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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W |
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管理番号 | 1301052 |
審判番号 | 不服2013-13992 |
総通号数 | 187 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-07-19 |
確定日 | 2015-05-21 |
事件の表示 | 特願2008-554528「リバースジオコーディング」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月23日国際公開、WO2007/095472、平成21年 7月16日国内公表、特表2009-526502〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成19年(2007年)2月9日(優先権主張 2006年2月10日 米国、2006年3月3日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年1月30日付けの拒絶理由の通知に対し、同年6月7日付けで手続補正され、同年10月3日付けの最後の拒絶理由の通知に対し、平成25年2月14日付けで手続補正されたが、同年3月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月19日に審判請求がなされ、当審による平成26年7月4日付けの最後の拒絶理由の通知に対し、同年11月6日付けで手続補正されたものである。 第2.平成26年11月6日付け手続補正について 平成26年11月6日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成25年2月14日付け手続補正書に記載された特許請求の範囲(以下、「補正前の特許請求の範囲」という。)を、平成26年11月6日付け手続補正書に記載された特許請求の範囲(以下、「補正後の特許請求の範囲」という。)とする補正を含むものであって、以下のとおりのものである(下線は、請求人が付与した。)。 <補正前の特許請求の範囲> 「 【請求項1】 物理的クライエント装置上にロケーションデータを表示する方法において、 ロケーションデータ供給源から前記物理的クライエント装置の現在のロケーションデータを取得し、前記現在のロケーションデータは前記取得した現在のロケーションデータの正確度の程度を特定する正確度データを包含しており、 前記物理的クライエント装置が位置されていると推測される地理的区域を表す形状アイコンを取得し、 前記取得した現在のロケーションデータの正確度の前記程度に従って前記形状アイコンの寸法を修正し、 前記寸法を修正した形状アイコンを前記物理的クライエント装置のディスプレイ上に表示させる、 ことを包含している方法。 【請求項2】 請求項1において、更に、 前記物理的クライエント装置の近似的ロケーションとして前記寸法を修正した形状アイコンの中心を確立する、 ことを包含している方法。 【請求項3】 請求項1において、更に、 前記取得した現在のロケーションデータを都市住所、道路交差点、及び興味のある点の内の少なくとも一つと関連付ける、 ことを包含している方法。 【請求項4】 請求項1において、更に、 前記物理的クライエント装置のロケーションの道路セグメントに対する近接度を決定する、 ことを包含している方法。 【請求項5】 請求項1において、前記現在のロケーションデータが、 地理的基準点と前記取得した現在のロケーションデータによって表される前記物理的クライエント装置のロケーションとの間の距離、 を有している方法。 【請求項6】 請求項1において、更に、 前記取得した現在のロケーションデータを興味のある点と関連付けること、 を包含しており、前記興味のある点が、ランドマーク、ショッピングセンター、事業所、公園、スポーツ施設、自然環境保全地域、リクレーショナル地域、及び地理的地域の内の少なくとも一つである方法。 【請求項7】 ロケーションデータを表示する物理的クライエント装置において、 現在のロケーションデータの供給源から前記物理的クライエント装置の現在のロケーションデータを取得するクライエント装置モジュールであって、前記現在のロケーションデータが前記取得した現在のロケーションデータの正確度の程度を特定する正確度データを包含しているクライエント装置モジュール、 前記物理的クライエント装置が位置されていると推測される地理的区域を表す形状アイコンを取得する形状アイコン決定モジュール、 前記取得した現在のロケーションデータの正確度の前記程度に従って前記形状アイコンの寸法を修正するアイコン修正モジュール、 前記寸法を修正した形状アイコンを視覚的に表示する物理的ディスプレイ、 を有している物理的クライエント装置。 