ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H04J 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04J |
---|---|
管理番号 | 1300982 |
審判番号 | 不服2014-4382 |
総通号数 | 187 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-03-05 |
確定日 | 2015-05-13 |
事件の表示 | 特願2007-239461「MIMO-OFDM送受信方法及び装置,並びにコンピュータ読み取り可能な記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 3月27日出願公開,特開2008- 72722〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2007年9月14日(パリ条約による優先権主張 2006年9月15日 韓国)の出願であって,平成25年10月30日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成26年3月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。なお,審査官により同年5月1日付けで作成された前置報告書に対して同年8月25日付けで上申書が提出された。 第2 補正却下の決定 [結論] 平成26年3月5日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 本願発明と補正後の発明 上記手続補正(以下,「本件補正」という。)は,平成25年3月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された 「【請求項1】 (a)受信器からの情報によって,データシンボルそれぞれが割り当てられた副搬送波それぞれを複数個の送信アンテナそれぞれに対応するように整列するステップと, (b)前記整列された副搬送波それぞれに対する変調を行うことによって,送信信号それぞれを生成するステップと, (c)前記送信アンテナそれぞれを通じて前記生成された送信信号それぞれを前記受信器に送信するステップと,を含み, 前記(a)ステップにおいて,前記情報により現れる前記受信器の受信アンテナそれぞれの受信信号の順位で,前記副搬送波それぞれを前記受信アンテナに対応する送信アンテナそれぞれに対して整列することを特徴とする送信方法。」 という発明(以下,「本願発明」という。)を, 「【請求項1】 MIMO-OFDM送受信システムにおける送信装置の送信方法であって, (a)受信器からの情報に応じて,データシンボルそれぞれが割り当てられた複数の副搬送波を複数個の送信アンテナそれぞれに対応するように整列するステップと, (b)前記整列された副搬送波それぞれに対する変調を行うことによって,送信信号それぞれを生成するステップと, (c)前記送信アンテナそれぞれを通じて前記生成された送信信号それぞれを前記受信器に送信するステップと,を含み, 前記(a)ステップにおいて,前記受信器からの情報は,所定の副搬送波の集合に該当するブロック単位の情報であり,前記副搬送波ブロックを代表する一つの整列情報によって,前記副搬送波ブロックを構成する副搬送波の全体をいずれか一つの送信アンテナに対応するように整列することを特徴とする送信方法。」 という発明(以下,「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。 2 補正の適否 (1)上記補正の概要 上記補正は,「MIMO-OFDM送受信システムにおける送信装置の送信方法であって」との記載を追加し,また,本願発明の「前記(a)ステップにおいて,前記情報により現れる前記受信器の受信アンテナそれぞれの受信信号の順位で,前記副搬送波それぞれを前記受信アンテナに対応する送信アンテナそれぞれに対して整列する」との構成を,補正後の発明の「前記(a)ステップにおいて,前記受信器からの情報は,所定の副搬送波の集合に該当するブロック単位の情報であり,前記副搬送波ブロックを代表する一つの整列情報によって,前記副搬送波ブロックを構成する副搬送波の全体をいずれか一つの送信アンテナに対応するように整列する」との構成に補正するものである。 (2)新規事項の有無について 補正後の発明の「MIMO-OFDM送受信システムにおける送信装置の送信方法であって」の点は,本願明細書の【技術分野】【0001】に記載されている。また,補正後の発明の「前記(a)ステップにおいて,前記受信器からの情報は,所定の副搬送波の集合に該当するブロック単位の情報であり,前記副搬送波ブロックを代表する一つの整列情報によって,前記副搬送波ブロックを構成する副搬送波の全体をいずれか一つの送信アンテナに対応するように整列する」は,本件補正前の特許請求の範囲の請求項5,本願明細書の【0034】,【0044】の記載に基づくものといえる。したがって,上記補正は出願当初の明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内でしたものと認められる。 (3)補正の目的要件等について 上記補正により,「送信方法」が「MIMO-OFDM送受信システムにおける送信装置の送信方法」であること,受信機からの「情報」が「ブロック単位の情報」であることが限定されたが,本願発明は「受信器の受信アンテナそれぞれの受信信号の順位で,前記副搬送波それぞれを前記受信アンテナに対応する送信アンテナそれぞれに対して整列する」ものであったところ,補正後の発明は「副搬送波ブロックを代表する一つの整列情報」は「受信器の受信アンテナそれぞれの受信信号の順位」であることは特定されていないから,「受信機からの情報」の内容が実質的に変更されている。 