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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1299969
審判番号 不服2012-22730  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-19 
確定日 2015-04-23 
事件の表示 特願2009-520675「OTA可能な携帯端末のプログラム更新システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月17日国際公開、WO2008/007922、平成21年12月10日国内公表、特表2009-544095〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、2007年7月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年7月14日、大韓民国)を出願日とする国際出願であって、平成21年1月14日に特許法第184条の5第1項に規定される書面と、特許法第184条の4第1項の規定による国際出願日における明細書、請求の範囲、図面(図面の中の説明に限る。)及び要約の翻訳文が提出されるとともに、同日付けで審査請求がなされ、平成23年11月15日付けで拒絶理由通知(同年11月22日発送)がなされ、平成24年2月21日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年3月12日付けで最後の拒絶理由通知(同年3月21日発送)がなされ、同年6月21日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、同年7月9日付けで前記平成24年6月21日付け手続補正を却下する旨の補正の却下の決定(同年7月17日発送)がなされるとともに、同日付けで拒絶査定(同年7月17日謄本送達)がなされたものである。
これに対して、「原査定を取り消す。本願は特許をすべきものである、との審決を求める。」ことを請求の趣旨として、平成24年11月19日付けで本件審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
そして、平成24年12月6日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、平成25年4月15日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年4月16日発送)がなされ、同年7月16日付けで回答書の提出があったものである。

第2 平成24年11月19日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成24年11月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容

平成24年11月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成24年2月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項28の記載

「 【請求項1】
プログラムによって動作する携帯端末のプログラム更新装置において、
前記プログラムの基準バージョンを格納する第1領域と、更新パッケージを格納する複数の領域で構成される第2領域とを備える第1メモリと、
前記プログラムの更新バージョンをロードする第2メモリと、
前記携帯端末が外部システムと通信することを可能にする通信部と、
前記通信部を制御して前記外部システムからの更新通知メッセージに応答して前記更新パッケージをダウンロードし、前記更新パッケージを前記第1メモリの第2領域にインストールし、更新要請に応答して、第2メモリで、前記第1メモリの第2領域から選ばれた更新パッケージを前記プログラムの前記基準バージョンに結合して前記プログラムの更新バージョンを生成し、前記第2メモリのプログラムの前記更新バージョンを用いて前記携帯端末を動作させる制御部と、
を含むことを特徴とする携帯端末のプログラム更新装置。
【請求項2】
前記更新パッケージは、
前記プログラムの前記基準バージョンと前記更新バージョンとの差に基づいて生成される更新データと、
前記更新データを前記プログラムの前記基準バージョンに結合するための情報を提供するインストールデータと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のプログラム更新装置。
【請求項3】
前記インストールデータは、
前記プログラムの前記更新パッケージ及び前記基準バージョンによって表される前記更新バージョンのバージョン識別情報を含むヒストリーデータと、
前記更新データを前記プログラムの前記基準バージョンにマッピングするマップデータと、
を含むことを特徴とする請求項2に記載のプログラム更新装置。
【請求項4】
前記プログラムの前記基準バージョンは、少なくとも二つのデータブロックを含み、かつ、
前記マップデータは、コマンドと、該コマンドに従って処理されるブロックインデックスと、を含むことを特徴とする請求項3に記載のプログラム更新装置。
【請求項5】
前記コマンドは、コピーコマンド、シフトコメンド及び変更コメンドを含み、かつ、前記インデックスによって示される前記ブロックは、前記更新データであることを特徴とする請求項4に記載のプログラム更新装置。
【請求項6】
前記更新パッケージは、
前記プログラムの前記基準バージョンと前記更新バージョンとの差に基づいて生成される更新データと、
前記更新データを前記基準バージョンに結合するための情報を提供するインストールデータと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のプログラム更新装置。
【請求項7】
前記インストールデータは、
前記プログラムの前記更新パッケージ及び前記基準バージョンによって表される前記更新バージョンのバージョン識別情報を含むヒストリーデータと、
前記更新データを前記プログラムの前記基準バージョンにマッピングするマップデータと、
を含むことを特徴とする請求項6に記載のプログラム更新装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記外部システムの通知があった時に前記更新パッケージをダウンロードし、前記更新パッケージを前記第1メモリの前記第2領域にインストールし、前記第1メモリから前記基準バージョンと前記更新パッケージとをロードし、前記基準バージョンと前記更新パッケージとを結合して前記更新バージョンを生成し、前記プログラムの前記更新バージョンを前記第2メモリにロードし、前記プログラムの前記更新バージョンを用いて前記携帯端末を動作させることを特徴とする請求項7に記載のプログラム更新装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記更新パッケージが前記マップデータを有しているか否かを検査して、前記更新パッケージがマップデータを有していないと判断された場合、前記更新バージョンに相当するデータである前記更新データと前記基準バージョンとを比較して前記マップデータを生成し、前記ヒストリーデータ、マップデータ及び更新データを前記第1メモリの前記第2領域内にインストールすることを特徴とする請求項8に記載のプログラム更新装置。
【請求項10】
前記プログラムの前記基準バージョンは、製造時にインストールされるシステムのファームウェア、又はソフトウェアであることを特徴とする請求項9に記載のプログラム更新装置。
【請求項11】
プログラムによって動作する携帯端末のプログラム更新方法において、
