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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1300461
審判番号 不服2013-19494  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-07 
確定日 2015-05-07 
事件の表示 特願2009-290288「立体映像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月17日出願公開、特開2011- 34045〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
(1)手続の経緯
本願は、平成21年12月22日(パリ条約による優先権主張2009年7月31日、韓国)の出願であって、平成25年3月4日に手続補正がなされ、同年6月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月7日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、当審において、平成26年6月20日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年10月23日に手続補正がなされたものである。
なお、請求人は、当審拒絶理由に対して平成26年10月23日に意見書を提出している。

(2)本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成26年10月23日になされた手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものであると認める。

「上部基板、および該上部基板と重畳される画素アレイ領域と前記画素アレイ領域外のパッド領域を有する下部基板を含み、左目イメージ及び右目イメージを表示する、表示パネルと、
前記表示パネルの前記上部基板上に附着し、リターダパターンを含み前記表示パネルからの光を第1偏光と第2偏光に分割する、パターンドリターダと、
を備え、
前記パッド領域は、前記画素アレイ領域のデータラインから延長されるデータパッドが形成される第1領域と、前記画素アレイ領域のゲートラインから延長されるゲートパッドが形成される第2領域と、を含み、
前記表示パネルと前記パターンドリターダとが合着されているときに、前記第1領域は前記パターンドリターダから露出し、前記パターンドリターダの横サイズは前記下部基板の横サイズと同一であるかまたは前記下部基板の横サイズより大きいことを特徴とする立体映像表示装置。」(以下「本願発明」という。)

2 当審拒絶理由
当審拒絶理由は概ね次のとおりである。

「本件出願の請求項1?7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1.特開平10-227998号公報
引用文献2.米国特許出願公開第2005/0057709号明細書
引用文献3.実願昭63-14518号(実開平1-120122号)のマイクロフィルム
引用文献4.特開2003-43450号公報
引用文献5.特開2004-279932号公報
引用文献6.特開2003-75773号公報
引用文献7.特開2005-266438号公報」


