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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A62C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A62C |
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管理番号 | 1300008 |
審判番号 | 不服2014-13202 |
総通号数 | 186 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-07-08 |
確定日 | 2015-04-23 |
事件の表示 | 特願2010-154363「消火装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月26日出願公開、特開2012- 16415〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年7月6日を出願日とする出願であって、平成25年12月2日付けで拒絶理由が通知され、平成26年1月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年4月4日付けで拒絶査定がされた。 これに対し、平成26年7月8日に拒絶査定不服の審判請求がされると同時に手続補正書が提出され、さらに平成26年10月10日に上申書が提出されたものである。 第2 平成26年7月8日付け手続補正についての補正の却下の決定 <補正の却下の決定の結論> 平成26年7月8日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 <理由> 1 本件補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正により補正される前の(すなわち、平成26年1月24日付けで提出された手続補正書で補正された)下記(1)の特許請求の範囲の請求項1の記載を、下記(2)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載に補正するものである。 (1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「 【請求項1】 液化消火ガスが貯留される消火ガス貯留容器と、 消火ガス貯留容器内の液化消火ガスを、所定の圧力で加圧するための加圧ガスが貯留される加圧ガス貯留容器と、 消火ガス貯留容器から放出された液化消火ガスを、消火対象領域に導く消火ガス輸送手段と、 加圧ガス貯留容器から放出された加圧ガスを、消火ガス貯留容器に導く加圧ガス輸送手段と、 加圧ガス輸送手段による加圧ガス貯留容器から消火ガス貯留容器に導かれる加圧ガスの流路に設けられ、この流路の加圧ガス貯留容器に連なる上流側流路の加圧ガスを、消火ガス貯留容器に連なる下流側流路に前記所定の圧力に減圧して放出する減圧弁とを備え、 前記加圧ガス貯留容器には、前記消火ガス貯留容器内の液化消火ガスを前記所定の圧力で一定時間、継続して放出させることができる量の加圧ガスが、前記消火ガス貯留容器内の加圧ガスの圧力よりも高い圧力に圧縮された状態で充填されていることを特徴とする消火装置。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「 【請求項1】 (a)液化消火ガスが貯留される消火ガス貯留容器であって、起動されることによって、消火ガス貯留容器の容器底部からの消火ガス流路を閉状態から開状態になる第1容器弁と、消火ガス貯留容器の液化消火ガスの液面よりも上方への加圧ガス流路を閉状態から開状態になる第2容器弁とを有する消火ガス貯留容器と、 (b)頂部に開口が形成される圧力容器本体と、この開口を閉塞する蓋体とを有し、消火ガス貯留容器内の液化消火ガスを加圧するための加圧ガスが貯留される加圧ガス貯留容器と、 (c)消火ガス貯留容器から放出された液化消火ガスを、第1容器弁を介して消火対象領域に導く消火ガス輸送管と、 (d)加圧ガスを、第2容器弁を介して消火ガス貯留容器に導く加圧ガス輸送管と、 (e)加圧ガス貯留容器の蓋体に一体に設けられ、前記起動されることによって、加圧ガス貯留容器に貯留される加圧ガスを加圧ガス輸送管に放出しない閉状態から、開状態になり、この開状態では、加圧ガス貯留容器に貯留される加圧ガスを、加圧ガス輸送管に、その加圧ガス輸送手段内の加圧ガスの圧力に応答して、消火ガス貯留容器内の液化消火ガスを押出す予め定める一定の設定圧力に減圧して放出する減圧弁とを備え、 (f)加圧ガス貯留容器には、消火ガス貯留容器内の液化消火ガスを、前記設定圧力で消火のために一定時間、継続して放出させることができる量の加圧ガスが、消火ガス貯留容器内の加圧ガスの圧力よりも高い圧力に圧縮された状態で充填されていることを特徴とする消火装置。」(なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。) 2 本件補正の適否 2-1 本件補正の目的 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、補正前の発明特定事項である「消火ガス貯留容器」について、「起動されることによって、消火ガス貯留容器の容器底部からの消火ガス流路を閉状態から開状態になる第1容器弁と、消火ガス貯留容器の液化消火ガスの液面よりも上方への加圧ガス流路を閉状態から開状態になる第2容器弁とを有する」旨を限定し、補正前の発明特定事項である「加圧ガス貯留容器」について、「頂部に開口が形成される圧力容器本体と、この開口を閉塞する蓋体とを有」する旨を限定し、補正前の発明特定事項である「消火ガス輸送手段」について、「第1容器弁を介」する旨を限定し、補正前の発明特定事項である「加圧ガス輸送手段」について、「第2容器弁を介」する旨を限定し、補正前の発明特定事項である「減圧弁」について、「加圧ガス貯留容器の蓋体に一体に設けられ、前記起動されることによって、加圧ガス貯留容器に貯留される加圧ガスを加圧ガス輸送管に放出しない閉状態から、開状態になり、この開状態では、」「消火ガス貯留容器内の液化消火ガスを押出す予め定める一定の設定圧力に減圧」する旨限定し、補正前の発明特定事項である「一定時間」について、「前記設定圧力で消火のために一定時間」に限定したものといえる。 そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 2-2 独立特許要件の検討 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。) が、特許出願の際独立して特許を受けられるものかどうかを検討する。 (1)引用文献に記載された発明 (a-1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-107316号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある。 なお、下線は、理解の一助とするため当審が付したものである。 ア.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、消火装置に関し、更に詳しくは、所定時間内に液化消火ガスを消火現場に送液することができる送液可能距離をより延ばすことができ、液化消火ガスを消火現場に確実に送液することができる消火装置に関する。 【0002】 【従来の技術と発明が解決しようとする課題】従来の消火装置においては、例えば、液化消火ガスとして、ハロンガスを液化した液化ハロンを充填した消火剤タンクに窒素ガスを圧入してなる蓄圧式消火剤タンクと、前記蓄圧式消火剤タンクと消火現場との間に設けられた配管等の消火剤送液ラインとが採用されていた。 【0003】前記消火装置は、その起動時に、消火剤タンク中に圧入された窒素ガスで液化ハロンを配管中に送り出し、配管中に液化ハロンを送液させ、消火現場に液化ハロンを送液する仕組みとなっている。 【0004】このように、例えば、前記蓄圧式消火剤タンクを採用した従来の消火装置における液化消火ガスの送液方法を、蓄圧式の送液方法と称することもできる。 【0005】前記蓄圧式送液方法を採用した従来の消火装置においては、例えば、(イ)所定時間内、例えば、10秒以内に液化ハロンを消火現場に送液することができる送液可能距離が、蓄圧式消火剤タンクにおいて予め圧入される窒素ガスの圧力に左右されるという問題、(ロ)前記送液可能距離に限界があり、前記配管の長さを送液可能距離の範囲内の長さに制限しなければならないという問題等があった。 【0006】一方、地球環境の保護を目的として前記ハロンガスの使用が規制されたことにより、このハロンガスの代替ガスとして、例えば、FM-200(「HFC-227ea」、「1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン」と称することもできる。)ガス等の代替消火ガスが、前記消火装置に採用されるようになった。 【0007】前記代替消火ガスを採用した消火装置においては、例えば、(ハ)所定時間内、例えば、10秒以内に液化代替消火ガス、例えば、FM-200ガスを液化した液化FM-200を消火現場に送液することができる送液可能距離が、液化FM-200を充填した消火剤タンクに窒素ガスを圧入してなる蓄圧式消火剤タンクにおいて予め圧入される窒素ガスの圧力に左右されるという問題、(ニ)蓄圧式消火剤タンクから、液化FM-200を配管により消火現場に送液する場合に、液化FM-200が配管中で泡立ってしまうという問題、(ホ)前記送液可能距離に限界があり、液化ハロンを採用した場合と比べて前記配管をさらに短い送液可能距離の範囲内の長さに制限しなければならないという問題等があった。 【0008】また、前記蓄圧式消火剤タンクは所定の保護区画内に設置されるのであるが、上述したように従来の消火装置においては、消火剤を放出するべき消火現場と保護区画内に設置された蓄圧式消火剤タンクとを連通する配管の長さを、送液可能距離の範囲内の長さに制限しなければならないので、(ヘ)送液可能距離の2倍を超える距離を隔てて位置する複数の消火現場に消火剤を送液する場合には、複数の消火現場毎にそれぞれ蓄圧式消火剤タンク及びその保護区画を設けなければならないという問題、具体的には、例えば、高層ビル等において所定の高さを隔てて位置する階層毎に蓄圧式消火剤タンク及びその保護区画を設けなければならないという問題、広大な工場敷地内等において所定の距離を隔てて位置する工場内設備毎に蓄圧式消火剤タンク及びその保護区画を設けなければならないという問題等があった。 【0009】前記(ニ)における液化FM-200が配管中で泡立ってしまう原因としては、例えば、前記蓄圧式消火剤タンクが、液化FM-200を充填した後に、窒素ガスを圧入することによって製造されるので、液体FM-200中に所定量の窒素ガスが溶存窒素ガスとして溶け込んでしまうこと等を挙げることができ、いざ火災が発生した場合に、前記蓄圧式消火剤タンクから、溶存窒素ガスが溶け込んだ液化FM-200を配管中に流通させると、この配管中では圧力の低下に伴って溶存窒素ガスが溶けきれなくなって液体FM-200から湧き出してしまうのである。このことは、ビール瓶の栓を開いてこのビール瓶からビールをコップに注ぐことをイメージすると容易に理解することができ、前記配管中において液化FM-200が泡立ってしまうことのない消火装置が望まれている。 【0010】前記液体FM-200に溶け込む窒素量は、前記蓄圧式消火剤タンク内の圧力に比例し、前記液体FM-200から湧き出す窒素量は、前記蓄圧式消火剤タンク内の圧力と前記配管中の圧力との圧力差に比例する。こうして前記配管中では、液体FM-200とこの液体FM-200から湧き出した窒素ガスとが混ざり合って泡状になってしまう。 【0011】従来の蓄圧式送液方法においては、このような溶存窒素ガスに起因する不具合を回避し、所定量の液化FM-200を、所定時間内、例えば、10秒以内に、確実に消火現場に送液することを目的として、送液可能距離を制限せざるを得なかった。言い換えると、従来の蓄圧式送液方法においては、送液可能距離を延ばそうとして、蓄圧式消火剤タンク内への窒素ガスの圧入量を増やしたとしても、液化FM-200における溶存窒素ガス量が増えてしまい、その結果、配管中における液化FM-200の泡立ちが著しくなり、送液可能距離を必ずしも延ばすことができないという不具合を生じていた。 【0012】また、このように液体と気体とが混ざり合った流体の流れを二相流と称した場合において、前記配管中を流れる液体FM-200の圧力損失は、二相流の計算式によって計算することができる。前記計算式としては、例えば、日本消火装置工業会が定める計算式を採用することができる。 【0013】しかしながら、前記計算式を用いて消火装置の設計、特に配管システムの設計を行なう場合には、前記(ニ)の問題を回避することを目的として、例えば、消火装置の配管内容積、充填比等に関連するτ2(タウ・ツウ)という値に限度値を設定しなければならなかった。 【0014】よって、従来の消火装置においては、例えば、前記(ニ)の問題を解消して、溶存窒素ガス等に起因する不具合を生じることなく、消火装置の配管内容積、充填比等に関連するτ2による制限がなく、煩雑な設計作業等の制約がない消火装置が望まれていた。 【0015】さらに付け加えると、上述した消火装置の技術分野においては、従来の蓄圧式送液方法における配管中での液化消火ガスの流通状態を二相流と称するならば、この二相流を、例えば、水道管中での水道水の流通状態のような一相流にすることが望まれていた。 