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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1300870
審判番号 不服2014-3815  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-28 
確定日 2015-05-11 
事件の表示 特願2010-253088「ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月 4日出願公開、特開2011-151362〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯
本願は、平成22年11月11日(優先権主張平成21年12月24日)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成25年 4月 3日付け :拒絶理由の通知
平成25年 6月11日 :意見書及び補正書の提出
平成25年 8月28日付け :拒絶理由(最後)の通知
平成25年10月22日 :意見書の提出
平成25年11月27日付け :拒絶査定
平成26年 2月28日 :審判請求書の提出

2. 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明は、平成25年6月11日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1には、次のとおり記載されている。(以下、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明を、「本願発明」という。)

「【請求項1】
基材上に粘着剤層を有するダイシングテープと、該粘着剤層上に設けられたフリップチップ型半導体裏面用フィルムとを有するダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムであって、
前記ダイシングテープの粘着剤層と熱硬化前の前記フリップチップ型半導体裏面用フィルムとの剥離力(温度:23℃、剥離角度:180°、引張速度:300mm/min)が、0.05N/20mm?1.5N/20mmであることを特徴とするダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム。」

3. 引用刊行物記載事項及び記載発明
原審の拒絶の理由に引用され、本件優先日前に頒布された刊行物である、特開2004-260190号公報(以下、「刊行物1」という。)及び特開2008-124141号公報(以下、「刊行物2」という。)には、それぞれ図面とともに、以下の事項が記載されている。

(1) 刊行物1

ア. 刊行物1記載の事項

(ア)
「本発明は、半導体チップ裏面に効率良く保護膜を形成でき、かつチップの製造効率の向上が可能なチップ用保護膜形成用シートに関し、特にいわゆるフェースダウン(face down)方式で実装される半導体チップの製造に用いられるチップ用保護膜形成用シートに関する。
【背景技術】
近年、いわゆるフェースダウン(face down)方式と呼ばれる実装法を用いた半導体装置の製造が行われている。フェースダウン方式では、チップの回路面側に導通を確保するためのバンプと呼ばれる凸部が形成されてなるチップを用い、回路面側の凸部が基台に接続する構造となる。」(段落【0001】ないし【0002】)

(イ)
「本発明に係るチップ体用保護膜形成用シート10は、剥離シート1の剥離面上に上記成分からなる組成物をロールナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リバースコーターなど一般に公知の方法にしたがって直接または転写によって塗工し、乾燥させて保護膜形成層2を形成することによって得ることができる。なお、上記の組成物は、必要に応じ、溶剤に溶解し、若しくは分散させて塗布することができる。」(段落【0054】)

(ウ)
「本発明に係る半導体チップの第1の製造方法においては、
表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面に、前記第1または第2のチップ用保護膜形成用シートの保護膜形成層を貼付した後、
以下の工程(1)?(3)を任意の順で行って、裏面に保護膜を有する半導体チップを得ることを特徴としている。
工程(1):保護膜形成層と剥離シートとを剥離、
工程(2):加熱またはエネルギー線照射により保護膜形成層を硬化、
工程(3):半導体ウエハおよび保護膜形成層を回路毎にダイシング。」(段落【0059】)

(エ)
「次に工程(3)、(1)、(2)の順で行う場合について図6を参照しながらさらに具体的に説明する。
この製造方法は、
表面に回路が形成された半導体ウエハ3の裏面に、上記チップ用保護膜形成用シート10の保護膜形成層2を貼付し、
半導体ウエハ3および保護膜形成層2を回路毎にダイシングし、
保護膜形成層2と剥離シート1とを剥離し、
加熱またはエネルギー線照射により保護膜形成層2を硬化し、
裏面に保護膜を有する半導体チップを得ることを特徴としている。
・・・
また、図6D?Fに示すように、ウエハ3を保護膜形成層2に保持固定しているチップ用保護膜形成用シート10を、さらにダイシングシートに固定して、上記の諸工程を行っても良い。」(段落【0079】ないし【0082】)

(オ)
上記摘記事項(エ)の「保護膜形成層2と剥離シート1とを剥離し、加熱またはエネルギー線照射により保護膜形成層2を硬化し、」(段落【0080】)との記載と、【図6】(F)の記載から、「コレット」が、「ダイサー」で切断した、半導体チップを引き上げる点が看取できることをあわせると、刊行物1に記載された「保護膜形成層2」は、加熱硬化前に「剥離シート1」から剥離され、その際に、「保護膜形成層2」と「剥離シート1」との間には、剥離力が作用するといえる。