したがって,上記補正は,本願発明の構成を更に限定するものではなく,本願発明の構成を変更するものであるから,特許法第17条の2第5項第2号に規定される「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものとはいえない。また,特許法第17条の2第5項各号に規定される他のいずれの事項を目的とするものともいえない。同様の理由で,発明の技術的特徴が変更されたことになるから,特許法第17条の2第4項の規定を満たしているともいえない。 よって,本件補正は,特許法第17条の2第4項及び同第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 (4)独立特許要件について 上記(3)のとおりであるが,更に進んで,仮に本件補正の目的を特許請求の範囲の限定的減縮とした場合に,独立特許要件を満たしていたか否かについても検討する。 ア 引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された特表2006-520109号公報(以下,「引用例」という。)には,「MIMO-OFDM通信システムのためのリソース割り当て」として,図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「【0032】 マルチユーザMIMO-OFDMシステム (1)異なる周波数サブチャネルをマルチユーザOFDMシステムの異なる端末に割り当てるため,及び(2)単一ユーザMIMIO-OFDMシステムにおいて単一の端末に伝送チャネルを割り当てるために多様な技術が前述されている。これらの技術は,多元接続MIMO-OFDMシステムで複数の端末にリソース(例えば伝送チャネルと送信電力)を割り当てるために使用されてもよい。多様なスケジューリング方式はマルチユーザ環境のためにこれらの及び恐らく他の技術を活用することによって高いシステムスループットを達成するように設計されてよい。 【0033】 システムリソースは,高スループット及び/又は他のいくつかの基準が達成されるようにデータ伝送のために端末の「最良の」集合を選択することによって割り当てることができる。周波数選択性フェージングのもとで,リソースの割り当ては1つ又は複数の周波数チャネルのグループ毎に実行されてよい。全体的なシステム帯域幅の各部分ごとのリソース割り当ては,総システム帯域幅に基づいてスループットを最大化しようとする(すなわち,単一のキャリヤMIMOシステムの場合でのように)方式に優る追加の利得を提供することができる。 【0034】 システム帯域幅全体が(例えば単一キャリヤMIMOシステムでのように)単一の周波数チャネルとして処理される場合には,同時に送信するようにスケジュールされる端末の最大数は空間サブチャネルの数に等しく,N_(S)≦min{N_(R),N_(T)}である。システム帯域幅が(例えばMIMO-OFDMシステムでのように)N_(F)個の周波数チャネルに分割される場合,同時に送信するようにスケジュールされ得る端末の最大数はN_(F)・N_(S)である。なぜなら各伝送チャネル(すなわち,各空間サブチャネルの各周波数サブチャネル)は異なる端末に割り当てることができるからである。そしてシステム帯域幅が周波数サブチャネルのN_(G)個のグループに分割される場合には,同時に送信するようにスケジュールされ得る端末の最大数は,各空間サブチャネルの各周波数サブチャネルが異なる端末に割り当てることができるので,N_(G)・N_(S)である。端末の数が許容される最大数未満である場合には,複数の伝送チャネルが指定された端末に割り当てられてよい。 (中略) 【0037】 図1に図示されるように,端末は基地局のカバレージ(coverage)エリア(すなわち「セル」)の中で無作為に分散されてよいか,あるいは同じ場所に配置されてよい。無線通信システムの場合,リンク特性は,通常,フェージング及びマルチパスなどの多くの要因のために経時的に変化する。ある特定の瞬間に,N_(T)個の送信アンテナのアレイとN_(R)個の受信アンテナのアレイによって形成されるMIMOチャネルに対する応答は,その要素が以下のような独立したガウス確率変数から構成される行列H(k)によって特徴付けられてよい。 【0038】 ダウンリンクの場合,N_(T)個の送信アンテナのアレイは基地局にあり,N_(R)個の受信アンテナのアレイは(N-SIMOモード又はMIMOモードの場合)単一のSIMO端末又はMIMO端末で,あるいは(N-MISOモードの場合)複数のMISO端末で形成されてよい。そしてアップリンクの場合,送信アンテナアレイは全ての通信端末により使用されるアンテナによって形成され,受信アンテナアレイは基地局にある。等式(1)で,H(k)はk番目の周波数サブチャネルグループのMIMOチャネルのためのチャネル応答行列であり,hi,j(k)はk番目の周波数サブチャネルグループのj番目の送信アンテナとi番目の受信アンテナの間の結合(すなわち複素数利得(complex gain))である。 【0039】 各周波数サブチャネルグループは1つ又は複数の周波数サブチャネルを含んでよく,全体的なシステム帯域幅の内のある特定の周波数バンドに対応する。特定のシステム設計に応じて,(1)N_(F)個の周波数サブチャネルの全てからなるただ1つのグループ,あるいは(2)各グループが単一の周波数サブチャネルを有するN_(F)個のグループ,あるいは(3)1とN_(F)の間の任意の数のグループがあってよい。周波数サブチャネルグループの数N_(G)は,このようにして1とN_(F)を含んだそれらの間の範囲を動くことができる(すなわち,1≦N_(G)≦N_(F))。