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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1300973
審判番号 不服2013-25194  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-20 
確定日 2015-05-13 
事件の表示 特願2010-548816「ビデオデコーダエラー処理」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 9月 3日国際公開、WO2009/108614、平成23年 4月28日国内公表、特表2011-514076〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2009年2月24日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2008年2月26日 米国、2008年7月10日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年8月1日に拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年12月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の平成24年12月7日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「【請求項1】
符号化ビデオデータのカレントユニットの開始を決定することと、
前記符号化ビデオデータの次の利用可能なユニットの開始を決定しないで前記カレントユニットの少なくとも一部分を復号することと、
前記カレントユニット中の復号エラーを検出することと、
前記復号エラーが検出されたとき、前記符号化ビデオデータの前記次の利用可能なユニットの前記開始を決定することと、
前記次の利用可能なユニットの前記開始に基づいて破損データセグメントの終了を決定することと、
前記カレントユニットの前記開始と前記破損データセグメントの前記終了とに基づいて前記破損データセグメントを隠蔽することと、
を含む、ビデオ復号方法。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、平成25年12月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「【請求項1】
符号化ビデオデータのカレントユニットの開始を決定することと、
前記符号化ビデオデータの次の利用可能なユニットの開始を決定しないで前記カレントユニットの少なくとも一部分を復号することと、
前記カレントユニット中の復号エラーを検出することと、
前記復号エラーが検出されたとき、前記符号化ビデオデータの前記次の利用可能なユニットの前記開始を決定することと、
前記次の利用可能なユニットの前記開始に基づいて破損データセグメントの終了を決定することと、前記カレントユニットが第1のフレームのカレントスライスであり、前記破損データセグメントが、前記カレントスライスと第2のフレームからの符号化ビデオデータの少なくとも1つの追加のスライスとを含む、
前記カレントユニットの前記開始と前記破損データセグメントの前記終了とに基づいて前記破損データセグメントを隠蔽することと、
を含む、ビデオ復号方法。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。(下線は、補正箇所を示す。)

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、本願発明に記載された「カレントユニット」に関し、「前記カレントユニットが第1のフレームのカレントスライスであり、」という構成に限定し、また、本願発明に記載された「破損データセグメント」に関し、「前記破損データセグメントが、前記カレントスライスと第2のフレームからの符号化ビデオデータの少なくとも1つの追加のスライスとを含む、」という構成に限定することにより特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第17条の2第5項2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。

(2)引用発明
(2-1)引用発明1
原審の拒絶理由に引用文献1として引用された、特開平9-200743号公報(以下、「引用例1」という。)には「デコーダ及びMPEGビデオデコーダ」として図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【0002】
【従来の技術】マルチメディアで扱われる情報は、膨大な量で且つ多種多様であり、これらの情報を高速に処理することがマルチメディアの実用化を図る上で必要となってくる。情報を高速に処理するためには、データの圧縮・伸長技術が不可欠となる。そのようなデータの圧縮・伸長技術として「MPEG」方式が挙げられる。このMPEG方式は、ISO(International Organization for Standardization)/IEC(Intarnational Electrotechnical Commission)傘下のMPEG委員会(ISO/IEC JTC1/SC29/WG11)によって標準化されつつある。
【0003】MPEGは3つのパートから構成されている。パート1の「MPEGシステムパート」(ISO/IEC IS 11172 Part1:Systems)では、ビデオデータとオーディオデータの多重化構造(マルチプレクス・ストラクチャ)および同期方式が規定される。パート2の「MPEGビデオパート」(ISO/IEC IS 11172 Part2:Video)では、ビデオデータの高能率符号化方式およびビデオデータのフォーマットが規定される。パート3の「MPEGオーディオパート」(ISO/IEC IS 11172 Part3:Audio)では、オーディオデータの高能率符号化方式およびオーディオデータのフォーマットが規定される。
【0004】MPEGビデオパートで取り扱われるビデオデータは動画に関するものであり、その動画は1秒間に数十枚(例えば、30枚)のフレーム(静止画、コマ)によって構成されている。図8に示すように、ビデオデータは、シーケンス(Sequence)、GOP(Group Of Pictures)、ピクチャ(Picture )、スライス(Slice)、マクロブロック(Macroblock)、ブロック(Block)の順に6層の階層構造から成る。1枚のピクチャを構成するスライスの個数は一定ではなく、1個のスライスを構成するマクロブロックの個数も一定ではない。尚、図8では、マクロブロック層およびブロック層については省略してある。
【0005】また、MPEGには主にエンコードレートの違いにより、現在のところ、MPEG-1,MPEG-2の2つの方式がある。MPEG-1においてフレームはピクチャに対応している。MPEG-2においては、フレームまたはフィールドをピクチャに対応させることもできる。フィールドは、2枚で1枚のフレームを構成している。ピクチャにフレームが対応している構造はフレーム構造と呼ばれ、ピクチャにフィールドが対応している構造はフィールド構造と呼ばれる。」(3頁4欄?4頁5欄)