外部システムから前記プログラムの更新パッケージをダウンロードするステップと、
第1メモリは、前記プログラムの基準バージョンを格納する第1領域と、更新パッケージを格納する複数の領域で構成される第2領域とを備え、前記更新パッケージを前記第1メモリの第2領域にインストールするステップと、
更新要請に応答して、前記第1メモリの第1領域で、前記プログラムの基準バージョンと前記第1メモリの第2領域から選ばれた更新パッケージとを第2メモリにロードするステップと、
前記第2メモリで、前記プログラムの前記基準バージョンを前記更新パッケージに結合して前記プログラムの更新バージョンを生成するステップと、
前記第2メモリのプログラムの前記更新バージョンを用いて前記携帯端末を動作させるステップと、
を含むことを特徴とする携帯端末のプログラム更新方法。
【請求項12】
前記更新パッケージは、
前記プログラムの前記基準バージョンと前記更新バージョンとの差に基づいて生成される更新データと、
前記プログラムの前記更新パッケージと前記基準バージョンとによって表される前記更新バージョンのバージョン識別情報を含むヒストリーデータと、
前記更新データを前記プログラムの前記基準バージョンにマッピングするマップデータと、
を含むことを特徴とする請求項11に記載のプログラム更新方法。
【請求項13】
前記マップデータは、コピーコマンドと、シフトコマンドと、変更コマンドと、該コマンドに従って処理されるブロックのインデックスとを含み、
前記インデックスによって示される前記ブロックは、前記更新データであることを特徴とする請求項12に記載のプログラム更新方法。
【請求項14】
前記更新パッケージをインストールするステップは、
前記更新パッケージから前記ヒストリーデータ、前記マップデータ及び前記更新データを抽出するステップと、
前記ヒストリーデータ、前記マップデータ及び前記更新データを前記第1メモリの前記第2領域の各々の格納部分内にインストールするステップと、
を含むことを特徴とする請求項12に記載のプログラム更新方法。
【請求項15】
前記更新パッケージをインストールするステップは、
前記更新パッケージから前記ヒストリーデータ及び前記更新バージョンに相当するデータである前記更新データを抽出するステップと、
前記基準バージョンと前記抽出された更新データから前記マップデータを生成するステップと、
前記ヒストリーデータ、前記マップデータ及び前記抽出された更新データを前記第1メモリの前記第2領域の各々の格納部分内にインストールするステップと、
を含むことを特徴とする請求項12に記載のプログラム更新方法。
【請求項16】
前記更新パッケージをインストールするステップは、
前記ヒストリーデータを前記第1メモリの前記第2領域にインストールするステップと、
前記マップデータが前記更新パッケージに含まれているか否かを検査するステップと、
前記更新パッケージがマップデータを有していると判断された場合、前記マップデータを前記第1メモリの前記第2領域内にインストールするステップと、
前記更新パッケージがマップデータを有していないと判断された場合、前記更新バージョンに相当するデータである前記更新データと前記基準バージョンとを比較してマップデータを生成し、該マップデータを前記第1メモリの前記第2領域内にインストールするステップと、
前記更新データを前記第1メモリの前記第2領域内にインストールするステップと、
を含むことを特徴とする請求項12に記載のプログラム更新方法。
【請求項17】
前記更新バージョンを生成するステップは、
前記第1メモリの第2領域にインストールされた前記更新パッケージをロードするステップと、
前記更新パッケージの前記更新データを前記プログラムの前記基準バージョンに結合するステップと、
を含むことを特徴とする請求項11に記載のプログラム更新方法。
【請求項18】
前記更新パッケージは、前記プログラムの最新バージョンのパッケージであることを特徴とする請求項17に記載のプログラム更新方法。
【請求項19】
前記第1メモリは、不揮発性メモリであり、かつ、
前記第2メモリは、揮発性メモリであることを特徴とする請求項18に記載のプログラム更新方法。
【請求項20】
前記更新要請は、システム初期化の実行により発生することを特徴とする請求項19に記載のプログラム更新方法。
【請求項21】
前記更新要請は、前記更新パッケージのインストールの終了後に、ユーザーインプットによって生成されることを特徴とする請求項19に記載のプログラム更新方法。
【請求項22】
前記プログラムの前記更新バージョンを生成するステップは、
ヒストリーデータに基づいて更新される前記プログラムの前記基準バージョンを検査するステップと、
前記更新パッケージの前記更新データを前記更新パッケージのマップデータに基づく前記プログラムの前記基準バージョンにマッピングして、前記プログラムの前記更新バージョンを生成するステップと、
を含むことを特徴とする請求項19に記載のプログラム更新方法。
【請求項23】
プログラムによって動作する携帯端末のプログラム更新装置において、
前記プログラムの基準バージョンを格納する第1領域と、更新パッケージを格納する複数の領域で構成される第2領域とを備える第1メモリと、
前記プログラムの更新バージョンを格納する第2メモリと、
外部システムから前記更新パッケージをダウンロードするダウンローダーと、
前記ダウンローダーによってダウンロードされた前記更新パッケージを、前記第1メモリの第2領域内にインストールするインストーラと、
更新要請に応答して、前記第1メモリの第1領域及び第2領域からそれぞれ前記更新パッケージ及び前記プログラムの前記基準バージョンを第2メモリにロードし、第2メモリから前記ロードした前記プログラムの前記基準バージョンに前記更新パッケージを結合して前記プログラムの前記更新バージョンを生成するトランスレータと、で構成されたことを特徴とする携帯端末のプログラム更新装置。
【請求項24】
前記第1メモリは、不揮発性メモリであり、かつ、
前記第2メモリは、揮発性メモリであることを特徴とする請求項23に記載のプログラム更新装置。
【請求項25】
前記更新パッケージは、前記プログラムの前記基準バージョンと前記更新バージョンとの差に基づいて生成される更新データと、前記更新データを前記プログラムの前記基準バージョンに結合するための情報を提供するインストールデータと、を含み、
前記インストーラは、前記更新パッケージからヒストリーデータ、マップデータ及び更新データを抽出して、前記第1メモリの前記第2領域にインストールすることを特徴とする請求項24に記載のプログラム更新装置。
【請求項26】
前記更新パッケージは、前記プログラムの前記更新バージョンに相当するデータである更新データと、前記更新データを前記プログラムの前記基準バージョンに結合するための情報を提供するインストールデータと、を含み、
前記インストーラは、前記更新パッケージから抽出されたヒストリーデータを前記第1メモリの前記第2領域にインストールし、前記更新データと前記基準バージョンとを比較して、前記更新データを前記基準バージョンにマッピングするマップデータを生成し、前記マップデータを前記第1メモリの第2領域にインストールし、前記更新データを前記第1メモリの前記第2領域内にインストールすることを特徴とする請求項24に記載のプログラム更新装置。
【請求項27】
前記トランスレータは、前記マップデータに基づいて、前記更新データを前記プログラムの前記基準バージョンに結合して前記プログラムの前記更新バージョンを生成し、前記更新バージョンを前記第2メモリに格納することを特徴とする請求項25に記載のプログラム更新方法。
【請求項28】
前記更新要請は、システム初期化の実行により発生することを特徴とする請求項27に記載のプログラム更新方法。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正前の請求項」という。)