各グループは任意の数の周波数サブチャネルを含んでよく,N_(G)個のグループは同じ数の又は異なる数の周波数サブチャネルを含んでよい。更に,各グループは周波数サブチャネルの任意の組み合わせを含んでよい(例えば,あるグループの周波数サブチャネルは互いに隣接する必要はない)。 【0040】 等式(1)に示されるように,各周波数サブチャネルグループに対するMIMOチャネルの応答は,受信アンテナの数及び送信アンテナの数に対応するN_(R)×N_(T)の要素を有するそれぞれの行列H(k)で表されてよい。行列H(k)の各要素は,k番目の周波数サブチャネルグループのそれぞれの送信-受信アンテナ対に対する応答を記述する。フラット(flat)フェージングチャネル(すなわちN_(G)=1)の場合,1つの複素数値が送信-受信アンテナ対の全体のシステム帯域幅に対して(すなわち,N_(F)個の周波数サブチャネル全てに対して)使用できる。 【0041】 実際の動作環境においては,チャネル応答は通常システム帯域幅全体で変化し,MIMOチャネルには更に詳細なチャネル特徴付けが使用され得る。したがって,周波数選択性フェージングチャネルの場合,1つのチャネル応答行列H(k)が各周波数サブチャネルグループに提供されてよい。あるいは,チャネルインパルス応答行列H^(n)がMIMOチャネルに提供されてよく,この行列の各要素はそれぞれの送信-受信アンテナ対のためのサンプリングされたインパルス応答を示す値のシーケンスに対応する。 【0042】 受信機は,送信-受信アンテナ対毎にチャネル応答を周期的に推定してよい。チャネル推定値は,例えば当分野で既知のパイロット及び/又はデータ決定を目的とした技術を使用する,多くの方法で促進されてよい。チャネル推定値は,等式(1)に示されるように各送信-受信アンテナ対の周波数サブチャネルグループ毎に複素数値のチャネル応答推定値(例えば,利得と位相)を含んでよい。チャネル推定値は周波数サブチャネルグループ毎に各空間サブチャネルの伝送特性に関する情報(各空間サブチャネルによって,例えばどのデータレートがサポート可能であるのか)を提供する。 【0043】 チャネル推定値により与えられる情報は,(1)各周波数サブチャネルグループの空間サブチャネルごとの(後述される)後処理された信号対雑音及び干渉比(SNR)推定値,及び/又は(2)送信機が独立したデータストリーム毎に適切な速度を選択できるようにする他の何らかの統計値の中に抽出されてもよい。この必須な統計値を導出するプロセスは,MIMOチャネルを特徴付けるために必要とされるデータの量を削減するだろう。複素数のチャネル利得及び後処理されたSNRは受信機により送信機に報告されてよい様々な形式のチャネル状態情報(CSI)を表す。時分割二重化(TDD)システムの場合,後述されるようにこのようなシステムにとってダウンリンクとアップリンクの間に十分な程度の相関があってよいため,送信機は受信機からの送信(例えばパイロット)に基づいてチャネル状態情報のいくつかを導出又は推論することができるだろう。他の形式のCSIも導出及び報告されてよく,後述される。 【0044】 受信機から受信されるCSIの集合は,それらが同時に基地局と通信できるように使用可能な伝送チャネルに1つ又は複数の端末の適切な集合を割り当てることによって高スループットを達成するために使用できる。スケジューラは端末のどの特定の組み合わせが,あらゆるシステム制約及び要件に従いながら最高のシステム性能(例えば最高のスループット)を提供するのかを評価できる。 【0045】 独立した端末の空間及び周波数の「シグナチャ」(すなわち,周波数の関数であってよいそれらのチャネル応答推定値)を利用することによって,平均スループットは単一の端末により達成されるそれに比べて高めることができる。更に,マルチユーザダイバーシティ(diversity)を利用することにより,スケジューラは,同じチャネル上で同時に通信することが許可される「相互に互換性のある」端末の組み合わせを識別でき,単一ユーザスケジューリング及び複数のユーザのための無作為スケジューリングに比べて効果的にシステム容量を高めることができる。」(14?17ページ) (イ)「【0085】 第2のアンテナ割り当て方式では,評価されている仮説において送信アンテナを端末に割り当てるために最大-最大(「マックス-マックス(max-max)」)基準が使用される。このマックス-マックス基準を使用すると,各送信アンテナは,送信アンテナにとって最良のSNRを達成する端末に割り当てられる。アンテナの割り当ては周波数サブチャネルグループ毎に,そして一度に1つの送信アンテナに対して実行されてよい。 【0086】 図3は,マックス-マックス基準を使用して送信アンテナをある特定の周波数サブチャネルグループの端末に割り当てるためのプロセス218aの流れ図である。プロセス218aは,評価される1つ又は複数のアクティブな端末の特定の集合に対応する特定の仮説に対して実行される。プロセス218aは図2のステップ218のために使用されてよく,その場合ただ一つのサブ仮説がプロセス200の各仮説について評価される。 【0087】 当初,仮説行列Г(k)の最大SNRは,ステップ312で決定される。この最大SNRは特定の送信アンテナ/端末のペアリングに相当し,送信アンテナはステップ314でこの端末に割り当てられる。そしてこの送信アンテナ及び端末は,ステップ316で,行列Г(k)から削除され,行列は,送信アンテナに相当する列とちょうど割り当てられた端末に相当する行の両方を削除することにより次元(N_(T)-1)×(N_(T)-1)に削減される。 【0088】 ステップ318では,仮説の全ての送信アンテナが割り当てられたかどうかが判断される。全ての送信アンテナが割り当てられた場合には,アンテナの割り当てがステップ320で提供され,プロセスは終了する。