イ.「【0013】このようにMPEGビデオパートに準拠してエンコードされたビデオデータのデータ列(ビットストリーム)は、MPEGビデオストリーム(以下、ビデオストリームと略す)と呼ばれる。」(4頁6欄)

ウ.「【0016】図9に、従来のMPEGビデオデコーダ101のブロック回路を示す。MPEGビデオデコーダ101は、ビットバッファ102、フレームバッファ103、ピクチャヘッダ検出回路104、スライスヘッダ検出回路105、可変長デコーダ106、逆量子化回路107、IDCT(Inverse Discrete CosineTransform)回路108、MC(Motion Compensated prediction)回路109、ROM(Read Only Memory)110,111、制御コア回路112、ハフマンエラー検出回路113から構成されている。尚、各回路104?113は1チップのLSIに搭載されている。」(5頁7欄)

エ.「【0021】スライスヘッダ検出回路105は、ビットバッファ102に蓄積されたビデオストリームの各スライスの先頭に付くスライスヘッダを検出する。制御コア回路112は、ピクチャヘッダ検出回路104の検出結果に基づいて、ビットバッファ102から1フレーム期間毎に1枚のピクチャ分ずつのビデオストリームを読み出す。
【0022】可変長デコーダ106は、ビットバッファ102から読み出されたピクチャに対して、ROM110に記憶されたハフマンテーブルに格納されているハフマンコードに基づいた可変長デコードを行う。」(5頁8欄)

オ.「【0034】ハフマンエラー検出回路113は、可変長デコーダ106におけるデコード処理を監視することで、スライス毎にエラー検出を行う。すなわち、ハフマンエラー検出回路113は、スライスに対応するデータがハフマンテーブルに格納されていない場合や、スライスに対応するデータが過去のデコード結果と矛盾する場合、そのスライス内にエラーが含まれていると判定する。
【0035】制御コア回路112は、ハフマンエラー検出回路16によってスライス内にエラーが含まれていると判定された場合、以下のエラー処理を行う。ここでは、図8に示すスライスS1内にエラーが含まれている場合を例にとって説明する。尚、スライスS1はn個のマクロブロックMB1?MBnによって構成されているものとする。
【0036】(1)エラーが含まれていると判定されたスライスS1に対する可変長デコーダ106のデコード処理を停止させ、そのスライスS1のデコード処理結果を無効にさせる。
【0037】(2)スライスヘッダ検出回路105の検出結果に基づいて、ビットバッファ102からスライスS1の次のスライスS2を読み出す。そして、可変長デコーダ106にスライスS2の可変長デコードを行わせる。
【0038】(3)MC回路107およびフレームバッファ103を制御して、フレームバッファ103に格納されるスライスS1を、そのスライスS1が含まれているピクチャの1つ前にディスプレイ121へ出力されるピクチャの対応するマクロブロックMB1′?MBn′によって置き代える。この動作を、図10(d)(e)に示すように各ピクチャの順番が構成されている場合を例にとって説明する。」(6頁9欄?10欄)

上記ア.?オ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

(a)引用例1には、上記ウ.に記載されるように、MPEGビデオデコーダに関して記載があり、特に、上記オ.の段落【0034】に記載されるように、MPEGビデオストリームのデコード処理およびエラーを処理する方法が記載されている。

(b)上記ウ.およびエ.には、MPEGビデオデコーダ101の可変長デコーダ106が、1枚のピクチャ毎にビデオストリームを読み出し、デコード処理することが記載されている。そして、上記イ.には、ビデオストリームがMPEGでエンコードされたMPEGビデオストリームであると記載されている。なお、上記ア.の段落【0005】の記載から、1枚のピクチャは1つのフレームに対応している。
また、上記オ.の特に段落【0036】?【0037】の記載によれば、可変長デコーダ106のデコード処理は、スライス単位に行われており、まず、スライスS1のデコード処理が行われている。
したがって、引用例1には、『MPEGビデオストリームのピクチャのスライスS1のデコード処理を行うこと』が記載されている。

(c)上記オ.の段落【0034】には、ハフマンエラー検出回路がデコード処理を監視し、スライス内にエラーが含まれているか否かを判定することが記載されている。そして、段落【0036】には、まず、スライスS1にエラーが含まれているかどうか判定することが記載されている。
したがって、引用例1には、『デコード処理を監視し、スライスS1内にエラーが含まれているか判定すること』が記載されている。

