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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1300390
審判番号 不服2014-8193  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-02 
確定日 2015-05-07 
事件の表示 特願2009- 3673「漏れ防止カバー」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月22日出願公開、特開2010-159081〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成21年1月9日の出願であって、平成25年8月14日付けで拒絶理由が通知され、平成25年10月18日付けで特許請求の範囲及び明細書を対象とする手続補正がなされ、平成26年1月28日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成26年5月2日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲及び明細書を対象とする手続補正がなされ、平成26年9月3日付けで請求人より上申書が提出されたものである。

第2.平成26年5月2日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年5月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.目的要件違反について
本件補正は、請求項1について、ゴムキャップの材質、加締め形態を限定するものである。請求項2?11については、補正前後で実質的相違はない。
本件補正は、さらに、「スリーブを固定する鍔」という新たな要素を有する請求項12を新たに加えるもので、請求項数を増加する補正であるとともに、新たな技術的事項を付加するものである。この請求項12を加える補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認めることはできない。
また、この請求項12を加える補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明のいずれに該当するとも認められない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
なお、請求人は、平成26年9月3日付けで上申書で「特許法第17条の2第5項に違反する点については承服します」旨述べている。(「2.前置報告書に対する意見」参照)


2.独立特許要件の違反について
請求人は平成26年9月3日付けで上申書を提出し、「審判請求時にした補正のうち請求項1?11に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に該当しません。したがいまして、同補正のうち請求項1?11について審理していただくべく、同補正のうち請求項12を削除する補正をする機会を与えてくださいますようお願い致します。」(「3.むすび」参照)と主張している。そこで、後に、請求項12を削除する補正がされたとして、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?11に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、一応、以下に検討しておく。
(1)本願補正発明
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、本件補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「気化性あるいは液化性の内容物を封入し、内容物が過剰内圧で噴出するコンデンサ又は電池の容器を、その噴出部が内部に入るように、シリコーンゴムで形成された厚さ0.1?3.0mmのゴムキャップで被覆した漏れ防止カバーであって、
該ゴムキャップが、印字された情報を透けて見えるように透明又は半透明であり、情報を印字できるように透明又は半透明若しくは着色又は不透明であり、
該ゴムキャップに覆われた該容器を該ゴムキャップの上からその側面の根元側の末端で取り囲む一線の周囲が、連続してスリーブで加締められて封鎖されていることにより、
該容器外へ噴出する気化あるいは液化した該内容物、及び/又は飛散する該容器等の破片が、膨張する該ゴムキャップ内に留まる漏れ防止カバー。」
なお、上記請求項1の「ゴムキャップが、印字された情報を透けて見えるように透明又は半透明であり、情報を印字できるように透明又は半透明若しくは着色又は不透明であり」の記載は、本願明細書の段落【0052】?【0053】の「ゴムキャップ13が透明又は半透明であると、その内部に収まっているシュリンクパッケージチューブ14上のコンデンサ2の情報が透視できるので好ましい。…また、シュリンクパッケージチューブ14を省き、シュリンクパッケージチューブ14に印刷すべきコンデンサ2の規格、型番、容量、耐電圧などの情報をゴムキャップ13にシリコーンオイル含有インキのような適当なインキでインクジェット方式などで直接、印刷すると、金属容器15とシュリンクチューブとの間の漏れが防止でき、また生産効率が良いため、好ましい。この場合のゴムキャップは不透明若しくは半透明、又はそれとともに着色されていることが好ましい。」の記載からみて、「ゴムキャップが、印字された情報を透けて見えるように透明又は半透明であり」と「情報を印字できるように透明又は半透明若しくは着色又は不透明であり」の二つの態様を選択的に記載したものと解される。

