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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07K
管理番号 1300018
審判番号 不服2012-19133  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-01 
確定日 2015-05-07 
事件の表示 特願2009-46345「グレリン類似体」拒絶査定不服審判事件〔平成21年7月23日出願公開、特開2009-161546〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2003年7月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年7月23日及び同年11月19日(US)米国)を国際出願日とする特願2004-523304号の一部が平成21年2月27日に新たな特許出願とされたものであって、平成21年3月30日に上申書が提出され、平成23年8月25日付けで拒絶理由が通知され、平成24年2月28日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月29日付けで拒絶査定がされ、同年10月1日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、同年11月9日に手続補正書(方式)が提出されたものである。
また、平成26年12月2日付け(同年12月3日発送)で審理終結通知がされた後の同年12月4日に上申書が提出された。

第2 平成24年10月1日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成24年10月1日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1 本件補正
平成24年10月1日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲(平成24年2月28日付けで補正がされている。)の請求項1?35が、化合物に係る発明を記載した請求項である以下の請求項1?10
「【請求項1】(Dap^(3)(オクタンスルホニル))hグレリン(1-28)-NH_(2);
・・・(中略;266個の化合物が列挙されている。)・・・
(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2)
・・・(中略;17個の化合物が列挙されている。)・・・
から選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項2】(Thr^(6))hグレリン(1-28)-NH_(2);
・・・(中略;18個の化合物が列挙されている。)・・・
(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2)
・・・(中略;27個の化合物が列挙されている。)・・・
から選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項3】(Aib^(2),3Pal^(9))hグレリン(1-28)-NH_(2);
・・・(中略;6個の化合物が列挙されている。)・・・
(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2)
・・・(中略;13個の化合物が列挙されている。)・・・
から選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項4】(Aib^(2),3Pal^(9))hグレリン(1-28)-NH_(2);
・・・(中略;5個の化合物が列挙されている。)・・・
(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2)
・・・(中略;13個の化合物が列挙されている。)・・・
から選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項5】・・・から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】以下の式:
(des-Ser^(2))hグレリン(1-28)-NH_(2) または
(des-Gly^(1),des-Ser^(2))hグレリン(1-28)-NH_(2) の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩.
【請求項7】・・・から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】・・・から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】・・・から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】・・・から選択される、請求項1に記載の化合物。」
(審決注:請求項5?10には「(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2)」に関する記載はない。)、方法に係る発明を記載した請求項である請求項11、及び医薬組成物に係る発明を記載した請求項である請求項12?35からなるものであったのを、
「【請求項1】以下の式:
(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2) の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩。」
とする補正である。

2 補正の適否

(1)補正の目的の適否について
補正後の請求項1は、化合物に関する発明であるところ、補正前の請求項1?35のうち化合物に関する発明を記載していたのは請求項1?10のみであるので、補正後の請求項1と補正前の請求項1?10との関係を検討する。
補正後の請求項1において、化合物は、(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2) 、またはその医薬的に許容可能な塩である。
一方、補正前の請求項1?4においては、列挙された複数の化合物の中に、(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2) はあるが、(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2) の医薬的に許容可能な塩は、ない。補正前の請求項5?10においては、(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2) も、その医薬的に許容可能な塩も、ない。また、補正前の請求項1の「・・・から選択される、請求項3に記載の化合物」の記載、同じく請求項2の「・・・から選択される、請求項4に記載の化合物」の記載、同じく請求項3の「・・・から選択される、請求項5に記載の化合物」の記載及び同じく請求項4の「・・・から選択される、請求項6に記載の化合物」の記載を参酌しても、請求項1?10に(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2) の医薬的に許容可能な塩が記載されていたとはいえない。
その結果、本件補正により、補正前の請求項1?10には記載されていなかった(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2) の医薬的に許容可能な塩が、補正後の請求項1に記載されることになる。
以上によれば、補正前の請求項1?35を補正後の請求項1とする補正は、特許請求の範囲に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではないから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。また、同第1号に掲げる請求項の削除、同第3号に掲げる誤記の訂正、及び同第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明の、何れを目的とするものにも該当しない。
なお、補正前の請求項11に係る発明は、化合物を同定するための方法に関する発明であり、補正前の請求項12?35に係る発明は、医薬組成物に関する発明であるから、補正後の請求項1と補正前の請求項10?35との関係を検討しても、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号?第4号の何れを目的とするものにも該当しない。

