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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1300981
審判番号 不服2014-3819  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-28 
確定日 2015-05-13 
事件の表示 特願2011-526015「表面に結合したナノ粒子を含むナノ構造体およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月11日国際公開、WO2010/027336、平成24年 1月26日国内公表、特表2012-502467〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年9月7日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 平成20年9月8日)を国際出願日とする特許出願であって、平成23年3月28日付けで手続補正がなされ、平成25年5月9日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年10月2日付けで手続補正がなされたが、同年10月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成26年2月28日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされたものである。

2.平成26年2月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年2月28日付けの手続補正を却下する。
[理 由]
平成26年2月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前には、
「【請求項1】
個々のナノ構造体から形成される網状体を形成可能であるとともに表面に結合したナノ粒子を含む前記個々のナノ構造体であって、
個々のナノ構造体が、その個々のナノ構造体の表面に2nm?50nmの最大寸法を有するメソ細孔を含み、
前記表面に結合したすべてのナノ粒子が20nmの最大寸法を有するとともに、個々のナノ構造体の表面のメソ細孔を塞がない大きさであり、かつ
ナノ粒子は、貴金属ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子およびそれらの混合物からなる群より選択されるナノ構造体。」
とあったものを、
「【請求項1】
個々のナノ構造体から形成される網状体を形成可能であるとともに表面に結合したナノ粒子を含む前記個々のナノ構造体であって、
個々のナノ構造体が、その個々のナノ構造体の表面に2nm?50nmのサイズを有するメソ細孔からなる細孔を含み、
前記表面に結合したすべてのナノ粒子が20nmの最大寸法を有するとともに、個々のナノ構造体の表面の前記細孔を塞がない大きさであり、かつ
ナノ粒子は、貴金属ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子およびそれらの混合物からなる群より選択されるナノ構造体。」
とする補正を含むものである。

そこで、本件補正の適否について検討する。

(1)まず、仮に、請求人が審判請求書や平成26年6月18日付け上申書で主張するように、本件補正後の「メソ細孔からなる細孔を含み」という記載が、個々のナノ構造体の表面の「細孔」について、メソ細孔以外のサイズの細孔を含まない、つまり、メソ細孔のみからなる旨を限定したものであるとした場合について検討する。
この場合、補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。

しかしながら、本願明細書には、段落【0010】に「・・本発明は、表面にナノ粒子が結合したナノ構造材料に関する。・・・・ナノ構造材料は、約2nm?約5μmの最大寸法を有する細孔を含み、・・」と記載されていることから、本願発明のナノ構造体(ナノ構造材料)は表面に約2nm?約5μmの細孔を含むものであり、また、段落【0017】に「・・ナノ粒子のサイズに応じて、ナノ構造材料の細孔は、マクロ細孔またはメソ細孔のいずれかである。IUPAC規定によれば、マクロ細孔は、約>50nm?約5μmのサイズを有すると考えられる細孔であり、メソ細孔は、約2nm?約50nmのサイズを有する。」と記載され、段落【0073】に「・・より小さいAgNP(直径5nm未満)は、カーボンナノチューブのメソ細孔を遮断しにくく、・・」と記載されているが、これらの記載によると、本願発明におけるナノ構造体がカーボンナノチューブの場合には、その表面に少なくともメソ細孔を有することは理解できるものの、メソ細孔以外のサイズの細孔を含まない、つまり、メソ細孔のみしか有さないとまでは技術常識からして解し得ない(特にカーボンナノチューブの場合、仮にその表面の細孔は主にメソ細孔からなるものであるとしても、全くミクロ細孔やマクロ細孔を含まないということは通常有り得ない。)。
以上のことから、個々のナノ構造体の表面の「細孔」について、メソ細孔以外の細孔を含まない、つまり、メソ細孔のみからなることについては、発明の詳細な説明に記載されておらず、また、同記載からみて自明ともいえないことである。