を、

「 【請求項1】
プログラムによって動作する携帯端末のプログラム更新装置において、
前記プログラムの基準バージョンを格納する第1領域と、更新パッケージを格納する複数の領域で構成される第2領域とを備える第1メモリと、
前記プログラムの更新バージョンをロードする第2メモリと、
前記携帯端末が外部システムと通信することを可能にする通信部と、
前記通信部を制御して前記外部システムからの更新通知メッセージに応答して前記更新パッケージをダウンロードし、前記更新パッケージを前記第1メモリの第2領域にインストールし、更新要請に応答して、前記更新パッケージが前記更新バージョンを前記基準バージョンにマッピングするマップデータを含むのか判断し、前記更新パッケージが前記マップデータを含まない場合、前記更新パッケージに含まれるブロックマッピングのためのブロックインデックス情報と前記基準バージョンとに基づいて前記マップデータを生成し、前記マップデータに基づいて、前記更新パッケージを前記プログラムの前記基準バージョンに結合して前記プログラムの更新バージョンを生成し、前記プログラムの前記更新バージョンを用いて前記携帯端末を動作させる制御部と、
を含むことを特徴とする携帯端末のプログラム更新装置。
【請求項2】
前記更新パッケージは、
前記プログラムの前記基準バージョンと前記更新バージョンとの差に基づいて生成される更新データと、
前記更新データを前記プログラムの前記基準バージョンに結合するための情報を提供するインストールデータと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のプログラム更新装置。
【請求項3】
前記インストールデータは、
前記プログラムの前記更新パッケージ及び前記基準バージョンによって表される前記更新バージョンのバージョン識別情報を含むヒストリーデータをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のプログラム更新装置。
【請求項4】
前記プログラムの前記基準バージョンは、少なくとも二つのデータブロックを含み、かつ、
前記マップデータは、コマンドと、該コマンドに従って処理されるブロックインデックスと、を含むことを特徴とする請求項3に記載のプログラム更新装置。
【請求項5】
前記コマンドは、コピーコマンド、シフトコメンド及び変更コメンドを含み、かつ、前記インデックスによって示される前記ブロックは、前記更新データであることを特徴と
する請求項4に記載のプログラム更新装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記外部システムの通知があった時に前記更新パッケージをダウンロードし、前記更新パッケージを前記第1メモリの前記第2領域にインストールし、前記第1メモリから前記基準バージョンと前記更新パッケージとをロードし、前記基準バージョンと前記更新パッケージとを結合して前記更新バージョンを生成し、前記プログラムの前記更新バージョンを前記第2メモリにロードし、前記プログラムの前記更新バージョンを用いて前記携帯端末を動作させることを特徴とする請求項3に記載のプログラム更新装置。
【請求項7】
前記プログラムの前記基準バージョンは、製造時にインストールされるシステムのファームウェア、又はソフトウェアであることを特徴とする請求項6に記載のプログラム更新装置。
【請求項8】
プログラムによって動作する携帯端末のプログラム更新方法において、
外部システムから前記プログラムの更新パッケージをダウンロードするステップと、
第1メモリは、前記プログラムの基準バージョンを格納する第1領域と、更新パッケージを格納する複数の領域で構成される第2領域とを備え、前記更新パッケージを前記第1メモリの第2領域にインストールするステップと、
更新要請に応答して、前記第1メモリの第1領域で、前記プログラムの基準バージョンと前記第1メモリの第2領域から選ばれた更新パッケージとを第2メモリにロードするステップと、
前記第2メモリで、前記更新バージョンを前記基準バージョンにマッピングするマップデータに基づいて前記プログラムの前記基準バージョンを前記更新パッケージに結合して前記プログラムの更新バージョンを生成するステップと、
前記第2メモリのプログラムの前記更新バージョンを用いて前記携帯端末を動作させるステップと、
を含み、
前記第2メモリにロードするステップは、
前記更新パッケージが、前記マップデータを含むのか判断するステップと、
前記更新パッケージが前記マップデータを含まない場合、前記更新パッケージに含まれるブロックマッピングのためのブロックインデックス情報と前記基準バージョンとに基づいて前記マップデータを生成するステップと、を含むことを特徴とする携帯端末のプログラム更新方法。
【請求項9】
前記更新パッケージは、
前記プログラムの前記基準バージョンと前記更新バージョンとの差に基づいて生成される更新データと、
前記プログラムの前記更新パッケージと前記基準バージョンとによって表される前記更新バージョンのバージョン識別情報を含むヒストリーデータと、
をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のプログラム更新方法。
【請求項10】
前記マップデータは、コピーコマンドと、シフトコマンドと、変更コマンドと、該コマンドに従って処理されるブロックのインデックスとを含み、
前記インデックスによって示される前記ブロックは、前記更新データであることを特徴とする請求項9に記載のプログラム更新方法。
【請求項11】
前記更新パッケージをインストールするステップは、
前記更新パッケージが前記マップデータを含む場合、前記更新パッケージから前記ヒストリーデータ、前記マップデータ及び前記更新データを抽出するステップと、
前記ヒストリーデータ、前記マップデータ及び前記更新データを前記第1メモリの前記第2領域の各々の格納部分内にインストールするステップと、
を含むことを特徴とする請求項9に記載のプログラム更新方法。
【請求項12】
前記更新パッケージをインストールするステップは、
前記更新パッケージから前記ヒストリーデータ及び前記更新データを抽出するステップと、
前記ヒストリーデータ、前記マップデータ及び前記更新データを前記第1メモリの前記第2領域の各々の格納部分内にインストールするステップと、
を含むことを特徴とする請求項9に記載のプログラム更新方法。
【請求項13】
前記更新バージョンを生成するステップは、
前記第1メモリの第2領域にインストールされた前記更新パッケージをロードするステップと、
前記更新パッケージの前記更新データを前記プログラムの前記基準バージョンに結合するステップと、
を含むことを特徴とする請求項8に記載のプログラム更新方法。
【請求項14】
前記更新パッケージは、前記プログラムの最新バージョンのパッケージであることを特徴とする請求項13に記載のプログラム更新方法。
【請求項15】
前記第1メモリは、不揮発性メモリであり、かつ、
前記第2メモリは、揮発性メモリであることを特徴とする請求項14に記載のプログラム更新方法。
【請求項16】
前記更新要請は、システム初期化の実行により発生することを特徴とする請求項15に記載のプログラム更新方法。
【請求項17】
前記更新要請は、前記更新パッケージのインストールの終了後に、ユーザーインプットによって生成されることを特徴とする請求項15に記載のプログラム更新方法。
【請求項18】
前記プログラムの前記更新バージョンを生成するステップは、
ヒストリーデータに基づいて更新される前記プログラムの前記基準バージョンを検査するステップと、
前記更新パッケージの前記更新データを前記更新パッケージのマップデータに基づく前記プログラムの前記基準バージョンにマッピングして、前記プログラムの前記更新バージョンを生成するステップと、
を含むことを特徴とする請求項15に記載のプログラム更新方法。
【請求項19】
プログラムによって動作する携帯端末のプログラム更新装置において、
前記プログラムの基準バージョンを格納する第1領域と、更新パッケージを格納する複数の領域で構成される第2領域とを備える第1メモリと、
前記プログラムの更新バージョンを格納する第2メモリと、
外部システムから前記更新パッケージをダウンロードするダウンローダーと、
前記ダウンローダーによってダウンロードされた前記更新パッケージを、前記第1メモリの第2領域内にインストールし、更新要請に応答して、前記更新パッケージが前記更新バージョンを前記基準バージョンにマッピングするマップデータを含むのか判断し、前記更新パッケージが前記マップデータを有していない場合、前記更新パッケージに含まれるブロックマッピングのためのブロックインデックス情報及び前記基準バージョンに基づいて、前記マップデータを生成するインストーラと、
前記第1メモリの第1領域及び第2領域からそれぞれ前記更新パッケージ及び前記プログラムの前記基準バージョンをロードし、前記マップデータに基づいて前記ロードした前記プログラムの前記基準バージョンに前記更新パッケージを結合して前記プログラムの前記更新バージョンを生成するトランスレータと、で構成されたことを特徴とする携帯端末のプログラム更新装置。
【請求項20】
前記第1メモリは、不揮発性メモリであり、かつ、
前記第2メモリは、揮発性メモリであることを特徴とする請求項19に記載のプログラム更新装置。
【請求項21】
前記更新パッケージは、前記プログラムの前記基準バージョンと前記更新バージョンとの差に基づいて生成される更新データと、前記更新データを前記プログラムの前記基準バージョンに結合するための情報を提供するインストールデータと、を含み、
前記インストーラは、前記更新パッケージが前記マップデータを含む場合、前記更新パッケージからヒストリーデータ、前記マップデータ及び前記更新データを抽出して、前記第1メモリの前記第2領域にインストールすることを特徴とする請求項20に記載のプログラム更新装置。
【請求項22】
前記更新パッケージは、前記プログラムの更新データと、前記更新データを前記プログラムの前記基準バージョンに結合するための情報を提供するインストールデータと、を含み、
前記インストーラは、前記更新パッケージから抽出されたヒストリーデータを前記第1メモリの前記第2領域にインストールし、前記更新バージョンを前記基準バージョンにマッピングするマップデータを生成し、前記マップデータを前記第1メモリの第2領域にインストールし、前記更新データを前記第1メモリの前記第2領域内にインストールすることを特徴とする請求項20に記載のプログラム更新装置。
【請求項23】
前記トランスレータは、前記マップデータに基づいて、前記更新データを前記プログラムの前記基準バージョンに結合して前記プログラムの前記更新バージョンを生成し、前記更新バージョンを前記第2メモリに格納することを特徴とする請求項21に記載のプログラム更新方法。
【請求項24】
前記更新要請は、システム初期化の実行により発生することを特徴とする請求項23に記載のプログラム更新方法。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正後の請求項」という。なお、下線は、補正箇所を示すものとして、出願人が付与したものである。)

に補正するものである。

2.新規事項の有無

本件補正が、特許法第17条の2第3項の規定を満たすものであるか否か、即ち、本件補正が、平成21年1月14日付けで提出された特許法第184条の4第1項の国際出願日(平成19年7月13日)における特許法第184条の3第2項の国際特許出願の明細書若しくは図面の特許法第184条の4第1項の翻訳文、又は国際出願日における国際特許出願の図面(以下、「翻訳文等」という。)に記載した事項の範囲内でなされたものであるかについて、以下に検討する。

(1)補正後の請求項1、請求項8、請求項19は、その記載からして、次の事項(a)を含んでいる。

(a)「前記更新パッケージが前記マップデータを含まない(有していない)場合、前記更新パッケージに含まれるブロックマッピングのためのブロックインデックス情報と前記基準バージョン(と)に基づいて前記マップデータを生成」する態様

しかしながら、翻訳文等の明細書を参照すると、
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。以下同じ。)

「【0059】
ダウンロードされる更新パッケージは更新パッケージ処理器10で生成されるが、この時、インストールデータのマップデータは生成されることもあり、生成されないこともある。従って、携帯端末にダウンロードされる更新パッケージは、マップデータが含まれることもあり、含まれないこともある。従って、マップデータが含まれていない更新パッケージをダウンロードした場合、インストーラ230は、逆に第1メモリ250に格納された第1バージョンと、ダウンロードされた更新パッケージとを比較分析し、更新データを第1バージョンにマッピングするためのマップデータを生成する。このため、インストーラ230は、更新データを分析してマップデータを生成する。この時、更新データは、図9に示すような構造を有することができる。インストーラ230が、更新データからマップデータを生成する理由は、トランスレータ240で第2バージョンのプログラムを生成する速度を向上させるためである。また、更新データが、第1バージョンのブロックとマッピングするための情報を含んでいる場合、インストーラ230は、ダウンロードされた更新パッケージを第1メモリ250にそのまま格納し、トランスレータ240は、更新データを用いて第1バージョンと更新パッケージとを直接結合することもできる。」、

