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審決分類 |
審判 判定 同一 属する(申立て成立) C09D |
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管理番号 | 1300576 |
判定請求番号 | 判定2014-600037 |
総通号数 | 186 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2015-06-26 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2014-08-08 |
確定日 | 2015-05-12 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4289441号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号に示す「活性エネルギー線硬化型インキ」は、特許第4289441号発明の技術的範囲に属する。 |
理由 |
第1 請求の趣旨 本件判定請求の趣旨は、請求書に「イ号」として添付し、請求書「6.請求の理由」の「(4)イ号インキの説明」において、イ号インキとして示す「活性エネルギー線硬化型インキ」(以下「イ号インキ」という。)が、特許第4289441号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。 なお、当審より、本件判定請求における被請求人である、東洋インキ株式会社に対し、平成26年12月9日付けで判定請求書の副本を送達し、答弁書の提出を求めたところ、被請求人より、平成26年12月22日付けの判定請求答弁書が提出されたが、イ号インキが、本件特許発明の技術的範囲に属さないとの主張はなされなかった。 第2 本件特許発明 1.手続の経緯 本件出願 平成20年 5月28日(特願2008-552636号) 設定登録 平成21年 4月10日 判定請求 平成26年 8月 8日 審尋 平成26年11月12日 答弁指令 平成26年12月 9日 答弁書 平成26年12月22日 2.本件特許発明 本件特許発明は、特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、その構成を構成要件毎に符号を付して分説すると、以下のとおりである。 「(a)波長365nmにおけるモル吸光係数が100(l/mol・cm)以上100,000(l/mol・cm)未満であるα-アミノアルキルフェノン化合物(A1)および (b)波長365nmにおけるモル吸光係数が100(l/mol・cm)以上100,000(l/mol・cm)未満であるアシルフォスフィンオキサイド系化合物(A2) (c)からなる光開裂型光重合開始剤(A)および (d)波長365nmにおけるモル吸光係数が10,000(l/mol・cm)以上1,000,000(l/mol・cm)未満である4、4′-ジアルキルアミノベンゾフェノンからなる水素引き抜き型光重合開始剤(B) (e)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インキ。」 第3 イ号インキ イ号インキは、以下の構成を具備する。 「(コ)下記組成からなる活性エネルギー線硬化型インキ。 (ア)アクリル基含有モノマー 53.3重量% (イ)顔料 21重量% (ウ)合成樹脂 14.7重量% (エ)2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリ ノプロパン-1-オン 3重量% (オ)2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニ ル)ブタン-1-オン 2重量% (カ)2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイ ド 1重量% (キ)4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン 2重量% (ク)2,4-ジエチルチオキサントン 1重量% (ケ)添加剤(ワックス) 2重量%」 第4 対比・判断 1.イ号インキが、本件特許発明の構成要件aないしeを充足するかについて、本件特許発明の構成要件aをイ号インキの構成エ及びオに対応させるとともに、以下順次、本件特許発明の構成要件b、c、dをそれぞれイ号インキの構成カ、エ?カ、キに、本件特許発明の構成要件eをイ号インキの構成ア?ウ、ク?コに対応させ検討する。 2.構成要件aについて 本件特許明細書の 「【0037】 波長365nmにおけるモル吸光係数が100(l/mol・cm)以上100,000(l/mol・cm)未満であるα-アミノアルキルフェノン系化合物(A1)としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、・・・(合議体注;「・・・」は、記載の省略を示す。以下同様。)「2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、・・・等が挙げられ、これらは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。」 との記載によれば、イ号インキの構成エ及びオは、本件特許発明の「波長365nmにおけるモル吸光係数が100(l/mol・cm)以上100,000(l/mol・cm)未満であるα-アミノアルキルフェノン系化合物」に相当することは明らかである。 そうすると、イ号インキの構成エ及びオは、本件特許発明の構成要件aを充足する。 3.構成要件bについて 本件特許明細書の 「【0040】 一方、波長365nmにおけるモル吸光係数が100(l/mol・cm)以上100,000(l/mol・cm)未満であるアシルフォスフィンオキサイド系化合物(A2)としては、・・・、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、・・・などが挙げられる。・・・特に、樹脂に対する溶解線の点から、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドが望ましい。・・・単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されてもよい。」 との記載によれば、イ号インキの構成カは、本件特許発明の「波長365nmにおけるモル吸光係数が100(l/mol・cm)以上100,000(l/mol・cm)未満であるアシルフォスフィンオキサイド系化合物」に相当することは明らかである。 そうすると、イ号物件の構成カは、本件特許発明の構成要件bを充足する。 4.