【図6】



イ. 刊行物1記載の発明
刊行物1に記載された、上記ア.の摘記事項(ア)ないし(エ)、【図6】の(D)ないし(G)の記載事項及び認定事項(オ)を、技術常識を考慮しながら本願発明に照らして整理すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ダイシングシート上に剥離シート1が設けられたダイシングシートと、該剥離シート1上に設けられた保護膜形成層2とを有するダイシングシートが固定された保護膜形成用シート10であって、
前記ダイシングシート上の剥離シート1と熱硬化前の保護膜形成層2との剥離力が生じるダイシングテープが固定された保護膜形成用シート。」

(2) 刊行物2

ア. 刊行物2記載の事項

(ア)
「本発明は、ダイシング・ダイボンド用接着フィルムに関し、特に、半導体装置製造において、切断されたチップの取り出しの際に、ピンの突き上げによる接着剤層へのピンの痕跡の発生がなく、したがって信頼性に優れた半導体装置を提供できるダイシング・ダイボンド用接着フィルムに関する。」(段落【0001】)

(イ)
「また、本発明は、基材層1の少なくとも片面上に積層された粘着剤層2、及び1つの粘着剤層2の上に積層された接着剤層3を備えたダイシング・ダイボンド用接着フィルムを用いて、
1)ウエハーを接着剤層3の上に固定し、
2)ダイシングし、そして
3)突き上げピンを用いて接着剤層3と粘着剤層2との界面で剥離して、接着剤層3が付着したチップをピックアップする
・・・」(段落【0008】)

(ウ)
「本発明のダイシング・ダイボンド用接着フィルムを、図を参照して説明する。図1および2は、本発明のダイシング・ダイボンド用接着フィルムの断面図である。上記図において、1は粘着剤層用の基材層、2は粘着剤層、3は接着剤層、4は接着剤層用の基材層である。図2は、接着剤層3の大きさを、シリコンウエハーの形状や大きさに応じて粘着剤層2よりも小さくしたものである。ダイシング工程では、図3および4に示すように、接着剤層用基材4を剥離し、接着剤層3の上にシリコンウエハー5を熱圧着する。次いで、ダイシング装置に固定し、ダイシング後、切断されたチップをダイボンド装置によりピックアップする。ピックアップの際には、切断されたチップが、ウエハーのある面と反対の側(図3では、粘着剤層用基材1の表面)からの突き上げピンによる突き上げにより、粘着剤層2と接着剤層3との間で剥離され、ウエハーに接着剤層3が付着された状態で取り出される。取り出されたチップは、接着剤層3の面が半導体基板上に熱圧着および加熱硬化されることにより、上記基板上に接着される。なお、本発明のフィルムは任意の形状を有することができ、例えば、連続的に使用できるようなテープ状であっても、所望の形状に切り出して使用できるシート形状であってもよい。」(段落【0010】)

(エ)
「上記基材層1上に積層される粘着剤層2は、ダイシング工程においてチップ飛びが生じないような、ダイシングフレームとの粘着性を備え、且つ、チップの取出し工程において、それ自身が凝集破壊されることなく接着剤層3から剥離されて基材層1上に残るような粘着性を有する。好ましくは、粘着剤層2の端を180°に折り返して300mm/分の速度で接着剤層3から引き剥がしながら測定される剥離力(180度剥離力)が0.05?0.7N/25mmであるような粘着性を有する。より好ましくは、上記剥離力が0.1?0.4N/25mmである。剥離力が前記下限値より小さいと、ダイシング時にチップが接着剤層3と共に粘着剤層2から剥れてしまい飛ぶ場合がある。一方、剥離力が前記上限値より大きいと、チップ取出し(ピックアップ)が困難となる。・・・」(段落【0014】)

(オ)
「(1)粘着力(粘着剤層2と接着剤層3との間の180度剥離力)
前記で得られたダイシング・ダイボンド用接着フィルムを巾25mmのテープ状に切り出し、接着剤層用基材層を剥離した後、接着剤層側をガラス板(厚さ2.0mm、巾50mm)に80℃、0.01MPaの条件で10秒熱圧着した。この試験体を、25±2℃、50±5%RHの恒温恒湿下に24時間放置した後、粘着フィルムの端を接着剤層から剥離して180°に折り返し、300mm/分の速度で引き剥がしたときの剥離力を測定した。」(段落【0110】)

(カ)
上記摘記事項(エ)の「上記基材層1上に積層される粘着剤層2」との記載から、「基材層1」とその上に積層される「粘着剤層2」をあわせて、「積層体」ということができる。