【請求項8】 請求項7において、前記クライエント装置モジュールが、更に、前記物理的クライエント 装置の近似的ロケーションとして前記寸法を修正した形状アイコンの中心を確立する物理的クライエント装置。 【請求項9】 請求項7において、前記クライエント装置モジュールが、前記現在のロケーションデータを、都市住所、道路交差点、及び興味のある点の内の少なくとも一つと関連付ける物理的クライエント装置。 【請求項10】 請求項7において、前記クライエント装置モジュールが前記物理的クライエント装置のロケーションの道路セグメントに対する近接度を決定する物理的クライエント装置。 【請求項11】 請求項7において、前記現在のロケーションデータが、地理的基準点と前記取得した現在のロケーションデータによって表される前記物理的クライエント装置のロケーションとの間の距離、を有している物理的クライエント装置。 【請求項12】 請求項7において、更に、前記取得した現在のロケーションデータを興味のある点と関連付けることを包含しており、前記興味のある点が、ランドマーク、ショッピングセンター、事業所、公園、スポーツ施設、自然環境保全地域、リクレーショナル地域、及び地理的地域の内の少なくとも一つである物理的クライエント装置。」 <補正後の特許請求の範囲> 「 【請求項1】 物理的クライエント装置上にロケーション結果を表示する方法において、前記物理的クライエント装置が、 ロケーション供給源から前記物理的クライエント装置の現在のロケーション情報であって、前記現在のロケーション情報の正確度を包含している前記現在のロケーション情報、を取得し、 前記物理的クライエント装置が位置されていると推測される地理的区域を取り囲む特定の形状を決定し、 前記現在のロケーション情報の正確度に従って前記形状の寸法を決定し、 前記寸法を決定した形状を前記物理的クライエント装置のディスプレイ上に前記ロケーション結果として表示させる、 ことを包含している方法。 【請求項2】 請求項1において、更に、前記物理的クライエント装置が、 前記物理的クライエント装置のロケーションとして前記寸法を決定した形状の中心を確立する、 ことを包含している方法。 【請求項3】 請求項1において、更に、前記物理的クライエント装置が、 前記現在のロケーション情報の前記正確度に基づいて決定される地理的基準点を都市住所、道路交差点、及び興味のある点の内の少なくとも一つと関連付ける、 ことを包含している方法。 【請求項4】 請求項1において、更に、前記物理的クライエント装置が、 前記物理的クライエント装置のロケーションの道路セグメントに対する近接度を決定する、 ことを包含している方法。 【請求項5】 請求項1において、前記ロケーション結果が、 地理的基準点と前記現在のロケーション情報によって表される前記物理的クライエント装置のロケーションとの間の距離の表示、 を有している方法。 【請求項6】 請求項3において、前記興味のある点が、ランドマーク、ショッピングセンター、事業所、公園、スポーツ施設、自然環境保全地域、リクレーショナル地域、及び地理的区域の内の少なくとも一つである方法。 【請求項7】 ロケーション結果を表示する物理的クライエント装置において、 ロケーション供給源から前記物理的クライエント装置の現在のロケーション情報を取得するクライエント装置モジュールであって、前記現在のロケーション情報が前記現在のロケーション情報の正確度を包含しているクライエント装置モジュール、 前記物理的クライエント装置が位置されていると推測される地理的区域を取り囲む特定の形状を決定する形状決定モジュール、 前記現在のロケーション情報の正確度に従って前記形状の寸法を決定する寸法決定モジュール、 前記寸法を決定した形状を前記ロケーション結果として視覚的に表示する物理的ディスプレイ、 を有している物理的クライエント装置。 【請求項8】 請求項7において、前記クライエント装置モジュールが、更に、前記物理的クライエント 装置のロケーションとして前記寸法を決定した形状の中心を確立する物理的クライエント装置。 【請求項9】 請求項7において、前記クライエント装置モジュールが、前記現在のロケーション情報の前記正確度に基づいて決定される地理的基準点を、都市住所、道路交差点、及び興味のある点の内の少なくとも一つと関連付ける物理的クライエント装置。 【請求項10】 請求項7において、前記クライエント装置モジュールが前記物理的クライエント装置のロケーションの道路セグメントに対する近接度を決定する物理的クライエント装置。 【請求項11】 請求項7において、前記ロケーション結果が、地理的基準点と前記現在のロケーション情報によって表される前記物理的クライエント装置のロケーションとの間の距離の表示、を有している物理的クライエント装置。 【請求項12】 請求項9において、前記興味のある点が、ランドマーク、ショッピングセンター、事業所、公園、スポーツ施設、自然環境保全地域、リクレーショナル地域、及び地理的区域の内の少なくとも一つである物理的クライエント装置。」 そして、本件補正は、当審により通知した平成26年7月4日付けの最後の拒絶理由に対して行われた補正であるとともに、該拒絶理由で指摘した明りょうでない記載を釈明することを目的としたものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第4号の規定を満たしている。 