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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1300380
審判番号 不服2013-20193  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-17 
確定日 2015-05-08 
事件の表示 特願2010-522156「リソース、ネットワーク要素及びユーザ機器をスケジューリングするための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月 5日国際公開、WO2009/026738、平成22年12月 2日国内公表、特表2010-537593〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯及び本願発明

1.手続の経緯
本願は,2007年(平成19年)8月24日を国際出願日とする出願であって,平成24年7月9日付けで拒絶理由が通知され,同年10月16日付けで意見書とともに手続補正書の提出がなされ,平成25年5月30日付けで拒絶査定され,同年10月17日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

2.本願発明
平成25年10月17日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は,平成24年10月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の記載を変更することを含むものである。
しかし,本件補正前と後で,特許請求の範囲の請求項1の記載について,変更はない。
そして,平成25年10月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。

【請求項1】
パケットネットワークにおいてリソースをスケジューリングするための方法において、ユーザ機器はネットワーク要素によって割り当てられたリソースを用いて該ユーザ機器間で通信し、該通信はデータパケットが送信される間のトークスプラウト期間及びサイレンス記述子パケットが送信される間のサイレント期間からなり、該方法が、
前記ネットワーク要素が通信のために前記ユーザ機器にリソースを割り当てるステップ、
前記ユーザ機器及び前記ネットワーク要素の両方が前記サイレンス記述子パケットの存在を検出するステップ、
前記サイレンス記述子パケットが検出されるとユーザ機器が前記割り当てられたリソースの使用を停止し、前記ネットワーク要素が該割り当てられたリソースを解放するステップ、
前記ネットワーク要素が、前記サイレンス記述子パケットが検出されたときに計時を開始するよう構成されたタイマーによって、前記サイレンス記述子パケットを送信するためのインターバルの終りを特定するステップ、及び
前記インターバルが終了したとき、又は前記インターバルの終了前にリソースを割り当てるための要求が前記ユーザ機器から受信されたとき、前記ネットワーク要素が新たなリソースを前記ユーザ機器に割り当てるステップ
を備える方法。

第2 引用発明等

1.引用発明
原査定の理由に引用されたのは次の文献(以下「引用文献」という。)である。

Samsung,「Discussion on control signalling for persistent scheduling
of VoIP」,3GPP TSG RAN WG1 Meeting #47, R1-063275,2006年11月

そして,上記引用文献には,図面とともに次の事項が記載されている。

2 Persistent scheduling procedure

Figure 1 shows the example of persistent scheduling for VoIP traffic service. UE generates VoIP per 20ms TTI during talk-spurt and SID per 160ms during silent period. Since there is no jittering in uplink side, packet generation would not experience the delay. NodeB allocates different resource depending on UE status as follows.

- When UE start to generate VoIP data,
■ UE sends uplink scheduling request.

■ NodeB assigns the frequency resource to this UE with persistent scheduling. NodeB will assign resource considering average number of retransmissions or target number of transmissions. Retransmission timing needs to be pre-configured.

■ After receiving the allocation with persistent scheduling, UE assumes that resource is reserved for itself at every 20ms and hence, UE sends VoIP data with the scheduled resource.

- When UE goes to the silent period,
■ UE sends SID before entering the silent period with the allocated resource.

■ NodeB de-allocates the resource and allocates the resource for SID if NodeB receives SID data.

■ After receiving the allocation with persistent signaling, UE assumes that resource is reserved for itself at every 160 ms and hence, UE sends SID data with the scheduled resource.

It was concerned that if the persistently allocated resource includes room for HARQ retransmissions that may not be used in case of early termination. However, unused resource due to early termination can be utilized for other UEs , e.g. non-persistent UEs. If a collision is expected to happen between the retransmission of non-persistent UE and initial transmission of persistent UE, NodeB scheduler can change the frequency resource of retransmission of this non-persistent UEs or persistent UE.
(当審訳
2 持続的なスケジュ-リング手段
図1は,VoIPトラフィックのサービスのための持続的なスケジューリングの例を示している。UEは,トークスパート(talk-spurt)期間中に20msのTTI(当審注 「TTI」が「Transmission Time Interval」(送信時間間隔)の略称(略語)であることは,通信の分野における技術常識である。)ごとのVoIPとサイレント期間中に160msごとのSIDを生成する。
アップリンク側にジッタが存在しないため,パケット生成には,遅延を生じないだろう。NodeBは,次のようにUEの状態に応じて,異なるリソースを割り当てる。

