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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1300347
審判番号 不服2012-23518  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-28 
確定日 2015-05-14 
事件の表示 特願2007-504494「マイクロモジュールと非接触式近接通信手段を備える再現装置とからなる組立品」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月 6日国際公開、WO2005/093646、平成19年11月 1日国内公表、特表2007-531099〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2005年3月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年3月23日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成23年10月14日付けの拒絶理由通知に対して、平成24年4月11日に手続補正書及び意見書が提出されたが、同年7月27日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年11月28日に審判請求がなされるとともに、同日に手続補正書が提出され、その後、平成25年4月15日付けで審尋がなされ、同年10月11日に回答書が提出されたものである。

2.補正の却下の決定
【補正の却下の決定の結論】
平成24年11月28日になされた手続補正を却下する。

【理由】
(1)補正の内容
平成24年11月28日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし23を、補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし22に補正するものであり、補正前後の請求項は、以下のとおりである。

(補正前)
「 【請求項1】
端末との少なくとも一方向の通信のための携帯用通信装置であって、
チップを含むマイクロモジュールと、
マイクロモジュールを収容するように構成された読取装置とを備え、
読取装置は、マイクロモジュールが端末と通信するようにすることができるアンテナと、マイクロモジュールを能動的にすることができるバッテリとを備え、
マイクロモジュールがアンテナに対して取り外し可能であるように前記アンテナが前記読取装置によって保持されることを特徴とする、携帯用通信装置。
【請求項2】
マイクロモジュールが、マイクロモジュールの所持者認証のための外部認証マーキング要素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項3】
読取装置が、チップと対話するように構成されたディスプレイおよびキーパッドを備えることを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項4】
読取装置が、マイクロモジュールを外部器具に接続するように構成されたUSBコネクタを備えることを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項5】
読取装置がメモリ部品をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項6】
RF通信が14443タイプAの種類のものであることを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項7】
RF通信が14443タイプBの種類のものであることを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項8】
端末との通信の確立に応答して信号を伝送するように構成された、聴覚または視覚によるマンマシンインタフェースを備えることを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項9】
聴覚または視覚によるマンマシンインタフェースがLED(発光ダイオード)であることを特徴とする、請求項8に記載の携帯用通信装置。
【請求項10】
聴覚または視覚によるマンマシンインタフェースがマイクロブザーであることを特徴とする、請求項8に記載の携帯用通信装置。
【請求項11】
聴覚または視覚によるマンマシンインタフェースがバイブレータであることを特徴とする、請求項8に記載の携帯用通信装置。
【請求項12】
聴覚または視覚によるマンマシンインタフェースがディスプレイであることを特徴とする、請求項8に記載の携帯用通信装置。
【請求項13】
バッテリが再充電可能な独立の電気エネルギー源であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の携帯用通信装置。
【請求項14】
独立の電気エネルギー源が、エネルギー伝達の媒体として磁気誘導を使用することを特徴とする、請求項13に記載の携帯用通信装置。
【請求項15】
独立の電気エネルギー源が、エネルギーを伝達する媒体として光を使用し、エネルギー変換用に光電池を使用することを特徴とする、請求項13に記載の携帯用通信装置。
【請求項16】
独立の電気エネルギー源が、エネルギーを伝達する媒体として電磁界を使用し、エネルギー変換システムとしてアンテナを使用することを特徴とする、請求項13に記載の携帯用通信装置。
【請求項17】
アンテナに配置されたスイッチをさらに含み、通信が、スイッチを作動させることによってのみ確立され得ることを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項18】
通信が、携帯用通信装置が端末の直近の領域に入る前は、非アクティブ状態にあり、実質的に全くエネルギーを消費しないことを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項19】
RF通信が、ニアフィールド通信(NFC)タイプであることを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項20】
ディスプレイデバイスをさらに備え、ディスプレイデバイスが、チップに収納されかつ実行されるディスプレイドライバを通して制御されることを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項21】
暗号化された個人データを解読するように構成されたメモリ部品をさらに備え、チップが、チップに記憶された秘密鍵を使用して解読された個人データを得るために、暗号化された個人データを解読するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項22】
解読された個人データは、携帯用通信装置の所持者が保護されたリソースおよび保護された位置からなる群から選択された1つへのアクセスを得るために使用されることを特徴とする、請求項21に記載の携帯用通信装置。
【請求項23】
チップが、非接触式であり、またアンテナを通して端末に無線周波数通信を伝送することができる無線周波数用のチップであることを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。」