そうでない場合には,プロセスはステップ312に戻り,別の送信アンテナが同様に割り当てられる。 【0089】 表1は,基地局が4本の送信アンテナを備え,各端末が4本の受信アンテナを備える4×4のMIMOシステムで端末により導出されるSNRの行列Г(k)の例を示す。マックス-マックス基準に基づいたアンテナの割り当て方式の場合,元の4×4行列の中の最良のSNR(16dB)が送信アンテナ3により達成され,それは端末1に割り当てられている。これは表の中の4番目の列の3番目の行の陰影が付けられたボックスによって示されている。そして,送信アンテナ3及び端末1が該行列から削除される。削減された3×3行列の中の最良のSNR(14dB)は,それぞれ端末3と2に割り当てられる送信アンテナ1と4の両方により達成される。残りの送信アンテナ2は,そして端末4に割り当てられる。 【0090】 表2は,表1に示される行列Г(k)の例に対してマックス-マックス基準を使用するアンテナの割り当てを示す。端末1の場合,最良のSNR(16dB)は送信アンテナ3から送信される信号を処理するときに達成される。他の端末に対する最良の送信アンテナも表2に示されている。次にスケジューラは,データ伝送のために使用するための適切な符号化方式と変調方式を選択するためにこの情報を使用してよい。 【0091】 ある特定の仮説行列Г(k)に対してマックス-マックス基準を使用してアンテナの割り当てが一旦行われると,この仮説に対応する性能基準(例えば,システムスループット)が,等式(4)から(6)に示されるように(例えば,アンテナの割り当てに対応するSNRに基づいて)決定されてよい。この性能基準は特定の周波数サブチャネルグループにおける仮説毎に更新される。周波数サブチャネルグループの全ての仮説が評価されると,端末及びアンテナの割り当ての最良の集合が次のタイムスロットでの周波数サブチャネルグループ上のダウンリンクデータ伝送のために選択される。スケジューリングはN_(G)個の周波数サブチャネルグループのそれぞれに実行されてよい。 【0092】 図2と図3に記述されるダウンリンクスケジューリング方式は,次のタイムスロットでダウンリンクデータ伝送を所望する(SIMO端末及び/又はMIMO端末を含んでよい)アクティブな端末の多様な可能な集合に対応する多様な仮説を評価するある特定の方式を表している。スケジューラによって評価される仮説の総数は,少数のアクティブな端末に対してすら極めて大きくなり得る。実際,仮説の総数N_(hyp)は,以下のように表現することができる: 【0093】 この場合,N_(U)はスケジューリングのために検討されるアクティブな端末の数である。例えば,N_(G)=16,N_(U)=8,及びN_(T)=4の場合には,N_(hyp)=1120となる。最良の仮説とアンテナの割り当てを選択するために使用される性能基準によって定量化されるように,最高のシステム性能を実現する特定の仮説及び特定のアンテナの割り当てを決定するために徹底的なサーチが行われてよい。 【0094】 上で注記されたように,複雑度を削減した他のダウンリンクのスケジューリング方法も実現されてよい。これらのスケジューリング方式は,ダウンリンクデータ伝送のために端末をスケジュールするために必要とされる処理の量を削減する一方で高いシステム性能も提供してよい。 【0095】 優先順位に基づいたスケジューリング方式では,アクティブな端末はそれらの優先順位に基づいてデータ伝送にスケジュールされる。それぞれのアクティブな端末の優先順位は,後述されるように,1つ又は複数の基準(例えば,平均スループット),システム制約及び要件(例えば,最大の待ち時間),他の要因,又はその組み合わせに基づいて導出されてよい。リストは次のタイムスロットでデータ伝送を所望する全てのアクティブな端末のために維持されてよい。端末がダウンリンクデータ伝送を所望するとき,それはリストに追加され,その基準が(例えばゼロに)初期化される。リストの中の各端末の基準は,その後はタイムスロット毎に更新される。一旦,端末がもはやデータ伝送を所望しなくなると,それはリストから取り除かれる。 【0096】 各タイムスロットで周波数サブチャネルグループ毎に,リスト内の端末の全て又は部分集合がスケジューリングに検討されてよい。検討される特定の数の端末は多様な要因に基づいて選択されてよい。一実施形態では,N_(T)個の最高の優先順位の端末だけがデータ伝送のために選択される。別の実施形態では,N_(X)>N_(T)の場合に,リストの中の最高のN_(X)個の優先順位の端末がスケジューリングのために検討される。MIMO端末はスケジューリングのためにN_(T)個又はN_(X)個の最高の優先順位の端末を選択するときに複数の端末として表現されてよい。例えば,N_(T)=4であって4個の独立なデータストリームが指定された周波数サブチャネルグループに対して基地局から送信されると,SIMO端末は3つの空間サブチャネルを割り当てられるMIMO端末と共に選択されてよい(その場合,MIMO端末は,事実上,4つの最高の優先順位の端末を選択する上での3つの端末を表現している)。 【0097】 図4は,優先順位に基づいたダウンリンクのスケジューリング方式400の流れ図であり,それによりN_(T)個の最高の優先順位の端末の集合がそれぞれの周波数サブチャネルグループに対するスケジューリングに検討される。最初に,第1の周波数サブチャネルグループは,ステップ410で周波数指数k=1を設定することにより検討される。そしてk番目の周波数サブチャネルグループに対する空間サブチャネルは,ステップ412で開始するダウンリンク伝送のために端末に割り当てられる。 【0098】 スケジューラはステップ412で,リストの中の全てのアクティブな端末の優先順位を調べ,N_(T)個の最高の優先順位の端末の集合を選択する。