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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1300458
審判番号 不服2013-19019  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-01 
確定日 2015-05-07 
事件の表示 特願2010-241410「実オブジェクトによってオンライン及びゲーム中における仮想オブジェクトをアンロックする方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 5月19日出願公開、特開2011-100451〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本件に係る出願(以下「本願」と記す。)は、
2009年10月29日(以下「優先日」と記す。)付けのアメリカ合衆国での出願を基礎とする、パリ条約に基づく優先権主張を伴う、
2010年10月27日を出願日とする外国語書面出願であって、
平成22年12月27日付けで審査請求がなされるとともに、特許法第36条の2第2項の規定による外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文が提出され、
平成24年11月15日付けで拒絶理由通知(平成24年11月27日発送)がなされ、
平成25年2月25日付けで意見書が提出されるとともに、
同日付けで手続補正書が提出され、
平成25年5月28日付けで拒絶査定(平成25年6月4日謄本発送、送達)がなされたものである。

本件審判請求は、
「原査定を取り消す。この出願の発明は特許をすべきものとする、との審決を求める。」との趣旨で
平成25年10月1日付けでなされたものであり、
同日付けで手続補正書が提出され、
平成25年10月29日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、
平成25年11月28日付けで当該報告に対する意見を求める旨の審尋(平成25年12月3日発送)がなされ、これに対して
平成26年3月3日付けで回答書が提出されたものである。


第2.平成25年10月1日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成25年10月1日付けの手続補正を却下する。


