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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1300384
審判番号 不服2014-6682  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-10 
確定日 2015-05-07 
事件の表示 特願2009-254400「伝送装置及び伝送方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 5月19日出願公開、特開2011-101192〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成21年11月5日を出願日とする出願であって,平成24年1月25日付けで審査請求がなされ,平成25年7月10日付けで拒絶理由通知(平成25年7月23日発送)がなされ,これに対して平成25年9月20日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたが,平成26年1月8日付けで拒絶査定(平成26年1月14日謄本送達)がなされたものである。
これに対して,「原査定を取り消す。本願の発明は特許すべきものとする,との審決を求める。」ことを請求の趣旨として平成26年4月10日付けで審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされ,平成26年5月1日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告がなされた。


第2.平成26年4月10日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成26年4月10日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.本件補正の内容
平成26年4月10日付け手続補正(以下,「本件補正」という。)の内容は,平成25年9月20日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?20の記載
「 【請求項1】
特定の変換方式を使用して伝送データを照合用データに変換し,且つ該変換方式で被証明データを被照合用データに変換する変換回路と,
通信日時,送受信者のアドレス情報を含む前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記変換回路で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積回路と,
前記蓄積回路が保管する前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記変換回路で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較回路と,
を備える伝送装置。
【請求項2】
特定の変換方式を使用して伝送データを照合用データに変換し,且つ該変換方式で被証明データを被照合用データに変換する変換回路と,
前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記変換回路で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積回路と,
前記蓄積回路が保管する前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記変換回路で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較回路と,
前記伝送データ又は/及び前記組合せ情報の誤り訂正用の訂正情報を生成する訂正情報生成回路と,
を備え,
前記蓄積回路は,前記訂正情報生成回路で生成された前記訂正情報も前記組合せ情報に含めて保管し,
前記変換回路は,前記蓄積回路が保管する前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記訂正情報を取り出し,前記被証明データ又は/及び前記組合せ情報に対して誤り訂正を行い,前記誤り訂正回路が誤り訂正を行った前記被証明データを被照合用データに変換する又は/及び前記被照合用データに対して誤り訂正を行うことを特徴とする伝送装置。
【請求項3】
前記伝送データ又は/及び前記組合せ情報の誤り訂正用の訂正情報を生成する訂正情報生成回路と,
を更に備え,
前記蓄積回路は,前記訂正情報生成回路で生成された前記訂正情報も前記組合せ情報に含めて保管し,
前記変換回路は,前記蓄積回路が保管する前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記訂正情報を取り出し,前記被証明データ又は/及び前記組合せ情報に対して誤り訂正を行い,前記誤り訂正回路が誤り訂正を行った前記被証明データを被照合用データに変換する又は/及び前記被照合用データに対して誤り訂正を行うことを特徴とする請求項1に記載の伝送装置。
【請求項4】
特定の変換方式を使用して伝送データを照合用データに変換し,且つ該変換方式で被証明データを被照合用データに変換する変換回路と,
前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記変換回路で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積回路と,
前記蓄積回路が保管する前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記変換回路で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較回路と,
を備え,
前記蓄積回路は,前記変換回路で使用した前記変換方式の変換方式情報も前記組合せ情報に含めて保管し,
前記変換回路は,所定期間毎に前記変換方式を変更するとともに,前記被証明データを被照合用データに変換する際に,前記蓄積回路が保管する前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記変換方式情報を取り出し,取り出した前記変換方式情報に基づく前記変換方式で前記被証明データを被照合用データに変換することを特徴とする伝送装置。
【請求項5】
前記蓄積回路は,前記変換回路で使用した前記変換方式の変換方式情報も前記組合せ情報に含めて保管し,
前記変換回路は,所定期間毎に前記変換方式を変更するとともに,前記被証明データを被照合用データに変換する際に,前記蓄積回路が保管する前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記変換方式情報を取り出し,取り出した前記変換方式情報に基づく前記変換方式で前記被証明データを被照合用データに変換することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の伝送装置。
【請求項6】
特定の変換方式を使用して伝送データを照合用データに変換し,且つ該変換方式で被証明データを被照合用データに変換する変換回路と,
前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記変換回路で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積回路と,
前記蓄積回路が保管する前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記変換回路で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較回路と,
を備え,
前記伝送データが光信号であり,
前記変換回路は,前記伝送データを光電変換する前に演算処理すること,あるいは前記伝送データを光電変換する前に演算処理することと演算処理した前記伝送データを光電変換した電気信号を演算処理することで前記伝送データを前記照合用データに変換することを特徴とする伝送装置。
【請求項7】
前記伝送データが光信号であり,
前記変換回路は,前記伝送データを光電変換した電気信号を演算処理すること,前記伝送データを光電変換する前に演算処理すること,あるいは前記伝送データを光電変換する前に演算処理することと演算処理した前記伝送データを光電変換した電気信号を演算処理することで前記伝送データを前記照合用データに変換することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の伝送装置。
【請求項8】
特定の変換方式を使用して伝送データを照合用データに変換し,且つ該変換方式で被証明データを被照合用データに変換する変換回路と,
前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記変換回路で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積回路と,
前記蓄積回路が保管する前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記変換回路で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較回路と,
を備え,
前記伝送データが光信号であり,
前記変換回路は,前記伝送データを光電変換する前に演算処理し参照光と光電変換することで生ずるビート信号を用いること,あるいは前記伝送データを光電変換する前に演算処理することで生ずるビート信号を用いることと前記ビート信号を光電変換した電気信号を演算処理することで前記伝送データを前記照合用データに変換することを特徴とする伝送装置。
【請求項9】
前記伝送データが光信号であり,
前記変換回路は,前記伝送データと参照光とで生ずるビート信号を光電変換した電気信号を演算処理すること,前記伝送データを光電変換する前に演算処理し参照光と光電変換することで生ずるビート信号を用いること,あるいは前記伝送データを光電変換する前に演算処理することで生ずるビート信号を用いることと前記ビート信号を光電変換した電気信号を演算処理することで前記伝送データを前記照合用データに変換することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の伝送装置。