第3.本願発明 本願の請求項1?12に係る発明は、平成26年11月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されたものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである(下線は、請求人が付与した。)。 「【請求項1】 物理的クライエント装置上にロケーション結果を表示する方法において、前記物理的クライエント装置が、 ロケーション供給源から前記物理的クライエント装置の現在のロケーション情報であって、前記現在のロケーション情報の正確度を包含している前記現在のロケーション情報、を取得し、 前記物理的クライエント装置が位置されていると推測される地理的区域を取り囲む特定の形状を決定し、 前記現在のロケーション情報の正確度に従って前記形状の寸法を決定し、 前記寸法を決定した形状を前記物理的クライエント装置のディスプレイ上に前記ロケーション結果として表示させる、 ことを包含している方法。」 第4.平成24年10月3日付け拒絶理由通知の概要 「 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項 1-12 ・刊行物等 1.特開2004-361186号公報 2.特開平6-309594号公報 3.特開2005-181125号公報 4.特開平6-222125号公報 備 考 【請求項1、2、7、8】:引用例1、2 引用例1には、ナビゲーション装置(本願の物理的クライエント装置に相当)が、GPSレシーバ(本願のロケーションデータ供給源に相当)から受信した測位データ(本願の現在のロケーションデータに相当)に応じて地図上に現在位置を指し示す際に、現在位置を指し示すアイコン及び当該アイコンを中心とする円(本願の形状アイコンに相当)を表示すること、並びに前記測位データの精度(本願の正確度データに相当)に応じて、前記円の大きさを変化させること(本願において、形状アイコンの寸法を修正することに相当)が記載されている(段落0040-0043、図4参照)。 引用例1には、ナビゲーション装置が、測位データの精度をどのように認識(取得)するのかについては明記されていないが、引用例2には、GPS受信機が、測位データとともにGDOP値(本願の正確度データに相当)をナビゲーション装置に出力することが記載されている(段落0012-0013参照)。 したがって、引用例1において、引用例2のGPS受信機が測位データとともにGDOP値(本願の正確度データに相当)をナビゲーション装置に出力する構成を適用し、本願の上記請求項に係る発明を構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。」 第5.刊行物 (1)引用文献1 原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-361186号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の点が記載されている(なお、下線は当審が付した。)。 (ア)「【0032】 (2-2)間欠的通信制御処理手順 図3に示すようにGPSレシーバ1の制御部10は、ルーチンRT2の開始ステップから入ってステップSP11へ移る。ステップSP11において制御部10は、GPSアンテナ6及びGPS受信部9で衛星波S1?S4を受信し、ベースバンド処理部8で測位演算して求めた測位データD5を受け取ると、次のステップSP12へ移る。 【0033】 ステップSP12において制御部10は、GPS受信部9のベースバンド処理部8で現在位置の測位計算が出来たか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことはGPS受信部9のベースバンド処理部8から測位データD5の供給を受けておらず、現在位置の測位計算が出来ていないことを表しており、このとき制御部10はベースバンド処理部8から測位データD5の供給を受けるまで待ち受ける。 【0034】 これに対してステップSP12で肯定結果が得られると、このことはGPS受信部9のベースバンド処理部8から測位データD5の供給を受けたので現在位置の測位計算が出来たことを表しており、このとき制御部10は次のステップSP13へ移る。 【0035】 ステップSP13において制御部10は、ベースバンド処理部8から供給を受けた測位データD5がDOP(Dilution Of Precision)値「6」以下であるか否かを判定する。 【0036】 ここで、DOP値とは、GPS測位演算の「精度の劣化」の指標となる数値であり、GPS衛星2?5の配置によって大きく左右されるものである。具体的には、GPS測位演算は少なくとも3個以上のGPS衛星を使って行っているが(この実施の形態では、4個のGPS衛星2?5を使用している場合を一例として説明している)、その測位演算に使用している3個以上のGPS衛星2?5の衛星配置状態によりDOP値が決定される。 