(補正後)
「 【請求項1】
端末との少なくとも一方向の通信のための携帯用通信装置であって、
チップを含むマイクロモジュールと、
マイクロモジュールを収容するように構成された読取装置とを備え、
読取装置は、マイクロモジュールが端末と通信するようにすることができるアンテナと、マイクロモジュールを能動的にすることができるバッテリとを備え、
マイクロモジュールがアンテナに対して取り外し可能であるように前記アンテナが前記読取装置によって保持され、
チップが、非接触式であり、またアンテナを通して端末に無線周波数通信を伝送することができる無線周波数用のチップであることを特徴とする、携帯用通信装置。
【請求項2】
マイクロモジュールが、マイクロモジュールの所持者認証のための外部認証マーキング要素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項3】
読取装置が、チップと対話するように構成されたディスプレイおよびキーパッドを備えることを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項4】
読取装置が、マイクロモジュールを外部器具に接続するように構成されたUSBコネクタを備えることを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項5】
読取装置がメモリ部品をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項6】
RF通信が14443タイプAの種類のものであることを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項7】
RF通信が14443タイプBの種類のものであることを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項8】
端末との通信の確立に応答して信号を伝送するように構成された、聴覚または視覚によるマンマシンインタフェースを備えることを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項9】
聴覚または視覚によるマンマシンインタフェースがLED(発光ダイオード)であることを特徴とする、請求項8に記載の携帯用通信装置。
【請求項10】
聴覚または視覚によるマンマシンインタフェースがマイクロブザーであることを特徴とする、請求項8に記載の携帯用通信装置。
【請求項11】
聴覚または視覚によるマンマシンインタフェースがバイブレータであることを特徴とする、請求項8に記載の携帯用通信装置。
【請求項12】
聴覚または視覚によるマンマシンインタフェースがディスプレイであることを特徴とする、請求項8に記載の携帯用通信装置。
【請求項13】
バッテリが再充電可能な独立の電気エネルギー源であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の携帯用通信装置。
【請求項14】
独立の電気エネルギー源が、エネルギー伝達の媒体として磁気誘導を使用することを特徴とする、請求項13に記載の携帯用通信装置。
【請求項15】
独立の電気エネルギー源が、エネルギーを伝達する媒体として光を使用し、エネルギー変換用に光電池を使用することを特徴とする、請求項13に記載の携帯用通信装置。
【請求項16】
独立の電気エネルギー源が、エネルギーを伝達する媒体として電磁界を使用し、エネルギー変換システムとしてアンテナを使用することを特徴とする、請求項13に記載の携帯用通信装置。
【請求項17】
アンテナに配置されたスイッチをさらに含み、通信が、スイッチを作動させることによってのみ確立され得ることを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項18】
通信が、携帯用通信装置が端末の直近の領域に入る前は、非アクティブ状態にあり、実質的に全くエネルギーを消費しないことを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項19】
RF通信が、ニアフィールド通信(NFC)タイプであることを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項20】
ディスプレイデバイスをさらに備え、ディスプレイデバイスが、チップに収納されかつ実行されるディスプレイドライバを通して制御されることを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項21】
暗号化された個人データを解読するように構成されたメモリ部品をさらに備え、チップが、チップに記憶された秘密鍵を使用して解読された個人データを得るために、暗号化された個人データを解読するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の携帯用通信装置。
【請求項22】
解読された個人データは、携帯用通信装置の所持者が保護されたリソースおよび保護された位置からなる群から選択された1つへのアクセスを得るために使用されることを特徴とする、請求項21に記載の携帯用通信装置。」