よって、本件補正後の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たされないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(2)次に、本件補正後の「メソ細孔からなる細孔を含み」という記載が、個々のナノ構造体の表面の「細孔」について、少なくともメソ細孔を含み、それ以外のサイズの細孔も含み得るものであると解した場合について検討する。
この場合には、本件補正の前後で実質的な内容に何ら変更はなく、かかる補正は、補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項を概念的に下位にするものではないから、限定的減縮を目的とするものに該当せず、また、誤記の訂正、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことも明らかである。

よって、上記補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。

(3)本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するか、また、仮に同法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当するとしても同法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成26年2月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年10月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
個々のナノ構造体から形成される網状体を形成可能であるとともに表面に結合したナノ粒子を含む前記個々のナノ構造体であって、
個々のナノ構造体が、その個々のナノ構造体の表面に2nm?50nmの最大寸法を有するメソ細孔を含み、
前記表面に結合したすべてのナノ粒子が20nmの最大寸法を有するとともに、個々のナノ構造体の表面のメソ細孔を塞がない大きさであり、かつ
ナノ粒子は、貴金属ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子およびそれらの混合物からなる群より選択されるナノ構造体。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由で引用された特開2005-138204号公報(以下、「引用例」という。)には、「超微粒子担持炭素材料」について、図面とともに以下の各記載がある(下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項2】
活性炭、カーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラファイトナノファイバー、フラーレン、フラーレンナノウィスカー、フラーレンナノファイバー、グラファイト化処理を施したフラーレンナノウィスカーやフラーレンナノファイバーなどの炭素材料あるいはそれらから構成される炭素複合材料に超微粒子物質として二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムを分散状態で担持させることにより、より高い電子電導性、電界電子放出特性、電荷充放電特性、触媒機能のいずれかあるいはその複数の機能が付加されたことを特長とする超微粒子物質分散担持型炭素材料。」

イ.「【0015】
本発明による炭素材料へのRuO_(2)あるいはOsO_(2)の担持処理は、上記の高性能な触媒材料としてだけでなく、電子電導性やキャパシタ特性が向上するため、省電力、高輝度、平面型のテレビディスプレイの用途に代表される高性能な電界電子放出源(エミッタ)材料、太陽電池車やハイブリッド自動車などに求められる従来のキャパシタ材料よりさらに高性能なスーパーキャパシタ材料、ならびにフレキシブルな極細の繊維状炭素材料によるナノ配線材料などを実現する。」

ウ.「【0018】
さらに、これまでRuO_(2)が担持されたスーパーキャパシタ材料は、そのRuO_(2)担持処理を通常ゾルゲル法により粉末活性炭や繊維状活性炭に担持処理されてきたが、その作成方法の制約のため活性炭にRuO_(2)を超微粒子状態で分散させて担持させることが困難であった。本発明によれば、炭素材料へ超微粒子RuO_(2)あるいはOsO_(2)を担持する方法として、それらの最高酸化状態(Ru、Osとも+8価の状態)である四酸化ルテニウム(RuO_(4))あるいは四酸化オスミウム(OsO_(4))が炭素材料と接触し酸素原子を放出する還元反応が起ることによって生成する超微粒子のRuO_(2)あるいはOsO_(2)が高い分散状態で炭素に担持する反応を利用する。このRuO_(4)あるいはOsO_(4)を生成する反応とそれらが炭素材料と接触し超微粒子のRuO_(2)あるいはOsO_(2)が分散して担持する反応の全てが常温・常圧状態で進行し、しかも従来超微粒子の担持処理に頻繁に使われてきたスパッタリング装置などの高価な特殊な装置を用いる必要もない。」

