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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E06B
管理番号 1299809
審判番号 不服2014-142  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-06 
確定日 2015-04-09 
事件の表示 特願2009-249525号「改装窓及び改装窓の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年7月15日出願公開、特開2010-156193号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年10月29日(優先権主張 平成20年12月1日)の出願であって、平成25年10月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年1月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年1月6日付け手続補正書により補正(以下、「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。なお、本件補正は、補正前の請求項1ないし3を削除するものであり、本件補正後の請求項2に係る発明は、拒絶査定時の(本件補正前の)請求項5に係る発明である。

「既設窓枠を取り外すことなく新設窓枠を取り付ける改装窓の製造方法において、
新設窓枠を既設窓枠に接合させたのち、新設窓枠と既設窓枠との間に生じる室外側と室内側の隙間部分のいずれか一方あるいは両方を粘着テープで塞ぎ、該粘着テープに2液性のポリウレタン原料を注入する注入孔を穿設し、該注入孔から、新設窓枠と既設窓枠との間の空間部分の略全体に2液性のポリウレタン原料を注入し、2液性のポリウレタン原料を硬化反応させることで発泡ポリウレタンとすることを特徴とする改装窓の製造方法。」

第3 引用刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前(以下、単に「本願出願前」という。)に頒布された刊行物は、次のとおりである。

実願昭54-40577号(実開昭55-141691号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)

1 引用例に記載の事項
引用例には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。)。

(1)「(1) 建造物の開口部にサツシ用窓枠を嵌め込む窓枠構造に於て、窓枠の室外側フランジには、開口部の周辺外側面にシール材を介して当接するための延出部を形成せしめ該窓枠を室内側寄りの複数個所にて建造物に仮止めすることにより窓枠と建造物間をシール材にて密閉し、他方開口部の周辺内側面と窓枠間を塞ぎ材にて密閉した後、発泡性合成樹脂を発泡充填することにより窓枠を固定する窓枠の取付構造。」(実用新案登録請求の範囲)

(2)「本考案は既設建造物の陳腐化した旧窓枠を新規な高性能の窓枠に改装する場合又は新規建造物の開口部に窓枠を嵌め込み固定する場合の窓枠の取付構造に関する。」(明細書1頁17?20行)

(3)「以下図面を参照して実施例につき其の詳細を説明する。第1図は窓枠の室内より見たる正面姿図にして、図示は引違い2枚障子の場合である。第2図は既設建造物の開口部に窓枠を嵌め込んだ縦断側面図にして上枠部を示し、第3図は同じく縦枠の横断面図、第4図は同じく下枠部の縦断側面図である。・・・・2は窓枠の上枠、3は縦枠、4は下枠である。5は建造物にして此の場合第2図?第4図は既設建造物の開口部に窓枠を嵌め込むことになるので、既設のスチール製窓枠が残置して開口部を構成しているので便宜上建造物と呼称した。6は窓障子が入るべき開口部である。7は上枠の室外側フランジにして、8は室外側フランジ7より開口部の反対側即ち建造物に向かつて連続して延びた延出部である。延出部8には建造物外側面に向けてC形溝9を形成し、溝内にポリエチレンフオーム等よりなるシール材10が充填され室外側フランジが建造物外側面に当接することにより完全に密閉され水密性をも保持する構成となつている。11は上枠の室内側フランジにして複数個所にて仮止めアンカー12により建造物に固定し得る。13は伸縮性大な透明なポリプロピレン粘着テープ又は粘着布入テープにして開口部6内に嵌装された窓枠と建造物間との空間を密閉するため貼附された塞ぎ材である。なお塞ぎ材の材質は適宜選択出来る。以上が上枠及び縦枠と建造物間の密閉構造である。次に下枠は窓台上に載置され室外に向けて水切板が設けられるのが一般にして本実施例に於ても建造物5に残置してる旧下枠に補助アンカー14を取り付け、仮止めアンカー12は一端は補助アンカーを介して他端は建造物に直接取付けられている。室外側の密閉の手段は水切板15を利用して上縁は下枠に下縁は建造物(図示は旧下枠鋼板)に取付けられている。此の場合水切板下端内側にポリエチレンフオームよりなるシール材10が充填されてることは勿論である。
次に本考案にて開口部6内に窓枠を取付固定する手順について概説する。図示は既設の改装を示したものにして建造物と一体となつてる旧鋼製窓枠を残して其の他は取除いた状態にして鋼製窓枠内が新建造物の開口部に相当するものである。先ず上枠2及び縦枠3の仮止めアンカー12を建造物5にビス16にて取り付ける。・・・・又補助アンカー14をビス16にて建造物に取付け、下枠取付けアンカー12’を一端を建造物(旧下枠)にビス16にて固定し、他端は補助アンカー14のビス止め用長孔17を利用して水平を出してビス止めする。
予め方形に組立てられたる窓枠を下枠取付アンカー12’上に載置する。此の場合上枠及び縦枠のC形溝9内には予めシール材10を装入しておくことを要す。・・・・次に水切り板15を下端内側にシール材10を装入した後上端をビス止めする。最后に建造物と窓枠間の空間を室内よりテープ13にて接着して密閉する。・・・・テープ13に小穴を明けポリウレタンフオーム等発泡性合成樹脂を注入発泡して空間を充填する。此の場合必要によりテープに内圧を逃がすための小孔を明けておくことを要する。本実施例の場合は小孔より溢出した発泡性合成樹脂はそのまゝにしておいても差支え無い。それは最終に化粧材として内部額縁18が四周に取付けられるからであり、内部額縁の下枠に対して取付けられたものは膳板の役を果す。
以上の現場作業にて注入した発泡性合成樹脂が固化すれば仮止めアンカー12の役目は終了にして実施例に示した仮止めアンカー部品に拘泥するもので無く要は作業中窓枠の位置を一定不変にしておけば良い。なお図中・・・・、20はコーキング材、21は発泡性合成樹脂を示し、・・・である。」(同2頁15行?6頁13行)