[理由]
1.本件補正の内容
平成25年10月1日付けの手続補正(以下「本件補正」と記す。)は、特許請求の範囲について、下記の本件補正前の特許請求の範囲から、下記の本件補正後の特許請求の範囲に補正しようとするものである。
<本件補正前の特許請求の範囲>
「 【請求項1】
実オブジェクトに視覚的に対応する仮想オブジェクトへのアクセスをプロセッサにて提供する方法であって、
ネットワークアプリケーションに対してのユーザアカウントを前記プロセッサが認証するステップと、
前記実オブジェクト上又は前記実オブジェクトに付随する資料で見ることができるコードの正当性を前記プロセッサが確認するステップと、
前記正当性の確認に応えて、前記ネットワークアプリケーションで用いる前記仮想オブジェクトへの前記ユーザアカウントのアクセスを前記プロセッサが許可するステップと、
対応するオフラインのビデオゲームアプリケーションにおける前記仮想オブジェクトを前記プロセッサがアンロックするステップと
を備える、実オブジェクトに対応する仮想オブジェクトへのアクセス提供方法。
【請求項2】
前記プロセッサによる前記ネットワークアプリケーションが前記仮想オブジェクトをディスプレイ上に表示させるステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コードの正当性を確認するステップに先立って、前記プロセッサがユーザ入力から前記コードを受信するステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記仮想オブジェクトは、前記ネットワークアプリケーションに、前記実オブジェクトの視覚的なレプリカを含むことによって前記実オブジェクトに対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記コードは、前記実オブジェクトに印刷されていることにより前記実オブジェクト上に見ることができる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記コードは、前記実オブジェクトに付随する資料に印刷されていることにより前記付随する資料上に見ることができる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記付随する資料は、前記実オブジェクトの小売包装である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記コードは、一連の数字であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記コードは、一連の英数字である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記コードは、バーコードである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記実オブジェクトは被服であり、
前記仮想オブジェクトは、ネットワークアプリケーションにおいてユーザアカウントのアバターが着用できる視覚的なレプリカである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ネットワークアプリケーションは、持続的なオンラインのソーシャルネットワーキングアプリケーションである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
実オブジェクトに視覚的に対応する仮想オブジェクトへのアクセスを提供するサーバであって、
該サーバは、
ネットワークアプリケーションに対してのユーザアカウントを認証するステップと、
前記実オブジェクト上又は前記実オブジェクトに付随する資料で見ることができるコードの正当性を確認するステップと、
前記正当性の確認に応えて、前記ネットワークアプリケーションで用いる前記仮想オブジェクトへの前記ユーザアカウントのアクセスを許可するステップと、
対応するオフラインのビデオゲームアプリケーションにおける前記仮想オブジェクトをアンロックするステップと、を実行するように設定されたプロセッサを備える、実オブジェクトに対応する仮想オブジェクトへのアクセス提供サーバ。
【請求項14】
前記プロセッサは、前記コードの正当性の確認に先立って、ユーザ入力から前記コードを受信するようにさらに設定された、請求項13に記載のサーバ。
【請求項15】
前記仮想オブジェクトは、前記ネットワークアプリケーションに、前記実オブジェクトの視覚的なレプリカを含むことによって前記実オブジェクトに対応する、請求項13に記載のサーバ。
【請求項16】
前記コードは、前記実オブジェクトに印刷されていることにより前記実オブジェクト上に見ることができる、請求項13に記載のサーバ。
【請求項17】
前記コードは、前記実オブジェクトに付随する資料に印刷されていることにより付随する資料上に見ることができる、請求項13に記載のサーバ。
【請求項18】
前記付随する資料は、前記実オブジェクトの小売包装である、請求項13に記載のサーバ。
【請求項19】
前記実オブジェクトは被服であり、
前記仮想オブジェクトは、ネットワークアプリケーションにおいてユーザアカウントのアバターが着用することができる視覚的なレプリカである、請求項13に記載のサーバ。
【請求項20】
前記ネットワークアプリケーションは、持続的なオンラインのソーシャルネットワーキングアプリケーションである、請求項13に記載のサーバ。」
<本件補正後の特許請求の範囲>
「 【請求項1】
実オブジェクトに視覚的に対応する仮想オブジェクトへのアクセスをプロセッサにて提供する方法であって、
ネットワークアプリケーションに対してのユーザアカウントを前記プロセッサが認証するステップと、
前記実オブジェクト上又は前記実オブジェクトに付随する資料で見ることができるコードの正当性を前記プロセッサが確認するステップと、
前記正当性の確認に応えて、前記ネットワークアプリケーションで前記ユーザアカウントのユーザのアバターが用いる前記仮想オブジェクトへの前記ユーザアカウントのアクセスを前記プロセッサが許可するステップと、
対応するオフラインのビデオゲームアプリケーションにおける前記仮想オブジェクトを前記プロセッサがアンロックするステップと
を備える、実オブジェクトに対応する仮想オブジェクトへのアクセス提供方法。
【請求項2】
前記プロセッサによる前記ネットワークアプリケーションが前記仮想オブジェクトをディスプレイ上に表示させるステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コードの正当性を確認するステップに先立って、前記プロセッサがユーザ入力から前記コードを受信するステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記仮想オブジェクトは、前記ネットワークアプリケーションに、前記実オブジェクトの視覚的なレプリカを含むことによって前記実オブジェクトに対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記コードは、前記実オブジェクトに印刷されていることにより前記実オブジェクト上に見ることができる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記コードは、前記実オブジェクトに付随する資料に印刷されていることにより前記付随する資料上に見ることができる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記付随する資料は、前記実オブジェクトの小売包装である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記コードは、一連の数字であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記コードは、一連の英数字である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記コードは、バーコードである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記実オブジェクトは被服であり、
前記仮想オブジェクトは、ネットワークアプリケーションにおいてユーザアカウントのアバターが着用できる視覚的なレプリカである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ネットワークアプリケーションは、持続的なオンラインのソーシャルネットワーキングアプリケーションである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
実オブジェクトに視覚的に対応する仮想オブジェクトへのアクセスを提供するサーバであって、
該サーバは、
ネットワークアプリケーションに対してのユーザアカウントを認証するステップと、
前記実オブジェクト上又は前記実オブジェクトに付随する資料で見ることができるコードの正当性を確認するステップと、
前記正当性の確認に応えて、前記ネットワークアプリケーションで前記ユーザアカウントのユーザのアバターが用いる前記仮想オブジェクトへの前記ユーザアカウントのアクセスを許可するステップと、
対応するオフラインのビデオゲームアプリケーションにおける前記仮想オブジェクトをアンロックするステップと、を実行するように設定されたプロセッサを備える、実オブジェクトに対応する仮想オブジェクトへのアクセス提供サーバ。
【請求項14】
前記プロセッサは、前記コードの正当性の確認に先立って、ユーザ入力から前記コードを受信するようにさらに設定された、請求項13に記載のサーバ。
【請求項15】
前記仮想オブジェクトは、前記ネットワークアプリケーションに、前記実オブジェクトの視覚的なレプリカを含むことによって前記実オブジェクトに対応する、請求項13に記載のサーバ。
【請求項16】
前記コードは、前記実オブジェクトに印刷されていることにより前記実オブジェクト上に見ることができる、請求項13に記載のサーバ。
【請求項17】
前記コードは、前記実オブジェクトに付随する資料に印刷されていることにより付随する資料上に見ることができる、請求項13に記載のサーバ。
【請求項18】
前記付随する資料は、前記実オブジェクトの小売包装である、請求項13に記載のサーバ。
【請求項19】
前記実オブジェクトは被服であり、
前記仮想オブジェクトは、ネットワークアプリケーションにおいてユーザアカウントのアバターが着用することができる視覚的なレプリカである、請求項13に記載のサーバ。
【請求項20】
前記ネットワークアプリケーションは、持続的なオンラインのソーシャルネットワーキングアプリケーションである、請求項13に記載のサーバ。」


2.補正の根拠及び目的要件について
(1)本件補正のうち本件補正後の請求項1及び13についてする補正は、次の補正事項よりなるものである
<補正事項>
本件補正前の請求項1及び13の第4段落のネットワークアプリケーションで用いるとされた「前記仮想オブジェクト」を、「前記ユーザアカウントのユーザのアバターが用いる前記仮想オブジェクト」とする補正。


(2)補正事項について
上記補正事項は、補正前の請求項1及び13における発明を特定するための事項である「仮想オブジェクト」をより下位概念化する補正であり、外国語書面の第8頁第8行の記載、明細書の翻訳文の【0017】の記載を根拠とするものであって、これによって当該発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が格別変更されるものではない。
したがって、上記補正の根拠及び目的は、特許法第17条の2第3項の規定を満足するとともに、同条第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」(以下「限定的減縮」と記す。)に相当する。


3.独立特許要件について
本件補正後の請求項1についてする補正は、限定的減縮を目的とする上記補正事項を含むものであるから、該請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.本件補正発明
本件補正発明は、上記1.の本件補正後の特許請求の範囲において【請求項1】として記載した次のとおりのものである。

