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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1299876
審判番号 不服2013-6689  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-11 
確定日 2015-04-08 
事件の表示 特願2011-514744「フェムトアクセスポイントを介して緊急呼出しを位置特定すること」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月23日国際公開、WO2009/155278、平成23年 9月15日国内公表、特表2011-525331〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は2009年(平成21年)6月16日(パリ条約による優先権主張 2008年6月16日 米国、2008年8月22日 米国、2009年6月12日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年12月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成25年4月11日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同時に手続補正がなされ、平成26年4月25日付けで当審により拒絶理由が通知され、同年8月7日付けで手続補正がなされ、同年8月28日付けで当審により拒絶理由(最後)が通知され、同年10月23日で手続補正がなされたものである。


第2 平成26年10月23日付け手続補正について
1.補正の内容
平成26年10月23日付け手続補正の内容は、平成26年8月7日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
無線通信ネットワークにおける緊急呼出しをサポートする方法であって、
移動局によるFAP(フェムトアクセスポイント)への緊急呼び出しの発信時に、前記緊急呼出しを発信するように前記移動局によって前記FAPに送信された第1のメッセージを受信すること、および
前記緊急呼出しに関する緊急センタを選択するのに使用されるように前記FAPに関する位置情報をネットワークエンティティに送信し、前記ネットワークエンティティから、前記緊急センタまたはPSPA(公共安全応答ポイント)を識別するESRD(緊急サービスルーティング番号)またはESRK(緊急サービスルーティングキー)を含む応答メッセージを受信し、前記ESRDまたは前記ESRKに基づいて選択された緊急センタまたはPSAP(公共安全応答ポイント)に前記緊急呼出しを転送することであって、前記応答メッセージは前記移動局の位置情報を備える、転送すること、
を備える方法。」(以下、「本願補正前発明」という。)を、
「【請求項1】
無線通信ネットワークにおける緊急呼出しをサポートする方法であって、
移動局によるFAP(フェムトアクセスポイント)への緊急呼び出しの発信時に、前記緊急呼出しを発信するように前記移動局によって前記FAPに送信された第1のメッセージを受信すること、および
前記緊急呼出しに関する緊急センタを選択するのに使用されるように前記FAPに関する位置情報をネットワークエンティティに送信し、前記ネットワークエンティティから、前記緊急センタまたはPSAP(公共安全応答ポイント)を識別するESRD(緊急サービスルーティング番号)またはESRK(緊急サービスルーティングキー)を含む応答メッセージを受信し、前記ESRDまたは前記ESRKに基づいて選択された緊急センタまたはPSAP(公共安全応答ポイント)に前記緊急呼出しを転送することであって、前記移動局に関する位置推定を示す情報はネットワークエンティティから緊急センタまたはPSAP(公共安全応答ポイント)に送信される、転送すること、
を備える方法。」 (以下、「本願補正後発明」という。)
に補正すること(以下、「本件補正」という。)を含むものである(なお、下線は請求人が付与した。)。

すなわち、本件補正は、本願補正前発明の「前記応答メッセージは前記移動局の位置情報を備える」なる事項(以下、「本件補正前事項」という。)を、「前記移動局に関する位置推定を示す情報はネットワークエンティティから緊急センタまたはPSAP(公共安全応答ポイント)に送信される」なる事項(以下、「本件補正後事項」という。)に補正することを含む補正である。

2.補正の適否
本件補正が、特許法第17条の2第5項第4号(明りょうでない記載の釈明)で規定された目的に該当するかどうか検討する。

2-1.本件補正前事項が「明りょうでない記載」に該当するか否か
本件補正前事項である「前記応答メッセージは前記移動局の位置情報を備える」なる事項に関して、該事項の「前記応答メッセージ」は、本願補正前発明の「前記ネットワークエンティティから、前記緊急センタまたはPSPA(公共安全応答ポイント)を識別するESRD(緊急サービスルーティング番号)またはESRK(緊急サービスルーティングキー)を含む応答メッセージを受信し」なる発明特定事項の「応答メッセージ」を指すものと解するのが妥当であって、以下の事項がいえる。
(1) 「前記応答メッセージ」は、「前記緊急センタまたはPSPA(公共安全応答ポイント)を識別するESRD(緊急サービスルーティング番号)またはESRK(緊急サービスルーティングキー)を含む」メッセージであること。
(2) 「前記応答メッセージ」が「前記ネットワークエンティティ」から受信するメッセージであること、及び、「前記緊急呼出しに関する緊急センタを選択するのに使用されるように前記FAPに関する位置情報をネットワークエンティティに送信し、前記ネットワークエンティティから、前記緊急センタまたはPSPA(公共安全応答ポイント)を識別するESRD(緊急サービスルーティング番号)またはESRK(緊急サービスルーティングキー)を含む応答メッセージを受信」することからみて、該「ネットワークエンティティ」は、本願明細書に記載されている「移動体測位センター(MPC)140」であると解するのが妥当であり、「前記応答メッセージ」は、「移動体測位センター(MPC)140」から受信するメッセージであるといい得ること。
(3) 本願補正前発明の「第1のメッセージを受信する」、「前記FAPに関する位置情報をネットワークエンティティに送信」、及び「前記緊急呼出しを転送する」なる動作の動作主体は、本願明細書に記載されている「MFIF(MAP(モバイルアプリケーションパート(Mobile Application Part))フェムト相互動作機能)130」であると解するのが妥当であり、「前記応答メッセージ」は、「MFIF(MAP(モバイルアプリケーションパート(Mobile Application Part))フェムト相互動作機能)130」が受信するメッセージであるといい得ること。
(4) 上記(1)?(3)を総合すると、「前記移動局に位置情報」を備える「前記応答メッセージ」は、「前記緊急センタまたはPSPA(公共安全応答ポイント)を識別するESRD(緊急サービスルーティング番号)またはESRK(緊急サービスルーティングキー)を含む」メッセージであるとともに、「移動体測位センター(MPC)140」から「MFIF(MAP(モバイルアプリケーションパート(Mobile Application Part))フェムト相互動作機能)130」へ送信されるメッセージである。

