス用通信装置40等を介して運行管理センタ19に向けて送信する手段と,を有している,車載機30。」

(2)原査定における拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-199371号公報(以下,「刊行物2」という。)には,「車両管理システムならびに移動局装置および基地局装置」に関し,図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,各種業務用車両の運行などを,各車両とセンタとの間で通信を行いながら管理する車両管理システムならびに移動局装置および基地局装置に関する。」

イ.「【0037】
ETC機器13の作動によって,高速道路などの有料道路の料金所から入る時点と,料金所から出る時点とを,高い信頼性で知ることができる。すなわち,入口側の料金所から出口側の料金所までの間を車両2が走行中であるか否かを確実に判断することができる。車両が入口側の料金所を通過して出口側の料金所に向って走行中であるときは,少なくとも出口側の料金所を通過するまでは,有料道路から離れることができない。この間に車両2に対して有料道路から離れるような指示を行っても,有効な指示とはいえない。車両2は有料道路を走行していることは確実であるので,車両2の自車位置のデータを高頻度に通信しても,走行中の有料道路上の位置であり,容易に予測可能である。また車両2の動態にも変更は生じない。
【0038】
そこで,移動局装置3と管理センタ4の基地局装置5とは,車両2が料金所間の有料道路に入ってから出るまでの間,通信を抑制する。これによって,車両2の管理上有効でないデータの送受に要する負担を軽減することができる。車両2がタクシーなどであれば,走行している有料道路から出られない位置では配車を行わないようにすることができる。顧客からの配車要求があれば,有料道路走行中の車両2が近い位置にいても,顧客を迎えに行くことはできないので,有料道路等を走行中でない他の車両に配車指示を行う方が,迎車までの待ち時間を少なくして,迅速な顧客サービスを実現することができる。
【0039】
なお,車両2に,有料道路の入出場の際,料金所に設置した路側アンテナとの間で無線通信を行って,利用料金を自動的に決済するETC機器13を搭載しているけれども,有料道路などに局地的な放送を行うビーコンなどが設置されているときに,その放送を受信する機器を搭載していれば,その道路を走行中であることを検出することができる。・・・」

3.発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると,後者の「路線バス12」は前者の「車両」に相当し,以下同様に,「現在位置」は「位置」に,「運行管理センタ19」は「監視センタ」に,「バスロケーション案内システム10」は「車両監視システム」に,「路線バス用通信装置40,GPS41及びGPS用衛星20A,20B,20C」または「路線バス用通信装置40等」は「通信網」に,「情報授受を可能とする」態様は「接続される」態様に,「車載機30」は「車載装置」に,それぞれ相当する。
後者の「一又は複数の路線バス12の現在位置を把握する運行管理センタ19を備えたバスロケーション案内システム10で用いられ,前記運行管理センタ19と路線バス用通信装置40,GPS41及びGPS用衛星20A,20B,20Cを介して情報授受を可能とする車載機30」は,前者の「一又は複数の車両の位置を監視する監視センタを備えた車両監視システムで用いられ,前記監視センタと通信網を介して接続される車載装置」に相当する。
後者の「前記路線バス12が一般道路の法定速度を超えた高速道路の最低速度に定めた一定速度以上で走行しているか否かにより,高速走行中か通常走行中かを判別する手段」と,前者の「前記車両が走行する道路の道路種別として一般道路と前記一般道路より制限速度の高い高速道路とを少なくとも含む複数の道路種別のうち,前記車両が現在走行している道路の前記道路種別を判定する道路種別判定手段」とは,いずれも「判定手段」に関するという限りで一致している。
後者の「通常走行中と判定されたとき,基準距離を通常(L0←L2)に設定して,路線バス12の前回に現在位置を送信した位置からの走行距離を検出して,走行距離が通常の基準距離(L2)を超えたか否かを判断し,走行距離が基準距離を超えたときに,前記路線バス12の現在位置データを路線バス用通信装置40等を介して運行管理センタ19に向けて送信する手段」は,通常走行時つまり「一般道路の法定速度を超えた高速道路の最低速度」以上でない一般走行時の基準距離間隔を走行する毎に,前記路線バス12の現在位置データを路線バス用通信装置40等を介して運行管理センタ19に向けて送信するものであるから,前者の「前記道路種別判定手段によって前記道路種別が前記一般道路と判定されたとき,前記一般道路に対応して予め設定された一般道路走行時送信距離間隔を走行する毎に,前記車両の位置に応じた位置情報を前記通信網を介して前記監視センタに送信する一般道路走行時送信手段」とは,「予め設定された一般走行時送信距離間隔を走行する毎に,前記車両の位置に応じた位置情報を前記通信網を介して前記監視センタに送信する一般走行時送信手段」という概念で共通する。
後者の「高速走行中と判定されたとき,高速走行に対応して予め設けられた前記通常の基準距離(L2)よりも長く設定された一定距離(L0←L1)毎に前記路線バス12の現在位置データを路線バス用通信装置40等を介して運行管理センタ19に向けて送信する手段」と,前者の「前記道路種別判定手段によって前記道路種別が前記高速道路と判定されたとき,前記高速道路に対応して予め設定された,前記一般道路走行時送信距離間隔より長い高速道路走行時送信距離間隔を走行する毎に,前記位置情報を前記通信網を介して前記監視センタに送信する高速道路走行時送信手段」とは,「予め設定された,前記一般走行時送信距離間隔より長い高速走行時送信距離間隔を走行する毎に,前記位置情報を前記通信網を介して前記監視センタに送信する高速走行時送信手段」という概念で共通する。

