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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F21S
管理番号 1299994
審判番号 不服2014-3805  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-28 
確定日 2015-04-23 
事件の表示 特願2012-161810「ランプ及び照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月11日出願公開、特開2012-195319〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年12月28日に出願した特願2010-293683号の一部を平成24年7月20日に新たに特許出願としたものであって、平成25年2月1日付けで拒絶理由が通知され、同年3月28日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月27日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年9月2日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月27日付けで平成25年9月2日付けの手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年2月28日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともにこれと同時に手続補正がなされ、その後当審において、同年11月5日付けで拒絶理由が通知され、同年12月26日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?7に係る発明は、平成26年12月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「長手方向の端部に開口を有する長尺管状の筐体と、
長尺状の基板と前記基板に実装された発光素子とを有し、前記筐体内に配置された発光モジュールと、
前記発光モジュールが載置された、前記発光モジュールの熱を放熱するための放熱板とを備え、
前記発光モジュールと前記放熱板とは、前記発光モジュールが前記放熱板に載置されて前記発光モジュールの前記基板と前記放熱板とが接着材によって接合されることによって重なり合った状態で前記開口から前記筐体内に挿入可能であり、
前記発光モジュールは、前記筐体の管軸の中心位置と略一致するように前記筐体に保持され、
前記筐体は、前記基板の短手方向の端部及び前記放熱板の短手方向の端部が挿入される凹部を有し、
前記発光モジュール及び前記放熱板は、前記基板の前記端部及び前記放熱板の前記端部が前記凹部に挿入されることで前記筐体に保持され、
前記凹部の幅は、前記基板の前記端部の厚みと前記放熱板の前記端部の厚みとの合計よりも大きい
ランプ。 」

第3 当審が通知した拒絶の理由
当審が通知した平成26年11月5日付けの拒絶の理由の概要は、「この出願の下記の請求項1?6に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、以下の刊行物1?3が示されている。
刊行物1:特開2010-3683号公報
刊行物2:特開2010-165647号公報
刊行物3:特開2008-27898号公報

第4 当審の判断
当審は、当審が通知した拒絶の理由のとおり、本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された上記刊行物1?3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、と判断する。