これに対して、「緊急センタまたはPSPA(公共安全応答ポイント)を識別するESRD(緊急サービスルーティング番号)またはESRK(緊急サービスルーティングキー)を含む応答メッセージ」及び「前記移動局の位置情報」について、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、
(ア) 「【0023】
図2は、マクロセルIDおよびマクロMSC IDを使用してFAPから緊急呼出しをルーティングするための呼フロー200の設計を示す。最初に、移動局110が、FAP120に対して緊急(例えば、E911)呼出しを発信することが可能であり、さらにMSID(移動局識別情報)を提供することが可能である(ステップa)。MSIDは、ESN(電子通し番号)、IMSI(国際移動体加入者識別情報(International Mobile Subscriber Identity))、MEID(移動機器識別情報(Mobile Equipment Identity))、MIN(移動体識別番号)、および/または他の何らかの識別情報を備えることが可能である。FAP120が、この緊急呼出しを受信することが可能であり、さらにMFIF130に緊急呼出し(例えば、E911)要求を(例えば、SIP INVITEの中で)送信することが可能である(ステップb)。E911呼要求は、移動局110のMSID、FAP120に割り当てられたマクロMSC IDおよびマクロセルIDなどを含むことが可能である。MFIF130が、FAP120からE911呼要求を受信することが可能であり、これに応答して、ANSI-41 ORREQ(発信要求)メッセージをMPC140に送信することが可能である(ステップc)。このORREQメッセージは、ステップbで受信されたMSID、マクロMSC ID、およびマクロセルIDを含むことが可能である。
【0024】
MPC140が、このORREQメッセージを受信することが可能であり、さらにCRDB142の中でマクロMSC IDとマクロセルIDの組合せをルックアップすることが可能であり、さらにPSAP(例えば、PSAP170)、およびPSAPに関連付けられたESRKまたはESRDを見つけることが可能である。PSAP170は、マクロMSC IDおよびマクロセルIDは、フェムト位置に基づいてFAP120に最初に割り当てられているため、FAP120の位置に(したがって、移動局110の位置にも)適切であり得る。次に、MPC140が、そのESRKまたはESRDを含むことが可能なorreq(発信応答)メッセージをMFIF130に戻すことが可能である(ステップd)。次に、MFIF130が、そのESRDまたはESRKに基づいてPSAP170に緊急呼出しを転送することが可能であり、さらに移動局110のMDN(移動体ディレクトリ番号)を含めることが可能である(ステップe)。転送することは、選択的ルータ160を介して、MGW/MGCF158と選択的ルータ160を介して、CSCF128とMGW/MGCF158と選択的ルータ160を介して、または他のネットワークエンティティを介して行われることが可能である。」
(イ) 「【0040】
次に、MFIF130が、移動局110のMSIDおよび測位能力(MPCAP)、FAP120のサービングセルID,MFIF130のMSC IDなどを含むことが可能なORREQメッセージをMPC140に送信することが可能である(ステップc)。MPC140は、例えば、MFIF MSC IDを認識することによって、またはCRDB142の中でサービングセルIDを調べることによって、その呼がFAPからであると判定することが可能である。次に、MPC140は、MSID、MPCAP、MFIF MSC ID、サービングセルID、ならびに初期地点が要求されたという指示を含むことが可能なGPOSREQメッセージをPDE150に送信することが可能である(ステップd)。
【0041】
PDE150は、例えば、MFIF MSC IDを認識することによって、またはBSA152の中でサービングセルIDを調べることによって、その呼がFAPからであると判定することが可能である。サービングセルIDがBSA152の中で見つかり、関連する位置が信頼できると考えられる(例えば、以前のフェムト位置要求のために最近、BSA152の中で更新されている)場合、PDE150は、ステップiに進むことが可能である。サービングセルIDがBSA152の中で見つからない、または関連する位置が信頼できると考えられない場合、PDE150は、IS-801 PDDM(位置算出データメッセージ)、MSID、およびサービングセルIDを含むことが可能なSMDPP(SMS配信ポイントツーポイント)メッセージをMFIF130に送信することが可能である(ステップe)。IS-801 PDDMは、既に知られているフェムト位置を要求することが可能である。また、PDE150は、新たなANSI-41値を使用してサービス標識パラメータの中で「Base Station Location」を示して
、IS-801 PDDMがFAP120に向けられており、移動局110には向けられていないことをMFIF130に知らせることも可能である。
【0042】
MFIF130が、サービス標識のANSI-41「Base Station Location」値を認識することが可能である。これに応答して、MFIF130は、PDE150から受信されたSMDPPメッセージの内容を含むことが可能な位置特定要求メッセージをFAP120に送信することが可能である(ステップf)。MFIF130は、SMDPPメッセージの中で受信されたサービングセルIDまたはMSIDからFAP120を特定することが可能である。次に、FAP120が、MSID、サービングセルID、およびIS-801 PDDM応答を含むことが可能な位置特定応答をMFIF130に戻すことが可能である(ステップg)。FAP120が、最低限の応答を除いてIS-801をサポートしない場合、FAP120は、知られているフェムト位置を含むことが可能な標準の(固定フォーマットの)IS-801非請求(unsolicited)PDDM応答を戻すことが可能である。FAP120がIS-801をサポートする場合、FAP120は、FAP120の知られている位置または均等の情報、例えば、PDE150がフェムト位置を算出する元にすることができる測定を含むことが可能な、より正しいIS-801応答を戻すことが可能である。このフェムト位置は、FAP120の位置の正確な座標と、これらの座標の不確かさとを備えることが可能である。この不確かさは、FAP120のカバレッジエリアを含むように変更される(例えば、FAP120によって)ことが可能であり、このため、移動局110の可能な位置を示すことが可能である。ステップfおよびgは、MFIF130がフェムト位置を既に有する場合、飛ばされることが可能である。
【0043】
MFIF130が、FAP120からの応答を含むことが可能なSMDPPメッセージをPDE150に送信することが可能である(ステップh)。PDE150は、ステップhでフェムト位置が供給されなかったが、FAP120がIS-801をサポートする場合、ステップeからhに類似したさらなるステップを開始させることが可能である。例えば、PDE150が、IS-801を使用してフェムト位置を取得するようにAFLTを呼び出すことが可能である。次に、PDE150は、MPC140にそのフェムト位置を戻すことが可能である(ステップi)。MPC140が、後の位置特定要求において使用するために、そのフェムト位置でBSA152を更新することが可能である。MPC140が、CRDB142にアクセスして、PDE150から受信されたフェムト位置に関する正しいPSAP(例えば、PSAP170)を特定することが可能である。MPC140が、ESRKを割り当てること、または選択されたPSAP170に関するESRDを特定することが可能である。次に、MPC140は、このESRKまたはESRDをMFIF130に送信することが可能である(ステップj)。MFIF130が、ESRDまたはESRKに基づいてPSAP170に呼をルーティングすることが可能である(ステップk)。PSAP170が、ESRKまたはESRDからMPC140を特定することが可能であり、さらにこのESRKまたはESRDおよびMDNを含むことが可能なESPOSREQメッセージをMPC140に送信することが可能である(ステップl)。MPC140が、ステップiで受信されたフェムト位置が、初期移動局位置として十分に正確であると判定することが可能であり、さらにPSAP170にそのフェムト位置を戻すことが可能である(ステップm)。」
(ウ) 第2?6図の図中の「orreq(ESRKまたはESRD、その他)」及び「esposreq(MS/フェムト位置、その他)」
なる事項が記載されている。
そして、上記(ア)?(ウ)の記載を参酌すると、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、
「MFIF(MAP(モバイルアプリケーションパート(Mobile Application Part))フェムト相互動作機能)130」が「移動体測位センター(MPC)140」から受信する応答メッセージ(orreq)が含む情報は、「前記緊急センタまたはPSPA(公共安全応答ポイント)を識別するESRD(緊急サービスルーティング番号)またはESRK(緊急サービスルーティングキー)、並びに、「その他」であること、
「ステップgで獲得された移動局110の位置、またはFAP120の位置」を含むメッセージは、「移動体測位センター(MPC)140」から「公共安全応答ポイント(PSAP)」へ送信される応答メッセージ(esposreq)であること
は記載されているといえる。