(2)独立特許要件について
補正前の請求項1?35を補正後の請求項1とする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しないことは、上記(1)に示したとおりであるが、仮に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとした場合でも、本件補正が適法であるためには、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
そこで、念のため、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて、以下に検討する。

ア 刊行物
刊行物1:国際公開第01/07475号(原審における引用文献1)
刊行物2:国際公開第00/34332号(原審における引用文献3)
刊行物2は、本件優先日における技術水準を示す文献である。

イ 刊行物の記載事項

(ア)刊行物1
(1a)「1.細胞内のカルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチドの少なくともひとつのアミノ酸が、修飾アミノ酸及び/又は非アミノ酸化合物により置換されていることを特徴とするペプチド系化合物又はその薬学的に許容される塩。
・・・・・・・・・・・・・・・
5.細胞内のカルシウムイオン濃度を上昇させる活性及び成長ホルモンの分泌を誘導する活性を有するペプチドの(a)構成アミノ酸が修飾されているか又はされていない、かつ(b)少なくともひとつのアミノ酸が非アミノ酸化合物により置換されているか又はされていないペプチド系化合物又はその薬学的に許容される塩。
・・・・・・・・・・・・・・・
10.アミノ末端の1番目から4番目に至るまでのアミノ酸配列に相当する部分が、下記の式で表される請求の範囲第1又は5項記載のペプチド系化合物又はその薬学的に許容される塩。
A-B-C-D-
A;アミノ酸、非アミノ酸化合物、又はなし、
B;アミノ酸、非アミノ酸化合物、又はなし、
(ただし、A+Bの分子鎖長がジペプチド相当長ある。)
C又はD;同一であっても異なっていてもよく、(a)修飾されたアミノ酸、(b)疎水性側鎖を有するアミノ酸、又は(c)塩基性側鎖を有するアミノ酸、を表す。
11.Cが、アミノ酸のα炭素に、(a)炭素数1以上のアルキレン基を介して又は介さず、エステル、エーテル、チオエーテル、アミドまたはジスルフィド結合を介して炭素数が1若しくは複数の飽和若しくは不飽和アルキル鎖、又は(b)炭素数1以上の飽和若しくは不飽和アルキル鎖を導入した修飾アミノ酸であり、Dが疎水性側鎖を有するアミノ酸であることを特徴とする請求の範囲第10項に記載のペプチド系化合物又はその薬学的に許容される塩。
12.配列番号2、3、9、10、11、16、17、22、25、26、27、28、29、30および31記載のアミノ酸配列からなる群から選択されるひとつのアミノ酸配列において、アミノ末端の1番目から4番目に至るまでのアミノ酸配列に相当する部分が請求の範囲第10または11項に記載のペプチド系化合物であるペプチド系化合物又はその薬学的に許容される塩。
13.修飾されたアミノ酸がアミノ末端から3番目のアミノ酸である請求の範囲第1、2、3、5、7または8項記載のペプチド系化合物又はその薬学的に許容される塩。」(160?162頁、請求の範囲第1、5、10?13項)
(1b)「<210>3
<211>28
<212>PRT
<213>Homo sapiens
<223>Amino acid sequence for human endogenous peptides of growth hormone secretagogue
<400)3
Gly Ser Ser Phe Leu Ser Pro Glu His Gln Arg Val Gln Gln Arg Lys
1 5 10 15
Glu Ser Lys Lys Pro Pro Ala Lys Leu Gln Pro Arg
20 25
」(配列表1/25?2/25頁、配列番号3)
(1c)「さらに又、本発明の好ましい実施の態様は下記一般式(2)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩である。
X-AA1-AA2-AA3-Y (2)
〔式中、Xは、アミノ末端アミノ酸のアミノ基の水素原子に相当する部分で、H又は炭素数が1又は複数の飽和又は不飽和アルキル又はアシル基を表す。Yはカルボキシル末端アミノ酸のα-カルボキシル基の水酸基に相当する部分で、OH、OZ又はNR6R7(Zは薬理学的に許容し得る陽イオン又は低級の分枝鎖もしくは非分枝鎖アルキル基を表し、R6 又はR7 はH又は低級の分枝鎖もしくは非分枝鎖アルキル基を表し、R6 とR7 とは同一又は異なっていてもよい。)を表す。〕
・・・・・・・・・・・・・・・
次に、本願発明に係るペプチド化合物の好ましい態様を以下に示す。
(1)AA1の好ましい態様;(ア)アミノ酸又はペプチド。例えば、Ser、Gly-Ser又は-NH-(CH_(2))_(3)CH(CH_(2)OH)CO-(2アミノ酸残基間のペプチド結合部分が-(CH_(2))_(2)-である場合)等が挙げられる。・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
(2)AA2の好ましい態様;・・・
特に・・・また(b)側鎖にアシル基、アルキル基、アルケニル基あるいはアラルキル基で修飾が可能な官能基を有する、セリン、ホモセリン、トレオニン、システイン、ホモシステイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アジピン酸、リジン、オルニチンなど、およびこれらのN-メチルアミノ酸が好ましい。