「【0135】
しかし、第2メモリ260は揮発性メモリであるため、第2メモリ260に格納される更新パッケージは、不揮発性メモリの第1メモリ250にインストールしてこそ更新パッケージを安全に保管することができる。従って、制御部900は、更新パッケージをダウンロードした後、表示部950に更新パッケージのダウンロードを表示し、インストールするか否かの選択を案内するメッセージを表示する。この時、携帯電話のユーザがインストール機能を選択すれば、制御部900は、一時格納中の更新パッケージを第1メモリ250の第2領域中、空領域(空領域がなければ、最も先にインストールされた更新パッケージがインストールされた領域)にダウンロードされた更新パッケージをインストールする。この時、更新パッケージは、更新データとインストールデータとから構成され、インストールデータはヒストリーデータとマップデータとから構成される。この時、マップデータは、ダウンロードされる更新パッケージに含まれることもあり、含まれないこともある。従って、制御部900は、更新パッケージを分析してマップデータが含まれていない更新パッケージであれば、更新パッケージと第1バージョンを比較してマップデータを生成した後、更新パッケージのインストール時に生成されたマップデータを同時にインストールする。また、マップデータを含んでいないが、更新データにマップデータの機能を含んでいる更新パッケージが受信された場合、インストーラ230は、マップデータを生成せずに第1メモリ250の当該更新パッケージ格納領域に、更新データ及びヒストリーデータを更新パッケージとしてインストールする。また、更新データを含んでいないが、マップデータが更新データを含んでいれば、インストーラ230は、第1メモリ250の該当する更新パッケージ領域にヒストリーデータ及びマップデータをインストールする。」、

と記載されており、当該記載からすると、更新パッケージがマップデータを含まない場合の態様として、下記の2つの態様(b1)及び(b2)が記載されているものと解される。

(b1)“第1メモリに格納された第1バージョンと、ダウンロードされた更新パッケージとを比較分析し、更新データを第1バージョンにマッピングするためのマップデータを生成する” 態様
(b2)“更新データが、第1バージョンのブロックとマッピングするための情報を含んでいる場合、マップデータを生成せずに、ダウンロードされた更新パッケージを第1メモリにそのまま格納し、当該更新データを用いて第1バージョンと更新パッケージとを直接結合する”態様

ここで、上記(b1)及び(b2)の態様について検討するに、

上記(b1)の具体的な態様としては、翻訳文等の明細書に、

「【0096】
また、更新パッケージ内にマップデータが含まれていない場合、携帯端末30は、619ステップでこれを感知し、621ステップ及び623ステップで圧縮解除器を駆動し更新パッケージから更新データを抽出して圧縮を解除する。その後、携帯端末30は、625ステップ-629ステップを行いながら圧縮解除された更新データをパースした後、これを第1メモリ250に格納している第1バージョンと比較して差異データを求め、これに基づいて、更新データを第1バージョンにマッピングするためのマップデータを生成する。その後、携帯端末30は、631ステップ及び633ステップで、第1メモリ250に割り当てられた更新パッケージの格納領域に、生成されたマップデータ及び更新データを各々格納する。」、

と記載されているように、上記(b1)の態様は、“ダウンロードされた更新パッケージから更新データを抽出し、当該抽出された更新データと、第1メモリに格納された第1バージョンとを比較して差異データを求め、これに基づいて、更新データを第1バージョンにマッピングするためのマップデータを生成する”ものであると認められる。

また、上記(b2)に関して、翻訳文等の明細書に、

「【0049】
図9は、ヒストリーデータ及び更新データから構成される更新パッケージを生成する方法を説明するための図である。この場合、更新パッケージ処理器10はマップデータ発生器を備えず、パッケージ発生器130は図9のような更新データを生成する。ここで、更新データは、V2バージョンの各ブロックのインデックス情報及びブロックデータ情報を含む構造を有する。
【0050】
図9を参照すると、V2は6、7、13、14、15、16、17番ブロックデータが追加され、V1の9、10、11、12番ブロックデータが削除された状態であることが分かる。この時、パッケージ発生器130は、V1及びV2の比較結果値を分析し、V2の各ブロックのブロックインデックス(V1のようなブロックマッピングのためのインデックス)及びブロックデータの情報を含まなければならない。本発明の実施形態に係る更新データは、マップデータと類似する構造形態を有する。すなわち、更新データのコマンドはC(copy)、M(modify、insert or replace as same size)、S(shift)から構成され、各コマンドのフォーマットは下記のように構成される。・・・(後略)」

と記載されており、上記(b2)に記載の「第1バージョンのブロックとマッピングするための情報」及び「第1バージョン」は、それぞれ、上記(a)に記載の「ブロックマッピングのためのブロックインデックス情報」及び「基準バージョン」に相当していると認められる。

してみると、翻訳文等には、更新パッケージがマップデータを含まない場合、“更新データと第1バージョン(上記(a)の「基準バージョン」に相当)とを比較して差異データを求め、当該差異データに基づいてマップデータを生成する”態様が記載されているにすぎず、上記(a)の態様、すなわち、“ブロックインデックス情報と基準バージョンとに基づいてマップデータを生成する”態様は、翻訳文等には、記載も示唆もなく、また自明な事項でもない。
(なお、上記で検討したように、更新データが「ブロックとマッピングするための情報(上記(a)の「ブロックインデックス情報」に相当)」を含む場合は、マップデータは生成されない。(上記(b2)の態様))

そして、当業者の技術常識を勘案しても、翻訳文等の記載から上記(a)の事項を導き出すことができるものではなく、本件補正は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな事項を導入するものである。

よって、上記(a)の事項を含む本件補正は、翻訳文等の記載の範囲内においてするものではない。

(2)補正後の請求項1及び請求項19は、その記載からして、次の事項(c)を含んでいる。

(c)「更新要請に応答して、前記更新パッケージが前記更新バージョンを前記基準バージョンにマッピングするマップデータを含むのか判断し、前記更新パッケージが前記マップデータを含まない(有していない)場合、前記更新パッケージに含まれるブロックマッピングのためのブロックインデックス情報と前記基準バージョン(と)に基づいて前記マップデータを生成」する態様

しかしながら、翻訳文等の明細書を参照すると、

「【0092】
上記のように、携帯端末機30は更新パッケージをダウンロードすると、インストールステップ(install step)及び更新ステップ(translating step)を行う。図23は、携帯端末機30からダウンロードされる更新パッケージを第1メモリ250にインストールするステップを示すフロー図であり、図24は、携帯端末機30において第1メモリ250にインストールされた更新パッケージを、第1バージョンに更新して第2メモリ260に格納した後、システムを運用するステップを示すフロー図である。」、

「【0093】
図23を参照すると、ダウンロードの必要時、携帯端末30は、601ステップでダウンローダ(down loader)を実行し、603ステップでネットワークを介して更新サーバ20から伝送される更新パッケージをダウンロードする。この時、更新パッケージのダウンロードは携帯端末30の通信リンクによって変わる。すなわち、携帯端末30が移動通信端末であれば、携帯端末30は設定される無線リンク(例えば、CDMA、UMTS、GSM、GPRS等)を介して更新パッケージをダウンロードすることができ、インターネットを介して接続される端末であれば、無線インターネット(wibro、wifi、wimax、無線LAN等)によって更新パッケージをダウンロードすることができる。また、USBのような有線通信リンク又はブルートゥース等のような近距離通信リンクを介してシステムに接続される端末の場合には、当該有線通信方法又は近距離無線通信方法によって更新パッケージをダウンロードすることができる。この時、ダウンロードは、更新パッケージ全体がダウンロードされる時まで続き、ダウンロード中にエラーが発生すると携帯端末30は605ステップでこれを感知し、607ステップ及び609ステップを行い更新パッケージの再ダウンロードを行う。
・・・(中略)・・・
【0096】
また、更新パッケージ内にマップデータが含まれていない場合、携帯端末30は、619ステップでこれを感知し、621ステップ及び623ステップで圧縮解除器を駆動し更新パッケージから更新データを抽出して圧縮を解除する。その後、携帯端末30は、625ステップ-629ステップを行いながら圧縮解除された更新データをパースした後、これを第1メモリ250に格納している第1バージョンと比較して差異データを求め、これに基づいて、更新データを第1バージョンにマッピングするためのマップデータを生成する。その後、携帯端末30は、631ステップ及び633ステップで、第1メモリ250に割り当てられた更新パッケージの格納領域に、生成されたマップデータ及び更新データを各々格納する。」、

