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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09K |
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管理番号 | 1300019 |
審判番号 | 不服2012-26151 |
総通号数 | 186 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-12-28 |
確定日 | 2015-04-23 |
事件の表示 | 特願2008-244190「ミクロ顔料混合物」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月23日出願公開、特開2009- 84572〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この出願は、平成15年1月23日(パリ条約による優先権主張 平成14年1月31日 欧州特許庁(EP))を国際出願日とする出願(特願2003-563509号)の一部を平成20年9月24日に新たな特許出願としたものであって、平成23年5月13日付けで拒絶理由が通知され、同年11月16日に意見書及び手続補正書が提出され、平成24年8月28日付けで拒絶査定され、同年12月28日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、その後、当審において平成25年6月14日付けで審尋がされ、同年9月18日に回答書が提出されたものである。 第2 平成24年12月28日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年12月28日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成24年12月28日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1である 「【請求項1】 (a)式: 【化1】 〔式中、R_(1)は、C_(1)?C_(12)アルキル;又はフェニル置換C_(1)?C_(12)アルキルである〕 の微粉化UV広域吸収体1?60重量%と、 (b)疎水性表面を付与するために、金属セッケンで被覆された油分散化二酸化チタン1?60重量% とを含む、UV-吸収体混合物。」 を、 「【請求項1】 (a)式: 【化1】 〔式中、R_(1)は、C_(1)?C_(12)アルキル;又はフェニル置換C_(1)?C_(12)アルキルである〕 の微粉化UV広域吸収体1?60重量%と、 (b)平均粒径が10nm?150nmの粒状二酸化チタンを含み、TiO_(2)の量は、分散物が40重量%を超える固体含量を有するような量であり、オイルが、植物油、脂肪酸グリセリド、脂肪酸エステル又は脂肪族アルコールから選択される、オイル分散物1?60重量% とを含む、UV-吸収体混合物。」 とする補正(以下、「補正1」という。)を含む。 2.補正の目的 補正1は、請求項1の「(b)」において、補正前の「二酸化チタン」が、「疎水性表面を付与するために、金属セッケンで被覆された」ものであったものを、当該記載を削除して、「金属セッケンで被覆され」ないものにまで拡張するとともに、「平均粒径が10nm?150nmの粒状」であり、また、「分散物が40重量%を超える固体含量を有するような量であり、オイルが、植物油、脂肪酸グリセリド、脂肪酸エステル又は脂肪族アルコールから選択される、オイル分散物」であるという、金属セッケンによる被覆とは関係のない事項について限定するものであるから、本件補正における補正1は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定された「特許請求の範囲の減縮」に該当するものではない。 また、この補正が同法同条同項第1号に規定された請求項の削除、同第3号に規定された誤記の訂正、同第4号に規定された明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないことは明らかである。 3.むすび したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 平成24年12月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、この出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年11月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 第4 原審の拒絶の理由 拒絶査定における拒絶の理由(平成23年5月13日付けの拒絶理由通知の「理由」「2.」)の概要は、本願の請求項1?9に係る発明は、その出願前に頒布された引用文献1?5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 また、引用文献として、以下の文献が挙げられている。 