これら(b)のアミノ酸側鎖に、エステル、アミド、ジスルフィド、エーテル、チオエーテル、チオエステル,カルバミドまたはチオカルバミド結合を介し、アシル基、アルキル基、アルケニル基あるいはアラルキル基が結合する。また、アミノ酸のα炭素にアルキル、アラルキル基が結合してもよい。
(3)AA3の好ましい態様;アミノ酸又はペプチド。例えば、Phe又は配列番号2又は3記載のアミノ酸配列においてアミノ末端から4番目のPheから28番目のArgまでのアミノ酸配列を有するペプチド若しくは当該配列のカルボキシル末端側のアミノ酸が、配列番号2又は3記載のアミノ酸配列においてアミノ末端から5番目のLeuまで1つずつ欠失したペプチド。」(58頁2?11行、61頁4?6行、61頁15行?62頁13行)
(1d)「以下にペプチドを構成するアミノ酸が側鎖に水酸基、メルカプト基、イミノ基又はアミノ基を有する場合の当該側鎖の好ましい例を示す。なお、以下のR8 は炭素数1以上の飽和又は不飽和アルキル鎖を示す。かかるアルキル鎖はXで示される上記のアルキル鎖と同意義でよい。
ア)Serの側鎖;-CH_(2)-O-CO-R8 又は-CH_(2)-O-R8、
イ)homoSerの側鎖;-CH_(2)-CH_(2)-O-CO-R8 又は-CH_(2)-CH_(2)-O-R8、
ウ)Cysの側鎖;-CH_(2)-S-CO-R8 又は-CH_(2)-S-R8、
エ)homoCysの側鎖;-CH_(2)-CH_(2)-S-CO-R8 又は-CH_(2)-CH_(2)-S-R8、
オ)Aspの側鎖;-CH_(2)-COO-R8 又は-CH_(2)-CO-NH-R8、
カ)Gluの側鎖;-CH_(2)-CH_(2)-COO-R8 又は-CH_(2)-CH_(2)-CO-NH-R8、
キ)Lysの側鎖;-(CH_(2))_(4)-NH-CO-R8、
ク)アミノアジピン酸の側鎖;-CH_(2)-CH_(2)-CH_(2)-COO-R8 又は-CH_(2)-CH_(2)-CH_(2)-CO-NH-R8、
ケ)オルニチンの側鎖;-(CH_(2))_(3)-NH-CO-R8
コ)側鎖がアルキル鎖のアミノ酸であるAla、Val、Leu、ホモロイシン、Ile、ホモイソロイシン、S-メチルステイン、メチオニン、エチオニン、又はブチオニン等についても同様にアルキル基が上記のように式(2)で示される修飾されたアルキル基であってよい。」(64頁19行?65頁10行)
(1e)「さらに又、本発明の好ましい実施の態様は下記のペプチド系化合物である。
なお、グレリン誘導体とは天然型グレリンの化学構造を一部改変したペプチド系化合物のことをいい、短鎖グレリンとは27ないし28アミノ酸からなる天然型グレリンの一部のアミノ酸が欠失して、27ないし28よりも少ないアミノ酸からなるペプチドのことをいう。また、n位のアミノ酸残基とはアミノ末端からn番目のアミノ酸残基のことを示す。
グレリン、あるいはその短鎖グレリン誘導体のアミノ末端アミノ酸は、該アミノ酸のαアミノ基が保護されていなければ、いずれのアミノ酸(天然型グレリンではアミノ末端アミノ酸はグリシン)でもよく、またD-体、L-体のいずれでもよいが、好ましくは、アラニン、バリン、アミノイソブタン酸などが好適である。
2位残基は、いずれのアミノ酸(天然型グレリンではセリン)でもよいが、好ましく小さな側鎖を有するアラニン、セリン、ヒスチジン、ノルバリンあるいは非アミノ酸化合物等が好適である。
・・・・・・・・・・・・・・・
3位と4位に選ばれるアミノ酸残基は、側鎖にアシル基(アルカニル基、アルケノニル基もしくはアリールアルカノイル基など)、アルキル基、またはアラルキル基で修飾が可能な官能基を有する、セリン、ホモセリン、トレオニン、システイン、ホモシステイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アジピン酸、リジン、オルニチンなどが好適である。
・・・・・・・・・・・・・・・
5位以降のアミノ酸配列は、ヒトグレリン、ラットグレリンの5位ロイシンを基点に28位まで、いずれの長さの配列が4位のアミノ酸に付加してもよい。」(65頁16行?66頁4行、67頁6?10行、69頁1?3行)
(1f)「実施例3.グレリンの構造解析
・・・・・・・・・・・・・・・
また、ヒトグレリンをヒト胃抽出物から精製し、その構造が配列番号3に記載したアミノ酸配列を有し、アミノ末端から3番目のセリン側鎖の水酸基がn-オクタン酸(カプリル酸)でアシル化された構造であることがわかった(第4a図)。」(84頁6行、85頁16?19行)
(1g)「実施例10.各種グレリン誘導体化合物の合成
・・・・・・・・・・・・・・・
(10)3位側鎖にアミド、逆方向のエステルを有する誘導体の合成例
化合物55.[Asp^(3)(NH-Heptyl)]-hGhrelin;
GSD(NH-C_(7)H_(15))FLSPEHQRVQQRKESKKPPAKLQPR
・・・目的画分を分取後、凍結乾燥し、120mgの目的物を得た。
・・・・・・・・・・・・・・・
化合物55.[Asp^(3)(NH-Heptyl)]-hGhrelin(1-28)
ESI-MS 3370.0(理論値3369.9),アミノ酸酸組成比:Asx;0.88(1),Ser;2.95(3),Glx;5.97(6),Gly;1.21(1),Ala;1.03(1),Val;0.98(1),Leu;2,Phe;1.00(1),Lys;3.94(4),His;0.92(1),Arg;2.91(3),Pro;3.99(4)」(96頁2行、116頁14行?117頁15行、119頁3?7行)
(1h)「実施例11 グレリン誘導体ペプチド系化合物の活性比較
・・・・・・・・・・・・・・・
(4)アミノ末端グレリンと2位セリン残基
活性が認められたグレリン(1-7)アミド(EC_(50)=2.6nM)〔第8表 化合物29〕、あるいはグレリン(1-9)アミド(EC_(50)=5.4nM)〔第4表 化合物3〕をもとに、アミノ末端グレリンと2位セリンの活性への影響を調べた。
結果を第10表にまとめた。