<本件補正発明>
「 実オブジェクトに視覚的に対応する仮想オブジェクトへのアクセスをプロセッサにて提供する方法であって、
ネットワークアプリケーションに対してのユーザアカウントを前記プロセッサが認証するステップと、
前記実オブジェクト上又は前記実オブジェクトに付随する資料で見ることができるコードの正当性を前記プロセッサが確認するステップと、
前記正当性の確認に応えて、前記ネットワークアプリケーションで前記ユーザアカウントのユーザのアバターが用いる前記仮想オブジェクトへの前記ユーザアカウントのアクセスを前記プロセッサが許可するステップと、
対応するオフラインのビデオゲームアプリケーションにおける前記仮想オブジェクトを前記プロセッサがアンロックするステップと
を備える、実オブジェクトに対応する仮想オブジェクトへのアクセス提供方法。」


3-2.先行技術

(1)引用文献1
本願の出願前である上記優先日よりも前に頒布または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原審の拒絶の査定の理由である上記平成24年11月15日付けの拒絶理由通知において引用された、下記引用文献には、それぞれ、下記引用文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。)

<引用文献1>欧州特許出願公開第1933269号明細書(2008年6月18日公開)

<引用文献記載事項1-1>
「[0075] The Entertainment System 1 is comprised of a server subsystem 2 for interacting with the users 10 via a user computer being operated by the user. The server subsystem can utilize a server 3, for serving content, including web pages, data, commands, and/or programs, for example, to the user computer. In addition, the server subsystem can include a reception subsystem 4, for receiving information and commands from the users 10. Alternatively, the server 3 and reception subsystem 4 might be combined into a single computer application, such as a commercially available web server, for example, running on one or more computers. The current system will utilize commercially available applications to implement much of the server subsystem.
[0076] The Entertainment System 1 also comprises a Storage Subsystem 5, for storing system data, user IDs and passwords, toy registration codes, personalized user information, etc. utilized by the various subsystems. The Storage Subsystem 5 of the current system will utilize a commercially available database application running on commercially available hardware, for example.
[0077] A Registration Subsystem 6 is used for registering the user and the user's toy into the system, so that the user has access to restricted portions of the system. The Registration Subsystem 6 may utilize its own dedicated application and hardware, or could be combined with or share the Server Subsystem 2 applications and/or hardware. The registration subsystem examines the registration code against stored data relating to a plurality of registration codes each representing a toy for sale. 」
(当審訳:
[0075]エンターテインメント・システム1は、ユーザによって操作されているユーザ・コンピューターによってユーザ10と対話するために、サーバー・サブシステム2で構成されます。サーバー・サブシステムは、ユーザ・コンピューターへ、コンテンツ、例えば、ウェブ・ページや、データや、コマンドおよび/またはプログラムなどが含まれますが、これらを提供するために、サーバー3を利用することができます。これに加えて、サーバー・サブシステムはユーザ10から情報とコマンドを得るために、受理サブシステム4を含むことができます。選択的に、サーバー3および受理サブシステム4は、例えば、1台もしくは複数台のコンピューターを動かす、商業的に利用されているウェブサーバのような単一のコンピューターアプリケーションへと組み合わせられるかもしれません。現行システムは、サーバー・サブシステムの多くをインプリメントするために、商業的に可能なアプリケーションを利用するでしょう。
[0076]エンターテインメント・システム1は、さらに様々なサブシステムによって利用されて、システムデータ、ユーザーIDおよびパスワードの格納、玩具の登録コード、ユーザ個人情報などのために、ストレージ・サブシステム5を含みます。例えば、現行システムでのストレージ・サブシステム5は、商業的に可能なハードウェア上で作動する商業的に可能なデータベース・アプリケーションを利用するでしょう。
[0077]登録サブシステム6は、システムへ、ユーザおよびユーザの玩具を登録するために使用されます。その結果、ユーザはシステムの限られれた部分にアクセスします。登録・サブシステム6はそれ自身の専用アプリケーションおよびハードウェアを利用するかもしれないか、あるいは、サーバー・サブシステム2と結合及び/または共有することができます。登録サブシステムは、登録コードを、各々販売中の玩具の登録コードに関係する記憶データに対して検査します。)