【請求項10】
前記変換回路は,所定の識別子を持つ前記伝送データのみ前記被照合用データに変換することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の伝送装置。
【請求項11】
送信装置から受信装置へ伝送データを伝送する途中に配置された伝送装置の伝送方法であって,
前記伝送装置が,
特定の変換方式を使用して前記伝送データを照合用データにする第一変換手順と,
通信日時,送受信者のアドレス情報を含む前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記第一変換手順で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積手順と,
前記変換手順での前記特定の変換方式で被証明データを被照合用データに変換する第二変換手順と,
前記蓄積手順で保管されている前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記第二変換手順で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較手順と,
を有する伝送方法。
【請求項12】
送信装置から受信装置へ伝送データを伝送する途中に配置された伝送装置の伝送方法であって,
前記伝送装置が,
特定の変換方式を使用して前記伝送データを照合用データにする第一変換手順と,
前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記第一変換手順で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積手順と,
前記変換手順での前記特定の変換方式で被証明データを被照合用データに変換する第二変換手順と,
前記蓄積手順で保管されている前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記第二変換手順で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較手順と,
前記第一変換手順の前又は/及び後に行う訂正情報生成手順と,
前記第二変換手順の前に行う誤り訂正手順と,
を有し,
前記訂正情報生成手順において,前記伝送データ又は/及び前記組合せ情報の誤り訂正用の訂正情報を生成し,
前記蓄積手順において,前記訂正情報生成手順で生成された前記訂正情報も前記組合せ情報に含めて保管し,
前記誤り訂正手順において,前記蓄積手順で保管される前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記訂正情報を取り出し,前記被証明データ又は/及び前記組合せ情報に対して誤り訂正を行い,
前記第二変換手順において,前記被証明データを被照合用データに変換する又は/及び被照合用データに対して誤り訂正を行うことを特徴とする伝送方法。
【請求項13】
前記第一変換手順の前又は/及び後に行う訂正情報生成手順と,
前記第二変換手順の前に行う誤り訂正手順と,
をさらに有し,
前記訂正情報生成手順において,前記伝送データ又は/及び前記組合せ情報の誤り訂正用の訂正情報を生成し,
前記蓄積手順において,前記訂正情報生成手順で生成された前記訂正情報も前記組合せ情報に含めて保管し,
前記誤り訂正手順において,前記蓄積手順で保管される前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記訂正情報を取り出し,前記被証明データ又は/及び前記組合せ情報に対して誤り訂正を行い,
前記第二変換手順において,前記被証明データを被照合用データに変換する又は/及び被照合用データに対して誤り訂正を行うことを特徴とする請求項11に記載の伝送方法。
【請求項14】
送信装置から受信装置へ伝送データを伝送する途中に配置された伝送装置の伝送方法であって,
前記伝送装置が,
特定の変換方式を使用して前記伝送データを照合用データにする第一変換手順と,
前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記第一変換手順で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積手順と,
前記変換手順での前記特定の変換方式で被証明データを被照合用データに変換する第二変換手順と,
前記蓄積手順で保管されている前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記第二変換手順で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較手順と,
を有し,
前記第一変換手順で使用する前記変換方式は所定期間毎に変更され,
前記蓄積手順において,前記第一変換手順で使用した前記変換方式の変換方式情報も前記組合せ情報に含めて保管し,
前記第二変換手順において,前記被証明データを被照合用データに変換する際に,前記蓄積手順で保管される前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記変換方式情報を取り出し,取り出した前記変換方式情報に基づく前記変換方式で前記被証明データを被照合用データに変換することを特徴とする伝送方法。
【請求項15】
前記第一変換手順で使用する前記変換方式は所定期間毎に変更され,
前記蓄積手順において,前記第一変換手順で使用した前記変換方式の変換方式情報も前記組合せ情報に含めて保管し,
前記第二変換手順において,前記被証明データを被照合用データに変換する際に,前記蓄積手順で保管される前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記変換方式情報を取り出し,取り出した前記変換方式情報に基づく前記変換方式で前記被証明データを被照合用データに変換することを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の伝送方法。
【請求項16】
送信装置から受信装置へ伝送データを伝送する途中に配置された伝送装置の伝送方法であって,
前記伝送装置が,
特定の変換方式を使用して前記伝送データを照合用データにする第一変換手順と,
前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記第一変換手順で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積手順と,
前記変換手順での前記特定の変換方式で被証明データを被照合用データに変換する第二変換手順と,
前記蓄積手順で保管されている前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記第二変換手順で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較手順と,
を有し,
前記伝送データが光信号であり,
前記第一変換手順において,前記伝送データを光電変換する前に演算処理すること,あるいは前記伝送データを光電変換する前に演算処理することと演算処理した前記伝送データを光電変換した電気信号を演算処理することで前記伝送データを前記照合用データに変換することを特徴とする伝送方法。
【請求項17】
前記伝送データが光信号であり,
前記第一変換手順において,前記伝送データを光電変換した電気信号を演算処理すること,前記伝送データを光電変換する前に演算処理すること,あるいは前記伝送データを光電変換する前に演算処理することと演算処理した前記伝送データを光電変換した電気信号を演算処理することで前記伝送データを前記照合用データに変換することを特徴とする請求項11から15のいずれかに記載の伝送方法。
【請求項18】
送信装置から受信装置へ伝送データを伝送する途中に配置された伝送装置の伝送方法であって,
前記伝送装置が,
特定の変換方式を使用して前記伝送データを照合用データにする第一変換手順と,
前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記第一変換手順で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積手順と,
前記変換手順での前記特定の変換方式で被証明データを被照合用データに変換する第二変換手順と,
前記蓄積手順で保管されている前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記第二変換手順で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較手順と,
を有し,
前記伝送データが光信号であり,
前記第一変換手順において,前記伝送データを光電変換する前に演算処理し参照光と光電変換することで生ずるビート信号を用いること,あるいは前記伝送データを光電変換する前に演算処理することで生ずるビート信号を用いることと演算処理した前記伝送データを光電変換した電気信号を演算処理し参照光と光電変換することで生ずるビート信号を用いることで前記伝送データを前記照合用データに変換することを特徴とする伝送方法。
【請求項19】
前記伝送データが光信号であり,
前記第一変換手順において,前記伝送データと参照光とで生ずるビート信号を光電変換した電気信号を演算処理すること,前記伝送データを光電変換する前に演算処理し参照光と光電変換することで生ずるビート信号を用いること,あるいは前記伝送データを光電変換する前に演算処理することで生ずるビート信号を用いることと演算処理した前記伝送データを光電変換した電気信号を演算処理し参照光と光電変換することで生ずるビート信号を用いることで前記伝送データを前記照合用データに変換することを特徴とする請求項11から15のいずれかに記載の伝送方法。
【請求項20】
前記第一変換手順において,所定の識別子を持つ前記伝送データのみ前記被照合用データに変換することを特徴とする請求項11から19のいずれかに記載の伝送方法。」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)
を,

