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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1300895 |
審判番号 | 不服2014-6305 |
総通号数 | 187 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-04-07 |
確定日 | 2015-05-14 |
事件の表示 | 特願2009- 84044「電源制御装置、電子回路搭載装置及び電源制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月21日出願公開、特開2010-238843〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成21年3月31日の出願であって、平成25年2月27日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年5月1日付けで手続補正がなされたが、平成26年1月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月7日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされた。 その後、当審により平成26年12月15日付けで拒絶理由が通知されたが、請求人からは何らの応答もなされなかったものである。 2.本願発明 本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成26年4月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項5】 互いに半田バンプにより接続された半導体パッケージとプリント基板とを有する電子回路と、 前記電子回路を加熱するヒータと、 第1の給電系統を介して前記電子回路への電力の供給を制御する第1電力制御部と、 第2の給電系統を介して前記ヒータへの電力の供給を制御する第2電力制御部と、 前記電子回路の温度を測定するセンサと、 第3の給電系統を介して前記センサに電力を供給する電力供給部と、 前記センサにより測定された温度を取得する温度取得部と、 前記温度取得部により取得された温度が所定の温度以上であるかどうかを判断するとともに、前記温度取得部により取得された温度が所定の温度以上ではないと判断した場合、前記第2電力制御部に前記ヒータへの電力を供給させ、取得された温度が所定の温度以上であると判断した場合、前記第2電力制御部に前記ヒータへの電力の供給を停止させる判断部とを有し、 前記ヒータは、前記プリント基板における回路として配線されていることを特徴とする電子回路搭載装置。」 3.引用列 これに対して、当審の拒絶の理由に引用された特開2008-244288号公報(以下、「引用例」という。)には、「温度制御装置を備えた半導体装置及びプリント回路板」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。 (1)「【請求項1】 温度制御装置を備えた半導体基板と、半導体基板上に配置された半導体チップと、半導体チップの発生した熱を放熱する放熱部材とを有することを特徴とする半導体装置。 【請求項2】 前記温度制御装置は、ヒータとヒータへの電力供給制御装置を備えていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。 【請求項3】 前記温度制御装置は、温度測定装置を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。 【請求項4】 温度制御装置を備えたプリント基板上に請求項1?3のいずれか一項に記載の半導体装置を装着したことを特徴とするプリント回路板。 【請求項5】 前記温度制御装置は、ヒータとヒータへの電力供給制御装置を備えていることを特徴とする請求項4に記載のプリント回路板。 【請求項6】 前記温度制御装置は、温度測定装置を備えていることを特徴とする請求項4又は5に記載のプリント回路板。」 (2)「【0032】 (実施形態2) 本発明のプリント回路板を実施形態2として、図2,3を参照しながら説明する。図3には、本発明のプリント回路板の一例を部分断面図として示した。図3におけるプリント回路板11は、通常のプリント回路板と同様、プリント基板10上に半導体装置1,その他の電子部品12及び電気部品13などが装着されている。半導体装置1には超LSI、LSI、ICなどが含まれ、その他の電子部品12及び電気部品13としては、トランジスタ、抵抗器、コンデンサなどがある。