そうすると,両者は,
「一又は複数の車両の位置を監視する監視センタを備えた車両監視システムで用いられ,前記監視センタと通信網を介して接続される車載装置において,
判定手段と,
予め設定された一般走行時送信距離間隔を走行する毎に,前記車両の位置に応じた位置情報を前記通信網を介して前記監視センタに送信する一般走行時送信手段と,
予め設定された,前記一般走行時送信距離間隔より長い高速走行時送信距離間隔を走行する毎に,前記位置情報を前記通信網を介して前記監視センタに送信する高速走行時送信手段と,を有している,車載装置。」
の点で一致し,以下の点で相違すると認められる。
<相違点>
前記判定手段に関して,本願発明では,「車両が走行する道路の道路種別として一般道路と前記一般道路より制限速度の高い高速道路とを少なくとも含む複数の道路種別のうち,前記車両が現在走行している道路の前記道路種別を判定する道路種別判定手段」であるのに対して,引用発明では,路線バス12が一般道路の法定速度を超えた高速道路の最低速度に定めた一定速度以上で走行しているか否かにより,高速走行中か通常走行中かを判別する手段である点,
前記一般走行時送信手段に関して,本願発明では,「前記道路種別判定手段によって前記道路種別が前記一般道路と判定されたとき,前記一般道路に対応して予め設定された一般道路走行時送信距離間隔を走行する毎に,前記車両の位置に応じた位置情報を前記通信網を介して前記監視センタに送信する一般道路走行時送信手段」であるのに対して,引用発明では,前記判定手段によって,通常走行(一般走行)時と判定されたとき,予め設定された一般走行時送信距離間隔を走行する毎に,前記車両の位置に応じた位置情報を前記通信網を介して前記監視センタに送信する一般走行時送信手段である点,および,
前記高速走行時送信手段に関して,本願発明では,「前記道路種別判定手段によって前記道路種別が前記高速道路と判定されたとき,前記高速道路に対応して予め設定された,前記一般道路走行時送信距離間隔より長い高速道路走行時送信距離間隔を走行する毎に,前記位置情報を前記通信網を介して前記監視センタに送信する高速道路走行時送信手段」であるのに対して,引用発明では,前記判定手段によって,高速走行時と判定されたとき,高速走行時に対応して予め設定された,前記一般走行時送信距離間隔より長い高速走行時送信距離間隔を走行する毎に,前記位置情報を前記通信網を介して前記監視センタに送信する高速走行時送信手段である点。

4.相違点の検討
引用発明は,「路線バス12が一般道路の法定速度を超えた高速道路の最低速度に定めた一定速度以上で走行しているか否かにより,高速走行中か通常走行中かを判別する手段」を備えるものであるが,これは,引用発明を開示する刊行物1の段落【0011】等の記載にあるように,そもそも移動体(路線バス)が走行する道路種類によって移動体の速度が変わり,それに起因して通信回数のばらつきが生じるという認識の上に立つものである(前記「2.(1)エ」等を参照。)
通信回数にばらつきが生じる直接の原因は,移動体の速度が変化することであるが,そのような移動体の速度が変化する前提として,当然移動体の速度が異なるであろう道路の種類の違いが認識されているのである。
また,そもそも車両監視システムの技術分野では,「高速走行」を「高速道路」と,「通常走行」を「一般道路」とにそれぞれ関連付けることは極めてありふれた事項なのであって,道路種別判定手段として,車速をもとに判定するようなことはよく知られた事項である(必要があれば,特開2003-312307号公報の段落【0018】,特開2008-57646号公報の段落【0027】,特開2004-234418号公報の段落【0029】を参照のこと。)。
そうすると,引用発明における「高速走行中か通常走行中かを判別する」ことに替えて,”道路の種別を判別する”こと自体は,当業者にとって容易に着想し得た範囲内の事項というべきである。
そして,刊行物2には,高速道路等の有料道路を走行しているか否か,即ち道路種別により通信を抑制する点が記載されている(以下,「刊行物2に記載された事項」という。)のだから,これを考慮すれば,引用発明において,相違点に係る本願発明の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
そして,本願発明の構成によって,引用発明,刊行物2に記載された事項からみて,格別の効果が奏されるものともいえない。
したがって,本願発明は,引用発明,刊行物2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明,刊行物2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると,このような特許を受けることができない発明を包含する本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-13 
結審通知日 2015-02-17 
審決日 2015-03-02 
出願番号 特願2009-196292(P2009-196292)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白石 剛史  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 藤井 昇
関口 哲生
発明の名称 車載装置及び車両監視システム  
代理人 鳥野 正司  
代理人 津田 俊明  
代理人 朴 志恩  
代理人 瀧野 文雄  
代理人 瀧野 秀雄  
代理人 川崎 隆夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