• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G08B
管理番号 1299831
審判番号 不服2014-10904  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-10 
確定日 2015-04-16 
事件の表示 特願2012- 90966「警備装置、警備システム、警備方法及び警備プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月24日出願公開、特開2013-218633〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯 ・本願発明
本願は、平成24年4月12日の出願であって、平成26年3月6日付け(平成26年3月11日:発送日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年6月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その請求と同時に、請求項1及び請求項2の削除し、従属項の形式にて記載されていた補正前の請求項3を独立項の形式に書き換えて補正後の請求項1とする請求項の削除を目的とする「警備装置」についての手続補正がなされたものである。
そして、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成26年6月10日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
屋外の警備センタとの通信を行う警備装置であって、
前記警備センタから雷発生情報を受信したならば、当該警備装置を雷サージの流入源となる屋外電源から切り離す電源切り離し手段と、
前記警備センタから前記雷発生情報を受信したならば、当該警備装置を雷サージの流入源となる屋外有線通信回線から切り離す有線通信回路切り離し手段と、
前記電源切り離し手段及び有線通信回路切り離し手段による切り離しをしてから、警備動作及び前記警備センタとの通信を継続する継続手段と、
雷発生解除情報を受信したならば、前記電源切り離し手段及び有線通信回路切り離し手段による切り離しの前の接続状態に復帰するための復帰手段と、
を備え、
前記継続手段は、
前記屋外電源の代わりにバッテリを電源として利用することにより動作を継続するための動作継続手段と、
前記屋外有線通信回線の代わりに屋外無線通信回線を通信手段として利用することにより警備センタとの通信を継続するための通信継続手段と、
を備えることを特徴とする警備装置。」

2.引用文献及び引用発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-92746号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「警備端末装置」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与、以下同様。)
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、住宅やオフィス等のセキュリティを警備保障会社と契約して行う機械警備端末装置に関する。」

イ.「【0003】安全保障には、いくつかの方式があるが、現在では警備される住宅やオフィスに警備端末装置と称される機械を設置し、警備対象に火災その他の異常が発生した場合には、それを無線又は電話回線等を介して警備会社に通報する。この通報は、例えば、巡回中の警備員に通知されて直ちに現場に直行して異常に対処する機械式警備が一般化している。」

ウ.「【0017】図1は、本発明による警備端末装置の好適実施形態例のブロック図である。この警備端末装置1には、複数のセンサ2が取付けられる。警備端末装置1は、信号処理部3、回線インタフェース(I/F)部4、CPU(中央処理装置)5、メモリ6及び状態認識部7を有する。
【0018】警備端末装置1は、更に回線Lを介して警備センタ8に接続され、また電源装置9から動作電源を得る。電源装置9は、切替部10、AC電源部11及びバッテリ(内蔵電池)12を有する。
【0019】信号処理部3は、センサ2から検出された信号をCPU5と共に警備信号に処理する。この処理された警備信号は、回線I/F部4を介して、回線Lに送られ、警備センタ8は斯る警備信号を受信する。また、警備センタ8は、回線Lを介して、警備端末装置1の遠隔操作(リモートコントロール)が可能である。
【0020】警備センタ8は、警備を担当する地域毎に設けられ、その地域の気象情報センタや文字放送等の手段によりその警備地域又は区域の雷雲発生予測情報(以下、雷注意報等という)を受ける。警備センタ8は、この雷注意報等を受けると、警備地域の全ての警備端末装置1に対してバッテリ切替信号を送信する。この送信信号を受けた警備端末装置1は、電源装置9の切替部10に制御をかける。切替部10がAC電源部11からバッテリ12に切替えると、状態認識部7は、落雷危険状態中、即ちバッテリ12からの電源供給状態中を認識してCPU5に対して信号を送信する。」

エ.「【0022】ある時間後に、気象情報センタや文字放送等の手段又は情報源から雷雲発生予測情報解除(雷注意報解除)を警備センタ8が受ける。すると、警備センタ8は、落雷危険状態中の全ての警備端末装置1に復旧要求信号を送信する。この信号を受けた警備端末装置1は、CPU5により電源装置9の切替部10に制御をかけ、通常状態(AC電源部11からの電源供給状態)に切替える。そこで、状態認識部7は、通常状態を認識し、CPU5に信号を送信する。」