3 刊行物の記載事項
当審拒絶理由で引用文献1として引用した「本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された刊行物である特開平10-227998号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が図とともに記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(1)「【0175】(実施形態10)図19は実施形態10の映像表示装置を示す斜視図である。
【0176】この映像表示装置は、液晶パネル111を構成するガラス基板102bの外側(液晶層112とは反対側)に光学素子106を備えている。光学素子106は、基板106aとパターニングされた1/2波長板106bと第2位相差部材としての1/4波長板106cとからなり、1/4波長板106c側を液晶パネル111側に配して設けられている。なお、この基板106aは、映像表示装置の重量増加防止や表示の明るさ低下防止の観点から、省略するのが好ましい。
【0177】以下に、液晶パネル111の構成および製造方法について説明する。
【0178】ガラス基板102a上に走査線、信号線、画素電極(いずれも図示せず)およびTFT素子104を形成する。走査線は液晶パネル111の表示画面における水平方向に沿い、かつ、各走査線が1行分の画素103に対応するように形成し、信号線は走査線と直交するように、かつ、各信号線が1列分の画素103に対応するように形成する。画素電極はマトリクス状に配置された画素103の各々に対して1つずつ形成し、TFT素子104によって走査線および信号線と接続する。この走査線、信号線、画素電極およびTFT素子104は、どのような方法によって形成してもよい。なお、本明細書においては、走査線に平行な方向を行方向、信号線に平行な方向を列方向と称することとする。
【0179】マトリクス状に配置された画素103は、画素1行分を右目用画素グループ103aまたは左目用画素グループ103bとして、右目用画素グループ103aと左目用画素グループ103bとを1走査線毎に交互に配置するようにする。
【0180】次に、TFT素子104が設けられたガラス基板102a上に、全面にわたって配向膜105aを形成する。配向膜105aは、例えばスピンコート法により基板102aの全面にポリイミド等の有機高分子材料やその前駆体をγ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドンまたはキシレンを初めとする有機溶剤に溶解したものを塗布し、それを焼成することにより形成する。以上によりTFT側基板が作製される。
【0181】対向側のガラス基板102b上には、カラーフィルター108aと、ガラス基板102a上に形成されたTFT素子104を遮光するためのブラックマトリクス108bとを形成する。カラーフィルター108aおよびブラックマトリクス108bは、どのような方法で形成してもよい。この実施形態10では、カラーフィルター108aを構成するR(Red)、G(Green)、B(Black)の各色のフィルター部分が信号線方向(画面垂直方向)に平行なストライプ状となるように、かつ、走査線方向(画面垂直方向)に対してR、G、Bの各フィルターが周期的に配列されるようにカラーフィルター108aを形成した。また、ブラックマトリクス108bは、1画素を囲むように格子状に形成した。
【0182】次に、カラーフィルター108aおよびブラックマトリクス108bが設けられた基板102bの上に、全面にわたって透明電極103cを形成する。この透明電極103cは、例えばITO等の透明導電膜をスパッタリング法等により形成する。その上には、配向膜105bを配向膜105aと同様にして形成する。以上により対向側基板が作製される。
【0183】このようにして得られたTFT側基板および対向側基板の各々にラビング処理を施した後、両基板の間隔を一定に保つためのスペーサー107を介して両基板を貼り合わせる。
【0184】次に、液晶を両基板間に真空注入等により注入して液晶層112を形成する。以上により液晶パネル111が完成する。なお、本実施形態10では、液晶パネル111の表示モードをTN(Twisted Nematic)モードとした。
【0185】このようにして得られた液晶パネル111の対向側ガラス基板102bの外側面に隣接するように、その偏光透過軸が全フィルム面内で同一である偏光フィルム101bを配置する。
【0186】次に、偏光フィルム101bの液晶パネル111とは反対側面に、基板106a、パターニングされた1/2波長板106bおよび位相差部材106cが積層された光学素子106を配置する。本実施形態では、実施形態1?8において作製した光学素子106を、1/4波長板106c側を偏光フィルム101b側に配して配置した。また、光学素子106を構成する1/2波長板106bは、幅がほぼ画素の幅に一致するようなストライプ状に、かつ、1走査線毎に1/2波長板106bの形成部と非形成部106dとが交互に配置されるように形成した。さらに、1/2波長板106bの遅相軸方向または進相軸方向は、偏光フィルム101bの偏光透過軸方向に対して45゜ずらして配置した。また、1/2波長板106bが積層構造の広帯域波長板である場合には、偏光フィルム101bの偏光透過軸と1/2波長板106bの偏光入射軸が一致するように配置した。このようにして配置した光学素子106は、粘着剤または接着剤等を用いて偏光フィルム101b上に貼り付ける。接着剤等は必要に応じて光を照射したり加熱したりして硬化させてもよい。
【0187】その後、液晶パネル111のTFT側ガラス基板102aの外側面に隣接するように、その偏光透過軸が全フィルム面内で同一である偏光フィルム101aを、その偏光透過軸が偏光フィルム101bの偏光透過軸と直交するように配置する。以上により本実施形態10の映像表示装置が完成する。
【0188】このようにして作製された実施形態10の映像表示装置は、液晶パネル111から出射されて偏光フィルム101bおよび光学素子106を通過する光が、画素1列毎に交互に極性の異なる円偏光となる。従って、右目用画素グループ103aから出射した光と左目用画素グループ103bから出射した光とは、極性の異なる円偏光に変換される。観察者は、各々の極性に対応した円偏光板110a、110bを右目と左目とに有する偏光眼鏡110を装着することにより、多人数で3次元の画像を観察することができる。また、観察者が顔を傾けた場合でも3次元の画像を観察することができる。さらに、観察者が偏光眼鏡を装着しない場合には、2次元の画像を観察することができる。」