リスト中の残りのアクティブな端末は,このスケジューリング間隔でのこの周波数サブチャネルグループに対するスケジューリングでは検討されない。それぞれの選択された端末のチャネル推定値は,次にステップ414で引き出される。例えば,N_(T)個の選択された端末の後処理されたSNRが引き出され,仮説行列Г(k)を形成するために使用できる。 【0099】 次にN_(T)個の送信アンテナが,ステップ416で,チャネル推定値に基づいて,そして多くのアンテナ割り当て方式の任意の1つを使用してN_(T)個の選択された端末に割り当てられる。例えば,アンテナの割り当ては前述された徹底的なサーチ又はマックス-マックス基準に基づいてよい。別のアンテナ割り当て方式では,送信アンテナは,端末の基準が更新された後にそれらの優先順位が可能な限り近づいて正規化されるように端末に割り当てられる。 【0100】 端末に対するデータレート及び符号化方式と変調方式は,次にステップ418でアンテナの割り当てに基づいて決定される。リスト中のスケジュールされた(及びスケジュールされていない)端末の基準は,スケジュールされたデータ伝送(及び非伝送,それぞれ)を反映するために更新され,システム基準はステップ420でも更新される。 【0101】 そして,全ての周波数サブチャネルがダウンリンク伝送に割り当てられたかどうかの判断がステップ422で下される。全ての周波数サブチャネルが割り当てられているのではない場合には,次の周波数サブチャネルグループが,ステップ424で指数kを増分する(すなわち,k=k+1)ことによって検討される。次に,プロセスはステップ412に戻り,この新しい周波数サブチャネルグループの空間サブチャネルをアクティブな端末の同じ又は別の集合に割り当てる。ステップ412から424は,割り当てられる周波数サブチャネルグループ毎に繰り返される。 【0102】 全ての周波数サブチャネルグループがステップ422で割り当てられていると,次にステップ426で,ダウンリンクデータ伝送のために選択される特定のアクティブな端末,それらの割り当てられた伝送チャネル,スケジュールされた(複数の)タイムスロット,データレート,符号化方式と変調方式等,あるいはその任意の組み合わせを示すスケジュールが形成され,これらの端末に通信されてよい。そしてプロセスはこのスケジューリング間隔に対して終了する。 【0103】 上で注記されたように,送信アンテナは多様な方式に基づいて周波数サブチャネルグループ毎に選択された端末に割り当てられてよい。あるアンテナ割り当て方式では,送信されたアンテナは,高いシステム性能を達成するために,そして端末の優先順位に基づいて割り当てられる。 【0104】 表3は,特定の周波数サブチャネルグループに対する検討されている仮説の中の各端末により導出される後処理されたSNRの例を示している。端末1の場合,最良のSNRは,表の行3,列4の陰影が付けられたボックスにより示されるように,送信アンテナ3から送信されるデータストリームを検出したときに達成される。仮説の中の他の端末のための最良の送信アンテナも,ボックス内の陰影付けによって示される。 【0105】 各端末が,最良の後処理されたSNRが検出される異なる送信アンテナを識別すると,送信アンテナはそれらの最良の後処理されたSNRに基づいて端末に割り当てられてよい。表3に示されている例の場合,端末1は送信アンテナ3に割り当てられてよく,端末2は送信アンテナ2に割り当てられてよい。 【0106】 複数の端末が同じ送信アンテナを好む場合には,スケジューラが多様な基準(例えば公平さ,性能基準及び他)に基づいてアンテナの割り当てを決定できる。例えば,表3は,端末3と4の最良の後処理されたSNRが同じ送信アンテナ1から送信されるデータストリームに対して生ずることを示している。目的がスループットを最大限にすることである場合には,スケジューラが送信アンテナ1を端末3に割り当て,送信アンテナ2を端末4に割り当ててよい。しかしながら,アンテナが公平さを達成するために割り当てられる場合には,送信アンテナ1は,端末4が端末3より高い優先順位を有する場合に端末4に割り当てられてよい。 【0107】 MIMO端末のためのスケジューリングもまた,完全なCSIに基づいて実行されてよい。この場合,端末のスケジューリングのために使用される統計は基地局の送信アンテナと端末の受信アンテナの間の複素数のチャネル利得であり,等式(1)に示されるチャネル応答行列H(k)を形成するために使用される。次に,スケジューリングは相互に互換性のある空間シグナチャの集合が周波数サブチャネルグループ毎に選択されるように実行される。チャネル応答行列H(k)に基づいた端末のスケジューリングは,更に以下のように詳説される。」(25?29ページ) (ウ)「【0235】 TXデータプロセッサ814xからの変調シンボルはTX MIMOプロセッサ820xに提供される。TX MIMOプロセッサ820xはN_(D)個のチャネルデータプロセッサ910からN_(D)個の変調シンボルストリームを受信し,受信された変調シンボルをN_(T)個のシンボルベクトルストリーム,すなわちデータを送信するために使用される各アンテナ毎に1つのシンボルベクトルストリームの,V_(1)からV_(Nt)までにデマルチプレクスする。各シンボルベクトルストリームは,それぞれの変調器822に供給される。図9に図示される実施形態では,各変調器822が高速逆フーリエ変換(IFFT)プロセッサ940,周期的接頭部生成器942,及び送信機(TMTR)944を含む。 【0236】 IFFTプロセッサ940は,IFFTを使用して(OFDMシンボルと呼ばれる)その時間領域表現に各受信シンボルベクトルを変換する。IFFTプロセッサ940は,任意の数の周波数サブチャネル(例えば,8,16,32...N_(F)...)