(d)上記オ.の段落【0036】?【0037】には、スライスS1にエラーが含まれていると判定されたときには、スライスS1に関するデコード処理を停止してデコード処理結果を無効にするとともに、スライスヘッダ検出回路の検出結果に基づいて、スライスS1の次のスライスS2のデコード処理を行うことが記載されている。なお、上記エ.の段落【0021】に記載のように、スライスヘッダは各スライスの先頭に付けられているものである。
したがって、引用例1には、『エラーが含まれていると判定されたとき、スライスS1のデコード処理を停止し、デコード処理結果を無効にするとともに、スライスヘッダ検出回路の検出結果に基づいて、MPEGビデオストリームのピクチャのスライスS1の次のスライスS2のデコード処理を行うこと』が記載されている。

(e)上記オ.の段落【0038】には、エラーが含まれていると判定され、デコード処理が停止され、デコード処理結果を無効にされたスライスS1に対し、「そのスライスS1が含まれているピクチャの1つ前にディスプレイ121へ出力されるピクチャの対応するマクロブロックMB1′?MBn′によって置き代える」と記載されている。ここで、段落【0035】には、スライスS1がn個のマクロブロックMB1?MBnによって構成されていることが記載されている。
したがって、引用例1には、『スライスS1のマクロブロックMB1?MBnを、そのスライスS1が含まれているピクチャの1つ前のピクチャの対応するマクロブロックMB1’?MBn’によって置き代えること』が記載されているといえる。

以上のとおり、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されている。

(引用発明1)
「MPEGビデオストリームのピクチャのスライスS1のデコード処理を行うことと、
デコード処理を監視し、スライスS1内にエラーが含まれているか判定することと、
エラーが含まれていると判定されたとき、スライスS1のデコード処理を停止し、デコード処理結果を無効にするとともに、スライスヘッダ検出回路の検出結果に基づいて、MPEGビデオストリームのピクチャのスライスS1の次のスライスS2のデコード処理を行うことと、
スライスS1のマクロブロックMB1?MBnを、そのスライスS1が含まれているピクチャの1つ前のピクチャの対応するマクロブロックMB1’?MBn’によって置き代えることと
を含む、MPEGビデオストリームのデコード処理方法。」

(2-2)引用発明2
原審の拒絶理由に引用文献2として引用された、特開2005-295054号公報(以下、「引用例2」という。)には「動画像情報復元装置、動画像情報復元方法、動画像情報復元プログラム」として図面とともに以下の事項が記載されている。

カ.「【0012】
この問題への対処方法として、従来、MPEGやITU-T H.26xなどの国際標準映像符号化方式では、上記のようなビット誤りによる品質劣化を抑制するため、1個ないし複数個のマクロブロックの連なりをスライス、ビデオパケット、GOB (Group of Blocks)などと定義し、これらの単位で正常復号同期が確保されるようにビットストリームシンタックスが定義されている。以下、本文中ではMPEG-4ビジュアル規格(ISO/IEC 14496-2)で用いられている「ビデオパケット」という用語を用いてこれらの単位を総称する。つまり、1フレームのビットストリームデータは一般に1つないしは複数のビデオパケットの集合となる。
図1に、ビデオパケットの典型的なビットストリームシンタックス例を示す。その先頭には再同期マーカとよばれる、ビットストリーム中でユニークな同期コードが付与される。あるポイントでビットストリームにビット誤りが含まれていたとしても、次の再同期マーカを検出することでそれ以降の復号同期を回復することができる。それに続いて、ビデオパケット内のマクロブロックを、それ以前のビデオパケットとはまったく独立に復号するために必要な各種情報を多重化したビデオパケットヘッダ情報が挿入され、さらに続いて個々のマクロブロックデータが多重化される。このような構成のシンタックスをとることによって、再同期マーカから先は他のいかなるビデオパケットの情報も必要とせず、独立にマクロブロックの復号を行うことができる。
【0013】
つまり、あるビデオパケットに生じたビット誤りに伴う品質劣化は、当該ビデオパケット内に局在化され、広範囲にわたって復号同期ずれに伴う映像品質劣化が波及しないようにすることが可能である。
しかし、一般に、ビデオパケット中に含まれるマクロブロックデータは可変長符号化されているため、ビデオパケット内での復号同期ずれ、ないしは他の符号語への変化に伴う品質劣化は依然として回避されない。図2にその様子を示す。図2における、「本来の符号化データとは異なる異常なデータが復号されたマクロブロック」は、ビットストリームシンタックス的には正常の範囲内のデータであるが、本来の符号化情報がビット誤りにより変化してしまっているために映像の乱れとして現れるケースを示している。同図にて、「実際に復号が破綻して誤りを検出したマクロブロック」以降は、正常復号を継続できないことが明らかなため、次のビデオパケットの直前マクロブロックまでビットストリームデータを読み捨て、その間の画像データを修復している。画像データの修復には一般に動画像のフレーム間相関を利用して動き補償予測に用いる参照画像中から、空間的に同一位置の画像データをそのままコピーする手法などが用いられる。また、修復の範囲は、「実際に復号が破綻して誤りを検出したマクロブロック」を含むビデオパケット全体とする場合もある。」(4?5頁)