2.特開2001-151657号公報 第5 当審の判断 当審は、本願発明は、上記拒絶理由に記載した理由によって拒絶をすべきものと判断する。 以下、詳述する。 1.刊行物及び刊行物の記載事項 (1)刊行物 1.特表2001-151657号公報(拒絶理由通知における「引用文献2」。) 2.国際公開第00/02529号(拒絶査定において引用された文献。) (2)刊行物に記載された事項 ア.刊行物1について 上記刊行物1には、以下の事項が記載されている。 1a:「【特許請求の範囲】 【請求項1】(a)少なくとも1つの水性相と(b)少なくとも1つの脂肪相; (c)エマルションに不溶の少なくとも1種の有機UV遮蔽剤を、平均粒子径が0.01?2μmの範囲で変わる微粒化された形態で含む、UV線を遮蔽することができる少なくとも1種の光保護系; (d)オキシアルキレン化基を含んでなる少なくとも1種の非遮蔽オルガノ修飾シリコーン、を含有し、上記不溶性有機UV遮蔽剤が、微粒化された2,4,6-トリス[p-(2’-エチルヘキシル-1’-オキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジンと、次の構造; ・・・ を有する化合物とは異なることを特徴とする化粧品用又は皮膚用の油中水型エマルション。」 1b:「【0031】本発明に係るベンゾトリアゾールタイプの有機UV遮蔽剤としては、次の構造: [上式中、T_(12)及びT_(13)は、同一でも異なっていてもよく、C_(1)-C_(4)アルキル、C_(5)-C_(12)シクロアルキル又はアリール残基から選ばれる一又は複数の基で置換されていてもよいC_(1)-C_(18)アルキル基を示す]を有するメチレンビス(ヒドロキシフェニル-ベンゾトリアゾール)誘導体を挙げることができる。これらの化合物はそれ自体既知であり、米国特許第5237071号、同第5166355号、英国特許出願公開第2303549号、DE19726184号及び欧州特許出願公開第893119号(本明細書の一部を構成する)に記載されている。 【0032】上記の式(8)において、C_(1)-C_(18)アルキル基は、直鎖状又は分枝状であり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、tert-オクチル、n-アミル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、イソ-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、テトラデシル、ヘキシルデシル又はオクタデシルであり;C_(5)-C_(12)シクロアルキルは例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルであり;アリール基は例えばフェニル又はベンジルである。 【0033】式(8)の化合物としては、次の構造を有するものが特に好適である: 2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]なる命名の化合物(a)はフェアマウントケミカル社からミキシム(MIXXIM)BB/100の名称で純粋な形態で、また、チバガイギー社からティノソーブ(TINOSORB)Mなる名称で微粒化された形態で販売されている。2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(メチル)フェノール]なる命名の化合物(c)は、フェアマウントケミカル社からミキシムBB/200の名称で販売されている。」 1c:「【0048】本発明を例証するが、本発明を限定するものではない具体的な実施例を以下に記載する。 実施例 【表1】 」 イ.刊行物2について 上記刊行物2には、以下の事項が記載されている。(翻訳は刊行物2のパテントファミリーである特表2002-520264号公報に基づく。) 2a:「ナノ顔料上の疎水性で炭化水素をベースとするコーティングは、脂肪酸又は脂肪酸と1価又は多価金属、アンモニウム又は有機金属との塩を含むことが好ましい。 特に好ましいナノ顔料は、タイカ(Tayca)社から『微小二酸化チタンMT-100T』又は『MT-100TV』の商品名で販売されているアルミナとステアリン酸アルミニウムで被覆した酸化チタンナノ顔料、又は石原産業社から『TTO-SA』の商品名で販売されているステアリン酸で被覆したルチル形酸化チタンナノ顔料である。」(第7頁17?25行) 2.刊行物に記載された発明 上記刊行物1には、摘示1cの記載より、以下のW/Oエマルション組成物の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。(ここで、上記表1の記載に際しては、以下のとおりであると解釈した。 ○摘示1c中の「脱塩水、全体を右の量にする量」「100g」との記載の「全体」は、「W/Oエマルション組成物」全体を意味することは明らかなので、脱塩水の含有量は、「組成物全体を100gとする量」である。 ○「2,4-ビス-{[4-2-エチルヘキシルオキシ]}-2-ヒドロキシ]フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン」との記載(下線は当審が付した。)