でIFFTを実行するように設計できる。一実施形態では,OFDMシンボルに変換されたシンボルベクトル毎に,周期的接頭部生成器942がOFDMシンボルの時間領域表現の一部を反復し,特定の送信アンテナのための「伝送シンボル」を形成する。該周期的接頭部は,マルチパスの遅延広がりが存在する場合に伝送シンボルがその直交特性を保持することを保証し,それにより有害なパスの影響に対して性能を改善する。IFFTプロセッサ940及び周期的接頭部生成器942の実現は当分野で既知であり,ここに詳細に説明されない。 【0237】 送信機944は,次に関連付けられた周期的接頭部生成器942からの時間領域伝送シンボルをアナログ信号に変換し,該アナログ信号を更に増幅し,フィルタにかけ,直交変調し,そしてアップコンバートし(upconverts),無線リンク上での伝送に適した変調済みの信号を提供する。送信機944からの変調された信号は,次にアンテナ824から端末に送信される。」(52?53ページ) 上記記載及び図面並びに当該技術分野における技術常識を考慮すると, a 上記(ア)の【0032】,上記(イ)の記載及び図4,図9によれば,引用例には「MIMO-OFDMシステムにおける送信機装置の送信方法」について記載されていると認められる。 b 上記(ア)の【0043】の記載によれば,受信機より送信機にチャネル状態情報(CSI)が報告され,当該CSIには複素数のチャネル利得及び後処理されたSNRが含まれる。ここで,ダウンリンクにおいては受信機(装置)は端末であることは明らかである。そして,上記(ア)の【0033】,【0034】の記載によれば,リソースの割り当ては複数の周波数チャネルのグループ(周波数サブチャネルグループ)毎に実施され,上記(イ)の【0085】?【0091】,【0097】?【0107】の記載によれば,周波数サブチャネルグループ毎にSNRに基づいて各端末に対して送信アンテナが割り当てられている。したがって,引用例には「端末からの情報に応じて,周波数サブチャネルグループ毎に,複数の端末を複数個の送信アンテナそれぞれに割り当てる」ことが記載されていると認められる。 c 上記(ア)の【0039】の記載によれば,各周波数サブチャネルグループは,周波数サブチャネルの任意の組み合わせが含まれ得るものであるから,所定の周波数サブチャネルの集合に該当することは明らかである。 そして,同【0040】,【0041】の記載によれば,k番目の周波数サブチャネルグループのそれぞれの送信-受信アンテナ対に対する応答を記述する,1つのチャネル応答行列H(k)が,各周波数サブチャネルグループに提供されるのであるから,当該チャネル応答行列H(k)はk番目の周波数サブチャネルグループを代表するチャネル応答行列であるといえる。また,上記(イ)の【0085】?【0091】,【0097】?【0107】の記載によれば,【表1】,【表3】のSNRは,各周波数サブチャネルグループを構成する各周波数サブチャネル毎に存在するものではなく,各周波数サブチャネルグループ毎に1つであり,周波数サブチャネルグループを代表するものであることは明らかである。すなわち,「端末からの情報」は,「所定の周波数サブチャネルの集合に該当するグループ単位の情報」といえる。 また,ダウンリンクのスケジューリングにおいて複数の端末を複数個の送信アンテナそれぞれに割り当てることは,複数の端末宛の情報を複数個の送信アンテナそれぞれに割り当てることに他ならない。そして,上記bのとおり,周波数サブチャネルグループ毎にSNRに基づいて各端末に対して送信アンテナが割り当てられるのであるから,ある端末宛の情報は,周波数サブチャネルグループを構成する周波数サブチャネルの全体についていずれか1つのアンテナに対応するように割り当てられることは明らかである。 したがって,引用例には,「上記割り当てにおいて,前記端末からの情報は,所定の周波数サブチャネルの集合に該当するグループ単位の情報であり,前記周波数サブチャネルグループを代表する一つの情報によって,周波数サブチャネルグループを構成する周波数サブチャネルの全体について,ある端末宛の情報がいずれか1つのアンテナに対応するようする」ことが記載されていると認められる。 d 上記(イ)の【0085】?【0091】,【0097】?【0107】,上記(ウ)の【0235】の記載によれば,上記b,cの割り当て処理により,各アンテナに対応するN_(T)個のシンボルベクトルストリームが得られると認められる。そして,上記(ウ)の【0236】,【0237】の記載及び図9によれば,TX MIMOプロセッサ820xからのN_(T)個のシンボルベクトルストリームが,それぞれIFFTされて,それぞれの送信アンテナから端末に送信される。ここで,MIMO-OFDMシステムであるから,IFFTされるシンボルベクトルストリームは,周波数サブチャネルそれぞれに対応するシンボルからなるものであることは明らかである。したがって,引用例には「周波数サブチャネルそれぞれに対応するシンボルからなるシンボルベクトルストリームに対してIFFTを行い,送信アンテナそれぞれを通じてIFFTされたシンボルベクトルストリームそれぞれを前記端末に送信する」ことが記載されていると認められる。 以上を総合すると,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「MIMO-OFDMシステムにおける送信機装置の送信方法であって, 端末からの情報に応じて,周波数サブチャネルグループ毎に,複数の端末を複数個の送信アンテナそれぞれに割り当て, 周波数サブチャネルそれぞれに対応するシンボルからなるシンボルベクトルストリームに対してIFFTを行い,前記送信アンテナそれぞれを通じてIFFTされたシンボルベクトルストリームそれぞれを前記端末に送信する, 上記割り当てにおいて,前記端末からの情報は,所定の周波数サブチャネルの集合に該当するグループ単位の情報であり,前記周波数サブチャネルグループを代表する一つの情報によって,周波数サブチャネルグループを構成する周波数サブチャネルの全体について,ある端末宛の情報がいずれか1つのアンテナに対応するようする,方法。」 