<引用文献記載事項1-2>
「[0090]Figure 1A shows an implementation of the current system utilizing an Apache Secure Web server 240 for serving files over secure connection (HTTPS, SSL mode), and an Apache Web server 250 for serving files over regular HTTP. A custom Socket Server 260, which is an XML socket server, written in PERL, is also utilized for providing independent environments for game sessions.
[0091]Items 242, 244, and 246 are parts of adoption center (discussed below), which is a flash application with PHP backend. Item 242 provides for user registration, using a form-driven flash application which validates the registration code and creates a user account within the system. A pet creation application 244, is a form driven flash application designed for guiding the user through pet creation process, and validating the registration code.
[0092]Authentication/Login process 246 is a flash application validating user credentials on the server side and spawning an API core in case of validation. It also has module designed for password retrieval based on collected user information, and currently passes user data to a client side API, and may in the future pass user data and a generated encryption key for a current session to a client side API.
[0093]Items 252 & 254 are Different media (files) available on the server subsystem for user use. Item 254 represents Flash Movies and Games available for the user. Item 256 represents the server side API. Chat 262 and Multi-user games interactions API (MAPI) 264 are a part of Client side API and are used for setting up and maintaining connection to the socket server, authenticating the user, and work in a pass-through mode for multi-user games/environment to exchange messages.」
(当審訳:
[0090] 図1Aは、安全な接続(HTTPS、SSLモード)下でのファイル提供を行うApache Secure Web server(当審注:ウェブサーバーのシェア最大手である。)240、および、一般的なHTTP上のファイルを提供するApache Web server250を利用する現行システムの概要を示します。カスタム・ソケット・サーバー260(それはPERLの中で書かれて、XMLソケット・サーバーである)も、ゲーム・セッションのために独立した環境を提供するために利用されます。
[0091]アイテム242、244および246は、採用センター(以下に議論される)の一部です。それはPHPバックエンドを備えたフラッシュアプリケーションです。アイテム242は、登録コードを有効にするフォーム・ドリブン・フラッシュ・アプリケーションを使用しながらユーザ登録を提供し、かつ、システム内でのユーザアカウントを作成します。ペットの生成アプリケーション244は、ペット生成プロセスの間、ユーザにガイドを提供し、登録コードを有効にするために設計された、フォーム・ドリブン・フラッシュアプリケーションです。
[0092]認証/ログイン・プロセス246は、サーバー側のユーザー信用を有効にし、有効である場合にはAPIコアを出没させるフラッシュアプリケーションです。さらに、それは集めたユーザ情報に基づいたパスワード検索のためにモジュールを設計します。また、それは現在利用者データをクライアント側APIへ渡し、クライアント側APIへの現在のセッションの将来のパス利用者データおよび生成された暗号鍵中でしてもよい。
[0093]アイテム252 & 254は、ユーザ使用のためのサーバー・サブシステムで利用可能な異なるメディア(ファイル)です。アイテム254はユーザに利用可能なフラッシュ・ムービーおよびゲームを表わします。アイテム256はサーバー側APIを表わします。チャット262およびマルチユーザー・ゲーム相互作用API(MAPI)264はクライアント側APIの一部でユーザを確証して、セット・アップおよびソケット・サーバーへの接続の維持のために使用され、交換メッセージへのマルチユーザー・ゲーム/環境用のパス-スルー・モードで働きます。)

<引用文献記載事項1-3>
「[0104] The registration process of the first example embodiment is performed by manually entering the registration code printed on the registration tag via the user computer connected to the Internet. The user also chooses a user ID and password. The System can ensure that at least the combination of ID and password is unique, or might also insure that each user ID is unique as well.」
(当審訳:
[0104] 最初の具体例における登録のプロセスは、インターネットに接続されたユーザ・コンピューターを経由して、登録タグ上に印刷された登録コードを手動で入力することにより行なわれます。また、ユーザは、ユーザーIDとパスワードを選びます。システムは、少なくともIDとパスワードのコンビネーションがユニークであることを保証することができるか、あるいはユーザーIDもそれぞれ同様にユニークであるとさらに保証してもよい。)

<引用文献記載事項1-4>
「[0107] In the first exemplary embodiment, after the user enters the registration code, and before or after the user enters the user ID and password, the System checks the registration code in any one of a number of ways. In essence, the System uses stored data relating to all of the registration codes associated with corresponding toys for sale.
[0108] The system might check the registration code against a list of valid registration codes stored in the system database, for example. In this case, the stored data are the actual registration codes themselves. If there is a match, the registration code has been validated, and the system then determines the type of toy that the user purchased based on information stored with the registration code in the database. For example, each code could be linked to information about the type of toy (e.g., a basset hound, a fish, a lion, a robot, a soldier, etc.), its coloration and appearance, its temperament, etc.」
(当審訳:
[0107] 最初の典型的な具体例では、ユーザが登録コードを入力した後であって、ユーザがユーザーIDとパスワードを入力する前あるいは後に、このシステムは、登録コードを多くの既知の方法のいずれか1つでチェックします。本質的には、このシステムは、対応する売り出し中の玩具に関連した、すべての登録コードに関係のある、蓄積データを使用します。
[0108] 例えば、システムは、システム・データベースに格納された有効とされている登録コードのリストと、当該登録コードとを照合するでしょう。この場合、保存されたデータは実際の登録コード自体である。一致があった場合には、データベース内で、登録コードは有効とされ、かつシステムは同時にユーザが購入した玩具のタイプを、登録時に加えられている情報に基づいて、判断する。例えば、各々のコードは、それぞれ玩具のタイプ(例えばバセット・ハウンド、魚、ライオン、ロボット、兵士など)や、その採色および外観や、その気質などに関する情報とリンクできるからである。)