「【0100】
図24を参照すると、更新パッケージを用いて携帯端末30のバージョンを更新するステップは、システムの電源オン又はユーザの更新要求によって実行される。すなわち、本発明の実施形態に係る携帯端末30は、システム初期化時にハードウェア等の初期化を実行した後、第1メモリ250に格納された第1バージョン及び最も最近更新された更新パッケージ(又は、ユーザによって設定された更新パッケージ)を組合せて更新されたプログラムを第2メモリ260に格納し、これを用いてシステムの動作を制御する。ここで、第2メモリ260に格納されるプログラムは、システムプログラム、動作コード、ソフトウェア等、不揮発性メモリにインストールできる全てのプログラムを含む。」

と記載されるように、翻訳文等には、“ダウンロードの必要時に、更新パッケージをダウンロードして、更新パッケージにマップデータが含まれていない場合にマップデータを生成して、更新パッケージとして更新パッケージ格納領域に格納(インストール)し、システム運用開始時(起動時)またはユーザの更新要求があった時に、所定の更新パッケージを第1バージョンに適用して新たなバージョンを生成する”ことが記載されているにすぎず、これ以外の態様については記載も示唆もない。

これに対して、補正後の請求項1及び請求項19には、上記(c)の態様が記載されており、マップデータの生成は、更新パッケージを格納(インストール)するときではなく、更新要請があった後になされており、翻訳文等に記載されたタイミングと異なっている。

してみると、上記(c)の態様、すなわち、“更新要請に応答して、マップデータを生成する”態様は、翻訳文等には、記載も示唆もなく、また自明な事項でもない。

そして、当業者の技術常識を勘案しても、翻訳文等の記載から上記(c)の事項を導き出すことができるものではなく、本件補正は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな事項を導入するものである。

よって、上記(c)の事項を含む本件補正は、翻訳文等の記載の範囲内においてするものではない。

(3)小括

以上のように、補正後の請求項1、請求項8、請求項19に記載された(a)の事項、及び補正後の請求項1、請求項19に記載された(c)の事項は、翻訳文等に記載されておらず、かつ、その記載から自明なものでもないから、上記事項を追加する本件補正は、翻訳文等に記載した事項の範囲内でしたものではないので、特許法第17条の2第3項の規定に違反する。

3.むすび

以上のとおり、本件補正は、外国語特許出願に係る明細書、特許請求の範囲又は図面について補正ができる範囲の特例について規定した特許法第184条の12第2項により、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)とされる翻訳文等に記載した事項の範囲内でしたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件審判請求の成否について

1.本願の特許請求の範囲

平成24年11月19日付けの手続補正は上記のとおり却下された。そして、上記平成24年2月21日付け手続補正書は、特許請求の範囲を、上記補正前の請求項のとおりに補正するものであり、本願の特許請求の範囲の記載は上記補正前の請求項のとおりのものである。

2.平成24年2月21日付け意見書

平成24年2月21日付けで提出された意見書の概要は、下記のとおりである。(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

『1.補正について
上記拒絶理由を解消するために、特許請求の範囲を以下のように補正しました。

(1)補正後の請求項1
補正前の請求項1に補正前の請求項6の内容を加えました。さらに、(ア)「更新パッケージは複数の領域で構成される」構成、(イ)「更新要請に応答して、第2メモリで、前記第1メモリの第2領域から選ばれた更新パッケージを前記第2メモリのプログラムの前記基準バージョンに結合して前記プログラムの更新バージョンを生成」する構成を追加しました。
(ア)の構成は、本願出願当初の図13、14、及び、それらの図面に該当する明細書の説明等に基づいております。
(イ)の構成は、本願出願当初の図26?28及びそれらに関する出願当初明細書の説明において、更新要請に応じて(ステップ741、751、759、781)、選ばれた(ステップ743、759、767、785)更新パッケージをプログラムの基準バージョンに結合していること、更新パッケージは第1メモリの第2領域にあること(本願出願当初の図13、14及び、それらの図面に該当する明細書の説明等)、プログラムの更新は第2メモリで行われ、更新された第2メモリ上のプログラムが実行されること(本願出願当初明細書の段落[0014]等)に基づいております。

(2)補正後の請求項11
補正前の請求項12に補正前の請求項13の内容を加えました。さらに、(1)(ア)(イ)の構成を追加しました。(ア)(イ)の構成の根拠は、前述の通りです。

(3)補正後の請求項23
補正前の請求項25に補正前の請求項6と同様の構成を追加しました。さらに、(1)(ア)(イ)の構成を追加しました。(ア)(イ)の構成の根拠は、前述の通りです。

(4)補正後の請求項9
補正前の請求項10に相当します。
更新パッケージがマップデータを有していない場合、図23のステップ627、629が実施されるためには、更新データは更新バージョンのプログラムのデータに相当することは、本願出願時の当業者の技術常識から自明であることに基づいております。

(5)補正後の請求項15
補正前の請求項17に相当します。
「前記更新パッケージから前記ヒストリーデータ及び前記更新バージョンに相当するデータである前記更新データを抽出するステップ」は、本願出願当初の図23におけるステップ613、623、出願当初明細書の段落[0094][0096]、及び、更新パッケージがマップデータを有していない場合、図23のステップ627、629が実施されるためには、更新データは更新バージョンのプログラムのデータに相当することが本願出願時の当業者の技術常識から自明であることに基づいております。
「前記基準バージョンと前記抽出された更新データから前記マップデータを生成するステップ」は、本願出願当初の図23におけるステップ625?629、出願当初明細書の段落[0096]に基づいております。

(6)補正後の請求項16
補正前の請求項18に相当します。
「前記更新バージョンに相当するデータである前記更新データと前記基準バージョンとを比較してマップデータを生成し、」は、本願出願当初の図23におけるステップ625?629、出願当初明細書の段落[0096]、及び、更新パッケージがマップデータを有していない場合、図23のステップ627、629が実施されるためには、更新データは更新バージョンのプログラムのデータに相当することが本願出願時の当業者の技術常識から自明であることに基づいております。

(7)補正後の請求項26
補正前の請求項28に相当します。
「前記プログラムの前記更新バージョンに相当するデータである更新データと、」は、更新パッケージがマップデータを有していない場合、図23のステップ627、629が実施されるためには、更新データは更新バージョンのプログラムのデータに相当することが本願出願時の当業者の技術常識から自明であることに基づいております。
「前記更新データと前記基準バージョンとを比較して、前記更新データを前記基準バージョンにマッピングするマップデータを生成し、」は、本願出願当初の図23におけるステップ625?629、出願当初明細書の段落[0096]に基づいております。

(8)補正後の請求項27
補正前の請求項29に相当します。もとの文章では意味不明瞭となることから「前記マップデータに基づいて」の位置を移動しました。

(9)他の請求項
もとの請求項6、13、31を削除し、それに伴い、請求項番号を繰り上げました。さらに従属する請求項番号も補正後の請求項番号にあわせました。

したがって、以上の補正は新規事項の追加はないものと思料いたします。

2.理由1について
審査官殿は、本願出願当初明細書の段落[0010]、[0032]、[0084]等の記載から更新データは、「第1バージョン」と「更新バージョン」との差分であると解釈されていますが、必ずしもそうとは限りません。
・・・(中略)・・・
例えば、更新データが更新バージョンのデータと一致する場合を考えてみても、第1バージョンの全データを変更(M:modify)するマップデータを作成すれば、バージョンの更新が可能なため、更新バージョンのデータと全く同じデータを更新データに使用しても更新パッケージとして機能することが出来ます。
・・・(後略)』

3.平成24年3月12日付け拒絶理由

平成24年3月12日付けで通知した拒絶の理由は、下記のとおりである。

『 理 由

1.平成24年2月21日付けでした手続補正は、下記の点で国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては、当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、翻訳文等という。)(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあっては、翻訳文等又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。



