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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01M |
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管理番号 | 1300964 |
審判番号 | 不服2013-21234 |
総通号数 | 187 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-10-31 |
確定日 | 2015-05-13 |
事件の表示 | 特願2008-558541「バッテリパックにおける乱数発生器」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月20日国際公開、WO2007/106720、平成21年 8月20日国内公表、特表2009-529767〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯と本願発明 本願は、2007年3月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2006年3月10日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年6月20日付けで拒絶の査定がされたところ、平成25年10月31日付けで審判の請求がなされ、これに対し当審において平成26年6月26日付けで拒絶理由通知がなされ、平成26年9月30日付けで手続補正がなされたものである。 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年9月30日付け手続補正により補正された、特許請求の範囲、請求項1に記載された以下の、 「【請求項1】 バッテリパックとデバイスの間で通信するシステムであって、 前記バッテリパックが、 1つ以上の電池セルと、 前記1つ以上の電池セルに接続されるバッテリ管理システムと、 を備え、 前記バッテリ管理システムは、 前記1つ以上の電池セルと前記デバイスとの間の通信及び認証を提供するために前記デバイスに接続される通信エンジンと、 前記通信エンジンの認証機能をサポートする1つ以上の乱数を生成するために前記通信エンジンに接続される乱数発生器と、 前記1つ以上の電池セルと前記デバイスの間の電流フローを制御するために前記デバイスに接続される電流フローコントローラと、 前記電流フロー(審決注:「電池フロー」は誤記)及び前記1つ以上の電池セルの電圧を監視して、障害状況を検出して損傷から前記電池パックを保護する動作を始動するために前記電流フローコントローラに接続されるバッテリ保護回路と、 前記1つ以上の電池セルと前記デバイスの間の通信及び認証タスクを実行するためのコマンドを記憶すると共に充電レベルを決定するために電流測定を実行する命令でプログラムされているメモリと、 前記通信及び認証タスクを実行すると共に、前記充電レベルを決定するための前記電流測定を実現する命令を実行するために、前記メモリ、前記通信エンジン及び前記バッテリ保護回路に接続されるプロセッサとを備え、 ハイサイド(High-side)NFET放電トランジスタと直列に接続されるハイサイド(High-side)NFET充電トランジスタを更に備え、 前記バッテリ管理システムは、前記ハイサイド(High-side)NFET充電トランジスタ及び前記ハイサイド(High-side)NFET放電トランジスタに接続されており、 前記認証は、前記デバイスが認可されたデバイスであるか否かを決定すること、及び、前記バッテリパックが前記デバイスとの使用のために認可されているか否かを、該デバイスが決定することを可能にすることを含んでいるシステム。」である。 ここで、「前記認証は、前記デバイスが認可されたデバイスであるか否かを決定すること、及び、前記バッテリパックが前記デバイスとの使用のために認可されているか否かを、該デバイスが決定する」とあるが、「前記デバイスが認可されたデバイスであるか否かを決定すること」を「デバイスが決定する」ことはできない。請求人の主張を参酌すれば「前記デバイスが認可されたデバイスであるか否かを決定すること」は「バッテリパックが決定する」ものと解するのが相当である。 2.引用例 これに対して、当審の拒絶理由に引用された特開2004-147408号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されていると認められる。 イ.「【0003】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上記従来例では、第三者がこの演算パターンを解析し、その通信形態を模倣したバッテリーパックの製造に成功すると、そのバッテリーパックでも動作可能となるため、容量表示等の製品の仕様を満足することができないという事態が発生しうる。そしてこのような事態が発生した場合には、解析された旧バッテリーパックを廃品種とし、新しい演算パターンの通信用マイコンを新規に開発しなければならないという問題が生じることになる。 