1 刊行物の記載事項
(1)刊行物1の記載事項
(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体で長く延びるか又は断続して長く延びる基板と、前記基板の片面又は両面に設けた発光素子と、前記基板を少なくとも発光素子の側から覆う筒形又は溝形の細長いカバー部材とを備えており、
前記カバー部材は成形品であって、前記発光素子の光が透過するように少なくとも一部は透光性を有しており、且つ、前記カバー部材の内面部に、前記基板の長手両側縁が直接に嵌まり込む嵌合部を長手方向に沿って延びるように形成しているか、又は、前記基板を保持した保持部材の長手側縁が嵌まり込む嵌合部を長手方向に沿って延びるように形成しており、前記嵌合部により、前記基板がその幅方向と厚さ方向とにずれ不能に保持されている、
発光素子方式照明灯。」
(1b)「【0001】
本発明は、LED(発光ダイオード)のような発光素子を光源に使用した照明灯(ランプ)に関するものである。」
(1c)「【0028】
(1).第1実施形態(図1?図3)
本実施形態に係る照明灯1は、天井面や壁面などに設置される照明装置2のランプとして使用されており、全体として細長い形態になっている(便宜的に、長手方向をX軸方向として説明する。)。
・・・
【0031】
照明灯1は、光源ユニット13とこれを覆うカバー部材10とを備えている。光源ユニット13は、帯状の1枚の回路基板11の片面に発光素子としてLED(発光ダイオード)12を飛び飛びに複数個実装した構成になっており、これが、細長い合成樹脂製のカバー部材10の内側に挿入されている。回路基板11は請求項に記載した基板に相当する。」
(1d)「【0047】
主カバー体10aのうち相対向した2つの側面部の内面には、回路基板11の嵌合部の一例として、回路基板11の長手側縁が嵌まる第1嵌合溝31が全長にわたって(すなわちX軸方向に長く延びるように)形成されている。さらに、主カバー体10aのうち第1嵌合部31よりも曲面部15に近い位置に、拡散板25及び反射板26の長手側縁が嵌まる一対の第2嵌合溝32が全長にわたって形成されている。第2嵌合溝32は、拡散板25と反射板26の両側縁が上下に重なった状態できっちりと嵌まり込む溝幅に設定されている。拡散板25の側縁が嵌まる嵌合溝と反射板26の側縁が嵌まる嵌合溝とを別々に設けることも可能である。
【0048】
第1嵌合溝31と第2嵌合溝32は主カバー体10aの一部として成形されており、光源ユニット13や拡散板25、反射板26を厚さ方向と幅方向(Y軸方向)にずれ不能に保持している。前述したように、主カバー体10aは合成樹脂を素材とした押し出し成形品であるため、各嵌合溝31、32は簡単に加工できる。」
(1e)「【0050】
上記構成の照明灯1を組み立てる際には、まず、主カバー体10aと補助カバー体10bとを組み合わせて固着しカバー部材10を形成した後に、光源ユニット13の長手方向に沿う両側縁を、カバー部材10の一方の端部にて、第1嵌合溝31に位置合わせして、そのまま光源ユニット13を挿入する。
【0051】
この実施形態では、反射板26がLED12に嵌まっているので、光源ユニット13の取り付けと同時に反射板26も取り付けられる。すなわち、反射板26の貫通穴27からLED12が露出するように、反射板26を光源ユニット13にセットし、その状態で、光源ユニット13の長手両側縁を主カバー体10aの第1嵌合溝31に差し込むと共に、反射板26の長手両側縁を主カバー体10aの第2嵌合溝32に差し込む。拡散板25は、光源ユニット13と反射板26とを差し込んでから主カバー体10aの第2嵌合溝32に差し込んでも良いし、反射板26に重ねた状態で反射板26と一緒に第2嵌合溝32に差し込んでも良い。
【0052】
主カバー体10aに対する光源ユニット13と反射板26と拡散板25との取付け(嵌め込み)は、それら主カバー体10aと光源ユニット13・反射板26・拡散板25とを長手方向に相対動させるだけで極めて簡単に行える。そして、光源ユニット13はその全長にわたって第1嵌合溝31で保持されているから、その長さが長くても、撓みを生じることなく安定した状態に保持される。また、光源ユニット13は第1嵌合溝31に挿入されているだけであるので、交換が必要な場合は容易に挿抜することができる。拡散板25及び反射板26も同様である。」
(1f)「【0060】
(2).カバー部材の別形態(図5(審決注:「図4」の誤記))
次に、カバー部材10の形状や内部構造の変形例を図4に基づいて説明する。・・・
・・・
【0065】
図4(f)に第7実施形態は第3実施形態と類似したものであり、カバー部材10を円筒形状に形成して、その内部に、表裏両面にLED12を実装した光源ユニット13が配置されている。この実施形態では照明灯1はほぼ全周にわたって面発光する。従って、街路灯のように周囲の全体を照らす必要がある場合に好適である。これにも反射板26や拡散板25を併用できることは云うまでもない。
【0066】
図4(g)に示す第8実施形態では、カバー部材10を円筒形状に形成し、その内部に、片面にLED12が実装された光源ユニット13を挿入しているが、カバー部材10における発光面積を広く取るために、光源ユニット13を、LED12が配置された側と反対側のカバー部材10の外周に近づくように軸心に対してずらし配置している。」