【0037】 例えば、観測地点を中心とした単位球を考え、その球面上に現実のGPS衛星が見える方向に合わせて当該GPS衛星を置きなおし、4個のGPS衛星を互いに結んでできる四面体を考える。この四面体の体積が大きければ大きい程、DOP値は小さくなってその時のGPS測位精度が良いことを表し、逆に立体の体積が小さい程、DOP値は大きくなってその時のGPS測位精度が悪いことを表している。 【0038】 すなわち立体の体積が大きいということは、測位演算に使用しているGPS衛星2?5が上空でばらついている状態にあるということになり、そういったGPS衛星2?5の配置の時にDOP値が小さくなって最も精度が良くなる。 【0039】 逆に、立体の体積が小さいということは、測位演算に使用しているGPS衛星2?5が上空でばらついておらず、いずれかに片寄ってしまっている状態であるため、そういったGPS衛星2?5の配置の時にはDOP値が大きくなって精度が悪くなる。 【0040】 実際上、図4に示すようにナビゲーション装置では、GPSレシーバ1から受信した測位データD5に応じて地図上に現在位置を指し示す場合、時間の経過に伴って変化する現在位置を所定形状のアイコンP及び円CIR1又はCIR2で表示するようになされている。 【0041】 ここでアイコンPを中心とする円CIR1又はCIR2は、当該アイコンPが現在位置の確からしさを示す指標であり、直径の大きな円CIR1ほど精度が低く、直径の小さな円CIR2ほど精度が高いことを表している。 【0042】 すなわちDOP値が「6」以下であるときには、ナビゲーション装置では小さな円CIR2の中心に現在位置を指し示すアイコンPを表示することになり、DOP値が「6」を超えるときには大きな円CIR1の中心に現在位置を指し示すアイコンPを表示することになる。 【0043】 従ってナビゲーション装置は、当該測位データD5のDOP値が変化することに応じてアイコンPを大きな円CIR1で表示したり、アイコンPを小さな円CIR2で表示する。 」 (イ)「【0053】 従ってナビゲーション装置は、ユーザに対して、ナビゲーション装置の表示部に表示された円CIR1又はCIR2の大きさを通じて視覚的に測位精度の確からしさを認識させることができると共に、アイコンPが更新される時間間隔を通じて、現在表示されているアイコンPが指し示す現在位置の確からしさを直感的にも認識させることができる。 」 上記摘示事項(ア)の段落【0043】には、「ナビゲーション装置は、当該測位データD5のDOP値が変化することに応じてアイコンPを大きな円CIR1で表示したり、アイコンPを小さな円CIR2で表示する」ことが記載されており、引用文献1には、方法の発明が記載されていい得ることから、上記(ア)、(イ)の記載を総合すれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。 「 GPSレシーバは、測位データD5のGPS測位演算の「精度の劣化」の指標となる数値であるDOP値が「6」以下であるか否かを判定し、 ナビゲーション装置は、GPSレシーバから受信した測位データD5に応じて地図上に現在位置を指し示す場合、DOP値が「6」以下であるときには、ナビゲーション装置では小さな円CIR2の中心に現在位置を指し示すアイコンPを表示することになり、DOP値が「6」を超えるときには大きな円CIR1の中心に現在位置を指し示すアイコンPを表示し、 ユーザに対して、ナビゲーション装置の表示部に表示された円CIR1又はCIR2の大きさを通じて視覚的に測位精度の確からしさを認識させることができる 方法。」 (2)引用文献2 原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平6-309594号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の点が記載されている(なお、下線は当審が付した。)。 (ウ)「【0012】図1に示すナビゲーション装置11は、従来のナビゲーション装置1と同様、CPU12を中心にGPS受信機13やキー入力装置14或いはメモリ15やディスプレイ16といった周辺機器が接続してあり、CD-ROM等の地図情報記憶媒体17から読み出した現在地付近の地図をディスプレイ16に画面表示し、現在地の外に予定経路などが随意表示できるよう構成されている。また、CPU12は、GPS受信機13により測位された現在地を、画面上に読み出した地図上に重ねて表示する表示機能や、任意に選択表示した地図上に出発地と目的地を結ぶ予定経路に沿う通過点を設定する通過点設定機能等を有する。 【0013】GPS受信機13は、測位データとともにGDOP値(Geometrical Dilutionof Precision)すなわち幾何学的精度低下率と呼ばれる測位精度を示す値を定期的に出力する。この測位精度は、観測地点を中心とした単位球を想像し、その球面上に現実の衛星の見える方向に合わせて衛星をおき直し、4個の衛星を互いに結んで得られる4面体を考えたときに、この4面体の体積が増えるほど向上する。