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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A24D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A24D
管理番号 1301020
審判番号 不服2013-13238  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-10 
確定日 2015-05-13 
事件の表示 特願2009-538558号「風味が付与された粒子を有する紙巻きタバコ用フィルター」拒絶査定不服審判事件〔2008年 6月 5日国際公開、WO2008/064463、平成22年 4月 8日国内公表、特表2010-510780号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2007年11月16日 (パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年11月29日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年3月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年7月10日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がなされ、当審で、平成26年5月22日付けの拒絶理由の通知がなされ、これに対し平成26年9月4日付けで意見書及び手続補正書の提出がなされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年9月4日の手続補正により補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「フィルター材と、
前記フィルター材内に分散された煙風味向上植物風味粒子とを含む煙風味向上フィルターであって、前記植物風味粒子が、前記フィルター材への埋め込みに適した10?80メッシュの大きさに刻まれた、ハッカ、バニラ、ペパーミント、アニス、バジル、ベイリーフ、カルダモン、シナモン、コリアンダー、クミン、生姜、ナツメグ、オレガノ、パプリカ、ローズマリー、サフラン、セージ、タイム、ラベンダー、甘草、茶、ジャスミン、ユーカリ、丁子、ウィンター・グリーン、シソ、ウコン、ターメリック、白檀材、シラントロ、バラ、ベルガモット及びオレンジブロッサムから選択され、フィルターを介して吸引される煙に風味を加えるフィルター。」

3.引用発明
これに対して、当審で通知した拒絶理由に引用された本願優先日前に頒布された刊行物である実願平1-36778号(実開平2-127194号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付したものである。)。

(1a)「ラベンダー、ローズマリー、セージ、タイム、レモングラスおよびジャスミンからなる群より選ばれた少なくとも1種のハーブの乾燥物または上記ハーブの抽出成分を含むことを特徴とするタバコフィルター。」(実用新案登録請求の範囲)

(1b)「この考案のタバコフィルターにおいては、前記特定ハーブが精神を安定させる作用と、タバコの匂いを中和する作用とを有しており、しかも、微香性で、タバコの喫味に悪影響を与えることがない。」(明細書第3ページ第16?20行)

(1c)「この考案のタバコフィルターは、上記特定ハーブの乾燥物、または特定ハーブの抽出成分を、タバコフィルター中に含有させることで構成される。
特定ハーブが乾燥物である場合には、この乾燥物の粉末または粉砕品(1)…を、第1図(a)に示すように、通気性を有するフィルター体(21)中に分散させたり、或いは、第1図(b)に示すように、上記粉砕品(1)…を、前後のフィルター部材(22)(22)の間に充填したりすることにより、タバコフィルター(2)が構成される。」(明細書第4ページ第4?13行)

(1d)「上記フィルター体(21)、並びにフィルター部材(22)としては、アセテート繊維、ガラス繊維、紙、パルプシート、合成樹脂製連続気泡体等の素材を、紙巻きタバコの形状に合わせて円筒形に成形したものや、この円筒形のフィルター中に、活性炭、ゼオライト等のニコチン、タール吸収物質を分散させたもの等、従来公知の構造のものが採用できる。」(明細書第4ページ第20行?第5ページ第7行)

(1e)「この考案に使用される特定ハーブとしては、ラベンダー、ローズマリー、セージ、タイム、レモングラスおよびジャスミンが挙げられ、それぞれ単独で、或いは2種以上混合して使用される。
上記特定ハーブは、乾燥物、または抽出成分の形で、フィルター中に含有される。
ラベンダーは花、茎、葉に香りがあるが、特に花の香りが良いので、乾燥物は、開花前の紫色に色づいたつぼみの状態で収穫した花を乾燥させることで製造される。」(明細書第6ページ第1?10行)

(1f)「ローズマリーは葉に香りがあり、乾燥物は、この葉を枝ごと収穫したものを乾燥させて製造される。」(明細書第6ページ第14?16行)

(1g)「セージは葉に香りがあり、この葉を乾燥させて乾燥物が製造される。」(明細書第6ページ第20行?第7ページ第1行)

(1h)「ジャスミンは主に花が利用され、乾燥物は、この花を乾燥させることで製造される。」(明細書第7ページ第12?13行)