【0004】 そこで、本発明は、第三者の模倣バッテリー装置の使用を制限することを、低コストで容易に実現することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】 上記した課題を解決するために、例えば本発明の電子機器システムは、以下の構成を備える。すなわち、電子機器と、その電子機器に着脱自在に構成されたバッテリー装置とを備える電子機器システムであって、前記電子機器は、バッテリー装置が装着されたときに、所定の値を有する初期信号をそのバッテリー装置に送信する送信手段と、バッテリー装置から受信した前記要求信号に対する応答の内容に基づいて、当該バッテリー装置が真正か否かを判断する認証手段と、前記送信手段により送信する前記初期信号の値を変更する変更手段と、を備えるとともに、前記バッテリー装置は、互いに異なる複数の演算パターンの中から、前記電子機器から受信した前記要求信号の値に応じた演算パターンを選択し、その選択した演算パターンにより応答信号を生成する生成手段を備えることを特徴とする。」 ロ.「【0007】 (実施形態1) 図1は、本実施形態に係る電子機器システムの構成を示す図である。 【0008】 バッテリーパック1は、14で示されるカムコーダー(Camcorder)A、または26で示されるカムコーダーBに対して着脱自在に構成され、装着時に給電する。なお、本実施形態では電子機器の代表的な例としてカムコーダーを想定しているにすぎず、本発明はあらゆる電子機器に適用することができる。 【0009】 バッテリーパック1は、以下の構成を備える。 【0010】 2は認証のための演算を行う通信マイコン、3はバッテリーパック内で認証用の通信信号をやりとりするためのID端子12をGNDレベルに落とすためのスイッチ、4はID端子12のプルアップ抵抗、5は電池の過充電および過放電を保護するためのIC、6および7は電池、8は放電を遮断するスイッチ、9は充電を遮断するスイッチである。また、10はバッテリーパックのプラス(+)端子、11はバッテリーパックのB端子、12はバッテリーパックのID端子、13はバッテリーパックのマイナス(-)端子である。 【0011】 14のカムコーダーAは、以下の構成を備える。 【0012】 15はレギュレータ5V、16は通信マイコン16、17はカムコーダーA内でID端子22をGNDレベルに落とすためのスイッチ、18はカムコーダーAのUNREGを供給するためのコントロールスイッチ、19はカムコーダーAのUNREGをON/OFFするスイッチである。なお、UNREGはレギュレートされていない電源ラインのことである。 【0013】 また、20はカムコーダーAのプラス(+)端子、21はカムコーダーAのB端子、22はカムコーダーAのID端子、23はカムコーダーAのマイナス(-)端子である。 【0014】 同図中、バッテリーパック1のID端子12とカムコーダーAのID端子22との間では認証のための信号がやりとりされる。具体的には、カムコーダーA側からみると、カムコーダーAの通信マイコン16から出力された初期信号が矢印24で示すように送出され、バッテリーパック1の通信マイコン2から出力された返信信号が矢印25で示すように返送されてくることになる。」 ハ.「【0025】 以下、具体的に説明する。図3は、本実施形態に係るバッテリーパック1の通信マイコン2によって行われる演算について説明するための図である。 【0026】 カムコーダーAは、初期信号C(A),C’(A),C”(A),・・・を選択的に送信することができる。これに対しバッテリーパック1の通信マイコン2は、予め設定されている定数または予め設定されている乱数を、カムコーダーAから受信した初期信号に加算することで、対応する返信信号R(A),R’(A),R”(A),・・・を生成する。つまり、バッテリーパック1は、受信した初期信号がC(A),C’(A),C”(A),・・・であれば相対カムコーダーはカムコーダーAであると判断することができる。そしてこの場合には、例えば「定数(もしくは乱数)を加算する」という演算パターンを用いて返信信号を生成する。」 引用例の上記記載及び添付図面を参照すると、引用例の電子機器システムは、模倣バッテリー装置の使用を制限する電子機器と、その電子機器に着脱自在に構成されたバッテリー装置とからなることが示されている。 さらに、バッテリー装置であるバッテリーパック1は、電池6および電池7、電池の過充電および過放電を保護するためのIC5、放電を遮断するスイッチ8、充電を遮断するスイッチ9、認証のための演算を行う通信マイコン2を有するものであること、電子機器は、前記バッテリーパック1が装着されたときに、所定の値を有する初期信号を前記バッテリーパック1に送信する送信手段と、前記バッテリーパック1から受信した返信信号の内容に基づいて、前記バッテリーパック1が真正か否かを判断する認証手段を有することが示されている。 引用例の上記記載及び添付図面を参照すると、前記放電を遮断するスイッチ8、前記充電を遮断するスイッチ9は、直列に接続されたFETトランジスタであることが示されている。 引用例の上記記載には、電子機器が初期信号を送信すると、バッテリーパック1は受信した初期信号から相対電子機器を判断し、乱数を加算するという演算パターンを用いて返信信号を生成することが示されている。 