は、「{」及び「[」がそれぞれ1つに対して、「}」及び「]」が2つあり、それらの関係が整合していない。 ここで、トリアジンの2,4位に結合するのは、「ビス」以降の「{[4-2-エチルヘキシルオ・・フェニル}」であることは明らかであるから、下線部の「}」は、誤って記入されたものと解される。 また、「[4-2-エチルヘキシルオキシ]}-2-ヒドロキシ]」は、「フェニル」に結合する官能基を記載していると解されるところ、「2-ヒドロキシ」は、フェニル基の2位にヒドロキシル基が結合していることと解されるので、「4-2-エチルヘキシルオキシ」は、4位に「2-エチルヘキシルオキシ」基が結合していると解される。そうすると、上記「[4-2-エチルヘキシルオキシ]」は「4-[2-エチルヘキシルオキシ]」と記載すべきものであり、また、下線部の「]」は誤って記載されたものと解される。 よって、上記化合物の記載は、「2,4-ビス-{4-[2-エチルヘキシルオキシ]-2-ヒドロキシフェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン」の誤記である。) 「オキシエチレン化ポリジメチル/メチルセチルメチルシロキサン(ABIL EM 90D-GOLDSCHMIDT) 2グラム、 フェニルトリメチルシロキシトリシロキサン(DOWCORNING 556 COSMETIC grade fluid-DOW CORNING) 3グラム、 C_(12)/C_(15)アルコールベンゾアート(WITOCONOL TN-WITOCO) 8グラム、 TINOSORB Mの名で市販の微粒化形態のメチレンビス(テトラメチルブチルヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)平均粒径:150nm?200nm 5グラム、 ドロメトリゾールトリシロキサン 2グラム、 2,4-ビス-{4-[2-エチルヘキシルオキシ]-2-ヒドロキシフェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン 2グラム、 酸化チタン(TITANIUM DIOXIDE MT 100TV TAYCA) 3グラム、 グリセリン 5グラム、 硫酸マグネシウム 0.7グラム、 防腐剤 適量、及び 脱塩水 組成物全体を100gとする量 を含むW/Oエマルション組成物。」 3.対比・判断 (1)対比 まず、引用発明における「TINOSORB Mの名で市販の微粒化形態のメチレンビス(テトラメチルブチルヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)平均粒径:150nm?200nm」は、摘示1bに、 「【0031】本発明に係るベンゾトリアゾールタイプの有機UV遮蔽剤としては、次の構造: ・・・を有するメチレンビス(ヒドロキシフェニル-ベンゾトリアゾール)誘導体を挙げることができる。・・・ 【0033】式(8)の化合物としては、次の構造を有するものが特に好適である: ・・・なる命名の化合物(a)は・・・、また、チバガイギー社からティノソーブ(TINOSORB)Mなる名称で微粒化された形態で販売されている。」 と、記載されていることから、上記「compound(a)」に示される構造を有するものであり、よって、本願発明の【化1】に示される構造を有する微粒化物であると認められる。 ここで、「13398の化学商品」(化学工業日報社,1998年発行)第1050頁の「ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤」の項において、上記「compound(a)」と同じ構造、すなわち上記「TINOSORB M」と同じ構造を有する「2,2-メチレンビス{4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-フェノール}」の「有効吸収波長」が「270?380nm」と記載されており、これはUV-A及びUV-Bのいずれも吸収可能な広域吸収体であることを示すものである。 そうすると、引用発明の「TINOSORB Mの名で市販の微粒化形態のメチレンビス(テトラメチルブチルヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)平均粒径:150nm?200nm」は、「UV広域吸収体」であると認められる。 よって、引用発明の「TINOSORB Mの名で市販の微粒化形態のメチレンビス(テトラメチルブチルヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)平均粒径:150nm?200nm」は、本願発明の 「式: 【化1】 (式は省略) 〔式中、R_(1)は、C_(1)?C_(12)アルキル;又はフェニル置換C_(1)?C_(12)アルキルである〕 の微粉化UV広域吸収体」 に相当する。 さらに、引用発明の「W/Oエマルション組成物」は、「脱塩水」が「組成物全体を100gとする量」添加されているので、全体100gであり、うち、上記「TINOSORB M」は、「5グラム」含有されているので、本願発明の「微粉化UV広域吸収体1?60重量%」に相当する。 