「 【請求項1】
特定の変換方式を使用して,伝送に際して変化するデータを除外した伝送データ全体を照合用データに変換し,且つ該変換方式で被証明データを被照合用データに変換する変換回路と,
通信日時,送受信者のアドレス情報を含む前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記変換回路で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積回路と,
前記蓄積回路が保管する前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記変換回路で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較回路と,
を備える伝送装置。
【請求項2】
特定の変換方式を使用して,伝送に際して変化するデータを除外した伝送データ全体を照合用データに変換し,且つ該変換方式で被証明データを被照合用データに変換する変換回路と,
前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記変換回路で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積回路と,
前記蓄積回路が保管する前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記変換回路で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較回路と,
前記伝送データ又は/及び前記組合せ情報の誤り訂正用の訂正情報を生成する訂正情報生成回路と,
を備え,
前記蓄積回路は,前記訂正情報生成回路で生成された前記訂正情報も前記組合せ情報に含めて保管し,
前記変換回路は,前記蓄積回路が保管する前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記訂正情報を取り出し,前記被証明データ又は/及び前記組合せ情報に対して誤り訂正を行い,前記誤り訂正回路が誤り訂正を行った前記被証明データを被照合用データに変換する又は/及び前記被照合用データに対して誤り訂正を行うことを特徴とする伝送装置。
【請求項3】
前記伝送データ又は/及び前記組合せ情報の誤り訂正用の訂正情報を生成する訂正情報生成回路と,
を更に備え,
前記蓄積回路は,前記訂正情報生成回路で生成された前記訂正情報も前記組合せ情報に含めて保管し,
前記変換回路は,前記蓄積回路が保管する前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記訂正情報を取り出し,前記被証明データ又は/及び前記組合せ情報に対して誤り訂正を行い,前記誤り訂正回路が誤り訂正を行った前記被証明データを被照合用データに変換する又は/及び前記被照合用データに対して誤り訂正を行うことを特徴とする請求項1に記載の伝送装置。
【請求項4】
特定の変換方式を使用して,伝送に際して変化するデータを除外した伝送データ全体を照合用データに変換し,且つ該変換方式で被証明データを被照合用データに変換する変換回路と,
前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記変換回路で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積回路と,
前記蓄積回路が保管する前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記変換回路で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較回路と,
を備え,
前記蓄積回路は,前記変換回路で使用した前記変換方式の変換方式情報も前記組合せ情報に含めて保管し,
前記変換回路は,所定期間毎に前記変換方式を変更するとともに,前記被証明データを被照合用データに変換する際に,前記蓄積回路が保管する前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記変換方式情報を取り出し,取り出した前記変換方式情報に基づく前記変換方式で前記被証明データを被照合用データに変換することを特徴とする伝送装置。
【請求項5】
前記蓄積回路は,前記変換回路で使用した前記変換方式の変換方式情報も前記組合せ情報に含めて保管し,
前記変換回路は,所定期間毎に前記変換方式を変更するとともに,前記被証明データを被照合用データに変換する際に,前記蓄積回路が保管する前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記変換方式情報を取り出し,取り出した前記変換方式情報に基づく前記変換方式で前記被証明データを被照合用データに変換することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の伝送装置。
【請求項6】
特定の変換方式を使用して,伝送に際して変化するデータを除外した伝送データ全体を照合用データに変換し,且つ該変換方式で被証明データを被照合用データに変換する変換回路と,
前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記変換回路で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積回路と,
前記蓄積回路が保管する前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記変換回路で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較回路と,
を備え,
前記伝送データが光信号であり,
前記変換回路は,前記伝送データを光電変換する前に演算処理すること,あるいは前記伝送データを光電変換する前に演算処理することと演算処理した前記伝送データを光電変換した電気信号を演算処理することで前記伝送データを前記照合用データに変換することを特徴とする伝送装置。
【請求項7】
前記伝送データが光信号であり,
前記変換回路は,前記伝送データを光電変換した電気信号を演算処理すること,前記伝送データを光電変換する前に演算処理すること,あるいは前記伝送データを光電変換する前に演算処理することと演算処理した前記伝送データを光電変換した電気信号を演算処理することで前記伝送データを前記照合用データに変換することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の伝送装置。
【請求項8】
特定の変換方式を使用して,伝送に際して変化するデータを除外した伝送データ全体を照合用データに変換し,且つ該変換方式で被証明データを被照合用データに変換する変換回路と,
前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記変換回路で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積回路と,
前記蓄積回路が保管する前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記変換回路で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較回路と,
を備え,
前記伝送データが光信号であり,
前記変換回路は,前記伝送データを光電変換する前に演算処理し参照光と光電変換することで生ずるビート信号を用いること,あるいは前記伝送データを光電変換する前に演算処理することで生ずるビート信号を用いることと前記ビート信号を光電変換した電気信号を演算処理することで前記伝送データを前記照合用データに変換することを特徴とする伝送装置。
【請求項9】
前記伝送データが光信号であり,
前記変換回路は,前記伝送データと参照光とで生ずるビート信号を光電変換した電気信号を演算処理すること,前記伝送データを光電変換する前に演算処理し参照光と光電変換することで生ずるビート信号を用いること,あるいは前記伝送データを光電変換する前に演算処理することで生ずるビート信号を用いることと前記ビート信号を光電変換した電気信号を演算処理することで前記伝送データを前記照合用データに変換することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の伝送装置。
【請求項10】
前記変換回路は,PONの論理リンク識別情報,又はバーチャルLANタグが所定の識別子を持つ前記伝送データのみ前記被照合用データに変換することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の伝送装置。
【請求項11】
送信装置から受信装置へ伝送データを伝送する途中に配置された伝送装置の伝送方法であって,
前記伝送装置が,
特定の変換方式を使用して,伝送に際して変化するデータを除外した前記伝送データ全体を照合用データにする第一変換手順と,
通信日時,送受信者のアドレス情報を含む前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記第一変換手順で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積手順と,
前記変換手順での前記特定の変換方式で被証明データを被照合用データに変換する第二変換手順と,