構成要件cについて 本件特許明細書の 「【0036】 波長365nmにおけるモル吸光係数が100(l/mol・cm)以上100,000(l/mol・cm)未満である光開裂型重合開始剤(A)は、・・・単独で使用されても良いし、2種類以上が併用されてもよいが、波長365nmにおけるモル吸光係数が100(l/mol・cm)以上100,000(l/mol・cm)未満であるα-アミノアルキルフェノン系化合物(A1)と、波長365nmにおけるモル吸光係数が100(l/mol・cm)以上100,000(l/mol・cm)未満であるアシルフォスフィンオキサイド系化合物(A2)とを組み合わせて用いることが特に好ましい。」 との記載によれば、イ号インキを構成する、構成エ及びオ並びに構成カは、いずれも光開裂型重合開始剤である。 そして、上記「2.」及び「3.」にて検討したとおり、イ号インキの構成エ及びオは、本件特許発明の構成要件aを充足し、また、イ号インキの構成カは、本件特許発明の構成要件bを充足するから、イ号インキを構成する、構成エ及びオ並びに構成カは、構成要件aおよび構成要件bからなる光開裂型光重合開始剤(A)である、構成要件cを充足する。 5.構成要件dについて 本件特許明細書の 「【0041】 波長365nmにおけるモル吸光係数が10,000(l/mol・cm)以上1,000,000(l/mol・cm)未満である4、4´-ジアルキルアミノベンゾフェノンからなる水素引き抜き型光重合開始剤(B)は、アセトニトリル溶液中での365nmモル吸光係数が10,000(l/mol・cm)以上1,000,000(l/mol・cm)未満となる点を有する光重合開始剤であり、・・・、4,4´-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、・・・などが挙げられる。これらの中では、安全性面から、4,4´-ビスジエチルアミノベンゾフェノンが好ましい。」 との記載によれば、イ号インキの構成キは、本件特許発明の「波長365nmにおけるモル吸光係数が10,000(l/mol・cm)以上1,000,000(l/mol・cm)未満である4、4´-ジアルキルアミノベンゾフェノンからなる水素引き抜き型光重合開始剤(B)」に相当することは明らかである。 そうすると、イ号物件の構成キは、本件特許発明の構成要件dを充足する。 6.構成要件eについて 本件特許明細書の 「【0045】 本発明における活性エネルギー線硬化型インキの(A1)、(A2)、(B)、および(C)以外の成分は、本発明の効果を損なわず、活性エネルギー線硬化型インキが得られるものであれば、いずれのものでもよい。このような成分としては、樹脂、顔料、光重合性化合物であるアクリル基含有化合物、および添加剤が挙げられる。 【0046】 樹脂としては、従来紫外線硬化型インキなどの活性エネルギー線硬化型インキに添加されている公知あるいは周知樹脂が挙げられる。・・・。 【0047】 顔料としては、無機顔料および有機顔料を示すことができる。無機顔料としては・・・などが、有機顔料としては、・・・などの公知公用の各種顔料が使用可能である。 【0048】 本発明で用いられるアクリル基含有化合物としては、従来紫外線硬化型インキで用いられているアクリル基含有化合物を用いることができる。アクリル基含有モノマーとしては、単官能モノマー、2官能モノマー、3官能モノマー、4官能以上のモノマーなどが挙げられる。 ・・・。 【0062】 さらに、該印刷インキには、必要に応じてその他の添加剤を使用することが可能である。例えば、耐摩擦性、ブロッキング防止性、スベリ性、スリキズ防止性を付与する添加剤としては、カルナバワックス、木ろう、ラノリン、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックス、フィッシャートロプスワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックス、およびシリコーン化合物などの合成ワックス等を例示することができる。」 との記載、及び、本件特許明細書の 「【0064】 ・・・。また、必要であれば、上記(A1)、(A2)、(B)および(C)以外の光重合開始剤も添加剤として用いてもよい。」 との記載によれば、構成要件eは、それらを含むことによっても本件特許発明の効果を損なうことのない、樹脂、顔料、アクリル基含有モノマー、ワックス、並びに、(A1)、(A2)、(B)および(C)以外の光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型インキであるといえる。 そして、イ号インキのア?ウ及びケは、イ号インキのコの活性エネルギー線硬化型インキを構成するものであり、また、イ号インキのクは、判定請求書で引用される甲第2号証の 「【0001】 本発明は乳化性の優れた硬化性組成物、それを使用した活性エネルギー線硬化性印刷インキ及びその印刷物に関する。 ・・・。 【0035】 ラジカル重合開始剤として光開裂型と水素引き抜き型に大別できる。・・・後者の例として・・・2,4ジエチルチオキサントン・・・が例示される。」 との記載、同様に引用される甲第3号証の 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は・・・、詳しくは紫外線・・・の照射により硬化し、・・・印刷適性に優れた・・・活性エネルギー線硬化性印刷インキ・・・に関する。 ・・・。 【0020】ラジカル重合開始剤として光開裂型と水素引き抜き型に大別できる。・・・。後者の例として・・・2,4ジエチルチオキサントン・・・が例示される。」 との記載、及び、同様に引用される甲第4号証の 「【0001】 本発明は硬化性が速く尚且つ低コストの多官能性アクリルオリゴマー、さらにそれを含む紫外線もしくは電子線等により硬化する活性エネルギー線硬化性組成物、印刷物に関するものである。 ・・・。 【0045】 ラジカル重合開始剤として光開裂型と水素引き抜き型に大別できる。・・・。後者の例として・・・2,4ジエチルチオキサントン・・・が例示される。」 との記載によれば、同様に、イ号インキのコの活性エネルギー線硬化型インキを構成するものである。 そうすると、イ号インキの構成ア?ウ、ク及びケを含むコは、本件特許発明の構成要件eを充足する。 7.まとめ よって、イ号インキの構成アないしコは、いずれも本件特許発明の構成要件aないしeを充足する。 第5 むすび 以上のとおり、イ号インキは、本件特許発明の構成要件aないしeのすべてを充足するから、イ号インキは、本件特許発明の技術的範囲に属する。 よって、結論のとおり判定する。 |
判定日 | 2015-04-30 |
出願番号 | 特願2008-552636(P2008-552636) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
YA
(C09D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 菅原 洋平 |
特許庁審判長 |
豊永 茂弘 |
特許庁審判官 |
國島 明弘 山田 靖 |
登録日 | 2009-04-10 |
登録番号 | 特許第4289441号(P4289441) |
発明の名称 | 活性エネルギー線硬化型インキおよび印刷物 |
代理人 | 鐘尾 宏紀 |