【0016】本発明は、従来からの諸問題を解決することを目的とする。 【0017】本発明の目的は、液化消火ガスを消火現場に確実に送液することができる消火装置を提供することにある。 【0018】本発明の他の目的は、所定時間内に液化消火ガスを消火現場に送液することができる送液可能距離をより延ばすことができる消火装置を提供することにある。 【0019】本発明の他の目的は、液化消火ガスを複数箇所の消火現場に確実に送液することができる消火装置を提供することにある。 【0020】本発明の他の目的は、省スペース化を実現することができる消火装置を提供することにある。 【0021】本発明の他の目的は、従来のハロン消火装置用に配設された既存の消火用配管を新たな配管系に変えることなく、そのまま使用することのできる消火装置を提供することにある。 【0022】 【課題を解決するための手段】前記課題を解決するための手段は、消火の際に、液化消火ガス貯留槽内に貯留されている液化消火ガスを、加圧用ガス貯留槽内に加圧状態にある加圧ガスを前記液化消火ガス貯留槽内に圧入することにより、前記液化消火ガス貯留槽に結合された配管内を液化消火ガスが一相流となって消火現場に送液されるようにしてなることを特徴とする消火装置である。」(段落【0001】ないし【0022】) イ.「【0023】 【発明の実施の形態】(一般的説明)本発明の消火装置における主要構成要素として、消火現場に送液する液化消火ガスを貯留する液化消火ガス貯留槽と、前記液化消火ガス貯留槽内を所定圧力に加圧する加圧用ガスを貯留する加圧用ガス貯留槽とを挙げることができる。 【0024】本発明における液化消火ガスとしては、例えば、FM-200ガス等の消火ガスを液化した液化FM-200等の液化代替フロン等を挙げることができ、これらは1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良く、さらに、添加剤等を添加しても良い。 【0025】本発明においては、前記液化消火ガスが、例えば、液化消火ガスが流通可能な流路等、具体的には、例えば、配管等を通じて消火現場に送液されることができる。 【0026】前記配管としては、その内部を流通する前記液化消火ガスを消火現場に送液することができる限り、特に制限がなく、具体的には例えば、パイプ、ホース、フレキシブルホース等を挙げることができる。 【0027】本発明における液化消火ガス貯留槽は、前記液化消火ガスを貯留することができ、後述する加圧用ガスによる所定圧力に耐え得る耐圧性を有する。 【0028】前記液化消火ガス貯留槽としては、例えば、ボンベ、タンク等を挙げることができる。 【0029】本発明においては消火現場において充分な消火ガスの放出量を確保することができる限り、例えば、液化消火ガス貯留槽の容積、液化消火ガス貯留槽の外径寸法等には特に制限がない。 【0030】本発明においては、複数の前記液化消火ガス貯留槽を用いても良い。 【0031】本発明においては消火現場において充分な消火ガスの放出量を確保することができる限り、前記液化消火ガスの貯留量には特に制限がない。 【0032】前記配管においては、その一端を前記液化消火ガス貯留槽に連通・連結し、その他端を消火現場に向かう例えば消火ノズルに連通・連結することができる。この配管においては、前記液化消火ガス貯留槽内においてその液化消火ガス貯留槽の底面近傍にまで延在し、且つその底面近傍で開口する一端開口部を備えた内部配管の出口に、この配管の一端が結合されていても良く、また、配管の一端開口部が、前記液化消火ガス貯留槽内の底面近傍にまで延在するように、配管を前記液化消火ガス貯留槽に連結しても良い。 【0033】前記配管には、この配管を開閉して液化消火ガスの流通を制御する消火剤流通制御弁を設けることができ、前記消火剤流通制御弁は、例えば、前記配管の一端側に設けても良いし、前記配管の他端側に設けても良いし、前記配管の一端側及び他端側に設けても良い。 【0034】本発明における加圧用ガス貯留槽は、前記液化消火ガス貯留槽内を所定圧力に加圧する加圧用ガスを貯留することができ、この加圧用ガス貯留槽は、前記加圧用ガスを、前記液化消火ガス貯留槽内の圧力よりも高い所定圧力で貯留することができる。 【0035】前記加圧用ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス、空気等を挙げることができる。 【0036】前記加圧用ガス貯留槽としては、例えば、ボンベ、タンク等を挙げることができる。 【0037】本発明においては消火現場において充分な消火ガスの放出量を確保することができる限り、例えば、加圧用ガス貯留槽の容積、加圧用ガス貯留槽の外径寸法等には、特に制限がない。 【0038】本発明においては、複数の前記加圧用ガス貯留槽を用いて、複数の前記加圧用ガス貯留槽から液化消火ガス貯留槽内に、各前記加圧用ガス貯留槽から同時にあるいは順次に加圧用ガスを前記液化消火ガス貯留槽内に供給するようにしても良い。 【0039】本発明においては消火現場において充分な消火ガスの放出量を確保することができる限り、前記加圧ガスの貯留量には特に制限がない。 【0040】本発明においては、前記液化消火ガス貯留槽と前記加圧用ガス貯留槽とを、例えば、加圧用ガス供給管等によって連通することができる。 【0041】前記加圧用ガス供給管においては、その一端を前記加圧用ガス貯留槽に連通ないし連結し、その他端を前記液化消火ガス貯留槽に連通ないし連結するように配置することができ、前記加圧用ガス供給管の他端側開口部は前記液化消火ガス貯留槽の上面近傍、特に貯留する液化消火ガスにおける液面よりも高い位置に配置するのが好ましい。 【0042】前記加圧用ガス供給管の他端側開口部を、前記液化消火ガス貯留槽の上面近傍、特に貯留する液化消火ガスにおける液面よりも高い位置に配置しておくと、液化消火ガス貯留槽内に加圧用ガスを圧入した場合に、液化消火ガス中に加圧用ガスが溶け込む量を効果的に抑制することができ、例えば、送液中に液化消火ガスが泡立つことに起因して実用上の不具合を生じること等をより効果的に防止することができる。 【0043】前記加圧用ガス供給管には、この加圧用ガス供給管を開閉して加圧用ガスの流通を制御する加圧用ガス流通制御弁を設けることができ、前記加圧用ガス流通制御弁は、例えば、前記加圧用ガス供給管の一端側に設けても良いし、前記加圧用ガス供給管の他端側に設けても良いし、前記加圧用ガス供給管の一端側及び他端側に設けても良い。 【0044】さらに、前記加圧用ガス供給管には、この加圧用ガス供給管内を流通する加圧用ガスの流量を調整する加圧用ガス流量調整器を介装することができる。この加圧用ガス流量調整器としては、例えば、レギュレータ等を挙げることができ、このレギュレータにより、前記加圧用ガス貯留槽から液化消火ガス貯留槽内に所定量の加圧用ガスを供給することができる。 