- UEは,VoIPデータを生成することを開始すると,

■ UEは,アップリンクスケジューリング要求を送信する。

■ NodeBは,持続的なスケジューリングとこのUEに周波数リソースを割り当てる。NodeBは,再送信の平均数又は送信の目標数を検討しリソースを割り当てる。再送タイミングは,事前に設定される必要がある。

■ 持続的なスケジューリングで割当てを受信した後,UEは,リソースが20msごとに自身のために予約されることを前提としている。それゆえ,UEは,スケジューリングされたリソースでVoIPデータを送信する。

- UEはサイレント期間になると,

■ UEは,割り当てられたリソースでサイレント期間に入る前にSIDを送信する。

■ NodeBは,SIDデータを受信すると,NodeBは,そのリソースの割当て解除をし,そして,SIDのためのリソースを割り当てる。

■ 持続的なシグナリングで割当てを受信した後,UEは,リソースが160ミリごとに自身のために予約されることを前提としている。それゆえ,UEはスケジュールされたリソースでSIDデータを送信する。

持続的に割り当てられたリソースに,早期終了の場合に使用することができないHARQ再送信のための余地が含まれているかが心配された。しかし,早期終了の未使用のリソースが,他のUE,例えば非持続的なUEに利用することができる。非持続的なUEの再送信と持続的なUEの最初の送信との間に衝突が起こると予想される場合,ノードBのスケジューラは,この非持続的なUE又は持続的なUEのいずれかの周波数リソースを変更することができる。)

以上の記載によれば,引用文献には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

UEは,トークスパート(talk-spurt)期間中に20msのTTIごとのVoIPとサイレント期間中に160msごとのSIDを生成し,
UEは,VoIPデータを生成することを開始すると,
UEは,アップリンクスケジューリング要求を送信し,
NodeBは,持続的なスケジューリングとこのUEに周波数リソースを割り当て,NodeBは,再送信の平均数又は送信の目標数を検討しリソースを割り当て,再送タイミングは,事前に設定される必要があり,
持続的なスケジューリングで割当てを受信した後,UEは,リソースが20msごとに自身のために予約されることを前提とし,それゆえ,UEは,スケジューリングされたリソースでVoIPデータを送信し,
UEはサイレント期間になると,
UEは,割り当てられたリソースでサイレント期間に入る前にSIDを送信し,
NodeBがSIDデータを受信すると,NodeBは,そのリソースの割当て解除をし,そして,SIDのためのリソースを割り当て,
持続的なシグナリングで割当てを受信した後,UEは,リソースが160ミリごとに自身のために予約されることを前提とし,それゆえ,UEはスケジュールされたリソースでSIDデータを送信し,
早期終了の未使用のリソースが,他のUE,例えば非持続的なUEに利用することができ,
非持続的なUEの再送信と持続的なUEの最初の送信との間に衝突が起こると予想される場合,ノードBのスケジューラは,この非持続的なUE又は持続的なUEのいずれかの周波数リソースを変更することができる
方法。

2.周知技術
本願の国際出願日前に頒布された特開2000-115114号公報(平成12年4月21日公開。以下「周知例」という。)には,図面とともに次の事項が記載(下線は当審が付与。)されている。

(1) 【0004】更に、現在のディジタル移動通信システムは、話が途切れているときには送信装置をオフにすることのできるいわゆる不連続送信を使用する。これにより、例えば電力消費量が減り、無線通信装置の使用時間が増大する。更に、この不連続送信は他の同時のデータ伝送接続における妨害を減少させる。従って、伝送品質を改善することが可能である。しかし、実際には、途切れ時間の全体にわたって送信がオフにされるのではなくて、受信装置で可聴雑音として生成される背景雑音に関する情報が時々送信され、それは実質的に送信端で検出された雑音の音量及び周波数スペクトルに対応する。この様な背景雑音の発生は、話が途切れている間完全に受信装置を弱音化することに比較すると進んだ機能である。この背景雑音は、通常は、音声よりは低いビット伝送速度でいわゆる無音記述子フレームSID(silence descriptor frames SID )で伝送される。