してみると、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、「前記緊急センタまたはPSPA(公共安全応答ポイント)を識別するESRD(緊急サービスルーティング番号)またはESRK(緊急サービスルーティングキー)を含む」メッセージが「前記移動局に位置情報」を備えることは記載されていないとともに、「前記移動局に位置情報」を備える応答メッセージは、「移動体測位センター(MPC)140」から「MFIF(MAP(モバイルアプリケーションパート(Mobile Application Part))フェムト相互動作機能)130」へ送信されるメッセージではなく、「移動体測位センター(MPC)140」から「公共安全応答ポイント(PSAP)」へ送信される応答メッセージ(esposreq)である。

このため、本願補正前発明の「前記応答メッセージは前記移動局の位置情報を備える」なる事項は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載との関係において不合理を生じる記載、すなわち、明りょうでない記載であるといえる。

2-2.本件補正後事項が「釈明」に該当するか否か
本件補正後事項の「前記移動局に関する位置推定を示す情報はネットワークエンティティから緊急センタまたはPSAP(公共安全応答ポイント)に送信される」なる事項に関して、「ネットワークエンティティ」は、上記「2-1.「前記応答メッセージは前記移動局の位置情報を備える」なる事項について」で記載した理由により、「前記移動局に関する位置推定を示す情報」は、「移動体測位センター(MPC)140」から「緊急センタまたはPSPA(公共安全応答ポイント)」へ送信される情報であるといえる。

これに対して、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、「前記移動局に関する位置推定を示す情報」について、上記「2-1.本件補正前事項が「明りょうでない記載」に該当するか否か」で記載したように、「ステップgで獲得された移動局110の位置、またはFAP120の位置」が、「移動体測位センター(MPC)140」から「公共安全応答ポイント(PSAP)」へ送信される応答メッセージ(esposreq)に含まれて送信されることが記載されている。

してみると、本願補正後発明の「前記移動局に関する位置推定を示す情報はネットワークエンティティから緊急センタまたはPSAP(公共安全応答ポイント)に送信される」なる事項は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載に基づいていることから、不明りょうさが正されて、「その記載の本来の意味内容」が明らかになっている、すなわち、「釈明」されているといえる。

2-3.拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項との関係
平成26年8月28日付け最後の拒絶理由通知は、本件補正前事項、すなわち、「前記応答メッセージは前記移動局の位置情報を備える、転送すること」 を追加することを含む、平成26年8月7日付けでした手続補正は、外国語書面の翻訳文(又は誤訳訂正書による補正後の明細書若しくは図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない旨を記載した通知である。
そして、本件補正前事項の記載が不明りょうな記載であり、「その記載の本来の意味内容」が明らかになっていないために、該本件補正前事項を追加する補正が、新規事項を追加する補正となったといい得る。
このため、本件補正は、最後の拒絶理由通知で指摘された特定箇所の拒絶理由を解消するために行われた補正であるといえる。

2-4.小括
してみると、本件補正は、明りょうでない記載の釈明を目的とした補正であるといえる。
このため、特許法第17の2条第5項第1?3号の規定について検討するまでもなく、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定を満たしている。


第3 当審の拒絶理由通知
当審が平成26年4月25日付けで通知した拒絶理由の概要は、この出願に係る発明は、本願出願の優先基準日前に国際公開された国際公開第2008/051124号(以下、「引用文献1」という。)に記載された発明、及び、本願出願の優先基準日前国際公開された国際公開第2007/035736号(以下、「引用文献2」という。)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
また、当審が平成26年8月28日付けで通知した最後の拒絶理由の概要は、平成26年8月7日付けでした手続補正は、「前記応答メッセージは前記移動局の位置情報を備える、転送すること」を追加する点で外国語書面の翻訳文(又は誤訳訂正書による補正後の明細書若しくは図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、というものである。

なお、当審が平成26年8月28日付けで通知した最後の拒絶理由については、平成26年10月23日付け手続補正によりなされた、明りょうでない記載の釈明を目的とした補正により、解消された。


第4 本願発明について
1.本願補正後発明
本願の請求項1?51に係る発明は、平成26年10月23日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?51に記載された事項により特定されたものであるところ、請求項1に係る発明は、上記「第2 平成26年10月23日付け手続補正について」において記載した本願補正後発明であって、以下に再掲する。
「【請求項1】
無線通信ネットワークにおける緊急呼出しをサポートする方法であって、
移動局によるFAP(フェムトアクセスポイント)への緊急呼び出しの発信時に、前記緊急呼出しを発信するように前記移動局によって前記FAPに送信された第1のメッセージを受信すること、および
前記緊急呼出しに関する緊急センタを選択するのに使用されるように前記FAPに関する位置情報をネットワークエンティティに送信し、前記ネットワークエンティティから、前記緊急センタまたはPSAP(公共安全応答ポイント)を識別するESRD(緊急サービスルーティング番号)またはESRK(緊急サービスルーティングキー)を含む応答メッセージを受信し、前記ESRDまたは前記ESRKに基づいて選択された緊急センタまたはPSAP(公共安全応答ポイント)に前記緊急呼出しを転送することであって、前記移動局に関する位置推定を示す情報はネットワークエンティティから緊急センタまたはPSAP(公共安全応答ポイント)に送信される、転送すること、
を備える方法。」 (なお、下線は請求人が付与した。)