前記蓄積手順で保管されている前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記第二変換手順で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較手順と,
を有する伝送方法。
【請求項12】
送信装置から受信装置へ伝送データを伝送する途中に配置された伝送装置の伝送方法であって,
前記伝送装置が,
特定の変換方式を使用して,伝送に際して変化するデータを除外した前記伝送データ全体を照合用データにする第一変換手順と,
前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記第一変換手順で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積手順と,
前記変換手順での前記特定の変換方式で被証明データを被照合用データに変換する第二変換手順と,
前記蓄積手順で保管されている前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記第二変換手順で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較手順と,
前記第一変換手順の前又は/及び後に行う訂正情報生成手順と,
前記第二変換手順の前に行う誤り訂正手順と,
を有し,
前記訂正情報生成手順において,前記伝送データ又は/及び前記組合せ情報の誤り訂正用の訂正情報を生成し,
前記蓄積手順において,前記訂正情報生成手順で生成された前記訂正情報も前記組合せ情報に含めて保管し,
前記誤り訂正手順において,前記蓄積手順で保管される前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記訂正情報を取り出し,前記被証明データ又は/及び前記組合せ情報に対して誤り訂正を行い,
前記第二変換手順において,前記被証明データを被照合用データに変換する又は/及び被照合用データに対して誤り訂正を行うことを特徴とする伝送方法。
【請求項13】
前記第一変換手順の前又は/及び後に行う訂正情報生成手順と,
前記第二変換手順の前に行う誤り訂正手順と,
をさらに有し,
前記訂正情報生成手順において,前記伝送データ又は/及び前記組合せ情報の誤り訂正用の訂正情報を生成し,
前記蓄積手順において,前記訂正情報生成手順で生成された前記訂正情報も前記組合せ情報に含めて保管し,
前記誤り訂正手順において,前記蓄積手順で保管される前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記訂正情報を取り出し,前記被証明データ又は/及び前記組合せ情報に対して誤り訂正を行い,
前記第二変換手順において,前記被証明データを被照合用データに変換する又は/及び被照合用データに対して誤り訂正を行うことを特徴とする請求項11に記載の伝送方法。
【請求項14】
送信装置から受信装置へ伝送データを伝送する途中に配置された伝送装置の伝送方法であって,
前記伝送装置が,
特定の変換方式を使用して,伝送に際して変化するデータを除外した前記伝送データ全体を照合用データにする第一変換手順と,
前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記第一変換手順で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積手順と,
前記変換手順での前記特定の変換方式で被証明データを被照合用データに変換する第二変換手順と,
前記蓄積手順で保管されている前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記第二変換手順で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較手順と,
を有し,
前記第一変換手順で使用する前記変換方式は所定期間毎に変更され,
前記蓄積手順において,前記第一変換手順で使用した前記変換方式の変換方式情報も前記組合せ情報に含めて保管し,
前記第二変換手順において,前記被証明データを被照合用データに変換する際に,前記蓄積手順で保管される前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記変換方式情報を取り出し,取り出した前記変換方式情報に基づく前記変換方式で前記被証明データを被照合用データに変換することを特徴とする伝送方法。
【請求項15】
前記第一変換手順で使用する前記変換方式は所定期間毎に変更され,
前記蓄積手順において,前記第一変換手順で使用した前記変換方式の変換方式情報も前記組合せ情報に含めて保管し,
前記第二変換手順において,前記被証明データを被照合用データに変換する際に,前記蓄積手順で保管される前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記変換方式情報を取り出し,取り出した前記変換方式情報に基づく前記変換方式で前記被証明データを被照合用データに変換することを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の伝送方法。
【請求項16】
送信装置から受信装置へ伝送データを伝送する途中に配置された伝送装置の伝送方法であって,
前記伝送装置が,
特定の変換方式を使用して,伝送に際して変化するデータを除外した前記伝送データ全体を照合用データにする第一変換手順と,
前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記第一変換手順で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積手順と,
前記変換手順での前記特定の変換方式で被証明データを被照合用データに変換する第二変換手順と,
前記蓄積手順で保管されている前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記第二変換手順で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較手順と,
を有し,
前記伝送データが光信号であり,
前記第一変換手順において,前記伝送データを光電変換する前に演算処理すること,あるいは前記伝送データを光電変換する前に演算処理することと演算処理した前記伝送データを光電変換した電気信号を演算処理することで前記伝送データを前記照合用データに変換することを特徴とする伝送方法。
【請求項17】
前記伝送データが光信号であり,
前記第一変換手順において,前記伝送データを光電変換した電気信号を演算処理すること,前記伝送データを光電変換する前に演算処理すること,あるいは前記伝送データを光電変換する前に演算処理することと演算処理した前記伝送データを光電変換した電気信号を演算処理することで前記伝送データを前記照合用データに変換することを特徴とする請求項11から15のいずれかに記載の伝送方法。
【請求項18】
送信装置から受信装置へ伝送データを伝送する途中に配置された伝送装置の伝送方法であって,
前記伝送装置が,
特定の変換方式を使用して,伝送に際して変化するデータを除外した前記伝送データ全体を照合用データにする第一変換手順と,
前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記第一変換手順で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積手順と,
前記変換手順での前記特定の変換方式で被証明データを被照合用データに変換する第二変換手順と,
前記蓄積手順で保管されている前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記第二変換手順で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較手順と,
を有し,
前記伝送データが光信号であり,
前記第一変換手順において,前記伝送データを光電変換する前に演算処理し参照光と光電変換することで生ずるビート信号を用いること,あるいは前記伝送データを光電変換する前に演算処理することで生ずるビート信号を用いることと演算処理した前記伝送データを光電変換した電気信号を演算処理し参照光と光電変換することで生ずるビート信号を用いることで前記伝送データを前記照合用データに変換することを特徴とする伝送方法。
【請求項19】
前記伝送データが光信号であり,
前記第一変換手順において,前記伝送データと参照光とで生ずるビート信号を光電変換した電気信号を演算処理すること,前記伝送データを光電変換する前に演算処理し参照光と光電変換することで生ずるビート信号を用いること,あるいは前記伝送データを光電変換する前に演算処理することで生ずるビート信号を用いることと演算処理した前記伝送データを光電変換した電気信号を演算処理し参照光と光電変換することで生ずるビート信号を用いることで前記伝送データを前記照合用データに変換することを特徴とする請求項11から15のいずれかに記載の伝送方法。
【請求項20】
前記第一変換手順において,PONの論理リンク識別情報,又はバーチャルLANタグが所定の識別子を持つ前記伝送データのみ前記被照合用データに変換することを特徴とする請求項11から19のいずれかに記載の伝送方法。 」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)
に補正するものである。