イ 対比・判断 補正後の発明と引用発明とを対比すると, (ア)引用発明の「MIMO-OFDMシステムにおける送信機装置」,「端末」,「周波数サブチャネル」,「周波数サブチャネルグループ」は,明らかにそれぞれ補正後の発明の「MIMO-OFDM送受信システムにおける送信装置」,「受信器」,「副搬送波」,「副搬送波ブロック」に相当する。 (イ)引用発明の「端末宛の情報」は,引用例の図9に示されるようにシンボルマッピングされたデータシンボルとされており,IFFTを行う前提として,当該データシンボルは副搬送波にマッピングされていることは自明である。そして,「周波数サブチャネルグループ毎に,複数の端末を複数個の送信アンテナそれぞれに割り当て」ることにより,各送信アンテナから送信されるN_(T)個のシンボルベクトルストリーム(V_(1)?V_(Nt))が,各周波数サブチャネルグループ毎に,異なる端末宛のデータシンボルから構成されるようになるのであるから,引用発明の「端末からの情報に応じて,周波数サブチャネルグループ毎に,複数の端末を複数個の送信アンテナそれぞれに割り当て」は補正後の発明の「(a)受信器からの情報に応じて,データシンボルそれぞれが割り当てられた複数の副搬送波を複数個の送信アンテナそれぞれに対応するように整列するステップ」に相当する。 (ウ)上記(ア),(イ)のとおりであるから,引用発明の「周波数サブチャネルそれぞれに対応するシンボルからなるシンボルベクトルストリームに対してIFFTを行」うことは,補正後の発明の「(b)前記整列された副搬送波それぞれに対する変調を行うことによって,送信信号それぞれを生成するステップ」に相当し,引用発明の「前記送信アンテナそれぞれを通じてIFFTされたシンボルベクトルストリームそれぞれを前記端末に送信する」は,補正後の発明の「(c)前記送信アンテナそれぞれを通じて前記生成された送信信号それぞれを前記受信器に送信するステップ」に相当する。 (エ)上記(ア)?(ウ)のとおりであるから,「副搬送波ブロックを代表する一つの情報」が「整列情報」である点は別して,「前記(a)ステップにおいて,前記受信器からの情報は,所定の副搬送波の集合に該当するブロック単位の情報であり,前記副搬送波ブロックを代表する一つの情報によって,前記副搬送波ブロックを構成する副搬送波の全体をいずれか一つの送信アンテナに対応するように整列する」点で両者に差異は無い。 したがって,補正後の発明と引用発明とを対比すると,両者は,以下の点で一致し,また,相違している。 (一致点) 「MIMO-OFDM送受信システムにおける送信装置の送信方法であって, (a)受信器からの情報に応じて,データシンボルそれぞれが割り当てられた複数の副搬送波を複数個の送信アンテナそれぞれに対応するように整列するステップと, (b)前記整列された副搬送波それぞれに対する変調を行うことによって,送信信号それぞれを生成するステップと, (c)前記送信アンテナそれぞれを通じて前記生成された送信信号それぞれを前記受信器に送信するステップと,を含み, 前記(a)ステップにおいて,前記受信器からの情報は,所定の副搬送波の集合に該当するブロック単位の情報であり,前記副搬送波ブロックを代表する一つの情報によって,前記副搬送波ブロックを構成する副搬送波の全体をいずれか一つの送信アンテナに対応するように整列することを特徴とする送信方法。」 (相違点) 「副搬送波ブロックを代表する一つの情報」について,補正後の発明は「整列情報」であるのに対して,引用発明はチャネル状態情報(CSI)であってSNRを含むものの,「整列情報」といえるか否かは明らかでない点。 上記相違点について検討するに,本願明細書には「整列情報」として「電力強度順位」や「SINR順位」等の順位を表すものしか開示していないが,「整列情報」をそのような順位を表すものに限定して解釈する理由はなく,「整列」させるための情報,すなわち,各アンテナから送信されるデータシンボルを搬送波ブロック毎に変えるための情報と解するのが自然である。してみると,引用発明の「端末からの情報」であるSNRも,各送信アンテナから送信されるN_(T)個のシンボルベクトルストリーム(V_(1)?V_(Nt))が,各周波数サブチャネルグループ毎に,異なる端末宛のデータシンボルから構成されるようするために用いられているといえるから,上記相違点には実質的な差異は無い。 また,仮に「整列情報」が順位に表す情報としても,当該分野において複数の品質情報をフィードバックする際に相対的な順位を送信することは普通に行われるていることである(必要であれば,例えば原査定の拒絶理由に引用された国際公開第2005/006622号の24ページ12?13行参照。)から,当業者が容易になし得ることに過ぎない。そして,引用例には優先順位により割り当てることも示唆されている(上記ア(イ)の【0106】参照。)から,複数の端末においてあるアンテナに対する順位が同じでも割り当てがなされ得ることは自明であり,端末からの情報をSNRそのものに代えてSNRの順位とすることに阻害要因はない。 そして,補正後の発明の作用効果も,引用発明に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。 