(2)刊行物2の記載事項
(2a)「【0001】
本発明は照明装置に関し、特に、固体発光素子を光源とした照明装置に関する。
・・・
【0004】
ここで、LEDを使用した照明装置(以下、LED照明装置と記載)においては、LEDの駆動ロスとして発生する熱を適切に処理(放熱)する必要がある。LEDは、上記のごとく長寿命であるという特徴を有しているが、これを発揮させるためには、上記放熱を適切に行い、その温度が高くなり過ぎない範囲内で使用することが必要であるためである。」
(2b)「【0039】
支持体21は、固体発光素子26を、基板22を介して支持(保持)するものであり、筐体3の中空構造内に配置される。・・・あわせて、固体発光素子26の駆動ロスとして発生する熱の処理にも利用される。この熱の処理については、後ほど詳しく述べるが、このことに対応するため、熱伝導率の高い材料(例えば金属であり、発明者らは加工の容易性、比重等を鑑みアルミニウムを採用)により構成する。
・・・
【0041】
放熱に利用するため、基板22の固体発光素子26が実装される面の裏面は、支持体21と密着配置される。このようにすることにより、固体発光素子26の駆動ロスとして発生した熱は、基板22を介して支持体21に効率よく伝熱されることになる。」
(2c)「【0058】
以下では、照明装置1の放熱機構について説明する。なお、照明装置1において放熱機構を設けることが必要な理由であるが、固体発光素子26の長寿命性等を発揮させるためである。固体発光素子26は、内部のジャンクション温度が所定の温度(種類によって異なるが、例えば80度)を超えると、劣化が進みその長寿命性等の優れた性能が発揮できなくなる。したがって、固体発光素子26のジャンクション温度が、上記所定の温度を超えないよう放熱機構を設ける必要がある。
【0059】
まず、照明装置1において放熱に供する各部品についての熱伝導性について説明する。
・・・
【0061】
支持体21については、熱伝導率の高い材料(金属:発明者らはアルミニウムを採用)により構成しており、当然に熱伝導性が高い。
・・・
【0063】
ここで、照明装置1においては、支持体21と基板22とを、接着剤等により密着配置の上、固定している。これは、上記のように熱伝導率の低い空気の影響を避けるためであり、このように密着及び固定することで、支持体21と基板22との界面に空気が侵入することを防いでいる。」

(3)刊行物3の記載事項
(3a)「【0001】
本発明は、線光源形態の光源を提供する線光源用LEDモジュールに関するものであって、より具体的には、発光効率を高くしつつ放熱能力を最大化できる線光源用LEDモジュールに関する。
・・・
【0003】
図6は、従来の技術によるLEDモジュールの断面図である。・・・
・・・
【0006】
ところが、上記のような構造を有するLEDモジュールは、MCPCB自体の放熱性能が良くないためLEDチップから発生する熱が容易に外部へ伝達されない短所があり、このようにパッケージの内部に高い熱が放熱されないまま存在する場合、抵抗が非常に高くなって光効率が低下する。
・・・
【0011】
本発明は、前述の従来技術の問題を解決するために成されたものであって、本発明の目的は、発光効率を高めつつ放熱能力を最大化できる線光源用LEDモジュールを提供することである。 ・・・」
(3b)「【0012】
前述の本発明の目的を達成すべく、本発明は、・・・上記回路基板の下部に形成され上記LEDチップから発生する熱を放出させる放熱板とを含むことを特徴とする線光源用LEDモジュールを提供することを特徴とする。」
(3c)「 【0016】
図1及び図2から分かるように、本発明による線光源用LEDモジュール100は、回路基板102、複数のLEDチップ104、反射壁106、及び放熱板108を含んで構成される。
・・・
【0020】
本発明において、回路基板102は、セラミック回路基板で構成されることが好ましい。これは、セラミック回路基板が従来のMCPCBに比べてパターニングと積層工程を通じたビアホールの加工に有利という長所を有するからである。また、MCPCBは、以後に説明する放熱板との接着において、材質の特性に起因して金属と金属の間の溶接などが求められるが、セラミック回路基板はガラス系接着剤により簡単に接着できるという長所がある。」

2 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、「LED(発光ダイオード)のような発光素子を光源に使用した照明灯(ランプ)」について開示されるところ(摘示(1b))、その特許請求の範囲の欄には、
「【請求項1】
一体で長く延びるか又は断続して長く延びる基板と、前記基板の片面又は両面に設けた発光素子と、前記基板を少なくとも発光素子の側から覆う筒形又は溝形の細長いカバー部材とを備えており、
前記カバー部材は成形品であって、前記発光素子の光が透過するように少なくとも一部は透光性を有しており、且つ、前記カバー部材の内面部に、前記基板の長手両側縁が直接に嵌まり込む嵌合部を長手方向に沿って延びるように形成しているか、又は、前記基板を保持した保持部材の長手側縁が嵌まり込む嵌合部を長手方向に沿って延びるように形成しており、前記嵌合部により、前記基板がその幅方向と厚さ方向とにずれ不能に保持されている、
発光素子方式照明灯。」と記載されている(摘示(1a))。
また、刊行物1の記載によれば、前記発光素子方式照明灯の実施の形態として、
前記基板(回路基板11)と発光素子(LED12)とは、光源ユニット13を構成すること(摘示(1c))、
前記光源ユニット13は、カバー部材10の一方の端部から挿入されること(摘示(1e))、及び、
前記カバー部材10は、円筒形状に形成され、その内部に光源ユニット13が配置されること(摘示(1f))、が明らかである。