・・・・・・・・・・・・・・・
また2位セリン残基はアミノ末端アミノ基を3位オクタノイル基から一定の距離を保つスペーサー的な役割を果たしていると考えられるため、比較的嵩の小さい側鎖を有するアミノ酸や非アミノ酸化合物で置き換えてもよい。即ち、グレリン分子においてアミノ末端アミノ基を基点にオクタノイル基の位置が規定されており、この位置関係がグレリン活性構造の一部を形成している。
すなわち、2位アミノ酸側鎖は嵩高い構造よりは、むしろセリン、アラニン、ノルバリンのように、側鎖が比較的小さく、近隣残基の自由度を束縛しないアミノ酸残基が好ましい。加えて、N^(α)-アミノペンタノイル-グレリン(3-7)アミドのCa上昇活性が、ほぼ保持された(EC_(50)=3.4nM)ことから、2位セリンは非アミノ酸化合物に置換可能である。
・・・・・・・・・・・・・・・
(6)3位側鎖の結合様式
3位の側鎖鎖長がグレリン鎖長(-CH_(2)-O-CO-C_(7)H_(15))と同じになるように、本来のエステル結合を、逆方向のエステル(化合物番号54)、アミド(化合物番号55,56)、ジスルフィド(化合物番号57)、メチレン(化合物番号58)に置換した誘導体を作成した。あわせて、β炭素上に立体障害をもつエステル誘導体(化合物番号59、60)、メチレンが3ユニット分延びた形のアミド誘導体(化合物番号61)を作成した。結果を第12表にまとめた。

3位側鎖をすべてメチレン基に置きかえた化合物58の活性が最も強く、EC_(50) 値は1nM以下であった。その他、結合の種類によって活性の高低は多少みられるものの、3位アミノ酸側鎖に結合様式は活性に大きな影響を与えないことが確認された。」(121頁26行、131頁17行?132頁6行、133頁23行?134頁8行、135頁4行?136頁7行)
(1i)「

」(図面の4/9頁、第4図a)