2.目的要件
(1) 本件補正は,本願の願書に添付された特許請求の範囲,明細書,又は図面に基づくものといえるから,特許法第17条の2第3項の規定に適合しているといえる。また,特許法第17条の2第4項の規定に適合していることも明らかである。
そして,本件補正は,本件審判の請求と同時にする補正であり,上記「1.本件補正の内容」のとおり,特許請求の範囲についてする補正であるので,本件補正の目的を検討する。

(2) 補正前の請求項1,2,4,6,及び8の「特定の変換方式を使用して伝送データを照合用データに変換し」との記載を,補正後の請求項1,2,4,6,及び8において「特定の変換方式を使用して,伝送に際して変化するデータを除外した伝送データ全体を照合用データに変換し」と補正すること,補正前の請求項11,12,14,16,及び18の「特定の変換方式を使用して前記伝送データを照合用データにする第一変換手順」との記載を,補正後の請求項11,12,14,16,及び18において「特定の変換方式を使用して,伝送に際して変化するデータを除外した前記伝送データ全体を照合用データにする第一変換手順」と補正すること,及び補正前の請求項10及び20の「所定の識別子を持つ前記伝送データ」との記載を,補正後の請求項10及び20において「PONの論理リンク識別情報,又はバーチャルLANタグが所定の識別子を持つ前記伝送データ」と補正することは,いずれも補正前の各請求項に係る発明を特定する事項を限定するものであって,産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではない。
してみると,本件補正の目的は,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)(以下,「限定的減縮」という。)に該当する。


3.独立特許要件
本件補正は,上記「2.目的要件」において示したように特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当するから,本件補正後の請求項14に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(1) 本件補正発明
本件補正発明は,補正後の請求項14に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。(再掲する。)

「 送信装置から受信装置へ伝送データを伝送する途中に配置された伝送装置の伝送方法であって,
前記伝送装置が,
特定の変換方式を使用して,伝送に際して変化するデータを除外した前記伝送データ全体を照合用データにする第一変換手順と,
前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記第一変換手順で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積手順と,
前記変換手順での前記特定の変換方式で被証明データを被照合用データに変換する第二変換手順と,
前記蓄積手順で保管されている前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記第二変換手順で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較手順と,
を有し,
前記第一変換手順で使用する前記変換方式は所定期間毎に変更され,
前記蓄積手順において,前記第一変換手順で使用した前記変換方式の変換方式情報も前記組合せ情報に含めて保管し,
前記第二変換手順において,前記被証明データを被照合用データに変換する際に,前記蓄積手順で保管される前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記変換方式情報を取り出し,取り出した前記変換方式情報に基づく前記変換方式で前記被証明データを被照合用データに変換することを特徴とする伝送方法。」

(2)先行技術文献
ア.引用文献1
本願の出願日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であって,原審の平成25年7月10日付けの拒絶理由通知において引用された,星野浩志,「通信技術 気になるキーワード 丸わかり 早わかり トレースバック監視/検知」,N+I NETWORK,ソフトバンクパブリッシング株式会社,2003年12月1日,第3巻 第11号,p.112?115(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。また,「○4」は,丸印の中に数字の4が記載された記号とする。)

A.「「IPトレースバック」と呼ばれる技術には,さまざまな手法が提案されている。ここでは,代表的な4つの手法について,簡単に解説する。
・・・(中略)・・・
○4パケットハッシュ記録(Hash Based)方式
パケット記録方式と同様,ネットワーク中の各所で監視記録したパケット情報を基に,問題のパケットの通過経路を調べる方式。ただし,前述のパケット記録方式と異なり,記録をハッシュ化するのでストレージをそれほど必要としない。」(113頁左欄下から12行?中欄下から2行)

B.「パケットハッシュ記録方式では,同じパケットがネットワーク中の各所で記録された場合,そのハッシュ値がすべて同一になるようにする必要がある。IPパケットには,ネットワーク中を伝播する間にルータによって書き換えられるTTLなどのフィールドがある。そのため,これらをマスクしたうえでハッシュ値を算出する(図1)。」(114頁左欄4行?12行)

C.「パケットハッシュ記録方式を採用したIPトレースバックシステムの一例として,横河電機の「PAFFI(PAcket Footmark FInder)」を取り上げ,構成や導入方法について解説しよう。PAFFIは,「Footmarker」「Manager」「Gate」の3つのノステムで構成される(表1)。また,図2のように単一組織内部に導入することを想定している。
IDSで検知されたパケットは,アラートの情報とパケットのタイムスタンプ情報とともに「Gate」に送られる。「Gate」はIDSから受け取った追跡対象のパケットと,そのパケットを検索する時刻の範囲の情報を,「Manager」に送信する。
・・・(中略)・・・
また,検索する時刻の範囲は,通常パケットのタイムスタンプを基準に前後1秒に限定する。「Manager」は,管理下のすべての「Footmarker」に対して,これらの情報を送信する。各「Footmarker」は,受け取ったパケットからハッシュ値などの「Footmark」を算出し,事前に記録していた「Footmark」と一致するものを,指定された時刻の範囲の中から検索する。結果は,「Footmarker」から「Manager」を経由して「Gate」およひIDSに戻り,テータベースに蓄積され,その後の分析やアクションに利用される。」(114頁左欄下から6行?右欄5行)

D.「PAFFIを組織内部に導入する場合に,どこに配置すべきか。これは,外部組織との接続をしている境界ルータや,各フロアおよひサーバセグメントのレイヤ2スイッチのアップリンクに,Footmarkerを接続する方法が考えられる。接続にはイーサネットケーブルから直接ケーブルタップ装置で分岐するか,ミラーポートに接続する方法をとる(図3)。」(114頁右欄6行?14行)

E. 図1


F. 表1



イ.引用文献2
本願の出願日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であって,原審の平成25年7月10日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2009-81556号公報(平成21年4月16日公開。以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