(2)補正事項の整理
本件補正の補正事項を整理すると、以下のとおりである。

(補正事項a)
補正前の請求項1の「マイクロモジュールがアンテナに対して取り外し可能であるように前記アンテナが前記読取装置によって保持されることを特徴とする、」を、補正後の請求項1の「マイクロモジュールがアンテナに対して取り外し可能であるように前記アンテナが前記読取装置によって保持され、チップが、非接触式であり、またアンテナを通して端末に無線周波数通信を伝送することができる無線周波数用のチップであることを特徴とする、」と補正すること。

(補正事項b)
補正前の請求項23を削除すること。

(3)新規事項追加の有無及び補正の目的の適否についての検討
(3-1)補正事項aについて
補正事項aは、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「チップ」について、「チップが、非接触式であり、またアンテナを通して端末に無線周波数通信を伝送することができる無線周波数用のチップである」と限定的に減縮する補正である。
そして、この補正は、本願の願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。また、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面を「当初明細書等」という。)の段落【0016】?【0018】及び【0075】の記載に基づく補正である。
したがって、補正事項aは、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(以下「特許法第17条の2第3項」という。)に規定された新規事項の追加禁止の要件を満たしており、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(以下「特許法第17条の2第4項」という。)第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(3-2)補正事項bについて
補正事項bは、特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものである。そして、補正事項bが、特許法第17条の2第3項に規定された新規事項の追加禁止の要件を満たしていることは明らかである。

(3-3)新規事項追加の有無及び補正の目的の適否についてのまとめ
以上、検討したとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項に規定する要件を満たすものである。

(4)独立特許要件について
(4-1)はじめに
上記(3)において検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項(以下「特許法第17条の2第5項」という。)において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否かについて、検討する。

(4-2)補正後の請求項1に係る発明
本件補正による補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後の発明」という。)は、平成24年11月28日になされた手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される上記2.(1)の補正後の請求項1として記載したとおりのものである。