以上によれば、刊行物1には、
「一体で長く延びる基板11と、前記基板11の片面又は両面に設けた発光素子12と、前記基板11を少なくとも発光素子12の側から覆う筒形の細長いカバー部材10とを備えており、
前記カバー部材10は成形品であって、前記発光素子12の光が透過するように少なくとも一部は透光性を有しており、且つ、前記カバー部材10の内面部に、前記基板11の長手両側縁が直接に嵌まり込む嵌合部を長手方向に沿って延びるように形成しており、前記嵌合部により、前記基板11がその幅方向と厚さ方向とにずれ不能に保持されている、発光素子方式照明灯であって、
前記基板11と発光素子12とは、光源ユニット13を構成し、
前記光源ユニット13は、カバー部材10の一方の端部から挿入され、
前記カバー部材10は、円筒形状に形成され、その内部に光源ユニット13が配置されている、
発光素子方式照明灯。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

3 対比・判断
ア.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「筒形の細長いカバー部材10」は、「円筒形状に形成」され、長手方向の端部に開口を有することが明らかであるから、本願発明の「長手方向の端部に開口を有する長尺管状の筐体」に相当する。
引用発明の「一体で長く延びる基板11」及び「前記基板11の片面又は両面に設けた発光素子12」は、その機能、構造に照らして、本願発明の「長尺状の基板」及び「前記基板に実装された発光素子」に、それぞれ相当する。
引用発明の「光源ユニット13」は、基板11と発光素子12とを有するものであり、カバー部材10の内部に配置されることが明らかであるから、本願発明の「筐体内に配置された発光モジュール」に相当する。
引用発明の「前記カバー部材10の内面部に、前記基板11の長手両側縁が直接に嵌まり込む嵌合部を長手方向に沿って延びるように形成しており、前記嵌合部により、前記基板11がその幅方向と厚さ方向とにずれ不能に保持されている」ことと、本願発明の「前記発光モジュールは、前記筐体の管軸の中心位置と略一致するように前記筐体に保持され」ていることとは、「前記発光モジュールは、前記筐体に保持され」ている限度で共通するものといえる。
引用発明の「発光素子方式照明灯」は、照明に用いる器具をなすことが明らかであるから、かかる技術的意義において、本願発明の「ランプ」と共通したものといえる。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「長手方向の端部に開口を有する長尺管状の筐体と、
長尺状の基板と前記基板に実装された発光素子とを有し、前記筐体内に配置された発光モジュールと、
を備え、
前記発光モジュールは、前記筐体に保持されている、
ランプ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
本願発明は、「前記発光モジュールが載置された、前記発光モジュールの熱を放熱するための放熱板」を備えるものであり、
「前記発光モジュールと前記放熱板とは、前記発光モジュールが前記放熱板に載置されて前記発光モジュールの前記基板と前記放熱板とが接着材によって接合されることによって重なり合った状態で前記開口から前記筐体内に挿入可能であり、
前記発光モジュールは、前記筐体の管軸の中心位置と略一致するように前記筐体に保持され、
前記筐体は、前記基板の短手方向の端部及び前記放熱板の短手方向の端部が挿入される凹部を有し、
前記発光モジュール及び前記放熱板は、前記基板の前記端部及び前記放熱板の前記端部が前記凹部に挿入されることで前記筐体に保持され、
前記凹部の幅は、前記基板の前記端部の厚みと前記放熱板の前記端部の厚みとの合計よりも大きい」構成であるのに対して、
引用発明は、放熱板を備えるものではなく、「カバー部材10の内面部に、基板11の長手両側縁が直接に嵌まり込む嵌合部を長手方向に沿って延びるように形成しており、前記嵌合部により、前記基板11がその幅方向と厚さ方向とにずれ不能に保持」され、「前記光源ユニット13は、カバー部材10の一方の端部から挿入され」るものである点。