G.「【0063】
このように,ハッシュ値の計算に,第1の識別子と第2の識別子と第3の識別子とで指定された特定のパケットのみを用いるため,ストリームを構成する全パケットを用いてハッシュ値を計算する場合よりも,受信側での計算負荷を軽減することができる。なお,ハッシュ値の生成アルゴリズムは,改竄されにくくするために適宜変更するのが好適であり,ハッシュ値の計算に用いるパケットの数n(対象TSP数n)は,受信装置の処理能力に応じて指定することができる。また,第3の識別子によって,対象TSPであることを明示することができるため,第1の識別子と第2の識別子に該当するパケットであっても,パケットロスが発生すると,対象外のTSPを誤ってハッシュ計算に使用してしまうことを完全に防止することが可能となる。つまり,第2の識別子に基づいて,ハッシュ値を生成しても同様の効果を得ることができる。」

ウ.参考文献1
本願の出願日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であって,原審の平成26年1月8日付けの拒絶査定において引用された,門林雄基 他,「IPトレースバック技術」,情報処理,社団法人情報処理学会,2001年12月15日,第42巻 第12号,p.1175?1180(以下,「参考文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

H.「パケットの記録を効率よく保持することができれば,IPヘッダを流用あるいは拡張することなく逆探知が可能となる.Snoerenらはパケットを記緑する代わりに,パケットの先頭部分から計算した複数のハッシュ値を記緑する方式を提案している8).具体的には,IPヘッダのうち経路中で不変である部分とペイロード先頭の8byte (計28byte)を対象とし,k個の独立なハッシュ関数を適用した結果を2^(n)bitのビットマップとして保持するというものである(図-4).ビットマップは一定間隔でゼロクリアされ,そのさいに期間と期間中に用いたハッシュ関数とともにdigest tableに記録される.個々の観測点において独立なハッシュ関数を用い,また一定期間ののちにハッシュ関数を変更することでk個のハッシュ値がすべて衝突する可能性をできるだけ低くできるという考え方である.
あるパケットが通過したかどうかは,パケットの先頭部分を用いてk個のハッシュ関数を計算することで検査することができる.計算結果と2^(n)bitのビットマップを比較し,すべてのビットが1であれば高い確率でパケットが通過したといえる.」(1179頁右欄15行?34行)


(3) 引用発明の認定
引用文献1に記載されている事項について検討する。

ア.上記A.の記載から,引用文献1には,「パケットハッシュ記録方式を用いたIPトレースバックシステム」が記載されているといえる。
さらに,上記C.に「パケットハッシュ記録方式を採用したIPトレースバックシステムの一例として,横河電機の「PAFFI(PAcketFootmarkFInder)」を取り上げ」と記載され,上記D.に「PAFFIを組織内部に導入する場合に,どこに配置すべきか。これは,外部組織との接続をしている境界ルータ・・・(中略)・・・に,Footmarkerを接続する方法が考えられる。」と記載されていることから,引用文献1には,「ルータに接続された,パケットハッシュ記録方式を用いたIPトレースバックシステム」が記載されているといえる。

イ.
(ア) 上記B.には,「パケットハッシュ記録方式では,同じパケットがネットワーク中の各所で記録された場合,そのハッシュ値がすべて同一になるようにする必要がある。IPパケットには,ネットワーク中を伝播する間にルータによって書き換えられるTTLなどのフィールドがある。そのため,これらをマスクしたうえでハッシュ値を算出する(図1)。」と記載され,上記E.(図1)には「ハッシュ値計算用マスクの例」として,ヘッダとペイロードからなるパケットの全体から,「TOS/COS」,「TTL」,及び「Header Checksum」をマスクする例が図示されているから,引用文献1には,「ヘッダとペイロードからなるパケットの全体から,ネットワーク中を伝播する間にルータによって書き換えられるフィールドをマスクしたうえでハッシュ値を算出する」ことが記載されているといえる。

(イ) 上記F.(表1)には,「PAFFI」を構成する「Footmarker」が「通過するパケットの特徴情報(ハッシュ値等)である「Footmark」と通過時刻を記録蓄積する」ことが記載されている。そして,上記C.の記載から,上記F.(表1)の記載は,「パケットハッシュ記録方式を採用したIPトレースバックシステムの一例」であるといえることを鑑みれば,上記(ア)で示した「ネットワーク中を伝播する間にルータによって書き換えられるフィールドをマスクしたうえでハッシュ値を算出する」のに用いられる「パケット」は,上記F.に示される「通過するパケット」に対応するものであるといえる。

(ウ) 上記(ア)及び(イ)に示したことから,引用文献1には,「通過するパケットのヘッダとペイロードからなるパケットの全体から,ネットワーク中を伝播する間にルータによって書き換えられるフィールドをマスクしたうえでハッシュ値を算出する」ことが記載されているといえる。

ウ.上記F.には,「PAFFI」を構成する「Footmarker」が「通過するパケットの特徴情報(ハッシュ値等)である「Footmark」と通過時刻を記録蓄積する」ことが記載されているから,引用文献1には,「通過するパケットのハッシュ値と前記通過するパケットの通過時刻を記録」することが記載されているといえる。

エ.
(ア) 上記C.には,「IDSで検知されたパケットは,アラートの情報とパケットのタイムスタンプ情報とともに「Gate」に送られる。「Gate」はIDSから受け取った追跡対象のパケットと,そのパケットを検索する時刻の範囲の情報を,「Manager」に送信する。・・・(中略)・・・「Manager」は,管理下のすべての「Footmarker」に対して,これらの情報を送信する。各「Footmarker」は,受け取ったパケットからハッシュ値などの「Footmark」を算出し」と記載されているから,引用文献1には,「追跡対象のパケットからハッシュ値を算出する」ことが記載されているといえる。

(イ) 上記C.には,「各「Footmarker」は,受け取ったパケットからハッシュ値などの「Footmark」を算出し,事前に記録していた「Footmark」と一致するものを,指定された時刻の範囲の中から検索する。」と記載されており,ハッシュ値が一致するためには,同じハッシュ関数を用いる必要があることは自明であるから,上記「受け取ったパケットからハッシュ値などの「Footmark」を算出」する際に用いるハッシュ関数と,「事前に記録していた「Footmark」」を算出する際に用いたハッシュ関数は,同一のものであると解される。また,上記C.に記載された「事前に記録していた「Footmark」」は,上記ウ.に示した構成において記録された「通過するパケットのハッシュ値」であるといえる。

(ウ) 上記(ア)及び(イ)に示したことから,引用文献1には,「前記通過するパケットのハッシュ値を算出したハッシュ関数を用いて,追跡対象のパケットからハッシュ値を算出」することが記載されているといえる。