(4-3)引用刊行物に記載された事項及び発明
(4-3-1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された特開2002-236901号公報には、図1?10とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当審において付与したものである(以下、同じ。)。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、接触通信機能と非接触通信機能を併せ持つ小型形状ICカードのアンテナ構造と、前記小型形状ICカードに対応するリーダライタに関する。」
「【0019】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の電子情報記録媒体、および、電子情報読み取り・書込み装置の実施形態について説明する。」
「【0021】以下の実施例では、本発明の電子情報記録媒体の具体的な実施例として、SIMカードを中心に説明し、本発明の電子情報読み取り・書込み装置は具体的な実施例として携帯電話機を中心に説明する。
【0022】図1において、SIMカード1の表面にはICモジュールの外部端末接続用端子3が実装されている。後述するように、本発明の具体的な実施例の一つとして、前述の外部端末接続用端子3の予備端子(未使用端子)31、32を外部アンテナ接続用端子として利用している。ICカードに関する国際規格、ISO7816/2では、この予備端子31、32は端子番号は「C4、C8」で、端子名はRFUと命名されており、将来の予備端子と位置付けられている。したがって、予備端子31、32は将来用途が決まるまではローカルで使用できる端子である。
【0023】図2は、本発明の具体的なもう一つの実施例で、SIMカード1の裏側に外部アンテナ接続用端子20を設けた実施例である。図2の表側には、図1に示すような外部端末(装置)接続用端子が実装されている。この実施例では、外部アンテナ接続用端子20を形成した外部アンテナ接続用端子回路基板2をSIMカード1に接着剤によって接着している。図4で詳細に説明するが、上記外部アンテナ接続用端子20は、外部アンテナ接続用端子回路基板2の裏側に形成したアンテナ端子接続回路21によってアンテナ接続部材22、23と電気的に接続されている。アンテナ接続部材22、23は、外部端末接続用端子の予備端子31、32の裏側を利用して接触通信機能と非接触通信機能とを併せ持つICチップのアンテナ端子に接続されている。
【0024】図3は、図2で示した外部アンテナ用接続端子をSIMカードの裏面に設けた場合について説明するための図であって、前述のように予備端子を利用して外部アンテナ用接続端子とする場合に関しては、図3のアンテナ接続部材22、23、および、外部アンテナ接続用端子回路基板埋設のための凹部14は不要である
【0025】以下図3を参照してSIMカードの裏面に外部アンテナ接続用端子を設ける場合について説明する。図3は、図2における外部アンテナ接続用端子回路基板2をSIMカードの基体に接着する前の状態を示しているが、SIMカード1の基体裏側には上記外部アンテナ接続用端子回路基板2を埋設するための凹部14が形成されており、アンテナ接続部材22、23が露出している。アンテナ接続部材22、23は導電性の接着剤で、SIMカード基体に開けられたスルーホールを通して裏側に接着されているICモジュールの外部端末接続用端子3の予備端子31、32の裏側に接着され電気的に接続されている。また、接触通信機能と非接触通信機能とを併せ持つICチップのアンテナ端子も前述の予備端子の裏側に接着され電気的に導通している。
【0026】ICモジュールは外部端子接続端子の裏側に接触通信機能と非接触通信機能とを併せ持つICチップ(図示せず)を接着し、ボンディングワイヤでICチップの各接続端子と、前述の外部端子接続端子の裏側に設けられた金属露出部を接続し、熱硬化性の樹脂などで封止(封止部33参照)して作成する。本発明の接触通信機能と非接触通信機能とを併せ持つICチップの場合は、上記外部端子接続端子の裏側にアンテナ用の接続部を新たに設ける場合と、図3のように予備端子(図1の31、32)を利用してICチップのアンテナ端子とアンテナの終端を導通させる場合がある。でき上がったICモジュールは、熱可塑性の樹脂で積層、または、樹脂成形された基体に凹部11を設け埋設される。
【0027】図4は図3のA-A線断面(概念)図であるが、前述のように、積層されたカード基体の凹部11にICモジュールを嵌め込んで接着してSIMカードとする。積層カードは印刷などが施された積層コア(シート)105の表裏に透明シート101を接着した後、上記ICモジュール(3、および、33)を実装し、導電性の接着剤を、22、23で図示している部分に流し込んで、外部アンテナ接続用端子回路基板と導通させるための接続部とする。
【0028】図5は、SIMカード1に第1のアンテナ4を設けた場合の図で、接触通信機能と非接触通信機能とを併せ持つICチップのアンテナ端子と、第1のアンテナの終端部41、42が外部端末接続用端子の予備端子の裏の部分を利用して導通されている。
【0029】図6は、図5のB-B線断面(概念)図で、第1のアンテナはSIMカード基体の内部に積層されて、アンテナの2つの終端41、42が外部端末接続用端子の予備端子の裏の部分を利用して導通されている。図5、図6の他の部分の符号は、図3、図4に準じているので説明を省略する。
【0030】図7、図8、図9、図10を参照して本発明の電子情報読み取り・書込み装置(本発明の携帯電話機)について説明する。図7aは、SIMカード1の挿入口51を備えた表示部52と、操作部にボタン53を備えた携帯電話機5である。図7bは、図7aのSIMカード1を挿入口51から呑みこんだ状態を示している。
【0031】図8において、携帯電話機5の操作ボタンの裏側に第2のアンテナ55、および、共振回路56が埋設されている。前記第2のアンテナ55、と前記共振回路56を同時に使用することはないために携帯電話機5はどちらかを選択することになる。もし、SIMカードが外部アンテナ使用型、共振回路使用型に別れていて、その何れにも対応できるようにしたい場合は、図8に示しているように上記第2のアンテナ55、および、共振回路56を内部に備え、操作ボタンによって使用しない側を機能的に遮断して使用することもできる。共振回路は、挿入口51から挿入されたSIMカード1の周囲を覆うように設けられている。図8においては、第2のアンテナは操作ボタン側に設けられているが、表示部側に設けられていても、蓋がついている携帯電話機においては、蓋の部分に設けてもよい。
【0032】図9、図10を参照して携帯電話機に第2のアンテナ(外部アンテナ)と、共振回路を別々に設けた場合について説明する。図9を参照して、第2のアンテナを設けた電話機を切断した状態を説明する。携帯電話機5の外側は、強化プラスチックのフレーム50で覆われている。フレームの外側には操作ボタン53が設けられ、操作ボタン53の内側には電子回路基板59が設けられている。SIMカード収納部60に固定されたSIMカード1は、SIMカードの表面(表側、または、裏側)に設けられた外部アンテナ接続用端子に対して携帯電話機に備えられた接点58、57(図では接点が1つで表示しているが接点57、58は実際は2個の接点である)何れかと接触している。2個で構成された接点57、または、接点58(図示していないが第2のアンテナ55に接続されている)は電子回路基板59の外側で、フレーム50近傍に設けられた第2のアンテナに電気的に接続(点線で表示)されている。
【0033】図10は、共振回路を備えた携帯電話機のSIMカード収納部60付近の断面である。SIMカード収納部に近い部分で電子回路基板59に遮られない場所で、SIMカードを取り囲むように共振回路56が設けられ、SIMカード1に内蔵された第1のアンテナ4に共振して電波を増幅させ遠くまで通信できる役目を果たしている。」
「【0039】
【発明の効果】本発明の接触通信機能と非接触通信機能とを併せ持つICチップを搭載したSIMサイズのカードを、本発明の外部アンテナを備えた携帯電話機に装填して使用することによって離れて設置された第三の装置と無線で交信することが可能になった。また、本発明の接触通信機能と非接触通信機能とを併せ持つICチップと、アンテナを搭載したSIMサイズのカードを、本発明の共振回路を備えた携帯電話機に装填して使用することによって離れて設置された第三の装置と無線で交信することが可能になった。」