(2)引用文献及び引用発明
ア.本願の原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-286969号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0002】
…。防爆弁は、金属ケースの一部に薄肉部を形成し、内圧がしきい値を超えた場合に開弁され機能する。これにより、電解コンデンサは爆発することなく安全に故障に至る。」
(イ)「【0014】
また、本発明のアルミ電解コンデンサの内容物漏洩防止構造では、故障時に内圧が上昇して爆発することを防止する防爆弁が設けられたアルミ電解コンデンサと、前記防爆弁が作動した時に前記防爆弁から噴出する前記アルミ電解コンデンサの内容物又は該内容物の反応物を封入するキャップと、を有するアルミ電解コンデンサの内容物漏洩防止構造において、前記キャップは、少なくとも、風船状に伸張して前記アルミ電解コンデンサの内容物又は該内容物の反応物を封入する収容部と、前記防爆弁が作動した場合に、前記内圧により前記アルミ電解コンデンサから外れることを防止する環状の伸縮部と、を備え、前記環状に収縮部は、前記アルミ電解コンデンサのケースに設けられた凹部に係止されることを特徴としている。
【0015】
これにより、環状の伸縮部がアルミ電解コンデンサに設けられている凹部で係止し、アルミ電解コンデンサの凹部で収縮するので、キャップを外れ難くすることができる。」
(ウ)「【0034】
続いて、図4を参照してアルミ電解コンデンサ100に取り付けて、白煙や異臭の外部への漏洩を防止するためのキャップ200について説明する。図4は、図3に示すアルミ電解コンデンサ100に取り付けるキャップ200の正面図である。
【0035】
キャップ200は、その機能により分類した場合、収容部201、縦伸縮部202及び環状伸縮部203より構成される。キャップ200は、伸縮自在な弾性を有する材料により形成される。好ましくは、キャップ200は、伸縮性に加え、耐熱性及び電解液に対する耐侵食性が高い材料により形成するようにする。
【0036】
収容部201は、防爆弁107の作動時に噴出する気体及び電解液等を収容する部分である。収容部201が、気体及び電解液等を収容することにより、外部への白煙や異臭の漏洩を防止している。具体的には、収容部201は風船状に自在に伸縮することにより気体及び電解液等を収容する。これにより、発生する気体及び電解液等の体積の大小によることなく確実に収容可能である。また、防爆弁107の非作動時には、収容部201は収縮した状態である。従って、金属ケース102上方のスペースを大きく占有することはない。すなわち、収容部201が自在に伸縮するので、発生する気体及び電解液等の体積が大きい場合を想定して、収容部201を大きくする必要がない。
【0037】
縦伸縮部202は、縦方向に自在に伸縮する機能を有する。…。
【0038】
環状伸縮部203は、横方向に自在に伸縮する機能を有する。環状伸縮部203は、例えば環状のゴム等を内蔵することにより構成される。これにより、環状伸縮部203は、収縮してアルミ電解コンデンサ100に付勢するので、キャップ200を外れ難くする。また、キャップ200をアルミ電解コンデンサ100に取り付ける際に、アルミ電解コンデンサ100の径に応じて環状伸縮部203が伸縮するので、様々な径のアルミ電解コンデンサ100に取り付けることができる。」