エ.「【発明の効果】
【0019】
以上示した通り、本発明によれば、超微粒子のRuO_(2)あるいはOsO_(2)を炭素材料に分散担持させることにより、高い電子電導性、電界電子放出特性、電荷充放電特性、触媒機能などの特性が向上する。具体的には、本発明をPEFCのアノード電極触媒材料に適用した場合はCO耐被毒性や発電特性が向上し、一方カソード電極触媒に適用した場合もその酸素還元反応が促進されるために発電特性が向上するなど、PEFCの早期実用化を可能とする。次に、本発明をCNTやグラファイト化処理フラーレンナノウィスカーなどの高い電子電導性の炭素材料に適用した場合は、それら単体に比べ電界電子放出特性が飛躍的に向上し、FEDの早期実現を可能とする。また、活性炭などに本発明を適用した場合は、その電荷充放電特性が向上するためハイパワーなスーパーキャパシタの実現を可能とする。さらに、繊維状の炭素材料の電気抵抗が高い場合でも、本発明によってそれに対し高い電子電導特性を付加することが可能となるため、フレキシブルで任意に配線が可能なナノ配線材料となる。
以上のように、本発明は、現在実用化開発が進められている、固体高分子型燃料電池、電界電子放出型ディスプレイ、スーパーキャパシタ、ナノ配線などのいずれに対してもそれらの開発と実用化を早期に実現する上で有効となるものであり、本発明の社会的意義は大きい。」

オ.「【実施例1】
【0026】
炭素材料に超微粒子のRuO_(2)あるいはOsO_(2)を担持する方法として、常温で揮発性のRuO_(4)あるいはOsO_(4)を気体の状態で炭素材料へ吹きつけて接触させる方法、あるいはRuO_(4)あるいはOsO_(4)に対して不活性な例えばパーフルオロブチルメチルエーテル(C4F9OCH3)などの有機フッ素系溶媒に一定量のRuO_(4)あるいはOsO_(4)を溶媒抽出法で溶解した溶液に炭素材料を撹拌混合させる方法により、超微粒子のRuO_(2)あるいはOsO_(2)を炭素材料へ分散して担持できる。これらのRuO_(4)あるいはOsO_(4)の生成は、例えばRuCl_(3)やRu(NO_(3))_(2)など(オスミウムの場合も同様の塩化物や硝酸塩を使用)の水溶液にCe^(4+)やI^(7+)などの酸化剤を添加し、それらを直接気体として使用する方法、あるいは前記したような有機フッ素系溶媒に抽出して使用する方法のいずれでも可能である。生成したRuO_(4)あるいはOsO_(4)に炭素材料であるカーボンブラックを接触させると、超微粒子のRuO_(2)あるいはOsO_(2)が得られるが、それぞれが分散担持した状態の透過型電子顕微鏡観察像を図2(RuO_(2)の場合)、図3(OsO_(2)の場合)に示す。これらの電子顕微鏡の画像から、カーボンブラックに粒子径1?3nmサイズの超微粒子のRuO_(2)あるいはOsO_(2)が分散担持されていることが分かる。」

カ.「【実施例4】
【0037】
本発明により活性炭へRuO_(2)担持処理を行って生成する超微粒子RuO_(2)が担持した活性炭の電荷充放電特性(キャパシタ特性)を調べた。具体的には、サイクリックボルタンメトリ(CV)により、少量の超微粒子RuO_(2)担持活性炭(RuO_(2)担持量:32?50重量%)をCV電極にセットし、0.5M硫酸溶液中でキャパシタンスを測定した。
【0038】
そのCV測定結果を図12に示す。用いた活性炭単体のキャパシタンスは約90?100F/gであり、その活性炭に本発明によるRuO_(2)担持処理すると280?370F/gとなった。このキャパシタンスは活性炭のRuO_(2)担持量が大きいほど増加した。なお、従来活性炭にRuO_(2)担持処理してキャパシタとする方法にゾルゲル法が用いられているが、その場合では180?220F/g程度であり、しかも活性炭へのゾルゲル法によるRuO_(2)担持処理の条件によっては安定したキャパシタンス特性が得られていないのが現状である。一方、本発明によるRuO_(2)担持活性炭のキャパシタ特性は高く安定しており、しかも材料作成上のばらつきは見られない。この理由としてはRuO_(2)が活性炭に均一に分散担持されていること、さらにそのRuO_(2)が超微粒子状態であるためである。
以上から、本発明による活性炭への超微粒子RuO_(2)担持処理は、ハイパワーなキャパシタを製造する上でも効果があることが分かる。」