(4-3-2)そうすると、引用刊行物には、以下の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されているものと認められる。

「SIMカード収納部60を有し、
前記SIMカード収納部60にSIMカード1が固定され、
前記SIMカード収納部60に近い部分で、前記SIMカード1を取り囲むように共振回路56が設けられ、前記SIMカード1に内蔵された第1のアンテナ4に共振して電波を増幅させ遠くまで通信できる役目を果たしており、
離れて設置された第三の装置と無線で交信することが可能である電子情報読み取り・書込み装置を有する携帯電話機であって、
前記SIMカード1は、
積層されたカード基体の凹部11にICモジュールを嵌め込んであり、
前記SIMカード1の表面には,前記ICモジュールの外部端末接続用端子3が実装されており、
前記ICモジュールは外部端子接続端子の裏側に接触通信機能と非接触通信機能とを併せ持つICチップを接着し、
前記外部端末接続用端子3の予備端子31、32を外部アンテナ接続用端子として利用し、
アンテナ接続部材22、23が、前記SIMカード1の前記カード基体に開けられたスルーホールを通して前記ICモジュールの前記外部端末接続用端子3の前記予備端子31、32の裏側に接着され電気的に接続されており、
前記SIMカード1に前記第1のアンテナ4を設け、前記接触通信機能と非接触通信機能とを併せ持つICチップのアンテナ端子と、前記第1のアンテナ4の終端部41、42が前記外部端末接続用端子3の前記予備端子31,32の裏の部分を利用して導通されている、
電子情報読み取り・書込み装置を有する携帯電話機。」

(4-4)対比
(4-4-1)刊行物発明の「離れて設置された第三の装置」及び「携帯電話機」は、各々補正後の発明の「端末」及び「携帯用通信装置」に相当する。そして、刊行物発明の「携帯電話機」が、「離れて設置された第三の装置」と少なくとも一方向の通信を行うことは明らかである。

(4-4-2)刊行物発明の「ICチップ」及び「SIMカード1」は、各々補正後の発明の「チップ」及び「マイクロモジュール」に相当する。また、刊行物発明の「ICチップ」と、補正後の発明の「チップ」とは、「非接触式」であるという点で、共通する。

