• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1300904
審判番号 不服2014-10910  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-10 
確定日 2015-05-14 
事件の表示 特願2005-255757「ゲーム装置、ゲームプログラムおよびゲームシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月22日出願公開、特開2007- 68581〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年9月2日の出願であって、平成23年10月12日付け、平成24年11月19日付け及び平成25年9月24日付けで手続補正がなされ、平成26年3月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月10日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされたものである。


第2 本願発明
本願の請求項13に係る発明は、上記の平成25年9月24日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲、明細書、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項13に記載された次のとおりのものと認める(該請求項13に係る発明を、以下「本願発明」という。)。
「2次元仮想ゲーム世界における第1オブジェクトと第2オブジェクトとの位置関係が所定条件を満たすか否かを判断する判断手段、および
前記判断手段による判断結果が肯定であるとき、前記第1オブジェクトおよび前記第2オブジェクトの位置に基づいて、3次元仮想ゲーム世界に配置される仮想カメラの位置および向きの少なくとも一方を設定するカメラ設定手段を備える、ゲーム装置。」


第3 引用刊行物
1 刊行物1
原査定の拒絶理由で引用された、本願の出願前である平成6年10月11日に頒布された刊行物である特開平6-285259号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(1)「【0007】
【実施例】以下、本発明の一実施例による液晶コントローラを図面を参照して説明する。図1(a)に示すように、液晶コントローラ10は、コントローラ本体11と、制御信号を出力するタッチパネル12と、操作情報を表示する液晶モニタ(液晶画面)13とを有している。
【0008】液晶コントローラ10は、図2に示すように、接続コード14を介してゲーム機本体15に接続されており、ゲーム機本体15にはテレビジョン装置16が接続されている(図2(a)参照)。そして、操作者Pが、テレビジョン装置16の画面上の場面に応じて液晶コントローラ10を操作することにより(図2(b)参照)、液晶コントローラ10からゲーム機本体15へと制御信号が送出されて、ゲームをプレイすることができる。」
(2)「【0021】そして、テレビジョン装置16の画面に画像表示された状況に応じて、所望の選択肢に応じた表示対応部位を選択操作して会話を行う。
例7
シミュレーションゲーム(ウォーゲーム)等において、テレビジョン装置16の画面に戦場の全体マップを表示し(図7(a)参照)、液晶モニタ13に、操作者Pが操作することができる戦車や飛行機やヘリコプターや兵等の戦闘手段の現在位置と共に戦闘手段の移動可能範囲が表示される(図7(b)参照)。
【0022】例えば、三人の操作者P1,P2,P3によりゲームを行う場合、各操作者Pが各々液晶コントローラ10を持つことにより、同様に各操作者Pの現在位置に応じた戦闘手段の移動可能範囲が各液晶モニタ13に表示される(図7(c),(d)参照)。そして、テレビジョン装置16の画面に画像表示された全体状況を確認しながら、各操作者Pは、所望の移動場所に応じた表示対応部位を選択操作して自分の戦闘手段を敵陣等へ進め、戦闘を行う。
【0023】この戦闘手段の移動方法の一例を、図8に示す。操作者Pは、先ず動かしたい戦闘手段を指でタッチする(図8(a)参照)。すると、各戦闘手段の能力に応じた移動範囲が色の変化等により明示される(図8(b)参照)。そこで、動かしたい位置に指でタッチすると、従前の位置から移動希望位置に戦闘手段の表示が変更される(図8(c)参照)。
【0024】また、戦闘状態の一例を図9に示す。例えば、第一の操作者P1が第二の操作者P2に攻撃を仕掛けた場合、第一の操作者P1と第二の操作者P2が持つ各液晶モニタ13には互いに対峙した場面が表示され(図9(a),(b)参照)、テレビジョン装置16の画面にはその戦闘シーンが写し出される(図9(d)参照)。なお、第三の操作者P3の液晶モニタ13には戦闘シーンとは関りなく通常の場面が表示される(図9(c)参照)。」
(3)上記記載事項(2)から、【図9】(a)及び(b)には、戦闘状態の戦車と飛行機の2次元画像が液晶モニタ13に表示され、【図9】(d)には、戦闘状態における戦闘シーンの飛行機の3次元画像が、液晶モニタ13の表示に比べて、異なる撮影方向からの画像が画面一杯に拡大されてテレビジョン装置16の画面に表示されているといえる。