キ.「【0025】
(3)復号破綻を検出した場合のマクロブロック復号処理
可変長復号部16にて復号破綻が検出された場合は、可変長復号部16は、復号破綻検出フラグ12aを1として復号破綻が発生したことを外部通知する。次いで、復号同期を回復して正常な復号を再開するために再同期マーカをサーチする(ステップS9)。上述したように、復号破綻検出後、上記再同期マーカが見つかるまでの間のマクロブロック符号化データは失われるので、所定の範囲の画像データを修復によって補う必要がある。
本発明のポイントのひとつは、当該ビデオパケット中のビット誤りに起因する画像劣化をできる限り抑制するように、上記(2)で説明した画像劣化検出の結果に基づいて画像修復範囲を適応的に定める点にある。
【0026】
再同期マーカ検出後、次のビデオパケットの先頭マクロブロックの画面内位置を確認することにより、当該ビデオパケットが画面内のどの位置のマクロブロックで終了するかを識別する。これによって、可変長復号部16は、当該ビデオパケット中で画像修復の必要がある画像領域(画像修復領域)の終端を認識し、この終端位置を画像修復終了位置情報12bによって外部通知する。この画像修復終了位置情報12bと、画像修復開始位置決定部9で定められる画像修復開始位置情報10とに基づいて、画像修復範囲が決定される(ステップS10)。本実施の形態では、画像修復開始位置決定部9は、画像劣化検出部7の出力である画像劣化検出位置情報8に基づいて、以下のように画像修復開始位置情報10を定める。
MBPOS_B = (MBPOS_A MBPOS_C < THR) ? MBPOS_C : THR
上式で、MBPOS_Aは復号破綻を検出したマクロブロックの画面内位置、MBPOS_Bは画像修復開始位置情報10の値、MBPOS_Cは画像劣化検出位置情報8の値、THRは所定の閾値である。Z = (X < Y) ? A : Bなる演算はC言語記述で定められる3項演算子であり、XがYより小の場合にZはAとなり、さもなくばZはBとなるという意味である。また、一般に、復号破綻を検出するマクロブロックないしはそれ以前にビット誤りにより復号同期が失われるため、MBPOS_A >= MBPOS_Cとなる。ただし、当該ビデオパケット内でMBPOS_Aに至るまでの間一切画像劣化が検出されなかった場合は、MBPOS_Cはいかなる画面内位置をも示しえない初期値のままであるので、その場合にはMBPOS_C==MBPOS_Aとみなす。また、MBPOS_Cは当該ビデオパケットの先頭マクロブロックの位置よりも前になることは原理上ありえない。」(8頁)

上記カ.?キ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

(f)引用例2には、上記カ.の段落【0013】に記載のように、可変長符号化された画像データの修復についての記載がある。

(g)上記カ.には、複数個のマクロブロックの連なりをスライス等と定義し、スライス等に対し先頭に再同期マーカを付したビデオパケットを復号の単位とすることが記載されている。そして、「「実際に復号が破綻して誤りを検出したマクロブロック」以降は、正常復号を継続できないことが明らかなため、次のビデオパケットの直前マクロブロックまでビットストリームデータを読み捨て、その間の画像データを修復」することが記載され、また、画像データの修復に関し、「・・・参照画像中から、空間的に同一位置の画像データをそのままコピーする手法などが用いられる。」と記載されている。
さらに、上記カ.には「修復の範囲は、「実際に復号が破綻して誤りを検出したマクロブロック」を含むビデオパケット全体とする場合もある。」とされている。

(h)上記キ.の特に【0025】には、復号破綻が検出された場合、正常な復号を再開するため再同期マーカをサーチすること、また、再同期マーカが見つかるまでの間の符号化データが失われること、所定の範囲の失われた符号化データに係る画像データは修復により補う必要があること、がそれぞれ記載されている。
したがって、引用例2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されている。

(引用発明2)
「符号化画像データのビデオパケットの復号において、復号が破綻して誤りが検出されたとき、
ビデオパケットの再同期マーカをサーチし、再同期マーカが見つかったビデオパケットの直前のマクロブロックまでの画像データを、参照画像中から空間的に同一位置の画像データをそのままコピーする手法で修復する
符号化画像データの復号方法。」