【0045】また、本発明においては、前記加圧用ガス貯留槽と液化消火ガス貯留槽とを連通ないし連結して液化消火ガス貯留槽内の圧力を所定圧力に加圧することにより、消火現場において充分なFM-200ガスの放出量を確保することができるように、予め前記液化消火ガス貯留槽の容量、液化消火ガスの貯留量、加圧用ガス貯留槽の容量、加圧用ガスの貯留量、配管、及び加圧用ガス供給管等を設計しておくことができる。 【0046】本発明においては、例えば、前記液化消火ガス貯留槽内における液化消火ガス量を検出することができる消火剤量検出器、前記加圧用ガスにより加圧される前記消化剤貯留槽内の圧力(以下、「液化消火ガス貯留槽内圧力」と称することがある。)を検出することができる液化消火ガス貯留槽内圧力計、前記加圧用ガス貯留槽内の圧力(以下、「加圧用ガス貯留槽内圧力」と称することがある。)を検出することができる加圧用ガス貯留槽内圧力計等を設けることができる。 【0047】前記液化消火ガス貯留槽内圧力計として具体的には、例えば、前記加圧用ガス供給管に介装されたレギュレータに備えられた圧力計等を挙げることができる。 【0048】前記消火剤流通制御弁、前記加圧用ガス流通制御弁、前記加圧用ガス流量調整器、前記消火剤量検出器、前記液化消火ガス貯留槽内圧力計、前記加圧用ガス貯留槽内圧力計等は、例えば、シーケンサ、コンピュータ等の制御手段により制御することができる。 【0049】前記制御手段は、例えば、火災報知器、煙検出器、温度センサ、ガスセンサ等の各種警報器等が出力する警報信号を入力することができ、この警報信号を入力した後に消火現場に液化消火ガスを送液することができる。 【0050】本発明においては、前記液化消火ガス貯留槽と前記加圧用ガス貯留槽とを採用し、前記液化消火ガスと前記加圧用ガスとをそれぞれ単独で貯留することにより、従来の蓄圧式の送液方法における諸問題を解消することができる。 【0051】例えば、前記液化消火ガス貯留槽の容量及び前記加圧用ガス貯留槽の容量を所望の容量に増やすことができるので、前記液化消火ガスの貯留量及び前記加圧用ガスの貯留量に制限がなく、所定時間内における液化消火ガスの送液可能距離を理論上ではほぼ無制限に延ばすことができ、実用上前記所定時間を、例えば、10秒に設定した場合においても、従来と比べて送液可能距離をより延ばすことができる。 【0052】さらに、前記液化消火ガスに前記加圧用ガスが溶け込むことによる実用上の不具合を回避することができ、例えば、従来の消火装置における配管中で液化消火ガスと窒素ガスとが泡立って二相流を形成してしまうという不具合を回避することができ、従来の消火装置の設計における煩雑な設計作業、例えば、τ2による補正作業等の制約がない。 【0053】本発明の消火装置における液化消火ガスの送液方法は、実用上、例えば、配管中における液化消火ガスが二相流を形成して不具合を生じることがないので、配管中の液化消火ガスが一相流を形成するピストンフロー式の送液方法と称することができる。 【0054】本発明の消火装置における前記ピストンフロー式の送液方法として具体的には、例えば、定常流ピストンフロー式の送液方法、非定常流ピストンフロー式の送液方法、直前蓄圧ピストンフロー式の送液方法等を挙げることができる。 【0055】<定常流ピストンフロー式の送液方法>定常流ピストンフロー式の送液方法においては、消火現場に液化消火ガスを送液する場合に、先ず、加圧用ガス貯留槽から液化消火ガス貯留槽への加圧用ガスの供給が開始され、液化消火ガス貯留槽内圧力が所定圧力に達すると、消火現場への液化消火ガスの送液が開始される。 【0056】本発明の消火装置においては、例えば、前記加圧用ガス供給管に加圧用ガス流量調整器を介装し、この加圧用ガス流量調整器よりも上流側に加圧用ガス流通制御弁を設けた場合において、加圧用ガス流通制御弁を開いた後、瞬時に液化消火ガス貯留槽内の圧力を所定圧力に加圧することができるように、前記加圧用ガス流量調整器を予め所定の状態に制御しておくことができる。 【0057】例えば、前記加圧用ガス流量調整器として前記レギュレータを採用した場合において、加圧用ガス流通制御弁を開いた後、瞬時に液化消火ガス貯留槽内の圧力を所定圧力に加圧することができるように、前記レギュレータを予め所定の待機状態に設定しておくことができる。 【0058】消火現場への液化消火ガスの送液が開始されると、前記液化消火ガス貯留槽内の圧力が低下するので、前記液化消火ガス貯留槽内圧力が所定圧力を保持するように、加圧用ガス貯留槽から液化消火ガス貯留槽への加圧用ガスの供給を制御する。」(段落【0023】ないし【0058】) ウ.「【0072】(具体的説明)以下、図面を参照しながら、本発明の一実施例について詳細に説明する。 【0073】図1に示すように、本発明の一実施例の消火装置1は、液化消火ガス貯留槽である液化FM-200貯留槽2と、加圧用ガス貯留槽である窒素ガス貯留槽3と、配管4と、窒素ガス供給管5と、液化FM-200流通制御弁6と、一端側窒素ガス流通制御弁7aと、他端側窒素ガス流通制御弁7bと、レギュレータ8とを有する。 【0074】前記消火装置1は、前記液化FM-200貯留槽2に貯留された液化FM-200を配管4を通じて消火現場(図示せず)に送液することができる。 【0075】前記配管4の一端側開口部4aは、前記液化FM-200貯留槽2の底面2a近傍に配置されてなる。 【0076】前記窒素ガス供給管5においては、その一端5aが前記窒素ガス貯留槽3に連通し、その他端5bが前記液化FM-200貯留槽2に連通するように連結されてなり、前記窒素ガス供給管5の他端側開口部5cは、前記液化FM-200貯留槽2の上面2b近傍に開口するように配置されてなる。 【0077】前記液化FM-200流通制御弁6は、前記配管4を開閉して液化FM-200の流通を制御することができる。 【0078】前記一端側窒素ガス流通制御弁7a及び他端側窒素ガス流通制御弁7bは、前記窒素ガス供給管5を開閉して窒素ガスの流通を制御することができる。 【0079】前記レギュレータ8は、前記窒素ガス供給管5内を流通する窒素ガスの流量を調整することができ、前記窒素ガス供給管5を開閉する流量調整弁(図示せず)と、前記液化FM-200貯留槽2内の圧力を検出することができる圧力計(図示せず)とを備えてなる。 【0080】前記消火装置1は、前記液化FM-200流通制御弁6、前記一端側窒素ガス流通制御弁7a、前記他端側窒素ガス流通制御弁7b、前記レギュレータ8における前記流量調整弁、及び前記圧力計を、制御手段例えばコンピュータ(図示せず)によって制御することができる。 【0081】前記液化FM-200流通制御弁6、前記一端側窒素ガス流通制御弁7a、及び前記他端側窒素ガス流通制御弁7bは、それぞれ、前記コンピュータからの開信号又は閉信号を入力することによって開閉動作を行なう常閉バルブを備えてなる。 