オ.「【0025】上述の説明から明らかな如く、本発明の警備端末装置によると、雷発生予報がある場合には事前にACラインから物理的に切り離している為に、AC電源からの雷サージによる障害を効果的に回避できる。」

カ.記載事項ウ.の段落【0020】の「警備センタ8は、この雷注意報等を受けると、警備地域の全ての警備端末装置1に対してバッテリ切替信号を送信する。この送信信号を受けた警備端末装置1は、電源装置9の切替部10に制御をかける。切替部10がAC電源部11からバッテリ12に切替える」との記載、及び記載事項オ.の記載内容からみて、警備端末装置1及び電源装置9は、雷雲発生予測情報を受信したならば、雷サージの流入源となるAC電源から切り離す切替部10を備えるとともに、前記AC電源の代わりにバッテリ12を電源として利用することにより動作を継続するための動作継続手段を備えることが理解できる。

キ.記載事項エの記載内容からみて、警備端末装置1及び電源装置9は、切替部10によりAC電源部11からの電源供給状態に切替える復帰手段を備えることが理解できる。

以上の記載事項、図示内容及び認定事項からみて、本願発明の記載ぶりに倣って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「警備センタ8と電話回線等の回線Lを介して通信を行う回線インタフェース(I/F)部4を有する警備端末装置1及び電源装置9であって、
前記警備センタ8から雷雲発生予測情報を受信したならば、当該警備端末装置1及び電源装置9を雷サージの流入源となるAC電源から切り離す切替部10と、
前記切替部10による切り離しをしてから、警備動作を継続する継続手段と、
雷雲発生予測情報解除を受信したならば、前記切替部10によりAC電源からの電源供給状態に切替える復帰手段と、
を備え、
前記継続手段は、
前記AC電源の代わりにバッテリ12を電源として利用することにより動作を継続するための動作継続手段、
を備える警備端末装置1及び電源装置9。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-223841号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面(特に、【図6】及び【図13】を参照。)とともに次の事項が記載されている。
サ.「【0001】
本発明は、雷、地震、台風等の災害予報情報をネットワークから取得した場合、災害発生前に宅内に設置されている各種電気機器の電源を制御する電源システム及びネットワークシステムに関する。」

シ.「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の電源システムでは、雷検知器が雷発生を検知したことを契機に電源の瞬断を行っている。つまり、この電源システムは、実際に雷が発生してから電力供給を遮断する制御を行う。したがって、雷発生が原因による電気機器の故障又はその故障による発火事故等の災害を未然に防ぐという観点からすると必ずしも十分ではない。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、雷、地震、台風等の予報情報をネットワークから予め取得することによって、雷、地震、台風等が実際に発生する前に電気機器への電力供給を制御する電源システム及びネットワークシステムを提供することにある。」

ス.「【0020】
災害予報情報配信サーバ2及びホームサーバ3は広域ネットワーク6を介して相互にデータの送受信を行い、また、ホームサーバ3及びネットワーク家電4はホームネットワーク5を介して相互にデータの送受信を行う。広域ネットワーク6は例えばインターネット網である。ホームネットワーク5は無線LAN又は有線LANである。尚、ホームサーバ3、ネットワーク家電4及びホームネットワーク5は家屋7の中に設けられている。尚、ネットワーク家電4は、ホームサーバ3に対するクライアントに相当する。」

セ.「【0037】
またネットワーク家電4は、ホームネットワーク5に接続され、ホームサーバ3から局地的災害予報情報を取得する。また、ネットワーク家電4は、通常時、電源プラグ51が付いた電源ケーブル50を介して、商用電源52から電力の供給を受ける。
尚、本実施の形態では、補助電源部49としては例えばバッテリを用いてもよい。
【0038】
ネットワーク家電4は、大別すると、電源ユニット60と本体ユニット61とから構成される。電源ユニット60は本体ユニット61に電力を供給する側であり、本体ユニット61とは電源ユニット60から電力の供給を受ける側である。ここで、本体ユニット61の制御部41は電源ユニット60の切替部47に切替信号53を与え、切替部47は切替信号53にしたがって本体ユニット61への電力供給源を切り替え、本体ユニット61に電力54を供給する。」