(2-3)原審の拒絶理由に引用文献3として引用された、特開2007-19979号公報(以下、「引用例3」という。)には「動画像復号装置、動画像復号方法および動画像復号プログラム」として図面とともに以下の事項が記載されている。

ク.「【0001】
この発明は、複数のブロックからフレームが構成される画像のブロックごとの動きベクトルを用いて動画像を符号化する動画像符号化装置が送信する符号化ビットストリームを入力して動画像を復号する動画像復号装置、動画像復号方法および動画像復号プログラムに関し、特に、動き探索を行うことなしに動きベクトルを用いた高精度なエラー補正を行うことができる動画像復号装置、動画像復号方法および動画像復号プログラムに関するものである。」(3頁)

ケ.「【0046】
まず、エラー補正回路211によるエラー領域特定について説明する。MPEGは画像データを冗長性を除くために符号化しているため、符号化データの一部に異常が存在すると、次のリカバリーポイントまで復号処理が正常に行えない。そのために、エラー補正回路211は、まず最初にエラー領域の特定を行う。
【0047】
復号処理中に復号エラーを検出する箇所は可変長復号回路201である。可変長復号回路201は、復号するストリームのヘッダに規格上認められていない値が入っていたりするヘッダ異常やストリームの順番が入れ替わったりデータの一部分が欠落するなどの構成異常を検出すると、検出したエラーMB番号201dをエラー補正回路211に通知する。
【0048】
エラー補正回路211は、エラーMB番号が通知されると、可変長復号回路201と連携して符号化ストリームの次のリカバリーポイントまでストリームを読み飛ばす処理を行う。リカバリーポイントとは、次にアラインが取れる箇所であり、例えばMPEG-2ではスライスヘッダ、MPEG-4ではビデオパケットヘッダなどが挙げられる。特にここではリカバリーポイントが決められているわけではなく、アラインが取れる箇所までストリームを読み飛ばすことを行う。これによって、エラー補正回路211は、エラーMB番号とリカバリー可能なMB番号を検出することが出来るため、これらの情報からエラー領域を特定できる。
【0049】
なお、MB(マクロブロック)とは、図4に示すように、ある画面を縦16画素と横16画素単位で区切ったブロックである。MPEGではこのMB単位で処理が行われる。処理を行う順番は図5に示すとおり1MBライン毎である。
【0050】
エラー領域の特定は図6に示すように、エラーMB番号とリカバリー可能MB番号から行う。すなわち、エラーMB番号のMBからリカバリー可能MB番号の一つ前のMBまでがエラー領域となる。
【0051】
また、図7および図8のようにエラー領域がフレームをまたぐ場合には、図9または図10に示すテンポラルリファレンスの値を使って、いくつのフレームをまたいでいるかを特定する。エラー補正回路211は、ここで検出したエラー領域に対して1MB毎にエラー補正処理を行う。
【0052】
このように、エラー補正回路211は、補正パラメタメモリ209に格納されたテンポラルリファレンス値を用いることによって、フレームをまたぐエラーに対しても正確にエラー領域を決定することができる。」(8?9頁)

コ.「【0055】
エラー補正回路211は、エラーMBに隣接するMBのSkipMBフラグを用いてSkipMB判定を行う。ここで、図3-1に示したSkipMBフラグが有効であるMBとは、復号処理を行わず参照フレームにおける同位置MBの画像を現フレームの画像として処理するMBである。したがって、エラー補正回路211は、もしエラーMBがSkipMBであると判定した場合には、参照フレームにおけるエラーMBと同位置MBの画像を現フレームの画像として処理する。」(9?10頁)

上記ク.?コ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

(i)引用例3には、上記ク.に記載のように、画像の符号化ビットストリームのエラー補正を行うことができる動画像復号方法に関して記載がある。

(j)上記ケ.には、画像データが符号化された符号化ストリーム、すなわち符号化画像ストリームの復号処理中に復号エラーが検出されたとき、エラー補正をすることが記載されている。そして、エラー補正において、エラーが通知されると次のリカバリーポイントまでストリームを読み飛ばす処理が行われる。ここで、リカバリーポイントは次にアラインが取れるビデオパケットヘッダである。
エラー領域は、リカバリー可能なマクロブロックの直前のマクロブロックまでである。そして、図7および図8に記載のように、エラー領域がフレームをまたぐ場合についても記載があり、復号エラーが発生したマクロブロックのフレームから1ないし複数フレーム先のマクロブロックまでをエラー領域とする場合が開示されている。