2.引用発明
2-1.引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。
なお、当審訳は、引用文献1に対応する特表2010-507963号公報(平成22年3月11日国内公表)を参考にしている。

ア.「A method according to claim 1, wherein the Access Point (20) is a Femto Radio Base station (6), Femto RBS, serving a Femto cell (8). 」(claim[2])
(当審訳:【請求項2】参照
前記アクセスポイント(20)が、フェムトセル(8)にサービスを提供するフェムト無線基地局(6)であることを特徴とする請求項1記載の方法。 )

イ.「The present invention relates to a wireless communications network, and more particularly, to a method and apparatus for estimating a position of an Access Point in a wireless communications network.」(第1頁第4行目?第7行目)
(当審訳:【0001】参考
本発明は無線通信ネットワークに関し、特には無線通信ネットワーク内のアクセスポイントの位置を推定するための方法及び装置に関する。 )

ウ.「Thus, the inventors realizing that there will be problems with maintaining an accurate position of an Access Point when there are a large number of Access Points, as in the new proposed H3G system, therefore they suggest the solution according to the present invention to avoid or at least alleviate such problems. An embodiment of the present invention is to make it possible to automatically estimate a position of an Access Point and maintain accurate position data. The position information is for example used in case of an emergency call. 」(第8頁第16行目?第25行目)
(当審訳:【0022】参考
このように、発明者は、新たに提案されるH3Gシステムのように多数のアクセスポイントが存在する場合に、アクセスポイントの正確な位置を維持することに問題が生じるであろうことに気付いた。そして、そのような問題を回避するか、少なくとも緩和するため、本発明に係る手法を提案する。本発明の実施形態は、自動的にアクセスポイントの位置を推定し、正確な位置データを維持することを可能にする。位置情報は例えば緊急通話の際に用いられる。 )

エ.「1. A Femto RBS is initially powered up. This is the case when a Femto RBS for the first time is taken into use or the time after the Femto RBS has been moved to another location. Of course a Femto RBS can be powered off and on in the same location as previously. When powered up, the Femto RBS performs defined power up activities for this node type, which are predefined and set by a node provider. As part of the power up, the Femto RBS either dynamically builds an address identifier for a controlling Network Central Node, or the Femto RBS is already preconfigured with address information concerning a Central Node .
2. As part of the Femto RBS power-up sequence, a WCDMA user module, WCDMA UE, in the Femto RBS scans the surrounding WCDMA environment macro coverage to find out which macro WCDMA base stations or more correctly which WCDMA macro cells that exists in a current location. Information about these macro cells base stations and relevant information is retrieved. The information relates to one or more of the following: frequency, Scrambling Code, Public land mobile network identifier (PLMN-ID) , Location Area Code (LAC) , Routing Area Code (RAC) , Cell identity (CI) and if available Reference position (latitude/longitude) .
In addition or in combination the Femto RBS performs a signal strength measurement for all found cells in a similar way as a UE measures neighbouring cells in a macro WCDMA case. Also, information about transmit power used is retrieved.
Note also that in some scenarios some Femto Cells may be found during this step if the Femto RBS is not able to distinguish these cells from the macro cells.
3. All cells found in step 2 and all related information is added to a list called Femto RBS Detected Neighbour list (Femto RBS_DNL) .
4. When the Femto RBS_DNL is built in the Femto RBS, the Femto RBS establishes a connection to a Femto RNC.
5. The Femto RBS_DNL is reported to the Femto RNC. If the Femto RBS_DNL contains information relating to identified Femto cells, then the Femto RNC is capable of removing these cells from the list.
6. The Femto RNC uses the received information (i.e. the Femto RBS_DNL) to determine an approximate position for the Femto RBS. Additionally, the Femto RNC uses configured geographical information for heard macro cells when determining the position of a Femto RBS.
In case the Femto RBSs and the Macro RBSs are controlled by the same RNC, the PLMN-ID, RAC, LAC and CI reported for a macro cell is to be used to find out which Macro RBS is controlling a macro cell and to find out a possibly configured geographical position for that Macro RBS.
7. The position of the Femto RBS is stored/updated in a database (RNC internal or external) . In this example, the database is centralized and called Home 3G Access Database (H3GA DB) .」(第8頁第31行目?第10頁第8行目)
(当審訳:【0024】?【0033】参考
1.フェムトRBSが最初に起動される。これは、フェムトRBSが始めて用いられる場合、又はフェムトRBSが別の場所に移された後の場合である。もちろん、同じ場所でフェムトRBSの電源の切断と投入がなされてもよい。起動時、フェムトRBSは、このノードタイプについて定められた起動時動作を実行する。ノードタイプは、ノードプロバイダによって予め規定され、設定される。起動の一部として、フェムトRBSはネットワークセントラルノードを制御するためのアドレス識別子を動的に構築するか、フェムトRBSはセントラルノードに関するアドレス情報を事前設定されている。
2.フェムトRBS起動シーケンスの一部として、フェムトRBS内のWCDMAユーザモジュール、WCDMA UEは、周囲のWCDMA環境マクロカバレッジをスキャンし、どのマクロWCDMA基地局があるか、より正確にはどのWCDMAマクロセルが現在位置に存在しているかを調べる。これらマクロセル基地局についての情報及び関連情報が読み出される。情報は、以下の1つ又は複数に関するものである。周波数、スクランブル符号、PLMN-ID (Public land mobile network identifier)、ロケーションエリアコード(LAC)、ルーティングエリアコード(RAC)、セルID (CI)、及び、入手可能であれば基準位置(緯度/経度)。
フェムトRBSはさらに、あるいは組み合わせて、見つかった全てのセルについて、マクロCDMAの場合にUEが隣接セルの測定を行うのと同じような方法で信号強度測定を実行する。また、使用された送信電力についての情報も読み出される。
いくつかのシナリオにおいて、フェムトRBSがマクロセルとフェムトセルとを識別できなければ、いくつかのフェムトセルがこのステップで見出されるであろう。
3.ステップ2で見つかった全てのセル及び、全ての関連情報が、フェムトRBS検出隣接リスト(Femto RBS_DNL)と呼ばれるリストに追加される。
4.Femto RBS_DNLがフェムトRBSで構築される際、フェムトRBSはフェムトRNCとのコネクションを確立する。
5.Femto RBS_DNLは、フェムトRNCに報告される。Femto RBS_DNLが特定済みのフェムトセルに関する情報を含んでいる場合、フェムトRNCはそれらのセルをリストから削除することができる。
6.フェムトRNCは受信した情報(すなわちFemto RBS_DNL)を、フェムトRBSの大まかな位置を判別するために用いる。さらに、フェムトRNCはフェムトRBSの位置を判別する際に、通知されたマクロセルについての設定された地理的情報を用いる。
フェムトRBS及びマクロRBSが同一のRNCによって制御される場合、マクロセルについて報告されたPLMN-ID、RAC、LAC及びCIは、どのマクロRBSがマクロセルを制御しているのか、及びそのマクロRBSについてありうる設定された地理的位置を見出すために用いられる。
7.フェムトRBSの位置は(RNC内又は外部の)データベースに保存/更新される。この例において、データベース集中化され、ホーム3Gアクセスデータベース(H3GA DB)と呼ばれる。 )