(2) 【0019】
【発明の実施の形態】本発明の記述との関係でGSMシステムの移動通信システムを例として取り上げるけれども、本発明は、この移動通信システムだけに限定されるものではなくて、データフレームでのデータ伝送とインタリーブとを使用する他の通信システムにも使用され得るものである。
【0020】図13は、本発明が適用される通信システム1を示す概略ブロック図である。図13の通信システム1は、移動局MSと、通信チャネル2を介してそれとデータ伝送接続している基地送受信局BTSとから成っている。通信チャネル2は無線周波数データ伝送として有利に実現されていて、移動局MSと基地送受信局BTSとは、それ自体としては公知の態様で、各々無線送受信装置を備えているが、それは添付の図面では別々には示されていない。基地送受信局BTSは基地局コントローラ(図示されていない)と有利に通信し、それを介して該通信システムで、また陸上通信網へも、データを送信することができる。移動局MS及び基地送受信局BTSは、実質的に同様の動作ブロックを含んでおり、それらの参照番号は、基地送受信局BTSの参照番号にアポストロフィー(’)が付加されていることにより、互いに区別されている。

(3) 【0022】移動局MSから基地送受信局BTSへ音声が伝送されるとき、マイクロホン3の信号は電気アナログ・オーディオ信号に変換され、アナログ-ディジタル変換器4でディジタル・フォーマットに変換される。このディジタル・オーディオ信号は音声符号器5へ転送される。音声符号器5から、該ディジタル信号は、マイクロホンから到来する信号が音声なのか背景雑音なのかを調べるために、音声活動(speech activity)検出器6へ転送される。これに基づいて、音声活動検出器6は、音声符号器5により作られた音声フレーム又は背景雑音発生器7により作られた無音記述子フレームのいずれが伝送されるべきかを選択する。背景雑音発生器7は選択ブロック(図示されていない)を含むこともでき、本明細書で後述されるように、ここで無音記述子フレームに他のシグナリング・データを供給することができる。それらのフレームはチャネル符号器9でチャネル符号化され、ここでチャネル符号化されたフレームは、本明細書で前述したように、データ伝送フレームを形成するためにインタリーブされる。該データフレームは通信チャネル2で受信側装置(この例では基地送受信局BTS)に送られる。デインタリーブ(Deinterleaving)とチャネル復号化とが基地送受信局BTSのチャネル復号器10’で行われる。該データフレームは音声復号器11’へ転送され、ここで、移動通信網及び更に受信側通信端末装置(図示されていない)へ送られるディジタル・オーディオ信号が作られる。無音記述子フレーム検出器8’は、復号化されたチャネル・フレームから無音記述子フレームを検出し、基地送受信局の無音記述子発生器7’を制御して音声復号器11’で背景雑音信号を作る。受信側装置で利用できる更新された背景雑音パラメータが無い場合には、必要ならば、計算ブロック14’を使って、前に受信された背景雑音パラメータに基づいて外挿又は内挿により背景雑音を有利に作ることができる。無音記述子フレームが余分のシグナリング・チャネルも含むならば、無音記述子フレーム検出器8’は、その様なフレームを信号処理ブロック(図示されていない)または同等のものへ送る。基地送受信局BTSから移動局MSへのデータ伝送は、同様に行われ、ディジタル・オーディオ信号は移動局においてディジタル-アナログ変換器12でアナログ・フォーマットに変換されて受話器口13または同等のものへ送られる。本発明の見地からは、情報が移動局MSから基地送受信局BTSへ送られるのか、それともその逆かということ自体は重要ではない。
【0023】本明細書では、チャネル符号化の前、及びチャネル復号化の後のデータフレームを記述するために音声フレームSP、無音記述子フレームSID、及び背景雑音パラメータ・フレームSIG-CHという用語が使われている。チャネル符号化において、データフレームは、送信段階で前記インタリーブ操作を受けるチャネル符号化フレームにされる。同様にデータ伝送フレーム401?404,501?504は、チャネル符号化及びインタリーブ後のこれらのデータフレームから成る、通信チャネルへ送られるべきフレームを指す。本明細書では、これ以降、インタリーブの例が使用されるが、それではチャネル符号化されたフレームは2つのデータ伝送フレーム401?404,501?504に分割されているけれども、他の分割原理による通信システムにも本発明を適用することができる。
【0024】GSMシステムにおける半速度音声符号化では、無音記述子フレームSIDは背景雑音パラメータを符号化するために33ビットからなる。無音記述子フレームの残りの79ビットは無音記述子識別子SID-SWを構成する。無音記述子フレームのこれら79個の識別ビットのうち、62ビットはチャネル誤りから保護され、残りの17ビットは無保護で送信される。GSM移動通信システムでは、無音記述子識別子SID-CWは、全てのビットが一定の状態にセットされることとなるように形成される(例えば、全てのビットが論理1又は0の状態にセットされる)。しかし、このこと自体は本発明を適用するために重要ではなくて、実際のシステムでは、使用される無音記述子識別子SID-CWは該システムにおいて他の目的に割り当てられていない他のビット組み合わせであっても良い。受信段階では、受信されたデータフレームから無音記述子フレームを検出することを目的とする無音記述子フレーム検出器8,8’を使うのが有利である。これは、例えば、無音記述子フレーム検出器8,8’(以降は、これについてSID検出器8,8’という用語を用いる)が、無音記述子フレーム中の無音記述子識別子SID-CWに割り当てられている受信されたデータフレームのその部分を調べて、それらのビットの論理値を、該システムで使われる無音記述子識別子の対応するビット値と比較するようにして、実現される。無音記述子識別子SID-CWが伝送されるこれらのビットのうち、無音記述子識別子と異なる(即ち、現在のシステムでは論理0状態である)ビットが多ければ多いほど、受信されたデータフレームが無音記述子フレームではない確率が高くなる。受信されたデータフレームは、SID検出器8,8’の出力信号に基づいて4つの種類に分けられる:有効なSIDフレーム、無効なSIDフレーム、良好な音声フレーム、及び使用に適さないフレーム。
【0025】表1はSID検出器8,8’の出力信号がどの様にして形成されるかを示す。無音記述子識別子のために予約されているフィールドの殆ど全てのビットが論理1状態であるときには、SID検出器8,8’のSIDフラグが値2にセットされる。多数のビットが値0である場合には、SIDフラグは値0にセットされる。他の場合には、SIDフラグは値1にセットされる。これに関連して、GSMシステムにおける半速度音声符号化の、この無音記述子フレーム検出アルゴリズムがさらに詳細に記述されている欧州電気通信規格GSM06.41,GSM06.22,及びGSM05.05が参照される。
(当審注 【表1】は省略。)