<引用文献記載事項1-5>
「[0067] In essence, the present invention in this first example embodiment provides an Entertainment System including an online virtual world with a virtual toy representing a toy purchased at a retail store. The toys might be plush toy animals, for example. However, there is no limit to the type of toy that the system could support, as long as the toy can be represented by a virtual replica.[0068] The current system functions basically as follows: A consumer purchases a toy (such as the plush toy animal representing a particular animal, for example, or some other toy). The toy includes, for example, a tag attached to the toy body, or the toy packaging, (or alternatively, another indicator and/or a storage device) indicating a web site address and a registration code. The code is typically hidden from view until after the purchase has occurred to prevent unauthorized use of the code. For example, the code might be on the inside of a folded piece of paper that is sealed prior to purchase. The user can load the System web site using the web address in a browser application running on the user's computer, and then enter the registration code to register the toy, thereby obtaining access to restricted portions of the System website.」
(当審訳:
[0067] 本質的には、最初の具体例における当該発明は、小売店で購入された玩具を表わす仮想玩具を使用するオンライン・バーチャル世界が含まれるエンターテインメント・システムを提供します。例えば、玩具とはプラシ天(=ふわふわした毛を有する)動物のおもちゃでもよいでしょう。しかしながら、仮想複製(バーチャル・レプリカ)によって表わすことができる限り、システムがサポートできる玩具のタイプに制限はありません。
[0068] 現行システムは、基本的に以下のように機能します:
消費者は玩具(例えば、ある特殊な動物のおもちゃ、プラシ天動物のような。あるいは、他のおもちゃでも良い。)を購入します。玩具は、例えば、おもちゃの身体に付けられたタグや、あるいは玩具の包装(別の表示物および/または記憶デバイスもありえます)の形で、ウェブサイト・アドレスおよび登録コードの表示を含んでいます。コードの不正使用を防ぐよう、購入後までは、コードは視界から典型的に隠されます。例えば、コードは、購入に先立って密閉される折り重ねられた1片の紙の内部上にあるかもしれません。ユーザは、ユーザのコンピューター上で作動するブラウザ・アプリケーションの中でウェブ・アドレスを使用して、システム・ウェブサイトをロードし、次に、玩具を登録するために登録コードを入力することができ、それによって、システム・ウェブサイトの制限された部分にアクセスします。)

<引用文献記載事項1-6>
「[0116] Furthermore, in another embodiment, each type of toy might have different traits that can impact the way the toy reacts based on the type of toy. Thus, a toy lion might be a mean carnivore, while a toy monkey eats fruit and is playful, for example. Soldiers might be aggressive, while dancers are graceful, for example. Thus, any of the above concepts are not limited to animal toys, but could easily support other toys such as human dolls, robots, machines, soldiers, etc.」
(当審訳:
[0116] 更に、別の具体例では、玩具の種類毎に、その玩具に固有の、振る舞い方を強化させることができる特色があるかもしれません。したがって例えば、おもちゃのライオンは普通は肉食動物ですし、一方、おもちゃの猿は果物を食べ、ふざけています。兵士は積極的でしょうし、その一方で例えば、ダンサーは優雅です。したがって、これまで述べた概念は必ずしも、動物の玩具に限定したものではなく、人型の人形や、ロボットや、機械や、兵士などといった、他の玩具をもたやすくサポートします。)


(2)引用文献2
本願の出願前である上記優先日よりも前に頒布または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原審の拒絶の査定において引用された、下記引用文献2には、それぞれ、下記引用文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。)

<引用文献2>
国際公開2007/101785号(2007年9月13日公開)

<引用文献記載事項2-1>
「For example, if the real world object is a toy representation of a sword, the detection of the toy sword in the detection area of the detection pad causes a corresponding virtual sword to be represented in the virtual world environment. Moreover, the virtual sword is represented in the virtual environment in a manner consistent with the usage of a sword in the real world. Thus, if a user's virtual world avatar currently is involved in a combat situation, the virtual sword may be represented as being in a free hand of the avatar. If the user's virtual world avatar is currently not involved in combat, the virtual sword may be represented as being sheathed and hanging on the side of the user's avatar.」(第3頁第25行-第34行)
(当審訳:
例えば、現実世界のオブジェクトが剣の玩具の表現である場合、検知パッドの検知エリア内にて玩具の剣が検知されると、バーチャル世界環境の中に、対応するバーチャルの剣が出現します。さらに言うと、バーチャルの剣は、現実世界の剣の使用法と一致するやり方で仮想環境の中で振る舞われます。したがって、もしユーザのバーチャル世界アバターが目下戦闘状態に巻き込まれたら、バーチャル剣はアバターの手中にあるとして表わされるかもしれません。もしユーザのバーチャル世界アバターが目下戦闘に巻き込まれていないなら、バーチャル剣は、鞘に納められユーザのアバターの脇に吊ってあるとして表わされるかもしれません。)

(3)引用文献3
本願の出願前である上記優先日よりも前に頒布または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原審の拒絶の査定において引用された、下記引用文献3には、それぞれ、下記引用文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。)

<引用文献3>
米国特許出願公開第2005/0059483号明細書(2005年3月17日公開)