(4)上記記載事項(3)を参照して、特に第2ないし4図をみると、新規な窓枠の上枠2、縦枠3及び下枠4の室内側を建造物5に仮止めアンカー等を介してビス16にて取り付け、次に該建造物5と窓枠との間の室内側の隙間部分に室内より粘着テープ13を接着して建造物5と窓枠間の空間を粘着テープ13にて密閉していることが明らかである。

2 引用例に記載の発明の認定
引用例には、「本考案は既設建造物の陳腐化した旧窓枠を新規な高性能の窓枠に改装する場合・・・・の窓枠の取付構造に関する。」(上記1(2)参照)、「5は建造物にして此の場合第2図?第4図は既設建造物の開口部に窓枠を嵌め込むことになるので、既設のスチール製窓枠が残置して開口部を構成しているので便宜上建造物と呼称した。」(上記1(3)参照)、「次に本考案にて開口部6内に窓枠を取付固定する手順について概説する。図示は既設の改装を示したものにして建造物と一体となつてる旧鋼製窓枠を残して其の他は取除いた状態にして鋼製窓枠内が新建造物の開口部に相当するものである。」(上記1(3)参照)と記載されているから、「既設の窓枠が残置している建造物5の開口部に新規な窓枠を取付固定する手順」が記載されていると認められる。
以上のことを踏まえると、上記1に記載された事項からみて、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「既設の窓枠が残置している建造物5の開口部に新規な窓枠を取付固定する手順であって、新規な窓枠の上枠2、縦枠3及び下枠4の室内側を建造物5に仮止めアンカー12等を介してビス16にて取り付け、次に建造物5と新規な窓枠との間の室内側の隙間部分に室内より粘着テープ13を接着して建造物5と新規な窓枠間の空間を粘着テープ13にて密閉し、粘着テープ13に小穴を明け、該小穴からポリウレタンフオームを注入発泡して上記空間に充填し、注入したポリウレタンフオームを固化する、既設の窓枠が残置している建造物5の開口部に新規な窓枠を取付固定する手順。」