(k)上記コ.には、エラー領域の画像を参照フレームにおける同位置の画像でエラー補正することが記載されている。

したがって、引用例3には以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が開示されている。

(引用発明3)
「符号化画像ストリームの復号処理中に復号エラーが検出されたとき、
次にアラインが取れるビデオパケットのリカバリーポイントからリカバリー可能なマクロブロックを検出し、リカバリー可能なマクロブロックの直前のマクロブロックまでのエラー領域の画像を、参照フレームにおける同位置の画像でエラー補正する符号化画像ストリームの復号方法において、
前記エラー領域は、復号エラーが発生したマクロブロックのフレームから1ないし複数フレーム先のマクロブロックまでの領域である符号化画像ストリームの復号方法。」

(3)対比
補正後の発明と引用発明1と対比する。
(a)引用発明1の「MPEGビデオストリーム」は、上記「(2-1)引用発明1」の上記イ.に記載されているように、エンコード(符号化)されたビデオデータから構成されているから、補正後の発明の「符号化ビデオデータ」に相当する。
また、引用発明1の「ピクチャのスライスS1」は、デコード処理における現時点でのの処理対象単位であるから、補正後の発明の「カレントユニット」に相当する。
また、引用発明1の「デコード処理」が、補正後の発明の「復号」に相当することは明らかである。
また、引用発明1の「デコード処理を行う」際に、デコードの「開始が決定」される手順を経て行われることは自明のことに過ぎない。そして、デコード処理は、MPEGビデオデータのデコードであるから、スライスS1を構成するマクロブロック(MB1?MBn)単位に行われることは技術常識であり、デコードの進行に従い、スライスの一部分(1ないし複数のマクロブロック)のデコードからスライスの全部分のデコードが行われることになる。
また、スライスS1のデコード処理を行っている際に、次のスライスS2のデコード処理が開始が決定されないことは、引用発明1が「エラーが含まれていると判定されたとき、スライスS1のデコード処理を停止し、デコード処理結果を無効にするとともに、スライスヘッダ検出回路の検出結果に基づいて、MPEGビデオストリームのピクチャのスライスS1の次のスライスS2のデコードを行う」という構成をもつことから明らかである。
ここで、引用発明1の「次のスライスS2」と補正後の発明の「次の利用可能なユニット」とは、引用発明1のスライスS2が「次の利用可能な」というべきものであるか不明であるが、「次のユニット」という点で共通する。
したがって、引用発明1の「MPEGビデオストリームのピクチャのスライスS1のデコード処理を行うこと」は、補正後の発明の「符号化ビデオデータのカレントユニットの開始を決定すること」に相当するとともに、「前記符号化ビデオデータの次のユニットの開始を決定しないで前記カレントユニットの少なくとも一部分を復号すること」と共通する。

(b)上記(a)で言及したとおり、引用発明1の「スライスS1」は「カレントユニット」に相当する。また、引用発明1の「デコード処理を監視」して判定される「エラー」は、デコードのエラーであるから補正後の発明の「復号エラー」に相当し、引用発明1の「エラーが含まれているかどうか判定」することは、「エラーを検出」することであるといえる。
したがって、引用発明1の「デコード処理を監視し、スライスS1内にエラーが含まれているか判定すること」は、補正後の発明の「前記カレントユニット中の復号エラーを検出すること」に相当する。

(c)上記(b)で言及したように、引用発明1の「エラーが含まれていると判定」されることは、補正後の発明の「前記復号エラーが検出」されることに相当する。
また、引用発明1の「スライスヘッダ検出回路の検出結果に基づいて」、「デコード処理」が行われる「MPEGビデオストリームのピクチャのスライスS1の次のスライスS2」における「スライスS2」と補正後の発明の「次の利用可能なユニット」とは、上記(a)で言及したように、引用発明1のスライスS2が「次の利用可能な」というべきものであるか不明であるが、「次のユニット」という点で共通する。
また、スライスS2の「デコード処理を行う」際に、デコードの「開始が決定」される手順を経て行われることは自明のことに過ぎない。
したがって、引用発明1における「エラーが含まれていると判定されたとき」、「スライスヘッダ検出回路の検出結果に基づいて、MPEGビデオストリームのピクチャのスライスS1の次のスライスS2のデコード処理を行う」ことは、補正後の発明の「前記復号エラーが検出されたとき、前記符号化ビデオデータの前記次の利用可能なユニットの前記開始を決定すること」と、「前記復号エラーが検出されたとき、前記符号化ビデオデータの前記次のユニットの前記開始を決定すること」で共通する。