<引用文献記載事項3-1>
「While the preferred embodiments are described as being adapted for use in an Internet gaming platform, other gaming platforms may be used. For example, computer CD games, or gaming systems of the types represented by the popular PS2^(TM) or X-box^(TM) systems, might be adapted for use in embodiments of the invention. For example, such systems may be adapted to accept input of serial numbers to unlock games, characters, and/or characteristics of the characters, such as traits, weapons, weaknesses, etc. Therefore, while the current preferred embodiments include multiple users of Internet games, other embodiments and especially future embodiments may include non-Internet gaming systems for one or more users.」(段落[0027])
(当審訳:
好ましい実施形態では、インターネットのゲームプラットフォームでの使用に適合されているものとして記載されているが、他のゲームプラットフォームを使用することができる。例えば、コンピュータのCDゲーム、または人気のあるPS2(登録商標)やX-box(登録商標)システムによって表されるタイプのゲームシステムは、本発明の実施形態において使用するために適合されることがあります。例えば、このようなシステムは、ロックを解除するためのシリアル番号の入力を受け入れるように適合させることができるゲーム、キャラクター、及び/またはキャラクターの特性、例えば取扱い、武器、弱点、等々の特性です。したがって、現在の好ましい実施形態が、インターネットゲームの複数のユーザを対象とした態様であるのに対して、他の実施形態、特に将来の実施形態は、1つ以上のユーザーのための非インターネットゲームシステムを含むことができる。)


3-3.引用発明の認定

(1)上記引用文献記載事項1-1の記載から、引用文献1には、エンターテインメント・システムに対し、ユーザが、販売中の玩具の登録コードを登録させることが読み取れる。また、当該エンターテインメント・システムは、ユーザー側が操作するユーザ・コンピュータが対話するサーバー・サブシステム2と、当該サブシステム2へコンテンツ等を提供するサーバ3と、ユーザIDや玩具の登録コード等を格納するストレージ・サブシステム5と、登録サブシステム6とを含むことが読み取れる。

(2)さらに、上記引用文献記載事項1-2の記載から、引用文献1には、システムの具体的態様として、安全な接続ができるApache 社のセキュアシステムの採用例が記載されつつ、システムの一部には、ユーザ登録、ユーザアカウントの生成、ユーザ認証を実行するアプリケーションを有していることが読み取れる。
加えて、引用文献記載事項1-2の安全な接続として示されているHTTPS、SSLモードの記載や、引用文献記載事項1-3の「インターネット」の記載から、ユーザとシステムとの間が、インターネットで接続されており、システム側のアプリケーションは、インターネットで標準的に使用されているネットワークアプリケーションであると言える。

(3)上記引用文献記載事項1-4の記載から、引用文献1には、玩具の登録コードをユーザがシステムへ入力すると、システムは当該登録コードが有効であるか否かを照合することが読み取れる。
また、引用文献記載事項1-5の記載から、引用文献1には、システムがオンライン・バーチャル世界が含まれるエンターテインメントに対して、小売店で購入された玩具を表す仮想玩具を使用するよう動作することが読み取れる。

(4)上記引用文献記載事項1-5における玩具と登録コードに関係する旨の記載等から
「玩具の身体に付けられたタグの形や玩具の包装の形で、表示された登録コード」
の態様が読み取れる。

(5)上記引用文献記載事項1-5及び1-6の記載から、引用文献1の玩具、仮想玩具の種類には制限がないと見てとれる。

(6)よって、引用文献1には、下記引用発明が記載されていると認められる。

<引用発明>
「サーバを含むエンターテインメント・システムが、オンライン・バーチャル世界が含まれるエンターテインメントに対して、小売店で購入された玩具を表す仮想玩具を使用するよう動作することであって、((1)、(3)より)
インターネットアプリケーションに対してユーザが入力することで生成されたユーザアカウントを、システムが含むアプリケーションが認証を行い、((2)より)
玩具の身体に付けられたタグの形や玩具の包装の形で、表示された登録コードを、システムがその有効性を照合し、オンライン・バーチャル世界で仮想玩具として使用するよう動作する((3)、(4)より)」ことを提供する方法


3-4.対比
(1)本件補正発明と引用発明とを比較する。

(2)
ア.本件補正発明の「実オブジェクト」、「実オブジェクトに視覚的に対応する仮想オブジェクト」、「仮想オブジェクトへのアクセス」は、それぞれ本件明細書【0019】-【0022】、【0023】-【0025】の記載を参酌すると、少なくとも現実に販売されているアイテム(ジグソーパズル、ドレスが例示)と、当該アイテムを想定した対話型のオンラインアプリケーション、一例としてビデオゲーム内で使用できる仮想のアイテムを含めたものであって、仮想のアイテムをバーチャル世界で使用する、ないし、使用できる状態のことを「アクセス」と表現したものであるから、引用発明の「小売店で購入された玩具」、「小売店で購入された玩具を表す仮想玩具」、「オンライン・バーチャル世界が含まれるエンターテインメントに対して、小売店で購入された玩具を表す仮想玩具を使用するよう動作する」は、各々、本件補正発明の「実オブジェクト」、「実オブジェクトに視覚的に対応する仮想オブジェクト」、「仮想オブジェクトへのアクセス」に相当する。

イ.引用発明における「サーバ」は、「アプリケーション」を実行することが予定されているところから見て、アプリケーションを実行するためのプロセッサを伴っていることが明らかとみられるので、引用発明における「システム」が行う動作の実行主体は、「プロセッサ」であると言うことができる。これに伴い、引用発明の「サーバを含むエンターテインメント・システムが、オンライン・バーチャル世界が含まれるエンターテインメントに対して、小売店で購入された玩具を表す仮想玩具を使用するよう動作する」、「ユーザアカウントを、システムが含むアプリケーションが認証を行い」、「登録コードを、システムがその有効性を照合し」といった、処理の主体をシステムとした箇所は、各々、本件補正発明の「仮想オブジェクトへのアクセスをプロセッサにて提供する」、「ユーザアカウントをプロセッサが認証する」、「コードの正当性を前記プロセッサが確認する」に相当する。