【0082】前記コンピュータにおいては、定常流ピストンフロー式で液化FM-200を送液する「定常流式送液モード」、非定常流ピストンフロー式で液化FM-200を送液する「非定常流式送液モード」、及び直前蓄圧ピストンフロー式で液化FM-200を送液する「直前蓄圧式送液モード」のいずれかの送液モードを選択することができる。 【0083】前記コンピュータには、液化FM-200貯留槽内を所定圧力に加圧する場合における所定圧力値を、予め設定することができる。この実施例においては、前記所定圧力値を、45kg/cm^(2) に設定した。 【0084】前記コンピュータは、前記圧力計によって検出される液化FM-200貯留槽2内の圧力が45kg/cm^(2) に達したことを検出すると、前記液化FM-200流通制御弁6に開信号を出力することができる。 【0085】前記レギュレータ8は、前記一端側窒素ガス流通制御弁7a及び前記他端側窒素ガス流通制御弁7bを開いた後、瞬時に液化FM-200貯留槽2内の圧力を45kg/cm^(2 )に加圧することができるように、予め所定の待機状態に設定しておくことができる。 【0086】前記コンピュータは、消火現場に設置された警報器(図示せず)が出力する警報信号を、この消火装置を起動する起動信号として入力することができ、この起動信号を入力した後に消火現場に液化FM-200を送液することができる。 【0087】以下、前記消火装置1の動作について説明する。 【0088】<定常流式送液モード>前記コンピュータは、起動信号を入力すると、先ず、前記一端側窒素ガス流通制御弁7a及び他端側窒素ガス流通制御弁7bにそれぞれ開信号を出力する。 【0089】前記一端側窒素ガス流通制御弁7a及び他端側窒素ガス流通制御弁7bが開くと、窒素ガス貯留槽3から液化FM-200貯留槽2への窒素ガスの供給が開始される。 【0090】前記コンピュータは、FM-200貯留槽2内の圧力が45kg/cm^(2 )に達したことを判断すると、前記液化FM-200流通制御弁6に開信号を出力する。 【0091】前記液化FM-200流通制御弁6が開くと、消火現場への液化FM-200の送液が開始される。 【0092】消火現場への液化FM-200の送液が開始されると、前記液化FM-200貯留槽2内の圧力が低下するので、前記コンピュータは、前記液化FM-200貯留槽2内の圧力が45kg/cm^(2) を保持するようにレギュレータ8に制御信号を出力し、窒素ガス貯留槽3から液化FM-200貯留槽2への窒素ガスの供給を制御する。 【0093】この定常流式送液モードにおいては、一定の加圧圧力で液化FM-200を消火現場に送液することができる。」(段落【0072】ないし【0093】) (a-2)ここで、上記(a-1)のア.ないしウ.並びに図面から、次のことが分かる。 カ.上記ア.の段落【0001】及びウ.の段落【0072】ないし【0093】並びに【図1】の記載から、引用文献1に記載された消火装置は、液化消火ガスが貯留される液化FM-200貯留槽2であって、開信号が出力されることによって、液化FM-200貯留槽2の底面2aからの配管4を閉状態から開状態になる液化FM-200流通制御弁6と、液化FM-200貯留槽2の液化消火ガスの液面よりも高い位置への窒素ガス供給管5を閉状態から開状態になる他端側窒素ガス流通制御弁7bとを有する液化FM-200貯留槽2を備えていることが分かる。 キ.上記イ.の段落【0036】ないし【0041】及びウ.の段落【0072】ないし【0093】並びに【図1】の記載から、窒素ガス貯留槽3は、タンクから構成され、頂部において窒素ガス供給管5と連通しているところ、タンクは頂部に開口が形成されていることは明らかであるので、窒素ガス貯留槽3は、頂部に開口が形成されるタンクを有し、液化FM-200貯留槽2内の液化消火ガスを加圧するための加圧された窒素ガスが貯留されていることが分かる。 ク.上記ウ.の段落【0072】ないし【0093】並びに【図1】の記載から、引用文献1に記載された消火装置は、液化FM-200貯留槽2から放出された液化消火ガスを、液化FM-200流通制御弁6を介して消火現場に導く配管4と、加圧された窒素ガスを、他端側窒素ガス流通制御弁7bを介して液化FM-200貯留槽2に導く窒素ガス供給管5を備えていることが分かる。 ケ.上記イ.の段落【0034】及びウ.の段落【0072】ないし【0093】並びに【図1】の記載から、引用文献1に記載された消火装置は、液化FM-200貯留槽2に貯留される加圧された窒素ガスを、窒素ガス供給管5に、液化FM-200貯留槽2内の液化消火ガスを押し出す予め設定する所定圧力に減圧して放出するレギュレータ8を備えていることが分かる。 コ.上記イ.の段落【0029】ないし【0039】、【0058】及びウ.の段落【0072】ないし【0093】並びに【図1】の記載から、窒素ガス貯留槽3には、液化FM-200貯留槽2内の液化消火ガスを、所定圧力で消火のために所定時間、継続して放出させることができる量の加圧された窒素ガスが、液化FM-200貯留槽2内の加圧された窒素ガスの圧力よりも高い圧力に圧縮された状態で充填されていることが分かる。 (a-3)上記(a-1)及び(a-2)より、引用文献1には、次の発明が記載されている。 「液化消火ガスが貯留される液化FM-200貯留槽2であって、開信号が出力されることによって、液化FM-200貯留槽2の底面2aからの配管4を閉状態から開状態になる液化FM-200流通制御弁6と、液化FM-200貯留槽2の液化消火ガスの液面よりも高い位置への窒素ガス供給管5を閉状態から開状態になる他端側窒素ガス流通制御弁7bとを有する液化FM-200貯留槽2と、 頂部に開口が形成されるタンクを有し、液化FM-200貯留槽2内の液化消火ガスを加圧するための加圧された窒素ガスが貯留される窒素ガス貯留槽3と、 液化FM-200貯留槽2から放出された液化消火ガスを、液化FM-200流通制御弁6を介して消火現場に導く配管4と、 加圧された窒素ガスを、他端側窒素ガス流通制御弁7bを介して液化FM-200貯留槽2に導く窒素ガス供給管5と、 液化FM-200貯留槽2に貯留される加圧された窒素ガスを、窒素ガス供給管5に、液化FM-200貯留槽2内の液化消火ガスを押し出す予め設定する所定圧力に減圧して放出するレギュレータ8とを備え、 窒素ガス貯留槽3には、液化FM-200貯留槽2内の液化消火ガスを、所定圧力で消火のために所定時間、継続して放出させることができる量の加圧された窒素ガスが、液化FM-200貯留槽2内の加圧された窒素ガスの圧力よりも高い圧力に圧縮された状態で充填されている消火装置。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。) (b-1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平10-339383号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の記載がある。なお、下線は、理解の一助とするため当審が付したものである。 