(イ)刊行物2
(2a)「1.式(I)の化合物
(R^(2)R^(3))-A^(7)-A^(8)-A^(9)-A^(10)-A^(11)-A^(12)-A^(13)-A^(14)-A^(15)-A^(16)-A^(17)-A^(18)-A^(19)-A^(20)-A^(21)-A^(22)-A^(23)-A^(24)-A^(25)-A^(26)-A^(27)-A^(28)-A^(29)-A^(30)-A^(31)-A^(32)-A^(33)-A^(34)-A^(35)-A^(36)-A^(37)-R^(1),
(I)
[式中:
A^(7) はL-His、Ura、Paa、Pta、D-His、Tyr、3-Pal、4-Pal、Hppa、Tma-His、Ampであるか又は削除され(但し、A^(7) がUra、Paa、Pta又はHppaである場合、R^(2) 及びR^(3) は削除される);
A^(8) はAla、D-Ala、Aib、Acc、N-Me-Ala、N-Me-D-Ala、Arg又はN-Me-Glyであり;
A^(9) はGlu、N-Me-Glu、N-Me-Asp又はAspであり;
A^(10) はGly、Acc、Ala、D-Ala、Phe又はAibであり;
A^(11) はThr又はSerであり;
A^(12) はPhe、Acc、Aic、Aib、3-Pal、4-Pal、β-Nal、Cha、Trp又はX^(1)-Pheであり;
A^(13) はThr又はSerであり;
A^(14) はSer、Thr、Ala又はAibであり;
A^(15) はAsp、Ala、D-Asp又はGluであり;
A^(16) はVal、D-Val、Acc、Aib、Leu、Ile、Tle、Nle、Abu、Ala、D-Ala、Tba又はChaであり;
A^(17) はSer、Ala、D-Ala、Aib、Acc又はThrであり;
A^(18) はSer、Ala、D-Ala、Aib、Acc又はThrであり;
A^(19) はTyr、D-Tyr、Cha、Phe、3-Pal、4-Pal、Acc、β-Nal、Amp又はX^(1)-Pheであり;
A^(20) はLeu、Ala、Acc、Aib、Nle、Ile、Cha、Tle、Val、Phe又はX^(1)-Pheであり;
A^(21) はGlu、Ala又はAspであり;
A^(22) はGly、Acc、Ala、D-Ala、β-Ala又はAibであり;
A^(23) はGln、Asp、Ala、D-Ala、Aib、Acc、Asn又はGluであり;
A^(24) はAla、Aib、Val、Abu、Tle又はAccであり;
A^(25) はAla、Aib、Val、Abu、Tle、Acc、Lys、Arg、hArg、Orn、HN-CH((CH_(2))_(n)-N(R^(10)R^(11)))-C(O)又はHN-CH((CH_(2))_(e)-X^(3))-C(O)であり;
A^(26) はLys、Ala、3-Pal、4-Pal、Arg、hArg、Orn、Amp、HN-CH((CH_(2))_(n)-N(R^(10)R^(11)))-C(O)又はHN-CH((CH_(2))_(e)-X^(3))-C(O)であり;
A^(27) はGlu、Ala、D-Ala又はAspであり;
A^(28) はPhe、Ala、Pal、β-Nal、X^(1)-Phe、Aic、Acc、Aib、Cha又はTrpであり;
A^(29) はIle、Acc、Aib、Leu、Nle、Cha、Tle、Val、Abu、Ala、Tba又はPheであり;
A^(30) はAla、Aib、Accであるか又は削除され;
A^(31) はTrp、Ala、β-Nal、3-Pal、4-Pal、Phe、Acc、Aib、Cha、Ampであるか又は削除され;
A^(32) はLeu、Ala、Acc、Aib、Nle、Ile、Cha、Tle、Phe、X1-Phe、Alaであるか又は削除され;
A^(33) はVal、Acc、Aib、Leu、Ile、Tle、Nle、Cha、Ala、Phe、Abu、X^(1)-Phe、Tba、Gabaであるか又は削除され;
A^(34) はLys、Arg、hArg、Orn、Amp、Gaba、HN-CH ((CH_(2))_(n)-N(R^(10)R^(11)))-C(O)、HN-CH((CH_(2))_(e)-X^(3))-C(O)であるか又は削除され;
A^(35) はGlyであるか又は削除され;
A^(36) はL-又はD-Arg、D-又はL-Lys、D-又はL-hArg、D-又はL-Orn、Amp、HN-CH((CH_(2))_(n)-N(R^(10)R^(11)))-C(O)、HN-CH((CH_(2))_(e)-X^(3))-C(O)であるか又は削除され;
A^(37) はGlyであるか又は削除され;
・・・・・・・・・・・・・・・」(29?32頁、請求の範囲の請求項1)
(2b)「発明の背景
本発明は、グルカゴン様ペプチド-1のペプチド類似体、その製剤的に許容される塩、哺乳動物を治療するためにそのような類似体を使用する方法、及びそのために有用な、前記類似体を含んでなる医薬組成物に向けられている。」(1頁5?9行)