次に、引用発明の「酸化チタン(TITANIUM DIOXIDE MT 100TV TAYCA) 3グラム」は、本願発明の「二酸化チタン」に相当し、また、上記と同様の理由により、W/Oエマルション組成物100グラム中、「3グラム」含有されると認められるので、その含有量においても本願発明の「1?60重量%」に一致する。 そして、上記のとおり、引用発明の「W/Oエマルション組成物」は、本願発明の「UV広域吸収体」に相当する成分を含むので、本願発明の「UV-吸収体混合物」にも相当する。 よって、本願発明と引用発明とは、 「(a)式: 【化1】 〔式中、R_(1)は、C_(1)?C_(12)アルキル;又はフェニル置換C_(1)?C_(12)アルキルである〕 の微粉化UV広域吸収体1?60重量%と、 (b)二酸化チタン 1?60重量%とを含む、UV-吸収体混合物。」 の点で一致し、次の点で相違する。 相違点:二酸化チタンが、本願発明においては「疎水性表面を付与するために、金属セッケンで被覆された油分散化二酸化チタン」と特定されているのに対し、引用発明においてはそのような特定がなされていない点 (2)相違点の判断 引用発明の「酸化チタン(TITANIUM DIOXIDE MT 100TV TAYCA)」は、刊行物2の摘示2aの、 「特に好ましいナノ顔料は,タイカ(Tayca)社から『微小二酸化チタンMT-100T』又は『MT-100TV』の商品名で販売されているアルミナとステアリン酸アルミニウムで被覆した酸化チタンナノ顔料、又は石原産業社から『TTO-SA』の商品名で販売されているステアリン酸で被覆したルチル形酸化チタンナノ顔料である。」 との記載からみてアルミナとステアリン酸アルミニウムで被覆した二酸化チタンであると認められる。 ところで、本願発明の詳細な説明段落【0013】においては、 「油分散化二酸化チタン(本発明に係る)は、微粉化二酸化チタンであり、微粉化二酸化チタンの粒子は、疎水性表面性能を示し、この目的のために、微分化二酸化チタンの粒子を、ポリメチルメタクリレート、イソプロピルチタントリイソステアレート、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸アルミニウム又はステアリン酸亜鉛、メチル水素ポリシロキサン、酸化ポリシロキサン、グリセリン、ステアリルアルコール、Steareth-7、Steareth-10、ステアリン酸、ラウリル酸、シメチコーン又はジメチコーンのような金属セッケンで被覆する。」(審決注:「微分化二酸化チタン」は、「微粉化二酸化チタン」の誤記であると解される。) と、記載されていることから、本願発明に係る「油分散化二酸化チタン」とは、「微粉化二酸化チタン」を「ステアリン酸アルミニウム」等の「金属セッケンで被覆」したものを意味すると認められる。 よって、引用発明における「酸化チタン(TITANIUM DIOXIDE MT 100TV TAYCA)」は、上記のとおり、本願発明の詳細な説明において金属セッケンとして挙げられている「ステアリン酸アルミニウム」で被覆された「酸化チタン」であるから、本願発明の「金属セッケンで被覆された油分散化二酸化チタン」に相当する。 そして、刊行物2の摘示2aには、 「ナノ顔料上の疎水性で炭化水素をベースとするコーティングは,脂肪酸又は脂肪酸と1価又は多価金属,アンモニウム又は有機金属との塩を含むことが好ましい。」 と記載されるとおり、一般的に、「脂肪酸と1価又は多価金属・・・との塩」による被覆は、「疎水性」を付与する目的で行われると認められ、特に、引用発明の「酸化チタン」におけるステアリン酸アルミニウムによる被覆を、「疎水性表面を付与するため」のものとすることは容易になし得るものである。 また、それによる格別の効果も認められない。 (3)小括 以上のとおり、本願発明は、本願優先日前に頒布された刊行物1及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第6 請求人の主張について 請求人は、回答書において、次のAのとおり補正案を示すとともに、次のB及びCの主張をしている。(「A」以外の下線は当審が付した。) A:「出願人は、以下の補正案のように、本願明細書の第13段落の記載に基づき、本願の請求項1を補正する準備があります。以下に提案する補正案において、平成23年11月16日付けの手続補正書における請求項(以下、「旧請求項」といいます。)記載から変更した部分は下線を付しました。 「(a)式: 【化1】 〔式中、R_(1)は、C_(1)?C_(12)アルキル;又はフェニル置換C_(1)?C_(12)アルキルである〕の微粉化UV広域吸収体1?60重量%と、 (b)疎水性表面を付与するために、微分化二酸化チタンの粒子を、ポリメチルメタクリレート、イソプロピルチタントリイソステアレート、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸アルミニウム又はステアリン酸亜鉛、メチル水素ポリシロキサン、酸化ポリシロキサン、グリセリン、ステアリルアルコール、Steareth-7、Steareth-10、ステアリン酸、ラウリル酸、シメチコーン及びジメチコーンからなる群より選ばれる、金属セッケンで被覆された油分散化二酸化チタン1?60重量%とを含む、UV-吸収体混合物。」 