サ.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、急速開放できると共に二次側の最高圧力を制限する必要のある例えば高圧消火用不活性ガスボンベ等に装着される急速開放調圧弁に関する。 ・・・ 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明は従来技術に於ける上記問題を解決し、急速開放できると共に二次側圧力を目的とする圧力以下に制限することができる簡単な構造の急速開放調圧弁を提供することを課題とする。 ・・・ 【0009】本体1は、流体としての例えば高圧窒素の入口11a及び出口12aを形成する入口ノズル部11及び出口ノズル部12、弁座13等を備えている。入口ノズル部11は、例えば図5に略図で示すように急速開放調圧弁101として高圧の窒素ボンベ100に装着されるためのネジ11bを備えていると共に、その内部には補強用リング11cがねじ込まれている。出口ノズル部12は、例えば図5に示す窒素消火元ライン105の管が装着されるためのネジ12bを備えている。本体1には、図示しないが圧力計やボンベ用安全弁の座等を必要に応じて適宜設けることができる。」(段落【0001】ないし【0009】) シ.「【0023】以上のような図1に示す急速開放調圧弁は、構造の簡単なもので作動の確実なものである。図5は、本発明の急速開放調圧弁が適用される装置の一例である窒素消火装置の概略系統を示す。窒素消火装置は、40°Cで150kgf/cm^(2)G程度の圧力になるまで昇圧された窒素の充填された窒素ボンベ100、これに装着された本発明の急速開放調圧弁101、温度40°Cで110kgf/cm^(2)G程度の圧力を持つ起動用のCO_(2 )ボンベ102、これに装着され図2の弁作動機構と同様の構造で高圧不活性ガスの代わりにソレノイド等で作動するスターター103、起動ガスライン104、消火元ライン105、安全装置106、元弁107、消火区画を選択するための選択弁108、個別消火ライン109、消火区画110等によって構成されている。急速開放調圧弁は、d_(3 )=d_(4) とし、例えばP_(2) =110kgf/cm^(2)Gとして、式(2)に基づいて、 (π/4)〔110( d_(5)^(2)-d_(3)^(2))〕=F-------(3) の関係に設計される。ここで、d_(5) 及びd_(3) はcm、Fはkgfである。 【0024】以上のような構成の急速開放調圧弁は次のように作動する。急速開放調圧弁には、窒素ボンベ100から約150kgf/cm^(2)Gの入口圧力P_(1)がかかっていて、封板52は破られていない。従って、式(1)において、d_(4)=0としてP_(1 )d_(3)^(2)π/4という大きな弁閉鎖力が作用していて、弁は確実に閉じた状態になっている。この状態で、例えば何れかの消火区画で火災が発生すると、スターター103が操作され、CO_(2) ボンベ102から起動ガスライン104を介して、急速開放調圧弁101の弁作動機構6に圧力110kgf/cm^(2)G程度の作動ガスが導入される。 【0025】弁作動機構6では、作動ガスが外筒61、内筒62、カバー63のそれぞれに開けられた導通孔を介して作動リング64の上部に導入され、これとロッド67との間でガス圧が発生し、作動リング64及びこれと共に針部材65と尖端65aが押し下げられ、封板52を突き破ってこれを開き、窒素が直ちに入口11aから導通孔23を介して上端部に入り、内筒62とバネ受け3との間で形成された開受圧面25に圧力P_(1) を作用させる。一方、d_(3) 及びd_(4) が共に有効になって式(1)のP_(1) 部分が0になり、出口圧力P_(2) も大気圧であるから、圧力による弁開閉力が殆どなくなり、バネ力Fによって弁体部材2が確実に押し下げられ、弁は瞬時に開く。これにより、消火元ライン105以下に迅速に窒素が流され、消火区画内に充満して消火効果を発揮する。 【0026】一方、弁が開いたときに、例えば元弁107や選択弁108が閉まっていたような場合には、消火元ライン105の圧力が上がり、その結果急速開放調圧弁101の出口12aの圧力が上昇する。ところが、この圧力が110kgf/cm^(2) になると、式(3)のように寸法やバネ力が決められているため出口圧力に力と弁開閉力がバランスし、圧力が110kgf/cm^(2) を越えると、圧力による弁閉鎖力がバネ力に勝って弁が閉鎖する。その結果、110kgf/cm^(2)G以上の出口側圧力の過度の上昇が防止される。 【0027】図6は本発明を適用した他の急速開放調圧弁の構造例を示す。この急速開放調圧弁は、図1のものに較べて、主として、弁体部材2の入口11aに通じる一端側と開受圧面25に通じる他端側とを導通させる通路として弁体部材2内に設けられた導通穴23に代えて、本体1内に設けられた通路としての横導通穴14及び側部導通穴15を備えている。そして、2つの導通穴の間は、図1のものと同様に封板52によって閉鎖されている。なお、本例では、封板52を弁作動機構6の内筒62で押圧支持していて、導通穴14と15との間は内筒62に開けられた穴62aによって導通され、カバー3´で開受圧面25を閉鎖している。又、バネ受け3は本体1の内面にねじ込まれている。図1の補強用リング11cは用いられていない。 【0028】この例でも、図1のものと全く同様に、弁作動機構6が作動し、封板52が破られると、入口11aのガス圧力が、順次横導通穴14、封板52、穴62a、側部導通穴15を介して瞬時に開受圧面25に作用し、バネ4の力によって弁体部材2を作動させて弁を開くことができる。又、弁開時に出口12a側の圧力が所定圧力以上になると、閉受圧面24の圧力が高くなり、弁閉鎖力が弁開放力より大きくなり、弁を閉じてこれ以上の圧力上昇が防止される。本例の急速開放調圧弁によれば、弁作動機構6を弁体部材2に直角の方向に配置できるので、急速開放調圧弁の全体形状を小型化できる利点がある。 【0029】以上のように、急速開放調圧弁は、通常起動ガスライン104からのガス圧力で作動するが、起動系に故障等が発生し、急速開放調圧弁の弁作動機構6に作動ガスが供給されないようなときには、直接手動操作によって弁を開くことができる。このときには、封印用のピン69aを引き抜き、挟み板69の鎖係止側を持ってこれを引き抜き、キャップ68を押し下げることによってロッド67を介して作動リング64を押し下げ、針部材の尖端65aを下げて封板52を破ることができる。その結果、スターター系に故障等があっても、手動によッ て直ちに確実に窒素を供給でき、消火作業を行うことができる。 【0030】このような急速開放調圧弁によれば、消火すべきときに急速且つ確実に弁を開いて窒素を供給できると共に、出口側の圧力を所定圧力として例えば110kgf/cm^(2)G以下に制限することができる。