したがって、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。 「模倣バッテリー装置の使用を制限する、電子機器と、その電子機器に着脱自在に構成されたバッテリー装置とを備える電子機器システムであって、 前記バッテリー装置であるバッテリーパック1は、電池6および電池7、電池の過充電および過放電を保護するための電池保護IC5、放電を遮断するスイッチ8、充電を遮断するスイッチ9、認証のための演算を行う通信マイコン2を有し、 前記電子機器は、前記バッテリーパック1が装着されたときに、所定の値を有する初期信号を前記バッテリーパック1に送信する送信手段と、前記バッテリーパック1から受信した返信信号の内容に基づいて、前記バッテリーパック1が真正か否かを判断する認証手段を有するものであり、 前記電子機器が前記初期信号を送信すると、前記バッテリーパック1は受信した前記初期信号から相対電子機器を判断し、乱数を加算するという演算パターンを用いて前記返信信号を生成し、 前記放電を遮断するスイッチ8、前記充電を遮断するスイッチ9は、直列に接続されたFETトランジスタである電子機器システム。」 3.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する 引用発明の「バッテリー装置」,「バッテリーパック1」は、着脱自在に構成されたバッテリー装置であるから、本願発明の「バッテリパック」に相当する。 引用発明の「電子機器」は、バッテリーパック1が着脱自在に構成される機器であって、本願発明の「デバイス」に相当する。 引用発明の「電子機器システム」は、バッテリーパック1と電子機器との間で認証のため通信を行うシステムであり、本願発明の「バッテリパックとデバイスの間で通信するシステム」に相当する。 引用発明の「電池6」および「電池7」は、バッテリーパック1内の「セル」ということができ、本願発明の「1つ以上の電池セル」に相当する。 引用発明の「認証」は、電子機器の認証手段が、バッテリーパック1から受信した返信信号の内容に基づいて、前記バッテリーパック1が真正か否かを判断することであり、バッテリーパック1が前記電子機器で使用されるために「認可」されているか否かを、電子機器が決定することを可能にするものといえる。 そして、引用発明は、バッテリーパック1が返信信号を生成する際に、受信した初期信号から相対電子機器を判断することも行われ、このような判断は電子機器が真正な機器であることをバッテリーパック1が判断するものということができる。 一方、本願発明の「認証」は、「デバイスが認可されたデバイスであるか否かを決定すること、及び、バッテリパックが前記デバイスとの使用のために認可されているか否かを、該デバイスが決定することを可能にすることを含んでいる」ものである。 したがって、引用発明の「認証」と、本願発明の「認証」とは、バッテリパックがデバイスで使用されるために認可されているか否かを、該デバイスが決定すること、また、デバイスが認可されたデバイスであるか否か決定されることの双方の動作において一致する。 引用発明の「通信マイコン2」は、通信に関する情報処理を実行するものを含むことは自明である。 一方、本願発明の「通信エンジン」に関し、情報処理の技術分野における「エンジン」とは、コンピュータを使用し、さまざまな情報処理を実行するもののことであるから、本願発明の「通信エンジン」は、通信に関する情報処理を実行するものを意味するものと認められる。 すると、引用発明の「通信マイコン2」は、電子機器に接続され、電子機器との通信に関する情報処理を行うものを含むものであるから、本願発明の「デバイスに接続される通信エンジン」に相当する構成を含むものということができ、引用発明と本願発明とは「バッテリを管理する手段」に「デバイスに接続される通信エンジン」を備える点において一致する。 引用発明の「通信マイコン2」は、信号の受信、認証のための演算、乱数を加算するという演算パターンを用いた返信信号の生成を行うものであるから「通信及び認証を提供する」ために「通信及び認証のタスク」を実行するものといえる。 そして「マイコン」がメモリ、及び、メモリに接続されるプロセッサを有することは明らかなので、引用発明も本願発明と同様に「通信及び認証タスクを実行するためのコマンドを記憶するメモリ」及び「通信及び認証タスクを実行するために、前記メモリに接続されるプロセッサ」を有する。 引用発明の「乱数」は、乱数を加算するという演算パターンを用いて返信信号を生成するための乱数であるから、認証の機能のために用いられる乱数といえ、本願発明の「認証機能をサポートする1つ以上の乱数」に相当する。 また、引用発明における「乱数」それ自体の「発生」は、乱数を加算するという演算パターンを用いて返信信号の生成を行う通信マイコン2の内部で行われるものといえ、引用発明の「通信マイコン2」は、本願発明の「乱数発生器」に相当する構成を含むものといえ、引用発明と本願発明とは「バッテリを管理する手段」に「乱数発生器」を備える点において一致する。 