上記(1)乃至(3)の記載事項から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「液晶モニタ13を有する液晶コントローラ10及びテレビジョン装置16が接続されているゲーム機本体15であって、シミュレーションゲーム(ウォーゲーム)等において、第一の操作者P1が第二の操作者P2に攻撃を仕掛けた場合、戦闘状態の戦車と飛行機の2次元画像が液晶モニタ13に表示され、戦闘状態における戦闘シーンの飛行機の3次元画像が、液晶モニタ13の表示に比べて、異なる撮影方向からの画像が画面一杯に拡大されてテレビジョン装置16の画面に表示されてなる、ゲーム機本体15。」

2 刊行物2
原査定の拒絶理由で引用された、本願の出願前である平成12年10月10日に頒布された刊行物である特開2000-279637号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(1)「【要約】
【課題】 戦闘場面でのキャラクタの配置を遭遇状況に応じた配置で表示できるゲーム装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係るゲーム装置は、プレイヤキャラクタと敵キャラクタが表示画面上において接触した場合、接触状況(プレイヤキャラクタの移動形態、接触側、接触方向など)を判断し(ステップS200)、接触状況が予め設定された複数の状況のいずれに該当するかを特定する(ステップS300)。この装置は、特定された状況に応じて配置パターンを決定し(ステップS400)、決定された配置パターンでキャラクタを戦闘場面に配置して表示する。」
(2)「【0024】GPU109は、CPU101とは独立に動作することができるサブプロセッサである。このGPU109は、CPU101からの描画指示に従ってGTE102で求められた座標データ及び色情報、並びにフレームバッファ110に格納されたCLUT及びテクスチャパターンデータなどに基づいて、複数のポリゴン(polygon)から構成される三次元モデルのモデリング処理やレンダリング処理などを行なう。そして、三次元モデルを配置して構成した仮想三次元空間における任意領域を二次元空間へ投影した画像データを、フレームバッファ110上に格納する。ここで、ポリゴンとは、三次元モデルを構成する図形の最小要素であり、この最小要素には、三角形や四角形などといった多角形平面が含まれる。」
(3)「【0040】一般的なコンピュータゲームと同様に、本実施形態では、図3に示されるように移動画面1000においてプレイヤのキャラクタ画像1010と敵のキャラクタ画像1020とが接触すると、図4に示すような戦闘用の画面(以下、「戦闘画面」と呼ぶ)に表示が切り換わり、戦闘が始まる。図4に示されるように、戦闘画面1100では、各パーティに含まれるプレイヤキャラクタ1110?1113ならびに敵キャラクタ1114、1115および1117を表す画像が表示される。戦闘画面の背景となるモデルデータは、敵パーティに対応付けられて予め設定されている。プレイヤパーティと敵パーティとが遭遇した場合、すなわちプレイヤのキャラクタ画像と敵のキャラクタ画像とが移動画面内で接触した場合、敵画像が表す敵パーティに対応付けてCD-ROM54に記憶されているシーンデータ(マップナンバなど)が読み出され、これを用いて戦闘シーンが構築される。本実施形態では、戦闘シーンに登場するプレイヤキャラクタおよび敵キャラクタの最大数はそれぞれ4である。」

上記(1)乃至(3)の記載事項から、刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「プレイヤキャラクタと敵キャラクタが表示画面上において接触した場合、三次元モデルのモデリング処理をしてキャラクタを戦闘場面に配置して表示するゲーム装置。」