(1)補正後の請求項1に記載の「第2メモリで、前記第1メモリの第2領域から選ばれた更新パッケージを前記プログラムの前記基準バージョンに結合して前記プログラムの更新バージョンを生成し」、請求項11に記載の「前記プログラムの基準バージョンと前記第1メモリの第2領域から選ばれた更新パッケージとを第2メモリにロードするステップと、前記第2メモリで、前記プログラムの前記基準バージョンを前記更新パッケージに結合して前記プログラムの更新バージョンを生成するステップ」、及び、請求項23に記載の「前記第1メモリの第1領域及び第2領域からそれぞれ前記更新パッケージ及び前記プログラムの前記基準バージョンを第2メモリにロードし」は、上記翻訳文等には記載されていない。
出願人は、補正の根拠を、翻訳文明細書の段落【0014】としているが、該段落には、「その後、更新要求時、携帯端末は、第1バージョンのプログラムにダウンロードされた第2バージョンの更新パッケージを結合(merge)して生成された第2バージョンプログラムを、第2メモリに格納し、」と記載され、翻訳文明細書の段落【0111】、【0116】、【0117】、【0119】等にも同様の記載が認められることから、上記翻訳文等の記載においては、第1バージョンと更新パッケージとの結合は、どこでなされているのか具体的に特定されておらず、かつ、結合により生成された第2バージョンが、第2メモリに格納(ロード)されていることから、少なくとも第2メモリ以外で結合及び生成がなされていると解するのが合理的であり、よって、第2メモリ上で結合及び生成がなされていることを自明に導き出すことはできない。(第2メモリ上でプログラムが結合・生成されているのであれば、生成された後のプログラムはすでに第2メモリに格納された状態であるから、その状態から、生成されたプログラムをさらに第2メモリに格納する必要はない。)
(2)補正後の請求項9、15、16、26に記載の「更新バージョンに相当するデータである更新データ」は、意味が不明確であるが、平成24年2月21日付けの意見書における出願人の主張「例えば、更新データが更新バージョンのデータと一致する場合を考えてみても、第1バージョンの全データを変更(M:modify)するマップデータを作成すれば、バージョンの更新が可能」を参酌すると、「更新データ」=「更新バージョン」である態様と解される。しかしながら、そのような態様は、上記翻訳文等には記載も示唆もない。補正後の請求項9、15、16及び26に係る発明において、「マップデータ」の生成は、携帯端末上で行われており、翻訳文明細書の段落【0082】、【0098】にも、「更新パッケージ」に「マップデータ」が含まれていないとき、携帯端末が、「第1バージョン」と「更新データ」とを比較して「マップデータ」を生成することが記載されているが、ここで、「更新データ」が「更新バージョン」に等しいという限定は付されていない。また、「更新データ」が「更新バージョン」に等しければ、該「更新データ」をそのまま「第1バージョン」に上書きすれば十分であることは出願時の技術常識からして自明であり、「マップデータ」をわざわざ生成する必要はない。また、「更新データ」が「更新バージョン」に等しくない場合には、「マップデータ」を生成できず、更新もできなくなるから、「更新データ」が「更新バージョン」に等しいという限定付きで「マップデータ」を生成しても意味がない。よって、出願時の技術常識を考慮しても、上記翻訳文等の記載から、「更新データ」が「更新バージョン」に等しいことを自明に導き出すことはできない。(「更新データ」が「更新バージョン」に等しい場合にしか「マップデータ」を生成することができないという事実に後から気づいて、そのような限定的な態様が当初から翻訳文明細書に記載されていたと主張することはできない。)
よって、補正後の請求項9、15、16、26に記載した上記の事項は、上記翻訳文等に記載したものではない。

なお、当該補正がなされた請求項1乃至28に記載した事項は、翻訳文等(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあっては、翻訳文等又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)に記載した事項の範囲内にないから、当該請求項に係る発明については新規性進歩性等の特許要件についての審査を行っていない。

2.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項1の記載において、「更新バージョンをロードする第2メモリ」からすると、「第2メモリ」には「更新バージョン」が外部から「ロード」されるものと解される。
一方、請求項1には、「第2メモリで、…更新バージョンを生成し」と記載されているから、「更新バージョン」が生成された時にはすでに「第2メモリ」に存在することになる。
よって、請求項1の記載は、発明を特定する事項の内容に技術的な欠陥(矛盾)を含むから、発明が不明確である。
(審査基準第I部第1章2.2.2.3(2)<1>の類型。)
請求項1を引用する請求項2乃至10の記載についても同様。
(2)請求項23に記載の「第2メモリから」は、どの語句に係るのか日本語として不明であると共に、どの語句に係るとしても、日本語として意味不明である。(「第2メモリから」が「ロード」に係るとするならば、「ロード」の対象となる「更新パッケージ」及び「基準バージョン」は、何れも「第1メモリ」からロードされたものであるから、矛盾する。また、「第2メモリから」が「結合し」又は「生成する」の何れに係るとしても、日本語として意味不明となる。)
(審査基準第I部第1章2.2.2.3(1)<1>の類型。)
請求項23を引用する請求項24乃至28の記載についても同様。

よって、請求項1乃至10、23乃至28に係る発明は明確でない。

拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。

最後の拒絶理由通知とする理由

最初の拒絶理由通知に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶の理由のみを通知する拒絶理由通知である。
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[補足]
(1)仮に、請求項9、16、26に記載の「更新バージョンに相当するデータである更新データ」が、「更新データ」=「更新バージョン」という意味ではない場合、平成23年11月15日付けの拒絶理由通知書で通知した理由1.は、依然として解消していない。
(2)引用文献1の段落【0014】には、揮発性メモリ上でプログラムを実行することが記載されている。(平成23年11月15日付けの拒絶理由通知の理由3.(1)に記載の「また、引用文献1の段落【0014】には、不揮発性メモリにおいてプログラムを実行することが記載されていることから、前記通常の起動手順においては、第2バージョンが不揮発性メモリにロードされて実行されることは自明」は誤記であり、正しくは、”また、引用文献1の段落【0014】には、揮発性メモリにおいてプログラムを実行することが記載されていることから、前記通常の起動手順においては、第2バージョンが揮発性メモリにロードされて実行されることは自明”であった。)
また、引用文献1(特に、段落【0020】参照。)には、選択したバンクの内容(=第1バージョン)を揮発性メモリの作業バンクに複写(ロード)して、該作業バンク上で更新パッケージを第1バージョンに適用して更新を行い、第2バージョンを生成することが記載されている。
よって、引用文献1においては、同じ揮発性メモリ上で第2バージョンが生成・実行されることが記載され、この点において、本願発明と何ら差異はない。
また、下記引用文献4(特に、段落【0044】、【0074】参照。)には、複数のアップデートプログラムをダウンロードして記憶保持し、バージョンアップの実行時に、複数のアップデートプログラムの中から何れか1つを選択してバージョンアップを実行する情報処理装置が記載されている。
よって、引用文献1において、受信及び記憶する更新パッケージを複数として、リブート時に、何れかの更新パッケージを選択して第1バージョンに適用することにより第2バージョンを生成するよう構成することは当業者が容易に想到し得たことである。
その余の点については、先の拒絶理由通知書で述べたとおりである。
よって、本拒絶理由通知書の上記理由1.が解消したとしても、請求項1、11、23及び24に係る発明は、引用文献1及び4に記載された発明に基づいて、請求項2、3、6乃至8、25、27及び28に係る発明は、引用文献1、4及び2に記載された発明に基づいて、請求項4、5、12乃至14、17乃至22に係る発明は、引用文献1、4、2及び3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献>
1.特表2006-518059号公報
2.特開2004-213201号公報
3.国際公開第2005/119432号
4.特開2005-222140号公報』

4.平成24年6月21日付け意見書

平成24年6月21日付けで提出された意見書の概要は、下記のとおりである。(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

『【意見の内容】
本願発明は、特許法第17条の2第3項違反、同法第36条第6項第2号違反による拒絶理由通知を受けました。なお、[補足]において、特許法第17条の2第3項違反が解消されても、引用文献1?4に基づく特許法第29条第2項に該当している旨が指摘されています。しかし、本書と同日付けで提出の手続補正書にて本願発明を補正しましたので、拒絶理由は解消したものと確信致します。

・・・(中略)・・・

2.理由1について
補正前の請求項1、23に対応する補正後の請求項1、19において、「第2メモリ」に係る記載を削除しましたので、理由1.(1)に係る拒絶理由は解消されたものと思料いたします。

補正前の請求項15、26に対応する補正後の請求項12、22において、「前記プログラムの前記更新バージョンに相当する」を、削除しました。また、補正前の請求項9、16を削除しました。よって、理由1.(2)に係る拒絶理由は解消されたものと思料いたします。

3.理由2について
補正前の請求項1、23に対応する補正後の請求項1、19において、「第2メモリ」に係る記載を削除しましたので、理由2.(1)(2)に係る拒絶理由は解消されたものと思料いたします。