(4-4-3)刊行物発明の「電子情報読み取り・書込み装置」と、補正後の発明の「読取装置」は、「読取装置」という点で共通する。そして、刊行物発明である「携帯電話機」において、「電子情報読み取り・書込み装置」として機能する部分は、「前記SIMカード収納部60に近い部分で、前記SIMカード1を取り囲むように共振回路56が設けられ」た部分を含むことは明らかであるから、刊行物発明の「電子情報読み取り・書込み装置」は、「SIMカード1」を収容するように構成されているものと認められる。

(4-4-4)刊行物発明の「携帯電話機」が、「離れて設置された第三の装置」と通信するようにすることができる「アンテナ」を有していることは明らかである。そして、刊行物発明の「共振回路56」は、「前記SIMカード1に内蔵された第1のアンテナ4に共振して電波を増幅させ遠くまで通信できる役目を果たして」いることから、当該「アンテナ」が、「電子情報読み取り・書込み装置」を構成する「共振回路56」に接続され、「SIMカード1」が、「離れて設置された第三の装置」と通信するようにすることができる機能を有していることも明らかである。また、引用刊行物の段落【0030】の「・・・図7aは、SIMカード1の挿入口51を備えた表示部52と、操作部にボタン53を備えた携帯電話機5である。図7bは、図7aのSIMカード1を挿入口51から呑みこんだ状態を示している。」という記載及び図7から、刊行物発明において、「SIMカード1」が「携帯電話機」から取り外し可能であることは明らかであるから、「SIMカード1」が当該「アンテナ」に対して取り外し可能であるように当該「アンテナ」が「電子情報読み取り・書込み装置」によって保持されていることも明らかである。

(4-4-5)そうすると、補正後の発明と刊行物発明とは、
「端末との少なくとも一方向の通信のための携帯用通信装置であって、
チップを含むマイクロモジュールと、
マイクロモジュールを収容するように構成された読取装置とを備え、
読取装置は、マイクロモジュールが端末と通信するようにすることができるアンテナを備え、
マイクロモジュールがアンテナに対して取り外し可能であるように前記アンテナが前記読取装置によって保持され、
チップが、非接触式である、携帯用通信装置。」
である点で一致し、次の2点で相違する。

(相違点1)補正後の発明では、「読取装置」が、「マイクロモジュールを能動的にすることができるバッテリ」を有するのに対し、刊行物発明では、「電子情報読み取り・書込み装置」について、そのような特定がなされていない点。

(相違点2)補正後の発明の「チップ」は、「アンテナを通して端末に無線周波数通信を伝送することができる無線周波数用」であるのに対し、刊行物発明では、「ICチップ」について、そのような特定がなされていない点。

(4-5)判断
以下、上記相違点について、検討する。
(4-5-1)相違点1について
非接触式カードを搭載する携帯電話機において、非接触式カードに形成された処理回路を動作するための電源を、携帯電話機内に備えられた電源部から供給することは、以下の周知例1、2に記載されているように、従来から周知である。

ア)周知例1
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された特開2004-38657号公報には、図1とともに、以下の事項が記載されている。