引用発明の「放電を遮断するスイッチ8、充電を遮断するスイッチ9」及び「電池の過充電および過放電を保護するためのIC5」は、電池6および電池7と電子機器との電流の流れをコントロールするスイッチ、及び、電池6および電池7の電圧を監視して保護のための動作を開始する集積回路手段であるから、本願発明の「1つ以上の電池セルとデバイスの間の電流フローを制御するために前記デバイスに接続される電流フローコントローラ」及び「1つ以上の電池セルの電圧を監視して、障害状況を検出して損傷から前記電池パックを保護する動作を始動するために前記電流フローコントローラに接続されるバッテリ保護回路」に相当する。 また、引用発明において「放電を遮断するスイッチ8、充電を遮断するスイッチ9は、直列に接続されたFETトランジスタ」であり、本願発明の「ハイサイド(High-side)NFET放電トランジスタと直列に接続されるハイサイド(High-side)NFET充電トランジスタ」と対比すると、「FET放電トランジスタと直列に接続されるFET充電トランジスタ」である点において一致する。 引用発明の「認証のための演算を行う通信マイコン2」及び「電池の過充電および過放電を保護するための電池保護IC5」は、バッテリーパックの電池6および電池7に接続され、各電池に対し、「通信及び認証を提供する手段」及び「1つ以上の電池セルの電圧を監視して、障害状況を検出して損傷から前記電池パックを保護する動作を始動する」手段として、バッテリーパック1の電池6および電池7を「管理」する手段といえる。 したがって、引用発明の「認証のための演算を行う通信マイコン2」及び「電池の過充電および過放電を保護するための電池保護IC5」と、本願発明の「バッテリ管理システム」とは「バッテリを管理する手段」である点において一致する。 したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違していると認められる。 一致点 「バッテリパックとデバイスの間で通信するシステムであって、 前記バッテリパックが、 1つ以上の電池セルと、 前記1つ以上の電池セルに接続されるバッテリを管理する手段と、 を備え、 前記バッテリを管理する手段は、 前記1つ以上の電池セルと前記デバイスとの間の通信及び認証を提供するために前記デバイスに接続される通信エンジンと、 認証機能をサポートする1つ以上の乱数を生成する乱数発生器と、 前記1つ以上の電池セルと前記デバイスの間の電流フローを制御するために前記デバイスに接続される電流フローコントローラと、 前記1つ以上の電池セルの電圧を監視して、障害状況を検出して損傷から前記電池パックを保護する動作を始動するために前記電流フローコントローラに接続されるバッテリ保護回路と、 前記1つ以上の電池セルと前記デバイスの間の前記通信及び認証タスクを実行するためのコマンドを記憶するメモリと、 前記通信及び認証タスクを実行するために、前記メモリに接続されるプロセッサとを備え、 FET放電トランジスタと直列に接続されるFET充電トランジスタを更に備え、 前記認証は、前記デバイスが認可されたデバイスであるか否かを前記バッテリパックが決定すること、及び、前記バッテリパックが前記デバイスとの使用のために認可されているか否かを、該デバイスが決定することを可能にするシステム。」 相違点 <相違点1>通信エンジンと乱数発生器に関し、本願発明は、通信エンジンの認証機能をサポートする乱数発生器と通信エンジンとが「接続」されているのに対し、引用発明の通信マイコン2は、そのような特定はなされていない点。 <相違点2>バッテリ保護回路に関し、本願発明は、電流フロー及び前記1つ以上の電池セルの電圧を監視して、障害状況を検出して損傷から前記電池パックを保護する動作を始動するものであるのに対し、引用発明は、電流フローを監視して電池パックを保護することに関する特定はなされていない点。 <相違点3>バッテリを管理する手段に関し、本願発明は、バッテリ管理システムのメモリが「充電レベルを決定するために電流測定を実行する命令でプログラム」され、バッテリ管理システムのプロセッサが「前記充電レベルを決定するための前記電流測定を実現する命令を実行するために、前記メモリ、前記通信エンジン及び前記バッテリ保護回路に接続される」ものであるのに対し、引用発明には、そのような特定はなされていない点。 <相違点4>FET放電トランジスタと直列に接続されるFET充電トランジスタに関し、本願発明は、ハイサイド(High-side)NFET放電トランジスタと直列に接続されるハイサイド(High-side)NFET充電トランジスタを更に備え、バッテリ管理システムは、前記ハイサイド(High-side)NFET充電トランジスタ及び前記ハイサイド(High-side)NFET放電トランジスタに接続されているのに対し、引用発明は、このような特定がない点。 上記相違点について検討する。 相違点1について検討する。 引用発明の通信マイコン2は、マイコンに関する構成は明示されていないが、メモリやマイクロプロセッサ等のハードウエアを有することに加え、通信を行うために通信信号を送受信するためのハードウエアを有し、それぞれが相互に「接続」されて構成されるものであることは、技術常識からみて自明のことである。 コンピュータを構成する特定の情報処理を実行するものを「エンジン」と称して特定したり、機器名称によって特定することは普通に行われることであるから、引用発明の通信マイコン2における、通信及び認証に関する情報処理を実行するものを「通信エンジン」として特定し、また、乱数発生に係る情報処理を実行するものを「乱数発生器」として特定することにより、通信及び認証を提供する通信エンジンと、認証機能をサポートする乱数発生器とが接続されるものとして構成したことは、当業者が適宜なし得る設計的な事項である。 