以上によれば、アクセスポイントはフェムトRBSであるから、アクセスポイントの位置はフェムトセルの位置に他ならず、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「無線通信ネットワーク内のフェムトRBSの位置を推定するための方法に関し、
フェムトRBS起動シーケンスの一部として、どのWCDMAマクロセルが現在位置に存在しているかを調べ、
フェムトRBSの位置は(RNC内又は外部の)データベースに保存/更新され、
自動的にフェムトRBSの位置を推定し、正確な位置データを維持することを可能にし、
位置情報は緊急通話の際に用いられる
方法。」

2-2.引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。
なお、当審訳は、引用文献2に対応する特表2009-509423号公報(平成21年3月5日国内公表)を参考にしている。

オ.「Field
[0002] The present disclosure relates generally to communication, and more specifically to techniques for supporting emergency calls. 」(段落[0002])
(当審訳:【0002】参考
【0002】
[分野]
本開示は、一般的に通信に関し、特に緊急呼をサポートする技術に関する。 )

カ.「2. Emergency circuit-mode call in 3GPP2 with SUPL location
[0059] FIG. 6 shows an embodiment of a message flow 600 for emergency circuit- mode call in 3GPP2 using SUPL. In step 1, UE 110 sends a request for an emergency services call to MSC 230b in 3GPP2 PLMN 130b. In step 2, MSC 230b may assume or determine that UE 110 supports SUPL positioning, e.g., based on UE subscription information or UE capability information received from the UE or PLMN 130b policy. MSC 230b then sends an ANSI-41 MAP Origination Request to MPC 232b, which is in a network that has an association with (e.g., contains or is connected to) E-SLP 234b. The Origination Request may contain the UE identity (e.g., the BVISI and/or MIN), the serving cell ID, and/or other information (e.g., measurements from the UE or network that may be used to compute a position estimate).
[0060] In step 3, MPC 232b creates a record for the call. MPC 232b may determine an interim position estimate for UE 110 based on the cell ID and any measurements received in step 2. MPC 232b may also initiate steps 8 to 13 in advance and obtain an interim position estimate for UE 110. MPC 232b may select a PSAP based on an interim position estimate (if obtained) or the serving cell ID received in step 2. If so, MPC 232b may assign an ESRD or ESRK to indicate the selected PSAP. In the following description, PSAP 180 is the selected PSAP. In step 4, MPC 232b returns to MSC 230b an ANSI-41 MAP Origination Request acknowledgement containing any ESRD or ESRK assigned in step 3.
[0061] In step 5, MSC 230b sends the emergency services call to PSAP 180. If an ESRK or ESRD was returned in step 4, then PSAP 180 is chosen by MPC 232b in step 3. Otherwise, MSC 230b may determine the PSAP (e.g., based on the current or initial serving cell for UE 110) and may assign an ESRD and/or ESRK. The call setup message sent by MSC 230b to PSAP 180 may include any ESRD or ESRK returned in step 4 or assigned in step 5 and a callback number for UE 110 (e.g., the MSISDN).
[0062] In step 6, the call is established between UE 110 and PSAP 180 via MSC 230b. In step 7, PSAP 180 sends an Emergency Services Position Request to MPC 232b to request an accurate initial position estimate for UE 110. PSAP 180 may identify MPC 232b using the ESRK or ESRD received in step 5. In that case, the Emergency Services Position Request includes the ESRK and/or ESRD and a callback number. In step 8, MPC 232b identifies the call record created in step 3 using the ESRK or callback number received in step 7. If MPC 232b obtained an accurate position estimate in step 3 (e.g., by performing steps 8 to 13 in advance), then MPC 232b may return it immediately to PSAP 180 in step 14 and skip steps 8 to 13. Otherwise, MPC 232b sends to E-SLP 234b an Emergency Services Position Request that may contain the UE identity (e.g., the MDSf and/or BVISI), the cell ID (if known), the required QoP, and/or other information.
[0063] In steps 9 through 12, E-SLP 234b and UE 110 engage in a SUPL location procedure, as described above for steps 9 through 12 in FIG. 4. If E-SLP 234b (for proxy mode) or an SPC (for non-proxy mode) is able to obtain a position estimate with the needed accuracy from the information received in a SUPL POS INIT in step 10, then the E-SLP or SPC may proceed immediately to step 12. Otherwise, UE 110 may exchange one or more SUPL POS messages with E-SLP 234b (for proxy mode) or the SPC (for non-proxy mode) in step 11. Each SUPL POS message may contain a positioning message according to 3GPP2 C.S0022, TIA-801, 3GPP RRLP, RRC, or some other positioning protocols. E-SLP 234b or the SPC may provide assistance data to the UE in these messages, and the UE may later return location related measurements or a position estimate. In step 12, E-SLP 234b or the SPC obtains a position estimate and sends a SUPL END to UE 110 to terminate the SUPL location procedure.
