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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B21K
管理番号 1300320
審判番号 不服2014-12349  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-27 
確定日 2015-05-01 
事件の表示 特願2012-163120「芯金及び中空ラックバー」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月 6日出願公開、特開2012-236229〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成20年3月27日(優先日 平成19年3月27日)の特許出願である特願2008-084901号の一部を、平成24年7月23日に分割して新たな特許出願としたものであって、平成25年9月17日付けで拒絶の理由が通知され、平成25年11月25日に意見書とともに手続補正書が提出され特許請求の範囲及び明細書について補正がなされたが、平成26年3月28日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、平成26年6月27日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、特許請求の範囲及び明細書についてさらに補正がなされたものである。

第2 平成26年6月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年6月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容の概要
平成26年6月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成25年11月25日付けで補正された特許請求の範囲及び明細書をさらに補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する以下の補正を含んでいる。なお、下線部は補正箇所を示す。

(1)<補正前>
「 【請求項1】
金型に保持された中空素材の内部空洞に圧入されることにより前記中空素材の肉を金型に向けて内径側から張出させることで中空ラックバーを製造する方法に使用される芯金において、
前記中空素材の中空部の最小断面領域よりも小さい最大断面領域を有する短尺の棒材と、
この棒材の軸方向に設けられ、前記金型側に配置される突起部とを備え、
前記棒材の前記突起部とは反対側に位置する背面部には、前記中空ラックバーを外周面側から案内するための案内部材との摺動面に対応する範囲にわたって外周押圧面が形成されていることを特徴とする芯金。」

(2)<補正後>
「 【請求項1】
金型に保持された中空素材の内部空洞に圧入されることにより前記中空素材の肉を金型に向けて内径側から張出させることで中空ラックバーを製造する方法に使用される芯金において、
前記中空素材の中空部の最小断面領域よりも小さい最大断面領域を有する短尺の棒材と、
この棒材の軸方向に設けられ、前記金型側に配置される突起部とを備え、
前記棒材の前記突起部とは反対側に位置する背面部には、前記中空ラックバーを外周面側から案内するための案内部材との摺動面に対応する範囲にわたって当該中空素材にR形状を作り込む外周押圧面が形成されていることを特徴とする芯金。」

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1の「外周押圧面」について、「当該中空素材にR形状を作り込む」点を付加し限定するものであるから、特許請求の範囲の限定的減縮(特許法第17条の2第5項第2号)を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて検討する。

(1)補正発明
補正発明は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、上記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「芯金」であると認める。

(2)刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である以下の文献には、以下の発明が記載されていると認められる。
刊行物1:特開2006-26703号公報

ア 刊行物1に記載された事項
刊行物1には、「中空ラックバー製造方法及び装置並びに中空ラックバー製造に用いる芯金工具」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は理解の便のため、当審で付したものである。

(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】
金型により保持された中空素材の内部空洞に向けて、短尺拡頭部材を、短尺拡頭部材とは別体の長尺押圧部材と連携させることにより圧入せしめ、中空素材の内部空洞への短尺拡頭部材の圧入により素材の肉を金型に向けて内径側から張出させることで中空ラックバーを製造する方法。」