ウ むすび 以上のとおり,補正後の発明は,引用発明と同一であるか,あるいは引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第1項第3号又は特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3 結語 以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第4項及び同第5項の規定に違反し,また,同第6項において準用する同法第126条第7項の規定にも違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 ( なお,請求人は,平成26年8月25日付けで上申書を提出し,独立請求項1,6,7,8,13,14のそれぞれに記載の「所定の副搬送波の集合」の文言を「所定の連続する副搬送波の集合」に補足修正する補正案を提示し,補正の機会を求めている。そして,(a)引用例の【0039】には「更に,各グループは周波数サブチャネルの任意の組み合わせを含んでよい(例えば,あるグループの周波数サブチャネルは互いに隣接する必要はない)。」と記載されており,一方,本願発明における受信器からの情報は,図7,本願明細書【0034】に記載の通り,「・・・受信器からフィードバックされた整列情報は,B個の連続するn番目の副搬送波の集合に該当するブロック,すなわちn番目の副搬送波のブロック単位の情報であるということが分かる。」であって,当該技術的特徴は引用文献1に記載の発明とは相反するものである旨,(b)本願明細書【0034】の末尾に記載した「このように,MIMO-OFDM受信器がいずれか一つの副搬送波ブロックを構成する副搬送波に対してそれぞれ整列情報をフィードバックせず,この副搬送波ブロックを代表する一つの整列情報のみをフィードバックすることによって,フィードバック情報量を減らすことができる。」という効果を具現するものであって,引用例に記載された発明に基づいて,当業者が適宜なし得たことではない旨,主張している。 しかしながら,引用例の【0039】は「(例えば,あるグループの周波数サブチャネルは互いに隣接する必要はない。)」との記載にとどまり,「あるグループの周波数サブチャネルは互いに隣接するものではない」とはしていない。そして,当該記載は括弧書きであり,当該括弧書きの「更に,各グループは周波数サブチャネルの任意の組み合わせを含んでよい」との記載によれば,むしろ,「あるグループの周波数サブチャネルは互いに隣接する」ものは当然に含まれるところ,「あるグループの周波数サブチャネルは互いに隣接する」に限定されずそれ以外のものも含まれ得ることを述べているに過ぎないと解するのが自然である。したがって,上記(a)の主張は採用できない。 また,隣接した副搬送波から一つのグループを構成することも,一定の周期で副搬送波を循環させながら一つのグループを構成することも,ともに普通に行われていることであり,また,隣接した搬送波はOFDMのコヒーレンスバンド幅特性によって類似した特性を示すことも,本願優先日前によく知られたことである(必要とあれば,例えば特開2005-160079号公報の【0030】,特表2004-529524号公報の【0087】,【0090】参照。)から,上記(b)の効果も格別ではなく,補正案に係る発明に進歩性を認めることはできない。 したがって,補正の機会を与える必要性は見出せない。 ) 第3 本願発明について 1 本願発明 平成26年3月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「1 本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。 2 引用発明 引用発明は,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(4)独立特許要件」の項中の「ア 引用発明」の項で認定したとおりである。 3 対比・判断 そこで,本願発明と引用発明とを対比するに,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(3)補正の目的要件等について」の項で述べたとおり,上記本願発明は補正後の発明から,「送信方法」が「MIMO-OFDM送受信システムにおける送信装置の送信方法」である,及び受信機からの「情報」が「ブロック単位の情報」である,との本件補正に係る限定が省かれ,本願発明は「受信器からの情報」により「受信器の受信アンテナそれぞれの受信信号の順位」が「現れる」ことが特定されているものである。 そうすると,本願発明の構成に当該補正に係る前記限定を付加し,また「整列情報」を順位を表すものとしてみた補正後の発明が,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(4)独立特許要件」の項中の「ウ 対比・判断」の項で検討したとおり,引用発明に基づいて容易に発明できたものであるから,本願発明も同様の理由により,容易に発明できたものである。 4 むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-12-04 |
結審通知日 | 2014-12-09 |
審決日 | 2014-12-22 |
出願番号 | 特願2007-239461(P2007-239461) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04J)
P 1 8・ 57- Z (H04J) P 1 8・ 575- Z (H04J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大野 友輝 |
特許庁審判長 |
田中 庸介 |
特許庁審判官 |
菅原 道晴 萩原 義則 |
発明の名称 | MIMO-OFDM送受信方法及び装置、並びにコンピュータ読み取り可能な記録媒体 |
代理人 | 特許業務法人共生国際特許事務所 |