[0064] In step 13, E-SLP 234b returns the position estimate (which may have been forwarded from a selected V-SLP, not shown in FIG. 6) to MPC 232b. In step 14, MPC 232b returns the position estimate to PSAP 180 in an Emergency Services Position Request response message. In step 15, at some later time, PSAP 180 may send another Emergency Services Position Request to MPC 232b to obtain an updated position estimate for UE 110. In that case, MPC 232b may repeat steps 8 to 13 to obtain a new position estimate using SUPL and return it to PSAP 180 in an Emergency Services Position Request Response. When requesting a position estimate from E-SLP 234b in a repetition of step 8, MPC 232b may transfer the last obtained position estimate to E- SLP 234b to assist it in determining a V-SLP if this option is supported.
[0065] In step 16, at some later time, the call between UE 110 and PSAP 180 is released. In step 17, MSC 230b sends to MPC 232b an ANSI-41 MAP Call Termination Report message identifying UE 110 (e.g., via the IMSI or MSISDN) and indicating that the call was released. In step 18, MPC 232b may delete the call record created in step 3 and return an ANSI-41 MAP Call Termination Report acknowledgment to MSC 230b.」(段落[0059]?[0065])
(当審訳:【0051】?【0057】参考
【0051】
2.SUPLロケーションを用いた3GPP2での緊急回線モード呼
図6は、SUPLを用いた3GPP2での緊急回線モード呼のメッセージ・フロー600の実施形態を示している。ステップ1において、UE110は、3GPP2のPLMN130b内のMSC230bに緊急サービス呼の要求を送る。ステップ2において、MSC230bは、例えばUEから受信されたUE加入情報またはUEの性能情報、あるいはPLMN130bのポリシーに基づいて、UE110がSUPL測位をサポートしていると見なすか、または判断すればよい。次いで、MSC230bは、E-SLP234bと関連する(例えば、E-SLP234bを含む、またはE-SLP234bに接続されている)ネットワーク中にあるMPC232bに、ANSI-41 MAP開始要求(Origination Request)を送る。開始要求は、UEの識別(例えば、IMSIおよび/またはMIN)、サービング・セルID、および/または他の情報(例えば、位置推定の算出に使用されればよいUEまたはネットワークからの測定値)を含んでいればよい。
【0052】
ステップ3において、MPC232bは、呼の記録を作成する。MPC232bは、ステップ2において受信されたセルIDおよび任意の測定値に基づいて、UE110の仮の位置推定を決定すればよい。MPC232bは、ステップ8からステップ13を事前に開始して、UE110の仮の位置推定を取得してもよい。MPC232bは、(取得された場合)仮の位置推定、またはステップ2において受信されたサービング・セルIDに基づいてPSAPを選択すればよい。その場合、MPC232bは、ESRDまたはESRKを割り当てて、選択されたPSAPを示せばよい。以下の説明において、PSAP180が選択されたPSAPである。ステップ4において、MPC232bは、ステップ3で割り当てられた任意のESRDまたはESRKを含むANSI-41 MAP開始要求の肯定応答をMSC230bに返す。
【0053】
ステップ5において、MSC230bは、PSAP180に緊急サービス呼を送る。ステップ4でESRKまたはESRDが返されていた場合、ステップ3でMPC232bによってPSAP180が選択される。それ以外の場合、MSC230bは、(例えばUE110の現在のまたは最初のサービング・セルに基づいて)PSAPを決定し、ESRDおよび/またはESRKを割り当てればよい。MSC230bによってPSAP180に送信される呼設定メッセージは、ステップ4で返されたかステップ5で割り当てられた任意のESRDまたはESRK、およびUE110用のコールバック番号(例えば、MSISDN)を含んでいればよい。
【0054】
ステップ6において、MSC230bを介してUE110とPSAP180との間に呼が確立される。ステップ7において、PSAP180は、MPC232bに緊急サービス位置要求を送り、UE110の正確な初期位置推定を要求する。PSAP180は、ステップ5で受信したESRKまたはESRDを使用して、MPC232bを識別してもよい。その場合、緊急サービス位置要求には、ESRKおよび/またはESRD、ならびにコールバック番号が含まれる。ステップ8において、MPC232bは、ステップ7で受信されたESRKまたはコールバック番号を使用して、ステップ3で作成された呼記録を識別する。MPC232bが、(例えばステップ8からステップ13を事前に実行することで)ステップ3において正確な位置推定を取得していた場合、MPC232bは、ステップ14においてPSAP180に対してこの位置推定を直ちに返すことができ、ステップ8からステップ13を省くことができる。それ以外の場合、MPC232bは、UEの識別(例えば、MINおよび/またはIMSI)、セルID(分かっている場合)、要求されたQoP、および/または他の情報を含めばよい緊急サービス位置要求をE-SLP234bへ送る。
【0055】
ステップ9からステップ12において、E-SLP234bおよびUE110は、図4のステップ9からステップ12について上記で説明したように、SUPLロケーション手順を行う。E-SLP234b(プロキシ・モード用)またはSPC(非プロキシ・モード用)が、ステップ10でSUPL POS INITの中で受信された情報から必要とされる精度の位置推定を取得できる場合、E-SLPまたはSPCは直ちにステップ12へ進めばよい。それ以外の場合、ステップ11において、UE110は、(プロキシ・モードでは)E-SLP234bと、または(非プロキシ・モードでは)SPCと、1つ以上のSUPL POSメッセージを交換すればよい。各SUPL POSメッセージは、3GPP2 C.S0022、TIA-801、3GPP RRLP、RRC、または他の測位プロトコルに応じた測位メッセージを含んでいればよい。E-SLP234bまたはSPCは、これらのメッセージにおいてUEへの支援データを提供すればよく、UEはロケーション関連の測定値または位置推定を後に返せばよい。ステップ12において、E-SLP234bまたはSPCは、位置推定を取得し、UE110にSUPL ENDを送り、SUPLロケーション手順を終了させる。
【0056】
ステップ13において、E-SLP234bは、(図6に示されていない選択されたV-SLPからから回送されたものでもよい)位置推定をMPC232bへ返す。ステップ14において、MPC232bは、緊急サービス位置要求応答メッセージの中で、PSAP180に位置推定を返す。ステップ15において、しばらくして、PSAP180は、MPC232bへ別の緊急サービス位置要求を送り、UE110の最新の位置推定を取得すればよい。その場合、MPC232bは、ステップ8からステップ13を繰り返して、SUPLを使用して新しい位置推定を取得し、これを緊急サービス位置要求応答の中でPSAP180に返せばよい。ステップ8を繰り返して、E-SLP234bからの位置推定を要求するとき、オプションでサポートされているなら、MPC232bは最後に取得した位置推定をE-SLP234bに転送して、V-SLPの決定においてそれを支援すればよい。
【0057】
ステップ16において、しばらくして、UE110とPSAP180との間の呼が切断される。ステップ17において、MSC230bは、UE110を識別し呼が切断されたことを示す、ANSI-41 MAP呼終了レポート(Call Termination Report)メッセージを(例えばIMSIまたはMSISDNを介して)MPC232bへ送る。ステップ18において、MPC232bは、ステップ3で作成された呼記録を削除し、ANSI-41 MAP呼終了レポートの肯定応答をMSC230bに返せばよい。)

