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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E21D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E21D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 E21D
管理番号 1301070
審判番号 不服2014-10242  
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-03 
確定日 2015-05-21 
事件の表示 特願2010-152573号「スチールセグメント、合成セグメント、及びそれらの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月19日出願公開、特開2012- 12895号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年7月5日の出願であって、平成26年1月10日付けで拒絶理由通知がなされ、平成26年3月5日付けで手続補正がなされたが、平成26年3月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成26年6月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、これと同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1?6の記載を含む補正であり、平成26年3月5日付けの手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項3の記載はそれぞれ、以下のとおりである。

(補正前:平成26年3月5日付け手続補正書)
「【請求項3】
主桁、継手板及び縦リブを溶接し、コンクリートを打設して製作する合成セグメントであって、
両側の主桁を、溝形鋼を曲げ加工して形成するとともに、
中間の主桁を、溝形鋼を曲げ加工して形成したことを特徴とする合成セグメント。」

(補正後:平成26年6月3日付け手続補正書)
「【請求項3】
主桁、継手板及び縦リブを溶接し、コンクリートを打設して製作する合成セグメント単体であって、
両側の主桁を、溝形鋼を曲げ加工して形成するとともに、
中間の主桁を、溝形鋼を曲げ加工して形成したことを特徴とする合成セグメント単体。」

2.補正の適否
審判請求時の補正によって、請求項3の記載は、上記1.のように補正された。
そして、補正後の請求項3は、補正前の請求項3に記載された発明特定事項である「合成セグメント」を「合成セグメント単体」と限定したものであり、かつ、補正後の請求項3に記載された発明は、補正前の請求項3に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項3に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、について以下に検討する。

(1)本件補正後の請求項3に係る発明
補正後の請求項3に係る発明は、上記1の補正の概要において補正後の特許請求の範囲の請求項3として示したとおりのものである。

(2)引用刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である「特開2005-351035号公報」(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(記号、下線は当審で付した)。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】(略)
【請求項2】(略)
【請求項3】
主桁、1本又は2本以上の中主桁、継手板、スキンプレート、及び縦リブを有する鋼殻に、鉄筋を縦リブに交差して設置し、中詰めコンクリートを充填してなる合成セグメントにおいて、両サイドの主桁が、セグメント内向きに開口部を有する断面がC型形状又は断面がH型形状の部材であり、且つ中主桁の断面がH型形状の部材であって、更に、隣接する桁の間隔がすべて等間隔であることを特徴とする合成セグメント。
【請求項4】
前記C型形状の部材が溝形鋼であり、前記H型形状の部材が、H形鋼、I形鋼、又は溝形鋼2本のウエブ同士を接触させて固着した部材であることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の合成セグメント。
【請求項5】(略)」

(イ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の合成セグメントは、主桁、継手板、スキンプレート、及び縦リブを有する鋼殻に、鉄筋を縦リブに交差して挿通し、中詰めコンクリートを充填してなる合成セグメントにおいて、拡幅する前の単体時のセグメントでは両サイドの主桁は断面がC型形状の部材(以下、C型形状部材と呼称する)でセグメント内向きに開口部があり、強度上や施工上の理由からセグメント幅を大きくする際には、断面がH型形状の部材(以下、H型形状部材と呼称する)を中主桁として組み込み、隣接する桁間隔(主桁-中桁間、及び中桁-中桁間)を、単体セグメントの主桁間隔を1単位としてそれと同じ間隔とする合成セグメントである。
【0010】
このH型形状部材は、両隣のセグメントの縦リブ、スキンプレート、継手板と溶接して一体化するため、単体のセグメントをボルトや楔で連結して拡幅する方法と比べて、連結による強度低下がなく、また中主桁のある部分は一体化しているため、継手接続のような隙間が全くなく、止水性にも優れる。
【0011】
また、H型形状部材はC型形状部材2つを背中合わせ(開口部と反対側同士)に組み合わせて溶接等で固着した部材とすることもでき、セグメントを複数組み合わせて連結したときでも、強度としては単純に単体時の複数倍として扱え、単体時の性能だけ判っていれば、設計が容易で信頼性も高くなり、トンネル覆工体として全体の継手量が減るため、継手による強度低下が少なく、薄壁となる。溶接の場合には、溶接溶け込み深さや溶接金属の種類などを随時選択して、C型形状部材を2つ固着したときにも、最初からH型形状部材とした場合と同程度の強度となるようにすることが望ましい。外観上も主桁としてC型形状を用いた単体セグメントを連結したケースと、連結部にH型形状部材を用いて予め連結したケースとで全く同じとなる。」