「【0009】
図1は、本実施の形態に係る携帯端末装置の構成を概略的に示すものである。本携帯端末装置は、大きく分けて、図示しない携帯電話基地局との間で800MHz帯あるいは1.5GHz帯の周波数を有する電波を用いて無線による通信を行なうことにより通話処理などを行なう携帯電話機部(携帯端末部)11と、鉄道機関における非接触式ICカード対応の自動改札装置との間で13.56MHz帯の周波数を有する電波を用いて無線による通信を行なうことにより改札処理用データの授受を行なう非接触式ICカード部21とから構成されている。
【0010】
携帯電話機部11は、携帯電話基地局との間で無線通信によるデータの送受信を行なうためのアンテナ12、送受信データの変調および復調、各種データの表示、ダイヤルボタンなどのセンサなどを行なう制御部13、各種データ処理や全体的な制御を行なうCPU14、各種データを記憶するEEPROMなどの不揮発性のメモリ15、および、各部に動作電圧を供給するバッテリ16から構成されている。
【0011】
非接触式ICカード部21は、主に、自動改札装置との間でデータを送受信するための送受信アンテナ22、この送受信アンテナ22を介して自動改札装置との間で無線による通信を行なうことにより改札処理用データの授受を行なう非接触式ICカード機能を備えたICモジュール(たとえば、LSI)23、同調用コンデンサ24、および、平滑用コンデンサ25から構成されている。
なお、同調用コンデンサ24や平滑用コンデンサ25は、ICモジュール23の内部に形成される場合もある。また、同調用コンデンサ24を送受信アンテナ22内に形成する場合もある。
【0012】
ICモジュール23は、送受信アンテナ22からの受信信号を整流する整流回路31、整流回路31の出力を2値化する受信回路32、受信回路32の出力に対し復調処理を行なう復調回路33、復調回路33から得られる受信データに対し所定の処理を行なったり、送信データを生成したりする制御部34、各種データを記憶するEEPROMなどの不揮発性のメモリ35、制御部34からの送信データに対し変調処理を行なう変調回路36、変調回路36の出力を増幅して整流回路31を介して送受信アンテナ12に供給する送信回路37、および、整流回路31の出力を平滑することにより安定化された直流電圧を生成して各部に動作電圧として供給する電源部38から構成されている。
携帯電話機部11のCPU14とICモジュール23内の制御部34とは電気的に接続されていて、互いにデータの授受を行なうことが可能になっている。
【0013】
なお、携帯電話機部11のCPU14およびメモリ15とICモジュール23内の制御部34およびメモリ35は1つのCPUおよびメモリで共用してもよい。
また、携帯電話機部11のバッテリ16から、ICモジュール23内の各部にも動作電圧を供給するようにしてもよい。」

イ)周知例2
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された実用新案登録第3076212号公報には、図1とともに、以下の事項が記載されている。

「 【0006】
【考案の実施の形態】
本考案の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。
図1は、非接触カ-ド実装携帯電話1の構成を示す該略図で、携帯電話2は、電波を用いて電話及びデ-タ伝送する他に各種機能を備えた従来のものであって、メモリ-に記憶されたデ-タを非接触カ-ド3へ出力することができ、さらに非接触カ-ド3に記憶されたデ-タを入力して表示或いは音声出力して確認できる。
【0007】
非接触カ-ド3は、ICカ-ドに、対象物と非接触な状態でデ-タの送受信をする装置を備えたものであって、インタ-フェ-ス4とデ-タを記憶するメモリ-5それに送信装置6及び受信装置7とで構成され、インタ-フェ-ス4は、携帯電話2に接続して両者間でデ-タの送受を行う双方向のデ-タ伝送用のコネクタで、これによって携帯電話2に非接触カ-ド3が実装されるとともに、携帯電話2から非接触カ-ド3へ電源供給することもできる。
【0008】
メモリ-5は、携帯電話2から出力されたデ-タを記憶するとともに、受信装置7が受けたデ-タに基づいて前記デ-タが更新或いは削除等の操作を受けてこれを記憶する。
【0009】
送信装置6はメモリ-5に記憶されたデ-タを電波或いは光を用いて対象物となるゲ-ト通過を自動化する自動ゲ-トへ送信し、受信装置7は前記自動ゲ-トから送信された前記デ-タを更新或いは削除するデ-タを受信してこれをメモリ-5へ送る。
【0010】
これらのことから、非接触カ-ド実装携帯電話1は、非接触カ-ド3を用いて、携帯電話2に記憶されて、非接触カ-ド3に入力されて記憶されたデ-タを前記自動ゲ-トに非接触な状態で送って作動させ、さらには、前記自動ゲ-トの作動時に該自動ゲ-トから送られるデ-タによって前記デ-タが更新或いは削除されるとともに、該デ-タを表示するなどして確認できる。
【0011】
なお、非接触カ-ド3のデ-タの記憶は、携帯電話2の操作、あるいは携帯電話2の記憶と同時に成されるようプログラムされるが、デ-タの更新或いは削除は、個人の操作では実行できないようにする。
【0012】
さらに、送信装置6と受信装置7とは、デ-タの送受を電波を用いてする場合は送受信共用のアンテナが非接触カ-ド3に内臓され、あるいは携帯電話2のアンテナを共用し、またデ-タの送受を光を用いる場合は前記アンテナに代えて発光素子と受光素子とが備えられる。また、非接触カ-ド3への電源の供給は前記した携帯電話2から受ける他に、非接触カ-ド3に薄型の電池或いは太陽電池を内蔵してもよく、前記自動ゲ-トからの電波を用いて電源エネルギ-を供給するようにしてもよい。」