(キ)
上記摘記事項(エ)の「好ましくは、粘着剤層2の端を180°に折り返して300mm/分の速度で接着剤層3から引き剥がしながら測定される剥離力(180度剥離力)が0.05?0.7N/25mmであるような粘着性を有する。より好ましくは、上記剥離力が0.1?0.4N/25mmである。」との記載から、当該記載の「粘着力」の数値は、25mmあたりのものであり、20mmあたりに換算した数値を用いて記載すると、当該記載は「剥離力(180度剥離力)が0.04?0.56N/20mmであるような粘着性を有する。より好ましくは、上記剥離力が0.08?0.32N/20mmである。」となる。また、上記摘記事項(ウ)の「取り出されたチップは、接着剤層3の面が半導体基板上に熱圧着および加熱硬化されることにより、上記基板上に接着される。」との記載から、「接着剤層3」が加熱硬化されるのは、「接着剤層3」が「接着剤層2」から剥離した後であるから、上記数値は、「接着剤層3」が熱硬化する前の数値であること、そして、上記摘記事項(オ)の、「この試験体を、25±2℃、50±5%RHの恒温恒湿下に24時間放置した後、粘着フィルムの端を接着剤層から剥離して180°に折り返し、300mm/分の速度で引き剥がしたときの剥離力を測定した。」との記載から、上記剥離力の数値が、「25±2℃」のときのものであることも明らかである。

イ. 刊行物2記載事項
上記認定事項(キ)に示した「剥離力」は、「0.08?0.32N/20mm」が「より好ましい」ものであることを考慮しつつ、上記摘記事項(ア)ないし(オ)及び認定事項(カ)ないし(キ)を、技術常識を考慮しながら本願発明に照らして整理すると、刊行物2には、以下の事項(以下、「刊行物2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「基材層1上に粘着剤層2を有する積層体と、該粘着剤層2上に設けられた接着剤層3とを有するダイシング・ダイボンド用接着フィルムであって、
前記積層体の粘着剤層2と熱硬化前の接着剤層3との剥離力(温度:25±2℃、剥離角度;180°、引張速度300mm/min)が、0.08N/20mm?0.32N/20mmである積層体一体型ダイシング・ダイボンド用接着フィルム。」

4. 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ダイシングシート」と「剥離シート1」を合わせたものは、本願発明の「ダイシングテープ」に相当する。
上記3.の(1)のア.の摘記事項(ア)の「特にいわゆるフェースダウン(face down)方式で実装される半導体チップの製造に用いられるチップ用保護膜形成用シートに関する。」との記載から、引用発明が「フェースダウン(face down)方式」で実装される半導体チップであり、「フェースダウン(face down)方式」で実装される半導体チップは、「フリップチップ型」でもあることは技術常識であるから、引用発明の半導体も「フリップチップ型」であるといえる。そうすると、引用発明の「保護膜形成層2」は、本願発明の「フリップチップ型半導体裏面用フィルム」に相当する。
本願発明の「ダイシングテープ」は、「粘着剤層」を有し、当該「粘着剤層」上に「フリップチップ型半導体フィルム」が設けられているから、本願発明の「フリップチップ型半導体フィルム」は「ダイシングテープ」の上方に設けられているといえる。一方、引用発明の「保護膜形成層2」は、「ダイシングシート」の上に「剥離シート1」を介して設けられているから、引用発明の「保護膜形成層2」は、本願発明の上記「フリップチップ型半導体フィルム」と同様に「ダイシングテープ」の上方に設けられている点で共通する。
引用発明の「ダイシングシートが固定された保護膜形成用シート10」は、本願発明の「ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム(半導体裏面用シート)」とは、「ダイシングテープ」が「半導体裏面用フィルム」に積層されている点で共通する。
引用発明の「剥離シートと熱硬化前の保護膜形成層2との剥離力が生じる」は、本願発明の「ダイシングテープの粘着剤層と熱硬化前の前記フリップチップ型半導体裏面用フィルムとの剥離力」と、両者とも「ダイシングテープ」と「フリップチップ型半導体裏面用フィルム」との間を離間させようとする力が生じる点で共通する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、かつ、相違する。

(1) 一致点
「ダイシングテープと、ダイシングテープ上に設けられたフリップチップ型半導体裏面用フィルムとを有するダイシングテープが積層されている半導体裏面用フィルムであって、
前記ダイシングテープと熱硬化前の前記フリップチップ型半導体裏面用フィルムとの間を離間させようとする力が生じるダイシングテープが積層されている半導体裏面用フィルム。」

(2) 相違点

ア. 相違点1
本願発明の「ダイシングテープ」と「フリップチップ型半導体裏面用フィルム」は、「ダイシングテープ」を「基材」の上に「粘着剤層」を有するものとし、当該「粘着剤層」上に「フリップチップ型半導体裏面用フィルム」を設けて、「ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム」としたものであるのに対し、引用発明の「ダイシングシート」と「保護膜形成層2」は、「ダイシングシート」の上に「剥離シート1」を設け、当該「剥離シート1」の上に「保護膜形成層2」を設けて、「ダイシングテープが固定された半導体裏面用シート」としたものである点。