ウ 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、請求の範囲第1項、第5項、第10項、第11項又は第12項に記載された発明を具体化したものとして、その実施例10に、化合物55として、[Asp^(3)(NH-Heptyl)]-hGhrelin(1-28)を合成したことが記載されている(摘示(1a)?(1g))。したがって、刊行物1には、ここで合成された
「[Asp^(3)(NH-Heptyl)]-hGhrelin(1-28)」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているということができる。

エ 対比
本願補正発明である「(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2) の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩」と、引用発明である「[Asp^(3)(NH-Heptyl)]-hGhrelin(1-28)」とを、対比する。
本願補正発明の「(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2)」は、この出願の明細書(以下「本願明細書」という。補正はされていない。)によれば、28アミノ酸からなる「hグレリン(1-28)」(審決注:ヒトグレリン)において、
2位のアミノ酸が「Aib」すなわちα-アミノイソ酪酸(段落【0048】)(審決注:アミノイソブタン酸ともいう。)に置換され、
3位のアミノ酸が「Glu(NH-ヘキシル)」すなわちグルタミン酸の側鎖である-CH_(2)CH_(2)COOHがへキシルアミンによりアミド化された-CH_(2)CH_(2)CONH(CH_(2))_(5)CH_(3) の構造を有する以下のもの(段落【0065】?【0066】)


に置換され(段落【0055】【0048】)、
C-末端がアミド化されたものである(段落【0055】)。
一方、引用発明の「[Asp^(3)(NH-Heptyl)]-hGhrelin(1-28)」は、28アミノ酸からなる「hGhrelin(1-28)」(審決注:ヒトグレリン)において、
3位のアミノ酸が「Asp(NH-Heptyl)」すなわちアスパラギン酸の側鎖である-CH_(2)COOHがへプチルアミンによりアミド化された-CH_(2)CONH(CH_(2))_(6)CH_(3) の構造を有するものに置換されたものである。
これらは、何れも、ヒトグレリンの類似体であるといえる。
そうすると、本願補正発明と引用発明とは、
「hグレリン(1-28)(ヒトグレリン)において、3位のアミノ酸が脂肪酸のアルキルアミド側鎖を有するアミノ酸に置換されたグレリン類似体」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)
(i)3位のアミノ酸が、本願補正発明においては、Glu(NH-ヘキシル)に置換されているのに対し、引用発明においては、Asp(NH-Heptyl)に置換され、
(ii)2位のアミノ酸が、本願補正発明においては、Aibに置換されているのに対し、引用発明においては、置換がされてなく、
(iii)C-末端が、本願補正発明においては、アミド化されているのに対し、引用発明においては、アミド化されていない点

オ 検討

(ア)相違点について

a (i)の点について
まず、天然型のヒトグレリンは、配列番号3に記載したアミノ酸配列(摘示(1b))
Gly Ser Ser Phe Leu Ser Pro Glu His Gln Arg Val Gln Gln Arg Lys
1 5 10 15
Glu Ser Lys Lys Pro Pro Ala Lys Leu Gln Pro Arg
20 25
を有し、その3位のセリン側鎖の水酸基がn-オクタン酸でアシル化された構造である(摘示(1f)(1i))。セリンの側鎖は-CH_(2)OHであるから、3位のアミノ酸の側鎖は、-CH_(2)OCO(CH_(2))_(6)CH_(3) である。
刊行物1の摘示(1e)には、グレリンにおける3位のアミノ酸として、側鎖に修飾可能な官能基を有するアミノ酸が好適であることが記載されており、そこには、アスパラギン酸(Asp)と共に、グルタミン酸(Glu)が挙げられている。摘示(1c)も、配列番号3はヒトグレリンのアミノ酸配列であるから、同旨である。また、刊行物1の摘示(1d)には、アスパラギン酸の側鎖の修飾例の-CH_(2)-CO-NH-R8 と共に、グルタミン酸の側鎖の修飾例として、-CH_(2)-CH_(2)-CO-NH-R8 が記載されており、R8 は、炭素数1以上の飽和アルキル鎖であることが記載されている。さらに、摘示(1h)には、3位のアミノ酸側鎖鎖長をグレリン鎖長(-CH_(2)OCOC_(7)H_(15))と同じになるように誘導体を作成することが記載されている。
このような記載に接した当業者であれば、刊行物1に記載された化合物において、3位のアミノ酸として、アスパラギン酸がNH-ヘプチル基で修飾された「Asp(NH-Heptyl)」に代えて、側鎖が修飾可能であるアミノ酸としてグルタミン酸を選択し、その際、側鎖鎖長をグレリン鎖長に合わせるために、アミド基(-CONHR)のRの炭素数を6と設定すること、すなわち、「Glu(NH-ヘキシル)」とすることは、容易に想到し得ることである。

