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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1299991 |
審判番号 | 不服2014-2069 |
総通号数 | 186 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-02-04 |
確定日 | 2015-04-23 |
事件の表示 | 特願2010-533816「発光モジュール、発光モジュールの製造方法、および灯具ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月22日国際公開、WO2010/044239〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯・本願発明 本願は、平成21年10月9日(優先権主張平成20年10月17日)を国際出願日とする出願であって、平成25年4月23日付けで手続補正がなされたところ、同年10月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年2月4日に拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、当審において平成26年11月13日付けで拒絶理由が通知され、平成27年1月15日付けで手続補正がなされたものである。 そして、本願の請求項に係る発明は、平成27年1月15日付け手続補正後の特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のものである。 「ある範囲の波長の光を主として発する発光素子と、 前記発光素子が発する光の波長を変換して出射する光波長変換部材と、 前記発光素子が発する主となる波長の光を透過し前記光波長変換部材によって変換された主となる波長の光を反射する光学フィルタと、 を備え、 前記光波長変換部材は、板状に形成され、 前記光学フィルタは、前記光波長変換部材の表面上に設けられ、 前記光学フィルタは、前記発光素子が発する光の波長範囲と前記光波長変換部材によって変換された光の波長範囲とが互いに重なる所定の重複波長範囲の光に対しては、反射率よりも透過率が高く、前記透過率は50%以上であることを特徴とする発光モジュール。」(以下「本願発明」という。) 2 引用刊行物の記載事項 当審において通知した拒絶の理由に引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-31843号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図とともに下記の事項が記載されている。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、蛍光体を半導体発光素子で照射して所望の色光を得る発光ダイオ-ドに関する。」 (2)「【0016】 【発明の実施の形態】 … 図1は第1の発明の第1実施形態として示した発光ダイオ-ド30の構成図である。 本実施形態は、ガラスまたは樹脂などの透明体31の中に蛍光体32を分散(混入)させて形成した分光部材(波長変換部材)33を半導体発光素子34とは別体に構成する。 【0017】 そして、分光部材33は半導体発光素子34に対して所定の間隔離し、当該発光素子34の光線放射方向位置に配置した構成としてある。 【0018】 このように構成した発光ダイオ-ド30は、半導体発光素子34から放射された波長λ1の光線L1が分光部材33に入射すると、その光線L1の一部が蛍光体32によって吸収され、その他の光線L1が分光部材33を透過する。 【0019】 蛍光体32は光線L1を吸収することによって波長λ2の光線L2を射出し、この光線L2が光線L1と共に放射される。 この結果、波長λ1、λ2の光線L1、L2が放射され、所望の分光特性の色光を得ることができる。 例えば、光線L1が青色光で、光線L2が黄色光であれば、白色光となる。」 (3)図1は、次のものである。 (4)「【0025】 図3は、第3発明の第1実施形態として示した発光ダイオ-ド50の構成図である。 本実施形態は、上記した分光部材31(審決注:「分光部材33」の誤りと認める。)に光学薄膜51を設けたことが特徴となっており、その他は図1に示す発光ダイオ-ド30と同構成としてある。 【0026】 光学薄膜51は、半導体発光素子34から放射する波長λ1の光線L1を透過し、蛍光体32から放射する波長λ2の光線L2を反射する光学薄膜で、分光部材33の半導体発光素子側の面上に塗布してある。 なお、光学薄膜51については、スパッタ法や蒸着法によっても施すことができる。 【0027】 例えば、青色発光の半導体発光素子34と、黄色発光の分光部材(蛍光体)33を備える場合には、青色発光の光線L1を透過し、黄色発光の光線L2を反射する光学薄膜51を備える。」 (5)図3は、次のものである。 よって、上記の記載を総合すると、引用刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ガラスまたは樹脂などの透明体31の中に蛍光体32を分散(混入)させて形成した分光部材(波長変換部材)33を半導体発光素子34とは別体に構成し、分光部材33は半導体発光素子34に対して所定の間隔離し、当該発光素子34の光線放射方向位置に配置した構成とし、半導体発光素子34から放射された波長λ1の光線L1が分光部材33に入射すると、その光線L1の一部が蛍光体32によって吸収され、その他の光線L1が分光部材33を透過し、蛍光体32は光線L1を吸収することによって波長λ2の光線L2を射出し、この光線L2が光線L1と共に放射され、この結果、波長λ1、λ2の光線L1、L2が放射され、所望の分光特性の色光を得ることができる発光ダイオ-ド30であって、 上記した分光部材33に光学薄膜51を設け、光学薄膜51は、半導体発光素子34から放射する波長λ1の光線L1を透過し、蛍光体32から放射する波長λ2の光線L2を反射する光学薄膜で、分光部材33の半導体発光素子側の面上に塗布してあり、光学薄膜51については、スパッタ法や蒸着法によっても施すことができる、発光ダイオ-ド30。」 