以上によれば、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「一般的に通信に関し、特に緊急呼をサポートする技術に関し、
UE110は、3GPP2のPLMN130b内のMSC230bに緊急サービス呼の要求を送り、
MSC230bは、E-SLP234bと関連するネットワーク中にあるMPC232bに、UEの識別、サービング・セルID、および/または他の情報(例えば、位置推定の算出に使用されればよいUEまたはネットワークからの測定値)を含む、ANSI-41 MAP開始要求(Origination Request)を送り、
MPC232bは、割り当てられた任意のESRDまたはESRKを含むANSI-41 MAP開始要求の肯定応答をMSC230bに返し、
MSC230bは、ESRKまたはESRDが返されていた場合、MPC232bによって選択されたPSAP180に緊急サービス呼を送り、
PSAP180は、MPC232bに緊急サービス位置要求を送り、UE110の正確な初期位置推定を要求し、
MPC232bは、UEの識別(例えば、MINおよび/またはIMSI)、セルID(分かっている場合)、要求されたQoP、および/または他の情報を含めばよい緊急サービス位置要求をE-SLP234bへ送り、
E-SLP234bおよびUE110は、SUPLロケーション手順を行い、3GPP2 C.S0022、TIA-801、3GPP RRLP、RRC、または他の測位プロトコルに応じた測位メッセージを含む、1つ以上のSUPL POSメッセージを交換し、
E-SLP234bは、位置推定をMPC232bへ返し、
MPC232bは、緊急サービス位置要求応答メッセージの中で、PSAP180に位置推定を返す、
SUPLを用いた3GPP2での緊急回線モード呼のメッセージ・フロー。」

3.対比
本願補正後発明と引用発明1とを以下で対比する。

引用発明1は、「無線通信ネットワーク内のフェムトRBSの位置を推定するための方法に関し」たものであって、「自動的にフェムトRBSの位置を推定し、正確な位置データを維持することを可能にし、位置情報は緊急通話の際に用いられる方法」であるから、「無線通信ネットワークにおける緊急呼出しをサポートする方法」であるといえる。

本願補正後発明の「移動局によるFAP(フェムトアクセスポイント)への緊急呼び出しの発信時に、前記緊急呼出しを発信するように前記移動局によって前記FAPに送信された第1のメッセージを受信すること」や「前記緊急呼出しに関する緊急センタを選択するのに使用されるように前記FAPに関する位置情報をネットワークエンティティに送信し、前記ネットワークエンティティから、前記緊急センタまたはPSAP(公共安全応答ポイント)を識別するESRD(緊急サービスルーティング番号)またはESRK(緊急サービスルーティングキー)を含む応答メッセージを受信し、前記ESRDまたは前記ESRKに基づいて選択された緊急センタまたはPSAP(公共安全応答ポイント)に前記緊急呼出しを転送することであって、前記移動局に関する位置推定を示す情報はネットワークエンティティから緊急センタまたはPSAP(公共安全応答ポイント)に送信される、転送すること」は、FAPに関する位置情報を用いているといえる。
そして、引用発明1では、「位置情報は緊急通話の際に用いられ」ており、引用発明1のフェムトRBSはFAPに相当するから、引用発明1は、本願補正後発明と同様に、FAPに関する位置情報が用いられているといえる。

してみると、以下の点で一致し、また、相違する。

<一致点>
「無線通信ネットワークにおける緊急呼出しをサポートする方法であって、
FAPに関する位置情報が用いられる方法。」

<相違点>
本願補正後発明は、FAPに関する位置情報が用いられる具体的な方法が、「移動局によるFAP(フェムトアクセスポイント)への緊急呼び出しの発信時に、前記緊急呼出しを発信するように前記移動局によって前記FAPに送信された第1のメッセージを受信すること」、「前記緊急呼出しに関する緊急センタを選択するのに使用されるように前記FAPに関する位置情報をネットワークエンティティに送信し、前記ネットワークエンティティから、前記緊急センタまたはPSAP(公共安全応答ポイント)を識別するESRD(緊急サービスルーティング番号)またはESRK(緊急サービスルーティングキー)を含む応答メッセージを受信し、前記ESRDまたは前記ESRKに基づいて選択された緊急センタまたはPSAP(公共安全応答ポイント)に前記緊急呼出しを転送すること」および「前記移動局に関する位置推定を示す情報はネットワークエンティティから緊急センタまたはPSAP(公共安全応答ポイント)に送信される」ことであるのに対して、引用発明1では、FAPに関する位置情報がどのように用いられるのか具体的な方法が特定されていない点。

4.判断
引用文献2には、「2.引用発明」の「2-2.」で記載したように、
「UE110は、3GPP2のPLMN130b内のMSC230bに緊急サービス呼の要求を送り、
MSC230bは、E-SLP234bと関連するネットワーク中にあるMPC232bに、UEの識別、サービング・セルID、および/または他の情報(例えば、位置推定の算出に使用されればよいUEまたはネットワークからの測定値)を含む、ANSI-41 MAP開始要求(Origination Request)を送り、
MPC232bは、割り当てられた任意のESRDまたはESRKを含むANSI-41 MAP開始要求の肯定応答をMSC230bに返し、
MSC230bは、ESRKまたはESRDが返されていた場合、MPC232bによって選択されたPSAP180に緊急サービス呼を送り、
PSAP180は、MPC232bに緊急サービス位置要求を送り、UE110の正確な初期位置推定を要求し、
MPC232bは、UEの識別(例えば、MINおよび/またはIMSI)、セルID(分かっている場合)、要求されたQoP、および/または他の情報を含めばよい緊急サービス位置要求をE-SLP234bへ送り、
E-SLP234bおよびUE110は、SUPLロケーション手順を行い、3GPP2 C.S0022、TIA-801、3GPP RRLP、RRC、または他の測位プロトコルに応じた測位メッセージを含む、1つ以上のSUPL POSメッセージを交換し、
E-SLP234bは、位置推定をMPC232bへ返し、
MPC232bは、緊急サービス位置要求応答メッセージの中で、PSAP180に位置推定を返す、
SUPLを用いた3GPP2での緊急回線モード呼のメッセージ・フロー。」
の引用発明2が記載されている。