(エ)「【0047】
またキャップ200は、防爆弁107の周囲を囲むようにアルミ電解コンデンサ100に取り付けられ、防爆弁107が作動した時に風船状に膨らむので、アルミ電解コンデンサ100から噴出する電解液又は気化した電解液や水素ガス等が多い場合でも、キャップ200が膨らみ対応することができる。
【0048】
また、キャップ200は、防爆弁107が作動した時にアルミ電解コンデンサ100から外れてしまうのを防止する環状伸縮部203を有しているので、環状伸縮部203が収縮してアルミ電解コンデンサ100に付勢し、アルミ電解コンデンサ100から噴出する気体の圧力によってキャップ200が外れることを防止できる。
【0049】
また、環状伸縮部203は、環状のゴムを含んで構成されるので、アルミ電解コンデンサ100から噴出する気体の圧力によってキャップ200が外れることを容易に防止できる。また、キャップ200の取り付け工程においてゴムを伸長させてアルミ電解コンデンサに掛けるだけで簡易に取り付けることが可能である。
【0050】
…。
【0051】
また、アルミ電解コンデンサ100の内容物漏洩防止構造によれば、故障時に内圧が上昇して爆発することを防止する防爆弁107が設けられたアルミ電解コンデンサ100と、防爆弁107が作動した時に防爆弁107から噴出するアルミ電解コンデンサ100の電解液又は気化した電解液及び水素ガス等を封入するキャップ200を有している。更に、キャップ200は、少なくとも、風船状に伸張してアルミ電解コンデンサ100の電解液又は気化した電解液及び水素ガスを封入する収容部201と、防爆弁107が作動した場合に、内圧によりアルミ電解コンデンサ100から外れることを防止する環状伸縮部203と、を備え、環状収縮部203は、アルミ電解コンデンサ100の金属ケース102に設けられた凹部104に係止するので、キャップ200を外れ難くすることができる。また、キャップ200の取り付け工程においてどの位置までキャップ200を伸張させて取り付けるかが一定化され、取り付け作業の精度を向上することができる。」
(オ)「【0054】
また、本実施形態では、キャップ200は、同一の材料によって構成したが、例えば、機能の違いによって異なった材料を用いるようにしても良い。
【0055】
また、本実施形態では、キャップ200は透明であるが、特にこれに限定されるものでなく、色付きでも良い。しかし、透明の方がキャップ200を取り付けた後もアルミ電解コンデンサ100の定格等を視認することができる。
【0056】
また、本実施形態では、キャップ200は、収容部201、縦伸縮部202及び環状伸縮部203より構成されているが、特にこれに限定されるものでなく、気体や電解液等が漏洩することを防止できれば適用可能である。すなわち、前記キャップの構成要素において、何れかが欠けていても良いし、新たな構成を加えても良い。
【0057】
また、本実施形態では、キャップ200の縦伸縮部202は、蛇腹状に形成されるものとしたが、形状は蛇腹状に限定されるものではなく、キャップ200自体を伸縮性のある材料で構成することにより十分に縦伸縮部202として機能する。」
(カ)キャップ及びキャップを取り付ける手順の正面図である(段落【0061】参照)図4?5から、ゴムキャップ200が環状伸縮部203を根元側の末端に有する点がみてとれる。