ソ.「【0040】
制御部41は、局地的災害予報情報をホームサーバ3から取得した場合、速やかに、切替部47に切替信号53を与える。次いで、切替信号53を受けた切替部47は、電力供給源を主電源部48から補助電源部49に切り替える。すなわち、切替部47は、制御部41による制御の下、主電源部48が本体部61に供給する電力を遮断し、補助電源部49からの電力を本体部61に供給する。」

タ.「【0059】
変形例4
変形例4は、局地的災害予報情報に応じて、LANの接続形式を変更する形態である。
図13は、ホームサーバからの指示にしたがい有線LANと無線LANとを切り替える構成例を示すブロック図である。
住居内で有線LAN39を使っている場合は、雷が近くを抜ける時の電磁波で過剰な電圧がLANケーブルにかかり、LANケーブルに接続されているネットワーク家電4が故障するおそれがある。そこで、変形例4では、局地的災害予報情報を記憶するホームサーバ3は、落雷が予測される場合に、有線LAN39の接続を物理的に遮断し、接続形式を無線LAN40に切り替える切替部30を備える。尚、その他の構成は、図4に示す構成と同様である。
変形例4によれば、有線LAN39の使用の際の雷によるネットワーク家電4の被害を防ぐことができる。」

3.対比
本願発明と引用発明を対比すると、その意味、機能または構造からみて、
後者の「警備センタ8」は前者の「屋外の警備センタ」に相当し、以下、同様に、「警備端末装置1及び電源装置9」は「警備装置」に、「雷雲発生予測情報」は「雷発生情報」に、「AC電源」は「屋外電源」に、「切替部10」は「電源切り離し手段」に、それぞれ、相当する。
後者の「切替部10による切り離しをしてから、警備動作を継続する」「継続手段」と前者の「電源切り離し手段及び有線通信回路切り離し手段による切り離しをしてから、警備動作及び前記警備センタとの通信を継続する」「継続手段」とは、「電源切り離し手段による切り離しをしてから、警備動作を継続する」「継続手段」という限りにおいて共通する。
後者の「雷雲発生予測情報解除を受信したならば、切替部10によりAC電源からの電源供給状態に切替える」「復帰手段」と前者の「雷発生解除情報を受信したならば、電源切り離し手段及び有線通信回路切り離し手段による切り離しの前の接続状態に復帰するための」「復帰手段」とは、「雷発生解除情報を受信したならば、電源切り離し手段による切り離しの前の接続状態に復帰するための」「復帰手段」という限りにおいて共通する。
後者の「AC電源の代わりにバッテリ12を電源として利用することにより動作を継続するための」「動作継続手段」は前者の「屋外電源の代わりにバッテリを電源として利用することにより動作を継続するための」「動作継続手段」に相当する。

そうすると、両者は本願発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
[一致点]
「屋外の警備センタとの通信を行う警備装置であって、
前記警備センタから雷発生情報を受信したならば、当該警備装置を雷サージの流入源となる屋外電源から切り離す電源切り離し手段と、
前記電源切り離し手段による切り離しをしてから、警備動作を継続する継続手段と、
雷発生解除情報を受信したならば、前記電源切り離し手段による切り離しの前の接続状態に復帰するための復帰手段と、
を備え、
前記継続手段は、
前記屋外電源の代わりにバッテリを電源として利用することにより動作を継続するための動作継続手段
を備える警備装置。」

そして、両者は次の点で相違する。
[相違点]
本願発明は、「警備センタから雷発生情報を受信したならば、警備装置を雷サージの流入源となる屋外有線通信回線から切り離す有線通信回路切り離し手段」と、「有線通信回路切り離し手段による切り離しをしてから、警備センタとの通信を継続する」継続手段と、「雷発生解除情報を受信したならば、有線通信回路切り離し手段による切り離しの前の接続状態に復帰するための」復帰手段とを備え、上記継続手段は、「屋外有線通信回線の代わりに屋外無線通信回線を通信手段として利用することにより警備センタとの通信を継続するための通信継続手段」を備えるのに対し、
引用発明は、かかる有線通信回路切り離し手段、継続手段、復帰手段、及び通信継続手段を備えていない点。