B:「2)二酸化チタンについて(引用文献1?6、特表2002-520264号公報) 本発明の「油分散化二酸化チタン」は、平成24年8月28日(起案日)の拒絶査定の理由2(特許法第29条第2項)において引用されている引用文献2に開示されているコーティング剤で被覆した二酸化チタンではありません。 本発明の「油分散化二酸化チタン」は、オイル中に分散されたオイル分散物です(本願明細書の第13、96段落)。 一方、拒絶査定において引用された文献1?3において使用されているコーティング剤で被覆した二酸化チタンは、実施例で使用された酸化チタン(TITANIUM DIOXIDE MT100 TV TAYCA)は、粉体であることが示唆され、オイル中に分散されたオイル分散物については一切記載されていません。 ・・・ 引用文献1?3及び6において、実施例等において具体的に記載されているのは、両親媒性の「粉体」状の酸化チタンナノ顔料であり、また、引用文献4及び5においても、実施例等において具体的に記載されているのは「二酸化チタン」であり、引用文献1?6及び特表2002-520624号公報の記載をみても、二酸化チタンを含むオイル分散物である「油分散化二酸化チタン」は示唆されません。」 C:「(4)本発明の効果について (4-1)平成23年11月17日付け意見書における比較実験について 本発明は、(a)特定の微細化有機UV吸収体及び(b)油分散化二酸化チタンを含む混合物が、驚くべきことに、相乗作用効果を示し、SPF値に関して優れた値を示します(本願明細書の第4段落)。 実施例3において、本発明の(a)特定の微細化有機UV吸収体及び(b)油分散化二酸化チタンを含む混合物を用いた「高いSPFを有する油/水サンケアクリーム」のSPF値が19.4であることが開示されています(本願明細書の第98段落の表18)。 また、実施例4において、本発明の(a)特定の微細化有機UV吸収体及び(b)油分散化二酸化チタンを含む混合物を用いた「高いSPFを有する油/水サンケアクリーム」のSPF値が67.5であることが開示されています(本願明細書の第100段落の表19)。 審判請求書の12頁に記載した、以下の表1に示すとおり、本発明の(a)特定の微細化有機UV吸収体及び(b)油分散化二酸化チタンを含む混合物を用いたサンケアクリームは、(a)特定の微細化有機UV吸収体を単独で使用した油/水クリーム、又は、(b)油分散化二酸化チタンを単独で使用した油/水クリームと比較して、優れたSPF値を示します。 〔表1〕 なお、平成24年8月28日付けの拒絶査定において、「上記比較実験の結果は、願書に最初に添付された明細書等の記載に基づくものではないから、参酌することができない。」と認定されています(拒絶査定2頁20?21行)。 上記表1で示した比較実験の結果において、本発明に従う製剤(C)のSPF値は、本願明細書の実施例3のSPF値であり、本願明細書の第98段落の表18に記載されているSPF値と同一であり、願書に最初に添付された明細書の記載を何ら変更するものではありません。上記表1の先行技術である製剤(A)は、(a)特定の微細化有機UV吸収体を含み、(b)油分散化二酸化チタンを含まない製剤であり、先行技術の製剤(B)は、(a)特定の微細化有機UV吸収体を含まず、(b)油分散化二酸化チタンを含む製剤であり、本発明の構成を満たすものではありません。 引用文献1?3には、メチレンビス(テトラメチルブチルヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)と、酸化チタン(TITANIUM DIOXIDE MT 100TV TAYCA)を含む組成物が記載されています(引用文献1の表1及び表2、引用文献2の表1、引用文献3の表1及び表2)。しかしながら、引用文献1?3には、組成物のSPF値までは記載されておらず、引用文献1?3に記載されている技術と対比した本発明の有利な効果を示すことができません。」 ・補正案Aについて 請求人は、平成23年11月16日の手続補正書の【請求項1】に記載された「金属セッケン」を、「ポリメチルメタクリレート、イソプロピルチタントリイソステアレート、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸アルミニウム又はステアリン酸亜鉛、メチル水素ポリシロキサン、酸化ポリシロキサン、グリセリン、ステアリルアルコール、Steareth-7、Steareth-10、ステアリン酸、ラウリル酸、シメチコーン及びジメチコーンからなる群より選ばれる」ものとする旨の補正案を示している。 しかしながら、段落【0013】には、金属セッケンが上記「ポリメチルメタクリレート、・・・ラウリル酸、シメチコーン及びジメチコーンからなる群より選ばれる」ものである旨記載されているが、技術常識から見て、ポリメチルメタクリレート、イソプロピルチタントリイソステアレート、メチル水素ポリシロキサン、酸化ポリシロキサン、グリセリン、ステアリルアルコール、Steareth-7、Steareth-10、ステアリン酸、ラウリル酸、シメチコーン及びジメチコーンは、「金属セッケン」ではなく、「金属セッケン」を限定的に減縮することにはならない。 