• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1300488
審判番号 不服2014-3310  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-21 
確定日 2015-05-07 
事件の表示 特願2011-518920号「薬物送達医療デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成22年1月21日国際公開、WO2010/009335、平成23年11月17日国内公表、特表2011-528275号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年7月16日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2008年7月17日(US)アメリカ合衆国、2009年3月23日(US)アメリカ合衆国、2009年4月17日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成24年12月12日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内である平成25年4月16日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年10月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成26年2月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。


第2 平成26年2月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年2月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「医療デバイスは、
基体と、
少なくとも1部の基体上に被膜を含み、
前記被膜は、活性薬剤及びポリマーを有し、
前記デバイスは、前記被膜を刺激すると前記基体から介在部位に、35%を超える、前記活性薬剤及び前記ポリマーを備える前記被膜を移動するように構成され、
これにより、35%を超える前記活性薬剤は、前記被膜の単一刺激に接して、前記基体から移動することを特徴とするデバイス。」と補正された(下線は補正箇所を示すものである。)。


2.補正の目的及び新規事項の追加の有無
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「デバイス」について、「少なくとも1部の活性薬剤及びポリマーを移動するように構成され、35%を超える前記活性薬剤は、前記被膜の単一刺激に接して、前記基体から移動する」との限定事項を、「35%を超える、前記活性薬剤及び前記ポリマーを備える前記被膜を移動するように構成され、これにより、35%を超える前記活性薬剤は、前記被膜の単一刺激に接して、前記基体から移動する」と更に限定して補正するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明とは、その産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。


3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。


3-1.引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用した、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である、国際公開第2007/092179号(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(訳文として、引用文献1のパテントファミリーである特表2009-525768号公報の対応箇所を援用する。)

(ア)「[0008]The present invention describes an implantable medical device having a nanocomposite coating that may overcome the limitations of existing devices for providing a controlled release of a bioactive agent in one or more dosages at a particular site in the body.・・・」
(本発明は、体内の特定部位で1回以上の投薬量の生物活性剤を制御放出する既存の器具の限界を克服しうるナノコンポジットコーティングを有する、埋め込み型医療器具について記載している。・・・)(段落[0008])

(イ)「[0022] An implantable medical device with a nanocomposite coating deposited on a portion of a surface to provide a controlled release of a bioactive agent in one or more dosages at a particular site in the body is described.
[0023] The nanocomposite coating of the invention includes a matrix, a bioactive agent and inorganic particles. The inorganic particles respond to a stimulus, preferably by generating heat. The response of the particles to the stimulus causes the matrix of the nanocomposite coating to undergo a volume change by, for example, contracting or swelling, thereby releasing at least a portion of the bioactive agent.
[0024] Fig. 1 A shows a cross-sectional schematic of the nanocomposite coating 10 deposited on at least a portion of a surface 20 of a medical device according to one embodiment. The inorganic particles 30 and bioactive agent 40 are dispersed in the nanocomposite coating 10. When the stimulus 50 is applied, as shown in Fig. 1B, the matrix of the nanocomposite coating 10 contracts and releases the bioactive agent 40.」
(体内の特定部位に1回以上の投薬量の生物活性剤を制御放出するため、表面の一部分上にナノコンポジットコーティングを被着させた、埋め込み型医療器具が記載される。
本発明のナノコンポジットコーティングには、マトリックス、生物活性剤及び無機粒子が含まれる。無機粒子は、好ましくは刺激に応答して発熱する。刺激に対する粒子の応答は、ナノコンポジットコーティングのマトリックスに、例えば収縮又は膨張による体積変化を起こさせ、これによって生物活性剤の少なくとも一部分を放出させる。
図1Aは、一実施形態による医療器具の表面20の少なくとも一部分の上に被着させられた、ナノコンポジットコーティング10の横断面概略図を示す。無機粒子30及び生物活性剤40は、ナノコンポジットコーティング10の中に分散させられる。図1Bに示されているように、刺激50が加わったとき、ナノコンポジットコーティング10のマトリックスは収縮し、生物活性剤40を放出する。)(段落[0022]?[0024])

(ウ)「[0027] The matrix of the nanocomposite coating preferably includes a polymer. Any polymer that undergoes a change in volume in response to heat may be suitable for use as the matrix of the nanocomposite coating. Preferably, the contraction or swelling of the polymer in response to heat may be reversible. In some embodiments, the polymer may be biodegradable; that is, the polymer may degrade over time under physiological conditions.」
(ナノコンポジットコーティングのマトリックスは好ましくはポリマーを含む。熱に応答して体積変化を起こすあらゆるポリマーを、ナノコンポジットコーティングのマトリックスとして使用することができる。好ましくは、熱に応答したポリマーの収縮又は膨張は、可逆的であり得る。一部の実施形態においては、ポリマーは生分解性であり得る。すなわち、ポリマーは、生理学的条件下で経時的に分解し得る。)(段落[0027])

上記(ア)?(ウ)の記載事項、及び、Fig.1A、Fig.1Bの図示内容からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「埋め込み型医療器具は、
表面20と、
表面20の少なくとも一部分の上にナノコンポジットコーティング10を被着し、
前記ナノコンポジットコーティング10は、生物活性剤40を含み、前記ナノコンポジットコーティング10は、ポリマーを含むマトリックスを含み、
前記埋め込み型医療器具は、前記ナノコンポジットコーティング10に刺激50が加わったとき、前記表面20から体内の特定部位に、前記生物活性剤40を放出するように構成され、
これにより、前記生物活性剤40は、前記ナノコンポジットコーティング10に刺激50が加わったとき、前記表面20から放出される埋め込み型医療器具。」


