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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W |
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管理番号 | 1301018 |
審判番号 | 不服2013-11577 |
総通号数 | 187 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-06-19 |
確定日 | 2015-05-13 |
事件の表示 | 特願2011-534537「マルチ・モード・デバイスの選択的データ通信のためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 5月 6日国際公開、WO2010/051046、平成24年 3月29日国内公表、特表2012-507932〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成21年2月5日(パリ条約に基づく優先権主張 2008年10月29日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年10月19日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成25年1月23日に手続補正がなされ、平成25年2月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成25年6月19日に拒絶査定不服審判が請求され、平成26年5月29日付けで当審から拒絶理由が通知され、これに対して平成26年10月30日に手続補正がなされたものである。 第2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年10月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次の事項により特定されるものである。 「【請求項1】 下記を備える、長距離無線アクセス・テクノロジーのトラヒック輻輳を緩和することによってネットワークへのマルチ・モードの移動局のアクセスを提供する方法、 前記移動局が長距離無線アクセス・テクノロジー(RAT)基地局により前記ネットワークに接続されている間に前記移動局の位置を決定すること、 前記移動局の移動速度を決定すること、 前記ネットワークに前記移動局を接続するために利用可能な短距離RATアクセス・ポイントを、前記位置及び他のファクタに基づいて、識別すること、 前記移動速度が閾値より低い場合にのみ、前記短距離RATアクセス・ポイントによる前記ネットワークへの接続に切り替えるように前記移動局に指示すること。」 第3.引用発明 当審拒絶理由に引用された刊行物1(特開平10-248090号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (a)段落番号【0011】-【0012】 「【0010】次に、ハンドオーバの手順に関してフローチャートを用い説明する。 【0011】まず、移動局が待ち受けの状態では基地局からの電波の強さ等の条件によりマクロセルかマイクロセルのどちらかを選択して待ち受けている。待ち受け状態のセルを通して発呼・着呼が行われマクロセル/マイクロセルそれぞれを通して通話に入る。基地局の受信部は常に移動局の電界の強さを監視しておりその電界情報を制御部に対して送る。制御部はこの送られてきた電界強度が急激に落ち込みある閾値を下回らないか見ており、ある周期毎にその期間内に落ち込んだ回数を周期的に基地局制御装置に送出する。基地局制御装置ではこの送られてきたデータが予め設定した値と比較する。マイクロセルにおいてはこの値が連続して規定値を越えた場合、早い速度で移動していると判断しマクロセルへのハンドオーバを行う。 【0012】またマクロセルにおいてはこの補正された変化量が極めて小さく(前述の規定値より余裕をもった低い値より小さい)かつ長時間保たれている場合は移動局が止まったかあるいは歩行していると判断してマイクロセルへハンドオーバさせる。」 (b)図3では、「マクロセルで通話」の次のブロックに「移動局からの電界の強さが急激に落ち込む回数をカウント」と記載されている。 したがって、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ハンドオーバの手順であって、 移動局が待ち受けの状態では基地局からの電波の強さ等の条件によりマクロセルかマイクロセルのどちらかを選択して待ち受けており、待ち受け状態のセルを通して発呼・着呼が行われマクロセル/マイクロセルそれぞれを通して通話に入り、 マクロセルで通話中の時には、移動局からの電界の強さが急激に落ち込む回数をカウントしており、 基地局の受信部は常に移動局の電界の強さを監視しておりその電界情報を制御部に対して送り、制御部はこの送られてきた電界強度が急激に落ち込みある閾値を下回らないか見ており、ある周期毎にその期間内に落ち込んだ回数を周期的に基地局制御装置に送出し、基地局制御装置ではこの送られてきたデータが予め設定した値と比較し、 マイクロセルにおいてはこの値が連続して規定値を越えた場合、早い速度で移動していると判断しマクロセルへのハンドオーバを行い、 マクロセルにおいてはこの補正された変化量が極めて小さく(前述の規定値より余裕をもった低い値より小さい)かつ長時間保たれている場合は移動局が止まったかあるいは歩行していると判断してマイクロセルへハンドオーバさせる、 ハンドオーバの手順。」 第4.本願発明と引用発明の一致点・相違点 引用発明の移動局は、マクロセルの基地局に接続するモードとマイクロセルの基地局に接続するモードの双方で動作できるから、本願発明と引用発明とは、「ネットワークへのマルチ・モードの移動局のアクセスを提供する方法」である点で一致している。 マクロセルの大きさとマイクロセルの大きさを比較すれば、マクロセルの方が大きいから、引用発明のマクロセルの基地局が、本願発明の「長距離無線アクセス・テクノロジー(RAT)基地局」に相当し、引用発明のマイクロセルの基地局が、本願発明の「短距離RATアクセス・ポイント」に相当する。 引用発明では、マクロセルで通話中の時には、移動局からの電界の強さが急激に落ち込む回数をカウントしており、この移動局からの電界の強さが急激に落ち込む回数をカウントすることにより、移動局の移動速度が知れるから、本願発明と引用発明とは、「前記移動局が長距離無線アクセス・テクノロジー(RAT)基地局により前記ネットワークに接続されている」こと、及び「前記移動局の移動速度を決定する」点で一致している。 