オ.上記C.には,「IDSで検知されたパケットは,アラートの情報とパケットのタイムスタンプ情報とともに「Gate」に送られる。「Gate」はIDSから受け取った追跡対象のパケットと,そのパケットを検索する時刻の範囲の情報を,「Manager」に送信する。
・・・(中略)・・・
また,検索する時刻の範囲は,通常パケットのタイムスタンプを基準に前後1秒に限定する。「Manager」は,管理下のすべての「Footmarker」に対して,これらの情報を送信する。各「Footmarker」は,受け取ったパケットからハッシュ値などの「Footmark」を算出し,事前に記録していた「Footmark」と一致するものを,指定された時刻の範囲の中から検索する。」と記載されているから,引用文献1には,「追跡対象のパケットを検索する時刻の範囲を指定し,事前に記録していたハッシュ値から前記追跡対象のパケットのハッシュ値と一致するものを,指定された時刻の範囲の中から検索」することが記載されているといえる。

カ.上記ア.ないしオ.に示したことから,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 ルータに接続された,パケットハッシュ記録方式を用いたIPトレースバックシステムにおいて,
通過するパケットのヘッダとペイロードからなるパケットの全体から,ネットワーク中を伝播する間にルータによって書き換えられるフィールドをマスクしたうえでハッシュ値を算出し,
前記通過するパケットのハッシュ値と前記通過するパケットの通過時刻を記録し,
前記通過するパケットのハッシュ値を算出したハッシュ関数を用いて,追跡対象のパケットからハッシュ値を算出し,
追跡対象のパケットを検索する時刻の範囲を指定し,事前に記録していたハッシュ値から前記追跡対象のパケットのハッシュ値と一致するものを,指定された時刻の範囲の中から検索する,
方法。」

(4) 対比
ア. 引用発明と本件補正発明を対比する。
(ア) 上記A.には,「パケットハッシュ記録方式」とは,「ネットワーク中の各所で監視記録したパケット情報を基に,問題のパケットの通過経路を調べる方式」であることが記載されている。そして,情報技術分野における「ネットワーク」とは,「送信装置から受信装置へ伝送データを伝送する」ものであることは明らかであるから,当該「ネットワーク中の各所」とは,「送信装置から受信装置へ伝送データを伝送する途中」であるといえる。
さらに,当該「ネットワーク中の各所」において,「パケット情報」を「監視記録」し,「問題のパケットの通過経路を調べる」ためには,当該「ネットワーク中の各所」に何らかの装置を配置する必要があることは,当該技術分野の当業者にとっては自明であるし,「ネットワーク中の各所」にルータ等の「伝送装置」を配置することは,通常のネットワークにおいて,当然なされていることといえるし,引用発明の「パケットハッシュ方式を用いたIPトレースバックシステム」は,「ルータに接続された」ものである。してみると,引用発明の「パケットハッシュ方式を用いたIPトレースバックシステム」は,ネットワーク中の各所,すなわち「送信装置から受信装置へ伝送データを伝送する途中」に「伝送装置」が配置されたものといえる。
よって,引用発明の「ルータに接続された,パケットハッシュ方式を用いたIPトレースバックシステムにおいて」実行される「方法」は,本件補正発明の「送信装置から受信装置へ伝送データを伝送する途中に配置された伝送装置の伝送方法」に相当する。

(イ) 引用発明の「通過するパケットのヘッダとペイロードからなるパケット」は,本件補正発明の「伝送データ」に対応し,引用発明の「ネットワーク中を伝播する間にルータによって書き換えられるフィールドをマスク」することは,本件補正発明の「伝送に際して変化するデータを除外」することに対応する。また,引用発明の「ハッシュ値を算出」することは,「特定の変換方式を使用して」変換することであるといえる。さらに,引用発明において,「通過するパケットのヘッダとペイロードからなるパケットの全体から,ネットワーク中を伝播する間にルータによって書き換えられるフィールドをマスクしたうえで」算出される「ハッシュ値」は,算出された後に,記録され,「追跡対象のパケットのハッシュ値」と一致するかが検索されるのであるから,「照合用データ」といえるものである。
してみると,引用発明の「通過するヘッダとペイロードからなるパケットの全体から,ネットワーク中を伝播する間にルータによって書き換えられるフィールドをマスクしたうえでハッシュ値を算出」することは,本件補正発明の「特定の変換方式を使用して,伝送に際して変化するデータを除外した前記伝送データ全体を照合用データにする第一変換手順」に相当する。

(ウ) 引用発明において「前記通過するパケットのハッシュ値と前記通過するパケットの通過時刻を記録」することは,「前記通過するパケットのハッシュ値」と「前記通過するパケットの通過時刻」を組み合わせて記録することであると解することができる。また,引用発明の「通過するパケットの通過時刻」は,「通過するパケット」の通信情報を同定できる情報であるといえる。
してみると,引用発明の「前記通過するパケットのハッシュ値と前記通過するパケットの通過時刻を記録」することは,本件補正発明の「前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記第一変換手順で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積手順」に相当する。

(エ) 本件補正発明における「前記変換手順での前記特定の変換方式」とは,「第一変換手順」で使用した「特定の変換方式」を指すものであると解される。
そして,引用発明の「ハッシュ値を算出」することが,「特定の変換方式を使用して」変換することであるといえることは,上記(イ)において示したとおりである。
してみると,引用発明の「前記通過するパケットのハッシュ値を算出したハッシュ関数を用いて,追跡対象のパケットからハッシュ値を算出」することは,本件補正発明の「前記変換手順での前記特定の変換方式で被証明データを被照合用データに変換する第二変換手順」に相当する。

(オ) 引用発明において,「追跡対象のパケットを検索する時刻の範囲を指定し」,「指定された時刻の範囲の中から」「事前に記録していたハッシュ値」を検索することは,本件補正発明において,「前記蓄積手順で保管されている前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出」すことに相当する。また,引用発明において,「事前に記録していたハッシュ値から前記追跡対象のパケットのハッシュ値と一致するものを」検索することは,本件補正発明において「前記被証明データが前記第二変換手順で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する」ことに相当する。
してみると,引用発明の「追跡対象のパケットを検索する時刻の範囲を指定し,事前に記録していたハッシュ値から前記追跡対象のパケットのハッシュ値と一致するものを,指定された時刻の範囲の中から検索」することは,本件補正発明の「前記蓄積手順で保管されている前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記第二変換手順で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較手順」に相当する。