ウ.引用発明の「玩具の身体に付けられたタグの形や玩具の包装の形で、表示された登録コード」は、「タグ」の「玩具」への取付け態様として、「玩具の身体」であれば、対象物の上の形態になり、「包装」であれば「玩具」に付随する形態になること、及び、「コード」の「表示」は、「表示」が「見る」ことでの認識を促す態様であること、以上の関係性を呈すると理解されるので、本件補正発明の「実オブジェクト上又は前記実オブジェクトに付随する資料で見ることができるコード」に相当する。

(3)よって、本件方法は、下記の一致点で引用発明と一致し、本件補正発明は下記の相違点で引用発明と相違する。
<一致点>
「 実オブジェクトに視覚的に対応する仮想オブジェクトへのアクセスをプロセッサにて提供する方法であって、
ネットワークアプリケーションに対してのユーザアカウントを前記プロセッサが認証するステップと、
前記実オブジェクト上又は前記実オブジェクトに付随する資料で見ることができるコードの正当性を前記プロセッサが確認するステップと、
前記正当性の確認に応えて、前記仮想オブジェクトへの前記ユーザアカウントのアクセスを前記プロセッサが提供するステップと、
を備える、実オブジェクトに対応する仮想オブジェクトへのアクセス提供方法。」

<相違点1>
「仮想オブジェクト」に関し、本件補正発明は「前記ユーザアカウントのユーザのアバターが用いる」という事項を特定しているのに対して、引用発明では仮想玩具に制限は無いとしているものの、ユーザのアバターが使用するものを想定しているかどうかが定かではない点。

<相違点2>
「仮想オブジェクトへのアクセス」を実現するために必要とされるステップに関し、本件補正発明は「仮想オブジェクトへの前記ユーザアカウントのアクセスを前記プロセッサが許可するステップ」及び「対応するオフラインのビデオゲームアプリケーションにおける前記仮想オブジェクトを前記プロセッサがアンロックするステップ」を実行上「備える」としているのに対して、引用発明ではかかる「許可」及び「アンロック」の実行処理を明らかにしていない点。


3-5.判断
以下、上記相違点について検討する。

(1)相違点1について
ゲームやチャットといった、コンピュータシステムが構築する仮想世界中に登場させてユーザが使用可能とする対象(=オブジェクト)として、本件補正発明が特定する、「ユーザーのアバターが使用するもの」を採用することは、上記引用文献記載事項2-1により明らかである。すなわち、引用発明に登場する「玩具」に対しても上記相違点1に係る事項を採用することは、当業者が当然に想到する事項にすぎない。

(2)相違点2について
デジタルなコンテンツの使用許可を何らかの手段で取り付け、ユーザコンピュータ側でコンテンツのロックを解除し、インターネットに接続していない非インターネット、すなわちオフラインでもロックを解除した状態で使用するようにすることは、本件出願の優先日前に既に当業者に周知な態様に過ぎない(上記引用文献記載事項3-1の「非インターネットゲームシステム」でも可能とする言及箇所を参照。さらに要すれば、特開2009-193589号公報の【0199】等を参照。音楽やチケット等を含む広範なコンテンツの許可と使用が、オフラインでも実行可能である旨記載がなされている。)。
したがって、引用発明において「仮想玩具」の使用がなされることを受け、具体的な態様として、使用許可を受けてのユーザコンピュータ上でのアンロック実行とする周知の態様を踏襲し、上記相違点2に係る構成を採用することも、当業者であれば容易に採用する事項にすぎない。

(3)してみると、本件補正発明の構成は引用発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、当該構成の採用によって奏される作用効果も、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。
よって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


3-6.小結
以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、他の請求項についての検討をするまでもなく、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反する。


4.むすび
上記3.のとおり、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3.原審査定について

1.手続の経緯、本願発明の認定
本願の手続の経緯は上記第1.記載のとおりのものであり、さらに、平成25年10月1日付けの手続補正は上記第2.のとおり却下された。
したがって、本願の特許請求の範囲は、上記第2.1.の本件補正前の特許請求の範囲に記載のとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」と記す。)はそこに【請求項1】として記載したとおりのものである。

2.先行技術・引用発明の認定
上記第2.3-2.で示したとおり、本願の優先日前に頒布または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原審の拒絶の査定の理由である上記平成24年11月15日付けの拒絶理由通知において引用された上記引用文献1には上記引用文献記載事項1-1ないし1-6が記載されており、本願の優先日前に頒布または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となされた上記引用文献2及び3にはそれぞれ上記引用文献記載事項2-1及び3-1が記載されている。
そして、上記引用文献には上記第2.3-3.で認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。

3.対比・判断
上記第2.3.で検討した本件補正発明は、実質的には本願発明に対し上記第2.2.補正事項で述べた限定的減縮をしたものと認められるから、本願発明は、上記本件補正発明から当該限定的減縮により限定される要件を無くしたものに相当すると認められる。
そして、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の要件を付加したものに相当する上記本件補正発明は、上記第2.3.に記載したとおり、上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明も同様の理由により、上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.請求人の主張等について