従って、出口側の配管や弁等の消火系の一切のものの耐圧を従来のCO_(2) 消火系の場合と同じ110kgf/cm^(2)G以上に上げる必要がなくなる。その結果、設備費用の増加等を招くことなく、例えば150kgf/cm^(2)Gという消火能力の大きい窒素消火装置を用いることが可能になる。」(段落【0023】ないし【0030】) (b-2)ここで、上記(b-1)サ.及びシ.並びに図面から、次のことが分かる。 タ.上記サ.及びシ.の段落【0023】並びに【図5】及び【図6】の記載から、引用文献2には、急速開放調圧弁を備えた消火装置が記載されていることが分かる。 チ.上記サ.及びシ.の段落【0023】ないし【0030】並びに【図5】及び【図6】の記載から、引用文献2に記載された急速開放調圧弁は、窒素ボンベ100に設けられ、作動機構が作動することによって、窒素ボンベ100に貯留される加圧された窒素ガスを消火元ライン105に放出しない閉状態から、開状態になり、この開状態では、窒素ボンベ100に貯留される加圧された窒素ガスを、消火元ライン105に、その消火元ライン105内の加圧ガスの圧力に応答して、所定圧力以下に減圧して放出することが分かる。 (b-3)上記(b-1)及び(b-2)より、引用文献2には、次の発明が記載されている。 「窒素ボンベ100に設けられ、作動機構が作動することによって、窒素ボンベ100に貯留される加圧された窒素ガスを消火元ライン105に放出しない閉状態から、開状態になり、この開状態では、窒素ボンベ100に貯留される加圧された窒素ガスを、消火元ライン105に、その消火元ライン105内の加圧された窒素ガスの圧力に応答して、所定圧力以下に減圧して放出する急速開放調圧弁を備える消火装置。」(以下、「引用文献2記載の発明」という。) (2)対比 本願補正発明と引用文献1記載の発明を対比する。 引用文献1記載の発明における「液化消火ガス」は、その構成、機能及び技術的意義からみて、本願補正発明における「液化消火ガス」に相当し、以下同様に、「液化FM-200貯留槽2」は「消火ガス貯留容器」に、「開信号が出力されることによって」は「起動されることによって」に、「底面2a」は「容器底部」に、「配管4」は「消火ガス流路」及び「消火ガス輸送管」に、「液化FM-200流通制御弁6」は「第1容器弁」に、「液化消火ガスの液面よりも高い位置」は「液化消火ガスの液面よりも上方」に、「窒素ガス供給管5」は「加圧ガス流路」及び「加圧ガス輸送管」に、「他端側窒素ガス流通制御弁7b」は「第2容器弁」に、「タンク」は「圧力容器本体」に、「加圧された窒素ガス」は「加圧ガス」に、「消火現場」は「消火対象領域」に、「窒素ガス貯留槽3」は「加圧ガス貯留容器」に、「所定圧力」は「設定圧力」に、「消火装置」は「消火装置」に、それぞれ相当する。 また、引用文献1記載の発明における「液化FM-200貯留槽2に貯留される加圧された窒素ガスを、窒素ガス供給管5に、液化FM-200貯留槽2内の液化消火ガスを押し出す予め設定する所定圧力に減圧して放出するレギュレータ8」と、本願補正発明における「加圧ガス貯留容器の蓋体に一体に設けられ、前記起動されることによって、加圧ガス貯留容器に貯留される加圧ガスを加圧ガス輸送管に放出しない閉状態から、開状態になり、この開状態では、加圧ガス貯留容器に貯留される加圧ガスを、加圧ガス輸送管に、その加圧ガス輸送手段内の加圧ガスの圧力に応答して、消火ガス貯留容器内の液化消火ガスを押出す予め定める一定の設定圧力に減圧して放出する減圧弁」は、「加圧ガス貯留容器に貯留される加圧ガスを、加圧ガス輸送管に、消火ガス貯留容器内の液化消火ガスを押出す予め定める一定の設定圧力に減圧して放出する減圧弁」という限りにおいて一致する。 したがって、両者は、 「液化消火ガスが貯留される消火ガス貯留容器であって、起動されることによって、消火ガス貯留容器の容器底部からの消火ガス流路を閉状態から開状態になる第1容器弁と、消火ガス貯留容器の液化消火ガスの液面よりも上方への加圧ガス流路を閉状態から開状態になる第2容器弁とを有する消火ガス貯留容器と、 頂部に開口が形成される圧力容器本体を有し、消火ガス貯留容器内の液化消火ガスを加圧するための加圧ガスが貯留される加圧ガス貯留容器と、 消火ガス貯留容器から放出された液化消火ガスを、第1容器弁を介して消火対象領域に導く消火ガス輸送管と、 加圧ガスを、第2容器弁を介して消火ガス貯留容器に導く加圧ガス輸送管と、 加圧ガス貯留容器に貯留される加圧ガスを、加圧ガス輸送管に、消火ガス貯留容器内の液化消火ガスを押出す予め定める一定の設定圧力に減圧して放出する減圧弁とを備え、 加圧ガス貯留容器には、消火ガス貯留容器内の液化消火ガスを、前記設定圧力で消火のために一定時間、継続して放出させることができる量の加圧ガスが、消火ガス貯留容器内の加圧ガスの圧力よりも高い圧力に圧縮された状態で充填されている消火装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点> 「頂部に開口が形成される圧力容器本体」に関して、本願補正発明においては、「この開口を閉塞する蓋体とを有し」ているのに対して、引用文献1記載の発明においては、そのような蓋体を有しているか否か不明な点(以下、「相違点1」という。)。 「加圧ガス貯留容器に貯留される加圧ガスを、加圧ガス輸送管に、消火ガス貯留容器内の液化消火ガスを押出す予め定める一定の設定圧力に減圧して放出する減圧弁」に関して、本願補正発明においては、「加圧ガス貯留容器の蓋体に一体に設けられ、前記起動されることによって、加圧ガス貯留容器に貯留される加圧ガスを加圧ガス輸送管に放出しない閉状態から、開状態になり、この開状態では、加圧ガス貯留容器に貯留される加圧ガスを、加圧ガス輸送管に、その加圧ガス輸送手段内の加圧ガスの圧力に応答して、消火ガス貯留容器内の液化消火ガスを押出す予め定める一定の設定圧力に減圧して放出する減圧弁」であるのに対して、引用文献1記載の発明においては、「液化FM-200貯留槽2に貯留される加圧された窒素ガスを、窒素ガス供給管5に、液化FM-200貯留槽2内の液化消火ガスを押し出す予め設定する所定圧力に減圧して放出するレギュレータ8」である点(以下、「相違点2」という。)。 (3)相違点1及び2についての判断 そこで、上記各相違点1及び2について、以下に検討する。 ・相違点1について 引用文献1の段落【0036】の「前記加圧用ガス貯留槽としては、例えば、ボンベ、タンク等を挙げることができる。」という記載、段落【0073】の「図1に示すように、本発明の一実施例の消火装置1は、液化消火ガス貯留槽である液化FM-200貯留槽2と、加圧用ガス貯留槽である窒素ガス貯留槽3と、配管4と、窒素ガス供給管5と、液化FM-200流通制御弁6と、一端側窒素ガス流通制御弁7aと、他端側窒素ガス流通制御弁7bと、レギュレータ8とを有する。」