イ.上記ア.において示したことから,本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は,次のとおりである。

[一致点]
送信装置から受信装置へ伝送データを伝送する途中に配置された伝送装置の伝送方法であって,
前記伝送装置が,
特定の変換方式を使用して,伝送に際して変化するデータを除外した前記伝送データ全体を照合用データにする第一変換手順と,
前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記第一変換手順で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積手順と,
前記変換手順での前記特定の変換方式で被証明データを被照合用データに変換する第二変換手順と,
前記蓄積手順で保管されている前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記第二変換手順で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較手順と,
を有することを特徴とする伝送方法。

[相違点]
本件補正発明は,「前記第一変換手順で使用する前記変換方式は所定期間毎に変更され,
前記蓄積手順において,前記第一変換手順で使用した前記変換方式の変換方式情報も前記組合せ情報に含めて保管し,
前記第二変換手順において,前記被証明データを被照合用データに変換する際に,前記蓄積手順で保管される前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記変換方式情報を取り出し,取り出した前記変換方式情報に基づく前記変換方式で前記被証明データを被照合用データに変換する」構成であるが,引用発明は,そのような構成ではない点

(5) 判断
ア.上記G.(引用文献2)に,「ハッシュ値の生成アルゴリズムは,改竄されにくくするために適宜変更するのが好適であり」と記載されていることから,ハッシュ値を算出する構成において,ハッシュ値の生成アルゴリズム(すなわち,ハッシュ関数)を適宜変更することは,周知技術であるといえる。

イ.また,上記H.(参考文献1)に,「具体的には,・・・(中略)・・・k個の独立なハッシュ関数を適用した結果を2^(n)bitのビットマップとして保持するというものである(図-4).ビットマップは一定間隔でゼロクリアされ,そのさいに期間と期間中に用いたハッシュ関数とともにdigest tableに記録される.個々の観測点において独立なハッシュ関数を用い,また一定期間ののちにハッシュ関数を変更することでk個のハッシュ値がすべて衝突する可能性をできるだけ低くできるという考え方である.」と記載されていることから,ハッシュ関数を変更するタイミングを一定期間ごととすること,及び,算出されたハッシュ値と算出に使用したハッシュ関数を合わせて記録することは,周知技術であるといえる。

ウ.さらに,上記H.(参考文献1)に,「あるパケットが通過したかどうかは,パケットの先頭部分を用いてk個のハッシュ関数を計算することで検査することができる.計算結果と2^(n)bitのビットマップを比較し,すべてのビットが1であれば高い確率でパケットが通過したといえる.」と記載されていることから,ハッシュ値を用いてデータの同一性を判断する際に,照合用のデータに対して用いたハッシュ関数を,被照合用のデータに対しても用いることは,当業者にとって自明であるといえる。

エ.上記ア.ないしウ.に示したことから,ハッシュ関数を適宜変更すること,ハッシュ関数を変更するタイミングを一定期間ごととすること,及び,算出されたハッシュ値と算出に使用したハッシュ関数を合わせて記録することは,いずれも周知技術であって,照合用のデータに対して用いたハッシュ関数を,被照合用のデータに対しても用いることは,当業者にとって自明であるといえるから,引用発明において,引用文献2及び参考文献1にみられる各周知技術を適用して,上記相違点に係る構成とすることは,当業者が容易になし得ることである。


4.補正却下の決定についてのむすび
上記3.に示したとおり,補正後の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3.本願発明について

1.本願発明
平成26年4月10日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成25年9月20日付け手続補正書の請求の範囲の請求項1?請求項20に記載された事項により特定されるものである。そして,その請求項14に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみて,補正前の請求項14に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。(再掲する。)

「 送信装置から受信装置へ伝送データを伝送する途中に配置された伝送装置の伝送方法であって,
前記伝送装置が,
特定の変換方式を使用して前記伝送データを照合用データにする第一変換手順と,
前記伝送データの通信情報を同定できる同定用情報と前記第一変換手順で変換された前記照合用データとを組み合わせた組合せ情報を保管する蓄積手順と,
前記変換手順での前記特定の変換方式で被証明データを被照合用データに変換する第二変換手順と,
前記蓄積手順で保管されている前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記照合用データを取り出し,前記被証明データが前記第二変換手順で変換された前記被照合用データと取り出された前記照合用データとを比較する比較手順と,
を有し,
前記第一変換手順で使用する前記変換方式は所定期間毎に変更され,
前記蓄積手順において,前記第一変換手順で使用した前記変換方式の変換方式情報も前記組合せ情報に含めて保管し,
前記第二変換手順において,前記被証明データを被照合用データに変換する際に,前記蓄積手順で保管される前記組合せ情報の中から,前記被証明データに添付される被証明同定用情報と同じ内容の前記同定用情報が組み合わされている前記変換方式情報を取り出し,取り出した前記変換方式情報に基づく前記変換方式で前記被証明データを被照合用データに変換することを特徴とする伝送方法。」


2 先行技術文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び引用文献2,原査定で引用された参考文献1,並びに各文献の記載事項は,上記「第2.平成26年4月10日付けの手続補正についての補正却下の決定」の[理由]「3.独立特許要件」(2)に記載したとおりである。


3 対比・判断
本願発明は,上記「第2.平成26年4月10日付けの手続補正についての補正却下の決定」の[理由]「3.独立特許要件」(1)に記載した本件補正発明から,「伝送に際して変化するデータを除外した前記伝送データ全体」との特定事項における,「伝送に際して変化するデータを除外した」との限定事項と「全体」との限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに他の事項を附加したものに相当する本件補正発明が,上記「第2.平成26年4月10日付けの手続補正についての補正却下の決定」の[理由]「3.独立特許要件」(3)ないし(5)に記載したとおり,引用発明,引用文献2にみられる周知技術,及び参考文献1にみられる周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明,引用文献2にみられる周知技術,及び参考文献1にみられる周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。


4.むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-12 
結審通知日 2015-03-13 
審決日 2015-03-24 
出願番号 特願2009-254400(P2009-254400)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松平 英打出 義尚  
特許庁審判長 石井 茂和
特許庁審判官 小林 大介
西村 泰英
発明の名称 伝送装置及び伝送方法  
代理人 渡部 比呂志  
代理人 豊田 義元  
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