引用発明では、マクロセルにおいてはこの補正された変化量が極めて小さく(前述の規定値より余裕をもった低い値より小さい)かつ長時間保たれている場合は移動局が止まったかあるいは歩行していると判断してマイクロセルへハンドオーバさせるから、本願発明と引用発明とは、「前記移動速度が閾値より低い場合にのみ、前記短距離RATアクセス・ポイントによる前記ネットワークへの接続に切り替えるように前記移動局に指示する」点で一致している。 引用発明では、マクロセルとマイクロセルが重なる領域にいる移動局の内、移動速度が遅い移動局はマイクロセルへハンドオーバさせるから、マクロセルにおけるトラヒックの輻輳が緩和されるという効果があることは自明である。したがって、本願発明と引用発明とは、「長距離無線アクセス・テクノロジーのトラヒック輻輳を緩和する」点で一致している。 したがって、本願発明と引用発明の一致点・相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「下記を備える、長距離無線アクセス・テクノロジーのトラヒック輻輳を緩和することによってネットワークへのマルチ・モードの移動局のアクセスを提供する方法、 前記移動局が長距離無線アクセス・テクノロジー(RAT)基地局により前記ネットワークに接続されていること、 前記移動局の移動速度を決定すること、 前記移動速度が閾値より低い場合にのみ、短距離RATアクセス・ポイントによる前記ネットワークへの接続に切り替えるように前記移動局に指示すること。」である点。 [相違点1] 本願発明では、前記移動局が長距離無線アクセス・テクノロジー(RAT)基地局により前記ネットワークに接続されている間に前記移動局の位置を決定しているのに対して、引用発明では、移動局がマクロセルの基地局に接続されている間に前記移動局の位置を決定しているのか否か不明な点。 [相違点2] 本願発明では、前記ネットワークに前記移動局を接続するために利用可能な短距離RATアクセス・ポイントを、前記位置及び他のファクタに基づいて、識別するのに対して、引用発明では、移動局の移動速度が遅い場合にハンドオーバー先となるマイクロセルの基地局をどのようにして識別するのか不明な点。 第5.相違点についての検討 [相違点1及び相違点2について] 当審拒絶理由に引用された刊行物2(特開2000-197090号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (c)段落番号【0028】 「【0028】時刻t_(0)において、移動局401は基地局402と通信中であり(S605)、移動局401は常に自局の位置をGPS信号を用いて検出している。そして、移動局401が基地局402と通信中に、サービスエリア内を図4に示す矢印のように移動したとき、図5に示すように、時刻t_(1)において移動局401は、基地局403からのパイロット強度502が閾値(T_ADD)を超えたことを検出し、基地局403のパイロットをハンドオフ候補として挙げ(Candidate Set)、図6に示すように、パイロット強度および基地局の識別情報を含むパイロットオフセット情報と移動局401のGPS絶対位置情報および移動方角情報とを含めたハンドオフ要求メッセージ(Pilot Strength Measurement Message:P.S,M,M)を基地局402経由で基地局制御装置405に送信する(S606)。」 刊行物2の段落番号【0028】では、移動局401が、基地局402と通信中に常に自局の位置をGPS信号を用いて検出しており、基地局403からのパイロット強度502が閾値(T_ADD)を超えた時に、基地局403のパイロットをハンドオフ候補として挙げ(Candidate Set)、パイロット強度および基地局の識別情報を含むパイロットオフセット情報と移動局401のGPS絶対位置情報および移動方角情報とを含めたハンドオフ要求メッセージ(Pilot Strength Measurement Message:P.S,M,M)を基地局402経由で基地局制御装置405に送信するハンドオフ手順が開示されている。 したがって、基地局制御装置405は、パイロット強度および基地局の識別情報を含むパイロットオフセット情報と移動局401のGPS絶対位置情報および移動方角情報に基づいて、ハンドオフ先の基地局を決定することになる。 刊行物2は、引用発明と同じくハンドオフ手順の技術であり、且つ引用発明には、マクロセルで通話中に、ハンドオフ先のマイクロセルの基地局を決める手順が開示されていないから、引用発明において、ハンドオフ先のマイクロセルの基地局を決定するために、刊行物2記載の技術を適用し、移動局がマクロセルの基地局によりネットワークに接続されている間に、移動局の位置を決定することにより相違点1に係る構成とすることは、容易に想到できたことである。 また、引用発明において、ハンドオフ先のマイクロセルの基地局を決定するために、刊行物2記載の技術を適用し、ネットワークに移動局を接続するために利用可能なマイクロセルの基地局を、移動局のGPS絶対位置情報及びパイロット強度等の他のファクタに基づいて識別することにより、相違点2に係る構成とすることは、容易に想到できたことである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び刊行物2に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-12-04 |
結審通知日 | 2014-12-09 |
審決日 | 2014-12-24 |
出願番号 | 特願2011-534537(P2011-534537) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04W)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼須 甲斐 |
特許庁審判長 |
加藤 恵一 |
特許庁審判官 |
江口 能弘 佐藤 聡史 |
発明の名称 | マルチ・モード・デバイスの選択的データ通信のためのシステム及び方法 |
代理人 | 白根 俊郎 |
代理人 | 佐藤 立志 |
代理人 | 井関 守三 |
代理人 | 河野 直樹 |
代理人 | 砂川 克 |
代理人 | 岡田 貴志 |
代理人 | 野河 信久 |
代理人 | 幸長 保次郎 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 堀内 美保子 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 赤穂 隆雄 |
代理人 | 井上 正 |
代理人 | 竹内 将訓 |