なお、このプリント回路板11は、プリント基板10と半導体装置1等との接続用電極としてボール電極8,9を用いている。 【0033】 実施形態2のプリント回路板11においては、プリント基板10、半導体装置1並びに必要に応じてその他の電子部品12及び電気部品13に、ヒータ5a,5d,5e,5f,5g,5hなどの温度制御装置が配置されている。ヒータ5a,5d,5e,5f,5g,5hは、半導体装置1などのそれぞれの部品の表面に配置してもよいが、内部に配置する方が効果的な場合が多い。なお、プリント基板10に配置するヒータ5d,5e,5fについては、プリント基板10の温度制御の観点から半導体装置1などの部品に近接した位置に配置することが好ましい。これらの温度制御用のヒータ5a,5d,5e,5f,5g,5hは、プリント回路板11の作動時にプリント基板10と半導体装置1その他の電子部品12及び電気部品13との、温度差に起因する熱応力を緩和するために作動しやすくなる。なお、図示はしていないが、温度制御対象としては、プリント基板10の補強部品、放熱部品、保護部品などプリント基板10と接合されており熱応力が発生する接合部を持つ部材も挙げられる。」 (3)「【0042】 本発明の半導体装置においては、ヒータ発熱量の時間的なプログラム制御だけでなく、より直接的な制御として、それぞれの部材にサーミスタ6a,6c,6dなどの温度測定装置を配置して直接各部材の温度を測定して、各部材を所定の温度になるようにヒータ発熱量を制御してもよい。また、温度測定装置による温度測定は、上述のヒータの時間的なプログラム制御に利用することもできる。」 (4)「【0044】 プリント基板10にはヒータ5d,5e,5fが配置されている。半導体装置1、電子部品12及び電気部品13にもヒータ5a,5g,5hが配置されている。図示していないが各ヒータ5a,5d,5e,5f,5g,5hは、供給電力供給制御装置により発熱量が制御されている。供給電力制御には、電力供給時間制御、供給電力量制御、オンオフ制御、プログラム制御、温度制御など各種の制御方法が採用できる。また、プリント基板10、半導体装置1、電子部品12及び電気部品13の各加熱対象部品には、温度測定装置が配置されていることが好ましい。温度測定装置により、加熱対象部品の温度を測定して、所望の温度になるように容易にヒータを制御することができる。 【0045】 このようなプリント配線板11においては、作動開始時をはじめとして、一部が作動停止している場合に、それぞれの半導体装置、電子部品、電気部品とプリント配線板11との間に大きな温度差が生じることがある。このようなときにも、前記の各ヒータが作動して、半導体装置、電子部品及び電気部品とプリント配線板11との間の温度差を緩和できる。温度差を緩和することにより、ボール電極9a,9b,9cに作用する熱応力を緩和し、熱応力による損傷を防ぐことができる。特に、繰り返しの熱応力によるボール電極9a,9b,9cの長期的な接合の信頼性低下を防ぐことができる。」 (5)「【0048】 半導体装置を停止するときは、半導体装置を含む電子装置全体の電源を停止せねばならないかどうかを判断する(ステップS5)。例えば、半導体装置のみのメンテナンス時には、半導体装置の電源のみを停止してヒータ制御装置は作動状態にしておき、半導体装置は暖機状態としておく(ステップS6)。そして、半導体装置のメンテナンスが終了したら、半導体装置を電源オンにして作動させる(ステップS4)。このようにすれば、半導体装置は、電子装置全体の立ち上げ時と同じように、所定温度に保たれており、半導体装置を電源オンにして作動させても、昇温時に半導体基板をはじめとして発熱部でない部分と半導体チップとの温度差が大きくならない。そして、熱応力による電極の接合不良の発生が抑えられる。」 ・上記引用例に記載の「温度制御装置を備えた半導体装置及びプリント回路板」のうちの「プリント回路板」は、上記(1)の【請求項1】、【請求項4】、(2)の段落【0032】の記載事項、及び図2によれば、半導体基板2上に半導体チップ3が配置された半導体装置1が接続用電極としてのボール電極9を用いて装着されてなるプリント基板10に関するものである。 ・上記(1)の【請求項1】?【請求項2】、【請求項4】?【請求項5】、(2)の段落【0033】、(4)の記載事項、及び図2によれば、プリント基板10と半導体装置1には、その内部や表面に配置されたヒータ5a,5dと当該ヒータへの電力供給制御装置とからなる温度制御装置が設けられており、これらヒーター5a,5dが作動して、プリント基板10と半導体装置1との間の温度差を緩和することにより、ボール電極9に作用する熱応力を緩和し、熱応力による損傷を防ぐことができる。 ・上記(1)の【請求項3】、【請求項6】、(3)、(4)の段落【0044】の記載事項、及び図2によれば、プリント基板10や半導体装置1に配置されたサーミスタ6a,6dなどの温度測定装置を備え、各部の温度を測定して所定の温度になるようにヒータ発熱量を電力供給制御装置により制御するものである。 したがって、特に実施形態2に係るものに着目し、「プリント基板」及び「半導体装置」、「温度制御装置」、「温度測定装置」等を全て含めたものを「装置」の発明として捉え、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「半導体基板上に半導体チップが配置された半導体装置が接続用電極としてのボール電極を用いて装着されてなるプリント基板と、 前記プリント基板と前記半導体装置の内部や表面に配置されたヒータと、前記ヒータへの電力供給制御装置とからなる温度制御装置と、 前記プリント基板や前記半導体装置に配置されたサーミスタなどの温度測定装置と、を有し、 前記温度測定装置により各部の温度を測定して所定の温度になるように前記ヒータの発熱量を前記電力供給制御装置により制御し、これにより前記プリント基板と前記半導体装置との間の温度差を緩和することにより、前記ボール電極に作用する熱応力を緩和し、熱応力による損傷を防ぐようにした装置。」 4.対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、 (1)引用発明における、接続用電極としての「ボール電極」、半導体基板上に半導体チップが配置された「半導体装置」、「プリント基板」は、それぞれ本願発明における「半田バンプ」、「半導体パッケージ」、「プリント基板」に相当し、 引用発明における「半導体基板上に半導体チップが配置された半導体装置が接続用電極としてのボール電極を用いて装着されてなるプリント基板と」によれば、 引用発明の「半導体装置」と「プリント基板」とを併せたものが、本願発明でいう「電子回路」に相当するといえるから、 本願発明と引用発明とは、「互いに半田バンプにより接続された半導体パッケージとプリント基板とを有する電子回路と」を有する点で一致する。 (2)引用発明における「ヒータ」は、本願発明における「ヒータ」に相当し、 引用発明における「前記プリント基板と前記半導体装置の内部や表面に配置されたヒータと、・・・・前記ヒータの発熱量を前記電力供給制御装置により制御し、これにより前記プリント基板と前記半導体装置との間の温度差を緩和する・・」によれば、 引用発明の「ヒータ」は、プリント基板と半導体装置との間の温度差を緩和するようにこれらを加熱するものであるといえるから、 本願発明と引用発明とは、「前記電子回路を加熱するヒータと」を有する点で一致する。 (3)引用発明における、ヒータへの「電力供給制御装置」、サーミスタなどの「温度測定装置」は、それぞれ本願発明における「第2電力制御部」、「センサ」に相当し、 引用発明における「前記プリント基板と前記半導体装置の内部や表面に配置されたヒータと、前記ヒータへの電力供給制御装置とからなる温度制御装置と、前記プリント基板や前記半導体装置に配置されたサーミスタなどの温度測定装置と、を有し、前記温度測定装置により各部の温度を測定して所定の温度になるように前記ヒータの発熱量を前記電力供給制御装置により制御し・・」によれば、 (a)引用発明にあっても、「半導体装置」及び「プリント基板」(本願発明でいう「電子回路」)に対して回路を動作させるための電力の供給を制御する制御装置(制御部)を有することは自明であり、 (b)さらに、引用発明にあっても、「温度測定装置」に対して電力を供給する供給装置(供給部)を有すること、及び、「温度測定装置」により測定された温度を取得する取得装置(取得部)を有することは自明といえることである点を考慮すると、 本願発明と引用発明とは、後述の相違点を除いて「前記電子回路への電力の供給を制御する第1電力制御部と、前記ヒータへの電力の供給を制御する第2電力制御部と、前記電子回路の温度を測定するセンサと、前記センサに電力を供給する電力供給部と、前記センサにより測定された温度を取得する温度取得部と」を有するものである点で共通するということができる。 (4)そして、引用発明における「前記温度測定装置により各部の温度を測定して所定の温度になるように前記ヒータの発熱量を前記電力供給制御装置により制御し、これにより前記プリント基板と前記半導体装置との間の温度差を緩和することにより、前記ボール電極に作用する熱応力を緩和し、熱応力による損傷を防ぐようにした装置。」によれば、 かかる「装置」は、「プリント基板」及び「半導体装置」、「温度制御装置」、「温度測定装置」等を全て含めたものであり、本願発明でいう「電子回路搭載装置」に相当するといえるものである。 