(イ)
「【0001】
この発明は自動車のパワーステーリング装置等に使用される中空ラックバー製造方法及び及び装置並びに中空ラックバー製造に用いる芯金工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のパワーステアリング装置に使用される中空ラックバーの製造方法としては従来は丸棒からの切削によるものが多かったが軽量化のためパイプ材からの鍛造によるものが使用されるようになってきている。それとともに、最近のパワーステアリング装置は油圧駆動から電動駆動のものに変わりつつあり、それとの関連でラックバーとしてラックバーのピッチおよび傾角が均等な標準歯から変化した非均等なVGR型のラックバーが注目されている。かかるVGR型のラックバーは特殊切削による製造が高コストであるため軽量化も兼ねたパイプ材からの転写鍛造方式が採用されつつある。パイプ材からの転写鍛造によるラックバーの形成技術としては例えば特許文献1がある。特公平3-5892号におけるラックバーの成形においては熱間鍛造と冷間鍛造併用であり、まず、パイプ材を熱間鍛造金型によって加圧することにより歯形一次成形と共に上面が平坦に形成され、次なる工程でパイプ材の空洞に芯金が芯金が圧入される。芯金はテーパ状の拡頭部を有しており、拡頭部がパイプ材の平坦部に内周側において係合することにより平坦部の肉は成形型の歯列に向けて塑性変形的に流動することにより張出され、パイプ材の外周平坦部に成形型の歯列に順じた形状の直線方向の歯列が転写方式にて付与され、ラックバーとすることができる。」

(ウ)
「【0022】
図1はこの発明における中空ラックバーの製造における一連の工程(イ)?(ト)を模式的に示す。図1において、1は中空素材としての鉄製パイプ
であり、金型2及び3間に保持される。図2に示すように、下側の金型(クランプ型)3は横断面において半円形の内周面3Aを備え、この半円形の内周面3A上にパイプ1が載置される。上側の金型(クランプ兼用歯型埋め込みホルダ)2はその上側の内面が所定長さに亘って長さ方向に間隔をおいた凹凸(歯型)2Aを備えており、この発明の転写鍛造によりパイプ1の上面における所定長さの部位に上型2の凹凸に応じた歯形、即ち、ラックを形成することができる。図2は転写鍛造を実施するに先立って金型2及び3の型合わせを実施した状態を示しており、パイプ1は上型2における凹凸2Aを形成した面に当接することにより、上型2に当接するパイプ1の上面1Aは実質的に中凹状に平潰しされ、中凹の半円形状を呈し、後述するようにパイプ1の空洞において長尺押込棒5L, 5R(L, Rは左右を区別するための添字である)により短尺拡頭部材としてのシャットル6L, 6Rを圧入することにより、パイプ1の肉が塑性流動され、パイプ1の上面1Aに金型2の内周に設けられた歯型2Aに応じた歯形が付与される。転写式鍛造による歯形成形は図1においてパイプ1の左側の端面から、例えば、約250mm程度の部位において行われる。その右側の500mmの内径は単なる丸空洞となり、右端の約300mm程度はクランプ型から突き出された宙吊り状態となる。シャットル6L, 6Rの長さは60mm前後で後述のように拡頭部を複数有している。押込棒5L, 5Rは単純な一定の準丸断面形状であり、シャットルに比してマイナス寸法であり、張出し成形反力による強圧下での滑りを受けない。シャットル6L, 6Rは後述のように左右に配置された外部収納庫(ストッカ)7L, 7Rの中に各々数個づつセットされた状態で上下若しくは旋回シフトされる。シャットル押込用の押込棒5L, 5Rは左右のストッカの外側に各1?2対配置され、油圧シリンダにより前後駆動のみされるが、上下シフトを行う必要がない。」