b (ii)の点について
刊行物1の摘示(1e)には、2位のアミノ酸は、いずれのアミノ酸(天然型グレリンではセリン)でもよいが、好ましく小さな側鎖を有するアラニン、セリン、ヒスチジン、ノルバリンであると記載されている。摘示(1h)には、2位のアミノ酸は、1位のアミノ基と3位の側鎖の距離を保つためのスペーサーとしての役割を果たしているものであって、嵩の小さい側鎖のアミノ酸で置換できること、セリン、アラニン、ノルバリンのように、側鎖が比較的小さく、近隣残基の自由度を束縛しないアミノ酸残基が好ましいことが記載されている。セリンは側鎖が-CH_(2)OHであり、アラニンは側鎖が-CH_(3) であり、ノルバリンは側鎖が-CH_(2)CH_(2)CH_(3) である。
刊行物1には、Aibは2位のアミノ酸として例示されていないが、Aib(アミノイソブタン酸)は、側鎖に2つのメチル基-CH_(3) を持つものであって、側鎖の小さいアミノ酸として周知の物質であり、アミノ酸置換によりペプチドを改変する際に、比較的嵩の小さい側鎖を有するアミノ酸としてセリンやアラニン等と同様にAibでアミノ酸置換を行うことは、本願優先日前においてよく行われていることである(刊行物2の摘示(2a)(2b)参照)。刊行物1の摘示(1e)にも、1位のアミノ酸についてではあるが、アラニン、バリン(側鎖は-CH(CH_(3))_(2))と並んでアミノイソブタン酸(Aib)が挙げられている。
してみると、引用発明の化合物において、2位のアミノ酸であるセリンを、側鎖が小さいアミノ酸であって、かつ、アミノ酸置換においてよく用いられるAibに置換することは、当業者が容易に想到し得ることである。

c (iii)の点について
刊行物1の摘示(1c)には、刊行物1に記載された発明の好ましい実施の態様に関し、一般式(2)
X-AA1-AA2-AA3-Y (2)
で表される化合物が好ましいことが記載され、上記式の、X、AA1、AA2、AA3、Yのそれぞれについて説明されており、Yについては、カルボキシル末端アミノ酸のα-水酸基に相当する部分で、OH、OZ又はNR6R7 であり、R6 とR7 はH又は低級アルキルであると記載されている。摘示(1h)には、28アミノ酸を有する全長グレリンではないものの、C-末端がアミド化されたグレリン誘導体も記載されている。
してみると、引用発明の化合物において、C-末端を、アミド化されたものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

d 以上によれば、引用発明において、相違点に係る(i)、(ii)、(iii)の本願補正発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(イ)効果について
本願明細書には、本願補正発明の効果について、具体的な実験データが示されておらず、本願補正発明の化合物の活性や安定性が改善されているのか、またそれがどの程度であるかが不明であるから、刊行物1に記載された化合物と比較して格別な効果を奏するものであるとすることはできない。