よって、本願発明と引用発明とは、 「互いに半田バンプにより接続された半導体パッケージとプリント基板とを有する電子回路と、 前記電子回路を加熱するヒータと、 前記電子回路への電力の供給を制御する第1電力制御部と、 前記ヒータへの電力の供給を制御する第2電力制御部と、 前記電子回路の温度を測定するセンサと、 前記センサに電力を供給する電力供給部と、 前記センサにより測定された温度を取得する温度取得部とを有することを特徴とする電子回路搭載装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 第1ないし第3電力制御部について、本願発明では、それぞれ「第1ないし第3の給電系統を介して」電力を供給する旨特定するのに対し、引用発明では、そのような明確な特定を有していない点。 [相違点2] 本願発明では、「前記温度取得部により取得された温度が所定の温度以上であるかどうかを判断するとともに、温度取得部により取得された温度が所定の温度以上ではないと判断した場合、前記第2電力制御部に前記ヒータへの電力を供給させ、取得された温度が所定の温度以上であると判断した場合、前記第2電力制御部に前記ヒータへの電力の供給を停止させる判断部」を有すると特定するのに対し、引用発明では、そのような明確な特定を有していない点。 [相違点3] ヒータについて、本願発明では、「前記プリント基板における回路として配線されている」と特定するのに対し、引用発明では、そのような明確な特定を有していない点。 5.判断 上記相違点について検討する。 [相違点1]について 引用例の段落【0048】には、メンテナンス時に、半導体装置の電源のみを停止し、ヒータ制御装置は作動状態としておくことが記載(上記「3.(5)」を参照)されており、これによれば、第1,第2の給電系統を有しているものと認められ、さらに、センサへ電力を供給する別の給電系統(第3の給電系統)を設けることも当業者にとって設計的事項にすぎない。 [相違点2]について 本願発明における「前記温度取得部により取得された温度が所定の温度以上ではないと判断した場合、前記第2電力制御部に前記ヒータへの電力を供給させ、取得された温度が所定の温度以上であると判断した場合、前記第2電力制御部に前記ヒータへの電力の供給を停止させる」という制御は、いわゆるオンオフ制御に他ならないところ、 引用例の段落【0044】には、所定の温度となるようにヒータ発熱量を制御する際の電力供給制御装置による制御方法として、例えば「オンオフ制御」を行うことが記載(上記「3.(4)」を参照)されており、引用発明においても、このようなオンオフ制御を採用し、本願発明のように「温度取得部により取得された温度が所定の温度以上であるかどうかを判断するとともに、温度取得部により取得された温度が所定の温度以上ではないと判断した場合、第2電力制御部にヒータへの電力を供給させ、取得された温度が所定の温度以上であると判断した場合、前記第2電力制御部に前記ヒータへの電力の供給を停止させる判断部」を設けるようにすることは当業者であれば容易になし得ることである。 [相違点3]について 引用発明においては、ヒータをプリント基板の内部や表面に配置するものであるところ、例えば当審の拒絶の理由に引用された特開平7-201919号公報(段落【0014】を参照)や同じく当審の拒絶の理由に引用された実願昭58-135650号(実開昭60-42795号)のマイクロフィルム(5頁11?12行を参照)に記載のように、このようなヒータを蒸着やスパッタリングにより薄膜状のもので形成することも周知の技術事項であり、引用発明においても、ヒータをプリント基板に薄膜状に形成し、当該プリント基板における回路として配線される構成とすることは当業者であれば適宜なし得ることである。 そして、上記各相違点を総合的に勘案しても本願発明が奏する効果は、引用発明及び周知の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。 6.むすび 以上のとおり、本願の請求項5に係る発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-03-11 |
結審通知日 | 2015-03-17 |
審決日 | 2015-03-30 |
出願番号 | 特願2009-84044(P2009-84044) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石野 忠志、小山 和俊 |
特許庁審判長 |
丹治 彰 |
特許庁審判官 |
井上 信一 酒井 朋広 |
発明の名称 | 電源制御装置、電子回路搭載装置及び電源制御方法 |
代理人 | 赤澤 日出夫 |