(2)上記(1)から、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。
「走査線、信号線、画素電極およびTFT素子104を形成したガラス基板102aと、対向側のガラス基板102bと、液晶を両基板間に真空注入等により注入して形成した液晶層112を備え、マトリクス状に配置された画素103が、画素1行分を右目用画素グループ103aまたは左目用画素グループ103bとして、右目用画素グループ103aと左目用画素グループ103bとを1走査線毎に交互に配置するようにした、液晶パネル111と、
液晶パネル111の対向側ガラス基板102bの外側面に隣接するように、その偏光透過軸が全フィルム面内で同一である配置された偏光フィルム101bと、
偏光フィルム101bの液晶パネル111とは反対側面に配置されて貼り付けられ、基板106a、パターニングされた1/2波長板106bおよび位相差部材106cが積層されたものであり、1/2波長板106bは、幅がほぼ画素の幅に一致するようなストライプ状に、かつ、1走査線毎に1/2波長板106bの形成部と非形成部106dとが交互に配置されるように形成され、1/2波長板106bの遅相軸方向または進相軸方向は、偏光フィルム101bの偏光透過軸方向に対して45゜ずらして配置され、1/2波長板106bが積層構造の広帯域波長板である場合には、偏光フィルム101bの偏光透過軸と1/2波長板106bの偏光入射軸が一致するように配置され、液晶パネル111から出射されて偏光フィルム101bを通過した光が、画素1列毎に交互に極性の異なる円偏光とさせ、すなわち、右目用画素グループ103aから出射した光と左目用画素グループ103bから出射した光とは、極性の異なる円偏光に変換されるようにした、光学素子106と、
を備えた、
3次元の画像を観察することができる映像表示装置。」(以下「引用発明」という。)

3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「対向側のガラス基板」、「画素」、「走査線、信号線、画素電極およびTFT素子を形成したガラス基板」、「液晶パネル」、「極性の異なる円偏光」、「光学素子」、「信号線」、「走査線」及び「3次元の画像を観察することができる映像表示装置」は、それぞれ、本願発明の「上部基板」、「画素」、「下部基板」、「表示パネル」、「『第1偏光』と『第2偏光』」、「パターンドリターダ」、「データライン」、「ゲートライン」及び「立体映像表示装置」に相当する。

(2)引用発明において、「表示パネル(液晶パネル)」は、「下部基板(走査線、信号線、画素電極およびTFT素子を形成したガラス基板)」と、「上部基板(対向側のガラス基板)」と、液晶を両基板間に真空注入等により注入して形成した液晶層とを備え、マトリクス状に配置された「画素(画素)」が、「画素」1行分を右目用画素グループまたは左目用画素グループとして、右目用画素グループと左目用画素グループとを1走査線毎に交互に配置するようにしたものであるから、前記「下部基板」において、「画素」がマトリクス状に配置されている「画素アレイ領域」を備え、画素アレイ領域から「ゲートライン(走査線)」と「データライン(信号線)」とをそれぞれ画素を制御する為に画素領域の周辺に通常配置されているIC等にまで延長していることは明らかである。そして、それぞれIC等に接続される「ゲートパッド」と「データパッド」とを備え、「画素アレイ領域」外に両パッドを配置した「パッド領域」、すなわち、「データパッドが形成される第1領域」及び「ゲートパッドが形成される第2領域」を有することは当業者に自明であるから、引用発明の「立体映像表示装置(3次元の画像を観察することができる映像表示装置)」と、本願発明の「立体映像表示装置」とは、「上部基板、および前記上部基板と重畳される画素アレイ領域と前記画素アレイ領域外のパッド領域を有する下部基板を含み、左目イメージ及び右目イメージを表示する、表示パネル」を備える点及び「前記画素アレイ領域のデータラインから延長されるデータパッドが形成される第1領域と、前記画素アレイ領域のゲートラインから延長されるゲートパッドが形成される第2領域とを含む」点で一致する。

(3)引用発明の「パターンドリターダ(光学素子)」は、「表示パネル(液晶パネル)」の「上部基板(対向側のガラス基板)」の外側面に隣接するように、その偏光透過軸が全フィルム面内で同一であるように配置された偏光フィルムと、該偏光フィルムの「表示パネル」とは反対側面に配置されて貼り付けられている。
一方、本願明細書には「【0022】・・・基板の、パターンドリターダ30と対面する面には偏光フィルム(POL)が附着して、液晶層と接する界面には液晶のフリーチルト角を設定するための配向膜が形成される。」と記載され、本願発明の「パターンドリターダ」が「表示パネルの前記上部基板上に附着」することは、偏光フィルム(POL)を介して上部基板上に間接的に附着することを含むこととなることは明らかである。
したがって、引用発明の「パターンドリターダ」は「表示パネル上の上部基板上に附着」しているということができる。
また、引用発明の「パターンドリターダ」は、1/2波長板がその幅をほぼ画素の幅に一致するようにストライプ状に、かつ、1走査線毎に1/2波長板の形成部と非形成部とが交互に配置されるように形成され、1/2波長板の遅相軸方向または進相軸方向は、偏光フィルム101bの偏光透過軸方向に対して45゜ずらして配置され、1/2波長板が積層構造の広帯域波長板である場合には、偏光フィルムの偏光透過軸と1/2波長板の偏光入射軸が一致するように配置され、「表示パネル」から出射されて偏光フィルムを通過した光が、画素1列毎に交互に「第1偏光と第2偏光(極性の異なる円偏光)」とさせ、すなわち、右目用画素グループから出射した光と左目用画素グループから出射した光とは、「第1偏光と第2偏光」に変換されるようにしたものである。
してみると、引用発明の「パターンドリターダ(光学素子)」と、本願発明の「パターンドリターダ」とは、「表示パネル上の上部基板上に附着し、リターダパターンを含み前記表示パネルからの光を第1偏光と第2偏光に分割する」点で一致する。