(ウ)なお、請求人は、意見書において実験成績証明書と称して、表1に46個の化合物の「GSH受容体に対して結合する際のKi値」及び「SEM」を示し、審判請求書において、本願補正発明の化合物(意見書の表1の最後の化合物)は顕著な活性を有すると主張している。また、審判請求書においても実験成績証明書と称して(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2) の「細胞内カルシウム濃度」をグラフに示している。
しかし、本願明細書には、何百という化合物が列挙されているにもかかわらず活性データは一つも記載がないし、特に(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2) が優れている旨の記載もない。出願当初の特許請求の範囲において(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2) を含む一群の化合物群が記載されている請求項4、5、6、7及び対応する本願明細書の段落【0014】、【0015】、【0016】、【0017】においても、(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2) は、それぞれ373個、61個、23個、22個の化合物の一つとして記載されているにすぎない。
進歩性の判断において、発明の構成が想到容易であるにもかかわらず進歩性があることを推認させる事情として、当業者の予測を超える効果を奏するかを検討することは行われるが、本件のように、本願明細書に記載されていない効果を参酌することはできない。本件のように、多数の化合物を化学構造のみによりデータを示さず列挙しておいて、後に、ある特定の化合物について、データを示して顕著な効果を奏するから進歩性があると主張することは、先願主義を採用している特許法の趣旨にも沿わない。
そして、仮に、請求人が示した表1を参酌しても、出願当初の請求項7及び本願明細書の段落【0017】に記載された22の化合物に該当する化合物であっても活性が(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2) の1/50程度というように低いものも含まれていて、何れの化合物も(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2) と同等の活性を有するとはいえないから、上記請求項7及び段落【0017】にはこの出願の発明の好ましい態様を記載されていると理解した場合でも、この出願の出願当初の明細書に、化合物が(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2) であることに基づいて「(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2) 」の発明が当業者の予測を超える効果を奏するものであることが記載されていたとはいえない。

カ まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

3 補正の却下の決定のむすび
したがって、請求項1についての補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであるから、その余について検討するまでもなく、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明
平成24年10月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、この出願の発明は、平成24年2月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?35に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1?請求項4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明4」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】(Dap^(3)(オクタンスルホニル))hグレリン(1-28)-NH_(2);
・・・(中略;266個の化合物が列挙されている。)・・・
(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2)
・・・(中略;17個の化合物が列挙されている。)・・・
から選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項2】(Thr^(6))hグレリン(1-28)-NH_(2);
・・・(中略;18個の化合物が列挙されている。)・・・
(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2)
・・・(中略;27個の化合物が列挙されている。)・・・
から選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項3】(Aib^(2),3Pal^(9))hグレリン(1-28)-NH_(2);
・・・(中略;6個の化合物が列挙されている。)・・・
(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2)
・・・(中略;13個の化合物が列挙されている。)・・・
から選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項4】(Aib^(2),3Pal^(9))hグレリン(1-28)-NH_(2);
・・・(中略;5個の化合物が列挙されている。)・・・
(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2)
・・・(中略;13個の化合物が列挙されている。)・・・
から選択される、請求項6に記載の化合物。」

第4 原査定の理由
原査定の拒絶の理由は、平成23年8月25日付けの拒絶理由通知における理由2であり、概略、この出願の請求項1-38に係る発明は、その出願前に頒布された引用文献1-3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。その引用文献1は、国際公開2001/07475号(上記第2の2(2)アの刊行物1と同じ。以下「刊行物1」という。)であり、本願発明1?4は、拒絶理由で言及された請求項4?7に係る発明において列挙された化合物の一部が削除されたものに対応する。

第5 当審の判断

1 刊行物、刊行物の記載事項、刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1、その記載事項並びに刊行物1に記載された発明は、上記第2の2(2)ア、イ及びウに記載したとおりである。

2 対比・判断
本願発明1?4は、上記第2の2(2)で検討した「(Aib^(2),Glu^(3)(NH-ヘキシル))hグレリン(1-28)-NH_(2) 」を含むから、本願補正発明について上記第2の2(2)エ、オ、カで検討したのと同様に、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 まとめ
したがって、本願発明1?4は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第6 審理再開の申立てについて
平成26年12月2日付け(同年12月3日発送)で審理終結通知がされた後の同年12月4日に提出された上申書において、請求人は、審理再開及び技術説明の機会を求めている。
しかし、請求人が求めているのは、審判請求書を補正する手続補正書(方式)(平成24年11月9日提出)に添付した実験成績証明書の内容を説明したいということであり、重大な証拠の取調べが未済であったとか審理終結通知と入れ違いに請求の理由の補充や明細書の補正がなされていたなどの、審理再開が認められる場合には該当せず、このような、技術説明の機会を認めるための審理再開は、審理再開の制度の予定していないところである。
よって、審理の再開が必要と認めるべき理由は、存在しない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1?4は、特許を受けることができないものであるから、その余について検討するまでもなく、この出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-02 
結審通知日 2014-12-03 
審決日 2014-12-16 
出願番号 特願2009-46345(P2009-46345)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C07K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森井 文緒  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 中田 とし子
齊藤 真由美
発明の名称 グレリン類似体  
代理人 星野 修  
代理人 江尻 ひろ子  
代理人 富田 博行  
代理人 小林 泰  
代理人 小野 新次郎  

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