イ.判断
上記相違点について検討する。
(ア)刊行物2には、「・・・LEDを使用した照明装置・・・においては、・・・発生する熱を適切に処理(放熱)する必要がある。LEDは、・・・長寿命であるという特徴を有しているが、これを発揮させるためには、上記放熱を適切に行い、その温度が高くなり過ぎない範囲内で使用することが必要である・・・」(摘示(2a))と記載され、 刊行物3には、「・・・LEDモジュールは、・・・放熱性能が良くないためLEDチップから発生する熱が容易に外部へ伝達されない短所があり、このようにパッケージの内部に高い熱が放熱されないまま存在する場合、抵抗が非常に高くなって光効率が低下する。」(摘示(3a))と記載されているように、LEDからの発生熱を積極的に放熱し、その温度が高くなり過ぎない範囲内で使用することは、LEDのような発光素子を光源に使用した照明灯全般に共通する基本的な技術課題といえるから、引用発明においても、そのような技術課題が内在することは明らかである。
また、刊行物2及び刊行物3には、そのような技術課題を解決するために、発光モジュールの熱を放熱板により放熱させること(摘示(2b)、(3b))、より具体的には、発光素子(前者の固体発光素子26、後者のLEDチップ104)を実装する基板(前者の基板22、後者の回路基板102)と放熱板(前者の支持体21、後者の放熱板108)とを接着材(前者の接着剤、後者のガラス系接着剤)によって接合して、発光モジュールを放熱板上に載置して設けることが記載されており(摘示(2c)、(3c))、かかる技術は周知技術ということもできる。
してみると、引用発明になお内在する、発光素子からの発生熱を積極的に放熱し、その温度が高くなり過ぎない範囲内で使用する、という基本的な技術課題を解決する目的で、上記周知技術を適用する動機付けは十分存在するものといえる。
(イ)ところで、引用発明は、発光モジュール(光源ユニット13)を、筐体(カバー部材10)の一方の端部から挿入し、筐体(カバー部材10)の内面部に形成された嵌合部で保持するものであるが(摘示(1e))、引用発明に上記周知技術を適用すれば、発光モジュールの基板に放熱板を接着材によって接合することとなり、その結果、発光モジュールと放熱板とは発光モジュールが放熱板に載置された状態、すなわち、重なり合った状態で筐体の開口から筐体内に挿入されるものとして構成されるものといえる。
そして、そのように重なり合った状態の発光モジュールと放熱板との筐体内での保持態様について、基板と放熱板とを略同一サイズで構成することも例えば刊行物3の図1,2にも示されているとおり想定の範囲内といえること、さらに、例えば刊行物1に開示された、その両側縁が上下に重なった状態の拡散板25及び反射板26を、一対の第2嵌合溝32(凹部)で保持する保持の態様例(摘示(1d))をも参考とすれば、発光モジュールと放熱板とを、基板の端部及び放熱板の端部を筐体内に形成される嵌合部をなす凹部に挿入することで保持することは、当業者にとって格別困難なことではない。
(ウ)さらに、刊行物1には「光源ユニット13は第1嵌合溝31に挿入されているだけであるので、交換が必要な場合は容易に挿抜することができる。」(摘示(1e))と記載されているように、光源ユニット13は「容易に挿抜」することができるように保持すべきことが明らかであるから、嵌合部をなす凹部の幅についても、基板の端部の厚みと放熱板の端部の厚みとを考慮して、そのような容易な挿抜が行い得るように、基板の端部の厚みと放熱板の端部の厚みとの合計よりも大きく構成することは、当業者が通常の創作能力の発揮において行い得る設計事項といえる。
さらにまた、刊行物1には、筐体(カバー部材10)内への発光モジュール(光源ユニット13)の配設位置として、管軸の中心位置と略一致するように保持する例(図4(f))や、管軸の中心位置に対して外周側にずらして保持する例(図4(g))が示されているように、その配設位置は任意に設定可能なものといえるから、基板と放熱板とを重なり合った状態で筐体内に保持させるに際して、発光モジュール(光源ユニット13)を、筐体(カバー部材10)の管軸の中心位置と略一致するように筐体(カバー部材10)に保持することも、当業者が通常の創作能力の発揮において行い得る設計事項といえる。
してみると、上記相違点に係る本願発明の構成は、引用発明及び上記刊行物2及び3にも記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものといえる。