4.[補足]で述べられている進歩性に係る拒絶理由について
補正後の請求項1、8、19に係る発明は、いずれも「更新パッケージがマップデータを有していない場合、更新バージョンと基準バージョンとに基づいて、マップデータを携帯端末が直接生成する」する構成を含みます。具体的には、当該請求項に係る発明は、更新パッケージにマップデータが含まれていない場合、更新データと基準バージョンとを比較して、基準バージョンに更新データをマッピングするためのマップデータを直接生成します。
この構成により、端末側で更新が必要な時にだけマップデータを直接生成することができるため、サーバ側で更新パッケージ生成時にマップデータを生成する必要がなく、更新パッケージの生成速度が速くなり、端末側に更新情報をより早く伝達することができます。また、更新パッケージの容量が減少することになるので、伝送時間が減り、より少ないメモリ容量を端末に求めることにより、不安定なネットワーク状態でも早く更新パッケージを受信することができます。不必要なマップデータを端末に格納するよりも、ユーザの要請などによって更新が実質的に必要な場合にだけマップデータを生成すれば良いので、効率的です。

引用文献1?4に係る発明は、「更新パッケージがマップデータを有していない場合、更新バージョンと基準バージョンとに基づいて、マップデータを、携帯端末が直接生成する」する構成を開示しておらず、組み合わせたとしても前述の効果を奏することはありません。
したがって、本願補正後の請求項1、8、19に係る発明は、引用文献1?4に係る発明に基づいて容易に想到することができないと思料いたします。
また、本願補正後の他の請求項は、本願補正後の請求項1、8、19のいずれかと直接的もしくは間接的に従属する従属請求項であるので、当該請求項に係る発明も同様に進歩性を有するものと思料いたします。』

5.当審の判断

(1)特許法第17条の2第3項について

(1-1)請求項1、11、23について

本願の請求項1は、その記載からして、次の事項(a)を含んでいる。

(a)「第2メモリで、前記第1メモリの第2領域から選ばれた更新パッケージを前記プログラムの前記基準バージョンに結合して前記プログラムの更新バージョンを生成」する態様

また、本願の請求項11は、その記載からして、次の事項(b)を含んでいる。

(b)「前記プログラムの基準バージョンと前記第1メモリの第2領域から選ばれた更新パッケージとを第2メモリにロード」し、「前記第2メモリで、前記プログラムの前記基準バージョンを前記更新パッケージに結合して前記プログラムの更新バージョンを生成する」態様

さらに、本願の請求項23は、その記載からして、次の事項(c)を含んでいる。

(c)「前記第1メモリの第1領域及び第2領域からそれぞれ前記更新パッケージ及び前記プログラムの前記基準バージョンを第2メモリにロードし、第2メモリから前記ロードした前記プログラムの前記基準バージョンに前記更新パッケージを結合して前記プログラムの前記更新バージョンを生成する」態様

しかしながら、翻訳文等の明細書を参照すると、
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。以下同じ。)

「【0014】
携帯端末30は、ダウンロードした更新パッケージを第2バージョンの更新パッケージとしてメモリに格納する。この時、携帯端末30のメモリは、第1メモリ及び第2メモリを備える。ここで、第1メモリ及び第2メモリは、一つのメモリ上に領域を割り当てて区分されたメモリにするか、また、別々のメモリにすることができる。ここで、第1メモリは、ダウンロードされた更新パッケージをインストールし格納するメモリであり、第2メモリは、第1バージョンプログラムを更新パッケージによって更新して生成された、第2バージョンプログラムを格納するメモリである。携帯端末30は、ダウンロードされる更新パッケージを第1メモリに第2バージョンの更新パッケージとして格納する。その後、更新要求時、携帯端末は、第1バージョンのプログラムにダウンロードされた第2バージョンの更新パッケージを結合(merge)して生成された第2バージョンプログラムを、第2メモリに格納し、その後、携帯端末30は、第2メモリに格納された更新済みバージョンのプログラムによりシステムを運用する。」、

「【0111】
図26を参照すると、本発明の実施形態に係る携帯端末は、システム電源オン命令が発生すると、741ステップでシステム電源オン機能を行いながらシステム初期化機能を行う。この時、システム初期化機能は、システムのハードウェアを初期化させる状態を意味する。その後、携帯端末は、743ステップ及び745ステップを行いながらシステムプログラムの更新を表示した後、表示された更新パッケージをトランスレートして第2メモリ270にブーティングする。すなわち、携帯端末30のトランスレータ240は、第1バージョンのプログラムに第2バージョンの更新パッケージを結合して更新された第2バージョンのプログラムを生成し、生成された第2バージョンのプログラムを第2メモリ260に格納する。」、

「【0116】
この時、更新パッケージを第1メモリ250にインストールした後、最初のシステム電源オンが行われた場合、携帯端末は、743ステップでバージョンがVxからVzに変更されることを設定時間の間表示(ここでは、2秒と仮定する)し、745ステップでVzバージョンを有する更新パッケージを第1バージョンに適用して(すなわち、トランスレート)更新された第2バージョンを生成し、これを第2メモリ260に格納する。その後、携帯端末は、747ステップへ進行して携帯端末の待機モード(idle mode)を実行する。」、

「【0117】
上記のように、システム電源オン機能が設定されると、携帯端末30は、第1メモリ250からインストールされた第1バージョンのプログラム及び第2バージョンの更新パッケージをロードし、第1バージョンのプログラム及び第2バージョンの更新パッケージを結合してプログラムを生成した後、これを第2メモリ260に格納し、その後、第2メモリ260に格納された更新プログラムによって端末の駆動を制御する。この時、携帯端末は、最も最近のバージョンの更新パッケージをロードして更新し、この時、携帯端末の更新ステップは、図26に示すように、第1バージョン及び更新パッケージをロードし、ロードされた第1バージョンに更新パッケージを適用して、更新されたバージョンの第2バージョンを生成し、これを第2メモリ260に格納した後、これを用いて携帯端末の動作を制御する。」、

「【0119】
この時、携帯端末のユーザがバージョン選択機能を選択すると、755ステップでこれを感知し、757ステップでユーザが選択できるバージョンを表示部に表示する(例えばV#4、V#3、V#2の場合)。上記のような状態で、ユーザが第2バージョンの特定のバージョン番号を選択すると、携帯端末30は、759ステップでこれを感知し、761ステップで選択されたバージョンの更新パッケージをロードし、763ステップで第1バージョンにロードされた更新パッケージを結合して更新された第2バージョンのプログラムを生成する。この時、生成された第2バージョンは、第2メモリ260に格納され、その後、携帯端末は、第2メモリ260に格納された第2バージョンを用いて携帯端末の全般的な動作及び機能の実行を制御する。上記のように生成された第2バージョンのプログラムを第2メモリ260に格納した後、携帯端末は、765ステップで待機モードに切り換え、次の動作モードに備える。」

と記載されているように、“第1メモリから第1バージョンのプログラム(本願発明の「基準バージョン」に相当)及び第2バージョンの更新パッケージ(本願発明の「更新パッケージ」に相当)をロードし、ロードされた第1バージョンのプログラムに第2バージョンの更新パッケージを結合して第2バージョンのプログラムを生成し、当該生成された第2バージョンのプログラムを第2メモリに格納する”態様(すなわち、“第1バージョンのプログラムと第2バージョンの更新パッケージを結合して第2バージョンのプログラムを生成した後で、当該生成した第2バージョンのプログラムを第2メモリに格納する”態様)は記載されているが、“第1バージョンのプログラムと第2バージョンの更新パッケージを第2メモリに格納した後で、これらを結合して第2バージョンのプログラムを生成する“態様までは、翻訳文等には記載されていない。(翻訳文等の上記記載からは、少なくとも第2メモリ以外で結合及び生成がなされていると解するのが合理的であり、よって、第2メモリ上で結合及び生成がなされていることを自明に導き出すことはできない。また、第2メモリ上でプログラムが結合・生成されているのであれば、生成された後のプログラムはすでに第2メモリに格納された状態であるから、その状態から、生成されたプログラムをさらに第2メモリに格納する必要はない。)