(ウ)「【0013】
C型形状部材としては溝形鋼を用いても、平板を溶接してC型形状としても構わないが、コストや信頼性からは溝型鋼を用いることが好ましい。
H型形状部材としては、H形鋼またはI形鋼を用いても、平板を溶接してHやI型形状としても構わないが、コストや信頼性からは形鋼を用いることが好ましい。また、溝形鋼のフランジ側面を溶接し一体化しても良い。
【0014】
本発明のトンネル構造は、上述した本発明の合成セグメントを組合せたもので、セグメントを取り付けるマシンの能力の範囲内で、拡幅した合成セグメントをトンネル覆工体として組み付けるもので、単体時の合成セグメント、桁間隔を単体時の合成セグメントの主桁間隔と等しくして2倍に拡幅した合成セグメント、更に3倍に拡幅した合成セグメント等、桁間隔の整数倍にセグメント幅の異なる各種合成セグメントを現場のニーズに合せて1種又は2種以上を組合せて組み付けるものである。拡幅した合成セグメントを使用することで、施工性が向上し、工期も短縮可能となる。更に、継手板と直角方向に作用するせん断に対する耐力も向上し、合成セグメントの高さも薄化可能となる。」

(エ)「【0017】
図1および図2に示す第1実施形態に係る単体時の合成セグメントにおいて、セグメント本体の鋼殻は、平行に配置された主桁1の両端部を継手板2で結合し、その内部に継手板2に並行に複数の縦リブ4を主桁1と溶接にて連結し、これらの部材をスキンプレート3にて覆っている。この鋼殻内に、縦リブ4に設けた鉄筋挿通用穴6に主筋5を交差して通し、コンクリート7を打設し、鉄筋コンクリートと鋼殻との合成構造を形成する。縦リブ4としては、鋼板の代わりに鉄筋を用い、主筋5を囲むように交差して設置し主桁1と連結してもよい。主桁1にC型形状部材を用いる。このとき、C型形状部材として溝形鋼8を用いることで本体のコストを低減できる。」

(オ)「【0022】
円形断面に適用する際、C型形状部材、H型形状部材として溝形鋼、H形鋼を用いるときは、冷間成型にて曲げ加工する(図5参照)。C型形状部材、H型形状部材を平板からのビルトアップにて製作するときは、曲げ加工による面外変形を防止するために、ウェブ部の板材を鋼板から曲率を付けた状態で切り出しても良い。」

(カ)前記(オ)の記載事項を考慮すれば、図1には、両側の主桁1、1は曲げ加工された単体の合成セグメントが示され、また、図5には、主桁8、8、桁9が曲げ加工された合成セグメントが示されている。

(キ)前記(イ)【0009】には、「合成セグメントは」「両サイドの主桁は断面がC型形状の部材」とし、「断面がH型形状の部材を中主桁として組み込」むことが記載されている。そして、【0011】には、「H型形状部材はC型形状部材2つを背中合わせ(開口部と反対側同士)に組み合わせて溶接等で固着した部材とすることもでき」と記載されている。また、前記(ウ)【0013】には、「C型形状部材として・・・溝型鋼を用いることが好ましい。」と記載されている。ここで、「溝型鋼」について他の箇所には「溝形鋼」とも記載されているが、「溝型鋼」は「溝形鋼」の誤記であるとして、以降、「溝形鋼」として統一して扱うこととする。
したがって、これらの記載事項より、両側の主桁1、1、中主桁9を溝形鋼から構成した合成セグメントが記載されているといえる。

(ク)前記(カ)、(キ)の記載事項を考慮すれば、両側の主桁1、1を、溝形鋼を曲げ加工して形成するとともに、中主桁9を、溝形鋼を曲げ加工して形成した合成セグメントが記載されているといえる。

(ケ)前記(エ)における「主桁1の両端部を継手板2で結合」の「結合」は金属材同士の結合故、「溶接」による結合を意味することは技術常識である。したがって、前記(エ)には、合成セグメントは主桁1、継手板2及び縦リブ4を溶接し、コンクリート7を打設して製作されることが記載されているといえる。

したがって、上記記載事項(特に記載事項(キ)、(ク)参照)より、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「主桁1、継手板2及び縦リブ4を溶接し、コンクリート7を打設して製作する合成セグメントであって、
両側の主桁1、1を、溝形鋼を曲げ加工して形成するとともに、
中主桁9を、溝形鋼を曲げ加工して形成した合成セグメント」