イ. 相違点2
本願発明の「ダイシングテープ」と「フリップチップ型半導体裏面用フィルム」との間を離間させようとする力は、前記ダイシングテープの粘着剤層と熱硬化前の前記フリップチップ型半導体裏面用フィルムとの剥離力(温度:23℃、剥離角度:180°、引張速度:300mm/min)が、0.05N/20mm?1.5N/20mmであるのに対し、引用発明の「前記ダイシングシート上の剥離シート1と熱硬化前の保護膜形成層2との剥離力」がそのような数値範囲に属するものであるかが不明である点。

5. 相違点についての検討

(1) 相違点1及び2について
上記3.の(2)のイ.の刊行物2記載事項を、本願発明と対比すると、その機能及び作用からみて、刊行物2記載事項の「基材層1」、「粘着剤層2」及び「接着剤層3」は、本願発明の「基材」、「粘着剤層」及び「接着フィルム」にそれぞれ相当する。
刊行物2記載事項の「基材層1上に粘着剤層2を有する積層体」は、上記3.の(2)のア.の摘記事項(エ)の「上記基材層1上に積層される粘着剤層2は、ダイシング工程においてチップ飛びが生じないような、ダイシングフレームとの粘着性を備え、且つ、チップの取出し工程において、それ自身が凝集破壊されることなく接着剤層3から剥離されて基材層1上に残るような粘着性を有する。」との作用を奏するから、本願発明の「ダイシングテープ」に相当する。
上記3.(2)のア.の摘記事項(ウ)の「なお、本発明のフィルムは任意の形状を有することができ、例えば、連続的に使用できるようなテープ状であっても、所望の形状に切り出して使用できるシート形状であってもよい。」との記載から、刊行物2記載事項の「ダイシング・ダイボンド用接着フィルム」は全体として、一つのフィルムとして取り扱われるものであるから、その一部の層である上記「基材層1上に粘着剤層2を有する積層体」とは一体であるといえる。
そうすると、刊行物2記載事項は、上記対比を踏まえると、以下のとおり言い換えることができる。
「基材上に粘着剤層を有するダイシングテープと、該粘着剤層上に設けられた接着フィルムとを有するダイシングテープ一体型ダイボンド用接着フィルムであって、
前記ダイシングテープの粘着剤層と熱硬化前の接着フィルムとの剥離力(温度:25±2℃、剥離角度:180°、引張速度:300mm/min)が、0.08N/20mm?0.32N/20mmであるダイシングテープ一体型ダイボンド用接着フィルム。」

引用発明において、「ダイシングシート状の剥離シート1」と「熱硬化前の保護膜形成層2」との間の剥離力は、「ダイサー」等によるダイシング工程時に、形成された半導体チップが散乱しない程度の大きさであることが必要である一方、ダイシング工程後に「コレット」等による剥離を可能とする程度の大きさにとどめる必要があるとの課題があること、そして、剥離力を上記課題へ対応する手段として、引用発明は、「ダイシングテープ」と「保護膜形成層2」との間に、「剥離シート1」を介在させ、当該「保護膜形成層2」と「剥離シート1」との間の剥離力を上記課題を解決する程度の大きさにしたものであることは、当業者にとって明らかである。
一方、上記3.の(2)のア.の摘記事項(エ)の「剥離力が前記下限値より小さいと、ダイシング時にチップが接着剤層3と共に粘着剤層2から剥れてしまい飛ぶ場合がある。一方、剥離力が前記上限値より大きいと、チップ取出し(ピックアップ)が困難となる。」との記載から、刊行物2記載事項は、上記引用発明と同様な課題に対応しようとして、「剥離シート1」を介在させることなく、「ダイシングテープ」を、「基材上」に「粘着剤層を有する」ものとし、「粘着剤層」の上に直接「熱硬化前の接着フィルム」を積層し、両者の間の剥離力を刊行物2記載事項のものとしたものである。ここで、刊行物2記載事項の剥離力は、「温度:25±2℃」の条件のものであるから、23ないし27℃の範囲で「0.08N/20mm?0.32N/20mm」であればよいから、上記温度範囲である、23℃のときの剥離力とする点に格別の困難性は認められない。
そうすると、引用発明において、上記相違点1及び2に係る構成とすることは、同様な課題を解決しようとして、刊行物2記載事項の積層構造と剥離力を適用することで、当業者が容易になし得たものである。
したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2記載事項から当業者が容易に想到し得た事項である。

(2) 作用及び効果について
本願発明の奏する作用及び効果についても、引用発明及び刊行物2記載事項から当業者が容易に予測し得る範囲のものであって、格別なものとはいえない。

6. むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物2記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する
 
審理終結日 2015-03-11 
結審通知日 2015-03-17 
審決日 2015-03-30 
出願番号 特願2010-253088(P2010-253088)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 八木 敬太  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 久保 克彦
原 泰造
発明の名称 ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  

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