(エ)
「【0023】
次に、シャットルの構造について説明すると、図3は図2(イ)に示すようにパイプ1からの型締めにより平潰しされた直後における左からの圧入のためのシャットル6L1を示し、シャットル6L1はパイプ1に左側より圧入され、右側の端部6-1が入側であり、左側の端部6-2が戻側となっている。シャットル6L1の戻側端面には長円形窪み部60が設けられ、この窪み部60に左側押込棒5Lの先端5L-1が係合せしめられ、素材パイプ1の中空部に対するシャットル6L1の圧入操作が行われる。図4に示すようにシャットルはその底面6-3は全周で中空素材としての鉄製パイプ1の内周面と密着しており、鍛造工程中にシャットル底面6-3はバイプ1の内周面との密着を維持しながらパイプ1の長手方向における直線移動が可能である。シャットルの側面6-4は二面巾部を構成しており、この二面巾部6-4はバイプ1の内周面から幾分離間している。シャットル6L1の上面は全体としては平坦であるが、本図例では圧入方向(図3の矢印a)で順次高さが増大する3段の拡頭部6-5(高さ=h1), 6-6(高さ=h2), 6-7(高さ=h3)を有している。シャットル圧入方向(図3の矢印a)において各拡頭部6-5, 6-6, 6-7に先行してテーパ状の案内部6-5A, 6-6A, 6-7Aを形成しており、成形時の流動抵抗に関わらずシャットル6L1のスムーズな動きが得られるようになっている。拡頭部6-5, 6-6, 6-7の間においては、シャットルは幾分の窪みをなしており、圧入鍛造成形時付与される潤滑油はこの窪みの部分に溜り、シャットルに適当な潤滑性を付与することができる。図2において既に説明のように中空素材としての鉄パイプ1を金型2及び3間に最初に保持したときパイプ1の上面1Aは実質的に中凹状の平坦に圧潰される(パイプ1は実質的に準半円形状を呈する)。この状態においてパイプ1に対する図3のシャットル6L1の圧入が開始され、シャットル6L1は入側端6-1よりパイプ1の中空部に導入される。そして、テーパ状の案内面6-5Aを介して最初の拡頭部6-5(高さ=h1)がパイプ1の平坦圧潰部1Aに作用し、パイプ1の肉は上型2の内周における凹凸部2Aに向けて張出される。そして、シャットル6L1の圧入が続けられることにより夫々テーパ案内面6-6A, 6-7Aを介して順次拡径部6-6(高さ=h2), 6-7(高さ=h3)による肉の張出しを受け、圧入鍛造を段階的に円滑に進行せしめることができる。」

(オ)
「【0025】
図5の次に3ステージ目に使用されるシャットルは今度は図3と同様左側から右方向に圧入が行われるが、拡頭部の高さは第2ステージ目の加工に対してより深い張出しが行われるように決められる。その次に第4ステージ目の加工はシャットルがより高い拡頭部にて図5と同様左方向に圧入がされる。以降はこれを所定ステージ数(たとえば12ステージ)繰り返すことにより、最終的な加工が完了する。図2(ロ)は最終ステージでのパイプ材1に対するシャットル6″の位置関係を模式的に示しており、シャットル6″の高さはシャットル圧入により素材の肉が金型の凹凸2Aに十分に張出され、パイプ1の上面への金型の凹凸に応じた凹凸形状(ラック歯)の転写鍛造を完了することができる。」