引用発明2は、「SUPLを用いた3GPP2での緊急回線モード呼のメッセージ・フロー」であるから、「無線通信ネットワークにおける緊急呼出しをサポートする方法」であるといい得ると共に、「MSC230bは、E-SLP234bと関連するネットワーク中にあるMPC232bに、UEの識別、サービング・セルID、および/または他の情報(例えば、位置推定の算出に使用されればよいUEまたはネットワークからの測定値)を含む、ANSI-41 MAP開始要求(Origination Request)を送」っているから、APに関する位置情報が用いられているといい得る。

さらに、引用発明2の「UE110は、3GPP2のPLMN130b内のMSC230bに緊急サービス呼の要求を送」ることは、MSC230bを有するPLMN130bが、「移動局によるAPへの緊急呼び出しの発信時に、前記緊急呼出しを発信するように前記移動局によって前記APに送信された第1のメッセージを受信すること」に相当する。

引用発明2の「MSC230bは、E-SLP234bと関連するネットワーク中にあるMPC232bに、UEの識別、サービング・セルID、および/または他の情報(例えば、位置推定の算出に使用されればよいUEまたはネットワークからの測定値)を含む、ANSI-41 MAP開始要求(Origination Request)を送」ることは、MSC230bを有するPLMN130bが、「前記緊急呼出しに関する緊急センタを選択するのに使用されるように前記APに関する位置情報をネットワークエンティティに送信」することに相当する。

引用発明2の「MPC232bは、割り当てられた任意のESRDまたはESRKを含むANSI-41 MAP開始要求の肯定応答をMSC230bに返」することは、MSC230bを有するPLMN130bが、「前記ネットワークエンティティから、前記緊急センタまたはPSPA(公共安全応答ポイント)を識別するESRD(緊急サービスルーティング番号)またはESRK(緊急サービスルーティングキー)を含む応答メッセージを受信」することに相当する。

引用発明2の「MSC230bは、ESRKまたはESRDが返されていた場合、MPC232bによって選択されたPSAP180に緊急サービス呼を送」ることは、MSC230bを有するPLMN130bが、「前記ESRDまたは前記ESRKに基づいて選択された緊急センタまたはPSAP(公共安全応答ポイント)に前記緊急呼出しを転送すること」に相当する。

本願補正後発明の「前記移動局に関する位置推定を示す情報」なる発明特定事項に関して、該発明特定事項より前に、「移動局に関する位置推定を示す情報」或いは「移動局に関する位置推定」なる事項は記載されていないことから、該発明特定事項の「前記」は「移動局」を修飾しているといえる。
してみると、引用発明2の「MPC232bは、緊急サービス位置要求応答メッセージの中で、PSAP180に位置推定を返す」は、「前記移動局に関する位置推定を示す情報はネットワークエンティティから緊急センタまたはPSAP(公共安全応答ポイント)に送信される」ことに相当する。

また、引用発明2における「MPC232bは、割り当てられた任意のESRDまたはESRKを含むANSI-41 MAP開始要求の肯定応答をMSC230bに返し」なる事項等の作用は、「MSC230bは、E-SLP234bと関連するネットワーク中にあるMPC232bに、UEの識別、サービング・セルID、および/または他の情報(例えば、位置推定の算出に使用されればよいUEまたはネットワークからの測定値)を含む、ANSI-41 MAP開始要求(Origination Request)を送」ることで奏する作用であるといえるから、引用発明2は、APに関する位置情報がどのように用いられるかの具体的方法であるといえる。

そして、引用発明1のFAP及び引用発明2のAPは、移動局から発信される緊急呼び出しやメッセージを受信するアクセスポイントである共に、引用発明1及び引用発明2は、APに関する位置情報が用いられる方法である。

このため、引用発明1のFAPに関する位置情報がどのように用いられるかの具体的な方法として、引用発明2のごとき方法、すなわち、「移動局によるFAP(フェムトアクセスポイント)への緊急呼び出しの発信時に、前記緊急呼出しを発信するように前記移動局によって前記FAPに送信された第1のメッセージを受信すること」、「前記緊急呼出しに関する緊急センタを選択するのに使用されるように前記FAPに関する位置情報をネットワークエンティティに送信し、前記ネットワークエンティティから、前記緊急センタまたはPSAP(公共安全応答ポイント)を識別するESRD(緊急サービスルーティング番号)またはESRK(緊急サービスルーティングキー)を含む応答メッセージを受信し、前記ESRDまたは前記ESRKに基づいて選択された緊急センタまたはPSAP(公共安全応答ポイント)に前記緊急呼出しを転送すること」、および、「前記移動局に関する位置推定を示す情報はネットワークエンティティから緊急センタまたはPSAP(公共安全応答ポイント)に送信される」こと、を備える方法を用いることは、当業者であれば容易になし得る事項である。

そして、本願補正後発明により得られる効果は、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

5.むすび
以上のとおり、本願補正後発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第5 むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-06 
結審通知日 2014-11-11 
審決日 2014-11-26 
出願番号 特願2011-514744(P2011-514744)
審決分類 P 1 8・ 574- WZ (H04W)
P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 正明  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 加藤 恵一
佐藤 聡史
発明の名称 フェムトアクセスポイントを介して緊急呼出しを位置特定すること  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 井上 正  
代理人 竹内 将訓  
代理人 岡田 貴志  
代理人 堀内 美保子  
代理人 福原 淑弘  
代理人 野河 信久  
代理人 河野 直樹  
代理人 赤穂 隆雄  
代理人 井関 守三  
代理人 中村 誠  
代理人 白根 俊郎  
代理人 峰 隆司  
代理人 佐藤 立志  
代理人 砂川 克  

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