(1i)「多数のアセテート単繊維中に、ラベンダーのつぼみの乾燥物を粉砕した粉砕品(1)…を分散させて一つに束ねた後、束ねられたアセテート単繊維を加圧しつつ、周囲の単繊維を加熱溶融させて、直径7mmの円筒状に成形した。そして、上記円筒状に成形されたアセテート単繊維の束を長さ20mmに切断して、第1図(a)に示すように、フィルター体(21)中に上記ラベンダーの乾燥物の粉砕品(1)…が分散されたタバコフィルター(2)を作製した。なお、このタバコフィルター1g中の、ラベンダーの乾燥物の含有量は40mgであった。次に、このタバコフィルター(2)を、600mgのタバコ葉(3)…と共に、タバコ用紙(4)としてのライスペーパーに巻き込んで、同図に示すフィルター付き紙巻きタバコ(A)を作製した。」(明細書第8ページ第1?15行)

(1j)「(具体例4)
多数のアセテート単繊維を束ね、加圧しつつ周囲の単繊維を加熱溶融させて、直径7mmの円筒状に成形した後、長さ7mmに切断して、第1図(b)に示すフィルター部材(22)を作製した。次に、2個のフィルター部材(22)(22)間に、ジャスミンの花の乾燥物を粉砕した粉砕品(1)…を50mg挟み、600mgのタバコ葉と共にライスペーパーに巻き込んで、フィルター付き紙巻きタバコを作製した。」(明細書第9ページ第19行?第10ページ第7行)

(1k)「<考案の効果>
この考案のタバコフィルターは、上記のように構成されており、フィルター中に含まれる特定ハーブが、精神を安定させる作用と、タバコの匂いを中和する作用とを有しているので、このタバコフィルターが設けられたタバコは、従来のものよりも精神安定作用が強く、タバコの喫煙量を減少させることができて、頭痛や嘔吐感を防止することができる上、パイプを使用せずに、喫煙後の口臭を低減することができる。しかも、上記ハーブ自身は微香性であり、タバコの喫味に悪影響を与える虞がない。」(明細書第12ページ下から第2行?第13ページ第10行)

上記記載事項(1a)?(1k)及び図面を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「アセテート単繊維内に分散されたラベンダーの乾燥物を含有したフィルター体であって、
該ラベンダーの乾燥物は、ラベンダーのつぼみの乾燥物の粉砕品であり、フィルター体に分散されたラベンダーが、精神の安定させる作用と、タバコの匂いを中和する作用とを有し、ラベンダー自身は微香性であり、タバコの喫味に悪影響を与える虞がない、フィルター体。」

4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、後者の「アセテート単繊維」、「フィルター体」並びに「ラベンダーの乾燥物」又は「ラベンダーのつぼみの乾燥物の粉砕品」は、それぞれ前者の「フィルター材」、「フィルター」及び「植物風味粒子」に相当する。 後者は、ラベンダーをフィルター体に分散させるものであるから、後者の「該ラベンダーの乾燥物は、ラベンダーのつぼみの乾燥物の粉砕品であ」ることと、前者の「前記フィルター材への埋め込みに適した10?80メッシュの大きさに刻まれた」ものであることとは、「フィルター材への埋め込みに適した大きさに刻まれたものである」限りにおいて、共通する。
後者のフィルター体に分散するものを「ラベンダー」としていることは、前者のフィルター材内に分散するものを「ハッカ、バニラ、ペパーミント、アニス、バジル、ベイリーフ、カルダモン、シナモン、コリアンダー、クミン、生姜、ナツメグ、オレガノ、パプリカ、ローズマリー、サフラン、セージ、タイム、ラベンダー、甘草、茶、ジャスミン、ユーカリ、丁子、ウィンター・グリーン、シソ、ウコン、ターメリック、白檀材、シラントロ、バラ、ベルガモット及びオレンジブロッサムから選択」することに相当する。
ハーブが香りを有していることは技術常識であり、後者は、ハーブの乾燥物が喫煙時に煙草の匂いを中和していることから、煙が本来有する匂いに、ハーブの香りを加えて匂いを改変しているといえ、後者の「フィルター中に含まれる特定ハーブが、精神の安定させる作用と、タバコの匂いを中和する作用とを有し、ハーブ自身は微香性であり、タバコの喫味に悪影響を与える虞がない」ことは、前者の「フィルターを介して吸引される煙に風味を加える」ことに相当する。そして、このことから、後者の「ラベンダーのつぼみの乾燥物の粉砕品」は、前者の「煙風味向上植物風味粒子」に相当する。
なお、この点について、請求人は、「引用例1は、喫煙品から吸引される煙の味については何ら開示していません。事実、引用例1は、その〈作用〉の項で、『特定ハーブが微香性で、タバコの喫味に悪影響を与えることがない。』と記載しています。
また引用例1の3ページの最初の段落には『パイプを使用することなく、また、特有の喫味を生じることなく、喫煙後の口臭を低減することができ、・・・新規なフィルター付き紙巻きタバコ用フィルターを提供することを目的としている。』と記載されています。
今回の拒絶理由通知では引用例1に開示されているハーブは、各種の風味を提供し、煙に清涼味を与えることは周知であると認定されています。しかしながら、この認定はハーブが煙に特徴的風味を与えないという引用例1に明確に教示されていることと相反します。
従って、引用例1に開示されている植物粒子は、今回の手続補正書によって補正された請求項に記載されているようにフィルターを介して吸引される煙に風味を加えないことは明らかです。」(平成26年9月4日付け意見書第4ページ第7?19行)と主張している。
しかしながら、上述のとおり、ハーブが香りを有していることが技術常識であり、ハーブの乾燥物が喫煙時に煙草の匂いを中和していることから、煙が本来有する匂いに、ハーブの香りを加えることにより匂いを改変しているのであるから、ハーブが例え微香性で、タバコの喫味に悪影響を与えることがないとしても、フィルター体を介して吸引される煙に風味を加えていることは明らかであり、請求人の上記主張は採用できない。