(カ)
「【0028】
第1ステージの加工は図1(ロ)にて示され、左側押圧棒5Lが右向きに前進駆動され、図3に示すようにその先端5L-1が窪み部60に係合されることで、シャットル6L1はストッカ7Lから離脱され、押圧棒5Lと共にパイプ1の中空部に左側より導入され、図2(イ)に説明されたようにシャットルの拡頭部6-5, 6-6, 6-7によりパイプ1の肉が金型に向け張出され、第1ステージの加工が行われる。そして、金型の歯形部を完全に通過した状態でシャットル6L1はパイプ1内に留まる。そして、第2ステージの加工に移行される。
【0029】
図1(ハ)に示す第2ステージの加工においては、右側押込棒5Rは左向きに前進駆動され、図5に示すようにその先端5R-1が窪み部60´に係合されることで、図1のシャットル6R1はストッカ7Rから離脱され、押圧棒5Rと共にパイプ1の中空部に右側より導入されると同時に左側押込棒5Lは後退される。図5に説明されたようにシャットルの拡頭部6'-5, 6'-6, 6'-7によりパイプ1の肉が金型に向け更に張出され、金型の歯形部2Aを完全に通過した状態でシャットル6R1はパイプ1内に留まる。段階(ロ)においてパイプ1内に留まった左側シャットル6L1は押込棒5Rにより駆動される右側シャットル6R1と連れ移動され、第2ステージの加工が完了した図1(ハ)の状態では左側シャットル6L1は左側ストッカ7Lにおける所定位置に収容される。
【0030】
図1(ハ)の状態から左側ストッカ7Rが1段上昇され、左側の二段目のシャットル6L2が金型及び押込棒と整列した状態(ニ)になる。この状態において、左側押込棒5Lが図の右方向に前進され、シャットル6L2の拡頭部による張出しが行われる。そして、シャットル6R1は連れ移動により後退される。図1(ホ)は連れ移動によりシャットル6R1が右側ストッカ7Rの所定位置に格納された状態を示す。
【0031】
図1(ホ)の状態から右側ストッカ7Rが一段上昇し、2段目の右側シャットル6Rかが押込棒5Rと整列した(ヘ)の状態にとなる。この状態において、右側押込棒5Rが図の左方向に前進され、シャットル6R2の拡頭部による張出しが行われる。そして、シャットル6L2は連れ移動により後退される。図1(ト)は連れ移動によりシャットル6L2が右側ストッカ7Lの所定位置に格納された状態を示す。
【0032】
以上説明のように左右からの押込棒5L, 5Rによるシャットル6L1, 6L2, 6L3・・・, 6R1, 6R2, 6R3・・・の交互圧入と先行圧入ステージでパイプ内に留まったシャットルの所定のストッカへの連れ移動による戻しが行われると共に、左右のストッカ7L, 7Rのシフト動作によりシャットルの拡頭部の高さを徐々に高めながら転写鍛造が12といった所定段数にて行われる。」

(キ)上記摘記事項(エ)に記載された「シャットル6L1の上面」に備えられた「拡頭部6-5, 6-6, 6-7」は、下に示す図3の記載内容も踏まえ、「シャットルの軸方向に設けられ、金型側に配置される拡頭部」ということができる。


(ク)上記摘記事項(エ)に「シャットル6L1の上面は全体としては平坦であるが順次高さが・・・増大する3段の拡頭部・・・を有している」とある。そして、このような「全体としては平坦」な「上面」を有する「シャットル」が、上記摘記事項(エ)に「鍛造工程中にシャットル底面6-3はバイプ1の内周面との密着を維持しながらパイプ1の長手方向における直線移動が可能である。」とあるように、中空素材たるパイプ1の内周部を直線移動していくのだから、下に示す図4の記載内容も踏まえ合理的に考えれば、シャットルの拡頭部を除いた最大断面領域は、中空素材(パイプ1)の中空部の最小断面領域よりも小さいものと認められる。



イ 刊行物1に記載の発明
そこで、上記摘記事項(ア)ないし(カ)並びに上記認定事項(キ)および(ク)を、技術常識を踏まえて補正発明に照らして整理すると刊行物1には以下の発明が記載されていると認める。(以下「刊行物1発明」という。)
「金型に保持された中空素材の内部空洞に圧入されることにより前記中空素材の肉を金型に向けて内径側から張出させることで中空ラックバーを製造する方法に使用される芯金工具において、
拡頭部を除いた最大断面領域が前記中空素材の中空部の最小断面領域よりも小さいシャットルと、
このシャットルの軸方向に設けられ、前記金型側に配置される拡頭部とを備え、
前記シャットルの前記拡頭部とは反対側に位置する底面は、全周で中空素材内周面と密着して長手方向に直線移動する芯金工具。」

(3)対比
補正発明と刊行物1発明とを対比すると以下のとおりである。
刊行物1発明の「芯金工具」は、補正発明の「芯金」に相当することは、その機能及び技術常識に照らして明らかであり、以下同様にそれぞれの機能を踏まえれば、「拡頭部」は「突起部」に、「シャットル」は「短尺の棒材」または「棒材」に、「底面」は「背面部」に相当することも明らかである。