3 対比 本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「(波長λ1の光線L1を放射する)半導体発光素子34」は、ある範囲の波長の光を主として発するものといえることは明らかであるから、本願発明の「(ある範囲の波長の光を主として発する)発光素子」に相当する。 (2)引用発明の「分光部材(波長変換部材)33」は、「透明体31の中に蛍光体32を分散(混入)させて形成した」ものであって、「半導体発光素子34から放射された波長λ1の光線L1が」「入射すると、その光線L1の一部が蛍光体32によって吸収され、その他の光線L1が」「透過し、蛍光体32は光線L1を吸収することによって波長λ2の光線L2を射出」するものであるから、 ア 引用発明の「分光部材(波長変換部材)33」は、本願発明の「(前記発光素子が発する光の波長を変換して出射する)光波長変換部材」に相当し、 イ 引用発明は、本願発明の「前記光波長変換部材は、板状に形成され」との事項を備える。 (3)引用発明の「光学薄膜51」は、「半導体発光素子34から放射する波長λ1の光線L1を透過し、蛍光体32から放射する波長λ2の光線L2を反射」し、「分光部材33の半導体発光素子側の面上に塗布してあ」るものであるから、 ア 引用発明の「光学薄膜51」は、本願発明の「(前記発光素子が発する主となる波長の光を透過し前記光波長変換部材によって変換された主となる波長の光を反射する)光学フィルタ」に相当し、 イ 引用発明は、本願発明の「前記光学フィルタは、前記光波長変換部材の表面上に設けられ」との事項を備える。 (4)引用発明の「発光ダイオ-ド30」は、本願発明の「発光モジュール」に相当する。 よって、本願発明と引用発明とは、 「ある範囲の波長の光を主として発する発光素子と、 前記発光素子が発する光の波長を変換して出射する光波長変換部材と、 前記発光素子が発する主となる波長の光を透過し前記光波長変換部材によって変換された主となる波長の光を反射する光学フィルタと、 を備え、 前記光波長変換部材は、板状に形成され、 前記光学フィルタは、前記光波長変換部材の表面上に設けられる発光モジュール。」 の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。 光学フィルタが、本願発明では、発光素子が発する光の波長範囲と光波長変換部材によって変換された光の波長範囲とが互いに重なる所定の重複波長範囲の光に対しては、反射率よりも透過率が高く、前記透過率は50%以上であるのに対し、引用発明では、そのような所定の重複波長範囲を有するのか否か明らかでなく、また、当該所定の重複波長範囲の光に対して、反射率よりも透過率が高く、前記透過率が50%以上であるのか否かも明らかでない点(以下「相違点」という。)。 4 判断 上記相違点につき検討する。 ある範囲の波長の光を主として発する発光素子と、該発光素子が発する光の波長を変換して出射する光波長変換部材とを備えた発光モジュールにおいて、前記発光素子が発する光の波長範囲と前記光波長変換部材によって変換された光の波長範囲とが所定の波長範囲において互いに重なるものは、本願の優先日時点で周知であるから(必要なら、国際公開第98/05078号(図18?22とその説明。)、特表2003-535477号公報(図4,5,7とその説明。)、特開2004-71726号公報(図10とその説明。)、特開2008-4645号公報(図3とその説明。)参照。)、引用発明の「発光ダイオード30」を、その「半導体発光素子34」が発する光の波長範囲と、「分光部材(波長変換部材)33」によって変換された光の波長範囲とが所定の波長範囲(重複波長範囲)において互いに重なるものとすることに格別困難性はない。しかるところ、当該重複波長範囲の光に対する「光学薄膜51」の透過率と反射率の関係は、「透過率>=反射率」であるか、あるいは「透過率<反射率」であるか、のいずれかであって、仮に、上記の関係が「透過率<反射率」であるとすると、「半導体発光素子34」から放射された光のうち、上記重複波長範囲の光の大部分は「光学薄膜51」に反射されてしまい、そもそも「分光部材33」に入射されなくなってしまうことになるから、この点を考慮して、前記重複波長範囲の光に対する「光学薄膜」の透過率及び反射率の関係を「透過率>=反射率」となるように定め、かつ、その「透過率」の下限値を50%と定めることが、当業者において格別困難なこととはいえない。また、本願明細書をみても、本願発明の「光学フィルタ」について、前記所定の重複波長範囲の光に対して、反射率よりも透過率が高く、該透過率が50%以上であると定めた点に設計的事項の域を超えるほどの格別の技術的意義があるものとは認められず、本願発明の奏する効果が、引用発明及び上記周知の事項から当業者が予測困難な程の格別顕著なものということはできない。 よって、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。 5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-02-18 |
結審通知日 | 2015-02-24 |
審決日 | 2015-03-10 |
出願番号 | 特願2010-533816(P2010-533816) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 瀬川 勝久 |
特許庁審判長 |
吉野 公夫 |
特許庁審判官 |
鈴木 肇 星野 浩一 |
発明の名称 | 発光モジュール、発光モジュールの製造方法、および灯具ユニット |
代理人 | 村田 雄祐 |
代理人 | 三木 友由 |
代理人 | 森下 賢樹 |