よって、仮に、審判請求後の手続補正において、上記補正案に示される補正がなされていたとしても、平成18年改正前特許法第17の2第4項第2号に規定される限定的減縮には該当せず、さらに、仮に限定的減縮に該当するとしても、用語の定義・用法が技術常識とは異なるので不明確であるため独立特許要件を満たさず、適法な補正であるとはいえない。 ・主張Bについて 請求人は、本願発明の詳細な説明段落【0013】及び【0096】の記載を根拠に、本願発明の「油分散化二酸化チタン」は、「疎水性」の「オイル中に分散されたオイル分散物」であり、一方、引用発明の「酸化チタン」は、「両親媒性」の「粉状」である点で異なる旨主張している。 しかしながら、上記第4 3.(2)において述べたとおり、本願発明の詳細な説明段落【0013】の記載を参酌すると、「油分散化二酸化チタン」とは、「金属セッケンで被覆」したものであるとしか記載されておらず、さらに、油へ分散することについては、上記記載の直後に、 「【0014】 微粉化二酸化チタンは、化粧品最終配合物の製造中に、水相(水分散化)又は油相(油分散化)のいずれかに組み込むことができる。」 と、上記【0013】とは別に記載されているので、【0013】に記載の「油分散化二酸化チタン」を、「オイル中に分散されたオイル分散物」であるとまでは解されない。 また、本願明細書【0096】においては、 「【0096】 実施例2:微粉化二酸化チタンの調製: オイル分散物を製造するための方法は、粒状粉砕媒体の存在下で、上記オイル中のTiO_(2)のための有機分散剤の存在下で、オイル中の粒状二酸化チタンを微分化する工程であって、ここで、上記TiO_(2)の量は、分散物が40重量%を超える固体含量を有するような量である工程と、粒状TiO2が10nm?150nmの平均粒径を有するような時間、上記微粉化する工程を続ける工程とを含む。この方法は、GB-A-2206339Aに記載されている。オイルは、植物油、脂肪酸グリセリド、脂肪酸エステル又は脂肪族アルコールであってもよい。」 と、単に、粒状二酸化チタンをオイルに分散することが記載されるのみであって、「油分散化二酸化チタン」なる用語が、「オイル中に分散されたオイル分散物」を意味すると解される記載はみあたらない。 よって、本願発明の「油分散化二酸化チタン」が、「オイル中に分散されたオイル分散物」であるとは認められず、この点で、引用発明の「酸化チタン」とは相違するとは認められない。 また、上記第4 3.(2)において述べたとおり、引用発明の酸化チタンにおける金属セッケンによる処理を、「疎水性表面を付与するために」行うものと特定することは困難性があるとは認められない。 ・主張Cについて 請求人は、本願発明は、「(a)」の「UV広域吸収体」と、「(b)」の「油分散化二酸化チタン」を併用することにより、単独で使用した場合に比して、SPF値が相乗的に上昇するという当業者が予測できない効果を有する旨の主張をしている。 しかしながら、本願発明と引用発明の相違点は、「金属セッケンで被覆された」ことが、「疎水性表面を付与するために」行われたか否かのみで異なるものであり、両者の二酸化チタンは金属セッケンで被覆されていることには変わりないため、その点で本願発明が引用発明に比して格別の効果が有るものとは認められない。 さらに、仮に請求人が主張するとおり、本願発明は、引用発明と二酸化チタンが「オイル中に分散されたオイル分散物」である点で異なるとしても、例えば、引用発明のように二酸化チタンがオイルの分散物でないものを用いた点のみで本願発明と異なる組成物に比して、本願発明が、当業者が予測し得ないほどの格別の効果を有するということについて、本願発明の詳細な説明に記載されているものでもないし、そのような比較実験の結果が示されているものでもない。 よって、本願発明は、引用発明に比して格別の効果が有るものとは認められない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本願は、その余につき検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-10-23 |
結審通知日 | 2013-10-29 |
審決日 | 2013-11-18 |
出願番号 | 特願2008-244190(P2008-244190) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C09K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中野 孝一 |
特許庁審判長 |
松浦 新司 |
特許庁審判官 |
小石 真弓 日比野 隆治 |
発明の名称 | ミクロ顔料混合物 |
代理人 | 生川 芳徳 |
代理人 | 津国 肇 |
代理人 | 伊藤 佐保子 |
代理人 | 小澤 圭子 |
代理人 | 田中 洋子 |
代理人 | 柳橋 泰雄 |
復代理人 | 川田 秀美 |
代理人 | 柴田 明夫 |
代理人 | 小國 泰弘 |