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
既設の窓枠に新規な窓枠を取付固定することは、窓枠の改装といえるから、引用発明の「既設の窓枠が残置している建造物5の開口部に新規な窓枠を取付固定」した窓は、本願発明の「改装窓」に相当するといえる。また、引用発明の「建造物5の開口部に新規な窓枠を取付固定する手順」は、その具体的な手順内容(上記1(3)を参照。)も踏まえると、本願発明の(窓の)「製造方法」に相当するといえる。さらに、引用発明の「既設の窓枠が残置している」ことは、本願発明の「既設窓枠を取り外すことなく」に相当し、同様に「新規な窓枠」は「新設窓枠」に相当するといえる。したがって、引用発明の「既設の窓枠が残置している建造物5の開口部に新規な窓枠を取付固定する手順」は、本願発明の「既設窓枠を取り外すことなく新設窓枠を取り付ける改装窓の製造方法」に相当するといえる。
また、引用発明の「新規な窓枠の上枠2、縦枠3及び下枠4の室内側を既設建造物5に仮止めアンカー12等を介してビス16にて取り付け」ることは、その手順内容からみて、本願発明の「新設窓枠を既設窓枠に接合させ」ることに相当し、同様に、「建造物5と新規な窓枠との間の室内側の隙間部分に室内より粘着テープ13を接着して建造物5と窓枠間の空間を粘着テープ13にて密閉」することは、「新設窓枠と既設窓枠との間に生じる」「室内側の隙間部分」「を粘着テープで塞」ぐことに、「粘着テープ13に小穴を明け」ることは、「注入孔を穿設」することに、それぞれ相当するといえる。
さらに、引用発明の「該小穴からポリウレタンフオームを注入発泡して上記空間に充填し、注入したポリウレタンフオームを固化する」ことからは、「ポリウレタンフオーム」が、注入するときには固化しておらず、発泡して空間に充填した後に固化するといえるので、注入する「ポリウレタンフオーム」は本願発明の「ポリウレタン原料」に、また、「ポリウレタンフオーム」が発泡して固化したものは同「発泡ポリウレタン」に、さらに、「ポリウレタンフオーム」が「発泡して」「固化する」ことは同「硬化反応させること」に、それぞれ相当するといえる。また、引用発明の「ポリウレタンフオームを注入発泡して上記空間に充填し」た状態では、ポリウレタンフオームは空間の略全体に充填されていると解される。したがって、引用発明の「該小穴からポリウレタンフオームを注入発泡して上記空間に充填し、注入したポリウレタンフオームを固化する」ことは、本願発明の「該注入孔から、新設窓枠と既設窓枠との間の空間部分の略全体に」「ポリウレタン原料を注入し、」「ポリウレタン原料を硬化反応させることで発泡ポリウレタンとすること」に相当するといえる。

したがって、両者は、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
(一致点)
「既設窓枠を取り外すことなく新設窓枠を取り付ける改装窓の製造方法において、
新設窓枠を既設窓枠に接合させたのち、新設窓枠と既設窓枠との間に生じる室内側の隙間部分を粘着テープで塞ぎ、該粘着テープにポリウレタン原料を注入する注入孔を穿設し、該注入孔から、新設窓枠と既設窓枠との間の空間部分の略全体にポリウレタン原料を注入し、ポリウレタン原料を硬化反応させることで発泡ポリウレタンとする改装窓の製造方法。」

(相違点)
注入孔から注入されるポリウレタン原料について、本願発明では、「2液性のポリウレタン原料」を用いているのに対し、引用発明では、2液性のものを用いているか否か不明である点。

第5 判断
一般的に、部材で囲まれた空間にポリウレタン発泡材料(ポリウレタン原料)を充填して発泡させるに際し、発泡倍率や充填性向上のために、2液性のものを用いることは本願出願前から周知慣用であり(必要なら、特開2003-74134号公報、特開平11-323825号公報、特開平9-291226号公報、特開平10-292514号公報、特開昭62-49801号公報を参照。)、また、引用発明も、本願発明と同じく既設窓枠と新設窓枠間の空間への注入発泡硬化を目的としているから、当業者であれば、引用発明において2液性のものを用いることを容易に想定でき、また、少なくとも容易に着想し得るといえる。また、引用発明のポリウレタン原料として、2液性のものを用いることに、技術的に困難な事情があるともいえない。

そして,本願発明全体の効果は,引用発明から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができない。

請求人は、平成26年8月7日付け上申書において、1液性のポリウレタンを充填することが公知であったとしても、更に、本願明細書の段落【0036】の記載のように「2液性のポリウレタンは、1液性の発泡ポリウレタンよりも発泡量が大きく発泡不良が生じ難いため、施工時に取り扱い易い」ものであることが一般的な技術として公知であったとしても、1液性のポリウレタンに置き換えて上記の本願発明の発明特定事項を採用しようとすることは、当業者にとって容易想到でない旨を主張している。
しかしながら、上記で説示したように、引用発明において2液性のものを用いることは、当業者にとって容易に想定でき、また、少なくとも容易に着想し得ることであるといえる。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-05 
結審通知日 2015-02-10 
審決日 2015-02-23 
出願番号 特願2009-249525(P2009-249525)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E06B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深田 高義  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 小野 忠悦
竹村 真一郎
発明の名称 改装窓及び改装窓の製造方法  
代理人 田村 良介  

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