・上記引用例に記載の「超微粒子担持炭素材料」は、上記「ア.」の記載事項によれば、活性炭、カーボンナノチューブなどの炭素材料に超微粒子物質として二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムを分散状態で担持させることにより、より高い電荷充放電特性等が付加された超微粒子物質分散担持型炭素材料に関する。
・上記「イ.」、「エ.」、「カ.」の記載事項によれば、炭素材料に超微粒子のRuO_(2)あるいはOsO_(2)を分散担持させることにより、例えば電荷充放電特性(キャパシタ特性)が向上するため高性能なスーパーキャパシタ材料を実現することができるものである。
・上記「ウ.」の記載事項によれば、炭素素材への超微粒子RuO_(2)あるいはOsO_(2)の分散担持は、四酸化ルテニウム(RuO_(4))あるいは四酸化オスミウム(OsO_(4))が炭素材料と接触し酸素原子を放出する還元反応が起ることによって生成する超微粒子のRuO_(2)あるいはOsO_(2)が高い分散状態で炭素に担持する反応を利用するものである。
・上記「オ.」の記載事項によれば、超微粒子のRuO_(2)あるいはOsO_(2)は、粒子径1?3nmサイズである。

したがって、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「活性炭、カーボンナノチューブなどの炭素材料に超微粒子の二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムを、四酸化ルテニウムあるいは四酸化オスミウムが炭素材料と接触し酸素原子を放出する還元反応が起ることによって生成する超微粒子の二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムが高い分散状態で炭素に担持する反応を利用することにより分散担持させた超微粒子物質分散担持型炭素材料であって、
前記超微粒子の二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムは粒子径1?3nmサイズであり、
例えば電荷充放電特性(キャパシタ特性)等が向上するため高性能なスーパーキャパシタ材料を実現することができる超微粒子物質分散担持型炭素材料。」

(2)対比
まず、本願発明における「個々のナノ構造体が、・・・メソ細孔を含み」なる記載については、個々のナノ構造体の表面の「細孔」について、少なくとも「メソ細孔」を含み、それ以外の寸法の細孔も含み得ることを意味する(上記「2.(1)」も参照)と解すべきものである。
このことを踏まえて本願発明と引用発明とを対比する。

ア.引用発明における「活性炭、カーボンナノチューブなどの炭素材料に超微粒子の二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムを、四酸化ルテニウムあるいは四酸化オスミウムが炭素材料と接触し酸素原子を放出する還元反応が起ることによって生成する超微粒子の二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムが高い分散状態で炭素に担持する反応を利用することにより分散担持させた超微粒子物質分散担持型炭素材料であって、前記超微粒子の二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムは粒子径1?3nmサイズであり」によれば、
(a)引用発明の「超微粒子の二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウム」は、粒子径が1?3nmサイズであることから、本願発明でいう「ナノ粒子」に相当するものである。
(b)そして、引用発明の「超微粒子物質分散担持型炭素材料」は、個々の「構造体」と表現することができ、超微粒子の二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムを、四酸化ルテニウムあるいは四酸化オスミウムが炭素材料と接触し酸素原子を放出する還元反応が起ることによって生成する超微粒子の二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムが高い分散状態で炭素に担持する反応を利用して分散担持させたものであるから、その表面に超微粒子の二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムが結合しているといえるものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、後述の相違点を除いて「表面に結合したナノ粒子を含む個々の構造体であって」の点で共通する。