(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「主桁1」、「継手板2」、「縦リブ4」、「コンクリート7」、「中主桁9」は、本願補正発明の「主桁」、「継手板」、「縦リブ」、「コンクリート」、「中間の主桁」にそれぞれ相当する。

そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「主桁、継手板及び縦リブを溶接し、コンクリートを打設して製作する合成セグメントであって、
両側の主桁を、溝形鋼を曲げ加工して形成するとともに、
中間の主桁を、溝形鋼を曲げ加工して形成した合成セグメント。」

(相違点)
本願補正発明は「合成セグメント単体」としたのに対し、引用発明は「合成セグメント」とした点。

次に、前記相違点について検討する。
(ア)本願補正発明の明細書の【0038】には、「セグメント単体の強度は、セグメント幅の調整や主桁を内側に増設することで容易に対応できる。」と記載されている。したがって、セグメント単体は幅調整が可能であるから、本願補正発明の「合成セグメント単体」は(一対の主桁により規定される)合成セグメントの最小単位のみを示しているわけではない。
一方、刊行物1の(ウ)【0014】には「単体時の合成セグメント、桁間隔を単体時の合成セグメントの主桁間隔と等しくして2倍に拡幅した合成セグメント、更に3倍に拡幅した合成セグメント等」は「現場のニーズに合せて1種又は2種以上を組合せて組み付けるものである。」と記載されいるから、「単体時の合成セグメント、桁間隔を単体時の合成セグメントの主桁間隔と等しくして2倍に拡幅した合成セグメント、更に3倍に拡幅した合成セグメント等」はいずれも「合成セグメント単体」ということもできる。
そうすると、引用発明は「合成セグメント単体」も含んでいるといえるから、本願補正発明は引用発明と同一である。
よって、本願補正発明は刊行物1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(イ)なお、請求人の補正の趣旨からみて、本願補正発明の「合成セグメント単体」は合成セグメントの最小単位、すなわち刊行物1(ウ)【0014】の「単体時の合成セグメント」と同様のものを示しているものとして以下において検討する。
引用発明の「合成セグメント」は最小単位の「単体」とした際は、強度上の都合から「中間の主桁」は必ずしも必要としないとも考えられる。しかしながら、シールドトンネルのセグメントにおいて、その単体の両側の主桁に加え中間の主桁を設けることは、例えば、特開2006-299792号公報(図17参照)、特開平11-264293号公報(図6参照)に記載されているように周知技術である。
一般に、シールドトンネルの覆工材として使われるセグメントは、現場において求められる強度、剛性を考慮して設計することは技術常識であるから、引用発明において必要に応じ周知技術を採用し「合成セグメント単体」とすることは当業者であれば容易に想到し得るといえる。
次に、本願補正発明の効果について検討すると、本件補正発明の明細書の【0014】には、「・・・合成セグメントにおいて、剛性・強度を確保しながら、曲げ加工を容易にしてコストダウンを達成できる。」と記載されているが、このような効果は引用発明及び周知技術からみて格別なものではない。
よって、本願補正発明は引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)むすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正(平成26年6月3日付け手続補正)は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年3月5日付けの手続補正書により補正された、上記第2の1.で前述した特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項3】
主桁、継手板及び縦リブを溶接し、コンクリートを打設して製作する合成セグメントで あって、
両側の主桁を、溝形鋼を曲げ加工して形成するとともに、
中間の主桁を、溝形鋼を曲げ加工して形成したことを特徴とする合成セグメント。」

第4 引用例刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項は、上記第2の3.(2)に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明と引用発明を対比すると、前記第2の3(3)と同様の対比関係により、両者は
「主桁、継手板及び縦リブを溶接し、コンクリートを打設して製作する合成セグメントで あって、
両側の主桁を、溝形鋼を曲げ加工して形成するとともに、
中間の主桁を、溝形鋼を曲げ加工して形成した(ことを特徴とする)合成セグメント。」
で一致し、相違点はない。
したがって、本願発明と引用発明は同一であり、本願発明は刊行物1に記載された発明である。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-18 
結審通知日 2015-03-24 
審決日 2015-04-08 
出願番号 特願2010-152573(P2010-152573)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E21D)
P 1 8・ 113- Z (E21D)
P 1 8・ 575- Z (E21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 桐山 愛世▲高▼橋 祐介  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 本郷 徹
門 良成
発明の名称 スチールセグメント単体、合成セグメント単体、及びそれらの製造方法  
代理人 荒船 博司  
代理人 荒船 博司  

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