という記載、段落【0076】の「前記窒素ガス供給管5においては、その一端5aが前記窒素ガス貯留槽3に連通し、その他端5bが前記液化FM-200貯留槽2に連通するように連結されてなり、前記窒素ガス供給管5の他端側開口部5cは、前記液化FM-200貯留槽2の上面2b近傍に開口するように配置されてなる。」という記載、及び【図1】の記載からみて、窒素ガス貯留槽3は、窒素ガス供給管5と連通する開口が頂部に形成され、そして、ボンベ、タンク等から構成されているので、その開口を閉塞する手段を有していることは明らかである。 ここで、一般的に開口部が形成された容器体において、その開口を閉塞する蓋体を設けることは周知の技術(以下、「周知技術」という。)であるので、引用文献1記載の発明において、周知技術を参酌して、上記相違点1に係る本願補正発明における発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。 ・相違点2について まず、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の発明及び本願補正発明は、いずれも、消火装置という技術分野に属するものである。 次に、本願補正発明と引用文献2記載の発明を対比すると、引用文献2記載の発明における「窒素ボンベ100」は、その構成、機能及び技術的意義からみて、本願補正発明の「加圧ガス貯留容器」に相当し、以下同様に、「作動機構が作動することによって」は「起動されることによって」に、「加圧された窒素ガス」は「加圧ガス」に、「消火元ライン105」は「加圧ガス輸送管」に、「急速開放調圧弁」は「減圧弁」に、それぞれ相当し、引用文献2記載の発明を本願補正発明の用語で表現すると、「加圧ガス貯留容器に設けられ、起動されることによって、加圧ガス貯留容器に貯留される加圧ガスを加圧ガス輸送管に放出しない閉状態から、開状態になり、この開状態では、加圧ガス貯留容器に貯留される加圧ガスを、加圧ガス輸送管に、その加圧ガス輸送手段内の加圧ガスの圧力に応答して、所定圧力以下に減圧して放出する減圧弁」ということできる。そして、引用文献2記載の発明の急速開放調圧弁は、本願補正発明の減圧弁(本願明細書の段落【0040】ないし【0050】並びに【図2】の記載における「急速開放調圧弁43」を参照。)と同様の構成を有するものである。 してみると、引用文献1記載の発明における「レギュレータ8」と引用文献2記載の発明における「急速開放調圧弁」は、共に減圧弁である点で技術分野が共通するので、引用文献1記載の発明における「レギュレータ8」に代えて、引用文献2記載の発明における「急速開放調圧弁」を採用し、上記相違点2に係る本願補正発明における発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。 なお、相違点2に係る本願補正発明における発明特定事項のうち、「加圧ガス貯留容器の蓋体に一体に設け」ること、及び「消火ガス貯留容器内の液化消火ガスを押出す予め定める一定の設定圧力」に減圧することは、上記採用の際において当業者が適宜なし得る設計事項である。 そして、本願補正発明が、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の発明及び周知技術からは予想しえない格別の効果を奏するものとも認められない。 2-3 むすび したがって、本願補正発明は、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないので、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記<補正の却下の決定の結論>のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 以上のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成26年1月24日付け手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに願書に最初に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 <理由>1(1)」のとおりである。 2 引用文献に記載された発明 原査定の拒絶の理由で引用した本願の出願前に日本国内において、頒布された特開2000-107316号公報(以下、上記「第2<理由>2 2-2と同様に「引用文献1」という。)には、上記「第2<理由>2 2-2(1)(a-1)」のとおりの記載があり、該記載及び図面から、上記「第2<理由>2 2-2(1)(a-2)」のとおりのことが分かる。 そして、引用文献1には、上記「第2<理由>2 2-2(1)(a-3)」のとおりの発明(以下、上記「第2<理由>2 2-2(1)(a-3)と同様に「引用文献1記載の発明」という。)が記載されていると認める。 さらに、原査定の拒絶の理由で引用した本願の出願前に日本国内において、頒布された特開平10-339383号公報以下、上記「第2<理由>2 2-2と同様に「引用文献2」という。)には、上記「第2<理由>2 2-2(1)(b-1)」のとおりの記載があり、該記載及び図面から、上記「第2<理由>2 2-2(1)(b-2)」のとおりのことが分かる。 そして、引用文献2には、上記「第2<理由>2 2-2(1)(b-3)」のとおりの発明(以下、上記「第2<理由>2 2-2(1)(b-3)と同様に「引用文献2記載の発明」という。)が記載されていると認める。 3 対比・判断 上記「第2<理由>2 2-1」で検討したように、本願補正発明は本願発明の発明特定事項に限定を加えたものである。そして、本願発明の発明特定事項に限定を加えた本願補正発明が、上記「第2<理由>2 2-2(2)及び(3)」のとおり、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、本願発明は、本願補正発明における「蓋体」に関する限定がないので、上記周知技術を必要としない。 4 まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の発明基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-02-20 |
結審通知日 | 2015-02-24 |
審決日 | 2015-03-09 |
出願番号 | 特願2010-154363(P2010-154363) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A62C)
P 1 8・ 575- Z (A62C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山村 秀政 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
林 茂樹 佐々木 訓 |
発明の名称 | 消火装置 |
代理人 | 西教 圭一郎 |