そうすると、引用発明において相違点1に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が格別の創作能力を要さずになし得たことである。 相違点2及び3について検討する。 機器に装着されるバッテリーパックが機器との間で通信を行うマイコンを有し、該マイコンはバッテリーパック内の二次電池の電圧,電流の検出を行って、二次電池に流れる電流から電池容量を算出して機器との間で通信を行うと共に、過充電、過放電、過電流から保護するバッテリーパック内の保護回路を制御することは、例えば、当審の拒絶理由に引用された特開2001-275270号公報(段落【0011】,図3を参照。)や、同じく当審の拒絶理由に引用された特開2005-160169号公報(段落【0019】,図1を参照。)に記載されるように周知の技術である。 引用発明の「バッテリを管理する手段」を構成する「通信マイコン2」と「電池保護IC5」において、電圧の監視・保護に加え、電流の監視・保護も合わせて行った方が、より保護の効果が高まるのは明らかであるから、上記の周知の技術のように、通信マイコン2が、二次電池に流れる電流測定により電池容量を算出して機器との間で通信を行うものとすると共に、電流の監視に基づき電池保護IC5の制御を行うものとすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 このとき、バッテリ保護回路である電池保護IC5は、「電流フロー及び1つ以上の電池セルの電圧を監視して、障害状況を検出して損傷から前記電池パックを保護する動作を始動する」ものとなり、また、電流測定の実行及び充電レベルの決定は、メモリに記憶されたプログラムのコマンドに基づきマイコンのプロセッサが実行するものであることは明らかであるから、通信マイコン2のメモリ及びプロセッサは、「1つ以上の電池セルとデバイスの間の通信及び認証タスクを実行するためのコマンドを記憶すると共に充電レベルを決定するために電流測定を実行する命令でプログラムされるメモリ」及び「通信及び認証タスクを実行すると共に、前記充電レベルを決定するための前記電流測定を実現する命令を実行するために、前記メモリ、前記通信エンジン及び前記バッテリ保護回路に接続されるプロセッサ」となることも明らかである。 そうすると、引用発明において、相違点2及び3に係る本願発明の構成を採用することは、当業者にとって格別の創意工夫は見いだせない。 相違点4について検討する。 ハイサイド(High-side)NFET放電トランジスタと直列に接続されるハイサイド(High-side)NFET充電トランジスタを用いて、バッテリーパック内の二次電池を過充電、過放電、過電流から保護するFETスイッチを構成することは、上記特開2005-160169号公報(段落【0046】,【0047】,図10を参照。)に記載されるように周知の技術である。 FET放電トランジスタと直列に接続されるFET充電トランジスタは、ハイサイドもしくはローサイドのいずれかに設けられるものであり、また、FETトランジスタの極性も、正極性(P)と負極性(N)から任意に選択して用いられるものであるから、引用発明において、ハイサイド(High-side)NFET放電トランジスタと直列に接続されるハイサイド(High-side)NFET充電トランジスタを用いることも、当業者が適宜なし得る設計的な事項である。 そうすると、引用発明において相違点4に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が格別の創作能力を要さずになし得たことである。 したがって、本願発明は引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に想到できたものである。 そして、本願発明に関する作用・効果も引用発明及び周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。 4.結語 以上のとおり、本願発明は引用発明及び周知の技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-12-03 |
結審通知日 | 2014-12-08 |
審決日 | 2014-12-19 |
出願番号 | 特願2008-558541(P2008-558541) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 慎太郎 |
特許庁審判長 |
堀川 一郎 |
特許庁審判官 |
矢島 伸一 藤井 昇 |
発明の名称 | バッテリパックにおける乱数発生器 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 鈴木 信彦 |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 上杉 浩 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 上杉 浩 |
代理人 | 鈴木 信彦 |
代理人 | 熊倉 禎男 |