第4 対比
そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると、
1 後者の「2次元画像」は、シミュレーションゲーム(ウォーゲーム)における戦闘状態の戦車と飛行機の状況を液晶モニタ13に2次元画像として表示するものであるから、前者の「2次元仮想ゲーム世界」に相当するといえる。
2 後者の「『液晶モニタ13』を有する『液晶コントローラ10』及び『テレビジョン装置16』が接続されている『ゲーム機本体15』」全体で、前者の「ゲーム装置」に相当するといえる。
3 後者の「『第一の操作者P1』の『戦車』もしくは『飛行機』」及び「『第二の操作者P2』の『戦車』もしくは『飛行機』」は、その技術内容からして、それぞれ、前者の「第1オブジェクト」及び「第2オブジェクト」に相当する。
4 後者は、「第一の操作者P1が第二の操作者P2に攻撃を仕掛け互いに対峙した場合」に、「戦闘状態における戦闘シーンの飛行機の3次元画像が、液晶モニタ13の表示に比べて、画面一杯に拡大されてテレビジョン装置16の画面に表示されてなる」から、後者は、「第1オブジェクトと第2オブジェクトとの位置関係が所定条件を満たすか否かを判断する判断手段」及び「3次元仮想ゲーム世界に配置される仮想カメラの位置および向きの少なくとも一方を設定するカメラ設定手段」を備えるといえる。

したがって、両者は、
「2次元仮想ゲーム世界における第1オブジェクトと第2オブジェクトとの位置関係が所定条件を満たすか否かを判断する判断手段を備える、ゲーム装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願発明が、「判断手段による判断結果が肯定であるとき、第1オブジェクトおよび第2オブジェクトの位置に基づいて、」3次元仮想ゲーム世界に配置される仮想カメラの位置および向きの少なくとも一方を設定するカメラ設定手段、を有するのに対し、引用発明1は、上記の点につき、明らかでない点。


第5 判断
上記相違点について以下検討する。
引用発明1の「戦闘状態」は、「第一の操作者P1が第二の操作者P2に攻撃を仕掛けた場合」の結果であること、及び当該ゲーム装置において、プレイヤキャラクタが敵キャラクタと接触することにより戦闘を開始すること、つまり、複数オブジェクトの位置関係に基づいて、所定の条件を満たすか否かの判断を行い、判断結果が肯定であることは、周知の技術事項といえる(引用発明2以外に、例えば、特開2003-144750号公報の【0002】並びに特開2003-19352号公報の【特許請求の範囲】及び【0004】参照。以下「周知事項1」という。)ことから、「判断手段による判断結果が肯定であるとき」といえる。
また、引用発明1の「3次元画像」は、上記「第4 4」に示したとおり、「3次元仮想ゲーム世界に配置される仮想カメラ」から撮影された映像といえる。また、本願出願時点で、ゲーム装置による3D描画機能はよく知られていたことでもある(例えば、『ファイナルファンタジーVII』,「CONTINUE Vol.9」,株式会社太田出版,2003年04月28日,第一刷,p.042-043参照。以下「周知事項2」という。)。
そして、引用発明1における「テレビジョン装置16の画面に表示されてなる」「戦闘状態における戦闘シーンの飛行機の3次元画像」は、「液晶モニタ13の表示に比べて、異なる撮影方向からの画像が画面一杯に拡大され」たものであるから、戦闘シーンを撮影している3次元仮想カメラの位置および向きは、撮影対象であるオブジェクト(飛行機)の位置に基づいて、画面に表示されるよう設定されていることは明らかである。
そして、3次元画像には戦闘シーンが表示されたものであるから、ある場面においては他のオブジェクト(戦車)を表示する必要が当然あるから、他のオブジェクト(戦車)を含めた複数のオブジェクトの位置に基づいて、3次元仮想カメラの位置および向きの少なくとも一方を設定することは、当業者にとって容易に想到し得るものである。
してみると、相違点に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明1及び引用発明2を含めた周知事項1及び2から、当業者が容易に想到し得るものである。
そして、引用発明1も引用発明2を含めた周知事項1及び2も、ゲームの状況に応じた表示を行うという共通の課題を有するものである。
してみると、引用発明1に引用発明2を含めた周知事項1及び2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。

したがって、引用発明1において、引用発明2を含めた周知事項1及び2を適用することにより、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願発明の全体構成によって奏される効果も、引用発明1及び引用発明2を含めた周知事項1及び2から当業者が予測し得る範囲内のものである。


第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1及び引用発明2を含めた周知事項1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-16 
結審通知日 2015-03-17 
審決日 2015-03-30 
出願番号 特願2005-255757(P2005-255757)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宇佐田 健二  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 藤本 義仁
江成 克己
発明の名称 ゲーム装置、ゲームプログラムおよびゲームシステム  
代理人 山田 義人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