上記の記載によれば,周知例には,次の技術(以下「周知例記載技術」という。)が記載されているといえる。

「移動局MSから基地送受信局BTSへ音声が伝送されるとき,音声符号器5から,ディジタル信号は,マイクロホンから到来する信号が音声なのか背景雑音なのかを調べるために,音声活動(speech activity)検出器6へ転送され,これに基づいて,音声活動検出器6は,音声符号器5により作られた音声フレーム又は背景雑音発生器7により作られた無音記述子フレームのいずれが伝送されるべきかを選択し,無音記述子フレーム検出器8'は,復号化されたチャネル・フレームから無音記述子フレームを検出し,基地送受信局の無音記述子発生器7'を制御して音声復号器11'で背景雑音信号を作り,基地送受信局BTSから移動局MSへのデータ伝送は,同様に行われ,ディジタル・オーディオ信号は移動局においてディジタル-アナログ変換器12でアナログ・フォーマットに変換されて受話器口13または同等のものへ送られる」技術。

上記周知例記載技術は,要するに,「移動局MS」が「無音記述子フレーム検出器8」により,「基地局送受信局BTS」が「無音記述子フレーム検出器8'」により,「無音記述子フレームSID(silence descriptor frames SID)」をそれぞれ検出する技術であるといえる。
そして,上記「無音記述子フレームSID」は,話が途切れている,途切れ時間に時々送信されるされるものである。
つまり,周知例は,次の技術が周知(以下「周知技術」という。)であることを裏付けているといえる。