(4)上記(1)ないし(3)からみて、本願発明と引用発明とは、
「上部基板、および前記上部基板と重畳される画素アレイ領域と前記画素アレイ領域外のパッド領域を有する下部基板を含み、左目イメージ及び右目イメージを表示する、表示パネルと、
前記表示パネル上の前記上部基板上に附着し、リターダパターンを含み前記表示パネルからの光を第1偏光と第2偏光に分割する、パターンドリターダと、
を備え、
前記画素アレイ領域のデータラインから延長されるデータパッドが形成される第1領域と、前記画素アレイ領域のゲートラインから延長されるゲートパッドが形成される第2領域とを含む立体映像表示装置。」の点で一致し、次の点で相違する。

・相違点:
本願発明では、前記「第1領域」はパターンドリターダから露出し、前記「パターンドリターダ」の横サイズは前記「下部基板」の横サイズと同一であるかまたは前記「下部基板」の横サイズより大きいのに対し、
引用発明では、前記「第1領域」はパターンドリターダから露出しているかどうかが明らかでなく、前記「パターンドリターダ」の横サイズは前記「下部基板」の横サイズと同一であるかまたは前記「下部基板」の横サイズより大きいかどうかも明らかでない点。

4 判断
(1)相違点について検討する。
ア 基板の非表示領域におけるパッドが位相差板や偏光板等の矩形の光学素子の側辺端縁から露出した液晶パネルは本願の優先日前に周知(以下、「周知技術1」という。例.当審拒絶理由で引用した米国特許出願公開第2005/0057709号明細書([0042]、[0044]、FIG.6,7の第2の非表示領域N2におけるゲートパッド152及びデータパッド154が位相差板108及び偏光板109から露出していることの記載参照。)、当審拒絶理由で引用した実願昭63-14518号(実開平1-120122号)のマイクロフィルム(6頁20行?7頁12行、8頁8行?13行、9頁7行?14行、第1図(B)の上基板11の端子が設けられた庇部が左前面偏光板14aあるいは左背面偏光板15aから露出していることの記載参照。)、当審拒絶理由で引用した特開2003-43450号公報(【0033】、【0036】、図2,3の第2張出部300の接続端子33が第2偏光板6bから露出していることの記載参照。)、特開2005-10738号公報(図1?3、【0010】のTFT基板において、一側辺にドライバ端子領域が配置されていること、【0029】のTFT基板14には、アクティブエリア外の領域に表示ドライバ端子11が露出して設けられていることの記載参照。))である。

イ 走査線から延長された端子と信号線から延長された端子とを基板における同じ側辺に沿った領域に設けることは本願の優先日前に周知(以下、「周知技術2」という。例.上記特開2003-43450号公報(【0036】の「・・・第1電極26aが第2張出し部300まで延在してなる第1配線と、この第1配線とほぼ平行に形成され、第2基板22b上の第2電極26bとシール材3の内部に分散した導通材を介して電気的に接続された第2配線とが配置されており、これら第1配線及び第2配線は、ICチップ36に電気的に接続されている。更に、第2張出し部300の第1面123a上には、ICチップ36に電気的に接続され、外部回路から入力される電源などをICチップ36に対して供給するための外部回路との接続端子33が配置されている」との記載、図2参照。)、上記特開2005-10738号公報(図1?3、【0010】の「特に表示装置を制御するためのチップを搭載した端子部辺(TFT基板においてドライバ端子領域が配置されている側の辺)では、接着樹脂の収縮による応力がかかりやすいため(庇構造:図3の破線にて囲んだ箇所)、黄色変色帯の程度も強く、表示品位に問題を生じる(図4参照)。」の記載参照。)、当審拒絶理由で引用した特開2004-279932号公報(【0075】の「表示用液晶パネル10における端子形成部14aはアクティブマトリクス基板14において形成されるが、該アクティブマトリクス基板14の一辺における該端子形成部14aに配置される端子数は少なくともデータ線または走査線の配置数以上となる。」との記載、【0077】の「表示用液晶パネル10の端子形成部14aは、携帯電話等に使用されるような小型のパネルでは、パネル周辺部の1辺にまとめて形成されるが、サイズがある程度大型となるパネルでは、データ線配設方向および走査線配設方向に対応して2辺に形成される。」との記載参照。))である。