上記(エ)より、環状伸縮部203が収縮してアルミ電解コンデンサ100に付勢され、(イ)より、キャップは、風船状に伸張して前記アルミ電解コンデンサの内容物又は該内容物の反応物を封入するので、上記の記載事項によれば、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「内圧が上昇して、薄肉部として設けられた防爆弁107より電解液又は気化した電解液及び水素ガス等を噴出するアルミ電解コンデンサ100の金属ケース102と、前記金属ケース102に前記防爆弁107の周囲を囲むように取り付けた伸縮自在な弾性を有する材料により形成されるキャップ200からなるアルミ電解コンデンサ100の内容物漏洩防止構造であって、
該キャップ200がアルミ電解コンデンサ100の定格等を視認することができるように透明であり、
収縮してアルミ電解コンデンサ100に対して付勢される環状伸縮部203をアルミ電解コンデンサ100の根元側の末端に有し、
該キャップ200が風船状に伸張して前記防爆弁107から噴出する気体及び電解液等を封入するアルミ電解コンデンサ100の内容物漏洩防止構造。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「アルミ電解コンデンサ100」は、本願補正発明の「コンデンサ」に相当し、引用発明の「電解液又は気化した電解液」は「電解液」が「気化性」の内容物であることを意味するので本願補正発明の「気化性あるいは液化性の内容物」に相当し、同じく「防爆弁107」は「噴出部」に、「内圧が上昇して、薄肉部として設けられた防爆弁107より電解液又は気化した電解液及び水素ガス等を噴出するアルミ電解コンデンサ100の金属ケース102」は防爆弁107より噴出が起こるのは過剰内圧時と認められるので「気化性あるいは液化性の内容物を封入し、内容物が過剰内圧で噴出するコンデンサ」「の容器」に相当する。
引用発明の「伸縮自在な弾性を有する材料により形成されるキャップ200」と、本願補正発明の「ゴムキャップ」とは、「弾性材料により形成されるキャップ」である限りにおいて相当する。
引用発明の「金属ケース102に前記防爆弁107の周囲を囲むように取り付けた伸縮自在な弾性を有する材料により形成されるキャップ200からなるアルミ電解コンデンサ100の内容物漏洩防止構造」は、本願補正発明の「コンデンサ」「の容器を、その噴出部が内部に入るように」「ゴムキャップで被覆した漏れ防止カバー」に相当する。
本願補正発明の「印字された情報」は、本願明細書の段落【0023】の「容器15の側面が、コンデンサの規格、型番、容量、耐電圧などの情報を表示したシュリンクパッケージチューブ14で覆われている。」との記載などからみて、「コンデンサの容器に付された情報」といえる。また、一般にアルミニウム電解コンデンサは容器に情報を付するので、引用発明の「アルミ電解コンデンサ100の定格等」は「コンデンサの容器に付された情報」と認められるから、引用発明の「アルミ電解コンデンサ100の定格等」と本願補正発明の「印字された情報」は「コンデンサの容器に付された情報」である限りにおいて一致する。
引用発明の「キャップ200がアルミ電解コンデンサ100の定格等を視認することができるように透明であり」と本願補正発明の「ゴムキャップが、印字された情報を透けて見えるように透明又は半透明であり、情報を印字できるように透明又は半透明若しくは着色又は不透明であり」は、後者が2.(1)のとおり2つの態様を含むが、その1つである「ゴムキャップが、印字された情報を透けて見えるように透明又は半透明であり」と「キャップが、コンデンサの容器に付された情報を透けて見えるように透明であ」る限りにおいて一致する。
引用発明の「キャップ200」が「風船状に伸張して前記防爆弁107から噴出する気体及び電解液等を封入する」は、「防爆弁107」が薄肉部として設けられており、内圧がしきい値を超えた場合に飛散して開弁されると認められるので(上記(2)(ア)参照)、本願補正発明の「該容器外へ噴出する気化あるいは液化した該内容物、及び/又は飛散する該容器等の破片が、膨張する該ゴムキャップ内に留まる」に相当する。
引用発明の「キャップ200」が「収縮してアルミ電解コンデンサ100に対して付勢される環状伸縮部203をアルミ電解コンデンサ100の根元側の末端に有し」と本願補正発明の「ゴムキャップに覆われた該容器を該ゴムキャップの上からその側面の根元側の末端で取り囲む一線の周囲が、連続してスリーブで加締められて封鎖されている」とは、キャップが「コンデンサの容器の根元側の末端で封鎖される」限りにおいて一致する。
また、本願の図5からみて、上記(2)の(カ)の図5に示されたアルミ電解コンデンサ100の正面は本願補正発明の「側面」に対応し、引用発明はキャップがコンデンサの容器の「側面」の根元側の末端で封鎖されると認められるので、以上より、本願補正発明と引用発明を対比すると、両者は、
「気化性あるいは液化性の内容物を封入し、内容物が過剰内圧で噴出するコンデンサの容器を、その噴出部が内部に入るように、弾性材料により形成されるキャップで被覆した漏れ防止カバーであって、
該キャップが、コンデンサの容器に付された情報を透けて見えるように透明であり、
コンデンサの容器の側面の根元側の末端で封鎖され、容器外へ噴出する気化あるいは液化した該内容物、及び/又は飛散する該容器等の破片が、膨張する該キャップ内に留まる漏れ防止カバー。」
である点で一致し、以下の各点で相違している。
[相違点1]
本願補正発明では、キャップが「シリコーンゴムで形成された厚さ0.1?3.0mmのゴムキャップ」であるのに対して、引用発明では、キャップが「伸縮自在な弾性を有する材料」であるものの、具体的な材料や厚さは規定されていない点。