「移動局と基地局送受信局の両方がサイレンス記述子の存在を検出する」技術。

第3 当審の判断

1.対比
本願発明と引用発明を比較すると次のことがいえる。

(1) 引用発明における「UE」は本願発明における「ユーザ機器」に相当する。

(2) 通信の技術分野において,「VoIP」が「Voice Over Internet Protocol」を意味し,該「VoIP」が音声伝送をIPネットワーク上で行う技術であることは技術常識である。
また,VoIPにおける音声伝送では,「音声データ」がIPパケット化され,IPネットワーク上を伝送されることは,引用例を提示するまでもなく周知である。
つまり,引用発明において,「VoIPデータ」すなわち「音声データ」が,IPパケット化され,IPネットワーク上を伝送されるといえる。
そうすると,IPネットワーク上を伝送されるIPパケット化された「VoIPデータ」は,「VoIPデータパケット」と,また「IPネットワーク」は「パケットネットワーク」といえる。

(3) 引用発明において,「NodeB」は,「SIDデータ」を受信することにより,どのUEが「サイレンス期間」に入るかを知ることになるのは明らかである。
つまり,「SIDデータ」には,「サイレント期間に入る」情報と,「サイレント期間に入るUE」に関する情報が記述されていると解される。
そうすると,「SIDデータ」は「サイレンス記述子」といえる。

ここで,上記(2)に述べた「VoIP」に係る事項を踏まえると,引用発明における「UE」は,IPネットワーク上でデータの伝送を行うことを前提とした構成を有する端末であると解される。
そうすると,該「UE」が送信する「SIDデータ」も,「VoIPデータ」と同様に,IPネットワーク上での伝送のためIPパケット化されると解される。
このようにして,IPネットワーク上を伝送されるIPパケット化された「SIDデータ」は,「SIDデータパケット」すなわち「サイレンス記述子パケット」といえる。


(4) 引用発明においては,「SIDデータ」を「NodeB」が受信すると,該「SIDデータ」を送信した「UE」に対して,「VoIPデータ」の送信に「割り当てられたリソース」(以下「VoIPリソース」という。)の割当てを該「NodeB」は解除し,SIDのための「リソース」(以下「SIDリソース」という。)を該「UE」に該「NodeB」は割り当てる。

このように,「UE」に対して「リソース」を割り当てる点において,引用発明における「NodeB」は本願発明における「ネットワーク要素」と共通する。

そして,「NodeB」による「VoIPリソース」の「解除」とは,該「VoIPリソース」の「解放」といえる。そして,該「解除」により,引用発明における「UE」が「VoIPリソース」の使用ができなることは当然である。
つまり,「VoIP」の「解除」により,該「UE」は「VoIPリソース」の「使用を停止」するといえる。
このことは,引用発明が,「サイレンス記述子パケットが検出されるとユーザ機器が割り当てられたリソースの使用を停止し,ネットワーク要素が該割り当てられたリソースを解放するステップ」を備えているといえることを示している。

(5) 引用発明においては,「トークスパート期間」に,上記(2)に述べた「VoIPデータパケット」を上記「VoIPリソース」により,また,「サイレント期間」に,上記(3)に述べた「SIDデータパケット」すなわち「サイレンス記述子パケット」を上記「SIDリソース」により「UE」がそれぞれ送信するものである。
つまり,引用発明は,「トークスパート期間」と「サイレント期間」に「パケットネットワークにおいてリソースをスケジューリングするための方法」を開示しているといえる。
そして,引用発明において,「UE」が送信する「VoIPデータ」が「他のUE」に対するものであることは当然である。
そうすると,引用発明が,「UE」と「他のUE」との「UE間」で通信することを示唆していることは明白であり,このような「他のUE」に対しても「NodeB」が「VoIPリソース」を割り当てることは当然である。
つまり,引用発明は本願発明と同様に「ユーザ機器はネットワーク構成要素によって割り当てられたリソースを用いて該ユーザ機器間で通信」する構成を備えているといえる。
そうすると,引用発明において,上記したように「UE間」行う通信は,本願発明と同様に「「VoIPデータパケット」すなわち「データパケット」が送信される間のトークスプラウト期間及びサイレンス記述子パケットが送信される間のサイレント期間」からなるように構成されているといえる。

(6) 上記(1)ないし(5)より,本願発明と引用発明は,次の点で一致し,相違するといえる。

[一致点]
パケットネットワークにおいてリソースをスケジューリングするための方法において,ユーザ機器はネットワーク要素によって割り当てられたリソースを用いて該ユーザ機器間で通信し,該通信はデータパケットが送信される間のトークスプラウト期間及びサイレンス記述子パケットが送信される間のサイレント期間からなり,該方法が,
前記ネットワーク要素が通信のために前記ユーザ機器にリソースを割り当てるステップ,
前記サイレンス記述子パケットが検出されるとユーザ機器が前記割り当てられたリソースの使用を停止し,前記ネットワーク要素が該割り当てられたリソースを解放するステップ,
を備える方法。