そして、本願明細書の段落【0025】の「本発明によれば、読取装置内にそのようなバッテリ14を配置することによって、カード20を、受動的ではなく能動的にすることが可能である。バッテリは、受動部品のRF通信の範囲および/または速度を増大させる際に有利である。・・・」という記載を参酌しても、補正後の発明の「マイクロモジュールを能動的にすることができる」の意味が必ずしも明らかではないが、仮に、当該「マイクロモジュール」には、能動素子から構成された送受信回路、増幅回路のような回路が形成されており、「読取装置」に備えられた「バッテリー」から電源を供給することにより、これらの回路を動作させることができるという意味と解釈したとしても、刊行物発明において、上記の周知技術を勘案することにより、「SIMカード」に、能動素子から構成された送受信回路、増幅回路のような回路を形成するとともに、「携帯電話機」の「電子情報読み取り・書込み装置」に備えられた電源部から電源を供給し、これらの回路を動作させるようにすることにより、補正後の発明のように「読取装置」が、「マイクロモジュールを能動的にすることができるバッテリとを備え」た構成とすることは、当業者が必要に応じて、適宜なし得たことである。
よって、相違点1は、当業者が容易になし得た範囲に含まれる程度のものである。

(4-5-2)相違点2について
刊行物発明の「前記SIMカード収納部60に近い部分で、前記SIMカード1を取り囲むように共振回路56が設けられ、前記SIMカード1に内蔵された第1のアンテナ4に共振して電波を増幅させ遠くまで通信できる役目を果たしており、」及び「離れて設置された第三の装置と無線で交信することが可能である電子情報読み取り・書込み装置を有する携帯電話機」という特定事項からみて、刊行物発明においても、「SIMカード」内の「ICチップ」から何らかのデータが「第三の装置」に伝送されているものと認められるから、「ICチップ」が、「携帯電話機」に当然備えられている「アンテナ」を通して、「第三の装置」に無線周波数通信を伝送することができることは、明らかである。
そうすると、相違点2は、実質的なものでない。

(4-6)独立特許要件についてのまとめ
以上検討したとおり、補正後の発明と刊行物発明との相違点は、実質的なものでないか、当業者が容易に想到し得た範囲に含まれる程度のものにすぎず、補正後の発明は、引用刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができない。

(5)補正の却下についてのむすび
本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるが、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものである。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成24年11月28日になされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年4月11日になされた手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される上記2.(1)の補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

4.刊行物に記載された発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物には、上記2.(4-3-1)及び(4-3-2)に記載したとおりの事項及び発明が記載されているものと認められる。

5.判断
上記2.(3)において検討したとおり、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「チップ」について、「チップが、非接触式であり、またアンテナを通して端末に無線周波数通信を伝送することができる無線周波数用のチップである」と限定的に減縮する補正である。逆に言えば本件補正前の請求項1に係る発明(本願発明)は,補正後の発明から上記の限定をなくしたものである。
そうすると、上記2.(4)において検討したように、補正後の発明が,引用刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、当然に、引用刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-11 
結審通知日 2013-12-17 
審決日 2014-01-06 
出願番号 特願2007-504494(P2007-504494)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06K)
P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村田 充裕  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 近藤 幸浩
小野田 誠
発明の名称 マイクロモジュールと非接触式近接通信手段を備える再現装置とからなる組立品  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  

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