[相違点2]
本願補正発明では、コンデンサの容器に付された情報が「印字された情報」であるのに対し、引用発明では、「アルミ電解コンデンサの定格等」の情報が「印字された」ものと規定していない点。

[相違点3]
本願補正発明では、「ゴムキャップに覆われた容器を該ゴムキャップの上からその側面の根元側の末端で取り囲む一線の周囲が、連続してスリーブで加締められて封鎖されてい」るのに対して、引用発明では、「キャップが収縮してアルミ電解コンデンサに対して付勢される環状伸縮部をアルミ電解コンデンサの側面の根元側の末端に有」するものの、スリーブで加締められていない点。

(3)当審の判断
上記相違点1について検討すると、シリコーンゴムが耐熱性や耐薬品性等の耐久性を有することは周知技術である(例えば、実願昭62-53924号(実開昭63-162522号)のマイクロフィルムの3頁末行?4頁2行参照)。
引用発明のキャップ200は「好ましくは、キャップ200は、伸縮性に加え、耐熱性及び電解液に対する耐侵食性が高い材料により形成するようにする。」(上記(2)(ウ)参照)とされるので、当該のキャップ200をシリコーンゴムで形成することは当業者が容易になし得たことである。
キャップ材料の厚さを0.1?3.0mmとすることは、伸縮性、破裂防止等を勘案して、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項にすぎない。
上記相違点2について検討すると、コンデンサの容器に付する情報を印字によって形成することは周知技術であり(例えば、特開2001-141426号公報の段落【0001】?【0004】参照)、作業性や耐久性を考慮して、引用発明の定格等の情報をコンデンサの金属ケース102に、印字により付することは当業者が容易になしえたことである。
上記相違点3について検討すると、引用発明のキャップ200は「環状伸縮部203が収縮してアルミ電解コンデンサ100に付勢し、アルミ電解コンデンサ100から噴出する気体の圧力によってキャップ200が外れることを防止できる。」(上記(2)(エ)参照)としているが、内圧を受ける筒状のゴム部材の取付けにおいて、当該筒状のゴム部材が容易に外れないように取付け部分をスリーブで加締めて封鎖させることは周知技術であり(例えば、特開昭60-44630号公報のかしめリング5、特開2004-66497号公報のスリーブ19参照)、引用発明の環状収縮部が外れるのを確実に防ぐために、その部分をスリーブで加締めて金属ケース102を取り囲む一線の周囲を連続して付勢し、封鎖することは当業者が容易になし得たことである。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、上記(1)に記載したように、「ゴムキャップが、印字された情報を透けて見えるように透明又は半透明であり」と「情報を印字できるように透明又は半透明若しくは着色又は不透明であり」は選択的に用いられる態様であると解されるが、仮に、「情報を印字できるように透明又は半透明若しくは着色又は不透明であり」の構成が必須であると捉えたとしても、以下に記載するようにこの点に進歩性は認められない。
上記相違点に加えて、引用発明と本願補正発明は
[相違点4]
本願補正発明では、キャップが「情報を印字できる」キャップであるのに対して、引用発明では、キャップに「情報を印字できる」とは規定されていない点。
で相違するが、上記相違点4について検討すると、本願補正発明では、キャップに印字する方法を特に限定してはおらず、周知の印刷方法を用いることができると認められる。そして、シリコーンゴムに印刷をすること(例えば、特開平10ー235989号公報の段落【0008】、特開2003ー7161号公報の段落【0020】及び【0027】参照)は周知技術にすぎず、引用発明において、情報がより明確に視認しやすいように、キャップに印刷で定格等を印字したシリコーンゴム製のキャップを用いることは当業者が容易になし得たことである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年10月18日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲、明細書及び図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「気化性あるいは液化性の内容物を封入し、内容物が過剰内圧で噴出するコンデンサ又は電池の容器を、その噴出部が内部に入るように、シリコーンゴムで形成された厚さ0.1?3.0mmのゴムキャップで被覆した漏れ防止カバーであって、
該ゴムキャップに覆われた該容器を取り囲む一線の周囲が、連続して加締められて封鎖されていることにより、
該容器外へ噴出する気化あるいは液化した該内容物、及び/又は飛散する該容器等の破片が、膨張する該ゴムキャップ内に留まる漏れ防止カバー。」

2.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献、引用発明は、前記「第2.」の「2.」「(2)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、実質、本願補正発明(前記「第2.」「2.」「(1)」の補正後の請求項1参照。)から、「ゴムキャップが、印字された情報を透けて見えるように透明又は半透明であり、情報を印字できるように透明又は半透明若しくは着色又は不透明であり」との限定事項、及び「ゴムキャップの上からその側面の根元側の末端で」「スリーブ」で加締められているとの限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.」の「2.」「(3)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明も引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、原査定は妥当であるから、他の請求項に係る発明について判断するまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-03 
結審通知日 2015-03-10 
審決日 2015-03-24 
出願番号 特願2009-3673(P2009-3673)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (B65D)
P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 和俊  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 千葉 成就
熊倉 強
発明の名称 漏れ防止カバー  
代理人 大西 浩之  
代理人 小宮 良雄  

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