[相違点]
1.本願発明は「ユーザ機器及びネットワーク要素の両方がサイレンス記述子パケットの存在を検出するステップ」を備えるのに対して,引用発明にはそのような特定がない点。

2.本願発明は,「ネットワーク要素が,サイレンス記述子パケットが検出されたときに計時を開始するよう構成されたタイマーによって,前記サイレンス記述子パケットを送信するためのインターバルの終りを特定するステップ」を備えるのに対して,引用発明にはそのような「タイマー」に関する特定がない点。

3.本願発明は,「インターバルが終了したとき,又は前記インターバルの終了前にリソースを割り当てるための要求がユーザ機器から受信されたとき,ネットワーク要素が新たなリソースを前記ユーザ機器に割り当てるステップ」を備えるのに対して,引用発明はそのような特定がない点。

2.検討
相違点1について
相違点1のような構成,つまり「移動局と基地局送受信局の両方がサイレンス記述子の存在を検出する」技術は周知であり,引用発明に周知技術を適用することにより,相違点1のような構成することは,当業者が適宜なしえたものである。

相違点2について
引用発明では,「サイレント期間」になると,「リソース」すなわち「SIDリソース」が160msごとに予約されることを前提とし,「UE」は「SIDデータ」すなわち「サイレンス記述子」を送信する。
このことは,「サイレント期間」では,「NodeB」が「UE」に対して「VoIPリソース」の割当てができないことを示していると解される。
つまり,「サイレント期間」に入った後,「VoIPリソース」の割当てを受けることができるのは,「サイレント期間」の終了時に限られることを示していると解される。
そうすると,引用発明において,「サイレント期間」に入った後,「UE」に「VoIPリソース」を新たに割り当てるため,「サイレント期間」の160msの「インターバル」を計時するための「タイマー」を「NodeB」に備えるようにすることは格別なことではないといえる。
換言すれば,引用発明において,「VoIPリソース」を新たに割り当てるため,「NodeB」が,「SIDデータ」が検出されたときに計時を開始するタイマーによって,「SIDデータ」を送信するためのインターバルの終わりを特定するようにすることは,格別なことではないといえる。
以上のとおりであるから,相違点2のような「インターバルの終りを特定するステップ」を備えるように構成することは,当業者が適宜なしえた事項にすぎない。

相違点3について
引用発明では,「VoIPデータ」の生成を開始した後に,「UE」が「アップリンクスケジューリング要求」を送信し,「VoIPリソース」が該「UE」に割り当てられることは明白である。
このことは,上記「アップリンクスケジューリング要求」が,「NodeB」が「VoIPリソース」を「UE」に対して割り当てるための要求であるといえることを示している。
また,引用発明において,「サイレント期間」に入った後,「サイレント期間」内に,「UE」が「VoIPデータ」つまり「音声データ」を生成する状態が生じうることは当然であって,「サイレント期間」内に「音声データ」を生成できないとする技術的理由も発見しない。
そうすると,上記「相違点2について」に述べたように「タイマー」を備えること,「VoIPリソース」の割当てを踏まえると,引用発明において,「サイレント期間」の「インターバル」が終了したとき,又は前記「インターバル」の終了前に「VoIPリソース」を割り当てるための要求が「UE」が受信されたとき,「NodeB」が新たな「VoIPリソース」を前記「UE」に割り当てるようにすることは,当業者が適宜なしえた事項に過ぎないと言わざるを得ない。
以上のとおりであるから,相違点3のような「ネットワーク要素が新たなリソースをユーザ機器に割り当てるステップ」を備えるように構成することは,当業者が適宜なしえた事項であるといえる。

まとめ
以上の検討のとおりであって,本願発明のように構成したことによる効果も格別なものではなく,当業者が予測できる程度のものである。

したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおりであるから,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

したがって,他の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-04 
結審通知日 2014-12-09 
審決日 2014-12-24 
出願番号 特願2010-522156(P2010-522156)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久松 和之  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 近藤 聡
江口 能弘
発明の名称 リソース、ネットワーク要素及びユーザ機器をスケジューリングするための方法  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  

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