従って、測位に使用する衛星がどの方向に見えるかによって異なるのが普通であり、2個(又は1個)の衛星が比較的高高度にあり、残りの2個(又は3個)の衛星が低高度に位置するようなときは、4面体の体積が大きいだけに理想的な測位精度が達成される。一般に、GDOPが10以上の値をとるときの測位精度は非常に劣悪であり、現実には測位不能に近い状態であるため、ここでは例えばGDOP1?3を高精度、GDOP4?7を中精度、GDOP8以上を低精度と分類し、高中低の3段階の測位精度に応じて中心点マーク18の色をそれぞれ赤色、桃色、灰色の3色に塗り分ける方法を採用している。」 ここで、上記摘示事項(ウ)の段落【0013】の「GDOP1?3を高精度、GDOP4?7を中精度、GDOP8以上を低精度と分類し、高中低の3段階の測位精度に応じて中心点マーク18の色をそれぞれ赤色、桃色、灰色の3色に塗り分ける」ことは、GDOPにより分類された測位精度に応じて表示することであるといい得ることから、上記(ウ)の記載を総合すれば、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用事項2」という。)が記載されているといえる。 「 GPS受信機13は、ナビゲーション装置11に対して、測位データとともにGDOP値(Geometrical Dilutionof Precision)すなわち幾何学的精度低下率と呼ばれる測位精度を示す値を出力し、 GPS受信機13により測位された現在地を、GDOPにより分類された測位精度に応じて、画面上に読み出した地図上に重ねて表示すること」 第6.対比 本願発明と引用発明1とを対比すると、以下の事項がいえる。 引用発明1では、「ナビゲーション装置は、GPSレシーバから受信した測位データD5に応じて地図上に現在位置を指し示す場合、DOP値が「6」以下であるときには、ナビゲーション装置では小さな円CIR2の中心に現在位置を指し示すアイコンPを表示することになり、DOP値が「6」を超えるときには大きな円CIR1の中心に現在位置を指し示すアイコンPを表示し」ている。 ここで、引用発明1の「ナビゲーション装置」は「物理的クライエント装置」といい得るとともに、引用発明1の「現在位置」は「ロケーション結果」といい得る。 してみると、引用発明1は、本願発明と同様に、「物理的クライエント装置上にロケーション結果を表示する方法」であるといえる。 引用発明1では、「ナビゲーション装置は、GPSレシーバから受信した測位データD5に応じて地図上に現在位置を指し示」している。 ここで、引用発明1の「GPSレシーバ」は「ロケーション供給源」といい得るとともに、「測位データD5」は「現在のロケーション情報」といい得る。 してみると、引用発明1は、本願発明と同様に、「ロケーション供給源から前記物理的クライエント装置の現在のロケーション情報であって、前記現在のロケーション情報、を取得し」ているといえる。 引用発明1では、「ナビゲーション装置は、GPSレシーバから受信した測位データD5に応じて地図上に現在位置を指し示す場合、DOP値が「6」以下であるときには、ナビゲーション装置では小さな円CIR2の中心に現在位置を指し示すアイコンPを表示することになり、DOP値が「6」を超えるときには大きな円CIR1の中心に現在位置を指し示すアイコンPを表示し」ている。 ここで、引用発明1の「現在位置」は、DOP値なる位置の確からしさが示されるような「測位データD5」に基づく位置であるから、引用発明1の「大きな円CIR1」や「小さな円CIR2」は、物理的クライエント装置が位置されていると推測される地理的区域を取り囲む特定の形状であるといい得るとともに、「大きな円CIR1」と「小さな円CIR2」との相違は、決定される寸法の相違であるといい得る。 さらに、GPS測位演算の精度にGPS測位演算の結果である測位データの正確度は依存することに鑑みると、引用発明における、測位データD5のGPS測位演算の精度であるDOP値は測位データD5の正確度に従っているといい得る。 してみると、引用発明1は、本願発明と同様に、「現在のロケーション情報の正確度に従って前記形状の寸法を決定し」ているといえる。 また、本願発明と引用発明1とは、「特定の形状が、前記物理的クライエント装置が位置していると推測される物理的区域を取り囲む」点で一致している。 引用発明1では、「ナビゲーション装置は、GPSレシーバから受信した測位データD5に応じて地図上に現在位置を指し示す場合、DOP値が「6」以下であるときには、ナビゲーション装置では小さな円CIR2の中心に現在位置を指し示すアイコンPを表示することになり、DOP値が「6」を超えるときには大きな円CIR1の中心に現在位置を指し示すアイコンPを表示し」ている。 してみると、引用発明1は、本願発明と同様に、「前記寸法を決定した形状を前記物理的クライエント装置のディスプレイ上に前記ロケーション結果として表示させる」ものであるといえる。 したがって、本願発明と引用発明1を対比すると、次の点で一致し、相違する。 <一致点> 物理的クライエント装置上にロケーション結果を表示する方法において、前記物理的クライエント装置が、 ロケーション供給源から前記物理的クライエント装置の現在のロケーション情報であって、前記現在のロケーション情報、を取得し、 前記物理的クライエント装置が位置されていると推測される地理的区域を取り囲み、 前記現在のロケーション情報の正確度に従って前記形状の寸法を決定し、 前記寸法を決定した形状を前記物理的クライエント装置のディスプレイ上に前記ロケーション結果として表示させる、 ことを包含している方法。 <相違点1> 本願発明は、ロケーション供給源から前記物理的クライエント装置の現在のロケーション情報が現在のロケーション情報の正確度を包含しているのに対して、引用発明1では、ロケーション情報の正確度を包含していることは明記されていない点。 <相違点2> 本願発明は、物理的クライエント装置が位置されていると推測される地理的区域を取り囲む特定の形状を決定しているのに対して、引用発明1が、形状を決定していない点。 第7.判断 (1)相違点1についての判断 引用発明1では、「GPSレシーバは、測位データD5のGPS測位演算の「精度の劣化」の指標となる数値であるDOP値が「6」以下であるか否かを判定し」ているとともに、「ナビゲーション装置は、GPSレシーバから受信した測位データD5に応じて地図上に現在位置を指し示す場合、DOP値が「6」以下であるときには、ナビゲーション装置では小さな円CIR2の中心に現在位置を指し示すアイコンPを表示することになり、DOP値が「6」を超えるときには大きな円CIR1の中心に現在位置を指し示すアイコンPを表示し」ている。 これらの事項からみると、GPSレシーバからナビゲーション装置へ、該DOP値は何らか形で伝送されていると考えるのが妥当である。 そして、引用事項2の「GPS受信機13は、ナビゲーション装置11に対して、測位データとともにGDOP値(Geometrical Dilutionof Precision)すなわち幾何学的精度低下率と呼ばれる測位精度を示す値を出力し、GPS受信機13により測位された現在地を、GDOPにより分類された測位精度に応じて、画面上に読み出した地図上に重ねて表示すること」、すなわち、測位データとともに測位精度を、GPSレシーバからナビゲーション装置に伝送することは、本願の優先日前には公知になっていたといえる。 してみると、引用発明1において、ロケーション供給源から前記物理的クライエント装置の現在のロケーション情報に現在のロケーション情報の正確度を包含させるようにすることは、当業者であれば容易になし得る事項である。 (2)相違点2についての判断 引用発明1では、「CIR1」や「CIR2」は円であるが、その「大きさを通じて視覚的に測位精度の確からしさを認識させることができる」ものであるならば、該形状が円以外の形状であってもよいこと、及び、表示する図形を円以外のものも許容するならば、形状を決定する必要があることは、当業者であれば容易に想到しうる事項である。 そして、円のほかに楕円や多角形、これらの組み合わせの形状を許容することや物理的クライエント装置が形状を決定することによる効果は、本願の発明の詳細な説明に記載されていないとともに、これらによって格別な効果を奏するとも認められない。 してみると、引用発明1において、物理的クライエント装置が位置されていると推測される地理的区域を取り囲む特定の形状を決定するようにすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る事項である。 (3)本願発明の効果についての判断 引用発明は、「ユーザに対して、ナビゲーション装置の表示部に表示された円CIR1又はCIR2の大きさを通じて視覚的に測位精度の確からしさを認識させることができる」作用を有していることに鑑みると、本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用発明1及び引用事項2から当業者が予測し得た程度のものであり、本願発明の進歩性を根拠付けるに足りるものとはいえない。 (4)まとめ よって、本願発明は、引用発明1及び引用事項2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第8.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用事項2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-12-01 |
結審通知日 | 2014-12-09 |
審決日 | 2014-12-25 |
出願番号 | 特願2008-554528(P2008-554528) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04W)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼橋 真之、石田 紀之 |
特許庁審判長 |
近藤 聡 |
特許庁審判官 |
佐藤 聡史 江口 能弘 |
発明の名称 | リバースジオコーディング |
代理人 | 小橋 正明 |