3-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その機能及び構造からみて、後者の「埋め込み型医療器具」は前者の「医療デバイス」に相当する。以下同様に、「表面20」は「基体」に、「表面20の少なくとも一部分の上」は「少なくとも1部の基体上」に、「ナノコンポジットコーティング10を被着し」は「被膜を含み」に、「生物活性剤40」は「活性薬剤」に、「刺激50が加わったとき」は「刺激すると」に、「体内の特定部位」は「介在部位」に、「放出する」は「移動する」に、それぞれ相当する。
また、引用発明においても、ナノコンポジットコーティング10は、生物活性剤40に加えて、ポリマーを含むマトリックスを含んでいることから、引用発明におけるナノコンポジットコーティング10も、「活性薬剤及びポリマーを有し」ているということができる。
さらに、引用発明の「刺激50」は単一のものと認められるから、引用発明においても、ナノコンポジットコーティング10は「単一刺激に接」するということができる。

してみると、両者は次の点で一致している。

(一致点)
「医療デバイスは、
基体と、
少なくとも1部の基体上に被膜を含み、
前記被膜は、活性薬剤及びポリマーを有し、
前記活性薬剤は、前記被膜の単一刺激に接して、前記基体から移動するデバイス。」

そして、両者は次の点で相違している。

(相違点)
本願補正発明では、被膜を刺激すると基体から介在部位に、35%を超える、活性薬剤及びポリマーを備える被膜を移動するように構成され、これにより、35%を超える活性薬剤は、基体から移動するのに対し、引用発明は、被膜を刺激すると基体から介在部位に、活性薬剤が移動するように構成され、これにより、活性薬剤は、前記基体から移動するものであって、基体から介在部位への移動量が不明であり、活性薬剤及びポリマーを備える被膜を移動するものではない点。


3-3.相違点の判断
以下、上記相違点について検討する。
本願補正発明と引用発明とは、活性薬剤を有する被膜を刺激することで基体から介在部位に活性薬剤を移動させ、介在部位において活性薬剤を作用させるという限りにおいて共通するものである。そして、被膜に含まれる活性薬剤を基体から介在部位に移動させる際、どのような様態で移動させるかは、薬剤の種類、薬剤の保持形態、適用される患部、医療デバイスの種別等に応じて適宜決定し得る程度の事項にすぎないから、引用発明において、活性薬剤がポリマーとともに移動するように構成することは、当業者であれば適宜なし得ることである。また、基体から介在部位に移動する活性薬剤を一定以上の量とすることも、介在部位において必要となる作用を考慮すれば、当業者であれば当然に想起し得る程度のことであるから、引用発明において、被膜を刺激すると基体から介在部位に、活性薬剤が移動するように構成されていることに代えて、被膜を刺激すると基体から介在部位に、35%を超える、活性薬剤及びポリマーを備える被膜を移動するように構成されるものとし、これにより、35%を超える活性薬剤が基体から移動するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

審判請求人は、審判請求書において、「(ニ)構成の違いによる効果
この構成の違いにより、本願発明は、介在部位に、35%を超える、活性薬剤及びポリマーを備える被膜を送達することができ、活性薬剤及びポリマーの両方が奏する効果を介在部位にて奏することが可能となる。」と主張している。
しかしながら、本願補正発明は、ポリマーについて、その成分、被膜中における構成、活性薬剤との関係等について何ら特定されておらず、ポリマーが介在部位においてどのような効果を奏するものであるのか把握することができない。また、本願明細書の記載を参酌しても、上記ポリマーが奏する効果を具体的に理解することができないから、「活性薬剤及びポリマーの両方が奏する効果」が具体的にどのようなものであるのか把握することができず、活性薬剤及びポリマーの両方が奏する効果を介在部位にて奏することを主張する審判請求人の上記主張は、採用することができない。

以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明、及び引用文献1に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものと認められる。

したがって、本願補正発明は、引用発明、及び引用文献1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。


3-4.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、拒絶査定時の特許請求の範囲の請求項1(平成25年4月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1)に記載された、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「医療デバイスは、
基体と、
少なくとも1部の基体上に被膜を含み、
前記被膜は、活性薬剤及びポリマーを有し、
前記デバイスは、前記被膜を刺激すると前記基体から介在部位に少なくとも1部の活性
薬剤及びポリマーを移動するように構成され、
35%を超える前記活性薬剤は、前記被膜の単一刺激に接して、前記基体から移動する
ことを特徴とするデバイス。」


第4 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記第2 3-1に記載したとおりである。


第5 対比・判断
本願発明は、上記第2 1の本願補正発明から、発明を特定するために必要な事項である、「デバイス」の限定事項である「35%を超える、前記活性薬剤及び前記ポリマーを備える前記被膜を移動するように構成され、これにより、35%を超える前記活性薬剤は、前記被膜の単一刺激に接して、前記基体から移動する」との限定を、「少なくとも1部の活性薬剤及びポリマーを移動するように構成され、35%を超える前記活性薬剤は、前記被膜の単一刺激に接して、前記基体から移動する」と拡張したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を限定したものに相当する本願補正発明が、上記第2 3-3に記載したとおり、引用発明、及び引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明、及び引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、及び引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-03 
結審通知日 2014-12-08 
審決日 2014-12-19 
出願番号 特願2011-518920(P2011-518920)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61M)
P 1 8・ 121- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松田 長親佐々木 一浩  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 土田 嘉一
蓮井 雅之
発明の名称 薬物送達医療デバイス  
代理人 清原 義博  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