(d)引用発明1では「エラーが含まれていると判定されたとき」、「スライスS1のデコード処理を停止し、デコード処理結果を無効」にしているから、スライスS1は補正後の発明の「破損データセグメント」に相当している。
また、引用発明1の「スライスS1のマクロブロックMB1?MBnを、そのスライスS1が含まれているピクチャの1つ前のピクチャの対応するマクロブロックMB1’?MBn’によって置き代える」処理は、エラーの検出されたスライスS1(すなわち、補正後の発明の「破損データセグメント」に相当。)を隠蔽する処理であるので、補正後の発明の「前記破損データセグメントを隠蔽すること」に相当する。
したがって、引用発明の「エラーが含まれていると判定されたとき」、「スライスS1のデコード処理を停止し、デコード処理結果を無効にする」ことと、「スライスS1のマクロブロックMB1?MBnを、そのスライスS1が含まれているピクチャの1つ前のピクチャの対応するマクロブロックMB1’?MBn’によって置き代える」ことは、補正後の発明の「破損データセグメントを隠蔽すること」に相当する。

(e)引用発明1の「MPEGビデオストリームのデコード処理方法」は、明らかに補正後の発明の「ビデオ復号方法」に相当する。

したがって、補正後の発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「符号化ビデオデータのカレントユニットの開始を決定することと、
前記符号化ビデオデータの次のユニットの開始を決定しないで前記カレントユニットの少なくとも一部分を復号することと、
前記カレントユニット中の復号エラーを検出することと、
前記復号エラーが検出されたとき、前記符号化ビデオデータの前記次のユニットの前記開始を決定することと、
破損データセグメントを隠蔽することと、
を含む、ビデオ復号方法。」

(相違点)
[1]「次のユニット」に関し、補正後の発明は、「次の利用可能なユニット」であるのに対し、引用発明1では、「次のスライスS2」である点。
[2]補正後の発明では、「次の利用可能なユニットの前記開始に基づいて破損データセグメントの終了を決定」しているのに対し、引用発明1では、そのようになされていない点。
[3]「破損データセグメント」に関し、補正後の発明では、「前記カレントユニットが第1のフレームのカレントスライス」であるとした上で、「前記破損データセグメントが、前記カレントスライスと第2のフレームからの符号化ビデオデータの少なくとも1つの追加のスライスとを含む」としているのに対し、引用発明1では、「スライスS1」である点。
[4]「破損データセグメントを隠蔽すること」に関し、補正後の発明では、「前記カレントユニットの前記開始と前記破損データセグメントの前記終了とに基づいて」隠蔽するのに対し、引用発明1では、そのように隠蔽していない点。

(4)当審の判断
(4-1)上記相違点[2][4]についての検討
引用発明1における「破損データセグメント」は、スライスS1である。そして、引用発明1では、「スライスS1のマクロブロックMB1?MBnを、そのスライスS1が含まれているピクチャの1つ前のピクチャの対応するマクロブロックMB1’?MBn’によって置き代える」処理を行っていることから、「破損データセグメント」の破損開始位置はデコード開始時であるスライスS1の先頭マクロブロック(MB1)であり、破損終了位置は当該スライスS1の最後尾のマクロブロック(MBn)である。
これに対し、補正後の発明では、「次の利用可能なユニットの前記開始に基づいて破損データセグメントの終了を決定する」と記載され、また、「カレントユニットの前記開始と前記破損データセグメントの前記終了とに基づいて前記破損データセグメントを隠蔽する」と記載されているから、「破損データセグメント」の破損開始位置は、カレントユニットの開始の位置、すなわち、カレントユニットの先頭であり、そして、破損終了位置は、「次の利用可能なユニット」の「開始に基づい」ていることから、「次に」復号が開始できて「利用可能なユニット」となったユニットの手前の位置となっている。
すなわち、補正後の発明と引用発明1では、「破損データセグメント」の終了位置の決定において相違がある。

上記「(2-2)引用発明2」に記載したように、引用例2には、
「符号化画像データのビデオパケットの復号において、復号が破綻して誤りが検出されたとき、
ビデオパケットの再同期マーカをサーチし、再同期マーカが見つかったビデオパケットの直前のマクロブロックまでの画像データを、参照画像中から空間的に同一位置の画像データをそのままコピーする手法で修復する
符号化画像データの復号方法。」
という引用発明2が記載されている。
ここで、引用発明2の「復号が破綻して誤りが検出」されることは、補正後の発明の「復号エラーを検出」することに相当し、引用発明2のエラーが検出された「画像データを、参照画像中から空間的に同一位置の画像データをそのままコピーする手法で修復」することは、補正後の発明の「破損データセグメントを隠蔽」することに相当する。また、引用発明2の「ビデオパケット」は補正後の発明の「ユニット」に相当する。また、引用発明2では、「ビデオパケット」の「再同期マーカが見つかっ」ていることから当該「ビデオパケット」は復号処理に利用可能であるといえ、引用発明2の「ビデオパケットの再同期マーカをサーチし、再同期マーカが見つかったビデオパケット」は、補正後の発明の「次の利用可能なユニット」に相当する。
したがって、補正後の発明の技術用語を用いれば、引用発明2には、『符号化ビデオデータに復号エラーが検出されたとき、次の利用可能なユニットの開始を決定し、次の利用可能なユニットの開始に基づいて次の利用可能なユニットの手前を破損データセグメントの終了位置として決定し、決定された破損データセグメントの終了位置に基づいて破損データセグメントの隠蔽を行うこと』が記載されている。