(エ)ところで、請求人は、平成26年12月26日付けの意見書で、本願発明において、筐体に設けられた凹部の幅は、基板の端部の厚みと放熱板の端部の厚みとの合計よりも大きいという構成を備えており、この構成により、(i)基板垂直方向において凹部と基板の端部又は放熱板の端部との間に隙間を設けることができ、接合された基板と放熱板との線熱膨張係数差によって生じる基板又は放熱板の長手方向の反りによって、あるいは、基板や放熱板の厚み方向の熱膨張によって、凹部が破損してしまうことを抑制できる旨、(ii)さらに、このような隙間を設けることによって、基板と放熱板とが重なり合った状態で発光モジュール及び放熱板を凹部に容易に挿入できるとともに、基板及び放熱板の厚みの製造ばらつきを隙間によって吸収することができる旨、主張する(3.(1))。
しかし、本願明細書には、筐体に設けられた凹部の幅を、基板の端部の厚みと放熱板の端部の厚みとの合計よりも大きく構成すること(以下「事項A」という。)は記載されているものの、それに起因して、接合された基板と放熱板との線熱膨張係数差によって生じる基板又は放熱板の長手方向の反りによって、あるいは、基板や放熱板の厚み方向の熱膨張によって、凹部が破損してしまうことを抑制することは、一切記載されていない。
本願明細書の段落【0048】には、「第1凸部411及び第2凸部412の間隔、つまり凹部410の幅は、基板301の厚み及び放熱板500の厚みの合計より大きい。同様に、第1凸部421及び第2凸部422の間隔、つまり凹部420の幅は、基板301の厚み及び放熱板500の厚みの合計より大きい。このとき、基板301及び放熱板500の厚み方向(Z方向)の移動を制限するために、2つの凹部410及び420の幅が基板301の厚み及び放熱板500の厚みの合計と略等しいことが好ましい。」と記載されているように、凹部の幅は、基板の厚み及び放熱板の厚みの合計より「大きい」ものとはされつつも、その大きさは、基板の厚み及び放熱板の厚みの合計と「略等しい」ことが好ましいものと説明されていることからすれば、上記事項Aを、接合された基板と放熱板との線熱膨張係数差によって生じる基板又は放熱板の長手方向の反りによって、あるいは、基板や放熱板の厚み方向の熱膨張によって、凹部が破損してしまうことを抑制するための隙間を考慮したものと解すべき合理性はなく、したがって、請求人の上記主張(i)は採用することができない。
さらに、上記(ウ)で述べたとおり、引用発明の光源ユニットはカバー部材に対して「容易に挿抜」するように保持すべきことが前提とされるものであるから、基板と放熱板とを重なり合った状態で筐体内に保持させるに際して、カバー部材の内面部に形成する嵌合部をなす凹部の幅は、基板の端部の厚みと放熱板の端部の厚みとを考慮して、そのような容易な挿抜が行い得るサイズにて適宜設定され得るものといえ、したがって、上記主張(ii)に係る本願発明の効果も想定の範囲内のものといえる。
(オ)したがって、上記相違点に係る本願発明の構成は、引用発明及び上記刊行物2及び3にも記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものといえ、また、本願発明の作用効果も、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲のものといえる。

ウ.まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術から当業者が容易に発明することができたものといえるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-19 
結審通知日 2015-02-24 
審決日 2015-03-09 
出願番号 特願2012-161810(P2012-161810)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F21S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 栗山 卓也  
特許庁審判長 丸山 英行
特許庁審判官 平田 信勝
氏原 康宏
発明の名称 ランプ及び照明装置  
代理人 新居 広守  
代理人 寺谷 英作  
代理人 道坂 伸一  

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