イ.引用発明における「例えば電荷充放電特性(キャパシタ特性)等が向上するため高性能なスーパーキャパシタ材料を実現することができる超微粒子物質分散担持型炭素材料」によれば、
引用発明の超微粒子物質分散担持型炭素材料は、電荷充放電特性(キャパシタ特性)を向上したスーパーキャパシタ材料として、当然、具体的にはスーパーキャパシタ(電気二重層キャパシタ)の電極材料として用いられるものであるが、引用例において炭素材料として例示された活性炭やカーボンナノチューブがいずれであってもその表面には細孔を有し、その細孔の中には、それが占める割合はともかくとして少なくともイオンが通過可能な2nm?50nmの寸法のメソ細孔が含まれていることも技術常識といえる(例えば、特開2004-514637号公報の段落【0008】、特開2008-13394号公報の段落【0003】、特開2006-282444号公報の段落【0010】や【0017】、特開2008-44820号公報の段落【0029】を参照)から、
本願発明と引用発明とは、後述の相違点を除いて「個々の構造体が、その個々の構造体の表面に2nm?50nmの最大寸法を有するメソ細孔を含み」の点で共通するということができる。

ウ.引用発明における「前記超微粒子の二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムは粒子径1?3nmサイズであり」によれば、
(a)超微粒子の二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムは20nmの最大寸法を有することは明らかであり、また、金属酸化物であることも明らかである。
(b)さらに、本願発明でいう「メソ細孔を塞がない大きさ」というのは、本願明細書の段落【0073】、【0082】、【0086】等の記載によれば、具体的には直径5nm未満の寸法を意味するものと理解することができるところ、引用発明における超微粒子の二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムは「粒子径1?3nm」サイズであり、5nm未満であることから、「メソ細孔を塞がない大きさ」といえるものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、後述の相違点を除いて「前記表面に結合したすべてのナノ粒子が20nmの最大寸法を有するとともに、個々の構造体の表面のメソ細孔を塞がない大きさであり、かつ ナノ粒子は、金属酸化物ナノ粒子からなる」点で共通するということができる。

よって、本願発明と引用発明とは、
「表面に結合したナノ粒子を含む個々の構造体であって、
個々の構造体が、その個々の構造体の表面に2nm?50nmの最大寸法を有するメソ細孔を含み、
前記表面に結合したすべてのナノ粒子が20nmの最大寸法を有するとともに、個々の構造体の表面のメソ細孔を塞がない大きさであり、かつ
ナノ粒子は、金属酸化物ナノ粒子からなる構造体。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願発明では、個々の構造体が「ナノ」構造体であり、「個々のナノ構造体から形成される網状体を形成可能である」旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
引用例では、超微粒子物質分散担持型炭素材料をスーパーキャパシタ材料とした実施例(実施例4)においては、活性炭、カーボンナノチューブなどの炭素材料のうちの選択肢の一つである活性炭が用いられている(上記「(1)カ.」を参照)が、これに代えて同じく選択肢の一つであり「ナノ」構造体であるカーボンナノチューブを用いることも何ら否定されるものではいし、例えば特開2008-44820号公報(段落【0028】?【0030】を参照)、特表2008-522410号公報(段落【0042】を参照)、特表2003-505332号公報(段落【0123】、【0146】等を参照)に記載のように、網状体を形成可能であるカーボンナノチューブをキャパシタの電極材料として用いることは周知の技術事項であることを考慮すると、引用発明において、超微粒子物質分散担持型炭素材料をスーパーキャパシタ材料として用いる場合に、炭素材料としてその選択肢の一つである、網状体を形成可能な「ナノ」構造体であるカーボンナノチューブを選択して用いるようにすることも当業者が適宜なし得ることである。

そして、本願発明が奏する効果についてみても、引用発明及び周知の技術事項から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-04 
結審通知日 2014-12-09 
審決日 2014-12-24 
出願番号 特願2011-526015(P2011-526015)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01G)
P 1 8・ 575- Z (H01G)
P 1 8・ 537- Z (H01G)
P 1 8・ 121- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 晃洋  
特許庁審判長 丹治 彰
特許庁審判官 酒井 朋広
井上 信一
発明の名称 表面に結合したナノ粒子を含むナノ構造体およびその製造方法  
代理人 恩田 博宣  
代理人 本田 淳  
代理人 恩田 誠  

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