よって、平成24年2月21日付けでした手続補正は、請求項1が含む上記(a)の事項、請求項11が含む(b)の事項、及び請求項23が含む(c)の事項が、翻訳文等に記載した範囲内においてしたものでなく、また、自明であるとも認められない。

(1-2)請求項9、15、16、26について

本願の請求項9、15、16、26は、その記載からして、次の事項(d)を含んでいる。

(d)「更新バージョンに相当するデータである(前記)更新データ」

上記(d)の事項は、意味が不明確であるが、上記平成24年2月21日付けの意見書における出願人の「更新データは更新バージョンのプログラムのデータに相当する」、「例えば、更新データが更新バージョンのデータと一致する場合を考えてみても、第1バージョンの全データを変更(M:modify)するマップデータを作成すれば、バージョンの更新が可能」との主張を参酌すると、「更新バージョン(のプログラム)のデータ」と「更新データ」が一致する場合の態様であると解される。

しかしながら、翻訳文等の明細書の【0082】及び【0098】には、

「【0082】
3番目に、更新パッケージをダウンロードした後、迅速な実行のためのインストール処理方法を説明すると、インストールデータは、基準プログラム(ここでは、第1バージョンプログラム)との比較によって得られるマップデータを探す生成方法で、迅速なアドレス計算を目的に使用され、第1メモリ250に含まれている第1バージョンと更新パッケージとを第2メモリで結合するための補助として用いられる。この時、マップデータが更新パッケージに含まれていない場合、携帯端末は、逆に第1メモリに含まれた第1バージョンプログラムと更新データとを比較し、当該マップ機能のためのデータを生成することができる。また、インストールデータは更新パッケージのヒストリーデータを含んでいる。この時、ヒストリーデータは、第1メモリ250に格納された更新パッケージ及び更新パッケージが結合されるバージョン情報を含んでいる。本発明の実施形態では、上記のように、6個の更新パッケージを第1メモリ250に保管することを仮定して説明しており、この時、特定の更新パッケージが第2メモリ260で結合に失敗した場合、携帯端末30が保管している他の更新パッケージのリストを表示し、ユーザの選択による更新パッケージで更新することができる。」、

「【0098】
上記のように、携帯端末30は、更新パッケージのダウンロードが通知されると更新パッケージをダウンロードし、ダウンロードされた更新パッケージを分析して、第1メモリ250の対応する領域にそれぞれヒストリーデータ、マップデータ及び更新データをインストールする。この時、マップデータは、更新パッケージに含まれることもあり、含まれないこともある。更新パッケージにマップデータが含まれていない場合、携帯端末30は、第1メモリ250に格納し、基準バージョンの第1バージョンとダウンロードされた更新データを比較してマップデータを生成し、生成されたデータを更新パッケージ格納領域にインストールする。また、上記のように、更新データがマップデータを含む場合、更新データからマップデータを生成せずにそのまま格納することもできる。」、

と記載されているように、「更新パッケージ」に「マップデータ」が含まれていないとき、携帯端末が、「第1バージョン(プログラム)」と「更新データ」とを比較して「マップデータ」を生成することは記載されているが、「更新データ」が「更新バージョン(のプログラム)のデータ」に等しいという限定までは記載されていない。また、「更新データ」が「更新バージョン(のプログラム)のデータ」に等しければ、該「更新データ」をそのまま「第1バージョン(プログラム)」に上書きすれば十分であることは出願時の技術常識からして自明であり、「マップデータ」をわざわざ生成する必要はない。よって、出願時の技術常識を考慮しても、上記翻訳文等の記載から、「更新データ」が「更新バージョン(のプログラム)のデータ」に等しいことを自明に導き出すことはできない。

よって、平成24年2月21日付けでした手続補正は、請求項9、15、16、26が含む上記(d)の事項が、翻訳文等に記載した範囲内においてしたものでなく、また、自明であるとも認められない。

(1-3)小括

以上のとおり、平成24年2月21日付けでした手続補正は、外国語特許出願に係る明細書又は図面について補正ができる範囲の特例について規定した特許法第184条の12第2項により当初明細書等とされる翻訳文等に記載した範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(2)特許法第36条第6項第2号について

(2-1)請求項1について

請求項1の「プログラムの更新バージョンをロードする第2メモリ」との記載からすると、「第2メモリ」には、「プログラムの更新バージョン」が、第2メモリの外部から「ロード」されるものと解される。

一方、請求項1の「第2メモリで、前記第1メモリの第2領域から選ばれた更新パッケージを前記プログラムの前記基準バージョンに結合して前記プログラムの更新バージョンを生成」との記載からすると、「プログラムの更新バージョン」が生成された時には、当該プログラムの更新バージョンはすでに第2メモリに存在することになる。

そうすると、請求項1に記載された発明は、第2メモリで生成した「プログラムの更新バージョン」を、第2メモリの外部からロードするという矛盾した内容を含んでおり、発明を特定する事項の内容に技術的な欠陥(矛盾)
を含むものであるから、発明が不明確である。
(当審注:「審査基準第I部 第1章 2.2.2.3 第36条第6項第2号違反の類型」の「(2)発明を特定するための事項に技術的な不備がある結果、発明が不明確となる場合」を参照。)

また、請求項2ないし請求項10は、請求項1を直接・間接に引用することから、上記で指摘した事項は、請求項2ないし請求項10にも適用される。

(2-2)請求項23について

請求項23の「更新要請に応答して、前記第1メモリの第1領域及び第2領域からそれぞれ前記更新パッケージ及び前記プログラムの前記基準バージョンを第2メモリにロードし、第2メモリから前記ロードした前記プログラムの前記基準バージョンに前記更新パッケージを結合して前記プログラムの前記更新バージョンを生成するトランスレータ」において、

「第2メモリから」は、どの語句に係るのか日本語として不明であると共に、どの語句に係るとしても、日本語として意味不明である。すなわち、「第2メモリから」が「ロード」に係るとするならば、「ロード」の対象となる「更新パッケージ」及び「基準バージョン」は、何れも「第1メモリ」からロードされたものであるから、矛盾する。また、「第2メモリから」が「結合し」又は「生成する」の何れに係るとしても、日本語として意味不明となる。

したがって、請求項23に係る発明は、発明が不明確である。

そして、請求項24ないし請求項28は、請求項23を直接・間接に引用することから、上記で指摘した事項は、請求項24ないし請求項28にも適用される。

(2-3)小括

以上のとおり、請求項1ないし10、請求項23ないし28に記載された発明は明確ではないので、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定される要件を満たしていない。

6.回答書の補正案について

なお、請求人は、上記平成25年7月16日付け回答書において、

『(補正案)
〔請求項1〕
プログラムによって動作する携帯端末のプログラム更新装置において、
前記プログラムの基準バージョンを格納する第1領域と、更新パッケージを格納する複数の領域で構成される第2領域とを備える第1メモリと、
前記プログラムの更新バージョンをロードする第2メモリと、
前記携帯端末が外部システムと通信することを可能にする通信部と、
前記通信部を制御して前記外部システムからの更新通知メッセージに応答して前記更新パッケージをダウンロードし、前記更新パッケージを前記第1メモリの第2領域にインストールし、前記更新パッケージが前記更新バージョンを前記基準バージョンにマッピングするマップデータを含むのか判断し、前記更新パッケージが前記マップデータを含まない場合、前記更新パッケージに含まれるブロックマッピングのためのブロックインデックス情報と前記基準バージョンとに基づいて前記マップデータを生成し、前記マップデータに基づいて、前記更新パッケージを前記プログラムの前記基準バージョンに結合して前記プログラムの更新バージョンを生成し、前記プログラムの前記更新バージョンを用いて前記携帯端末を動作させる制御部と、
を含むことを特徴とする携帯端末のプログラム更新装置。』
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

との補正案を提示しているが、上記「第2 平成24年11月19日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.新規事項の有無」で検討したように、当該補正案においても、新規事項を含んでいるものと認められるから、当該補正案を採用することはできない。

7.むすび

以上のとおり、平成24年2月21日付けでした手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

また、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-18 
結審通知日 2014-11-25 
審決日 2014-12-09 
出願番号 特願2009-520675(P2009-520675)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (G06F)
P 1 8・ 55- Z (G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 毅  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 田中 秀人
辻本 泰隆
発明の名称 OTA可能な携帯端末のプログラム更新システム及び方法  
代理人 山下 託嗣  

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