4.判断
(1)相違点の検討
引用文献2には、上記記載事項サ.ないしタ.を総合すると「落雷が予測される場合に、ホームサーバ3とネットワーク家電4のLANの接続形式を有線LAN39の接続から無線LAN40の接続に切り替えて、雷によるネットワーク家電4の被害を防ぐこと」が記載されている。(以下、「引用文献2に記載されている事項」という。)
引用文献2の記載事項セ.の「ネットワーク家電4は、通常時、電源プラグ51が付いた電源ケーブル50を介して、商用電源52から電力の供給を受ける。尚、本実施の形態では、補助電源部49としては例えばバッテリを用いてもよい。」(段落【0037】)との記載、「ネットワーク家電4は、大別すると、電源ユニット60と本体ユニット61とから構成される。」(段落【0038】)との記載、及び記載事項ソ.の「局地的災害予報情報をホームサーバ3から取得した場合、・・・切替部47は、制御部41による制御の下、主電源部48が本体部61に供給する電力を遮断し、補助電源部49からの電力を本体部61に供給する。」との記載からみて、引用文献2に記載されている「ネットワーク家電4」と引用発明の「警備端末装置1及び電源装置9」とは、商用電源とバッテリとを切り替える切替部を有する電源ユニットと本体ユニットとから構成され、雷発生が予測されるときに、電源をバッテリに切り替える機能を有し、通信網を介して通信する家電である点で共通する。
また、引用文献2の記載事項ス.の「ホームサーバ3及びネットワーク家電4はホームネットワーク5を介して相互にデータの送受信を行う。」(段落【0020】)との記載及び【図13】の図示内容からみて、引用文献2の「ホームサーバ3」と引用発明の「警備センタ8」とは、通信網の中心としての機能を有する点で共通する。
また、引用発明と引用文献2に記載されている事項とは雷サージから家庭内の機器を守るという課題の点でも共通する。
そうすると、引用発明に引用文献2に記載されている事項を適用する動機付けは十分にある。
そして、引用発明の回線Lは、引用文献1の段落【0003】に記載されているように無線又は電話回線等を介して警備会社と接続するものであるから、引用発明の「警備センタ8」及び「警備端末装置1及び電源装置9」において、引用文献2に記載されている事項の「ホームサーバ3」及び「ネットワーク家電4」の機能を適用し、落雷が予測される場合に、「警備センタ8」と「警備端末装置1及び電源装置9」との回線Lの接続形式を電話回線等の有線の接続から無線による接続に切り替え、「警備センタ8」と「警備端末装置1及び電源装置9」との通信を継続し、雷発生解除情報を受信したならば、電話回線等の有線の接続から無線による接続に切り替える手段による切り離しの前の接続状態に復帰するための復帰手段を備えて、雷による「警備端末装置1及び電源装置9」の故障を防ぐことは想起できたことである。
また、その際に、電話回線等の有線の接続形式から無線による接続形式に切り替える手段の配置を、引用発明のAC電源から切り離す切替部10の配置に倣い、回線インタフェース(I/F)部4を備える「警備端末装置1及び電源装置9」に設けることは適宜になし得たことである。
以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)作用効果について
本願発明の作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載されている事項から当業者が予測できる範囲内のものであって、格別ではない。

(3)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載されている事項に基いて容易に発明できたものである。

5.むすび
以上総合すると、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び引用文献2に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができない以上、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-16 
結審通知日 2015-02-17 
審決日 2015-03-03 
出願番号 特願2012-90966(P2012-90966)
審決分類 P 1 8・ 571- Z (G08B)
P 1 8・ 121- Z (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 一雄  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 島田 信一
小関 峰夫
発明の名称 警備装置、警備システム、警備方法及び警備プログラム  
代理人 関口 正夫  
代理人 仲野 孝雅  
代理人 永井 道雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