次に、補正発明の「中空素材の中空部の最小断面領域よりも小さい最大断面領域を有する短尺の棒材」なる特定事項については、棒材に設けられた突起部の「中空素材の肉を・・・張出させる」という作用からすれば、「最大断面領域」が「突起部」を除いて定義されることは明らかである。そうすると、刊行物1発明の「拡頭部を除いた最大断面領域が前記中空素材の中空部の最小断面領域よりも小さいシャットル」は、補正発明の「中空素材の中空部の最小断面領域よりも小さい最大断面領域を有する短尺の棒材」に相当するといえる。

したがって、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「金型に保持された中空素材の内部空洞に圧入されることにより前記中空素材の肉を金型に向けて内径側から張出させることで中空ラックバーを製造する方法に使用される芯金において、
中空素材の中空部の最小断面領域よりも小さい最大断面領域を有する短尺の棒材と、
この棒材の軸方向に設けられ、前記金型側に配置される突起部とを備えた芯金。」

そして、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で相違している。
<相違点>
補正発明は、棒材の突起部とは反対側に位置する背面部には、中空ラックバーを外周面側から案内するための案内部材との摺動面に対応する範囲にわたって中空素材にR形状を作り込む外周押圧面が形成されているのに対し、
刊行物1発明は、棒材(シャットル)の突起部(拡頭部)とは反対側に位置する背面部(底面)は、全周で中空素材内周面と密着して長手方向に直線移動するものであるものの、補正発明のような外周押圧面が形成されているかは明らかでない点。

(4)相違点の検討
刊行物1発明は、棒材の拡頭部とは反対側に位置する底面は、全周で中空素材内周面と密着して長手方向に直線移動するものであるところ、中空素材は「金型に保持され」ているのだから、該「拡頭部とは反対側に位置する底面」は、中空素材にR形状を作り込む外周押圧面として機能している蓋然性がきわめて高い。
また、仮に該「拡頭部とは反対側に位置する底面」がR形状を作り込む外周押圧面として機能するものでないとしても、刊行物1発明の芯金工具は「中空ラックバーを製造する方法に使用される」ものであるところ、中空ラックバーにおいて、ラック側とは反対側に案内部材と摺動する全面にわたってR形状の面を形成することは技術常識であり(例えば、原審の拒絶査定において例示された実願昭58-136055号(実開昭60-45174号)のマイクロフィルムの第5図等を参照)、製造工程の簡略化の一環として、ラック歯を転写成形するのと同時にラック側の反対側にR形状の面を成形すべく、刊行物1発明の「拡頭部とは反対側に位置する底面」がR形状を作り込む外周押圧面として機能するようにさせることも、当業者が通常の創作能力の発揮によりなし得ることである。
よって、刊行物1発明において、上記相違点に係る構成を採用することは、技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。
そして、補正発明により得られる作用効果も、刊行物1発明及び技術常識から当業者であれば予測し得る範囲のものであって、格別のものとはいえない。

(5) 小括
したがって、補正発明は、刊行物1発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本件出願の発明について
1 本件出願の発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件出願の発明」という。)は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、平成25年11月25日付けの手続補正書により補正された上記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「芯金」であると認める。

2 刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は上記第2の2(2)のとおりである。

3 対比・検討
本件出願の発明は、上記第2の2で検討した補正発明から、実質的に、「外周押圧面」について「当該中空素材にR形状を作り込む」という限定を削除したものである。
そうすると、本件出願の発明より狭い範囲を特定事項とする補正発明が、上記第2の2で検討したとおり想到容易である以上、それよりも広い範囲を特定事項とする本件出願の発明も、刊行物1発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上により、本件出願の発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-25 
結審通知日 2015-03-04 
審決日 2015-03-17 
出願番号 特願2012-163120(P2012-163120)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B21K)
P 1 8・ 121- Z (B21K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宇田川 辰郎  
特許庁審判長 石川 好文
特許庁審判官 原 泰造
長屋 陽二郎
発明の名称 芯金及び中空ラックバー  
代理人 吉村 勝博  

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