当業者であれば、上記引用発明2における「破損データセグメント」の終了位置を決定する技術を引用発明1に適用し、引用発明1の「破損データセグメント」の終了位置を「次の利用可能なユニットの前記開始に基づいて破損データセグメントの終了を決定」することで得ることを容易に想到するものであり(相違点[2])、これにより決定される「前記カレントユニットの前記開始と前記破損データセグメントの前記終了とに基づいて」破損データセグメントを隠蔽することも、容易に実施し得るものである(相違点[4])。

(4-2)上記相違点[1]についての検討
上記(4-1)のように引用発明2を引用発明1に適用すれば、引用発明1のスライスS1のデコード処理を「次の利用可能なユニット」のデコード処理前、すなわち、「次の利用可能なユニット」の開始を決定しないで行うこと、また、エラーが含まれていると判定されたときに「次の利用可能なユニット」をサーチして復号の開始を決定するように替えることを当業者は容易に為し得るものである。

(4-3)上記相違点[3]についての検討
上記「(2-3)引用発明3」に記載したとおり、引用例3には、
「符号化画像ストリームの復号処理中に復号エラーが検出されたとき、
次にアラインが取れるビデオパケットのリカバリーポイントからリカバリー可能なマクロブロックを検出し、リカバリー可能なマクロブロックの直前のマクロブロックまでのエラー領域の画像を、参照フレームにおける同位置の画像でエラー補正する符号化画像ストリームの復号方法において、
前記エラー領域は、復号エラーが発生したマクロブロックのフレームから1ないし複数フレーム先のマクロブロックまでの領域である符号化画像ストリームの復号方法。」
という引用発明3が記載されている。
ここで、引用発明3の「エラー領域」は補正後の発明の「破損データセグメント」に相当し、そして、引用発明3の「エラー領域の画像を、参照フレームにおける同位置の画像でエラー補正する」ことは、「破損データセグメントを隠蔽する」ことに相当する。
また、引用発明3のエラー領域が「復号エラーが発生したマクロブロックのフレームから1ないし複数フレーム先のマクロブロックまで」であることは、補正後の発明のように表現すれば、破損データセグメントが「復号エラーを発生した第1のフレームでのマクロブロックと第2のフレームの少なくとも1つの追加のマクロブロックとを含む」ことと表現することができる。
したがって、補正後の発明の技術用語を用いれば、引用発明3には、『符号化ビデオデータに復号エラーが検出されたとき、復号エラーを発生した第1のフレームでのマクロブロックと、第2のフレームの少なくとも1つの追加のマクロブロックとを含む破損データセグメントを隠蔽すること』が記載されている。

当業者であれば、上記引用発明3の破損データセグメントの範囲に係る技術を引用発明1に適用し、ここで、引用発明1の「破損データセグメント」がスライスS1であって引用発明1ではスライス単位でエラー処理を行っていることから、破損データセグメントのマクロブロックをスライスに替えて、「カレントユニットが第1のフレームのカレントスライス」であるとき、「前記破損データセグメントが、前記カレントスライスと第2のフレームからの符号化ビデオデータの少なくとも1つの追加のスライスとを含む」こととすることは当業者が容易に想到し得ることである。

(4-4)まとめ
したがって、上記各相違点は格別なものでない。そして、補正後の発明に関する作用・効果も、引用発明1ないし引用発明3から当業者が予測できる範囲のものである。
以上のとおりであるから、補正後の発明は引用発明1ないし引用発明3に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明及び周知技術
引用発明1及び引用発明2は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の「(2)引用発明」及び「(4)当審の判断」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明1とを対比するに、本願発明は補正後の発明から、本件補正に係る構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明1ないし引用発明3に基いて容易に発明をすることができたものであるから、補正後の発明から本件補正に係る限定(上述の相違点[3]に係る記載)を省いた本願発明も、同様の理由により、引用例1及び引用例2に基いて容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-04 
結審通知日 2014-12-09 
審決日 2014-12-22 
出願番号 特願2010-548816(P2010-548816)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畑中 高行  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 清水 正一
藤井 浩
発明の名称 ビデオデコーダエラー処理  
代理人 野河 信久  
代理人 河野 直樹  
代理人 井関 守三  
代理人 佐藤 立志  
代理人 堀内 美保子  
代理人 福原 淑弘  
代理人 井上 正  
代理人 砂川 克  
代理人 岡田 貴志  
代理人 赤穂 隆雄  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 峰 隆司  

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