ウ 引用発明は、液晶パネルを構成する一方のガラス基板にゲートライン(走査線)、データライン(信号線)、画素電極およびTFT素子を形成したものであり、データラインから延長されるデータパッドが形成される第1領域と、ゲートラインから延長されるゲートパッドが形成される第2領域とを含むものであるところ、上記アからみて、引用発明において、第1領域をパターンドリターダ(光学素子)から露出させるようになすことは当業者が周知技術1に基づいて適宜なし得たことである。

エ 引用発明は、第1領域と第2領域とを下部基板(ガラス基板)における異なる側辺に沿って設けるか、同一の側辺に沿って設けるかは明らかでないが、上記イからみて、引用発明において、第1領域と第2領域とを下部基板(ガラス基板)における同一の側辺に沿って設けることは当業者が周知技術2に基づいて適宜なし得たことである。
このように、引用発明において、第1領域と第2領域とを下部基板における同一の側辺に沿って設けた際に、ゲートパッド及びデータパッドを特に露出させる必要性はない(例えば上記特開2004-279932号公報(特に【請求項3】の「表示用液晶パネルにおいて端子形成部が設けられている基板と、パターン化位相差板の基板と、スイッチング液晶パネルにおいてパターン化位相差板と貼り合わされる側の基板とは、表示用液晶パネルにて端子形成部が設けられている辺と直交する少なくとも一方向において同寸法である」との記載。))のであるから、当該側辺と直交する方向において、パターンドリターダ(光学素子)のサイズと下部基板のサイズとを略同一となすことは当業者が適宜なし得ることである。

オ よって、引用発明において、相違点に係る本願発明の構成となすことは当業者が周知技術1及び周知技術2に基づいて適宜なし得たことにすぎない。

カ なお、審判請求人は、審判請求書(4頁3行?15行)において「・・・パターンドリターダの横サイズは、下部基板の横サイズと同一であるかまたは下部基板の横サイズより大きいことが明確になりました。すなわち、本願の図7、8、及び11をご参照頂ければ、本願発明の立体映像表示装置に使われるパターンドリターダ(30)の水平方向の寸法(X’)は、下部基板(24)の水平方向の寸法(X)と同等か又は下部基板(24)の水平方向の寸法(X)よりも大きいことを特徴としております。上記特徴により、本願発明の立体映像表示装置は、良好な耐振動性及び耐衝撃性を得られる、という有利な効果があります。・・・」と主張するが、基板の突出部が衝撃等により割れが発生するといった不具合は当業者にとって予測可能な事項(例.上記特開2004-279932号公報(特に【0072】の「すなわち、表示用液晶パネル10およびスイッチング液晶パネル30において、アクティブエリア外から突出した基板部分が無くなり、衝撃等により突出した基板部に割れが発生するといった不具合を抑制できる。」との記載。))であり、引用発明において、基板のみで突出する部分に割れが生ずる可能性がある場合に、その割れを抑制するために、第1領域及び第2領域のない、下部基板の端部をパターンドリターダ(光学素子)から突出しないように、パターンドリターダの縦あるいは横サイズを下部基板の対応する縦あるいは横サイズと同一であるかまたは前記下部基板の縦あるいは横サイズより大きくなすことは当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。

(2)本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、周知技術1の奏する効果及び周知技術2の奏する効果から当業者が予測することができた程度のことである。

(3)したがって、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
本願発明は、当業者が引用例に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-11-28 
結審通知日 2014-12-02 
審決日 2014-12-15 
出願番号 特願2009-290288(P2009-290288)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福島 浩司  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 鉄 豊郎
清水 康司
発明の名称 立体映像表示装置  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  

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