なお、請求人は、上記平成26年3月3日付け回答書において、以下の回答を示している。

『(2)引用文献との対比について
1)審査官は、引用文献1(欧州特許出願公開第1933269号明細書)に、オンラインの仮想世界を提供するエンターテインメントシステムにおいて、ユーザが購入した玩具等に備えられた登録コードを登録することで、購入した玩具に対応した仮想の玩具の仮想世界での使用が許可されることが記載されている([0102]、[0104]、[0152]、[0154]等)と指摘し、また、引用文献2(国際公開第2007/101785号)を周知技術として引用し、そこにはオフラインゲームで実オブジェクトを用いて対応する仮想オブジェクトを使用可能とする点が記載されている(第1頁第22-34行)と指摘した上で、引用文献1と2とを組み合わせることで本願発明は容易と認定しています。
しかしながら、本願発明の特徴は、上述したように、「前記ネットワークアプリケーションで前記ユーザアカウントのユーザのアバターが用いる前記仮想オブジェクト」の使用を可能にすることで、現実のオブジェクトに対応する仮想オブジェクトの仮想使用を自らのアバターを通じて楽しむことを可能にすることにあるところ、審査官は、かかる特徴に対する認定を具体的に示していません。
引用文献2を見てみると、そこには単に、剣やアクションフィギュアといった実オブジェクトを検出している間は、そうした実オブジェクトに対応する剣や騎士といった仮想オブジェクトを使用可能にする、すなわち、物理的な実体を有する実オブジェクトに基づいて画像を生成し、生成した画像を仮想オブジェクトとして表示する構成が記載されているだけであり、剣も騎士もこうした実オブジェクトに基づく仮想オブジェクトの画像にすぎません。引用文献2に、騎士を“avatar”と表現する箇所や、ネットワークシステムに関する記載箇所があるとしても、本願発明では、「ユーザのアバター」は「ネットワークアプリケーションで」ユーザが他のユーザと交流する際に自分自身の創造性及びスタイルのセンスを表明することを楽しむためのものであり、単に実オブジェクトを画像化したものではありません。よって、引用文献2には、「前記ネットワークアプリケーションで前記ユーザアカウントのユーザのアバターが用いる前記仮想オブジェクト」は記載されていません。
2)また、審査官は、引用文献2における、実オブジェクトに付属されたRFIDタグの識別情報を本願発明の「コード」に対応付けていますが、RFIDタグの識別情報は「実オブジェクトに付随する資料で見ることができるコード」ではないだけでなく、実オブジェクトの存在を検知するために用いるものであり、その「正当性」を「確認する」ためのものではありません。よって、引用文献2には、「前記実オブジェクト上又は前記実オブジェクトに付随する資料で見ることができるコードの正当性を前記プロセッサが確認する」ことは記載されていません。
3)なお、付言すると、拒絶理由通知において引用された引用文献3(特開2008-114084号公報)及び引用文献4(米国特許出願公開第2005/0059483号明細書)を参照したとしても、本願発明の上記のような特徴を開示していません。
4)上述のとおり、補正後の請求項1に係る本願発明は、引用文献1及び2だけでなく引用文献3及び4にも記載されておらず、これらの引用文献によって示唆されるものでもありません。そして、本願発明は、引用文献ではなしえない格別の作用効果を奏するものです。よって、本願発明は、引用文献に基づいて当業者が容易に想到し得たものにも該当しないと思料致します。また、このことは、補正後の請求項1に対応する補正後の請求項13、ならびに補正後の請求項1及び13を直接的・間接的に引用する他の請求項についても妥当します。よって、本願に対する法第29条第2項の拒絶理由は妥当ではないものと思料致します。

3.むすび
上述の理由から、本願発明は拒絶理由に該当しないものと思料致します。したがいまして、原査定を取り消す、この出願の発明はこれを特許すべきものとする、との審決を求めます。 』

そこで、拒絶とすべき理由に対する請求人の意見について、当審の見解を示す。

(拒絶とすべき理由に対する請求人の意見について)
確かに引用文献1には、仮想オブジェクトを特定する事項として、「ユーザのアバターが用いる」との事項に相当する記載は明示されていないものの、仮想玩具に制限はないとの示唆がある。そして、ゲームやチャットといった仮想空間に、ユーザに模したアバターを用いること、また、アバターが使用するであろう用具を仮想空間に使用可能に準備する事は、引用文献2に明示されているとおり本件出願の優先日前に知られていた事項であるため、上記「(2)引用文献との対比について」欄の1)に記載されている請求人の主張は失当であり、採り上げることができない。
また、「(2)引用文献との対比について」欄の2)で主張する、コードの正当性の確認については、上記3-3.(3)にて述べたとおり、引用文献1に記載があると認められ、請求人の看過とみられ、採り上げることができない。

5.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項についての検討をするまでもなく、本願を拒絶すべきものとした原審の拒絶査定は妥当なものである。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-27 
結審通知日 2014-12-02 
審決日 2014-12-15 
出願番号 特願2010-241410(P2010-241410)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 戸島 弘詩  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 西村 泰英
小林 大介
発明の名称 実オブジェクトによってオンライン及びゲーム中における仮想オブジェクトをアンロックする方法  
代理人 杉村 憲司  

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