そうすると、両者は、次の点で一致する。

(一致点)
「フィルター材と、
前記フィルター材内に分散された煙風味向上植物風味粒子とを含む煙風味向上フィルターであって、前記植物風味粒子が、前記フィルター材への埋め込みに適した大きさに刻まれた、ハッカ、バニラ、ペパーミント、アニス、バジル、ベイリーフ、カルダモン、シナモン、コリアンダー、クミン、生姜、ナツメグ、オレガノ、パプリカ、ローズマリー、サフラン、セージ、タイム、ラベンダー、甘草、茶、ジャスミン、ユーカリ、丁子、ウィンター・グリーン、シソ、ウコン、ターメリック、白檀材、シラントロ、バラ、ベルガモット及びオレンジブロッサムから選択され、フィルターを介して吸引される煙に風味を加えるフィルター。」

そして、両者は次の点で相違する。

(相違点)
フィルター材への埋め込みに適した煙風味向上植物風味粒子の大きさにについて、本願発明は、 10?80メッシュであるのに対して、引用発明では、そのような特定はなされていない点。

そこで、上記相違点について検討する。

(相違点の判断)
本願発明の10?80メッシュについて、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明において、特段定義はなされていない。
そこで、メッシュの一般的意味として、「篩ふるいの目、また粉類の粒子の大きさを示す単位。篩1インチ当りの網の目の数で表す。」(広辞苑第六版)を参考とすると、篩のワイヤーの直径を無視して計算すると、目開きの大きさは、大きくても0.3175mm?2.54mm程度であり、またASTMによると、0.177mm?2mm、Tyler(タイラ-)によると、0.175mm?1.981mmを意味している。
そして、引用発明においても、アセテート単繊維内に、ラベンダーの乾燥物を分散させてフィルター体を製造するのであるから、乾燥物の粉砕品の大きさをある程度細かくしなければならいことは技術常識であって、通常のフィルター付紙巻きタバコの大きさを考慮すると、特定ハーブの乾燥物を1mm程度の大きさ、すなわち、10?80メッシュ程度とすることは、当業者が適宜なし得た事項である。
また、当該大きさに限定することにより格別の効果を奏しているともいえない。
以上のとおりであるから、引用発明において、本願発明の相違点に係る特定事項を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

5.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-05 
結審通知日 2014-12-09 
審決日 2014-12-24 
出願番号 特願2009-538558(P2009-538558)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (A24D)
P 1 8・ 121- WZ (A24D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 崇昭  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 千壽 哲郎
山崎 勝司
発明の名称 風味が付与された粒子を有する紙巻きタバコ用フィルター  
代理人 轟木 哲  
代理人 森田 順之  

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